説明

抗癌治療の効力を推定するための感受性試験

本開示は、種々の抗癌治療に対する癌細胞の感受性を決定するための方法、およびこれらの治療の効力を推定するための方法を提供する。具体的には、本開示は、インビトロで患者の癌細胞を候補抗癌治療に曝した後に、患者の癌細胞の感受性を決定することに基づいて、患者における1種以上の候補抗癌治療の効力を推定するための方法を提供する。本開示は、患者の癌細胞のインビトロでの感受性試験および代理宿主に移植したこの患者の癌細胞の代理インビボ効力試験を使用することによって、候補抗癌治療の効力を推定する方法をさらに提供する。本開示は、患者にとって最も有効な抗癌治療を選択し、それによって、効果のないまたは不要な処置を避けるための方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連技術)
本願は、米国特許出願第60/494022号(2003年8月8日出願)に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、種々の治療に対する癌細胞の感受性を決定するための方法に関する。具体的には、本開示は、患者における1つ以上の候補抗癌治療の効力を、候補抗癌治療としてスクリーニングされている種々の処置レジメンに対するこの患者の癌細胞の感受性を決定することに基づいて、推定するための方法に関する。この開示は、各患者にとって最も有効な抗癌治療を選択し、それによって、不要な処置を避けるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
現在、最も臨床的に有効な抗癌治療は、試験されるヒト癌細胞のわずか約10〜50%において望ましい応答を生じるにすぎず、抗癌処置は、しばしば、望ましくない副作用が付随する。
【0004】
候補抗癌治療が、癌細胞を阻害または死滅させる能力を測定するための既存の方法としては、新たな腫瘍生検材料におけるテトラゾリウムブルー還元に対する効果を測定すること(Blackら,1954,J Nat Cancer Inst 14:1147−1158)、ヒト腫瘍幹細胞のクローニングに対する効果を測定すること(Salmonら,1978,N Engl J Med 298:1321−1327)、試験されている抗癌剤の存在下および非存在下で、腫瘍細胞による放射性標識チミジンの取り込みに対する効果を測定すること(Kernら,1987,Intl J Cell Cloning 5:421−431)、生細胞および死細胞の染色特性の差に対する影響を測定すること(Weisenthalら,1991,Oncology,5:93−103)が挙げられる。コロニー形成試験は、インビトロで癌細胞の増殖に対する候補抗癌治療の効果を決定するための方法として、現時点では好都合であるが、試験が成功するだけ十分長い期間にわたって、腫瘍細胞はインビトロで十分に増殖しない可能性があることが理解されている。これらの方法の各々は、候補抗癌治療に対する癌細胞の感受性の何らかの尺度を提供するが、これらのアッセイの多くは、完了するまでに1〜3週間を要する。一般に、医師も患者も、結果を得るためにそれほど長い時間待つことはできない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、3〜5日間以内に、種々の抗癌治療に対する患者の癌細胞の感度を決定する方法を提供し、この方法は、この患者から取り出されインビトロで種々の抗癌治療に曝された細胞のDNA含有量を測定することにより行われる。種々の抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための迅速な方法を提供することによって、本発明は、個体ベースで最も有効な抗癌治療を同定および選択するための方法を提供する。種々の抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための迅速な方法を提供することによって、本発明は、望ましい性質(例えば、患者の癌細胞に対する高選択的細胞傷害性および患者の非癌細胞に対する低細胞傷害性)を有する治療を同定するために、望まれるだけ多くの候補抗癌治療をスクリーニングするための適した方法を提供する。
【0006】
本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供し、この方法は、患者の癌細胞サンプルを、インビトロでこの候補抗癌治療に曝す工程、この候補抗癌治療に曝した後にこのサンプル中の各癌細胞のDNA含有量を測定する工程、この候補抗癌治療に曝した後に、このサンプルの細胞周期分布を決定する工程により行われ、ここでこの候補抗癌治療に曝した後のこのサンプルの細胞周期分布における変化は、この患者の癌細胞が、この候補抗癌治療に対して感受性であることを示す。特に、本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供し、ここでこの候補抗癌治療に曝した後の癌細胞のサンプルにおけるG1期に達しない集団の増加は、この治療がこの患者の癌細胞に対して細胞傷害性であることを示す。この候補抗癌治療に曝した後のこのサンプル中のG2/M期集団の増加は、この治療が、この患者の癌細胞の増殖を阻害することを示す。
【0007】
本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供し、この方法は、この候補抗癌治療に対するこの患者の非癌細胞の感受性を決定する工程もまた包含する。
【0008】
本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を迅速に決定するための方法を提供し、この方法は、この患者の癌細胞のサンプルを、インビトロでその候補抗癌治療に曝す工程、この候補抗癌治療に曝した後にこのサンプル中の各癌細胞のDNA含有量を測定する工程、この候補抗癌治療に曝した後に、このサンプルの細胞周期分布を決定する工程により行われ、ここでこの方法は、約3日間〜約5日間以内に完了する。本発明は、約3日間以内に候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供する。本発明は、約4日間以内に候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供する。本発明は、約5日間以内に候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供する。
【0009】
本発明は、複数の候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供し、この方法は、複数の癌細胞のサンプルを複数の候補抗癌治療に曝す工程によって行われる。各治療に対するこの患者の癌細胞の感受性に基づいて、この候補抗癌治療の有効性を順位付けする方法、およびこの患者にとって最も有効な候補抗癌治療を同定するための方法が提供される。
【0010】
