説明

抗炎症活性を有する9A−カルバモイルおよびチオカルバモイルアザライド

ヒトおよび動物における炎症性の疾患および症状の治療および予防のための半合成9a−カルバモイルまたはチオカルバモイルアザライドの使用。より詳しくは、本発明は、ヒトおよび動物における炎症性の疾患および症状の治療および予防のための9a位にカルバモイル基またはチオカルバモイル基を有する15員アザライドおよびそれらの医薬上許容される誘導体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性の疾患および症状の治療および予防のための半合成9a−カルバモイルまたはチオカルバモイルアザライドの使用に関する。より詳しくは、本発明は、炎症性の疾患および症状の治療および予防のための、9a位にカルバモイル基またはチオカルバモイル基を有する15員アザライドおよびそれらの医薬上許容される誘導体の使用に関する。
【0002】
(技術的課題)
本発明は、新規の標的抗炎症薬を提供するという技術的課題を解決することを対象とする。より詳しくは、本発明は、活性物質がステロイドでもNSAIDでもない抗炎症薬を提供する。本発明の化合物は、それらの抗炎症活性、および炎症部位に動員された種々の免疫細胞中に蓄積するそれらの能力によってこの課題に対処する。
【背景技術】
【0003】
炎症は、人体に対する感染、外傷およびアレルギーのような様々な傷害の最終的な共通経路である。それは、炎症細胞の動員、炎症誘発性細胞の産生および炎症誘発性サイトカインの産生を伴う免疫系の活性化を特徴とする。
【0004】
ほとんどの炎症性疾患は、単球/マクロファージ、顆粒球、形質細胞、リンパ球および血小板を含む炎症細胞の異常な蓄積を特徴とする。組織内皮細胞および線維芽細胞と同様に、これらの炎症細胞は、さまざまに入り組んだ脂質、増殖因子、サイトカイン、および局部組織損傷を引き起こす破壊酵素を放出する。
【0005】
炎症反応の一の形態は、宿主防御の主要素である好中球多形核白血球(PMN)による炎症組織の浸潤を特徴とする好中球性炎症である。細胞外細菌による組織感染は、この炎症反応のプロトタイプを示す。他方、様々な非感染性疾患は、好中球の血管外動員を特徴とする。この炎症性疾患群としては、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、いくつかのタイプの免疫複合体肺胞炎、嚢胞性線維症、気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、糸球体腎炎、関節リウマチ、通風性関節炎、潰瘍性大腸炎、乾癬のようなある種の皮膚疾患、および血管炎が挙げられる。これらの症状では、好中球は、持続した場合には正常な組織構造の不可逆的破壊を引き起こして結果的に臓器不全を生じる可能性のある組織損傷の発生において重要な役割を果たすと考えられる。組織損傷は、主に、好中球の活性化、その後のそれらのプロテイナーゼの放出および酸素種の産生の増大によって引き起こされる。
【0006】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、完全に可逆的ではない進行性の気流制限の発生によって説明される(ATC, 1995)。ほとんどのCOPD患者は、3種類の病態を有する:気管支炎、肺気腫および粘液栓塞。この疾患は、努力肺活量(FVC)の相対的な保存とともに呼気の1秒量(FEV1)の緩やかな進行性の可逆的な低下を特徴とする(非特許文献1)。喘息およびCOPDのどちらにも、著しいが異なる気道リモデリングがある。ほとんどの気流閉塞は、2つの主な要素である肺胞破壊(肺気腫)および末梢気道閉塞(慢性閉塞性気管支炎)によるものである。COPDは、主に、著しい粘液細胞過形成を特徴とする。
【0007】
喫煙、大気汚染および他の環境因子は該疾患の主要な原因である。原因機構は、現在のところ依然として不明確であるが、オキシダント−抗酸化物質障害が該疾患の発症に強く関与している。COPDは、異なる炎症細胞、メディエーター、炎症効果および治療応答をもって、喘息において見られるものとは非常に異なる慢性炎症過程である(非特許文献2)。患者の肺の好中球浸潤は、COPDの主な特徴である。
【0008】
TNF−αのような炎症誘発性サイトカインならびに特にIL−8およびGRO−αのようなケモカインのレベルの上昇は、この疾患の発症において非常に重要な役割を果たす。血小板トロンボキサン合成もまた、COPD患者において増強される(非特許文献2;非特許文献3)。ほとんどの組織損傷は、好中球の活性化、その後のそれらの(メタロ)プロテイナーゼの放出および酸素種の産生の増大によって引き起こされる(非特許文献4;非特許文献5)。
【0009】
ほとんどの治療の試みは、症状の制御に向けられている(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。症状は、通常、気道制限と一致し、気管支拡張薬は、最適な伝統的な療法である。合併症の予防および治療、悪化の予防、ならびに生活の質および長さの改善はまた、COPDの管理のための3つの重要な国際的指針に提示されている主要目標である(非特許文献9;非特許文献10)。基本的には、現在までの治療法の研究のほとんどが、好中球の動員および活性化に関与するメディエーター、またはそれらの望ましくない活性化の結果を弱めることに集中していた(非特許文献11)。
【0010】
1975には、TNF−αは、インビトロおよびインビボで腫瘍壊死を引き起こす内毒素誘発性血清因子と定義された(非特許文献12)。TNF−αは、抗腫瘍活性に加えて、ホメオスタシスおよび病態生理学的症状において重要ないくつかの他の生物学的活性を有する。TNF−αの主要な供給源は、単球−マクロファージ、T−リンパ球およびマスト細胞である。
【0011】
抗−TNF−α抗体(cA2)が関節リウマチ(RA)に罹患している患者の治療に有効であるという発見(非特許文献13)により、RAに対する有効な薬剤として可能性のある新しいTNF−α阻害剤を見出す関心が強まった。関節リウマチは、関節の不可逆的な病理変化を特徴とする自己免疫性慢性炎症性疾患である。TNF−αアンタゴニストは、RAに加えて、脊椎炎、変形性関節症、痛風および他の関節炎症状、敗血症、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、糸球体腎炎、紅斑性狼瘡、強皮症、喘息、悪液質、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、インスリン抵抗性、肺線維症、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ウイルス感染症およびAIDSのようないくつかの他の病態および疾患にも適用できる。
【0012】
科学界の関心は、最近、マクロライド系抗生物質の免疫調節活性および抗炎症活性に向いてきた(非特許文献14)。
【0013】
理想的な免疫調節剤は、防御免疫応答を損なわずに炎症反応の有害効果を抑制することができるべきである。
【0014】
マクロライド系抗生物質は、対象体の様々な細胞内に、特に単核末梢血液細胞ならびに腹腔および肺胞マクロファージのような食細胞内に優先的に蓄積する(非特許文献15;非特許文献16)。いくつかのマクロライドの抗炎症作用は、文献に記載されている。例えば、エリスロマイシン誘導体の抗炎症作用は非特許文献17および特許文献1に記載されている。大正製薬株式会社は、また、3位、9位、11位および12位が修飾された抗炎症性エリスロマイシン誘導体の権利を要求している(特許文献2および特許文献3)。特許文献4には、公知の抗菌剤であるアジスロマイシンの抗炎症活性が十分に説明されている。糖成分クラジノースおよびデソサミンを欠いており、かつ抗炎症活性を有するアジスロマイシン誘導体が記載されている(Plivaの特許文献5)。特許文献6および特許文献7(Zambon Group)には、抗炎症性活性を示すが抗菌活性を示さないクラジノース糖を欠いているマクロライドおよびアザライド誘導体が記載されている。
【0015】
いくつかのマクロライドの抗炎症作用は、マウスにおけるザイモサン誘発性腹膜炎(非特許文献18)およびラットの気管における内毒素誘発性好中球蓄積(非特許文献19)におけるような実験動物モデルにおけるインビトロおよびインビボ研究からも知られている。インターロイキン8(IL−8)(非特許文献20)およびインターロイキン5(IL−5)(特許文献2および特許文献3)のようなサイトカインに対するマクロライドの調節作用は周知である。
【0016】
マクロライドは、汎細気管支炎(非特許文献21)、気管支喘息(非特許文献22)のような炎症性病態の治療に有用であることが立証されており、アジスロマイシンは、特に、嚢胞性線維症患者における肺機能の改善に有効であることが立証されている(非特許文献23)。
【0017】
喘息患者へのマクロライドの投与は、食細胞および特に好中球とのマクロライドの抗酸化性および抗炎症性相互作用により引き起こされる分泌過多および気道過敏性の低下を伴う(非特許文献24)。
【特許文献1】WO 00/42055
【特許文献2】EP 0775489
【特許文献3】EP 0771564
【特許文献4】WO 02/087596
【特許文献5】米国特許第4,886,792号
【特許文献6】WO 04/039821
【特許文献7】WO 04/013153
【非特許文献1】Barnes, N. Engl. J. Med. (2000), 343(4): 269-280
【非特許文献2】Keatings et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. (1996), 153: 530-534
【非特許文献3】Stockley and Hill, Thorax (2000), 55(7): 629-630
【非特許文献4】Repine et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. (1997), 156: 341-357
【非特許文献5】Barnes, Chest (2000), 117(2 Suppl): 10S-14S
【非特許文献6】Barnes, Trends Pharm. Sci. (1998), 19(10): 415-423
【非特許文献7】Barnes, Am. J. Respir. Crit. Care Med. (1999) 160: S72-S79
【非特許文献8】Hansel et al., Expert Opin. Investig. Drugs (2000) 9(1): 3-23
【非特許文献9】Culpitt and Rogers, Exp. Opin. Pharmacother. (2000) 1(5): 1007-1020
【非特許文献10】Hay, Curr. Opin. Chem. Biol. (2000), 4: 412-419
【非特許文献11】Stockley et al., Chest (2000), 117(2 Suppl): 58S-62S
【非特許文献12】Carswell E. A. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1975, 72, 3666-3670
【非特許文献13】Elliot M. et al. Lancet 1994, 344, 1105-1110
【非特許文献14】Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 1988, 41, Suppl. B, 37-46
【非特許文献15】Gladue, R. P. et al, Antimicrob. Agents Chemother. 1989, 33, 277-282
【非特許文献16】Olsen, K. M. et al, Antimicrob. Agents Chemother. 1996, 40, 2582-2585
【非特許文献17】J. Antimicrob. Chemother. 1998, 41, 37-46
【非特許文献18】J. Antimicrob. Chemother. 1992, 30, 339-348
【非特許文献19】J. Immunol. 1997, 159, 3395-4005
【非特許文献20】Am. J. Respir. Crit. Care. Med. 1997, 156, 266-271
【非特許文献21】Thorax, 1997, 52, 915-918
【非特許文献22】Chest, 1991, 99 670-673
【非特許文献23】The Lancet, 1998, 351, 420
【非特許文献24】Inflammation, Vol. 20, No. 6, 1996
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
本発明は、抗炎症活性を有する9a−カルバモイルまたはチオカルバモイル置換15員アザライドに関する。本発明の主題である化合物は、抗炎症物質として、または、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5の阻害剤、および/または過剰なリンパ球増殖および/または過剰な顆粒球脱顆粒の阻害剤として記載されたことはなかった。したがって、炎症性の疾患、症状または障害のような炎症状態と戦うためのかかる化合物の使用は、記載も示唆もされたことはなかった。
【0019】
本発明は、式(I):
【化1】


