説明

抗原提示細胞に対する抗体およびその使用

抗原提示細胞に対する抗体を利用して、抗原提示細胞と、T細胞を含む免疫細胞との相互作用を妨げることができる。ペプチドを前記抗体に連結させ、それによってかかるペプチドに対する免疫応答を発生させることができる。好ましくは、抗体に連結されたペプチドは、自己免疫と関連する。本発明の1つの実施形態により、L−SIGN受容体を認識し、2時間のうちに、単離されたヒト肝臓非実質性細胞中への少なくとも40パーセントの内在化を示す抗体が、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国出願第11/016647号(2004年12月17日出願)の部分継続出願である。この米国出願は、PCT/US04/06570(2004年3月4日出願)の部分継続出願であり、このPCT出願は、米国仮特許出願第60/548,385号(2004年2月28日出願);米国仮特許出願第60/529,500号(2003年12月15日出願);および米国仮特許出願第60/451,816号(2003年3月4日出願)の優先権を主張する。これらの全ての出願の完全な開示は、本明細書中で参考として援用される。
(技術分野)
自己免疫疾患を治療または予防するための、自己抗原に対する自然免疫寛容を開発および修復すること。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
T細胞媒介性疾患、インスリン依存性糖尿病(「T1DM」)は、大きな健康上の問題であり、150万人を超えるアメリカ人が罹患している。この自己免疫疾患は、膵臓内のランゲルハンス島のインスリン産生β−細胞の、T細胞媒介性の破壊から生じる。インスリンでの治療にもかかわらず、T1DMに起因する死亡は過去20年間で増大しているが、癌、心臓血管疾患および脳卒中での死亡率は減少している(Hurlbertら、2001年)。また、腎症、ニューロパシーおよび網膜症を含む、外因性インスリンでの治療の合併症は、非常に消耗性である。
【0003】
T1DMは、Th1媒介性疾患であると考えられており、例えばIL−4の全身性投与によって、免疫応答をTh2型に転換する早期の介入が、疾患の発症を予防し得る(Cameronら、1997年)。エフェクターT細胞、Th1およびTh2のバランスは、免疫寛容の維持において重要であり得、バランスの変化は、自己免疫を生じ得る。しかしながら、NODマウス由来のTh2細胞系もまた疾患を転移することが示されているので、自己免疫疾患からの保護は、Th2細胞の固有の特性ではない(Pakkalaら、1997年)。
【0004】
免疫系は、自己寛容を維持するように、複雑に進化してきた。胸腺は、T細胞の重要な最初の選択を提供する。この選択は、胸腺に存在する自己抗原に対して寛容なT細胞の、末梢への輸送を生じる。しかしながら、多くの組織特異的タンパク質は、寛容性を誘導するのに十分なレベルで発現されない。例えば、ランゲルハンス島反応性T細胞は健康な被験体で見られているが、おそらく親和性は低い(Lohmanら、1996年)。末梢寛容性のいくつかの機構は、胸腺の中心的な寛容性機構を補完して、自己反応性T細胞を制御下に維持する。末梢寛容性の重要なメディエータの1つは、抗原提示細胞(「APC」)である。樹状細胞(「DC」)およびマクロファージ等のAPCは、他の細胞から自己抗原を捕捉し、それらを自己反応性T細胞に提示して、欠失、アネルギー、および/または調節性T細胞の発生によって、T細胞寛容性を誘導する(非特許文献1)。現在の仮説は、おそらく共刺激分子を欠くために、定常状態の免疫系におけるAPC等の未成熟なAPCが、T細胞を活性化するよりむしろ寛容化するというものである。Hawigerらは、DC制限エンドサイト受容体であるDEC−205に対する抗体を用いて、DCの主要組織適合性クラスII(「MHC II」)経路に抗原を標的とした(Hawigerら、2001年)。その後のペプチド免疫に対する応答を欠くことから示されるように、これらのDCによる抗原提示はCD4+T細胞増殖の短いバーストを刺激し、その後欠失が起こり、レシピエントは抗原に対して寛容になった。対照的に、抗CD40等の強力なDC成熟刺激によって抗原標的化が達成されると、免疫が誘導された。
【0005】
樹状細胞はまた、抑制性サイトカインまたは接触依存性機構を通じてエフェクターT細胞の機能に影響を及ぼす調節性T細胞を生じることによって、末梢寛容性を誘導することができる(非特許文献2、Jonuleitら、2000年、DhodapkarおよびSteinman、2001年)。一般に「最適以下」のT細胞刺激によって、調節性T細胞の誘導のための多くの異なるプロトコルが開発されている。T細胞の最適以下の刺激は、共刺激なしの抗原提示、もしくは炎症によって、またはT細胞受容体もしくはその補助受容体CD4およびCD8の部分的ブロッキングによって、達成することができる。調節性T細胞の表現型および作用の機構は異質性である。多くのサプレッサ細胞はCD4+CD25+であるが、多くの状況においてCD4+CD25+細胞は同程度に効果的であることがますます明らかになってきている。調節性T細胞集団において同定される他のマーカーとしては、CD62L、GITRおよびCD103が挙げられ(LafailleおよびLafaille、2002年)、CD8+調節性T細胞もまた、報告されている(DhodapkarおよびSteinman、2002年)。いくつかの調節性T細胞は、免疫抑制性サイトカインであるインターロイキン(「IL」)−10を産生することが示されている(Wakkachら、2001年、Barratら、2002年)が、経口免疫寛容によって誘導された調節性T細胞は、Th2型サイトカインであるIL−4およびIL−10に加えて、トランスホーミング増殖因子−β(「TGF−β」)の産生によって特徴付けられている(Weiner、2001年)。接触依存性サプレッサ細胞は、TGF−β存在下でCD4+CD45RA+ヒト末梢T細胞を活性化することによって生じている(Yamigawaら、2001年)。調節性T細胞の誘導はT細胞受容体を通じた刺激を必要とするが、それらの抑制効果は非抗原特異的であるようである(ThortonおよびShevach、2000年)。
【0006】
免疫調節性T細胞は、NODマウスにおける病原性自己反応性T細胞を下方調節する上で役割を果たすことが示されている。糖尿病前症マウスが免疫調節性T細胞を含むことおよびそれらの数またはそれらの機能的能力の減少が、疾患進行における主な寄与事象であるという証拠がある(非特許文献3)。共転移実験から、糖尿病前症マウス由来のCD4+T脾臓細胞は糖尿病誘発細胞による免疫不全レシピエントへの疾患転移を完全に防ぐことが示されている(Boitardら、1989年、HutchingsおよびCooke、1990年)。また、NODマウスモデルにおいて、未成熟なDCによる調節性T細胞の誘導は疾患予防と相関があった(Hugesら、2002年)。
【0007】
ヒトにおいて、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(「GAD」)、熱ショックタンパク質(「HSP」)60、またはタンパク質チロシンホスファターゼ様分子(「IA−2」)、および他の不確定のβ細胞抗原に応答する自己反応性T細胞が記載されている(Roepら、1990年、Atkinsonら、1992年、Honeymanら、1993年、Reijonenら、2002年)。
【0008】
GADは、抑制性神経伝達物質であるγアミノ酪酸の生合成酵素である(Baekkeskovら、1990年)。65%の相同性の、2つの異なるアイソフォーム、GAD65およびGAD67がクローニングされている。GAD65はヒトにおける支配的なアイソフォームであるが、GAD67は、NODマウスにおける主な形態であり、両方のアイソフォームに対する抗体がヒトにおいて検出される(Kaufmanら、1992年)。NODマウスにおいて、膵島炎の発症以前または発症時、および他のβ細胞抗原に対する抗体が発生する前に、抗GAD抗体が以前に検出された。このタイミングは、GADが、このモデルにおいてβ細胞自己免疫を開始する主要抗原であることを含意する(Tischら、1993年)。糖尿病におけるGADの重要な役割のさらなる証拠は、糖尿病マウスの脾臓または膵臓から単離されたGAD特異的T細胞が未処置の動物に疾患を転移し得るという、多くの実験室による観察から生じる(非特許文献4、Wenら、1998年、Zekzerら、1998年)。T1DMの病原におけるGADの中心的な役割に関する論争は依然としてあるが、動物実験からの証拠から、少なくとも、このタンパク質の重要な役割が示唆される。
【0009】
若年期における胸腺内または静脈内のいずれかでの精製GAD65での免疫化は、NODマウスにおいて、膵臓β細細胞に対してT細胞を寛容化して、それによって膵島炎および糖尿病を防ぐことができる(Tianら、1996年、Maら、1997年)。GADに対する寛容化はまた、HSP65等の他の抗原に対する免疫反応の発生を防ぐこともできた。さらなる研究は、どのGADペプチドが寛容性を誘導できるかを検討した(Tischら、2001年、Tischら、1999年、Zechelら、1998年)。糖尿病発症からの保護はまた、静脈内、皮下、経口または経鼻経路によって、インスリンまたはHSP65処置のいずれかによって達成することができる(Eliasら、1991年、EliasおよびCohen、1994年、Eliasら、1997年、Atkinsonら、1990年)。抗原特異的療法は、早期に投与すると疾患発症の予防において高度に効果的であるが、進行中の疾患の制御では、わずかな試みしか成功していない(EliasおよびCohen、1994年、Tianら、1996年)。
【0010】
一般的なペプチド免疫は、免疫性を誘導する段階で、または寛容性に対する免疫応答を変化させ得る抗原提示細胞によって、抗原提示細胞がペプチドを提示するかどうかを制御できず、したがって、免疫刺激または免疫抑制のいずれかを生じ得る。
【0011】
免疫系を弱めることにより、糖尿病の発生を予防することができる。FK506、抗CD4、抗CD8、抗CTLA−4および他のもの等の、T細胞機能を抑制する、ありとあらゆる一般的な作用物質は、NODマウスにおいて糖尿病の発症を予防または遅延することが示されている(AtkinsonおよびLeiter、1999年で概説されている)。しかしながら、これらの試薬に、糖尿病誘発T細胞に特異的なものはなく、これらの大部分は疾患の発症を予防することができるが、一旦疾患が確立されると効果がない。臨床試験で試験されたシクロスポリン等の一般的な免疫抑制剤は、短期で効果的であった(Feutrenら、1988年、SkylerおよびRabinovitch、1992年)。しかしながら、免疫抑制の中止は即座の再発につながり、腎毒性等の副作用が長期治療を妨げる(Parvingら、1999年)。
【0012】
糖尿病の抗原特異的療法の効能を評価するために、臨床試験が開始された。早発型糖尿病において、HSP6O p277ペプチド(DiaPep277)が試験された(Razら、2001年)。ペプチドでの多重免疫は疾患進行の速度を落とし、結果を確認および拡張するために、大規模な研究が開始された。ヒトインスリンのβ鎖をフロイント不完全アジュバント、インスリンB9−23の改変ペプチドリガンドおよびGADと組み合わせて用いた臨床試験が進行中である。しかしながら、経口インスリンでの、最近診断された糖尿病を治療する試験は失敗し(Pozziliら、2000年、Chaillousら、2000年)、非経口インスリン投与は、危険性の大きい糖尿病前症の予防が不成功であった(Diabetes Prevention Trial−Type 1 (DPT) Study Group、2002年)。失敗は、抗原の選択、抗原用量(Kurtsら、1999年)、投与のタイミングおよび経路を含む、いくつかの要因によると考えられる。また、抗原療法は、どの型の免疫細胞が抗原を吸収するかを制御することができない。マウスは、制御された、病原を含まない条件下にあるが、これはヒトの試験には当てはまらない。同時の細菌またはウイルス感染がある場合、寛容よりむしろ初回刺激が起こる。動物において、糖尿病は、ある条件下での抗原免疫によって誘導されることができた(Blanaら、1996年、Bellmannら、1998年)。
【0013】
免疫系がどのようにして自己抗原に対する寛容性を維持するかの理解は過去10年で相当発達したので、T1DMを予防または治療するための現在の治療戦略は、β細胞抗原に対する免疫寛容を回復させようと意図している。現在の免疫療法戦略は、自己反応性T細胞を直接不活性化することおよび/または調節能力によってT細胞を誘導することのいずれかによって、β細胞抗原に対する寛容性を誘導するよう意図されている。調節性T細胞の誘導は、多くの自己免疫疾患の治療のための、見込みのあるアプローチのようである。
【非特許文献1】Heath WRおよびCarbone FR,「Cross−presentation,dendritic cells,tolerance andimmunity.」,Annu Rev Immunol,2001年,第19巻,p.47−49
【非特許文献2】Roncarolo MG,Levings MK,Traversi C,「Differentiation of T regulatory cells by immature dendritic cells.」,J Exp Med,2001年,第193巻,F5−F9
【非特許文献3】Sempe P,Richard MF,Bach JF,Boitard C,「Evidence of CD4+ regulatory T cells in the non−obese diabetic male mouse.」,Diabetologica,1994年,第37巻,p.337−343
【非特許文献4】Rohane PW,Shimada A,Kim DT,Edwards CT,Charlton B,Shultz LD,Fathman CG,Islet−infiltrating lymphocytes from prediabetic NOD mice rapidly transfer diabetes to NOD−scid/scid mice.」,Diabetes,1995年,第44巻,p.550−554
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(要旨)
本開示は、免疫寛容を誘導することによって自己免疫疾患を治療する方法に関する。抗原提示細胞上に自己抗原を提示することによって、免疫寛容が誘導される。自己抗原が、抗原内在化受容体を認識する抗体に連結される。抗原提示細胞によって、抗原提示細胞上に自己抗原が内在化され、自己反応性T細胞の阻害が引き起こされる。
【0015】
特に有用な実施形態において、本明細書中に記載される方法および化合物を用いて、とりわけβ細胞抗原、GADまたはそのエピトープ、インスリンまたはそのエピトープ、HSPまたはそのエピトープであり得る自己抗原に対する免疫寛容を誘導することによって、真性糖尿病が治療される。自己抗原は、抗原内在化受容体であるDC−SIGNRまたはDC−SIGNRの変異を認識する抗体に連結される。自己抗原が、標的肝類洞内皮細胞または表面にDC−SIGNRを発現している他の寛容化APCに内在化される。自己抗原が標的肝類洞内皮細胞に提示され、自己反応性T細胞の増殖を阻害するか、または調節性T細胞の抑制効果を活性化する。
【0016】
別の態様において、ペプチドに連結された、抗原提示細胞上の受容体に対する抗体を含む抗体/ペプチドコンストラクトが説明される。好ましくは、ペプチドは抗原であり、より好ましくは自己抗原である。特に有用な実施形態において、抗体/自己抗原コンストラクトまたはその一部は抗原提示細胞によって内在化され、自己抗原に対する免疫寛容が達成される。いくつかの場合において、毒素を本開示の抗原と組み合わせ、患者に投与することができる。毒素が、例えば腫瘍細胞に対する場合、本開示の抗体を利用して毒素を腫瘍細胞に導き、それによって毒素の投与を腫瘍細胞に集中させることができる。
【0017】
別の態様において、自己抗原に連結された、受容体または抗原提示細胞に対する抗体を含む操作された抗体を組み換えによって生成する方法が説明される。
【0018】
本開示はまた、DC−SIGNR発現細胞と、T細胞等のICAM発現細胞との相互作用に干渉する、DC−SIGNRに対する抗体に関する。かかる相互作用のブロッキングは、免疫刺激を生じ得る。さらに、L−SIGNに対して拮抗関係にある抗体は、標的細胞の抗原提示特性を変化させ得、これは免疫の活性化または抑制のいずれかを生じ得る。
【0019】
別の態様において、DC−SIGNRに対する抗体は、肝類洞内皮細胞等の肝細胞を含む細胞へのウイルスの侵入および他の細胞へのそれらの感染を防ぐ。DC−SIGNRに対する抗体を利用して、T細胞へのウイルスの侵入および他の細胞へのそれらの感染も防ぐこともできる。いくつかの実施形態において、本開示は、ワクチンにおける、DC−SIGNRに対する抗体の使用を含む。
【0020】
他の実施形態において、本開示の抗体を利用して、DC−SIGNRおよび/またはL−SIGNに結合させ、それによって、HIV、HCV、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビス等のウイルスを含むがこれらに限定されない感染性作用物質の結合、感染、および伝播をブロックすることができる。
【0021】
さらに別の実施形態において、DC−SIGNRに対する抗体を利用して、ヒト結核菌(M.tuberculosis)およびウシ結核菌(M.bovis)を含むミコバクテリウム(Mycobacterium)属の細菌の結合、感染、および伝播をブロックすることができる。他の実施形態において、DC−SIGNRに対する抗体を利用して、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)等の寄生生物の結合、感染、および伝播をブロックすることができる。
【0022】
さらに別の実施形態において、本開示の抗体または抗体/ペプチドコンストラクトは、DC−SIGNR発現細胞に対する毒素で標識され得る。次いで、毒素で標識された抗DC−SIGNR抗体または抗DC−SIGNR抗体/ペプチドコンストラクトの投与を利用して、DC−SIGNR発現細胞のレベルを減少させることができ、これは自己免疫疾患の治療等のいくつかの例において、有益であり得る。
【0023】
本開示のDC−SIGNRに対する抗体はまた、DC−SIGNR発現と関連のある腫瘍型の通法の診断法としても利用することができ、いくつかの実施形態においては、診断キットの一部として提供することもできる。
【0024】