本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を迅速に決定するための方法を提供し、この方法は、この患者の癌細胞のサンプルを、インビトロでその候補抗癌治療に曝す工程、この候補抗癌治療に曝した後にこのサンプル中の各癌細胞のDNA含有量を測定する工程、この候補抗癌治療に曝した後に、このサンプルの細胞周期分布を決定する工程により行われ、ここでこの候補抗癌治療は、DNA損傷因子またはG2チェックポイント抑止因子であり得る。本発明は、例えば、以下の1種以上の非ペプチドG2チェックポイント抑止化合物に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供する:4−クロロ−安息香酸4−メトキシ−フェニルエステル(CDBC004)、4−クロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC401);4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC402);3,4,5−トリフルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC403);4−フルオロ−安息香酸4−ブロモ−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC404)、3,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC405)、2,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC406)、4−フルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC407)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC408)、4−クロロ−安息香酸3,4−ジメチル−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC409)、4−クロロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC410)、4−フルオロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC411)、4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステル(CBDC412)、4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメチル−フェニルエステル(CBDC413)、4−ブロモ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル(CBDC414)、4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメトキシ−フェニルエステル(CBDC415)、4−ブロモ−安息香酸6−メチル−ピリジン−3−イルエステル(CBDC418)、4−ブロモ−チオ安息香酸O−p−トリルエステル(CBDC440)、4−ブロモ−ジチオ安息香酸p−トリルエステル(CBDC441)、または4−ブロモ−チオ安息香酸S−p−トリルエステル(CBDC442)。本発明は、例えば、以下の1種以上のG2チェックポイント抑止ペプチドまたはG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供する:CBP500(配列番号26)、CBP501(配列番号27)、CBP504(配列番号29)、CBP505(配列番号30)、CBP506(配列番号31)、CBP510(配列番号32)、CBP511(配列番号33)、CBP512(配列番号34)、またはCBP603(配列番号37)。
【0011】
本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を迅速に決定するための方法を提供し、この方法は、この患者の癌細胞のサンプルを、インビトロでその候補抗癌治療に曝す工程、この候補抗癌治療に曝した後にこのサンプル中の各癌細胞のDNA含有量を測定する工程、この候補抗癌治療に曝した後に、このサンプルの細胞周期分布を決定する工程により行われ、ここでこの抗癌治療は、併用療法である。併用療法は、特に、DNA損傷因子およびG2チェックポイント抑止因子の併用が癌細胞に対して選択的に細胞傷害性である場合、DNA損傷因子およびG2チェックポイント抑止因子を含む。このG2チェックポイント抑止因子は、DNA損傷因子の細胞傷害性効果に対して癌細胞を選択的に感受性にする併用療法の効力を推定するための方法が提供される。1つの併用療法において、このDNA損傷因子はイリノテカン(CPT−11)であり、このG2チェックポイント抑止因子はCBDC402である。別の併用療法において、このDNA損傷因子はイリノテカン(CPT−11)であり、このG2チェックポイント抑止因子はCBDC004である。別の併用療法において、このDNA損傷因子はシスプラチン(CDDP)であり、このG2チェックポイント抑止因子はCBP501(配列番号27)である。
【0012】
本発明は、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供し、この方法は、インビトロで癌細胞の感受性を測定する工程を包含し、候補抗癌治療の代理インビボ効力試験もまた包含する。この代理効力試験は、異種移植片腫瘍アッセイであり、このアッセイは、この患者の癌細胞のサンプルを代理宿主に移植する工程、この代理宿主において腫瘍を形成させる工程、この代理宿主を候補抗癌治療で処置する工程、およびこの腫瘍に対するこの候補抗癌治療の効果を測定する工程を包含する。
【0013】
本発明は、患者に対する抗癌治療の効果を推定するための方法を提供し、この方法は、この患者の癌細胞のサンプルを、この候補抗癌治療にインビトロで曝す工程、この候補抗癌治療に曝した後に、この癌細胞のサンプルの細胞周期分布を決定する工程、およびこの患者の癌細胞に対するこの候補抗癌治療の細胞傷害性を決定する工程、を包含する。本発明は、この候補抗癌治療の安全性を決定するための方法をさらに提供し、この方法は、この患者の非癌細胞のサンプルを、この候補抗癌治療にインビトロで曝す工程、およびこの患者の非癌細胞に対するこの候補抗癌治療の細胞障害性を決定する工程による。
【0014】
本発明は、患者にとって最も有効な抗癌治療を選択するための方法を提供し、この方法は、複数の候補抗癌治療に対してこの患者の癌細胞および非癌細胞の感受性を決定する工程、この患者の癌細胞および非癌細胞に対する各候補抗癌治療の細胞傷害性を決定する工程、ならびにこの細胞に対して最大の細胞傷害性を有しかつこの患者の非癌細胞に対して最小の細胞傷害性を有する治療を選択する工程により行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本開示は、種々の抗癌治療に対する癌細胞の感受性を決定するための方法を提供する。特に、本開示は、患者における種々の抗癌治療の効力を、種々の抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定することに基づいて、推定するための方法を提供する。この開示は、患者にとって最も有効な抗癌治療を、候補抗癌治療としてスクリーニングされている化合物および/または処置に対する患者の癌細胞の感受性を決定するためのエキソビボ方法に基づいて、選択するための方法をさらに提供する。多くの候補治療が、患者の癌細胞に対する適切な高レベルの選択的細胞傷害性、かつこの患者の非癌細胞に対する許容可能に低いレベルの非選択的細胞傷害性を有する治療を見出すためにスクリーニングされ得る場合、非特異的な副作用がより少ない、有効な抗癌治療を選択するための方法が提供される。従って、本開示は、患者を処置する前に、種々の抗癌治療に対する患者の癌細胞の応答を推定するための方法を提供する。その結果、各患者にとって最も有望な処置レジメンが選択され得、不要な処置または効果のない処置が避けられ得る。本願の主題は、全体が参考として援用される、米国特許出願第10/457,029号(2003年6月6日出願)の主題に関連する。