[式中、
1は、水素であるか、またはR2と一緒になって二重結合であり;
2は、式(II)で示されるクラジノース糖、水素、ヒドロキシル、または式(III)で示される基:
【化2】


(ここで、Yは、置換されていないかまたはハロゲン、OH、OMe、NO2およびNH2から選択される基で置換されている単環式芳香環である)であるか;または
2は、R3と一緒になってケトンであるか、またはR1と一緒になって二重結合であり;
3は、水素であるか、またはR2と一緒になってケトンであるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4は、ヒドロキシルまたはOMeであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5は、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、−(CH2)m−Ar(ここで、Arは、NおよびOから選択されるヘテロ原子0〜3個を含有し、置換されていないかまたはハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシのうちの1個またはそれ以上によって置換されている、炭素原子10個までの単環式もしくは二環式芳香環であり、mは0〜3である)であり;
6は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
Xは、酸素または硫黄を表す]
で示される化合物およびその医薬上許容される誘導体の、炎症性の疾患、症状または障害、またはTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5の過剰な発現に関連する疾患、症状または障害の治療および/または過剰なリンパ球増殖および/または過剰な顆粒球脱顆粒の阻害のための方法および使用を対象とする。
【0020】
さらにまた、本発明の主題である化合物は、抗炎症物質として、またはTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5のうちの1つまたはそれ以上の阻害剤および/または過剰なリンパ球増殖および/または過剰な顆粒球脱顆粒の阻害剤として記載されたことはなかった。
【0021】
(発明の詳細な説明)
いくつかの実施態様では、本発明の方法は、式(I):
【化3】


[式中、
1は、水素であり;
2は、式(II):
【化4】


で示されるクラジノース糖、またはヒドロキシルであり;
3は、水素であるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4は、ヒドロキシルであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5は、−(CH2)m−Ar(ここで、Arは、置換されていないかまたはハロゲン、C1-6ハロアルキルのうちの1つまたはそれ以上によって置換されている、炭素原子10個までの単環式もしくは二環式芳香環であり、mは0〜2である)であり;
6は、水素であり;
Xは、酸素または硫黄を表す]
で示される化合物およびその医薬上許容される誘導体の、炎症性の疾患、症状または障害の治療、またはTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5の過剰な発現に関連する疾患、症状または障害の治療、および/または過剰なリンパ球増殖および/または過剰な顆粒球脱顆粒の阻害に関する。
【0022】
一の特定の実施態様では、本発明の方法は、
1が水素であり;
2が式(II):
【化5】


で示されるクラジノース糖またはヒドロキシルであり;
3が水素であるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4がヒドロキシルであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5がベンジル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、2−フルオロフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3−トリフルオロメチル−4−クロロフェニル、1−(1−ナフチル)−エチルであり、
6が水素であり、
Xが酸素または硫黄を表す
式(I)で示される化合物およびその医薬上許容される誘導体の、炎症性の疾患、症状または障害の治療、またはTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5の過剰な発現に関連する疾患、症状または障害の治療および/または過剰なリンパ球増殖および/または過剰な顆粒球脱顆粒の阻害に関する。
【0023】
特定の好ましい化合物としては、
【化6】