本開示のDC−SIGNRに対する抗体はまた、DC−SIGNR発現と関連のある癌および腫瘍型の治療のための治療術としても利用することができる。
【0025】
本開示の抗体を利用して、DC−SIGNRを発現しない細胞からDC−SIGNR発現細胞を単離することもできる。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示のDC−SIGNRに対する抗体は、ヒト化抗体であり得る。他の実施形態において、本開示のDC−SIGNRに対する抗体は、scFvであり得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示は、L−SIGN受容体を認識し、L−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする抗体、L−SIGN受容体を認識し、L−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする抗体、L−SIGN受容体を認識し、DC−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする抗体、L−SIGN受容体を認識し、DC−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする抗体、L−SIGN受容体およびDC−SIGN受容体の両方を認識し、DC−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする抗体、ならびに/またはL−SIGN受容体およびDC−SIGN受容体の両方を認識し、DC−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする抗体に関する。この抗体は、エボラエンベロープタンパク質またはHIVgp120が結合するエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0028】
さらに他の実施形態において、本開示は、非ヒト可変ドメインが抗原提示細胞上の受容体、場合によりDC−SIGN受容体に結合する、非ヒト可変ドメインおよびヒトIgG定常領域を含むキメラ抗体に関する。いくつかの実施形態において、非ヒト可変ドメインはL−SIGN受容体を認識し、ヒト定常領域はIgG1領域である。かかる抗体は、L−SIGNおよび/またはDC−SIGNへの、HIVgp120またはエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックし得る。キメラ抗体は、非ヒト可変ドメインのみの場合よりも有利にL−SIGNおよび/またはDC−SIGNに結合することができる。
【0029】
本開示のさらなる実施形態は、組成物を用いた、および/または上述の方法を包含する、予防技術ならびに診断技術に関する。薬学的に許容され得る担体中に本開示のDC−SIGNRに対する抗体を含む組成物も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(詳細な説明)
本方法は、自己免疫疾患に関与する、自己抗原または自己ペプチドに対する免疫寛容を誘導する。
【0031】
抗体/自己抗原コンストラクト(本明細書中で「操作された抗体」と呼ばれることがある)を被験体に投与することによって、本開示により、免疫寛容が誘導される。抗体/自己抗原コンストラクトとしては、抗体に連結された自己抗原が挙げられる。
【0032】
抗体成分は、任意の抗原提示細胞上の任意の受容体に結合する抗体であり得る。当業者が認めるように、抗原提示細胞の型としては、樹状細胞、マクロファージ、内皮細胞 クップファー細胞およびB細胞が挙げられる。現在公知の受容体または抗原提示細胞には、DEC−205、マンノース受容体、DC−SIGN、DC−SIGNR、MHC、toll受容体、ランゲリン、アシアロ糖タンパク質受容体、β−グルカン受容体、C型レクチン受容体および樹状細胞免疫受容体がある。特に有用な実施形態において、受容体は、STT抗体を内在化するものである。内在化が特定の受容体で起こるかどうかは、当業者に公知の技術を用いて実験的に決定することができる。抗体の内在化を提供することが現在知られている受容体または抗原提示細胞としては、DEC−205、マンノース受容体、DC−SIGNおよびDC−SIGNRが挙げられる。
【0033】
抗体成分は、天然の抗体(従来の技術を用いて単離される)であってよく、または当業者の認識範囲内にある組み換え方法により合成によって調製される抗体であってもよい。抗体は、例えば、完全ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体または任意の方法(例えば、部位特異的修飾または脱免疫)で操作された前述の型の抗体のいずれかであり得る。抗体は、例えばファージディスプレイおよびパニング等の当業者に公知の技術を用いて、抗体のライブラリーから有利に選択することができる。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「抗体」および「免疫グロブリン」は交換可能に使用され、免疫グロブリン分子全体、または免疫グロブリン分子全体の免疫学的に活性のある部分を含む分子をいい、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0035】
抗体をコードする核酸は、選択されると、例えば、その開示が参照によって本明細書中に援用されている、2002年9月19日に提出された米国特許出願第10/251085号および2001年12月10日に提出された同第10/014012号にそれぞれ記載されている、従来のPCRまたは増幅技術等の、当業者に公知の技術を用いて増幅することができる。
【0036】
自己抗原を抗体に連結させて、本開示による抗体/自己抗原コンストラクトが調製される。本開示の目的のために、用語「抗体/自己抗原コンストラクト」および「抗体/ペプチド」は、交換可能に使用される。
【0037】
任意の自己抗原を使用することができる。自己抗原は天然に存在するものであってよく、当業者に公知の技術を用いて単離されてもよい。あるいは、自己抗原のアミノ酸配列が既知である場合、これは公知の技術を用いて合成によって調製することができる。適した自己抗原としては、インスリン、GAD、Hsp、核抗原、アセチルコリン受容体、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリン希突起神経膠細胞糖タンパク質、プロテオリピドタンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、糸球体基底膜タンパク質および甲状腺刺激ホルモン受容体が挙げられる。特に有用な実施形態において、自己抗原は、寛容化抗原提示細胞による提示のときに免疫寛容を誘導するものである。
【0038】
任意の適した方法によって、自己抗原を抗体に連結することができる。ある特定の方法を下記の実施例で述べるが、本開示は、抗体/自己抗原コンストラクトを製造するいかなる特定の方法にも限定されない。
【0039】
自己抗原に対する免疫寛容を誘導する本方法は、抗原提示細胞(「APC」)を標的とし、抗体によって自己抗原をこれらの細胞に導く。図1は、本開示による抗体/自己抗原コンストラクトと、抗原提示細胞(APC)およびT細胞との相互作用を略図で示す。抗体は、標的とする細胞上の受容体を認識する。抗体による自己抗原の送達を導くために、これら2つを連結する。本開示はベクタークローニングの使用を描写するが、この連結は任意の方法によって達成することができる。抗体は、独特の抗原内在化受容体のみを標的として、結合し、それによって所望の細胞型への自己抗原の送達を確実にする。
【0040】
標的とする抗原内在化受容体に抗体が結合した後、連結した自己抗原および抗体が抗原提示細胞中に内在化される。自己抗原が、おそらく細胞内の主要組織適合性複合体(「MHC」)との自己抗原の相互作用を介して、APCの表面に提示される。自己抗原が共刺激能力によってAPCの表面で発現されると、未処置の自己反応性T細胞は、活性化状態になり、その特異的自己抗原を標的とし、それと反応することができる。APCの表面に共刺激分子がないことは、T細胞応答の限定に最も関係がありそうである。自己反応性エフェクターT細胞は、限られた数の抗原発現組織細胞しか死滅させることができない。少数の標的細胞を死滅させた後、エフェクター細胞は死滅する。次いで、自己抗原提示細胞が寛容化される。寛容化抗原提示細胞による、未処置のT細胞への抗原の提示は、調節性T細胞を誘導する。続いて、調節性T細胞が、刺激性抗原提示細胞による、他の潜在的な自己反応性T細胞の活性化を防ぐ。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示の抗体を利用して、肝類洞内皮細胞に結合することができる抗体/自己抗原コンストラクトを形成し、それによって調節性細胞の増殖を刺激することができるか、または本開示の抗体を利用して、肝類洞内皮細胞に結合することができる抗体/自己抗原コンストラクトを形成し、それによって自己反応性T細胞の活性を抑制することができる。本開示の抗体/自己抗原コンストラクトはまた、ワクチン抗原を、リンパ節で見られるものを含む類洞内皮細胞に送達するのに使用して、それによって抗原特異的T細胞の増殖を刺激することもできる。
【0042】
本抗体/自己抗原コンストラクトは、公知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、皮下、眼内、動脈内、鞘内、吸入もしくは病変内経路による注射もしくは注入、局所的、または下記のような徐放性システムに従って、投与することができる。抗体/自己抗原コンストラクトは、好ましくは、注入によって、またはボーラス注射によって、継続的に投与される。抗体/自己抗原コンストラクトは、局所的または全身性の様式で投与することができる。
【0043】
抗体/自己抗原コンストラクトは、薬学的に許容され得る担体との混合物中で調製することができる。本願の化合物の製剤化および投与の技術は、「Ramington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、ペンシルバニア州イーストン、最新版に見ることができる。この治療組成物は、静脈内、または鼻もしくは肺を通して、好ましくは液体または粉末エーロゾル(凍結乾燥)として、投与することができる。組成物はまた、所望により、非経口または皮下で投与することができる。全身に投与される場合、治療組成物は、無菌で、熱源物質を含まず、pH、等張性、および安定性を相当に顧慮した非経口的に許容され得る溶液中にあるべきである。これらの条件は、当業者に公知である。
【0044】
簡潔に述べると、本抗体/自己抗原コンストラクトの投薬製剤は、所望の程度の純度を有する化合物を生理学的に許容され得る担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって、保存または投与のために調製される。かかる物質は、使用される投薬量および濃度ではレシピエントにとって無毒であり、TRIS HCl、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩および他の有機酸塩などのバッファー;アスコルビン酸等の抗酸化物質;ポリアルギニン等の低分子量(約10残基未満)ペプチド、および血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン等のアミノ酸;単糖、二糖、およびセルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭化水素;EDTA等のキレート化剤;マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の対イオン;ならびに/またはTWEEN、PLURONICSまたはポリエチレングリコール等の非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0045】
インビトロ投与に使用される場合、抗体/自己抗原コンストラクト製剤は無菌でなければならず、従来の医薬の慣例に従って製剤化することができる。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に、無菌ろ過膜を通したろ過によって容易に達成される。抗体は、通常、凍結乾燥形態または溶液中で保存される。ゴマ、落花生、もしくは綿実油のような天然に存在する植物性油またはオレイン酸エチル等のような合成脂肪ビヒクル等の他のビヒクルが所望され得る。バッファー、保存薬、抗酸化物質等は、一般に容認された医薬の慣例に従って組み込むことができる。
【0046】
使用に適した医薬組成物としては、1つまたは複数の抗体/自己抗原コンストラクトが、それらの意図される目的を達成するのに有効な量含まれた、組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量とは、疾患の症状を予防、緩和、もしくは改善するのに、または治療される被験体の生存を延長するのに有効な抗体の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。治療有効量は、インビトロおよびインビボの方法を用いることによって決定することができる。
【0047】
治療に使用される有効量の抗体/自己抗原コンストラクトは、例えば、治療目的、投与の経路、および患者の状態に依存する。また、主治医は、重症度および疾患の型、体重、性別、食事、投与の時間および経路、他の薬物適用ならびに他の関連性のある臨床上の要因を含む、薬物の作用を変化させることが公知の種々の要因を考慮に入れる。したがって、療法士は、最適の治療効果を得るのに必要なように、投薬量を滴定し、投与の経路を変更する必要がある。典型的には、臨床家は、所望の効果を達成する投薬量に達するまで、抗体/自己抗原コンストラクトを投与する。この療法の進行は、従来のアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0048】
任意の抗体/自己抗原コンストラクトについて、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。例えば、動物モデルにおいて用量を処方して、細胞培養物中で測定されるEC50を含む循環濃度範囲を達成することができる(例えば、細胞増殖または分化を促進または阻害する試験分子の濃度)。かかる情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0049】
本明細書中に記載される抗体/自己抗原コンストラクトの毒性および治療効能は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物において、標準的な医薬の手順によって決定することができる。毒性および治療効能の間の用量比は治療指数であり、これはLD50とED50との間の比として表すことができる。高い治療指数を示す分子が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬の範囲を処方するのに使用することができる。かかる分子の投薬量は、好ましくは、毒性がわずかであるかまたは毒性のない、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与の経路に応じて、この範囲内で変化し得る。正確な製剤化、投与の経路および投薬量は、患者の状態を考慮して、それぞれの医師によって選択され得る。(例えば、Finglら、1975年、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」中、第1章1頁参照。)
投薬の量および間隔を個々に調節して、細胞増殖または分化を促進または阻害するのに十分である抗体/自己抗原コンストラクトの血漿レベルまたは最小有効濃度(MEC)を提供することができる。MECは、各抗体/自己抗原コンストラクトについて変化するが、記載されるアッセイを用いたインビトロデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投薬量は、個々の特徴および投与の経路に依存する。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを用いて、血漿濃度を決定することができる。
【0050】
投薬間隔もまた、MEC値を用いて決定することができる。抗体/自己抗原コンストラクト分子は、時間の10〜90%、好ましくは30〜90%の間、最も好ましくは50〜90%の間にわたって、MECより高い血漿レベルを維持する養生法を用いて投与されるべきである。
【0051】
局所的投与または選択的取り込みの場合、抗体/自己抗原コンストラクトの効果的な局所濃度は、血漿濃度と関連していなくてもよい。
【0052】
典型的な1日の投薬量は、上述の要因により、約1μg/kg〜1000mg/kgまで、またはそれより多い範囲であり得る。典型的には、臨床家は、投薬量が所望の効果を達成する量に達するまで、抗体/自己抗原コンストラクトを投与する。この療法の進行は、従来のアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0053】
疾患の型および重症度に応じて、例えば、1つもしくは複数の別々の投与によってであれ、または継続的な注入によってであれ、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg、より好ましくは約0.01mg〜100mg/kg、より好ましくは約0.010〜20mg/kgの抗体/自己抗原コンストラクトが、患者への投与のための最初の候補の投薬量であり得る。数日またはより長い期間にわたる繰り返しの投与のために、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるか、または患者の状態の所望の改善が達成されるまで、治療が繰り返される。しかしながら、他の投与計画もまた、有用であり得る。
【0054】
特に有用な実施形態において、開示される方法を用いて、膵臓内のランゲルハンス島のインスリン産生β細胞に対する免疫寛容を誘導することによって、真正糖尿病を治療することができる。これらの細胞の自己抗原を、所望の抗原内在化受容体を認識する抗体に連結させる。本開示における使用に適した自己抗原は、β細胞抗原、ならびに、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(「GAD」)および熱ショックタンパク質(「HSP」)の、エピトープ、またはエピトープを提示するペプチドである。インスリン、GADおよびhspからのエピトープを覆う一連のペプチドを抗DC−SIGNR抗体に連結させることは、T1DMに関与するすべての主要抗原に対する寛容性を誘導する能力を有する。他の自己抗原は、当業者によって、公知であり、使用され得るか、または発見されて使用され得る。