【0016】
別段規定されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されている意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(ある)(a)」、「および(と)(and)」、「この(その)(the)」、「である(is)」は、文脈が明らかに別のものを示さなければ、複数形を包含する。例えば、1つの「化合物」に対する言及は、複数の化合物を包含し、「(1つの)残基」または「(1つの)アミノ酸残基」に対する言及は、1つ以上の残基および1つ以上のアミノ酸に対する言及を包含する。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的で、明白に参考として本明細書に援用される。
【0017】
(抗癌治療の効力を推定するための方法)
本発明は、抗癌治療の効力を推定するための方法を提供する。特に、増殖性障害(例えば、癌(転移性および非転移性の固形腫瘍または液状腫瘍(liquid tumor)が挙げられる))に対して有効な候補治療を同定するための方法が提供される。より具体的には、増殖性障害に罹患している個々の被験体(特にヒト患者)にとって最も有効な候補治療を同定するための方法が提供される。本明細書に提供される方法は、同様に、増殖性障害を処置する(例えば、癌(転移性および非転移性の固形腫瘍または液状腫瘍(liquid tumor)が挙げられる)を処置する)ために使用され得る。本明細書で使用される場合、用語「増殖性障害」および「増殖性状態」とは、少なくとも1つの細胞の異常な増殖または望ましくない増殖により特徴づけられる任意の病理的生理学的状態または非病理的生理学的状態(望ましくないかまたは所望されていない細胞増殖または細胞生存によって特徴づけられる状態、欠損したアポトーシスまたは異常なアポトーシスによって特徴づけられる状態、ならびに異常な細胞生存または望ましくない細胞生存または所望されない細胞生存により特徴づけられる状態が挙げられる)を意味する。本明細書で使用される場合、用語「癌」とは、増殖性障害をいう。本明細書で使用される場合、用語「癌細胞」とは、増殖性障害(例えば、癌)の異常な細胞増殖特性を受けているか、またはこのような特性を受ける可能性がある、細胞をいう。本明細書で使用される場合、「抗癌治療」とは、被験体における増殖性障害(特に、癌)の症状を阻害、改善、低減するかまたはその増殖症外を排除する、処置レジメンをいう。「抗癌治療」は、1つ以上の化合物、1つ以上の物理的処置(例えば、照射、熱、またはさらに手術)、または化合物と物理的処置との併用を包含し得る、処置レジメンをいう。「候補抗癌治療」とは、被験体における増殖性障害(特に、癌)の症状を阻害、改善、低減するか、またはその増殖性障害を排除することを意図した処置レジメンをいい、ここでこの候補抗癌治療は、本発明の方法に従って施されている。
【0018】
本明細書に提供される方法は、増殖性障害(例えば、癌)を受けやすい任意の被験体におけるこのような障害に対して有効な、候補抗癌治療を同定するために使用され得る。用語「被験体」とは、動物、代表的には、哺乳動物(例えば、霊長類(ヒト、サル、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、マカク)、家畜(イヌおよびネコ)、家畜(farm animal)(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)および実験動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)をいう。被験体としては、動物疾患モデル(例えば、腫瘍を保有するマウスまたはラット)、特に、ヒト癌細胞がマウスに移植されて腫瘍を形成する異種移植片マウスモデルが挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「患者」とは、抗癌治療での処置が必要なヒト被験体をいう。
【0019】
本発明は、被験体に由来する癌細胞を提供する工程、癌細胞と、候補抗癌治療剤とを接触させる工程、および候補抗癌治療に曝された癌細胞のサンプルの1細胞あたりのDNA含有量を決定する工程を包含する方法を提供する。以下に開示されるように、候補抗癌治療に曝された細胞のサンプル中の各癌細胞のDNA含有量を決定することにより、この候補治療が、癌細胞に対して望ましい細胞傷害性効果または阻害性効果を有するか否かを決定することが可能になる。本発明の方法はまた、一般に、被験体に由来する非癌(正常)細胞を使用して、この候補治療が癌細胞に対する選択的効果を有するか否かを決定するために、同じ工程を実施することを包含することが理解される。本発明は、種々の抗癌治療に対する被験体の癌細胞の感受性を決定するためのエキソビボ方法、試験される各抗癌治療の有効性および安全性を推定するためのエキソビボ方法、ならびに短時間で最も有効な治療を選択するためのエキソビボ方法を提供する。
【0020】
本明細書に提供される方法は、候補抗癌治療をスクリーニングして、特定の被験体にとって最も有効な抗癌治療を同定するために適している。本発明の一局面に従って、癌細胞は、患者から単離され、候補抗癌治療に曝され、各サンプルにおける各細胞のDNA含有量が決定される。このことは、患者の癌細胞に対する各候補抗癌治療の効果のインビトロでの測定を提供し、これによって、各候補治療に対する患者の癌細胞の感受性のインビトロでの推定を提供する。一実施形態において、上記のインビトロ方法は、多くの候補抗癌治療をスクリーニングして、患者の癌細胞に対するそれらの有効性を決定するために適している。別の実施形態において、上記のインビトロ方法は、複数の患者に由来する癌細胞を用いて実施される。別の実施形態において、上記のインビトロ方法は、抗癌治療における候補化合物または候補処置の潜在的有用性についてこれらの化合物または処置をスクリーニングするために使用される。別の実施形態において、上記のインビトロ方法は、複数の患者に由来する細胞を使用して実施されて、抗癌治療におけるそれらの潜在的有用性について、候補化合物または候補処置がスクリーニングされる。
【0021】
本発明の方法はまた、一般に、被験体に由来する非癌(正常)細胞を用いて、候補治療が癌細胞に対して選択的効果を有するか否かを決定するために、同じ工程を実施することを包含することが理解される。非癌細胞に対する効果を測定することはまた、患者の癌細胞に対して有効であると思われる候補抗癌治療の安全性および潜在的副作用を推定するために使用され得る。一実施形態において、非癌細胞に対する効果は、試験されている各候補抗癌治療について測定される。別の実施形態において、非癌細胞に対する効果は、患者の癌細胞に対して望ましい細胞傷害性または阻害性効果を有すると同定された各候補抗癌治療について測定される。
【0022】