が挙げられる。
【0024】
式(I)で示されるアザライド化合物は、米国特許第5,629,296号、EP 1175429、EP 0657464および国際特許出願公開WO 2004/101591(各記載内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載されている方法によって製造することができる。特に、該化合物は、米国特許第5,629,296号の実施例1〜8の記載およびこれらの合成法と類似の方法に従って製造することができる。
【0025】
式(I)で示される化合物の製造において使用する中間体の保護誘導体を使用するのが望ましい場合があることは当業者に明らかであろう。官能基の保護および脱保護は、当該技術分野で知られている方法によって行うことができる。ヒドロキシルまたはアミノ基は、いずれものヒドロキシルまたはアミノ保護基(例えば、Green and Wuts. Protective Groups in Organic Synthesis. John Wiley and Sons, New York, 1999に記載されているようなもの)で保護され得る。保護基は、慣用技術によって除去することができる。例えば、アシル基(例えば、アルカノイル、アルコキシカルボニルおよびアリーロイル基)は、ソルボリシス(例えば、酸性または塩基性条件下での加水分解による)によって除去することができる。アリールメトキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル)は、パラジウム−炭のような触媒の存在下での水素化分解によって開裂され得る。
【0026】
目的化合物の合成は、当業者に周知の標準的な方法を用いて最後から二番目の中間体に存在するいずれもの保護基を除去することによって完了する。次いで、脱保護した最終生成物は、必要に応じて、シリカゲルクロマトグラフィーおよびシリカゲルでのHPLCなどのような標準的な技術を用いて、または再結晶によって、精製される。
【0027】
したがって、抗炎症活性を有する式(I)で示される化合物は、炎症性の症状、特に好中球の細胞機能性の異常に伴うこれらの症状、例えば、限定されないが、関節リウマチ、血管炎、糸球体腎炎、虚血再灌流による損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症性ショック、ARDS、COPD、嚢胞性線維症および喘息の、急性および慢性の両方の治療ならびに予防に有用であり得ることは明らかである。
【0028】
「塩」なる用語は、酸付加塩または遊離塩基の付加塩を包含することができる。医薬上許容される酸付加塩を形成するために使用され得る酸の例としては、硝酸、リン酸、硫酸、または臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸のような非毒性無機酸から誘導された塩、および脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシルアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸、ならびに酢酸、マレイン酸、コハク酸またはクエン酸のような非毒性有機酸から誘導された塩が挙げられる。このような塩の非限定的な例としては、ナパジシル酸塩、ベシル酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩およびメタンスルホン酸塩などが挙げられる。アルギン酸塩のようなアミノ酸の塩、およびグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩もまた考えられる(例えば、Berge S. M. et al. “Pharmaceutical Salts,” J. of Pharma. Sci., 1977; 66:1を参照)。
【0029】
塩基性化合物の酸付加塩は、慣用の方法で遊離塩基を、塩を生成するために望ましい酸の充分な量と接触させることによって製造される。遊離塩基形態は、慣用の方法で塩形態を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することによって再生することができる。遊離塩基形態は、極性溶媒中での可溶性のようなある種の物理的性質が、それらの個々の塩形態と異なるが、該塩は、本発明の目的のためにはそれらの個々の遊離塩基と等価である。
【0030】
医薬上許容される塩基付加塩は、金属またはアミン、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンを用いて形成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。適当なアミンの例は、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミンおよびプロカインである。
【0031】
該酸性化合物の塩基付加塩は、慣用の方法で遊離酸形態を、該塩を生成するために望ましい塩基の充分量と接触させることによって製造される。遊離酸形態は、塩形態を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって再生することができる。
【0032】
本発明の組成物に関連して用いる場合、「医薬上許容される」なる語句は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与した場合、生理学的に耐えられ、典型的には有害反応を生じないような組成物の分子的実体および他の成分についていう。好ましくは、本明細書で用いる場合、「医薬上許容される」なる用語は、哺乳動物において、および特にヒトにおいて用いるために、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方に挙げられているものを意味する。
【0033】
「医薬上許容される誘導体」なる用語は、本明細書で用いる場合、受容者への投与後に本発明の化合物またはその活性代謝物もしくは残留物を直接または間接的に提供することができる、本発明の化合物のいずれもの医薬上許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグ、例えば、エステルを意味する。当業者は、過度に実験をせずにこのような誘導体を認識することができる。それにもかかわらず、かかる誘導体の教示という点で出典明示により本明細書の一部を構成する、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1: Principles and Practiceの教示を挙げる。好ましい医薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物、エステル、カルバメートおよびリン酸エステルである。特に好ましい医薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物およびエステルである。最も好ましい医薬上許容される誘導体は塩およびエステルである。
【0034】
式(I)で示される化合物は、1種類またはそれ以上の担体と一緒に投与することができる。本発明の医薬組成物に用いられる「担体」なる用語は、活性化合物と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルをいう。このような医薬担体は、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、および油(落花生油、大豆油、鉱油およびゴマ油などのような、石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものが挙げられる)のような滅菌液体であり得る。適当な医薬担体は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”by E.W. Martin, 18th Editionに記載されている。本発明に特に好ましいものは、即時放出に適する担体、すなわち、60分間またはそれ以下のように短時間の間に活性成分のほとんどまたは全てを放出するのに適する担体であり、薬物の迅速な吸収を可能にする。
【0035】
本発明はまた、式(I)で示される化合物のプロドラッグ、すなわち、哺乳動物対象体に投与した場合にインビボで式(I)で示される活性親薬物を放出する化合物を包含する。式(I)で示される化合物のプロドラッグは、式(I)で示される化合物に存在する官能基を、修飾がインビボで開裂されて親化合物を放出するような方法で修飾することによって製造される。プロドラッグは、式(I)で示される化合物のヒドロキシ、アミノまたはカルボキシ基が、インビボで開裂されて各々遊離ヒドロキシル、アミノまたはカルボキシ基を再生することができるいずれもの基と結合している式(I)で示される化合物を包含する。プロドラッグの例としては、式(I)で示される化合物のエステル(例えば、酢酸エステル誘導体、ギ酸エステル誘導体および安息香酸エステル誘導体)、または生理学的pHとなることによるかまたは酵素作用により活性な親薬物に変換されるいずれもの多の誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明また、式(I)で示される化合物の溶媒和物またはそれらの塩を包含する。好ましい溶媒和物は水和物である。
【0037】
式(I)で示される化合物は、1つまたはそれ以上のキラリティ中心を有し、個々の置換基の性質に依存して、それらは、幾何異性体を有することがある。それらの原子の空間配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。互いに鏡像となっていない立体異性体は、「ジアステレオ異性体」と称され、互いに重ね合わせることができない鏡像であるものは、「エナンチオマー」と称される。化合物がキラル中心を有する場合、一対のエナンチオマーがあり得る。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けることができ、カーンおよびプレローグのR/S順位側により、または、分子が偏光面を回転する方法により説明され、右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ、(+)異性体または(−)異性体)と表される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとして、またはエナンチオマーの混合物として存在することができる。均等な割合のエナンチオマーを含有する混合物は、「ラセミ混合物」と称される。本発明は、式(I)で示される化合物の個々の異性体の全てを包含する。本明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記載または命名は、個々のエナンチオマーおよびそのラセミ混合物または他の混合物(すなわち、1つまたはそれ以上の異性体に富む)の両方を包含するものである。立体化学の決定方法および立体異性体の分割方法は、当該技術分野において周知である。
【0038】
本発明はまた、syn−anti型の立体異性体、およびオキシムまたは類似の基が存在する場合に起こるその混合物を包含する。オキシムの末端の二重結合した原子のうちの1つと結合したカーン−インゴールド−プレローグ優先順位の最も高い基は、オキシムのヒドロキシル基に匹敵する。オキシムヒドロキシルが、最高優先順位の基としてC=N二重結合を通る準拠面の同じ側にある場合、立体異性体はZ(zusammen=一緒の)またはSynと表される;他の立体異性体は、E(entgegen=反対の)またはAntiと表される。
【0039】
「アルキル」なる用語は、基または基の一部として本明細書で用いる場合、所定の数の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。例えば、C1-6アルキルは、炭素原子1〜6個を含有する直鎖または分枝鎖アルキル鎖を意味する;このような基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、3−メチル−ブチル、ヘキシルおよび2,3−ジメチルブチルなどが挙げられる。同様に、C1-4アルキルなる用語は、炭素原子1〜4個を含有する直鎖または分枝鎖アルキル鎖を意味する。
【0040】
「アルケニル」なる用語は、基または基の一部として本明細書で用いる場合、所定の数の炭素原子を含有し、少なくとも1つの二重結合を含有する、直鎖または分枝鎖炭化水素鎖をいう。例えば、「C2-4アルケニル」なる用語は、少なくとも2個で多くても4個の炭素原子を含有し、少なくとも1つの二重結合を含有する、直鎖または分枝鎖アルケニルを意味する。本明細書で用いる場合、「アルケニル」の例としては、エテニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、2−メチルブタ−2−エニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。−O−C2-6アルケニルの基内では、二重結合は、好ましくは、酸素と隣接しないことが理解されるであろう。
【0041】
「アルコキシ」なる用語は、本明細書で用いる場合、所定の数の炭素原子を含有する、酸素原子を介して親分子部分に結合した、上記で定義した直鎖または分枝鎖C1-5アルキル基をいう。例えば、C1-4アルコキシは、少なくとも1個で多くても4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖アルコキシを意味する。本明細書で用いる場合、「アルコキシ」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、プロパ−2−オキシ、ブトキシ、ブタ−2−オキシ、2−メチルプロパ−1−オキシおよび2−メチルプロパ−2−オキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」なる用語は、1個またはそれ以上のハロゲンで置換されている、上記で定義した「アルキル」および「アルコキシ」基をいい、ここで、ハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0043】
「アリール」なる用語は、本明細書で用いる場合、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびインデニルなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない1個または2個の芳香環を有する単環式または二環式炭素環系をいう。
【0044】
製剤の種類に依存して、式(I)で示される化合物の1つまたはそれ以上の治療上有効量に加えて、それらは、医薬用の固体または液体の賦形剤または希釈剤を含有するであろうし、増粘剤、凝集剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤および着色剤のような医薬製剤の調製に通常用いられる他の添加剤を含有することもできる。
【0045】
「医薬上許容される賦形剤」は、一般的に安全で非毒性で、生物学的にもそれ以外でも望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒト医薬的使用に受け入れられる賦形剤を包含する。「医薬上許容される賦形剤」は、本明細書で用いる場合、1種類のこのような賦形剤および2種類以上のこのような賦形剤の両方を含む。
【0046】
状態、障害または症状の「治療をすること」または「治療」は、以下のことを含む:
(1)該状態、障害または症状に苦しんでいるかまたは罹患し易いが該状態、障害または症状の臨床症状または亜臨床症状を経験していないかまたは表していない哺乳動物において発症している該状態、障害または症状の臨床症状の出現を予防するかまたは遅延させること、
(2)該状態、障害または症状を阻害すること、すなわち、疾患の発症またはその再発(維持療法の場合)またはその少なくとも1つの臨床もしくは亜臨床症状の発症を抑止するか、軽減するかまたは遅延させること、または
(3)疾患を軽減すること、すなわち、該状態、障害または症状またはその臨床もしくは亜臨床症状の少なくとも1つを緩解させること。
【0047】
治療を受ける対象体にとっての利益は、統計学的に有意であるか、または少なくとも患者もしくは医師に認知できるものである。
【0048】
「治療上有効量」は、状態、障害または症状を治療するために哺乳動物に投与した場合、かかる治療を達成するのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効量」は、化合物、疾患およびその重篤度、ならびに治療を受ける哺乳動物の年齢、体重、健康状態および反応性によって異なるであろう。
【0049】
急性炎症の4種類の症状は、発赤、体温上昇、患部の腫脹および痛み、ならびに患部臓器の機能障害または機能喪失である。
【0050】
特定の症状に関連する炎症の症状および徴候としては以下のものが挙げられる:
・関節リウマチ − 病変のある関節の痛み、腫脹、温感および圧痛;全身の朝のこわばり;
・インスリン依存性糖尿病 − 膵島炎;この症状は、炎症成分をもつ合併症(網膜炎、神経障害、腎症が挙げられる)を引き起こすことがある;冠動脈疾患、末梢血管疾患、および脳血管疾患;
・自己免疫性甲状腺炎 − 脱力、便秘、息切れ、顔および手足のむくみ、末梢性浮腫、徐脈;
・多発性硬化症 − 痙縮、視界不良、眩暈、脚弱、錯感覚;
・網膜ブドウ膜炎 − 暗視能力の低下、周辺視野の欠損;
【0051】
・紅斑性狼瘡 − 関節痛、発疹、光線過敏症、発熱、筋肉痛、手足のむくみ、尿検査異常(血尿、円柱尿、タンパク尿)、糸球体腎炎、認知障害、血管内血栓、心膜炎;
・強皮症 − レイノー病;手、腕、足および顔の腫脹;皮膚肥厚;指および膝の痛み、腫脹および硬直、胃腸障害、拘束性肺疾患;心膜炎;腎不全;
・リウマチ性脊椎炎、変形性関節症、敗血症性関節炎および多発性関節炎のような炎症成分を有する他の関節炎症状 − 発熱、痛み、腫脹、圧痛;
・髄膜炎、アルツハイマー病、AIDS認知症脳炎のような他の炎症性脳障害 − 羞明、認知障害、記憶喪失;
・網膜炎のような他の炎症性眼炎 − 視力低下;
【0052】
・湿疹、他の皮膚炎(例えば、アトピー性、接触性)、乾癬、UV照射(太陽光線および同様のUV源)により誘発されるやけどのような炎症性皮膚障害 − 紅斑、痛み、落屑、腫脹、圧痛;
・クローン病、潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患 − 痛み、下痢、便秘、直腸出血、発熱、関節炎;
・喘息 − 息切れ、喘鳴;
・アレルギー性鼻炎のような他のアレルギー障害 − くしゃみ、掻痒、鼻汁
・脳卒中後の脳損傷のような急性外傷に関連する症状 − 感覚消失、運動喪失、認知喪失;
【0053】
・心筋虚血による心臓組織損傷 − 痛み、息切れ;
・成人呼吸窮迫症候群において生じるような肺損傷 − 息切れ、過換気、酸素化能力の低下、肺浸潤;
・敗血症、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群のような炎症を伴う感染 − 発熱、呼吸不全、頻脈症、低血圧、白血球増多;
・特定の臓器または組織に関連する他の炎症性の症状:例えば、
・腎炎(例えば、糸球体腎炎)− 乏尿、尿検査異常;
・虫垂炎 − 発熱、痛み、圧痛、白血球増多;
【0054】
・痛風 − 病変のある関節の痛み、圧痛、腫脹および紅斑、血清の上昇および/または尿中尿酸;
・胆嚢炎 − 腹部の痛みおよび圧痛、発熱、吐き気、白血球増多;
・息切れ、喘鳴;
・うっ血性心不全 − 息切れ、ラ音、末梢性浮腫;
・II型糖尿病 − 心血管病、眼疾患、腎疾患および末梢血管疾患を含む終末器官合併症;
【0055】
・肺線維症 − 過換気、息切れ、酸素化能力の低下;
・アテローム性動脈硬化症および再狭窄のような血管疾患 − 痛み、感覚消失、脈拍低下、機能喪失;および
・移植片拒絶反応を引き起こす同種免疫 − 痛み、圧痛、発熱。
【0056】
亜臨床症状は、その発生が臨床症状の兆候の前に起こり得る炎症の診断マーカーを含むが、これに限定されるものではない。一の群の亜臨床症状は、炎症誘発性リンパ球系細胞の臓器または組織における浸潤または蓄積、または臓器または組織に対して特異的な病因または抗原を認識する活性炎症誘発性リンパ球系細胞の局所性または末梢性存在のような、免疫学的症状である。リンパ球系細胞の活性化は、当該技術分野における公知技術によって、例えば1つまたはそれ以上の炎症性サイトカインまたはメディエーターを測定することによって、測定することができる。
【0057】
対象体の治療に対する応答性は、急性期に使用される選択された薬物が下記の1つまたはそれ以上の臨床的徴候および症状の軽減を引き起こすかどうかによって評価される。
【0058】
本発明に関連して、「予防」は、主に、疾患の症状の再発予防のための維持療法または炎症のマーカーのような炎症の尺度に関して用いられる。例えば、予防は、炎症性腸疾患(IBD)を自然発症する動物(例えば、IL−10欠損マウス、TNF ΔAREまたはSAMP1/Yitマウス)において立証することができ、処置動物における疾患の発生の回避または遅延を包含する。
【0059】
亜臨床的症状の「軽減」の例は、炎症誘発性サイトカインまたはリンホカインを分泌する免疫細胞の数の減少またはこのようなリンホカインまたはサイトカインをコードするmRNAの減少の処置個体における観察結果である。
【0060】
「維持療法」は、疾患の症状の1つまたはそれ以上の寛解(総合的または部分的)の達生から次に疾患が再燃するまでの疾患、障害または症状の期の間の治療である。部分寛解は、病態に通常関連する症状の1つまたはそれ以上の消失または軽減である。非限定的例によって、特にIBDに関連して、急性期の特徴としては、悪心、下痢、嘔吐、発熱、腹部圧痛、痛み、腹痛、場合によっては貧血および栄養障害徴候のような症状が挙げられる。痔瘻が現れることがある。便は観血的であり得るか、または、潜血が生じることがあり、検査で決定され得る。白血球は、中程度に上昇する;沈降率はしばしば上昇し、活性期から寛解期への移行をモニターするために使用することができる。低カリウム血症、低アルブミン血症および低カルシウム血症は、急性期の間に生じることがある。粘膜中の病変および炎症組織を見つけるために腹部のX線検査およびバリウム注腸を使用する;同じ目的でCTスキャンおよび超音波を使用することができる。維持療法は、存在することを以前に決定された異常な症状が正常値に戻った時に始まる。急性期治療は、通常、患者および用いる療法に依存して、2〜6週間続く。維持期の間の本発明の化合物の投与を含む維持療法の長さは、典型的には、寛解の誘発から疾患の再燃が出現するまで、または、疾患が制御されているならば無期限に続く。おそらく、相応の疾患制御の数年後に本発明の化合物の投与を止めることも可能であるが、疾患の再出現の徴候を注意深く観察するべきである。
【0061】
「応答者」とは、特定の量の特定の活性作用物質(または活性作用物質の組合せ)の投与を含む炎症性の疾患、障害または症状の治療に以前に応答したことのある患者をいう。
【0062】
「対象体」とは、動物をいい、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトまたは家畜である。最も好ましくは、対象体はヒトである。本明細書で用いる場合、患者なる用語は、ヒト(または哺乳動物)対象体と同意語として用いられる。
【0063】
「治療上有効量」は、状態、障害または症状を治療するために哺乳動物に投与した場合、かかる治療を達成するのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効量」は、化合物、疾患およびその重篤度、ならびに治療を受ける哺乳動物の年齢、体重、健康状態および反応性によって異なるであろう。
【0064】
医薬組成物
本発明の方法において用いる場合、式(I)で示される化合物は、原体物質として投与することができるが、活性成分を、例えば該作用物質が意図される投与経路および標準的な製薬プラクティスに関して選択される医薬上許容される担体と混合されている医薬製剤中にて提供することが好ましい。
【0065】
「医薬上許容される」なる語句は、一般的に安全であるとみなれる分子的実体および組成物をいう。特に、本発明の医薬組成物で使用される医薬上許容される担体は、患者に投与した場合、生理学的に耐えられ、典型的にアレルギーまたは同様の有害反応(例えば、胃の不調および眩暈など)を生じない。好ましくは、本明細書で用いる場合、「医薬上許容される」なる用語は、動物において、および特にヒトにおいて用いるために、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方または他の一般的に認められている薬局方に挙げられているものを意味する。
【0066】
「医薬上許容される賦形剤」は、一般的に安全で非毒性で、生物学的にもそれ以外でも望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用およびヒト医薬的使用に受け入れられる賦形剤を包含する。「医薬上許容される賦形剤」は、本明細書で用いる場合、1種類のこのような賦形剤および2種類以上のこのような賦形剤の両方を含む。
【0067】
「担体」なる用語は、活性化合物と一緒に投与される希釈剤、賦形剤および/またはビヒクルをいう。本発明の医薬組成物は、2種類以上の担体の組み合わせを含有することができる。かかる医薬担体は、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、および油(落花生油、大豆油、鉱油およびゴマ油などのような、石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものが挙げられる)のような滅菌液体であり得る。水または生理食塩水、ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、好ましくは、特に注射液用の担体として用いられる。適当な医薬担体は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” by E.W. Martin, 18th Editionに記載されている。
【0068】
本発明の化合物は、ヒト医学または獣医学において用いるためのいずれもの好都合な方法で投与のために処方することができ、したがって、本発明は、その範囲内に、ヒト医学または獣医学において用いるのに適した本発明の化合物を含む医薬組成物を含む。かかる組成物は、一種類またはそれ以上の適当な担体の助けをかりて慣用的な方法で用いるために提供され得る。治療用途に許容される担体は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。医薬担体の選択は、意図される投与経路および標準的な製薬プラクティスに関して選択することができる。医薬組成物は、担体として、それに加えて、いずれもの適当な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、および/または可溶化剤を踏むことができる。
【0069】
本発明に従って用いるための医薬組成物は、1種類またはそれ以上の医薬上許容される担体または賦形剤を用いて慣用の方法で処方され得る、経口用、非経口用、経皮用、吸入用、舌下用、局所用、植込み用もしくは鼻腔内用の、または経腸投与(または他の粘膜投与)される、懸濁剤、カプセル剤または錠剤の剤形であり得ることが理解されるであろう。
【0070】
異なる送達系に依存して様々な組成物/製剤要求がある。全ての化合物を同一経路によって投与する必要があるとは限らないと理解されるべきである。同様に、組成物が2種類以上の活性成分を含む場合、これらの成分は、異なる経路によって投与することができる。一例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを用いて、または、例えば鼻腔用スプレー剤または吸入用エアゾール剤または体内摂取可能な溶液として粘膜経路によって、または、組成物が例えば静脈内経路、筋肉内経路または皮下経路による送達のために注射用剤形によって処方される場合には非経口的に送達されるように処方することができる。別法として、製剤は、複数の経路によって送達され得る。
【0071】
本発明はまた、医薬上許容されるビヒクルと混合した式Iで示される化合物またはその塩の1つの治療上有効量を含有する医薬製剤に関する。本発明の医薬製剤は、経口投与および/または非経口投与に適している液剤、例えば、点滴剤、シロップ剤、液剤、使える状態であるかまたは凍結乾燥製剤の希釈によって調製される注射液剤であり得るが、好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ペレット剤、ペッサリー剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤(salves)、ゲル剤、軟膏剤(ointments)としての固体または半固体;または液剤、懸濁剤、乳剤、または経皮経路または吸入による投与に適している他の剤形である
【0072】
本発明の化合物は、即時放出、遅延放出、修飾放出、持続放出、パルス放出または制御放出用途のために投与され得る。
【0073】
最も好ましい経口組成物は、ゆっくりとした、遅延された、または位置決めされた放出(例えば、腸内、特に、大腸内放出)錠剤またはカプセル剤である。この放出プロフィールは、限定されないが、胃内の条件に耐性を示すが病変または炎症部位が同定された大腸またはGI管の他の部分内で内容物を放出するコーティングを用いることによって達成され得る。遅延放出は、単に崩壊するのがゆっくりであるコーティングによって達成され得る。1種類またはそれ以上の適当なコーティングおよび他の賦形剤の選択によって、単一の製剤中にて2つの(遅延および位置決め放出)プロフィールを組み合わせることができる。このような製剤は、本発明のさらなる特徴を構成する。
【0074】
遅延または位置決め放出および/または腸溶性経口製剤に適している組成物としては、耐水性であり、pH感受性であり、腸液によって消化されるかまたは乳化されるか、または、湿らせた場合にゆっくりとしているが規則的な速度ではがれ落ちる物質でフィルムコーティングされた錠剤製剤が挙げられる。適当なコーティング物質としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸およびそのエステルの重合体、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリエチレングリコール、フタル酸ジブチル、トリアセチンおよびヒマシ油に限定されないがこれらのような可塑剤を使用することができる。顔料もまたフィルムを着色するために使用することができる。坐剤は、カカオ脂のような担体、Suppocire CおよびSuppocire NA50(ドイツ国デー−ヴァイル・アム・ラインのGattefosse Deutschland GmbHによって供給された)のような坐剤基剤、および硬化パーム油およびパーム核油(C8−C18トリグリセリド)のエステル交換、グリセロールおよび特定の脂肪酸のエステル化によって得られる他のSuppocire型賦形剤、またはポリグリコシル化グリセリド、およびwhitepsol(添加剤を含む硬化植物油誘導体)を使用することによって製造される。浣腸剤は、本発明の適当な活性化合物、および懸濁剤用の溶媒または賦形剤を使用することによって製剤化される。懸濁剤は、微粉末化された化合物、ならびに、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシビニルポリマーおよびその塩、アルギン酸およびその塩、アルギン酸プロピレングリコール、キトサン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミドポリマー、ポリメタクリル酸ビニル、ポリエチレングリコール、プルロニック、ゼラチン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、可溶性デンプン、プルランおよびメチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートレシチンの共重合体、レシチン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン水和ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および6.5〜8のpH範囲のプルロニックおよび適当なバッファー系のような懸濁液安定剤、増粘剤および乳化剤を含有する適当なビヒクルを使用することによって調製される。保存剤、マスキング剤の使用は好適である。微粉末化粒子の平均直径は、1〜20μmであり得るか、または、1μm未満であり得る。化合物はまた、それらの水溶性塩形態を使用することによって製剤に配合することができる。
【0075】
別法として、材料を、錠剤のマトリックス、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、またはアクリル酸およびメタクリル酸エステルの重合体に取り込むことができる。これらの後者の物質はまた、圧縮コーティングによって錠剤に塗布することもできる。
【0076】
医薬組成物は、活性物質の治療上有効量と、投与経路に依存して異なる形態を有することができる医薬上許容される担体とを混合することによって調製することができる。医薬組成物は、慣用の医薬賦形剤および製剤化方法を使用することによって調製することができる。経口投与のための剤形は、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マンニトールを包含する通常の固体ビヒクル、ならびにエタノール、グリセロールおよび水を包含するがこれらに限定されない通常の液体経口賦形剤を加えることができるカプセル剤、散剤または錠剤であり得る。全ての賦形剤を崩壊剤、溶媒、造粒剤、モイスチャライザーおよび結合剤と混合することができる。固体担体(例えば、デンプン、糖、カオリン、結合剤、崩壊剤)を経口組成物の調製に使用する場合、製剤は、限定されないが散剤、顆粒または被覆した粒子を含有するカプセル剤、錠剤、ハードゼラチンカプセル剤、または顆粒剤の剤形であり得、固体担体の量は、変化することできる(1mg〜1g)。錠剤およびカプセル剤は、好ましい経口組成物剤形である。
【0077】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、例えば、液剤、懸濁剤または乳剤を含む、意図される投与方法に適しているいずれもの剤形であり得る。液体担体は、典型的には、液剤、懸濁剤および乳剤を調製するのに使用される。本発明のプラクティスに用いるために意図される液体担体としては、例えば、水、生理食塩水、医薬上許容される有機溶媒、および医薬上許容される油脂など、ならびにそれらの2種類またはそれ以上の混合物が挙げられる。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、栄養剤、緩衝剤、保存剤、懸濁化剤、増粘剤、粘性調節剤および安定剤などのような他の適当な医薬上許容される添加剤を含有することができる。適当な有機溶媒としては、例えば、エタノールのような一価アルコール、およびグリコールのような多価アルコールが挙げられる。適当な油としては、例えば、大豆油、ヤシ油、オリーブ油、紅花油および綿実油などが挙げられる。非経口投与については、担体また、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどのような油性エステルであってもよい。本発明の組成物はまた、微粒子剤、マイクロカプセル剤およびリポソームカプセル剤などの剤形、ならびにそれらの2種類またはそれ以上の組み合わせであってもよい。
【0078】
本発明において有用な経口組成物のための医薬上許容される崩壊剤の例としては、デンプン、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、微結晶性セルロース、アルギネート、樹脂、界面活性剤、発泡組成物、ケイ酸アルミニウム水溶液および架橋ポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本発明において有用な経口組成物のための医薬上許容される結合剤の例としては、アカシア;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体;ゼラチン、グルコース、デキストロース、キシリトール、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、トラガカント、キサンタン樹脂、アルギネート、ケイ酸マグネシウム−アルミニウム、ポリエチレングリコールまたはベントナイトが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0080】
経口組成物のための医薬上許容される充填剤の例としては、ラクトース、アンヒドロラクトース、ラクトース・一水和物、シュークロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、セルロース(特に、微結晶性セルロース)、ジヒドロ−またはアンヒドロリン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
本発明の組成物において有用な医薬上許容される滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、酸化エチレンの重合体、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびコロイド状二酸化ケイ素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
経口組成物に適している医薬上許容されるオドラントの例としては、合成アロマ、およびオイル、花、果物(例えば、バナナ、リンゴ、酸果桜桃、桃)の抽出エキスおよびそれらの組合せのような天然芳香油、および類似のアロマが挙げられるが、これらに限定されるものではない。それらの使用は多くの因子に依存しており、最も重要なのは、該医薬組成物を摂取するであろう個体群の官能受容性である。
【0083】
経口組成物に適している医薬上許容される色素の例としては、二酸化チタン、β−カロテンおよびグレープフルーツ果皮抽出エキスのような合成色素および天然色素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
経口組成物に適している医薬上許容される甘味料の例としては、アスパルターム、サッカリン、サッカリンナトリウム、サイクラミン酸ナトリウム、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクトースおよびシュークロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
適当な医薬上許容される緩衝剤の例としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
適当な医薬上許容される界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
適当な医薬上許容される保存剤の例としては、溶媒、例えば、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、第4級アンモニウム塩、およびパラベン(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンなど)のような種々の抗細菌剤および抗真菌剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
適当な医薬上許容される安定剤および抗酸化剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオ尿素、トコフェロールおよびブチルヒドロキシアニソールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
本発明の化合物はまた、例えば、坐剤(例えば、ヒト用または獣医学用の慣用の坐剤基剤を含有する)として、またはペッサリー剤(例えば、慣用のペッサリー基剤を含有する)として、処方され得る。
【0090】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、シャンプー剤、散剤(スプレー散剤または散布剤を包含する)、ペッサリー剤、タンポン剤、スプレー剤、ディップ剤、エアゾール剤、点滴剤(例えば、点眼剤、点耳剤または点鼻剤)またはポーオン剤(pour-ons)の剤形で、ヒト医学および獣医学で用いるための局所投与用に処方することができる。
【0091】
皮膚への局所投与については、本発明の作用物質は、例えば、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水のうちの1つまたはそれ以上との混合物に、懸濁または溶解した活性化合物を含有する適当な軟膏剤として処方することができる。かかる組成物はまた、高分子物質、油、液体担体、界面活性剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、抗酸化剤、モイスチャライザー、皮膚軟化剤、着色料およびオドラントのような他の医薬上許容される賦形剤を含有することもできる。
【0092】
かかる局所用組成物に適している医薬上許容される高分子物質の例としては、アクリル酸ポリマー;セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;天然ポリマー、例えば、アルギナート、トラガカント、ペクチン、キサンタンおよびキトサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
適応があれば、本発明の化合物は、鼻腔内投与または吸入により投与することができ、好都合には、ドライパウダー吸入器、または適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134AT””)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA)、二酸化炭素または他の適当なガスを使用する加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーからのエアゾールスプレー提供の形態で送達される。加圧エアゾールの場合、投与単位は、定量を送達するための弁を設けることによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば、溶媒としてエタノールおよび噴霧剤の混合物を使用して、活性化合物の溶液または懸濁液を含有することができ、さらに滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0094】
吸入器またはガス注入器で使用するためのカプセル剤およびカートリッジ剤(例えば、ゼラチン製)は、当該化合物およびラクトースまたはデンプンのような適当な粉末基剤の粉末混合物を含有するように処方することができる。吸入による局所投与については、本発明の化合物は、ネブライザーによってヒトまたは獣医学で使用するために送達され得る。
【0095】
本発明の医薬組成物は、0.01〜99%w/vの活性物質を含有することができる。局所投与については、例えば、当該組成物は、一般に、0.01〜10%、より好ましくは、0.01〜1%の活性物質を含有するであろう。
【0096】
治療上有効量は、患者の年齢および全身の生理学的状態、投与経路、ならびに使用した医薬製剤に依存するであろう。治療量は、一般的に、約10〜2000mg/日、好ましくは、約30〜1500mg/日であろう。例えば50〜500mg/日、50〜300mg/日、100〜200mg/日を包含する他の範囲を用いることができる。
【0097】
投与は、1日1回、1日2回、またはそれよりも高頻度であってよく、疾患または障害の維持期の間に、例えば毎日または1日2回の代わりに2または3日に1回に減らすことができる。投与量および投与の頻度は、当業者に知られている急性期の臨床的徴候の少なくとも1つまたはそれ以上、好ましくは2つ以上が軽減されたかまたはなくなった寛解期の維持を裏付ける臨床的徴候に依存するであろう。より一般的には、投与量および頻度は、一部、本発明の化合物による治療が考えられる疾患、症状または障害の病理学的徴候ならびに臨床学的および亜臨床学的症状の後退に依存するであろう。
【0098】
治療期間は、利益が持続し、および/または副作用が許容され、および/または炎症またはそのマーカーが和らぐ(減少するかまたは除かれる)限り数週間から数ヶ月まで、数年までの範囲である。
【実施例】
【0099】
本発明の化合物の治療効果を次のようなインビトロおよびインビボの実験で測定した。
【0100】
生物学的実施例でアッセイされたサイトカインは、上昇した量で表される場合には炎症のマーカーであり、また細胞増殖、顆粒球脱顆粒および肺好中球増加症の場合には、これら免疫細胞の挙動もまたそれらの活性化の、したがって炎症のマーカーである。したがって、炎症誘発性サイトカインの発現または分泌の減少および細胞増殖、脱顆粒または好中球蓄積の減少は、化合物の抗炎症活性の尺度である。肺好中球増加症は、特に、COPDのモデルとしての役割を果たす。
【0101】
本明細書で規定した生物学的アッセイを使用して分析した化合物は、それが、少なくとも1つの刺激剤(例えば、PMAまたはPHA)での刺激後に、少なくとも1つの阻害機能(すなわち、TNF−αまたはIL−6の阻害)において正の対照(すなわち、アジスロマイシン)よりも優れていれば「活性がある」と見なされる。より好ましくは、化合物は、非毒性である濃度での少なくとも1つのアッセイにおいて50%を超える阻害を示す。
【0102】
実施例1
試料調製
インビトロ実験で使用される試験物質をジメチルスルホキシド(DMSO)(クロアチアのKemika)に50mMおよび10mMの濃度で溶解し、さらに、1%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、1%L−グルタミン、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンおよび2.5μg/mLファンギゾン(アムホテリシンB)を追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)1mLで最終濃度50μMおよび10μMに希釈した。FBSを米国のSigmaから購入した以外は、培地およびすべての培地追加物をオーストラリアのGibcoから購入した。
【0103】
実施例2
末梢血白血球の単離
末梢血白血球(PBL)は、健康なボランティアの静脈血から、2%デキストランT−500(米国のAmersham Biosciences)での沈殿およびそれに続く多白血球血漿の遠心分離により得た。
【0104】
実施例3
インビトロでの刺激されたヒト末梢血白血球による炎症誘発性サイトカイン産生の阻害
上記のようにして単離した末梢血白血球(PBL)を、48ウェルプレート中で、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS、米国のBiowhittaker)、100U/mlペニシリン(オーストラリアのGibco)、100μg/mlストレプトマイシン(オーストラリアのGibco)および2mM L−グルタミン(オーストラリアのGibco)を追加したRPMI 1640培地(クロアチアのInstitute of Immunology)からなる培養培地中に1ウェル当たり3〜5×106細胞の濃度で播種し、5%COおよび湿度90%の雰囲気下、37℃で試験化合物と一緒に2時間プレインキュベートした。次いで、刺激剤(米国のSigma)を最終濃度2μg/mLのリポ多糖(LPS)、1μg/mLのホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)または120μg/mLのザイモサンに加えた。試料を上記条件下で一夜インキュベートした。インキュベーション終了時に、上清をエッペンドルフ管に移し、1500×gで10分間遠心分離した。細胞上清中のヒトTNF−α、IL−1β、IL−6およびIL−8の濃度を、捕獲および検出用抗体(ミネソタ州ミネアポリスのR&D Systems)を製造会社の推奨に従って使用してサンドイッチELISAにより測定した。
【0105】
下記式を用いて阻害率(%)を算出した:
阻害率(%) = (1 − 試料中のサイトカインの濃度 / 正の対照中のサイトカインの濃度) × 100
正の対照とは、物質で処理されなかった、刺激された試料をいう。
【0106】
【表1】