【0055】
抗原内在化受容体は、特殊化したAPC上に提示されている。この方法のために、選択された抗原内在化受容体は、DC−SIGNR(樹状細胞特異的細胞間接着分子3−捕捉性非インテグリン関連受容体)である。DC−SIGNRは、肝臓常在性の抗原提示細胞である、肝類洞内皮細胞(「LSEC」)によって発現される。(Pohlmannら、2001年)。DC−SIGNRは、受容体結合タンパク質を内在化させ、抗原提示を容易にする、病原体内在化受容体のファミリーに属する。(Geijtenbeekら、2002年)。LSECによる抗原の提示が抗原特異的寛容性を生じることが示されている(Limmerら、2000年)。未成熟の免疫寛容誘発状態から活性化状態へと成熟し得る他の樹状細胞型と対照的に、肝類洞内皮細胞は、活性化抗原提示細胞に発達するよう誘導されることができない(Knolleら、1999年)。ヒトDC−SIGNに対するヒトDC−SIGNR(L−SIGNとも呼ばれる)ホモログは、DC−SIGNに対して、アミノ酸レベルで77%の同一性を示し、内在化受容体の典型的なドメインを有する(Bashirovaら、2001年、Soilleuxら、2000年)。DC−SIGNRはLSECで高度に発現され、リンパ節マクロファージ様細胞の副次集団にも見られるが、DCによって発現されない。
【0056】
本開示の目的のために、用語「DC−SIGNR」および「L−SIGN」は、交換可能に使用される。
【0057】
C型レクチンマウスDC−SIGN(DC209)は、最近、DC特異的受容体として同定された。DC−SIGNは、一時的なDC−T細胞相互作用を開始させることによって初期免疫応答を可能にする、DCの経内皮移動を媒介する(Geijtenbeekら、2000年、Geijtenbeekら、2000年)。DC−SIGNはまた、炭水化物構造を通して病原体を認識する内在化抗原受容体として働く。DC−T細胞クラスター化およびT細胞応答の開始におけるその顕著な役割の他に、DC−SIGNは、HIV−1、HIV−2、SIV−1、C型肝炎ウイルス(HCV)、エボラウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、デング熱ウイルス等のウイルス;ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumonae)、ヒト結核菌等の細菌;カンジダアルビカンス(Candida albicans)等の酵母;およびピファノリーシュマニア(Leishmania pifanoi)、マンソン住血吸虫等の寄生生物の、DCの感染およびそれに続くT細胞への伝播に関係する主要な受容体である。DC−SIGNRのマウスのホモログであるmSIGNR1は、迅速に内在化されプロセシングのためにリソゾームに標的化される、抗原を捕捉する(Geijtenbeekら、2002年)。アミノ酸配列に基づくと、マウスmSIGNR1は、ヒトDC−SIGNに対するのと同程度に、ヒトDC−SIGNRに対して相同であり、したがって、動物モデリング研究に有用である。
【0058】
したがって、別の態様において、本開示は、抗DC−SIGNR(すなわち、抗L−SIGN)抗体に関する。上記のように、用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、免疫グロブリン分子全体、または、免疫グロブリン分子全体の免疫学的に活性のある一部を含む分子をいい、Fab、F(ab’)2、scFv、Fv、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0059】
ある実施形態において、本開示の抗体は、軽鎖を含む。本明細書中で使用される場合、「軽鎖」は、1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)で構成される抗体分子の、小さい方のポリペプチド、またはその断片を意味する。別の実施形態において、抗体の一部は、重鎖を含む。本明細書中で使用される場合、「重鎖」は、1つの可変ドメイン(VH)および3つもしくは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)で構成される抗体分子の、大きい方のポリペプチド、またはその断片を意味する。
【0060】
別の実施形態において、抗体は、抗体のFab部分を含む。本明細書中で使用される場合、「Fab」は、1つの軽鎖および重鎖の一部からなる、免疫グロブリンの、一価の抗原結合断片を意味する。これは、短時間のパパイン消化によって、または組み換え方法によって得ることができる。別の実施形態において、抗体の一部は、抗体のF(ab’)部分を含む。本明細書中で使用される場合、「F(ab’)断片」は、両方の軽鎖および両方の重鎖の一部からなる、免疫グロブリンの、二価の抗原結合断片を意味する。これは、短時間のペプシン消化、または組み換え方法によって得ることができる。他の実施形態において、抗体は、Fab’断片であり得る。Fab発現ライブラリーは、例えば、Huseら、Science 245: 1275頁(1989年)の方法によって得ることができる。
【0061】
さらに、抗原提示細胞上の受容体に結合する「ヒト化」抗体を用いてもよい。ヒト化の方法は、例えば、国際公開第98/49306号、米国特許第5585089号、同第5225539号および同第5693761号ならびに国際公開第90/07861号に開示されており、その開示は、その全体が参照によって本明細書中に援用される。本明細書中で使用される場合、「ヒト化」抗体は、CDR外部のアミノ酸が、ヒト免疫グロブリン分子由来の対応するアミノ酸で置換されている抗体である。「CDR」または「相補性決定領域」は、抗体の可変ドメインにおける、高度に可変性のアミノ酸の配列を意味する。組み換えDNA技術を用いて、ヒト化抗体が所望の標的を認識するがヒト被験体の免疫系によって相当に認識されないように、1つの免疫グロブリンの可変領域のCDRが異なる特異性を有する免疫グロブリン由来のCDRで置換された、ヒト化抗体を生成することができる。
【0062】
他の実施形態において、ヒト定常領域に連結された任意の抗原提示細胞上の任意の受容体に結合する非ヒト可変ドメインを含むキメラ抗体が企図される。可変ドメインが結合する受容体は、例えば、L−SIGNまたはDC−SIGNであってよく、定常領域は、ヒトIgG1定常領域であってよい。驚くべきことに、下記でより詳細に説明されている特定の実施形態において、かかるキメラ抗体は、任意の抗原提示細胞上の受容体に対して、可変ドメイン単独よりも有利な結合を示すことがわかっている。
【0063】
抗体クローンの、完全なIgGへの変換のために、軽鎖および重鎖の両方、またはその断片のコード領域を、細菌ベクターから、哺乳動物ベクター(複数可)内へ、別々にクローニングすることができる。pDR1またのその誘導体等の単一のベクター系を用いて、軽鎖および重鎖カセットの両方を、同じプラスミドにクローニングすることができる。あるいは、重鎖および軽鎖が別々のプラスミドによって生成される二重発現ベクターを用いることができる。哺乳動物シグナル配列は、最終的なベクターにすでに存在しているか、または軽鎖および重鎖DNAインサートの5’末端に付加されるかの、いずれかである必要がある。これは、適当な哺乳動物リーダー配列を含むシャトルベクター(複数可)への、最初の鎖の転移によって達成することができる。制限酵素消化の後、軽鎖および重鎖領域、またはその断片を、IgGの残りの定常領域がイントロンありまたはなしで提供される、最終的なベクター(複数可)に導入する。
【0064】
本開示による抗体は、L−SIGNおよびDC−SIGNの両方に結合することができ、L−SIGN優先的に結合する。すなわち、L−SIGNへの結合は、DC−SIGNへの結合よりも強くあり得る。L−SIGNへの結合は、例えば、DC−SIGNへの結合よりも、1.1〜200倍強くあり得る。あるいは、−SIGNへの結合は、DC−SIGNへの結合よりも、1.2〜100倍強くあり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、DC−SIGNRに対する抗体は、DC−SIGNR発現細胞の、ICAM発現細胞との相互作用を調節、すなわち、阻害または増強する。一実施形態において、抗DC−SIGNR抗体は、LSEC等の抗原提示細胞の表面上のDC−SIGNR受容体部位に結合し、LSECとT細胞との間の相互作用(複数可)を妨げる。より具体的には、DC−SIGNRに対する抗体は、T細胞の表面上のDC−SIGNRとICAM受容体との間の接着に干渉することによって、LSECとT細胞との間の接着を減少させる。この相互作用のブロッキングによって、免疫応答を調節することができる。例えば、DC−SIGNRに対する抗体は、L−SIGNとT細胞との相互作用をブロックすることによって免疫機能を調節することができ、それによって、肝臓で見られるものを含む、調節性T細胞の増殖を引き起こすことができる。別の実施形態において、DC−SIGNRに対する抗体は、L−SIGNとT細胞との相互作用をブロックすることによって免疫機能を調節することができ、それによって、リンパ節で見られるものを含む、自己反応性T細胞の増殖を抑制することができる。
【0066】
いくつかのさらなる実施形態において、本開示の抗体を利用して、肝類洞内皮細胞に結合することができる抗体−ペプチドコンストラクトを形成することができ、それによって、調節性細胞の増殖を刺激することができるか、または、本開示の抗体を利用して、肝類洞内皮細胞に結合することができる抗体−ペプチドコンストラクトを形成することができ、それによって、自己反応性T細胞の活性を抑制することができる。本開示の抗体−ペプチドコンストラクトを用いて、リンパ節で見られるものを含む類洞内皮細胞に、ワクチン抗原を送達することもでき、それによって、抗原特異的T細胞の増殖を刺激することができる。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「ICAM受容体(複数可)」は、ICAM−2およびICAM−3受容体の両方、特にICAM−3を意味する。
【0068】
いくつかの実施形態において、本開示のDC−SIGNRに対する抗体は、DC−SIGNに結合しない。他の実施形態において、本開示の抗体は、DC−SIGNRに対する高い親和性およびDC−SIGNに対する低い親和性を有する。本開示の抗体は、DC−SIGNR上の線状および立体的エピトープの両方に結合できる場合もある。
【0069】
本抗体または抗体/ペプチドコンストラクトがDC−SIGNR提示細胞に対する毒素で標識することができることも企図される。次いで、毒素で標識された、抗DC−SIGNR抗体または抗DC−SIGNR抗体/ペプチドコンストラクトの投与を利用して、DC−SIGNR発現細胞のレベルを減少させることができ、これは自己免疫疾患、癌または炎症性疾患の治療等のいくつかの場合において有利であり得る。このようにして、本抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを利用して、DC−SIGNR発現細胞をインビボで死滅させるか、または除去することもできる。これは、細胞毒性薬物(例えば、毒素または放射線放射化合物)に結合した、抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを、かかる処置を必要とする被験体に投与することを含む。抗体または抗体/ペプチドコンストラクトはDC−SIGNR発現細胞(例えば、癌細胞または肝類洞内皮細胞)を認識するので、抗体または抗体/ペプチドコンストラクトが結合している任意のかかる細胞が破壊される。一実施形態において、本開示による、癌を治療する方法は、効果的な、癌細胞を死滅させる量の、毒素の結合している、抗DC−SIGNR抗体または抗DC−SIGNR抗体/ペプチドコンストラクトを、癌患者に投与すること含む。別の実施形態において、本開示による、炎症性疾患を治療する方法は、効果的な、DC−SIGNR発現細胞を死滅させる量の、毒素の結合している抗DC−SIGNR抗体または抗DC−SIGNR抗体/ペプチドコンストラクトを、炎症性疾患に罹患した患者に投与することを含む。
【0070】
他の実施形態において、本開示のDC−SIGNRに対する抗体は、肝類洞細胞等の肝細胞へのウイルスの侵入および他の細胞へのそれらの感染をブロックする。本開示のDC−SIGNRに対する抗体はまた、T細胞へのウイルスの侵入および他の細胞へのそれらの感染をブロックすることができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本開示のDC−SIGNRに対する抗体を利用して、ミコバクテリウム属の細菌による感染をブロックすることができる。ブロックすることができる感染としては、ヒト結核菌およびウシ結核菌によって引き起こされるものが挙げられる。
【0072】
抗原提示細胞へのT細胞の接着に干渉することによって、DC−SIGNRに対する抗体の使用は、抗原提示細胞−T細胞クラスター化、T細胞活性化、および抗原提示細胞とT細胞との間の接触に依存する他の相互作用に影響を及ぼす。これらの他の相互作用としては、直接の細胞−細胞接触、または抗原提示細胞とT細胞とがきわめて近接していることが挙げられる。
【0073】
他の実施形態において、本開示の抗DC−SIGNR抗体は、自己抗原、または自己抗原のペプチド等の、ペプチドに連結される。これらのペプチドは、ベクターを抗体断片に移植して、連結したベクター/抗体をクローニングすること、または化学的に連結することを含む、任意の適した方法によって、抗DC−SIGNR抗体に連結することができる。ベクターの連結、クローニングまたは化学的連結の方法は、当業者に周知である。
【0074】
連結した抗体に沿った、ペプチド、好ましくは自己抗原は、次いで、LSECに内在化される。LSECは、MHC II、CD80およびCD86等の、抗原提示に必要な表面分子を有する(Lohseら、1996年、Rubinsteinら、1986年)。未処置のCD4+T細胞において調節性の表現型を誘導することに加えて(Knolleら、1999年)、LSECは、外因性抗原を交差提示することによって、CD8+T細胞における寛容性を誘導することができる(Limmerら、2000年)。LSECは、MHCのダウンレギュレーション、およびエンドソームのプロセシングを妨げることによって、TNF−αおよび内毒素としての刺激に応答する(Knolleら、1999年)。さらに、LSECは、肝臓からリンパ器官へ移動しない。
【0075】
この内在化によって、MHC相互作用によって媒介される、LSECの表面への、自己抗原のペプチドの提示が容易になる。一旦自己抗原が共刺激能力を有するLSECの表面で発現されると、未処置の自己反応性T細胞が活性化状態になり得る。T細胞は、連結した自己抗原を標的とし、これと反応する。エフェクターT細胞は、少数のLSECを死滅させ、共刺激分子なしで死に絶える。LSECによる、自己抗原のこの提示は、自己抗原特異的寛容性を生じる。
【0076】
肝臓は、IL−10およびTGF−β等の豊富な免疫寛容誘発メディエータ、ならびに免疫学的寛容性の発達に有利である特殊化したAPCを有する、独特の微環境を有する(KnolleおよびGerken、2000年)。肝臓の免疫寛容誘発特性は、同種異系の肝臓移植がMHC障壁を横切って許容され得るという発見によって支持されている(Calne、1969年)。さらに、門脈による抗原の適用は、抗原の全身性の適用よりも、寛容性に、よりつながりそうである(Kameiら、1990年)。肝臓を通した排出が、経口免疫寛容誘導の必要条件であると報告されている(Yangら、1994年)。肝血管を通る血液は、まずクップファー細胞およびLSECと接触するようになる。肝類洞を通った血流は遅く、肝類洞細胞集団と通過する白血球との間の接触が可能になる。LSECは、MHCII、CD80およびCD86等の、抗原提示に必要な表面分子を有する(Lohseら、1996年、Rubinsteinら、1986年)。未処置のCD4+T細胞において調節性の表現型を誘導することに加えて(Knolleら、1999年)、LSECは、外因性抗原を交差提示することによって、CD8+T細胞における寛容性を誘導することができる(Limmerら、2000年)。Klugewitzら(Klugewitzら、2002年)は、マウスへのTh1、IFN−γ産生TCRトランスジェニック細胞の注射が、静脈内タンパク質免疫の後に、肝臓におけるこれらの細胞によるIFN−γ産生の抑制、およびTh2細胞の促進を生じることを示した。未成熟な免疫寛容誘発段階から免疫を開始する成熟した段階へ分化することができるプロフェッショナル骨髄性APCと対照的に、LSECは、MHCのダウンレギュレーション、およびエンドソームのプロセシングを妨げることによって、TNF−αおよび内毒素としての刺激に応答する(Knolleら、1999年)。さらに、LSECは、肝臓からリンパ器官へ移動しない。LSECは、寛容性を誘導するときに特殊化される唯一のAPCではないこともある。Puglieseらは、最近、内因性で発現された自己抗原を提示することによって寛容性を誘導した脾臓DCの小さいサブセットを同定した(Puglieseら、2001年)。全体的に見て、LSECは、寛容性誘導の目的でβ細胞抗原を提示するのに望ましい細胞型のようである。
【0077】
また、DC−SIGNおよびL−SIGNの両方とも、多くのウイルス、例えばHIV(Bashirovaら、2001年、Pohlmannら、2001年)、HCV(Gardnerら、2003年)、エボラ(Alvarezら、2002年、Simmonsら、2003年)、SARS(Jeffersら、2004年)、CMV(Halaryら、2002年)、およびシンドビス(Klimstraら、2003年)に結合することが示されている。これらの受容体は、HIVおよびHCVの接着点として、これらを他の細胞、例えばT細胞へ途中で伝播して作用するが(Bashirovaら、2001年、Pohlmannら、2001年、Cormierら、2004年)、これらはまた、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビスウイルスに結合し、これらよる受容体発現細胞への侵入および感染を許す。また、DC−SIGNおよびL−SIGNの両方とも、ヒト結核菌を含むミコバクテリウム属の細菌性病原体(Geijtenbeekら、2003年、Koppelら、2004年)、ならびにマンソン住血吸虫等の寄生生物(Van Liemptら、2004年)による感染のための受容体として働く。