本明細書に提供される方法は、実験動物モデルを使用して、候補抗癌治療をスクリーニングするために適している。一局面に従って、候補抗癌治療は、種々の増殖性障害に対する動物モデルまたは代理と考えられる動物から単離された癌細胞に対するインビトロ効果を測定することによって、スクリーニングされ得る。特に、候補抗癌治療は、特定の型の癌に関する動物モデルまたは代理と考えられる動物から単離された癌細胞に対するインビトロ効果を測定することによってスクリーニングされ得る。一実施形態において、このインビトロスクリーニング方法は、特定の型の癌の1以上の動物モデルに由来する細胞を使用して、多数の候補抗癌治療をスクリーニングするために使用される。別の実施形態において、このインビトロスクリーニング方法は、特定の型の癌の1以上の動物モデルに由来する細胞を使用して、抗癌治療におけるそれらの潜在的有用性について、候補化合物または候補処置をスクリーニングするために使用される。
【0023】
本発明の方法は、培養した細胞のインビトロ感受性試験、および代理インビボ効力試験を使用して、候補抗癌治療をスクリーニングするために特に適している。このことにより、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を推定するための少なくとも2つのエキソビボ方法を提供する。上記異種移植片腫瘍アッセイは、本発明に従って、候補抗癌治療についての適切な代理インビボ効力試験を提供する。インビトロ感受性試験、および異種移植片腫瘍アッセイを用いる代理インビボ効力試験の両方を使用する実施形態の非限定的な例が、以下の実施例1、2、および3において開示される。ヒト患者から単離された癌細胞は、培養において増殖され、1つ以上の候補抗癌治療に曝され、各細胞のDNA含有量が測定される。このことにより、各候補治療に対するその患者の癌細胞の感受性のインビトロでの尺度を提供する。異種移植片腫瘍アッセイにおいて、ヒト被験体から単離された癌細胞は、適切な宿主(例えば、マウス)に移植されて、腫瘍を形成する。その後、この宿主動物は、候補抗癌治療で処置されて、腫瘍増殖に対する効果が、測定される。宿主において移植されたヒト腫瘍に対する候補抗癌治療の効果を測定することによって、異種移植片腫瘍アッセイは、候補治療にヒト患者を曝さす必要なしに、各候補治療に対する患者の癌細胞の感受性についtれ、第2の代理のインビトロでの尺度を提供する。非癌細胞はまた、患者から単離され、上記のインビトロ方法を使用して試験されて、候補抗癌治療の安全性および潜在的副作用を決定し得ることが理解される。
【0024】
インビトロ感受性試験および代理インビボアッセイの両方を包含する方法は、特に臨床状況において、候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を推定するための、安全かつ有効な方法を提供する。さらに、このような方法は、インビトロでの結果の確認を提供し、あり得る副作用を検出するための代理アッセイ系を提供する。最後に、このような方法は、標準的な処置のインビトロでの効果および代理のインビボでの効果を測定し、これらの効果を、候補抗癌治療(特に、新規な候補抗癌治療またはこれまでに試験されていない候補抗癌治療)のインビトロでの効果および代理のインビボでの効果とを比較することにより、スクリーニングアッセイを較正するための手段を提供する。
【0025】
本発明は、患者に合わせて調整された抗癌治療を設計するための方法を提供し、より好都合な応答速度を提供する。さらに、本発明は、患者において不要な、危険な、またはあまり有効でない抗癌治療の使用を避け、それによって、所望されない副作用を避けるかまたは最小にするための方法を提供する。
【0026】
一局面に従って、本発明の方法は、患者の癌細胞が感受性である抗癌治療のみを選択して使用するためのガイダンスを提供し、これによって、その患者について成功する可能性が低い治療を避けることによって、費用効率を提供する。成功する可能性が低い処置を避けることによって、この患者は、効果のない処置の副作用を被ることから保護される。種々の実施形態において、患者の癌細胞の感受性は、その細胞が患者から取り出されて後に、約2日間以内、3日間以内、4日間以内、5日間以内、6日間以内、7日間以内、8日間以内、9日間以内または10日間以内に決定され得る。特定の実施形態において、患者の癌細胞の感度は、患者から取り出されてから約3日〜約5日後に、決定され得る。
【0027】
(試験用の細胞)
一局面によれば、癌細胞は、以下の方法(末梢血の採血、骨髄の吸引、組織(腫瘍)生検、または例えば、腫瘍または他の癌組織を取り出す手術の間に外科的に癌細胞を取り出すことが挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、被験体(特定にヒト患者)から細胞を単離することによって提供される。非癌細胞がまた、特定の実施形態において処置されている場合、これらの細胞は、被験体の適切な位置から単離され得る。必要であれば、細胞は、1つ以上の候補抗癌治療に曝す前に、さらに走査され得る(例えば、細胞塊を、酵素消化して、単一の細胞懸濁物を調製し得るか、または細胞集団を、細胞培養を用いてインビトロで拡大し得る)。本発明の方法は、広く種々の癌(癌腫、新生物、増殖性障害)に由来する癌細胞を試験するために使用され得る。これらの癌としては、卵巣癌、膀胱癌、肺癌(小細胞癌を含む)、子宮頚癌、乳癌、前立腺癌、神経膠腫、線維肉腫、網膜芽腫、黒色腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病、胃癌、結腸癌、腎臓の癌腫、胃腸癌、唾液腺の癌、膵臓癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病および慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、精巣癌、軟部組織肉腫、慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症、慢性顆粒球性白血病、原発性脳癌腫、悪性膵臓インスリノーマ、悪性類癌腫(carcinoid carcinoma)、悪性黒色腫、絨毛上皮腫、菌状息肉腫、頭部および頸部の癌腫、骨原性肉腫、膵臓癌種、急性顆粒球性白血病、ヘアリーセル白血病、神経芽腫、横紋筋肉腫、カポージ肉腫、尿生殖器の癌腫、甲状腺の癌種、食道の癌腫、悪性高カルシウム血症、頸部過形成、腎細胞癌、子宮内膜癌腫、真性赤血球増加症、本態性血小板減少症、副腎皮質癌腫、皮膚癌、および前立腺癌腫が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本明細書に提供される教示を適合させて、本明細書に列挙されていない他の癌に対する候補抗癌治療の有効性を試験し得ることが、理解される。同様に、当業者は本明細書に提供される方法を実施して、任意の増殖性障害の適切な動物モデルを使用して、候補抗癌治療の効力を試験し得ることが、理解される。
【0028】
一局面に従って、正常(非癌)細胞のサンプルおよび癌細胞のサンプルのDNA含有量を別個に分析して、インビトロでの感受性試験の精度を高めるための方法が提供される。一実施形態において、癌細胞および正常(非癌)細胞は、別個の位置から取り出され、そのサンプルは、いつでも別個に保持される。正常細胞および癌細胞の両方が存在するサンプルにおいて、これらの細胞は、種々の方法によって区別され得、これらの方法としては、正常細胞と癌細胞との間を区別する抗体または他のプローブを使用すること、癌細胞における異数性を検出すること、または正常細胞と癌細胞との間の形態的な差異を観察することが挙げられる。一実施形態において、混合サンプル中の正常細胞および癌細胞は、DNA含有量を分析する前に、別個のサンプルに分けられて細胞周期が決定される。別の実施形態において、混合サンプル中の正常細胞および癌細胞が分析され、その細胞型(正常または癌)が、各細胞のDNA含有量が測定されると同時に区別される。