【0107】
実施例4
末梢血単核細胞の単離
健康なドナーからヘパリン化末梢血を採取し、400gで30分間のHistopaque 1077(米国のSigma)密度遠心分離により末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。回収したPBMCを血漿中にて400g/10分で遠心分離し、RPMI 1640(クロアチアのInstitute of Immunology)に再懸濁し、遠心分離により洗浄した。
【0108】
実施例5
インビトロで刺激されたヒト末梢血単核細胞によるT細胞特異的サイトカイン、IL−2およびIL−5の産生の阻害
上記のようにして単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、48ウェルプレート中で、上記のRPMI培養培地中に1ウェル当たり1×106細胞の濃度で播種した。細胞を10μg/mLのフィトヘマグルチニン(PHA)(米国のSigma)で刺激し、湿度90%中、37℃および5%CO2にて試験化合物(10および50μM)と一緒に3日間インキュベートした。サイトカイン濃度を、捕獲および検出用抗体(米国のR&D)を製造会社の推奨に従って使用してサンドイッチELISAにより測定した。
【0109】
下記式を用いて阻害率(%)を算出した:
阻害率(%) = (1 − 試料中のサイトカインの濃度 / 正の対照中のサイトカインの濃度) × 100
【0110】
正の対照とは、物質で処理されなかった、刺激された試料をいう。
【0111】
【表2】