【0078】
したがって、別の実施形態において、本開示の抗体を利用して、DC−SIGNおよび/またはL−SIGNに結合し、それによって、HIV、HCV、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビス等のウイルス、ヒト結核菌およびウシ結核菌を含むミコバクテリウム属の細菌性病原体、ならびにマンソン住血吸虫等の寄生生物を含むがこれらに限定されない感染性作用物質の結合、感染、および伝播をブロックすることができる。
【0079】
本開示のDC−SIGNRに対する抗体はまた、DC−SIGNR発現に関連する腫瘍型の、通法の診断法として利用することもできる。例えば、免疫受容体のアップレギュレーションは免疫系による圧力下でのみ起こると予測されるので、癌試料におけるDC−SIGNRのアップレギュレーションを、癌が免疫系に曝露されるようになったかどうかを評価するための診断手段の基礎として利用することができた。免疫組織化学および/またはFACS解析を含む、当業者に公知の方法を用いて、腫瘍生検をDC−SIGNRに対する抗体に曝露し、次いで、DC−SIGNR発現に関連する癌の指標である、結合した抗体の存在について解析してもよい。いくつかの実施形態において、抗体は、DC−SIGNRを発現する癌の存在を決定するための診断キットの一部として提供されてもよい。
【0080】
本開示のDC−SIGNRに対する抗体はまた、癌治療のための治療術として利用することもできる。一実施形態において、本開示の抗体は、腫瘍細胞のADCC(抗体依存性細胞毒性)またはCDC(補体依存性細胞毒性)を誘導し、それによって前記細胞を死滅させる。
【0081】
本抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを利用して、癌性細胞をインビボで死滅させるか、または除去することもできる。これは、細胞毒性薬物に結合した抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを、かかる処置を必要とする被験体に投与することを含む。抗体または抗体/ペプチドコンストラクトは癌細胞を認識するので、抗体または抗体/ペプチドコンストラクトが結合している任意のかかる細胞が、破壊される。
【0082】
本開示の抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを用いて、種々の細胞毒性化合物を送達することができる。任意の細胞毒性化合物を本抗体または抗体/ペプチドコンストラクトに融合させることができる。融合は、化学的または遺伝学的に(例えば、単一の融合分子としての発現によって)達成することができる。細胞毒性化合物は、ポリペプチド等の生物学的、または小さい分子であり得る。当業者が認めるように、小さい分子については化学的融合が用いられるが、生物学的化合物については、化学的または遺伝学的融合のいずれかを使用することができる。
【0083】
本開示の抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを用いて、治療薬;放射線を放射する化合物;植物、真菌、または細菌由来の分子;生物学的タンパク質;およびそれらの混合物を含む、種々の細胞毒性薬物を送達することができる。細胞毒性薬物は、例えば短距離高エネルギーα−放射体を含む、短距離放射線放射体等の、細胞内で作用する細胞毒性薬物であってもよい。酵素的に活性のある毒素およびその断片は、例えば、ジフテリア毒素A断片、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サクリン、ある種のシナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ある種のジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAP、PAPIIおよびPAP−S)、モロディカカランチア(Morodica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、マイトジリン、レストリクトシン、フェノマイシン、およびエノマイシンによって例示される。免疫毒素の、酵素的に活性のあるポリペプチドの調製のための手順は、参照によって本明細書中に援用される、国際公開第84/03508号および国際公開第85/03508号に記載されている。ある種の細胞毒性部分は、例えば、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキサート、ネオカルチノスタチン、および白金に由来する。
【0084】
抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを細胞毒性作用物質と複合化する手順は、これまでに記載されている。
【0085】
あるいは、本開示の抗体または抗体/ペプチドコンストラクトを、腫瘍部位に局在すると数細胞直径を死滅させる、高エネルギー放射線放射体、例えば、γ−放射体である131I等の放射性同位元素に、結合してもよい。例えば、参照によって本明細書中に援用される、S. E. Order、「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy、R. W. Baldwinら(編)、303〜316頁(Academic Press、1985年)を参照のこと。他の適した放射性同位元素としては、212Bi、213Bi、および211At等のα−放射体、ならびに186Reおよび90Y等のβ−放射体が挙げられる。前立腺癌は比較的放射線感受性の腫瘍なので、放射線治療は、前立腺癌に関連して、特に効果的であると期待される。
【0086】
別の実施形態において、L−SIGNに結合すること、およびL−SIGN発現癌細胞を通した免疫系の負の調節を防ぐことによって、本開示のL−SIGNに対する抗体を、腫瘍を治療するための治療術として利用することができる。この負の調節を防ぐことによって、免疫系が進行して癌細胞を根絶することができる。
【0087】
上述の治療の効能は、異種移植モデルを含む、当業者に公知の方法を利用して確認することができる。
【0088】
癌治療術として利用される、本開示によるL−SIGNに対する抗体はまた、癌ワクチン、抗CTLA−4、抗CD25またはシクロホスファミド等の任意の他の免疫調節療法と組み合わせて、癌の治療において、治療効能の増大を達成することができる。
【0089】
本開示によるL−SIGNに対する抗体をいくつかの実施形態において用いて、L−SIGNを発現していない細胞が含まれる細胞の混合物中で見られる、L−SIGN発現細胞を単離することもできる。例えば、類洞内皮細胞、赤血球、クップファー細胞および他の少数の細胞集団の混合物を含むヒト非実質性肝細胞は、商業的供給源から容易に得ることができる。ヒト非実質性肝細胞から、L−SIGN発現細胞、すなわち肝類洞細胞を単離するために、赤血球を、赤血球の溶解を生じる塩化アンモニウム等の作用物質に曝露することができる。ミルテニーバイオテク(ドイツ)によって販売されているものを含む市販の死細胞除去キットを用いて、死細胞を除くことができる。残りの細胞を計数し、抗L−SIGN抗体で標識することができる。細胞を洗浄した後、それらを適切なバッファーに再懸濁し、残りの細胞を、いくつかの場合においてビーズまたは同様の分離媒体に複合化してもよい抗L−SIGN抗体に曝露することによって、目的の細胞、すなわちL−SIGN発現細胞を単離することができる。市販の分離媒体およびそれらの使用の方法は当業者に公知であり、ミルテニーからの市販のビーズを含む。いくつかの特に有用な実施形態において、製造業者の使用説明書(ミルテニー)に従って、抗L−SIGN複合ビーズ、例えば抗マウスIgG複合ビーズを用いることによって、L−SIGN発現細胞を、L−SIGNを発現していない細胞から単離することができる。抗L−SIGN抗体に結合している細胞はL−SIGN発現細胞であり、それによって、L−SIGNを発現していない残りの細胞から単離される。一旦残りの細胞から単離されると、L−SIGN発現細胞は、当業者に容易に知られている方法を用いて抗L−SIGN抗体から除去することができる。単離の質は、CD54、マンノース受容体、LYVE−1、CD40、アシアロ糖タンパク質および他のもの等の分子に対する一団の抗体を用いたFACS解析を含む、当業者に公知の方法によってモニタリングすることができる。
【0090】
そのさらなる好ましい態様および実施形態を含む、本方法の実際は、例示のためのみに提示される以下の実施例から、より深く理解され、決して限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
抗mSIGNR1抗体を得ること
ファージディスプレイ技術を用いて、mSIGNR1を認識する一団の単鎖抗体(scFv)を同定した。scFvは、リンカーによって連結された、可変軽鎖領域および可変重鎖領域を含む。それらの短い長さによって、これらの抗体断片が、抗原結合に非常に適するようになり、受容体への結合能力が保存される。ウサギを組み換えmSIGNR1で免疫し、その開示が参照によって本明細書中に援用される、2002年6月13日に公開された国際出願公開第02/46436A2号に記載されている、ファージディスプレイベクターpRL4を用いて、scFv抗体ライブラリーを構築した。このシステムにおける抗体断片は、ファージの遺伝子IIIコートタンパク質上に提示される。mSIGNR1を認識する抗体を、組み換えmSIGNR1の4回の固相パニングによって単離した。6つの異なる抗体を同定した。これら6つの抗体のアミノ酸配列を、図2AおよびBに示す(それぞれ配列番号1〜6および7〜12)。すべての抗体は、固相ELISAにおいてmSIGNR1を認識し、ヒトDC−SIGNのマウスホモログであるmDC−SIGNとの交差反応性は観察されなかった。抗体を、HAおよびHISでエピトープタグした。mSIGNR1およびDC−SIGNHISの両方とも、3T3 EBNA細胞によって生成し、ニッケルカラムで精製した。
【0092】
(実施例2)
細胞表面受容体への結合のときに内在化される抗mSIGNR1抗体を同定すること
mSIGNR1を発現している細胞系のスクリーニング
一団のマウスマクロファージ細胞系(P388D1、1−13.35、WEHI−3およびJ774)を、標準的な方法によるRT−PCRによって、mSIGNR1の発現についてスクリーニングする。mSIGNR1 GenBank配列に基づいてプライマーを設計し、これらをマウス器官のRT−PCRにおいて使用した。mRNAレベルでmSIGNR1を発現している細胞系を同定し、FACS解析によって表面発現を確認する。5×10個の細胞を、1%BSAおよび0.1%NaNを含むPBS中の1μgの抗mSIGNR1抗体とともに、氷上で15分間、抗体内在化を可能にしない条件でインキュベートした。1%BSAおよび0.1%NaNを含むPBSでの2回の洗浄の後、結合した抗mSIGNR1を、ビオチン化抗HA(ロシュ)とそれに続くPE複合ストレプトアビジン(ベクトンディッキンソン)によって検出し、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン、カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いて細胞を解析する。あるいは、肝類洞内皮細胞等の、mSIGNR1を発現することが知られている初代細胞で内在化を決定する。LSECでのmSIGNR1の発現もまた、上述のようにFACSによって確認することができるが、1反応あたり1×10個の細胞のみを加える。
【0093】
内在化の測定
一旦mSIGNR1発現細胞系または初代細胞型を同定すると、FACS解析によって抗体の一団の内在化を評価する。内在化がmSIGNR1結合に基づくことを示すために、JAWS1マウス樹状細胞等の、mSIGNR1を発現しない細胞系を含める。インタクトおよび透過化細胞でのビオチン化抗HA抗体とそれに続くPE複合ストレプトアビジンを用いた抗mSIGNR1検出を、抗DEC−205抗体について記載されているように比較する(Mahnkeら、2000年)。細胞系について1.5×10個の細胞、または初代細胞について3×10個の細胞を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS中の3μgのmSIGNR1とともに20分間4℃でインキュベートし、内在化なしに抗体を表面に結合させる。4℃で1%BSAを含むPBSでの2回の洗浄によって、結合していない抗体を除去する。各試料を3つに分割する。3分の1を4%パラホルムアルデヒドで固定し、表面抗体を上述のように検出する。他方の3分の2をさらに37℃で30分間インキュベートし、固定する前に内在化を可能にする。2分の1を抗HAおよびストレプトアビジンで直接検出し、残りの半分を、細胞を0.1%(体積/重量)サポニン(シグマ−アルドリッチ)を含むPBSとともにインキュベートすることによって透過化する。内在化した抗体の量を、固定した細胞中の平均蛍光を固定および透過化した細胞で記録したものから引くことによって計算する。30分以内に最も高いパーセンテージの内在化のあった抗体を、ペプチドを抗体に連結させるさらなる研究のために選択する。既存の、関連のないウサギscFvを陰性対照として使用し、mSIGNR1に結合することが最近示された市販のER−TR9抗体(Geijtenbeekら、2002年)を陽性対照として使用する。また、ER−TR9のFab断片を、パパイン消化によって生成し、内在化について試験して、二量体化が内在化の要件でないことを実証する。所望される場合、scFvをFab’2またはIgGに転換してもよい。
【0094】
代替的な実施形態において、mSIGNR1ライブラリーを、James D. Marksのグループによって記載されているように、内在化抗体についてパニングする(Poulら、2000年)。この実施形態に適したプロセスについて、以下で概略を述べる。
【0095】
mSIGNR1ファージライブラリーからの内在化抗体の選択
上述のように、mSIGNR1を発現すると同定された5×10個の細胞を、表面上で遺伝子3タンパク質に融合した抗体断片を提示するmSIGNR1ライブラリーからのファージの1×1012個のコロニー形成単位とともに、1.5時間、4℃でインキュベートして、内在化なしにファージの結合を可能にする。ファージ結合の後、リン酸緩衝生理食塩水で細胞を5回洗浄して、非特異的に、または弱く結合しているファージを除去する。次いで、細胞を37℃で15分間インキュベートして、表面結合ファージのエンドサイトーシスを可能にするが、細胞内でのファージ分解は避ける。細胞表面に結合したファージを除去するために、低pHグリシンバッファーで3回洗浄することによって、細胞を取り除く。次いで細胞をトリプシン化し、PBSで洗浄した後、高pHトリエチルアミンで溶解させる。ファージを含む細胞溶解物を用いて大腸菌(E.coli)を感染させ、次の回の選択のためのファージを調製する。合計3回の選択を行う。細胞表面に結合したファージの力価(最初の低pHグリシン洗浄において見られる)および細胞内から回収されたファージの数を、各回についてモニタリングする。エンドサイトーシスされたファージの数の増大は、内在化ファージ抗体の選択の成功を示す。
【0096】
内在化scFv抗体断片のいずれかがmSIGNR1に結合したかどうかを判定するために、3回目の500個のクローンを、ロボットQpix(ジェネティクス)システムを用いて選択し、HiGrowシェイカー(ジーンマシーンズ)において、SB培地中、96ウェルディッシュ中で一晩増殖させる。翌日、ディッシュの回転速度を下げ、ロボットGenesisフリーダム200(テカン)システムを用いた固相mSIGNR1 ELISAにおいて、上清を試験する。96ウェルELISAプレートを、1μgのmSIGNR1/ml PBSで、4℃で一晩コートする。翌日、プレートを1%BSAによってブロックし、それに続いて、0.05%Tweenを含むPBSで3回洗浄する。対照プレートを1%BSAでコートする。抗体を含む上清を、1%BSAを含むPBS中0.05〜5μg/mlの間の濃度で、mSIGNR1またはBSAのみのウェルに加える。シェイカー上、室温で2時間の後、プレートを、0.05%Tweenを含むPBSで3回洗浄する。結合したscFvの検出のために、抗HA抗体(12CA5マウス腹水、ストラテジックバイオソリューションズ、デラウェア州)を、1%BSAを含むPBS中、1:1,000希釈で加える。シェイカー上、室温で2時間の後、プレートを再び洗浄し、アルカリホスファターゼ複合抗マウスIgG(シグマ)を2時間にわたって加える。3回のさらなる洗浄の後、シグマ104(登録商標)基質を用いて、結合した抗体を検出する。ELSAプレートリーダー(モレキュラーデバイス)を用い、OD405で、種々の時点でプレートを読み取る。
【0097】
ELISAにおいて陽性のシグナルを示すクローンは、制限酵素消化パターンによって特徴付けられる。キアゲンのミニプレップキットを用いて、DNAを単離する。2μgのDNAを、5UのEcoRIIで2時間、37℃で消化し、次いで試料を4%NuSieveアガロースゲル上に流す。パターンを比較し、少量(約100〜300μg)で配列を精製する。scFvを細菌の細胞膜周辺腔に適切に集合させ、分泌させる。scFvは、上清または細胞膜周辺腔のいずれかから単離してもよい。クローンを4リットルのSB中で、0.8のOD600まで増殖させ、1mMイソプロピル−p−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で、3〜4時間30℃で誘導して、最適な量のscFvを生成する。細胞膜周辺腔から単鎖抗体を単離するために、細胞ペレットを、Complete Mini(ロシュ)プロテアーゼインヒビターを添加した冷PBSに再懸濁し、ソニックスVibra−cell VC750で音波破砕する。細胞残屑をペレット化し、Akta FPLC(ファルマシア)を用いて上清をキアゲンNi−NTAカラムにアプライする。抗体をイミダゾールで溶出する。この方法は、一般に、約100〜300μgの精製抗体/リットルを生じる。内毒素を、一般にLAL試験(バイオウィッタカーから市販されているアッセイ)によって測定して10U/ml未満の内毒素を含む抗体調製物を生じる、Sartorius QI5フィルターを通したろ過によって除去する。抗体を、内在化について上述のように再び解析し、固相ELISAにおいて、組み換えmSIGNR1への結合について解析する。30分以内の内在化のパーセンテージが最も高い抗体および固相ELISAにおけるよいシグナル(1μg/mlで1時間後に>10D)を選択して、ペプチド−抗体コンストラクトを作製する。
【0098】
(実施例3)
GADペプチドを抗体に結合させる