【0029】
種々の癌から単離された癌細胞に対する抗癌治療の効果を別個に分析するための方法が、本明細書で提供される。一局面に従って、候補抗癌治療の効果は、種々の位置から単離された癌細胞サンプルについて別個に評価される。一実施形態において、癌細胞サンプルは、患者の身体内の種々の位置からの癌細胞が等しい感受性を有するか否かを決定するために、その種々の位置における癌組織から採取される。一実施形態において、癌細胞は、その身体の種々の位置で見出される別個の腫瘍から単離される。一実施形態において、癌細胞は、1種を超える形態で存在する癌(例えば、いくつかの位置では固形腫瘍を形成し、血液もしくはリンパ中に循環もする、癌)から単離される。別の実施形態において、癌細胞は、癌組織内の種々の位置から(例えば、単一の腫瘍内の複数の位置から、または肝臓組織、肺組織、もしくは乳房組織内の複数の位置で癌細胞が増殖しているこれらの組織から)単離される。別の局面に従って、癌細胞のサンプルは、異なる個体から単離された同じ型の癌細胞の感受性を比較するために、同じ型の癌と診断された複数の患者から、採取される。
【0030】
(サンプル中の細胞周期の決定)
本発明は、候補抗癌治療に対する被験体の癌細胞の感受性を決定するための方法を提供し、この方法は、以下に記載される細胞周期分布に対する影響を測定することにより行われる。候補抗癌治療に対して曝露した後のサンプルの細胞周期分布のシフトは、サンプル中の細胞が、治療に対して高感度であったことを示す。サンプル中の各細胞のDNA含有量を測定し、各細胞の細胞周期段階を決定することによって、正常細胞周期段階(G0/G1、S、およびG2/M)の各々にあるサンプル中の細胞数、ならびにサンプル中の死細胞(「G1期に達していない」細胞)数および異数性細胞数を決定することが可能である。従って、「サンプル中の細胞周期分布を決定すること」とは、正常細胞周期段階(G0/G1、S、およびG2/M)にあるサンプル中の細胞の割合、およびサンプル中の死細胞(「G1期に達していない」細胞)と異数性細胞の割合を決定することをいう。
【0031】
本発明に従って、候補癌治療で処置された細胞のサンプル中の各細胞のDNA含有量および細胞周期段階は、DNAに化学量論的に結合し、かつ核におけるDNA量に比例する検出可能なシグナルを発する化合物で、細胞DNAを染色し、次いで、選択されたDNA染色化合物に適した任意の方法を用いて1細胞あたりのDNA含有量を決定することを包含する、組成物および方法を用いて決定され得る。適切な化合物としては、ヨウ化プロピジウム(PI)、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、Hoechst色素(特に、Hoechst 33342)、サイバーグリーン、ミトラマイシン、DAPI、または当該分野で公知の他のDNA染色化合物が挙げられるが、これらに限定されない。細胞のDNA含有量は、種々のアプローチ(例えば、フローサイトメトリー、レーザースキャンニングサイトメトリー、ならびに当該分野で公知の他の適切な方法、および以下の実施例において記載される他の適切な方法、ならびに例えば、Givan、Flow Cytometry:First Principles(Wiley,2002)またはShapiro,Practical Flow Cytometry,第4版(Wiley,2003)に記載される方法)を用いて分析され得る。
【0032】
細胞のDNA含有量は、細胞の細胞周期段階の指標として使用され得る。ここでこのDNA含有量は、DNAに化学量論定に結合する蛍光色素(例えば、ヨウ化プロピジウム(PI))の蛍光強度に比例する。サンプル中で、細胞周期のG1期(第1のギャップ)、S期(DNA合成)、G2/M期(第2のギャップ/有糸分裂)の各々における細胞の分布は、集団中の各細胞の核DNA含有量を測定することによって決定され得る。G2/M細胞のDNA含有量は、G1細胞のDNA含有量の2倍である。S期の細胞は、G1期集団とG2/M期集団との間に分布する。細胞周期が回っていない細胞は、G0期にあると考えられる。
【0033】
数学的処理(逆重畳が挙げられるが、これらに限定されない)は、DNA含有量の測定値を、サンプル中の細胞集団の細胞周期分布の代表に変換するために、使用される。細胞周期分布を表す1つの一般的な方法は、特定のDNA含有量を有する細胞数を示す「ヒストグラム」を生成することである。一般に、類似のDNA含有量を有する細胞集団を表すヒストグラムのクラスターの代表は、特定の値の周りに集まった「ピーク」のように見えるものを形成する。正常(非癌)細胞のDNAヒストグラムは、大きな正規分布した(ガウス)ピーク(これは、二倍体のG0/G1細胞のDNA含有量を示す)により通常特徴づけられる。癌細胞のDNA含有量は、しばしば正常なDNA含有量から変動するので、癌細胞のサンプルは、しばしば、DNAヒストグラム上の異なる水平(x軸)位置で第2のG0/G1ピーク中に示される。2つ(または2以上)のG0/G1ピークの出現が、DNA含有量異常性が存在することを確立することにおいて重要な特徴である。細胞周期が回っていない集団、すなわち細胞周期が停止した集団は、しばしば、S期細胞およびG2/M細胞を欠いているが、細胞周期が回っている集団は、大きな割合のS期細胞およびG2/M細胞を有する。細胞周期が停止した癌細胞は、ときおり、他の細胞集団に比較して、S期およびG2/Mに存在する細胞数が有意に減少しており、そして/またはG0/G1に存在する細胞数が有意に増大している、細胞集団と同定され得る。
【0034】
死細胞および異数体細胞はまた、それらのDNA含有量に基づいて同定され得る。アポトーシス(細胞死)の間に、DNAは、エンドヌクレアーゼによりフラグメント化され、これらの小さなDNAフラグメントは、細胞から外に漏出し得、G1期よりも少ない、減少した総DNA含有量を生じる。従って、「G1期に達していない」蛍光ピークは、集団中の死細胞数を示すと理解される。
【0035】
本発明に従って、候補抗癌治療に曝した後のサンプル中の細胞周期分布における変化は、細胞がその治療に感受性であることを示す。細胞周期分布における特定の変化は、感受性細胞に対する抗癌治療の作用の様式の指標として使用され得る。候補抗癌治療に曝されたサンプル中のG1期に達していない集団の増大は、その治療がそのサンプル中の細胞に対して細胞傷害性であったことを示すと理解される。特に、候補抗癌治療に曝した癌細胞のサンプル中のG1期に達していない集団の増大は、この治療が、これらの癌細胞に対して細胞傷害性であったことを示すと理解される。この候補抗癌治療に曝した後のサンプル中のG2/M集団の増大は、この治療がこのサンプル中の細胞の増殖(分裂、有糸分裂)を示すと理解される。特に、候補抗癌治療に曝した後の癌細胞のサンプル中のG2/M集団における増大は、この治療が癌細胞の集団を阻害することを示すと理解される。
【0036】
特定の実施形態において、患者の癌細胞に対して細胞傷害性である抗癌治療が好ましい。他の実施形態において、患者の癌細胞の増殖を阻害する抗癌治療が好ましい。他の実施形態において、感受性の癌細胞に対して他の効果を有する抗癌治療が好ましい。当業者は、特定の実施形態について調べた抗癌治療の作用の好ましい態様を決定し得る。
【0037】