【0112】
実施例6
インビトロでのヒトT細胞増殖に対する効果
2つの異なる濃度(50μMおよび10μM)の物質の、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の細胞増殖に対する影響を評価した。
【0113】
健康なドナーからヘパリン化末梢血を採取し、400×gで30分間のHistopaque 1077(米国のSigma)密度遠心分離によりPBMCを単離した。刺激剤[PHA(2.5μg/mL)(米国のSigma)、またはPMA(10ng/mL)(米国のSigma)およびイオノマイシン(500ng/mL)(米国のCalbiochem)の両方]の存在下(正の対照)または不在下(負の対照)で、試験化合物の存在下にて、5%CO2および湿度90%の雰囲気下にて37℃で、上記RPMI培地中にて、5×104細胞/ウェルを3日間培養した。培養の最後の18時間の間、1ウェル当たり1μCiの3H−チミジン(米国のAmersham)で細胞を脈動させ、多重セルハーベスター(米国のPackard)を使用して96ウェルフィルター(米国のPackard Bioscience)にて収集した。活性化された細胞における3H−チミジンの取り込みを、TopCount NXT(米国のPackard)を用いて測定した。
【0114】
下記式を用いて阻害率(%)を算出した:
阻害率(%) = (1 − 1分当たりのカウント(cpm)で表される試料中の(3H)チミジン取り込み / cpmで表される正の対照中の(3H)チミジン取り込み) × 100
ここで、正の対照とは、物質で処理されなかった、刺激された試料をいう。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例7
顆粒球の単離
密度勾配遠心分離を用いてヘパリン化全血から顆粒球を得た。3%デキストランT−500(スウェーデン国ウプサラのAmersham Pharmacia Biotech AB)で赤血球を沈殿させた。白血球をFicoll(スウェーデン国ウプサラのAmersham Pharmacia Biotech AB)にて20℃にて600gで35分間遠心分離した。簡単な低浸透圧溶解により残存する赤血球から顆粒球のペレットを取り出した。
【0117】
実施例8
顆粒球の脱顆粒の阻害
上記のようにして単離した1×106顆粒球をRPMI−1640培地(クロアチアのInstitute of Immunology)中に再懸濁させ、サイトカラシンB(5μg/mL)および10または50μMの試験化合物と一緒に37℃で2時間インキュベートした。次いで、0.1μM fMLP(米国のSigma)または0.5μM A23187(米国のCalbiochem)の添加により脱顆粒を誘発した。n−メトキシスクシニル−l−アラニル−l−アラニル−l−プロリル−l−バリン−p−ニトロアニリド(米国ミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Company)のようなヒト好中球エラスターゼに対して特異的な発色基質を用いて遊離好中球エラスターゼの活性を測定した。405nmの吸光度で分光光度計を使用して一次顆粒のマーカーとしてのエラスターゼ活性を上清中にて評価した。
【0118】
【表4】