ベクターおよびクローニング戦略
最良の、細菌によって生成されるscFvの同定の後に、哺乳動物発現系への転換を行う。哺乳動物発現によって、ペプチドの適切な二次修飾、および内毒素を含まない生成が可能になる。図3に示されるような、適合性のある制限酵素認識部位を有するベクター(例えば、その開示が参照によって本明細書中に援用される米国特許第6355245号に記載されている)を用いる。pRL4(上述)中の、目的の抗体由来のDNAを、Sfiで切断し、CMVプロモーターおよび哺乳動物抗体リーダー配列を含むApex 3Pベクターに挿入する。目的のペプチドをコードするヌクレオチドを挿入するために、抗体配列内に含まれない、入手可能な部位(MCS=NaeI、FseI、XbaI、EcoRI、PstI、EcoRV、BSABI、BstXI、NotI、BsrBI、Xho、PbvIOI、SphI、NsiI、XbaI)から、制限酵素認識部位を選択する。ペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを、両端に適切な制限酵素認識部位を有するオペロンによって合成し、T4 DNAリガーゼを用いて挿入する。得られるコンストラクトは、scFvと、それに続く、選択される制限酵素によって決定されるスペーサーと、それに続くペプチドおよびHIS−タグを含む(図3)。標準的な技術を用いて配列を確認した後、抗体産生のために、DNAを393EBNA細胞にトランスフェクトする。
【0099】
ペプチドの選択
公知の糖尿病自己抗原のペプチドであるインスリン、hspならびにGAD65および67のいずれも、本明細書中に記載される方法において用いることができることが理解されるべきであるが、以下の実験のために、ペプチドとしてGADを選択する。GAD反応性T細胞は、NODマウスにおいて検出された最初の自己反応性T細胞であり(Tischら、1993年、Kaufmanら、1993年)、疾患過程において重要であることが示されている。さらに、ヒトおよびマウスGADは95%相同である。脾臓NOD T細胞によって認識されるエピトープは、広範に特徴付けされており(Kaufmanら、1993年、Tischら、1999年、Zechelら、1998年)、多くの免疫優性ペプチドがNODマウスおよびT1DM患者において類似しており、インビトロT細胞アッセイにおいて交換可能に使用されている(Kaufmanら、1993年)。NODマウスにおける初期免疫応答を、GAD65のカルボキシ末端領域中の定義された領域(ペプチド509〜528、ペプチド524〜543)に対して導く(Kaufmanら、1993年)。後に、T細胞応答を、200〜300の間の他の領域ならびに他の自己抗原に対しても導く。早期のCD4 GAD65 T細胞エピトープ、ペプチド524〜543(SRLSKVAPVIKARMMEYGGT(配列番号13)、マウスおよびヒトにおいて同じ配列)ならびに後期に生じるマウスGAD65エピトープ、ペプチド247〜266(NMYAMLIARYKMFPEVKEKG(配列番号14)、下線を引いたヒトとマウスとの間で1アミノ酸の差)、およびペプチド290〜309(ALGIGTDSVILIKCDERGK(配列番号15)、マウスおよびヒトにおいて同じ配列)の2つを、本実験におけるペプチドとしての使用のために選択する。3つすべてのエピトープは、NOD脾細胞において、自発的増殖応答を誘導することができる。さらに、ペプチド247〜266および290〜309でのペプチド免疫は、NODマウスにおいて糖尿病発症を遅らせることが示されている(Maら、1997年、Tischら、1999年、Zechelら、1998年)。CD4 T細胞エピトープに加えて、CD8 T細胞エピトープに対する寛容性もまた、重要であると報告されている(Quinnら、2001年、Bercoviciら、2000年)。陰性対照として、鶏卵リゾチームペプチド116〜1 24(KGTDVQAWI(配列番号16)で、抗体コンストラクト作製する。次いで、これらのインビトロ研究からの最も効果的なペプチドを種々の組合せで抗体コンストラクトと連結し、NOD糖尿病モデルにおいて試験する。
【0100】
(実施例4)
抗体−ペプチドコンストラクト生成および精製
T細胞実験のために、およそ300μgの各抗体コンストラクトを、EBNA293ヒト胎児腎臓細胞において生成する。細胞を、10%FCS、2mMグルタミンおよび250U/ml G418(シグマ)を含むDMEM中で増殖させる。製造業者の使用説明書に従って、キアゲンのEffectin試薬を用いて、TI75フラスコ中の細胞をDNAでトランスフェクトする。3日後、培地を、血清を含まない培地に交換する。4日目および8日目に上清を回収し、細胞残屑を遠心分離によって除去し、Akta−FPLCを用いて、澄ませた上清をNiカラムにロードする。抗体をイミダゾールで溶出させ、PBS中に透析し、1μgをSDSゲル上に流すことによって正しいサイズを実証する。
【0101】
(実施例5)
ペプチド提示を生じるLSECによる抗体−ペプチドコンストラクトの内在化、およびT細胞に対するこの提示の効果
ペプチド−抗体コンストラクトで、肝類洞細胞をインビトロで標的とし、これらの細胞が、若いNODまたはBalb lcマウス由来のT細胞において表現型変化を誘導することができるかどうかを決定する。
【0102】
マウス類洞内皮細胞の単離
3週齢のNODまたは4〜6週齢のBalb/cマウスから、肝類洞内皮細胞を単離する。Kretz−Rommelによって記載されているように、まずEGTAでの門脈かん流によってカルシウムをキレート化し、細胞−細胞接触を緩め、それに続いてハンクスバッファー中0.05%コラゲナーゼAでのかん流によって細胞間マトリックスを分解することによって、細胞を得る(Kretz−RommelおよびBoelsterli、1995年)。かん流した肝臓をマウスから取り除き、屈曲鉗子で穏やかに作業する。得られた粗細胞懸濁液を、一連の金属製ふるい(30、50、80メッシュ)を通してろ過して、より大きい組織断片を除去する。メトリザマイド勾配上(1.089g/cm3)で密度勾配遠心分離法によって実質性細胞から類洞細胞を分離し、それに続く2回の洗浄工程によって細胞残屑を除去する(3Knolleら、1999年)。この時点で、クップファー細胞および肝類洞細胞の混合物が得られる。クップファー細胞を認識するが肝類洞細胞を認識しないF4/80抗体を用いてクップファー細胞を肝類洞内皮細胞と区別することができるので、FACS実験のためにこれは十分である。しかしながら、T細胞およびペプチドとの共培養実験のために、細胞をPE−複合F4/80(BDファーミンゲン)での標識、それに続くミルテニーの抗PEマイクロビーズ、ならびに製造業者の使用説明書に従ってMACSカラムおよび分離器を用いた標識細胞の磁気分離によって、クップファー細胞を除去する。残りの細胞集団を、10%ウシ胎仔血清および2%グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、96ウェル組織プレートに播種する。抗mSIGNR1および抗F4/80を用いた表面マーカーについてのFACS染色によって、単離の3日後に細胞集団の純度を調査する。クップファー細胞上にはmSIGNR1がない(Geijtenbeekら、2002年)。90%の純度は、実験を続けるのに十分であると考えられる。1実験あたり2つのマウス肝臓を用い、期待される収量は約2×10個の細胞である(KnookおよびSleyster、1976年、マウスについて推定する)。
【0103】
T細胞表現型アッセイ
T細胞アッセイは、ペプチド−抗体コンストラクトが、肝類洞内皮細胞によるペプチドの提示を生じるかどうか、およびペプチド提示がT細胞の表現型変化を誘導することができるかどうかを示す。肝類洞内皮細胞を、平底マイクロタイタープレート中、1×10個の細胞/ウェルの密度で培養する。類洞細胞を3日間維持した後、3週齢および8週齢のNODマウスまたは4〜6週齢のBalb/cマウスから、CD4+T細胞を上述のように精製し、10または10個の細胞/ウェルで加える。また、0.1〜5pg/ウェルの濃度の各抗体−ペプチドコンストラクトを加える。陽性対照として、各GADおよび対照ペプチドのみを含める。SynPep(ダブリン、カリフォルニア州)によってペプチドを合成する。陰性対照ウェルは、T細胞単独、または肝類洞細胞単独を含む。
【0104】
LSECによるT細胞へのペプチド提示の、4つの可能性のある結果がある。1)TGF−Pおよび/もしくはIL−10およびIL−4の産生またはCD4+CD25+CD62Lの発現によって特徴付けられる、調節性T細胞の誘導、2)T細胞の欠失または3)完全に欠くことまたは応答。4)寛容性を誘導する代わりに、ペプチド提示が、IL−2を産生するTh1細胞の刺激を生じることもまた考えられる。これらの可能性を区別するために、培養物上清(それぞれ100pl)を24および48時間で回収し、後述するようにサイトカイン産生についてアッセイする。3週齢のT細胞応答を、8週齢のNODマウスのもの、ならびにGADに対して自発的応答を示さないBalb/cマウス由来のT細胞と比較する。アッセイを三連で組み立て、2回繰り返す。T細胞の混合物を用いるので、上清中のサイトカイン応答は、容易に見ることができないであろう。しかしながら、細胞の混合物はインビボの状態を反映し、全脾細胞を用いてGAD特異的T細胞応答が見られる(Tischら、1993年)。
【0105】
調節性T細胞の誘導についてのより感度の高い測定として、培養物中で3日後に、FACS解析によって、CD25、CD4およびCD62L等(LafailleおよびLafaille、2002年)の典型的な表面マーカーの発現について細胞を評価する。すべての試薬は、BD−ファーミンゲンから入手可能である。また、FACSによってIL−4産生を解析する。後述されるようなLSEC/ペプチド露出T細胞の潜在的な免疫調節特性の機能的試験は、本システムにおける寛容性誘導についての最終的な試験である。製造業者の使用説明書に従ってロシュの細胞死ELISAキットを用いて、細胞死を誘導する、LSECによって提示されるペプチドの可能性を、培養物上清中で評価する。
【0106】
脾細胞およびCD4+T細胞の単離
当業者の認識範囲内の技術を用いて、Balb/cマウスのNODからの脾臓を無菌環境で取り除き、PBSに入れる。18〜21標準規格注射針を用いて細胞を分離させ、より大きい片を沈下させる。上清を除去し、200gで7分間遠心分離する。脾臓1つあたり5mlの0.83%NHClを用いて赤血球を溶解させる。PBS中で細胞を2回洗浄し、次いで培地中に再懸濁する。ある種の実験のためには、全脾細胞を用いる。他の実験のためには、製造業者の使用説明書に従ってミルテニー(カリフォルニア州オーバーン)のCD4+T細胞単離キットを用いてCD4+T細胞を単離する。種々の細胞集団の磁気単離は、当業者の認識範囲内である。ある方法において、単離は、CD8a、CDI 1b、CD45R、DX5およびTer−1 19に対するビオチン複合モノクローナル抗体のカクテルを用いた非CD4+T細胞の枯渇に基づく。単離した集団の純度を、FITC複合抗CD4、PE複合抗CD8、APC複合抗CD11bおよびcy−5複合CD45R(すべてイーバイオサイエンス、カリフォルニア州サンディエゴ)の混合物の染色によって評価する。期待される純度は90〜95%で、70%の収率である。マウス脾臓から少なくとも1×10個の細胞を得ることができ、約25%の脾細胞がCD4+であり、175個の96ウェルマイクロタイタープレートウェルに十分な、約1.75×10個の細胞を得ることができる。
【0107】
サイトカイン産生の測定
T細胞/LSEC共培養物の上清中のIL−10、TGF−P、IFN−γ、IL−4およびIL−2の存在を、記載されているように、標準的なサンドイッチELISAによって測定する(Kretz−RommelおよびRubin、1997年)。すべての抗体対は、BDファーミンゲンから入手可能である。サイトカイン捕捉抗体をPBS中4℃で一晩、プレート上にコートする。PBS/0.05%Tweenでの3回の洗浄の後、培養物上清および標準曲線のマウス組み換えサイトカインを加え、シェイカー上、室温で2時間インキュベートする。プレートを再び洗浄し、結合しているサイトカインをアルカリホスファターゼ複合抗サイトカイン抗体で検出する。3回の洗浄の後、シグマ104(商標)基質を加え、ELISAプレートリーダー(モレキュラーデバイス)を用いて、種々の時点で、OD405でプレートを読み取る。
【0108】
(実施例6)
LSEC上に提示されたGADペプチドに曝露したT細胞が、それに続いて、GADを提示するプロフェッショナルAPCによって自己反応性T細胞の活性化を防ぐことができるかどうかを評価する
さらなる実験において、肝類洞内皮細胞上のペプチドに3日間曝露したT細胞が、脾臓のプロフェッショナルAPC上に提示されるペプチドによって、自己反応性T細胞の活性化を負に調節できるかどうかを試験する。インビトロでの調節特性を有するT細胞の誘導の実行可能性は、多くの研究室によって示されている(Wakkachら、2001年、Barratら、2002年、ThortonおよびShevach、1998年)。免疫抑制特性は、調節性T細胞を、免疫刺激が通常観察される培養系に加えることによって、試験することができる。APCおよびT細胞の両方を含む7週齢のNODマウス由来の脾細胞に、GADペプチドを加えることによって、強力な増殖性応答によって見られるような、かかる免疫刺激系が提供される。調節性T細胞の添加は、この応答を排除する。10または10個の脾細胞を、LSECおよびペプチド結合抗体に曝露したT細胞を含むウェル1つあたり0.1、1、または10μmのペプチドとともに加える。対照ウェルは、脾細胞を、ペプチド単独およびLSEC+T細胞単独とともに含む。さらに、推定されるT細胞による増殖の有意な寄与を排除するために、対照ウェルはまた、照射を受けた脾細胞(600RAD、Joe AguileraによるUCSD放射サービス施設で行う)ならびにLSECおよびペプチド−抗体コンストラクトに以前に曝露したT細胞も含む。照射を受けた脾細胞は、抗原を提示することができるが、増殖しない。72時間の培養期間の最後の16時間の間に、1μCiH−チミジンを各ウェルに加えて、新たに合成されたDNAを増殖の読み出しとして標識する。パッカードのUniversal Cell Harvesterを用いて細胞を採取し、Topcount(パッカード)を用いて、取り込まれたH−チミジンを評価する。脾細胞、および以前にLSEC+ペプチドに曝露したT細胞を含む培養物中のH−チミジンの取り込みが、脾細胞培養物と比較して低下する場合、T細胞は、調節特性でうまく誘導されている。ペプチド複合抗mSIGNR1抗体がNODマウスにおいて、調節性T細胞を誘導できるかどうか、および疾患を停止できるかどうかもまた、試験する。
【0109】
(実施例7)
組み換えファージ技術を用いて、マウス抗ヒトL−SIGN抗体を同定した。組み換えヒトL−SIGNで免疫したマウスの重鎖および軽鎖の組合せ由来のマウスライブラリー(IgG1kおよびIgG2ak)を、内容が参照によって本明細書中に援用される、国際公開第03/025202号に開示される方法によって調製した。一旦調製すると、ライブラリーをまずヒトDC−SIGNに関してパニングして、DC−SIGNと交差反応性のある抗体を除去した。結合していない上清を、L−SIGNと独特に反応性のあるクローンを選択するために使用した。2つのライブラリー(IgG1およびIgG2a)のそれぞれについて合計95個のコロニー(36/回)を誘導し、抗体産生、およびL−SIGNとのそれらの反応性を、捕捉ELISAによって決定した。簡潔に述べると、抗ヒトFc(カルタグ)を、500ng/mlで一晩ELISAプレート上にコートした。1%BSAを含むPBSでプレートをブロックし、それに続いて組み換えL−SIGNを2μg/mlで加えた。プレートをPBSで洗浄した後、上清を加えた。室温で12時間のインキュベーションの後、プレートを3回洗浄し、アルカリ−ホスファターゼ複合抗Fab抗体を2時間加えた。SigmaS基質を加えた後のシグナルを、ELISAリーダー(モレキュラーデバイス)を用いて評価した。
【0110】
クローンの大部分は、ファージ上の抗体の良好な結合(OD405>1.0)を示した。IgG1およびIgG2aライブラリーの両方由来のいくつかのクローンは、ヒトL−SIGNとの陽性の反応性を示した。結果を図4および5に示す。図4は、ヒトL−SIGNとのIgG1クローンを示す。図5は、ヒトL−SIGNとのIgG2aクローンの反応性を示す。
【0111】
(実施例8)
ヒトL−SIGNと独特に反応性のあるクローンを同定するために、バックグラウンドよりもOD値が5倍大きい実施例7のすべてのクローンを選択して、ELISAによって、ヒトDC−SIGNとのそれらの反応性を試験した。抗ヒトFc(カルタグ)を、500ng/mlで一晩ELISAプレート上にコートした。1%BSAを含むPBSでプレートをブロックし、それに続いて組み換えDC−SIGNを2μg/mlで加えた。プレートをPBSで洗浄した後、上清を加えた。室温で12時間のインキュベーションの後、プレートを3回洗浄し、アルカリ−ホスファターゼ複合抗Fab抗体を2時間加えた。SigmaS基質を加えた後のシグナルを、ELISAリーダー(モレキュラーデバイス)を用いて評価した。
【0112】
IgG1ライブラリー由来の10個のクローンおよびIgG2aライブラリー由来の3つのクローンが、ヒトL−SIGNと独特に反応性があることがわかった(DC−SIGNに対して5〜10倍高いOD値)。結果を図6および7に示す。図6は、L−SIGNおよびDC−SIGNとの、IgG1陽性クローンの反応性を示す。図7は、L−SIGNおよびDC−SIGNとの、IgG2aクローンの反応性を示す。
【0113】
(実施例9)
ヒトL−SIGNとのみ反応性があると同定された13個のクローン、ならびに実施例8で上記のように同定された、L−SIGNおよびDC−SIGNの両方と強力な反応性のある9つのクローンを配列決定して、独特のクローンの数を決定した。配列決定は、当業者に公知の技術によって決定した。これらのクローンの配列を図8および9に示す。重鎖クローンの配列を図8A〜8Cに示す(配列番号17〜36)。軽鎖クローンの配列を図9A〜9Bに示す(配列番号37〜55)。
【0114】
配列決定の結果から、軽鎖と比較して、より多様なグループの重鎖が示された。抗体クローンの多様性はまた、異なる軽鎖と同じ重鎖との交差対形成によって増強された。L−SIGNと反応性のある合計5個の独特のクローンを同定し、それらのアミノ酸配列の類似性に基づいてクローンを分類した(下記の表1参照)。
【0115】
(表1)
アミノ酸配列類似性に基づく、ヒトL−SIGNと反応性のある抗体クローンの分類
【0116】
【表1】