上記のように、正常(非癌)細胞も、一般に、候補抗癌治療に曝され、それらのDNA含有量もまた、この抗癌治療の選択性を決定する「コントロール」として測定される。本発明のこの局面に従って、候補抗癌治療に曝露した後の正常(非癌)細胞のサンプルにおけるG1期に達していない集団の増大は、非選択的細胞傷害性を示す。逆に、癌細胞のサンプルにおけるG1期に達していない集団の増大、および同じ患者に由来する正常(非癌)細胞のサンプル中のG1期に達していない集団が、ほとんどまたは全く増大していないことにより、研究されている患者に由来する癌細胞に対する候補抗癌治療の選択的細胞傷害性が示される。癌細胞に対する選択的細胞傷害性を有する抗癌治療が好ましいことが理解される。
【0038】
(さらなるパラメーターの測定)
本発明の別の局面に従って、候補抗癌剤の効力を決定するための方法は、必要に応じて、DNA含有量以外の他のパラメーターを測定することを包含する。いくつかの場合において、さらなる測定が、候補抗癌治療の標的をより正確に決定するために使用され得る。望ましい場合、癌細胞が、例えば、研究されている癌の型に特異的な抗体で標識され得る。同様に、当業者は、研究されている癌の他の特有の特徴(例えば、研究されている癌細胞を特徴づける、遺伝子発現または酵素活性)を測定し得る。遺伝子発現は、当該分野で公知の方法を用いて測定され得る。これらの方法としては、特異的mRNAまたは特異的タンパク質のレベルを決定することが挙げられるが、これらの限定されない。タンパク質レベルは、例えば、特異的抗血清を用いるウェスタンブロッティングにより、またはコードされたタンパク質の活性を測定することにより、例えば、癌関連転写因子の活性を検出するためにDNAゲルシフトアッセイを用いることにより、またはこのような因子によって活性化されることが公知の遺伝子の発現を分析することにより、分析され得る。発現はまた、例えば、mRNA転写物を検出するための特異的プローブでのノーザンブロッティングにより、遺伝子転写物を測定することにより測定され得る。研究されている癌細胞の特有の特徴を測定することにより、これらの細胞の正体の確認が提供され得る。さらに、特有の特徴を測定することにより、どのような特有の特徴が候補抗癌治療により標的化されるかもまた示され得る。
【0039】
候補抗癌治療の他の効果のさらなる測定を行うことも可能である。例示すると、細胞の大きさおよび形態は、細胞周期停止状態にある癌細胞を同定するためのさらなる手がかりを提供するために使用され得る。サンプル中の小さな癌細胞は、細胞周期が停止した癌細胞であり得、それらの大きさにより、これらの癌細胞が(より大きな)悪性の対応物から分化することになる。癌細胞形態に関して、細胞周期が停止した癌細胞はまた、一般に、活発でない外観を有する核(例えば、凝集したクロマチンを有する核、または異常な核小体もしくは顕著な核小体を有する核)を有する細胞として同定され得る。癌細胞は、細胞性癌原遺伝子のような特定の重要な遺伝子の発現に基づいて、周期が停止中であると同定され得る。例えば、c−myc遺伝子の発現の減少は、停止した細胞の1つの指標であり得る。AP1転写因子をコードする遺伝子(例えば、c−jun、およびなおより具体的には、c−fos)の発現の増大もまた、細胞周期が停止した癌細胞に特徴的であると考えられる。特定の実施形態において、細胞周期が停止した癌細胞の測定は、特定の患者に由来する特定の型の癌細胞を停止させるが、死滅させない候補抗癌治療を同定するために有用であり得る。
【0040】
(抗癌治療)
本発明は、被験体に対する抗癌処置の効力を推定するための方法を提供し、この方法は、この抗癌治療に対するこの被験体の癌細胞の感受性を決定する工程によって行われる。本発明の方法に従って、癌細胞は、候補抗癌化合物の存在下または非存在下で、インビトロで癌細胞を培養する工程、またはインビトロで培養した癌細胞を、候補の抗癌性物理的処理で処理する工程を包含するが、これらに限定されない方法を用いて、候補抗癌治療と接触される。本発明の方法において使用するために適した抗癌治療としては、DNA損傷因子、G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物、G2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物、ならびに併用療法が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、本明細書に記載されていない候補抗癌治療の有効性を評価するために、本発明の方法を利用し得、本発明の方法を実施することによって得られた結果に基づいて、患者に対して個々に合わせた処置計画を展開し得る。
【0041】
(抗癌治療:DNA損傷因子)
本発明の方法において使用するために適した抗癌治療としては、DNA損傷因子が挙げられ、この薬剤は、直接的にまたは間接的にDNAを損傷する任意の処置レジメンを包含する。DNA損傷因子は、DNA損傷を引き起こすことが公知である、化合物処置および物理的処置を包含し、そして/あるいはスクリーニング法(例えば、米国特許出願第09/667,365号に記載される)によって同定される。DNA損傷因子の具体的な例としては、5−フルオロウラシル(5−FU)、レベッカマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、高体温、UV照射、ガンマ線照射、α線照射、高温、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗物質、植物アルカロイド、植物抽出物、放射性同位体、カペシタビン、S−1(テガフール、5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリジンおよびオキソン酸)、5−エチニルウラシル、アラビノシルシトシン(ara−C)、5−アザシチジン(5−AC)、2’,2’−ジフルオロ−2’−デオキシシチジン(dFdC)、プリン代謝拮抗物質(メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン)、ゲムシタビン塩酸(ジェムザール)、ペントスタチン、アロプリノール、2−フルオロ−アラビノシル−アデニン(2F−ara−A)、ヒドロキシウレア、硫黄マスタード(ビスクロロエチルスルフィド)、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、AZQ、マイトマイシンC、ジアンヒドロガラクチトール、ジブロモスルシトール(dibromoducitol)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ニトロソウレア(BCNU、CCNU、4−メチルCCNUまたはACNU)、プロカルバジン、デカルバジン、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン;ADR)、ダウノルビシン(セルビシン)、イダルビシン(イダマイシン)およびエピルビシン(Ellence))、アントラサイクリンアナログ(例えば、ミトキサントロン、アクチノマイシンD(actinimycin D)、非挿入トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エピポドフィロトキシン(エトオシド=VP16、テニポシド=VM−26)、ポドフィロトキシン、ブレオマイシン(Bleo)、ペプレオマイシン、白金誘導体(シスプラチン(CDDP)、シスプラチンのトランスアナログ、カルボプラチン、イプロプラチン、テトラプラチンおよびオキサリプラチン)を含む核酸との付加物を形成する化合物))、ならびにカンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(CPT−11)、およびSN−38が挙げられるが、これらに限定されない。核酸損傷処置の具体的な例としては、照射(例えば、紫外線(UV)、赤外線(IR)、またはα線照射、β線照射、γ線照射)ならびに環境ショック(例えば、高体温)が挙げられる。当業者は、本発明の方法において使用するために適切な他のDNA損傷因子およびDNA損傷処理を同定および利用し得る。