【0119】
実施例9
顆粒球中の蓄積
10μMの試験マクロライドを含有するRPMI 1640(クロアチアのInstitute of Immunology)3mLに、上記のようにして単離した7.5×106顆粒球を懸濁させた。試料を37℃で180分間インキュベートした。インキュベーション後、該試料を、ジヒドロキシ末端シリコーンオイルであるポリ(ジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン)(米国ミルウォーキーのAldrich Chemical Company)の層を介して遠心分離した。該ペレットを脱イオン水(MilliQ、米国ベッドフォードのMillipore Corporation)中0.5%Triton X−100(米国セントルイスのSigma)に再懸濁させた。該懸濁液を超音波処理し、アセトニトリルで蛋白質を沈殿させ、液体クロマトグラフィー−マススペクトル(LC−MS)により上清中のマクロライドの濃度を測定した。
【0120】
シリコーンオイルを介する遠心分離後に回収した平均細胞数から試験化合物の細胞内濃度を算出した。文献によると、好中球約100万個が0.24μLの体積を有すると考えられる(Vazifeh et al., Antimicrob Agents Chemo. 1997; 41: 2099-2107)。マクロライド蓄積の程度を推定するために、細胞内対細胞外濃度比(I/E)を算出した(ここで、E(大量のインキュベーション培地に起因する)を定数とした(10μM))。結果は、下記方程式に従ってアジスロマイシンと比較して表す:
アジスロマイシン取り込みに対する% = (物質のI/E / アジスロマイシンのI/E) × 100
アジスロマイシンについて得られたI/E値は164±10であった。
【0121】
【表5】