L−SIGNとのみ反応性のある抗体クローン
L−SIGNおよびDC−SIGNの両方と反応性のある抗体クローン
2.1〜2.3は、類似した軽鎖だが独特の重鎖を示す
L−SIGNおよびDC−SIGNでの配列決定のために選択したクローンの反応性(OD値)を、下記で表2に示す。
【0117】
(表2)
【0118】
【表2】

=L−SIGNおよびDC−SIGNでの配列決定のために選択したクローン
図8に示すように、ヒトDC−SIGNRに結合する抗体の重鎖CDR3領域は、以下のアミノ酸配列
【0119】
【化1】

の1つを有することがわかった。図9に示されるように、抗体のDC−SIGNRに結合する抗体の軽鎖CDR3領域は、以下のアミノ酸配列
【0120】
【化2】

の1つを有することがわかった。
【0121】
(実施例10)
実施例7で上述された手順を利用して、上述の実施例7のさらなるクローンを、それらがL−SIGNに結合する能力について調べた。当業者に公知の技術によって、配列決定を決定した。これらのさらなるクローンの配列を、図10に示す(配列番号63〜82)。図10に示されるように、ヒトDC−SIGNRに結合する抗体の、5つのさらなる重鎖CDR3領域は、以下のアミノ酸配列
【0122】
【化3】

の1つを有することがわかった。ヒトDC−SIGNRに結合するこれらのクローンのCDR2領域は、以下のアミノ酸配列
【0123】
【化4】

の1つを有することがわかった。
【0124】
表3は、L−SIGNを発現する細胞との反応性に基づいて選択した、さらなるIgG1k抗体クローンを示す。
【0125】
(表3)
【0126】
【表3】

以下の表4は、さらなるIgG1k抗体クローンの、LSIGNを発現する細胞(幾何平均蛍光)ならびに組み換えL−SIGNおよびDC−SIGNタンパク質(OD値)との反応性を示す。
【0127】
(表4)
【0128】
【表4】

図11に示されるように、ヒトDC−SIGNRに結合するさらなるクローンを同定した(配列番号96〜115)。これらのクローンは、以下のアミノ酸配列
【0129】
【化5】

の1つを有するIgG1k軽鎖CDR3領域を有することがわかった。ヒトDC−SIGNRに結合するこれらのクローンのCDR2領域は、以下のアミノ酸配列
【0130】
【化6】

の1つを有することがわかった。
【0131】
表5は、L−SIGNを発現する細胞との反応性に基づいて選択した、さらなるIgG2ak抗体クローンを示す。
【0132】
(表5)
【0133】
【表5】

これらの配列は停止コドンを含む
表6は、さらなるIgG2ak抗体クローンの、LSIGN(幾何平均蛍光)ならびに組み換えL−SIGNおよびDC−SIGNタンパク質(OD値)を発現する細胞との反応性を示す。
【0134】
(表6)
【0135】
【表6】

図12に示されるように、ヒトDC−SIGNRに結合するさらなる重鎖クローンを同定した(配列番号133〜154)。これらのクローンは、以下のアミノ酸配列
【0136】
【化7】

の1つを有するIgG2ak重鎖CDR3領域を有することがわかった。ヒトDC−SIGNRに結合したこれらのクローンのCDR2領域は、以下のアミノ酸配列
【0137】
【化8】

の1つを有することがわかった。
【0138】
図13に示されるように、ヒトDC−SIGNRに結合するさらなる軽鎖クローンを同定した(配列番号169〜189)。これらのクローンは、以下のアミノ酸配列
【0139】
【化9】

の1つを有するIgG2ak軽鎖CDR3領域を有することがわかった。ヒトDC−SIGNRに結合したこれらのクローンのCDR2領域は、以下のアミノ酸配列
【0140】
【化10】

の1つを有することがわかった。
【0141】
(実施例11)
候補可溶性L−SIGN抗体の、DC−SIGN受容体でなくL−SIGN受容体との、選択的反応性
ファージ−Fabスクリーニング、DNA配列決定(図10および11)に基づいて、L−SIGN受容体を発現する細胞との最もよい反応性を有する6つの抗体(クローン名、C7、D12、E4、E10、G3、G10)(表4)をサブクローニングして、コートIIIタンパク質を除去した。これら6つの候補抗体のそれぞれを発現させ、可溶性Fab部分として精製し、それらが細胞上のL−SIGN受容体を認識するがDC−SIGNを認識しない能力について、再び試験した。図14に示されるように、6つすべての抗体は、L−SIGN受容体との、非常に良好な結合を示したが、3つの抗体(D12、G3およびE10)は、DC−SIGNとも、実質的により低いレベルではあるが反応した。すべての抗体(20ug/ml)を、FACSバッファー(1%BSA、0.1%アジ化合物を含むDPBS)中で、0.5×10個の細胞(K562、K562/DC−SIGN、K562/L−SIGN)とともに、4℃で1時間インキュベートし、FACSバッファーで洗浄し、FACSバッファー中1:50希釈のフィコエリトリン(PE)複合ヤギ抗マウス抗体(ジャクソンイムノリサーチ、ペンシルバニア州ウエストグローブ)とともに、4℃で30分間インキュベートし、洗浄し、1%ホルムアルデヒド中に再懸濁し、BD FACSCalibur(ベクトンディッキンソン、カリフォルニア州マウンテンビュー)で解析した。
【0142】
(実施例12)
L−SIGN抗体の相対的親和性およびエピトープ特性
6つの候補抗体を、L−SIGNタンパク質に対するそれらの親和性、および認識されるエピトープの性質に関して、さらに特徴付けた。図15に示されるように、すべての抗体はL−SIGN受容体とナノモル単位の親和性で反応するが、E10クローンは、ピコモル単位の範囲でも結合を示した。ELISAにおいて、種々の抗体のエピトープ特異性を、L−SIGNFc融合タンパク質と結合するL−SIGN特異的モノクローナル抗体(mab162)と競合させることによって、特徴付けた。図16に示されるように、4つの抗体クローン、C7、D12、G10およびE4は濃度依存的にmab162と競合したが、クローンG3およびE10は競合しなかった。これらのデータは、競合研究でのわずかな違いによって示されるように、クローンC7、D12、G10およびE4が、同じエピトープを共有するか、または重複するエピトープに結合するかのいずれかであることを含意する。6つの抗体によって結合されるエピトープの性質(立体的対線状、単量体対多量体)を特徴付けるために、変性および還元性条件下で調製したK562/L−SIGN細胞の細胞溶解物全体を、SDS−PAGEによって分離し、それぞれの抗体で膜をプローブした。2つの抗体(クローンD12およびE10)は単量体に対応するタンパク質バンドを認識したが、クローンG3は三量体形態の受容体に対応するタンパク質バンドを認識した。これらのデータはまた、クローンD12、E10およびG3によって認識されるエピトープは線状であるが、抗体クローンC7、E4およびG10によって認識されるエピトープは立体的であることを示す。L−SIGN fabによって認識されるエピトープの性質を、ウェスタンブロッティング研究によって描写した。簡潔に述べると、百万個のK562/L−SIGN細胞を、50ulの溶解バッファー(150mM NaCl、25mM Tris、pH7.4、2mM EDTA、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMフッ化ナトリウム、1%Triton X−100、0.5mM PMSF、10μg/mlアプロチニンおよび10μg/mlロイペプチン)で溶解した。4℃で20分間の穏やかな回転によって、溶解を達成した。細胞溶解物を遠心分離(14,000×g、10分間)して、細胞残屑を除去し、1mM DTTを含むSDS試料バッファー中で5分間煮沸した。タンパク質溶解物を4〜15%SDS−PAGE勾配ゲル(バイオ−ラッド番号116−1158)上で分離し、ニトロセルロース膜に移し、次いで、それぞれL−SIGN特異的fab(1μg/ml)でプローブした。タンパク質転移を、予め染色した分子量標準(バイオ−ラッド番号161−0324)でモニタリングした。HRP複合ヤギ抗マウスIgG(バイオ−ラッド番号170−6516)を用いて、増強された化学発光(SuperシグナルWest Picoキット、ピアス、イリノイ州ロックフォード)によって、免疫反応性バンドを検出した。
【0143】
(実施例13)
L−SIGN抗体は、ヒト肝臓非実質性細胞上の受容体に結合すると、内在化を経る
抗原を、免疫寛容を引き起こすことが知られているL−SIGN発現類洞内皮細胞(LSEC)中に送達するために、フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡法によって、抗体の内在化能力を評価した。新しく単離したヒト肝臓非実質性細胞を、6つの候補抗体とともにインキュベートした。図17に示されるように、3つの抗体(C7、E10およびG10)は、2時間のうちに、40パーセントを超える内在化を示した。この内在化のレベルは、統計的に有意であることがわかった(p<0.05)。さらに、抗体内在化はまた、共焦点顕微鏡法研究によって直接確認もした。6つすべての抗体は、90分間のインキュベーションの後、K562/L−SIGN細胞内部に見られたが、本研究で対照として使用したK562/DC−SIGN細胞では、取り込みは観察されなかった。これらの研究から、L−SIGN抗体のすべては内在化することができるが、3つの抗体(クローンC7、E10およびG10)が最も効率的に内在化することが示される。
【0144】
抗体内在化アッセイ−Takahara Kら(International Immunology、2004年)によって記載されているように、アッセイを行った。簡潔に述べると、0.5×10個の細胞(新鮮なヒトLSECまたはK562/L−SIGN)を、20μg/mlのL−SIGN fabとともに、DPBS/1%BSA中4℃で30分間インキュベートし、結合していない抗体を洗い落とし、次いで、37℃でさらに2時間インキュベートして、内在化を可能にした。DPBS/1%BSA/0.1%アジ化合物中、4℃で維持した2組の試料を対照とした。インキュベーション期間の終わりに、細胞を、フィコエリトリン(PE)複合ヤギ抗マウス抗体とともに、DPBS/1%BSA/0.1%アジ化合物中、4℃で30分間インキュベートし、洗浄し、1%ホルムアルデヒド中で固定し、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン)で解析した。
【0145】
共焦点顕微鏡法 10個のK562被形質導入体を、10μg/mlの種々の抗体とともに、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640(ギブコ,ライフテクノロジー、オランダ、ブレダ)中、37℃で90分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄し、PBS/4%パラホルムアルデヒド中で固定し、再び洗浄し、ポリ−L−リシンでコートしたカバーガラスに接着させた(室温で20分間)。細胞をブロッキングバッファー、PBS/3%BSA(シグマケミカルカンパニー、ミズーリ州セントルイス)/10mMグリシン(メルク、ドイツ、ダルムシュタット)/0.1%サポニン(リーデルデハーン、ドイツ、ゼールズ)とともに、室温で1時間インキュベートした。続いて、細胞を、10μg/mlのウサギ抗ヒトCD55(サンタクルスバイオテクノロジー、カリフォルニア州サンタクルス)とともに室温で1時間インキュベートし、ブロッキングバッファーで洗浄し、10μg/mlのヤギ抗マウスIgG Alexa 647(モレキュラープローブ、オランダ、ライデン)および10μg/mlのヤギ抗ウサギIgG Alexa 488(モレキュラープローブ)とともに、ブロッキングバッファー中、室温で1時間インキュベートした。次いで、細胞をブロッキングバッファー、PBS、および最終的には50mM Tris−HClで洗浄した。最後に、Mowiol(カルビオケム,オムニラボインターナショナル、オランダ、ブレダ)でカバーガラスをスライドガラス上にマウントした。
【0146】
(実施例14)
L−SIGN抗体は、受容体へのリガンドの結合をブロックする
いくつかのウイルス、例えばエボラ、SARS、HIVおよびHCVは、L−SIGN受容体を利用して細胞への侵入を増大させることが示されている。ウイルスの表面上のエンベロープ糖タンパク質および宿主T細胞の表面上のICAM−3の両方とも、L−SIGNのレクチン結合ドメインと相互作用することが知られている。本抗体がL−SIGN受容体およびリガンド相互作用をブロックすることができるかどうかを決定するために、リガンドコート蛍光ビーズ−ブロッキングアッセイを行った。図18に示されるように、最も効率的に内在化した3つの抗体(C7、G10およびE10)はまた、アッセイにおいて対照として使用した、ICAM−1でコートしたビーズの結合に影響を及ぼすことなく、L−SIGN受容体へのICAM−3の結合を、最もよく(40%より高い阻害が観察された)ブロックした。(図18参照。)
リガンドブロッキングについての蛍光ビーズ接着アッセイ。ICAM−1ビーズについてこれまでに記載されているように(Geijtenbeekら、1999年)、カルボン酸修飾TransFluorSphere(488/645nm、1.0μm、モレキュラープローブ)を、ICAM−3 Fcタンパク質(R&Dシステムズ、ミネソタ州ミネアポリス)でコートした。簡潔に述べると、ストレプトアビジンでコートしたビーズを、ビオチン化ヤギ抗ヒト抗Fc Fab2断片とともに、PBS、0.5%BSA中、37℃で2時間インキュベートした。ビーズを洗浄し、ヒトIgG1 Fc融合ICAM−3 Fc(250ng/mL)とともに、4℃で一晩インキュベートした。ICAM−3ビーズへの接着のために、K562/L−SIGN細胞を、Tris−ナトリウム−BSA(20mmol/L Tris−HCl、pH8.0、150mmol/L NaCl、1mmol/L CaCl2、2mmol/L MgCl2、0.5%BSA(重量/体積)、5Å約106個の細胞/mL)に再懸濁した。5万個の細胞を、L−SIGN fab(20μg/mL)ありまたはなしで、室温で10分間、96ウェルV型底プレート中で、プレインキュベートした。リガンドでコートしたビーズ(20個のビーズ/細胞)を加え、懸濁液を37℃で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞をTris−ナトリウム−BSAバッファーに再懸濁した。K562/LSIGN細胞のICAM−3媒介性接着を、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン)を用いたフローサイトメトリーによって測定した。抗体なしでICAM−3に結合している細胞のパーセンテージを100に設定し、L−SIGN抗体存在下での結合の減少を、リガンドブロッキングとして表した。
【0147】
(実施例15)
L−SIGN特異的抗体によって媒介される生物学的活性の概要
前述の研究に基づいて(下記の表7参照)、少なくとも3つの抗体クローン、C7、G10およびE10は、自己免疫および感染性疾患における治療用途のための、優れた候補である。
【0148】
(表7)
L−SIGN Fabによって媒介される生物学的活性
【0149】
【表7】