【0042】
(抗癌治療:G2チェックポイント抑止因子)
本発明の別の実施形態に従って、G2チェックポイント抑止因子の効力を試験および推定するための方法が提供され、この因子としては、米国特許出願第10/457,029号に開示されるペプチドでないG2チェックポイント抑止非ペプチド化合物、ならびに米国特許出願第10/347,145号および標題「Peptides and peptidomimetics having immune−modulating, anti−inflammatory,and anti−viral activity」(2004年6月25日出願)に開示されるG2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの出願は、これら各々の全体が、本明細書に参考として援用される。
【0043】
用語「G2チェックポイントを抑止する」または「G2チェックポイント抑止」、またはこれらの用語の任意の文法的同義語は、細胞がG2チェックポイントで細胞周期を停止する能力を抑止する能力をいう。G2細胞周期チェックポイントは、DNA複製およびDNA修復が完了するまで有糸分裂の開始を制限し、G2チェックポイントの混乱により、DNA複製およびDNA修復が完了する前に、有糸分裂の開始が早まる。この理論に制限されることは望まないが、蓄積したDNA損傷を有する細胞において、G2チェックポイントの抑止は、細胞がG2チェックポイントでDNA損傷を修正または修復する機会を有さず、代わりに、DNA修復なしにG2期を通過して進行し、有糸分裂カタストロフィー、アポトーシス、または細胞抑制もしくは細胞死を生じる他の状態をもたらすことを意味すると考えられる。本明細書で使用される場合、用語「アポトーシス」とは、プログラムされた細胞死、および当該分野で理解されているような、細胞生理における関連した変化(核酸フラグメント化、カスパーゼ活性化、染色体凝集などが挙げられる)をいう。用語「有糸分裂カタストロフィー」とは、有糸分裂プロセスにおけるエラーから生じる細胞死を意味する。
【0044】
細胞周期G2チェックポイントの抑止は、別の方法で細胞におけるG2細胞周期停止を引き起こす状態での抑止(例えば、特定の抗腫瘍剤、X線照射、ガンマ線照射、UV照射、または高体温によるDNA損傷の蓄積)を包含する。このような状態でのG2チェックポイントの抑止は、「G2チェックポイントの抑止」と考えられるが、より具体的には、DNA損傷誘導性G2チェックポイントが、DNA損傷の認識およびG2細胞周期停止を通常生じるシグナルの生成を包含することが理解される場合、「DNA損傷誘導性G2チェックポイント」の抑止であると考えられる。細胞周期G2チェックポイントが抑止される細胞は、細胞がG2チェックポイントにある時間の長さの減少を示す。この時間は、G2チェックポイントが全くない状態(G2チェックポイント停止)、から適切な条件下で、数分間、数時間、数日間、数週間またはそれ以上の時間の減少を有するG2チェックポイントまでの範囲に及び得る。従って、本発明の化合物と接触した細胞は、この化合物の非存在下で細胞が通常有するよりも短いG2チェックポイント時間を有する。例えば、G2チェックポイント時間の長さの減少は、特定の時間(例えば、4時間)の間にG2に存在する細胞が、本発明の化合物と接触された場合に、4時間未満(例えば、3.5時間、3時間、2.5時間、2時間、1時間または一時間未満)にわたってG2に存在することを意味する。用語「G2抑止」または「G2チェックポイント抑止」または「G2チェックポイント阻害活性」または任意の文法的同義語は、任意の量のG2チェックポイントの抑止または阻害を意味する。
【0045】
本発明は、G2チェックポイント抑止因子に対する癌細胞の感受性を試験するための方法を提供する。本発明の局面に従って、G2チェックポイント抑止因子は、候補抗癌治療としてスクリーニングまたは評価される。癌細胞は、G2チェックポイント抑止因子の存在下または非存在下で、インビトロで癌細胞を培養する工程、あるいはG2チェックポイント抑止因子でインビトロで培養した癌細胞を処理する工程を包含するが、これらに限定されない方法を用いて、G2チェックポイント抑止因子と接触させ得る。
【0046】
(G2抑止非ペプチド化合物)
本発明は、細胞に投与された場合にG2チェックポイント(特に、DNA損傷誘導性G2チェックポイント)を抑止し、細胞を死滅させうるかまたは抑制する、G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物に対する被験体の癌細胞(特に、ヒト患者の癌細胞)の感受性を推定するための方法を提供する。G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物(例えば、米国特許出願第10/457,029号に開示されるもの)は、DNA損傷処置ありまたはなしで、細胞を死滅させうるかまたは抑制し得ることが理解される。
【0047】
本発明は、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止非ペプチド化合物をスクリーニングするための方法およびこれらの化合物を評価するための方法を提供し、これらの化合物は、以下の一般構造:
【0048】
【化1】

を有し、ここでいずれか一方または両方のベンゼンが、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキサン、ピペリジンまたはピリジンで置換され得る;R1は、ハロゲン(例えば、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、ヒドロキシ(OH)、O−メチル(OCH)、メチル(CH)または水素(H)であり、R2、R3、R4、R5および/またはR6は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、メチル(CH)、O−メチル(OCH)、ヒドロキシ(OH)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CHCH、OCO(C12)Cl、COOCHまたは水素であり;Xは、窒素(NH)、酸素(O)またはスルフェート(S)であり;Xは、酸素(O)またはスルフェート(S)である。例示的実施形態は、図4に見出されるが、本発明の化合物は、これらの実施形態に限定されない。
【0049】
本発明は、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止非ペプチド化合物をスクリーニングするための方法およびこれらの化合物を評価するための方法をさらに提供し、ここでこれらの化合物は、以下の一般構造:
【0050】
【化2】