【0122】
実施例10
Hep G2およびA549細胞系の細胞傷害性アッセイ
試験化合物の抗炎症活性がインビトロで観察されたサイトカイン産生の阻害および増殖の阻害によるものであるかまたは細胞の細胞傷害性の結果ではなかったのかを決定するために、生細胞におけるコハク酸デヒドロゲナーゼ活性の測定を行った。50μMおよび12.5μMの濃度の試験化合物の存在下、37℃で、上記RPMI培地中にて細胞を24時間培養した。次いで、検出試薬であるMTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド](米国のPromega)を添加し、培養物を0.5〜2時間インキュベートした。490nmで分光光度計を使用して、生成したMTT−Formazanの量を測定した(Mosmann, J. Immunol. Methods, 1983, 65: 55-63)。
【0123】
下記式を使用して生細胞の割合を算出した:
生細胞(%) = (1 − 処理した細胞のOD490 / 未処理の細胞のOD490) × 100
【0124】
【表6】

【0125】
実施例11
Balb/cJマウスにおけるリポ多糖誘発性TNF−α産生
体重25〜33gの雄性Balb/cJマウス(フランスのIffa Credo)をランダムにグループ分けした(動物7匹を試験化合物で処理した;正の対照グループは7匹であった;負の対照グループは4匹であった)。物質およびビヒクル[0.125%カルボキシメチルセルロース(米国のSigma)]を腹腔内投与した。物質は、体重1kgにつき10mgの投与量で投与した。投与した容量は、体重41kgあたり10mLであった。30分後、マウス1匹につき滅菌生理食塩水0.2mLあたり25μgの濃度および容量の滅菌生理食塩水中リポ多糖(LPS)(米国のSigma)溶液を各動物に腹腔内投与したが、負の対照においてはこれらを投与しなかった。攻撃の90分後、全ての動物を、総頸動脈を穿刺することにより失血死させた。捕獲および検出抗体(米国のR&D)を製造会社の推奨に従って使用してサンドイッチELISAによりTNF−αの血漿濃度を測定した。結果を、正の対照(攻撃されたが処理されていない動物)と比べたTNF−α産生の阻害の%として下記表に表す。
【0126】
【表7】

【0127】
実施例12
顆粒球に対する酸化バースト阻害アッセイ
上記したようにして単離したヒト顆粒球における酸化バーストアッセイについて化合物の酸化バーストに対する効果をインビトロで研究した。96ウェルプレート中にてアッセイを行った。健康なボランティア(クロアチアのTransfusion Center)から血液を採取し、上記したようにデキストラン沈殿およびフィコール抽出法によりヒト顆粒球を単離した。各ウェル中、単離した顆粒球50000個をDMEM 100μLに懸濁させた。試験化合物の最終濃度は50および12.5μMであった。次いで、ルミノール(c=0.25mg/mL)50μLを添加した。酸化バーストの検出剤としてのルミノールを過酸化物と反応させ、反応生成物の1つとして光が生じる。次いで、刺激剤、ホルボール−12−ミリステートアセテート(PMA)(c=33ng/mL)またはザイモサン(c=120μg/mL)50μLを添加した。
【0128】
【表8】

【0129】
実施例13
雄性BALB/cJマウスにおける細菌性リポ多糖によって誘発される肺好中球増加症
平均体重約30gの雄性BALB/cJマウス(フランスのIffa Credo)をランダムにグループ分けした(試験グループにおけるn=7、正の対照におけるn=8、負の対照におけるn=7)。マウスに試験化合物5mgの1回投与量を腹腔内(i.p.)投与した。投与の2時間後、60μLの容量のPBSに溶解した細菌性リポ多糖(LPS)2μgを、負の対照グループ以外の全て試験グループに鼻腔内投与した。負の対照グループには同容量(60μL)のビヒクルPBSを投与した。LPSの投与の約24時間後に動物を屠殺し、気管支肺胞洗浄液(BALF)を得、これを使用してBALF中のIL−6およびTNF−αの濃度、細胞の絶対数、ならびに好中球の割合を測定した。結果を、正の対照(LPS刺激されたが未処理の動物)と比べた処理動物のBALF中の細胞総数、好中球の相対数ならびにTNF−αおよびIL−6濃度の減少率で表す。
【0130】
【表9】

【0131】
BALFにおける炎症細胞の蓄積に加えて、PBSまたはLPS暴露の24時間後のLPSにより誘発される肺炎症の程度および解剖学的部位を評価した。動物を屠殺した後、気管支周囲(PB)および血管周囲(PV)の肺組織領域および肺胞腔における顆粒球および単核細胞の蓄積をモニターした。
【0132】
LPSによる攻撃は、PBSで攻撃したグループ(負の対照)と比べて肺組織中の顆粒球および単核細胞の両方の有意な蓄積を誘発した。試験化合物は、肺組織(PBおよびPV)における顆粒球および単核細胞の両方の蓄積を有意に減少させた。
【0133】
全ての試験において、本発明の化合物は、抗炎症剤として非常に活性であることが判明し、該抗炎症活性は、比較化合物のものに匹敵するかまたはそれ以上であることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない炎症性免疫応答を特徴とするかまたはそれに関連する炎症性の疾患、障害または症状の治療方法であって、対象体に、式(I):
【化1】