(%)パーセント内在化は、(4℃での平均蛍光強度−37℃での平均蛍光強度)/(4℃での平均蛍光強度)×100として決定した。
(%)パーセントブロッキングは、(Fabありでリガンドに結合している細胞の数−Fabなしでリガンドに結合している細胞の数)/(Fabなしでリガンドに結合している細胞の数)×100として決定した。
【0150】
(実施例16)
受容体へのリガンド結合をブロックすることによってウイルス結合をブロックすることのできる抗体を選択すること
いくつかのウイルス、例えば、エボラ、SARS、HIVおよびHCVは、細胞への侵入を増大させるために、DC−SIGNおよびL−SIGN受容体を利用することが示されている。T細胞上のICAM−3およびウイルス上のエンベロープ糖タンパク質の両方とも、重複しているが別個の様式で、SIGN受容体の炭水化物認識ドメイン(CRD)と相互作用することがわかった。リガンド結合をブロックすることができるCRD反応性Fabが単離されたかどうかを判定するために、Geijtenbeekら(1999年)によって記載されているのと本質的に同じように、リガンドコート蛍光ビーズ−ブロッキングアッセイを行った。簡潔に述べると、5万個のK562/L−SIGNトランスフェクト細胞を、L−SIGN Fab(20μg/mL)ありまたはなしで、室温で10分間、96ウェルV型底プレート中でプレインキュベートする。ウイルスエンベロープタンパク質、例えばHCV E1/E2またはHIVgp120でコートした蛍光ビーズ(20個のビーズ/細胞)を加え、懸濁液を37℃でさらに30分間インキュベートする。洗浄後、細胞をTris−ナトリウム−BSAバッファーに再懸濁する。K562/L−SIGN細胞への、ウイルスでコートしたビーズの、抗体によるブロッキングの程度を、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン)を用いて測定する。抗体なしでウイルスビーズに結合している細胞のパーセンテージ(陰性対照)を100とし、L−SIGN抗体存在下での結合の減少を%ブロッキングとして表す。リガンドでコートした蛍光ビーズは、細胞表面受容体へのリガンドの多量体結合を模倣するだけではなく、フローサイトメトリーによるリガンド結合の容易な定量化も可能にする。まず、K562/DC−SIGNおよびK562/L−SIGNへの、エボラおよびHIVのエンベロープ糖タンパク質でコートした蛍光ビーズの接着を、抗体なしで評価した。図19Aに示されるように、エボラエンベロープ糖タンパク質はDC−SIGNおよびL−SIGN発現細胞の両方に同程度によく結合するが、L−SIGNへのHIVエンベロープ糖タンパク質の結合は、DC−SIGN発現細胞への結合よりもかなり弱かった。SIGN分子へのウイルスタンパク質結合におけるこれらの違いは、Fabがウイルスタンパク質の接着をブロックする能力に対して、甚大な効果を有した。6つすべてのFabはL−SIGNへのHIVgp120結合をブロックすることができたが(33%〜66%)、2つのクローン、C7およびE10だけは、エボラgp結合の有意なブロッキング(それぞれ75%および64%)を示した(図19B参照)。3つのDC−SIGN交差反応性クローン、D12、E10およびG3のうち、E10だけが、DC−SIGNへの両方のウイルスタンパク質の結合をブロックした。対照的に、L−SIGNと独特に反応性のある他の3つのFabは、DC−SIGNへのリガンド結合に対してブロッキング効果を有さなかった(図19C参照)。また、ウイルスタンパク質結合を最もよくブロックした3つのFab、クローンC7、E10およびG10はまた、K562/L−SIGN細胞へのICAM−3の結合を最もよく防いだ(表7参照)。
【0151】
FabをIgGに転換することは、受容体結合およびウイルスタンパク質接着のブロッキングを向上させる
受容体結合、内在化およびICAM−3ブロッキング結果に基づいて、従来の方法を用いてFabのマウス可変ドインをヒトIgG1の定常領域に融合させることによって、2つのFabクローン、E10およびG10を、完全IgGに転換した。これらのキメラIgGを、受容体への結合、およびウイルスタンパク質接着をブロックすることについて、評価した。図20Aに示されるように、FabからIgGへの転換は、両方のクローン、E10およびG10の受容体結合を大いに向上させた。また、クローンG10はFabとしてDC−SIGNへのいかなる結合も示さなかったが、これは、IgGとしてDC−SIGNへのいくらかの結合を示し、これは受容体に対する増大した親和力の結果である可能性が高い。また、完全IgGは、ウイルスタンパク質結合の、それらのFab相対物と比較して増大したブロッキングを示した(図19Bおよび19C参照)。FabからIgGへの転換の最も甚大な効果は、クローンG10で観察され、ここで完全IgGは、L−SIGNへのエボラエンベロープgpの、90%を超えるブロッキングを生じたのに対し、Fab相対物で観察されたブロッキングはほとんど〜まったく観察されなかった(図19C参照)。FabからIgGへの転換は、クローンG10のブロッキング能力を大いに向上させたが、Fab分子としてクローンC7と同様に強力な遮断薬であるクローンE10に対して、より穏やかな効果を有した。
【0152】
最も効率的に内在化した3つのFabクローン、C7、E10およびG10はまた、リガンド結合を最もよくブロックした。受容体の炭水化物認識ドメインへの抗体の結合によって、それらが、免疫応答の調節およびウイルス伝播の予防におけるそれらの使用のための優れた候補になる。クローン、C7およびE10は、L−SIGN受容体へのICAM−3およびウイルスタンパク質の結合を、一貫して、および効果的にブロックした(p<0.05)。クローンG10は、ICAM−3およびHIVgp120の結合をブロックすることができたが、エボラエンベロープ糖タンパク質の結合はブロックすることができなかった(上記の表7に要約する)。前述に基づくと、クローンG10は、何らかの機構の立体的干渉によってリガンド結合をブロックするが、クローンC7およびクローンE10によって生じるブロッキング効果は、リガンド結合部位への直接の競合のためである。
【0153】
(実施例17)
ウイルス侵入をブロックすること
上述の実施例16における、受容体へのウイルス結合をブロックすることができる抗体を選択した後、これらの抗体がウイルス侵入をブロックする能力を試験する。L−SIGNトランスフェクトK−562細胞を、抗体とともに30分間プレインキュベートした後、目的のエンベロープタンパク質を発現するレポーターウイルスを加えるか、または実行可能な場合、ウイルス+またはウイルス−ドナーからの血清を加える。37℃で1時間のインキュベーションの後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で5回洗浄し、キアゲンのウイルスRNAミニスピンキットを用いて、細胞からウイルスRNAを抽出する。このようにして得たウイルスRNAを、Gardnerら(2003年)の手順に従ってRT−PCRによって増幅し、サザンブロットを行う。
【0154】
(実施例18)
ウイルス伝播を防ぐこと
実施例16で同定した抗体が、受容体陽性内皮細胞からヒトT細胞または肝細胞のいずれかへのウイルスの転移を防ぐことができるかどうかを試験するために、K562/L−SIGN細胞または新しく単離したヒト肝類洞内皮細胞(L−SIGN+)または樹状細胞(DC−SIGN+)を、実施例16の抗体とともに30分間インキュベートした後、目的のエンベロープタンパク質、例えばHCV−E2、HIVgp120、エボラ(Alvarezら、2002年)またはシンドビス(Klimstraら、2003年)を発現するルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質レポーターウイルスを加える。培地で洗浄した後、細胞をT細胞(C8166)またはヒト肝細胞(Huh−7)とともに共培養する。標的細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定(相対発光単位)、または標的細胞上の適した表面マーカー二重染色(例えば、T細胞上のCD3)と組み合わせたGFP陽性標的細胞のフローサイトメトリー解析のいずれかによって、レポーターウイルス伝播を評価する。
【0155】
(実施例19)
ヒト結核菌からの感染のブロッキングにおける抗体の役割を評価すること
ヒト結核菌の表面に存在する、炭水化物に富んだ構造であるマンノース化リポアラビノマンナン(ManLAM)は、DC−SIGN(Geijtenbeekら、2003年)およびL−SIGN(Koppelら、2004年)の両方と相互作用することが示されている。ManLAMに対する高い抗体力価が、活発な結核を有する人々において観察され、受動的防御実験における細菌負荷を減少させることが示されている(Hamasurら、2004年)。ミコバクテリウムの結合および感染は、ManLAMと高い親和性で結合することができる、L−SIGN抗体またはL−SIGNペプチド模倣物を用いて、阻害される。細菌の株、例えばウシ結核菌およびヒト結核菌を、Geijtenbeekら(2003年)に詳述されているように、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識する。K562/L−SIGN細胞を、L−SIGNペプチド模倣物(50μg/ml)ありまたはなしで、FITC複合細菌とともに、1〜20の比でインキュベートする。解毒薬または模倣物によるブロッキングの程度(蛍光の減少)を、フローサイトメトリー解析によって決定する。
【0156】
(実施例20)
HCV感染肝臓を有する移植患者の治療
ウイルス伝播が予防されると、ドナーが潜在的にHCV感染を有する移植環境において、抗体を使用することができる。これを試験するために、健康なHLA適合ヒトドナー由来の初代血中リンパ球の注射とともに、軽度にHCV感染したヒトドナー肝臓をNOD/SOID等の免疫欠損マウスに移植する。1〜6カ月の期間にわたって、マウスを抗体で処置する。移植の1〜6カ月後、マウスを屠殺し、肝臓におけるHCV感染の程度を評価する。また、PCRによって、T細胞をウイルス感染について調べる。
【0157】
(実施例21)
L−SIGNを発現している癌型の同定
悪性組織および対になる正常な組織を回収し、パラ−ホルムアルデヒド中で固定するか、またはOCT中で瞬間凍結する。ミクロトームを用いて切片を調製し、FITC等の適した蛍光色素に直接複合化したL−SIGN抗体、または二次抗体蛍光色素複合抗マウスIgGのいずれかを用いることによって、L−SIGNの存在について切片を染色する。正常な組織の染色よりも有意に強い悪性組織についての染色結果が、L−SIGNを発現している癌型の指標である。
【0158】
次いで、L−SIGNを発現しているこれらの癌型についての市販の細胞系を得て、L−SIGNの存在をFACS解析によって評価する。簡潔に述べると、百万個の細胞を、1%BSAおよび0.1%NaNを含むPBS中の1μgの抗L−SIGN抗体とともにインキュベートする。30分間のインキュベーションの後、細胞を洗浄し、蛍光色素複合抗マウスIgGとともに、さらに30分間インキュベートした後、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン)で解析する。
【0159】
(実施例22)
抗L−SIGN抗体の治療上の使用
直接の細胞死滅
上述の実施例21のように、L−SIGN発現細胞腫瘍型を同定すると、抗L−SIGN抗体を、それらがADCCまたはCDCをインビトロで誘導する能力について試験する。ADCCを評価するために、標的細胞(腫瘍細胞)を、まず51Crで標識する。次いで、L−SIGNに対する抗体を、1〜50μgの間の濃度で加え、PBMCによる標的細胞溶解を、1:10〜1:100のエフェクター対標的比で4時間後に測定する。CDCの評価のために、腫瘍細胞を、ヒト補体およびL−SIGN抗体とともにインキュベートする。死細胞にのみ侵入でき、生細胞には侵入できない試薬であるヨウ化プロピジウムの添加の後、細胞死滅をFACS解析によって評価する。ADCCまたはCDCを誘導しない抗体については、何らかの放射性同位元素標識または毒性試薬が抗体に複合化したままである。
【0160】
むき出しの、または複合化した抗L−SIGN抗体のいずれかの、腫瘍増殖を停止させる能力を、異種移植片モデルにおいて評価する。簡潔に述べると、L−SIGNを発現している腫瘍細胞に皮下、腹腔内または静脈内注射する。動物を、対照または抗L−SIGN抗体のいずれかで処置する。腫瘍増殖を、皮下処置についてはサイズによって、または腹腔内もしくは静脈内処置については生存時間によって、測定する。抗L−SIGN処置群における腫瘍増殖が、対照群と比較して30%より多く減少すると、抗体は、癌治療術として利用することができる。
【0161】
免疫系での、癌細胞の負の調節性相互作用のブロッキング
実施例14に記載されているように、L−SIGNと免疫細胞との相互作用をブロックする抗体を、蛍光ビーズアッセイを用いて同定する。抗体を、L−SIGN発現癌細胞による免疫系の負の調節を防ぐことによって免疫系が癌細胞を根絶できることに関する、その治療上の有用性について評価する。
【0162】
L−SIGN発現腫瘍細胞を、NOD/SOID等の免疫欠損マウスに、皮下、腹腔内または静脈内移植する。マウスに、健康なドナー由来の2百万のPBMCも施す(または、自然に腫瘍に拒絶反応を起こすのに十分ではない任意の数のPBMC)。抗L−SIGN抗体ありまたはなしでの腫瘍増殖を対照抗体と比較する。腫瘍増殖を、皮下処置についてはサイズによって、または全身性腫瘍については生存時間によって、測定する。抗L−SIGN処置群における腫瘍増殖が、対照群と比較して30%より多く減少すると、抗体は、癌治療術として利用することができる。
【0163】
(実施例23)
L−SIGN発現細胞を単離するためのL−SIGN抗体の使用
新鮮なヒト非実質性肝細胞を、商業的供給源(例えば、セルズダイレクト、アリゾナ州トゥーソン)から得る。非実質性肝細胞は、類洞内皮細胞、赤血球、クップファー細胞および他の少数の細胞集団の混合物を含む。肝類洞細胞を単離するために、塩化アンモニウムを用いて赤血球を溶解する。市販の死細胞除去キット(ミルテニーバイオテク、ドイツ)を用いて、死細胞を除去する。細胞を計数し、0.1μg/百万個の細胞の抗L−SIGN抗体で標識する。細胞を洗浄した後、それらをMACSバッファー(ミルテニー)中に再懸濁し、製造業者の使用説明書(ミルテニー)に従って抗マウスIgG複合ビーズを用いて、目的の細胞を単離する。CD54、マンノース受容体、LYVE−1、CD40、アシアロ糖タンパク質および他のもの等の分子に対する一団の抗体を用いたFACS解析によって、単離の質をモニタリングする。
【0164】
以下の参考文献は、それらの全体がこの参照によって本明細書中に援用される。
【0165】
【数1】