[式中、
1は、水素であるか、またはR2と一緒になって二重結合であり;
2は、式(II)で示されるクラジノース糖、水素、ヒドロキシル、または式(III)で示される基:
【化2】

(ここで、Yは、置換されていないかまたはハロゲン、OH、OMe、NO2およびNH2から選択される基で置換されている単環式芳香環である)であるか;または
2は、R3と一緒になってケトンであるか、またはR1と一緒になって二重結合であり;
3は、水素であるか、またはR2と一緒になってケトンであるか、またはR4と一緒になってエーテルであり;
4は、ヒドロキシルまたはOMeであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5は、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、−(CH2)m−Ar(ここで、Arは、炭素原子10個までを有し、NおよびOから選択されるヘテロ原子0〜3個を含有し、置換されていないかまたはハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシによって置換されている単環式もしくは二環式芳香環であり、mは0〜3である)であり;
6は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
Xは、酸素または硫黄である]
で示される化合物およびその医薬上許容される誘導体の治療上有効量を投与することを含む方法。
【請求項2】
1が水素であり;
2が式(II):
【化3】

で示されるクラジノース糖またはヒドロキシルであり;
3が水素であるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4がヒドロキシルであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5が−(CH2)m−Ar(ここで、Arは、置換されていないかまたはハロゲンまたはC1-6ハロアルキルのうちの1つまたはそれ以上によって置換されている、炭素原子10個までの単環式または二環式芳香環であり、mは0〜2である)であり;
6が水素であり;
Xが酸素または硫黄である;および
その医薬上許容される誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1が水素であり;
2が式(II):
【化4】

で示されるクラジノース糖またはヒドロキシルであり;
3が水素であるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4がヒドロキシルであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5が、ベンジル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、2−フルオロフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3−トリフルオロメチル−4−クロロフェニル、1−(1−ナフチル)−エチルであり;
6が水素であり;
Xが酸素または硫黄を表す;および
その医薬上許容される誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
白血球の炎症組織への浸潤に関連する炎症性の症状または免疫もしくはアナフィラキシー障害の治療を必要とする対象体におけるその治療方法であって、かかる対象体に式(I)で示される化合物の治療上有効量を投与することを含む方法。
【請求項5】
症状、障害または疾患が喘息、COPD、びまん性汎細気管支炎、成人呼吸窮迫症候群、炎症性腸疾患、クローン病、気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺線維症、びまん性汎細気管支炎および嚢胞性線維症からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
症状、障害または疾患が肺、関節、眼、腸、皮膚および心臓の炎症性の症状および免疫障害からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
症状、障害または疾患が喘息、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、嚢胞性線維症、関節リウマチ、リウマチ性脊椎炎、変形性関節症、骨髄炎、副鼻腔炎、鼻茸、痛風関節炎、ブドウ膜炎、結膜炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、遠位直腸炎、乾癬、湿疹、皮膚炎、挫創、冠動脈梗塞損傷、冠動脈疾患、慢性炎症、内毒素性ショックおよび平滑筋増殖障害からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
炎症性サイトカインまたは炎症性メディエーターの過度の未制御産生を特徴とするかまたはそれに関連する炎症性の疾患、障害または症状の治療方法であって、対象体にT細胞増殖またはサイトカイン産生を減少させるかまたは阻害するのに有効な式(I)で示される化合物の治療上有効量を投与することを含む方法。
【請求項9】
望ましくない炎症性免疫応答を特徴とするかまたはそれに関連する炎症性の疾患、障害および症状の治療方法を含む、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5のうちの1つまたはそれ以上の過剰分泌に関連する疾患または障害または症状の治療方法であって、対象体に式(I):
【化5】

[式中、
1は、水素であるか、またはR2と一緒になって二重結合であり;
2は、式(II)で示されるクラジノース糖、水素、ヒドロキシル、または式(III)で示される基:
【化6】

(ここで、Yは、置換されていないかまたはハロゲン、OH、OMe、NO2およびNH2から選択される基で置換されている単環式芳香環である)であるか;または
2は、R3と一緒になってケトンであるか、またはR1と一緒になって二重結合であり;
3は、水素であるか、またはR2と一緒になってケトンであるか、またはR4と一緒になってエーテルであり;
4は、ヒドロキシルまたはOMeであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5は、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、−(CH2)m−Ar(ここで、Arは、炭素原子10個までを有し、NおよびOから選択されるヘテロ原子0〜3個を含有し、置換されていないかまたはハロゲン、C1-6ハロアルキル、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシによって置換されている単環式もしくは二環式芳香環であり、mは、0〜3である)であり;
6は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
Xは、酸素または硫黄である]
で示される化合物およびその医薬上許容される誘導体の治療上有効量を投与することを含む方法。
【請求項10】
1が水素であり;
2が式(II):
【化7】

で示されるクラジノース糖またはヒドロキシルであり;
3が水素であるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4がヒドロキシルであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5が−(CH2)m−Ar(ここで、Arは、置換されていないかまたはハロゲン、C1-6ハロアルキルのうちの1つまたはそれ以上によって置換されている、炭素原子10個までの単環式もしくは二環式芳香環であり、mは0〜2である)であり;
6が水素であり;
Xが酸素または硫黄を表す;および
その医薬上許容される誘導体である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
1が水素であり;
2が式(II):
【化8】

で示されるクラジノース糖またはヒドロキシルであり;
3が水素であるか、またはR4と一緒になってエーテルを表し;
4がヒドロキシルであるか、またはR3と一緒になってエーテルであり;
5が、ベンジル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、2−フルオロフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3−トリフルオロメチル−4−クロロフェニル、1−(1−ナフチル)−エチルであり;
6が水素であり;
Xが酸素または硫黄を表す;および
その医薬上許容される誘導体である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
式Iで示される化合物が、
【化9】


およびその医薬上許容される誘導体
からなる群から選択される、請求項1および9記載の方法。
【請求項13】
炎症誘発性サイトカイン産生、リンパ球増殖、顆粒球脱顆粒、t細胞増殖、好中球増多および浮腫からなる群から選択される1つまたはそれ以上の炎症過程を阻害する方法であって、炎症に罹患している臓器または組織を、該炎症過程を阻害するのに有効な量の式(I)で示される化合物に暴露させることを含む方法。
【請求項14】
炎症誘発性サイトカイン産生を阻害する方法であって、対照白血球と比べてTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5のうちの少なくとも1つの産生を減少させるのに有効な量の式(I)で示される化合物にヒト末梢白血球を暴露させることを含む方法。
【請求項15】
ヒトT細胞増殖を阻害する方法であって、式(I)で示される化合物に暴露させていない対照T細胞と比べてヒトT細胞の産生を減少させるのに有効な量の該化合物にヒトT細胞を暴露させることを含む方法。
【請求項16】
炎症過程が炎症誘発性サイトカイン産生を含み、対照白血球と比べてTNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−2またはIL−5のうちの少なくとも1つの産生を減少させるのに有効な量の式(I)で示される化合物にヒト末梢白血球を暴露させることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
TNF−αの産生が減少する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
IL−1αおよび/またはIL−1βの産生が減少する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
IL−2および/またはIL−5の産生が減少する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
炎症過程がT細胞増殖を含み、請求項1記載の化合物に暴露させていない対照T細胞と比べてヒトT細胞の産生を減少させるのに有効な量の該化合物にヒトT細胞を暴露させることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項21】
炎症過程が顆粒球脱顆粒を含む、請求項13記載の方法。
【請求項22】
炎症過程が顆粒球脱顆粒を含み、顆粒球脱顆粒を減少させるのに有効な量の請求項1記載の化合物にヒト顆粒球を暴露させることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項23】
炎症過程がリンパ球増殖を含む、請求項13記載の方法。
【請求項24】
抗原に対する免疫応答が阻害される、請求項13記載の方法。
【請求項25】
炎症過程が好中球増多を含む、請求項13記載の方法。
【請求項26】
炎症過程が浮腫を含む、請求項13記載の方法。
【請求項27】
炎症過程の阻害が、サイトカインの産生、T細胞の産生、顆粒球の脱顆粒、細胞増殖または好中球産生を少なくとも50%阻害することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項28】
阻害が少なくとも90%である、請求項27記載の方法。

【公表番号】特表2008−526945(P2008−526945A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550874(P2007−550874)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001088
【国際公開番号】WO2006/097849
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506261316)グラクソスミスクライン・イストラジヴァッキ・センタル・ザグレブ・ドルズバ・ゼー・オメイェノ・オドゴヴォルノスティオ (25)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE ISTRAZIVACKI CENTAR ZAGREB D.O.O.
【Fターム(参考)】