【0166】
【数2】

【0167】
【数3】

【0168】
【数4】

【0169】
【数5】

【0170】
【数6】

【0171】
【数7】

【0172】
【数8】

【0173】
【数9】

【0174】
【数10】

【0175】
【数11】

【0176】
【数12】

上述の記載は限定として解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。本明細書中に開示される実施形態に種々の変更がなされ得ることが理解されよう。例えば、当業者が認めるように、本明細書中に記載される特定の配列は、抗体または抗体断片の機能性に必ずしも有害に影響を及ぼすことなく、わずかに改変することができる。例えば、抗体配列における単一または複数のアミノ酸の置換は、抗体または断片の機能性を破壊することなく、頻繁に行うことができる。したがって、本明細書中に記載される特定の抗体に対して70%より高い程度の相同性を有する抗体が、本開示の範囲内であることが理解されるべきである。特に有用な実施形態において、本明細書中に記載される特定の抗体に対して約80%より高い相同性を有する抗体が企図される。他の有用な実施形態においては、本明細書中に記載される特定の抗体に対して約90%より高い相同性を有する抗体が企図される。したがって、上述の記載は限定として解釈されるべきではなく、単に好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲内および精神内の、他の変更を構想するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、本開示による抗体/自己抗原コンストラクトと抗原提示細胞(APC)およびT細胞との相互作用を略図で示す。
【図2A】図2Aは、ウサギ抗mSIGNR1 scFV抗体の軽鎖アミノ酸配列(配列番号1〜6)および重鎖アミノ酸配列を示す。
【図2B】図2Bは、ウサギ抗mSIGNR1 scFV抗体の重鎖アミノ酸配列(配列番号7〜12)を示す。
【図3】図3は、抗体ペプチドコンストラクト生成のためのベクターの一部の概略図である。
【図4】図4は、ヒトDC−SIGNRとのIgG1クローンの反応性を示す、本開示によるインビトロ実験の結果のグラフ描写である。
【図5】図5は、ヒトDC−SIGNRとのIgG2aクローンの反応性を示す、本開示によるインビトロ実験の結果のグラフ描写である。
【図6】図6は、ヒトDC−SIGNRおよびDC−SIGNとのIgG1クローンの反応性を示す、本開示によるインビトロ実験の結果のグラフ描写である。
【図7】図7は、ヒトDC−SIGNRおよびDC−SIGNとのIgG2aクローンの反応性を示す、本開示によるインビトロ実験の結果のグラフ描写である。
【図8A】図8A〜8Cは、ヒトDC−SIGNRと反応性のある重鎖クローンのアミノ酸配列を示す(配列番号17〜36)。
【図8B】図8A〜8Cは、ヒトDC−SIGNRと反応性のある重鎖クローンのアミノ酸配列を示す(配列番号17〜36)。
【図8C】図8A〜8Cは、ヒトDC−SIGNRと反応性のある重鎖クローンのアミノ酸配列を示す(配列番号17〜36)。
【図9A】図9A〜9Bは、ヒトDC−SIGNRと反応性のある軽鎖クローンのアミノ酸配列を示す(配列番号37〜55)。
【図9B】図9A〜9Bは、ヒトDC−SIGNRと反応性のある軽鎖クローンのアミノ酸配列を示す(配列番号37〜55)。
【図10−1】図10は、ヒトDC−SIGNRと反応性のあるIgG1重鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号63〜82)。
【図10−2】図10は、ヒトDC−SIGNRと反応性のあるIgG1重鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号63〜82)。
【図11−1】図11は、DC−SIGNRと反応性のあるIgG1軽鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号96〜115)。
【図11−2】図11は、DC−SIGNRと反応性のあるIgG1軽鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号96〜115)。
【図12−1】図12は、DC−SIGNRと反応性のあるIgG2a重鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号133〜154)。
【図12−2】図12は、DC−SIGNRと反応性のあるIgG2a重鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号133〜154)。
【図13−1】図13は、DC−SIGNRと反応性のあるIgG2a軽鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号169〜189)。
【図13−2】図13は、DC−SIGNRと反応性のあるIgG2a軽鎖クローンのさらなるアミノ酸配列を示す(配列番号169〜189)。
【図14】図14は、6つの抗体(クローン名C7、D12、E4、E10、G3、G10)がL−SIGN受容体との非常に良好な結合を示したが、3つの抗体(D12、G3およびE10)はDC−SIGNとも、実質的により低いレベルではあるが反応したことを示す。
【図15】図15は、L−SIGNタンパク質に対する、種々の抗体の親和性を示す。
【図16】図16は、ELISAにおける、L−SIGNFc融合タンパク質に結合するL−SIGN特異的モノクローナル抗体(mab162)と競合することによって特徴付けられる、種々の抗体に対するエピトープ特異性を示す。
【図17】図17は、肝類洞内皮細胞による抗体内在化の結果を示す。
【図18】図18は、フローサイトメトリーで測定した、K562/LSIGN細胞のICAM−1およびICAM−3媒介性接着を測定するのに用いた、リガンドブロッキングのための蛍光ビーズ接着アッセイの結果を示す。
【図19】図19Aは、エボラK562/DC−SIGNおよびK562/L−SIGNのエンベロープ糖タンパク質でコートした蛍光ビーズの接着を示す。抗体なしで、5万個のK562/L−SIGN細胞およびK562/DC−SIGN細胞を、HIVおよびエボラのエンベロープ糖タンパク質でコートした蛍光ビーズ(20個のビーズ/細胞)とともに30分間インキュベートし、ウイルスタンパク質でコートしたビーズによる結合の程度を、FL−3中のフローサイトメトリーによって測定した。図19Bは、Fabが、L−SIGNに結合したHIVgp120およびエボラgp結合の接着をブロックする能力を示す。L−SIGN Fab(20ug/ml)の存在下で、5万個のK562/L−SIGN細胞を、HIVおよびエボラのエンベロープ糖タンパク質でコートした蛍光ビーズ(20個のビーズ/細胞)とともに30分間インキュベートし、ウイルスタンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数を、フローサイトメトリーによって測定した。図19Cは、FabがDC−SIGNへの両方のウイルスタンパク質の結合をブロックする能力を示す。L−SIGN Fab(20ug/ml)の存在下で、5万個のK562/DC−SIGN細胞を、HIVおよびエボラのエンベロープ糖タンパク質でコートした蛍光ビーズ(20個のビーズ/細胞)とともに30分間インキュベートし、ウイルスタンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数を、フローサイトメトリーによって測定した。図19A〜C中のパーセント結合は、Fabありで、タンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数を、Fabなしで、タンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数で割って、100倍することとして決定した。棒は、2つの独立した実験の平均値+SDを表す。
【図20】図20A〜Cは、受容体への、完全IgGバージョンのFab、E10およびG10の結合、ならびにウイルスタンパク質接着のブロッキングを示す。図20Aのデータを生成するために、5×10個のK562、K562/DC−SIGNおよびK562/L−SIGN細胞を、精製したFab(20μg/mL)とともに1時間インキュベートし、それらの結合の程度を、PE複合ヤギ抗マウス(Fab検出)またはヤギ抗ヒト(IgG検出)二次抗体を用いたフローサイトメトリーによって評価した。mAb162(L−SIGN特異的)およびmAb16211(DC−SIGN/L−SIGN交差反応性)を陽性対照として使用した。図20Bのデータを生成するために、Ab(20ug/ml)存在下で、5万個のK562/L−SIGNおよびK562/DC−SIGN細胞を、HIVgp120でコートした蛍光ビーズ(20個のビーズ/細胞)とともに30分間インキュベートし、ウイルスタンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数を、フローサイトメトリーによって測定した。図20Cのデータを生成するために、Ab(20ug/ml)存在下で、5万個のK562/L−SIGNおよびK562/DC−SIGN細胞を、エボラエンベロープ糖タンパク質でコートした蛍光ビーズ(20個のビーズ/細胞)とともに30分間インキュベートし、ウイルスタンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数を、フローサイトメトリーによって測定した。mAb162(L−SIGN特異的)およびmAbAZND1(DC−SIGN特異的)を陽性対照として使用した。パーセント結合は、Abありで、タンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数を、Abなしで、タンパク質でコートしたビーズに結合している細胞の数で割って、100倍することとして決定した。棒は、2つの独立した実験の平均値+SDを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−SIGN受容体を認識し、2時間のうちに、単離されたヒト肝臓非実質性細胞中への少なくとも40パーセントの内在化を示す抗体。
【請求項2】
単離されたヒト肝臓非実質性細胞中に内在化して、ICAM−1の結合に影響を及ぼすことなくL−SIGN受容体へのICAM−3の結合をブロックする抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体を含むワクチン。
【請求項5】
細胞へのウイルスの結合を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項6】
細胞への、HIV、HCV、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビスからなる群より選択されるウイルスの結合を効果的にブロックすることができる、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
ウイルスによる細胞の感染を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項8】
HIV、HCV、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビスからなる群より選択されるウイルスによる細胞の感染を効果的にブロックすることができる、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
細胞から別の細胞へのウイルスの伝播を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項10】
細胞から別の細胞への、HIV、HCV、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビスからなる群より選択されるウイルスの伝播を効果的にブロックすることができる、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
請求項5に記載の抗体を含むワクチン。
【請求項12】
細胞へのミコバクテリウム(Mycobacterium)属の細菌の結合を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項13】
細胞への、ヒト結核菌(M.tuberculosis)およびウシ結核菌(M.Bovis)からなる群より選択される細菌の結合を効果的にブロックすることができる、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
ミコバクテリウム属の細菌による細胞の感染を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項15】
ヒト結核菌およびウシ結核菌からなる群より選択される細菌による細胞の感染を効果的にブロックすることができる、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
細胞から別の細胞へのミコバクテリウム属の細菌の伝播を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項17】
細胞から別の細胞への、ヒト結核菌およびウシ結核菌からなる群より選択される細菌の伝播を効果的にブロックすることができる、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
細胞へのマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)の結合を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項19】
マンソン住血吸虫による細胞の感染を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項20】
細胞から別の細胞へのマンソン住血吸虫の伝播を効果的にブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項21】
L−SIGN受容体を認識する抗体を含む、増大したL−SIGN発現によって特徴付けられる腫瘍の診断薬。
【請求項22】
請求項21に記載の診断薬を含む診断キット。
【請求項23】
癌を有する疑いのある被験体から組織試料を得ること、および
該組織試料がL−SIGN受容体を認識する抗体と結合する程度を測定すること
を含み、
対応する正常組織と比較した結合の程度の増大が癌の存在を示す、
癌を診断するための方法。
【請求項24】
前記測定する工程が、L−SIGNの存在を染色することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
L−SIGN受容体を認識する抗体を含む、増大したL−SIGN発現によって特徴付けられる癌を治療するための治療剤。
【請求項26】
癌細胞死滅させる量の、L−SIGN受容体を認識する抗体を含む組成物を、被験体に投与することを含む、癌を治療するための方法。
【請求項27】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体が癌細胞の抗体依存性細胞毒性を誘導する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体が癌細胞の補体依存性細胞毒性を誘導する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体がL−SIGN発現癌細胞による免疫系の負の調節を防ぐ、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体が毒素に融合している、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体が高エネルギー放射線放射体に融合している、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
L−SIGN発現細胞を死滅させる量の、L−SIGN受容体を認識する抗体を含む組成物を、被験体に投与することを含む、炎症性疾患を治療するための方法。
【請求項33】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体がL−SIGN発現細胞の抗体依存性細胞毒性を誘導する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体がL−SIGN発現細胞の補体依存性細胞毒性を誘導する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体がL−SIGN発現細胞による免疫系の負の調節を防ぐ、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体が毒素に融合している、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記L−SIGN受容体を認識する抗体が高エネルギー放射線放射体に融合している、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
L−SIGNに対して高い親和性を有するがDC−SIGNに対して低い親和性を有する抗体。
【請求項39】
L−SIGN上の線状エピトープおよびL−SIGN上の立体的エピトープに結合する抗体。
【請求項40】
L−SIGN−T細胞相互作用をブロックし、それによって調節性T細胞の増殖を引き起こす抗体。
【請求項41】
肝臓において調節性T細胞の増殖が起こる、請求項40に記載の抗体。
【請求項42】
L−SIGN−T細胞相互作用をブロックし、それによって自己反応性T細胞の増殖を抑制する抗体。
【請求項43】
リンパ節において自己反応性T細胞の増殖の抑制が起こる、請求項42に記載の抗体。
【請求項44】
自己抗原を肝類洞内皮細胞に送達し、それによって調節性細胞の増殖を刺激する抗体−ペプチドコンストラクト。
【請求項45】
自己抗原を肝類洞内皮細胞に送達し、それによって自己反応性T細胞の活性を抑制する抗体−ペプチドコンストラクト。
【請求項46】
ワクチン抗原をリンパ節中の類洞内皮細胞に送達し、それによって抗原特異的T細胞の増殖を刺激する抗体−ペプチドコンストラクト。
【請求項47】
L−SIGNを発現していない細胞と組み合わせたL−SIGN発現細胞の混合物を得ること、
該混合物を抗L−SIGN抗体に曝露すること、および
該L−SIGN発現細胞を該抗L−SIGN抗体に結合させ、それによって、該L−SIGNを発現していない細胞から該L−SIGN発現細胞を単離すること
を含む、L−SIGN発現細胞を単離するための方法。
【請求項48】
請求項2に記載の抗体および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項49】
請求項2に記載の抗体を含むワクチン。
【請求項50】
請求項7に記載の抗体を含むワクチン。
【請求項51】
請求項9に記載の抗体を含むワクチン。
【請求項52】
L−SIGN受容体を認識し、L−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする抗体。
【請求項53】
L−SIGN受容体を認識し、L−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする抗体。
【請求項54】
L−SIGN受容体を認識し、DC−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする抗体。
【請求項55】
L−SIGN受容体を認識し、DC−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする抗体。
【請求項56】
L−SIGN受容体およびDC−SIGN受容体の両方を認識し、DC−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする抗体。
【請求項57】
L−SIGN受容体およびDC−SIGN受容体の両方を認識し、DC−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする抗体。
【請求項58】
請求項52から57のいずれかに記載の抗体および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項59】
請求項52から57のいずれかに記載の抗体を含むワクチン。
【請求項60】
抗体およびエボラエンベロープタンパク質が同じエピトープに結合する、請求項53に記載の抗体。
【請求項61】
細胞へのウイルスの結合をブロックすることができる、細胞上のL−SIGN受容体を認識する抗体。
【請求項62】
細胞への、HIV、HCV、エボラ、SARS、CMVおよびシンドビスからなる群より選択されるウイルスの結合をブロックすることができる、請求項61に記載の抗体。
【請求項63】
DC−SIGN受容体も認識する、請求項61に記載の抗体。
【請求項64】
非ヒト可変ドメインおよびヒトIgG1定常領域を含み、非ヒト可変ドメインが任意の抗原提示細胞上の受容体に結合する、キメラ抗体。
【請求項65】
非ヒト可変領域がL−SIGN受容体を認識する、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項66】
非ヒト可変領域がDC−SIGN受容体をさらに認識する、請求項65に記載のキメラ抗体。
【請求項67】
非ヒト可変領域がマウスのものである、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項68】
ヒトIgG定常領域がヒトIgG1定常領域である、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項69】
L−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項70】
L−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項71】
L−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合を少なくとも約90%ブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項72】
非ヒト可変ドメイン単独よりもよくL−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項73】
非ヒト可変ドメイン単独よりもよくDC−SIGNへのエボラエンベロープタンパク質の結合をブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項74】
非ヒト可変ドメイン単独よりもよくL−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項75】
非ヒト可変ドメイン単独よりもよくDC−SIGNへのHIVgp120の結合をブロックする、請求項64に記載のキメラ抗体。
【請求項76】
L−SIGN受容体の認識がDC−SIGN受容体の認識よりも強い、L−SIGN受容体およびDC−SIGN受容体の両方を認識する抗体。
【請求項77】
L−SIGN受容体の認識がDC−SIGNの認識よりも約1.1倍〜約20倍強い、請求項76に記載の抗体。
【請求項78】
L−SIGN受容体の認識がDC−SIGNの認識よりも約1.2倍〜約10倍強い、請求項76に記載の抗体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−524245(P2008−524245A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546951(P2007−546951)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/045706
【国際公開番号】WO2006/073748
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】