を有し、ここでいずれか一方または両方のベンゼンが、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、モルホリン、シクロヘキサン、ピペリジンまたはピリジンで置換され得る;R1は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、ヒドロキシ(OH)、O−メチル(OCH)、メチル(CH)または水素(H)であり、R2は、臭素(Br)、塩素(Cl)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、アミノ(NH)、ニトロ(NO)、メチル(CH)、O−メチル(OCH)、ヒドロキシ(OH)、CH(CH、CHO、CHOCH、O(CHCH、OCO(C12)Cl、COOCHまたは水素であり;Xは、窒素(NH)、酸素(O)またはスルフェート(S)であり;X2は、酸素(O)またはスルフェート(S)である。例示的実施形態は、図4に見出される。
【0051】
本発明は、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止非ペプチド化合物をスクリーニングするための方法およびこれらの化合物を評価するための方法をさらに提供し、ここでこれらの化合物は、以下の一般構造:
【0052】
【化3】

を有し、ここでR1位〜R6位での異なる分子の置換は、得られた化合物のG2チェックポイント抑止活性に影響を及ぼす。以下の構造−活性関連性が決定された:
R1において、臭素(Br)は、塩素(Cl)、フッ素(F)またはメチル(CH)よりも高い活性を提供する
R2において、メチル(CH)またはO−メチル(OCH)は、ヒドロキシド(OH)、臭素(Br)、塩素(Cl)、CH(CH、CHO、CHOCH,O(CHCH、OCO(C12)ClまたはCOOCHまたはHよりも高い活性を提供する
R3において、メチル(CH3)は、HまたはO−メチル(OCH)より高い活性を提供した
R4において、臭素(Br)、フッ素(F)、塩素(Cl)、またはHが使用され得る
R5において、臭素(Br)、フッ素(F)、塩素(Cl)、またはHが使用され得る
R6において、臭素(Br)、フッ素(F)、塩素(Cl)、またはHが使用され得る。
【0053】
前述のリストは、例示に過ぎず、網羅的ではない。例示的実施形態は、図4に見出される。当業者は、本開示の教示に従って、さらなる置換および活性の決定を行って、さらなる本発明の化合物を獲得し得る。特定の置換により、DNA損傷誘導性G2チェックポイント抑止に関して他の構造より高い活性を有する構造を生成することが観察されたが、本発明は、全ての置換および全てのレベルの活性を有する化合物を提供することが、当業者によって理解される。。特定の実施形態について、当業者は、その実施形態において使用するために、特定の標的に対する化合物の活性に加えて、本発明の化合物を選択することにおいて複数の要因を考慮する。当業者は、化合物の活性、アベイラビリティー、安定性、合成の容易さまたは合成効率、薬学的組成物における処方の適切性、服薬しやすさ(drugability)、インビボでの他の化合物との相互作用、エキソビボでの他の化合物との相互作用またはインビトロでの他の化合物との相互作用、細胞を死滅させる能力、細胞の増殖を抑制する能力、正常な細胞に対する影響、および他の活性を考慮する。
【0054】
本発明は、G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物に対する被験体の癌細胞、特に患者の癌細胞の感度を決定することによって、そのG2チェックポイント抑止非ペプチド化合物の抗癌治療としての有効性を推定するための方法を提供する。本発明は、被験体の癌細胞の、化合物(この化合物は、G1チェックポイント欠損細胞(例えば、癌細胞)におけるDNA損傷誘導性細胞周期G2チェックポイントを選択的に抑止し、DNA損傷因子で処理した細胞におけるDNA損傷誘導性G2チェックポイントを選択的に抑止する)に対する感受性を決定するための方法を提供する。本発明は、被験体の癌細胞の、化合物(これは、異種移植片腫瘍増殖を、単独でまたは他の抗癌治療と組み合わせて阻害する)に対する感受性を決定するための方法をさらに提供する。本発明は、被験体の癌細胞の、化合物(これは、インビトロで、癌細胞でのコロニー形成を抑制する)単独に対する感受性または他の抗癌治療と組み合わせたこの化合物に対する感受性を、決定するための方法を提供する。特に、本発明は、被験体の癌細胞の、化合物(これは、G2チェックポイントを抑止し、そして/または癌細胞を抑制するかもしくは死滅させる)に対する感受性を決定するための方法を提供する。これらの化合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
CDBC004:4−クロロ−安息香酸4−メトキシ−フェニルエステル
CBDC401:4−クロロ−安息香酸p−トリルエステル
CBDC402:4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル
CBDC403:3,4,5−トリフルオロ−安息香酸p−トリルエステル
CBDC404:4−フルオロ−安息香酸4−ブロモ−フェニルエステル;エタンとの化合物
CBDC405:3,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物
CBDC406:2,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物
CBDC407:4−フルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物
CBDC408:2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物
CBDC409:4−クロロ−安息香酸3,4−ジメチル−フェニルエステル;エタンとの化合物
CBDC410:4−クロロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの化合物
CBDC411:4−フルオロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの化合物
CBDC412:4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステル
CBDC413:4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメチル−フェニルエステル
CBDC414:4−ブロモ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル
CBDC415:4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメトキシ−フェニルエステル
CBDC418:4−ブロモ−安息香酸6−メチル−ピリジン−3−イルエステル
CBDC440:4−ブロモ−チオ安息香酸O−p−トリルエステル
CBDC441:4−ブロモ−ジチオ安息香酸p−トリルエステル
CBDC442:4−ブロモ−チオ安息香酸S−p−トリルエステル。
【0055】
これらの化合物の構造は、図4に提供される。
【0056】
(G2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物)
本発明は、被験体の癌細胞、特にヒト患者の癌細胞の、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物(2004年6月25日出願の米国特許出願第10/347,145号および米国特許出願(標題「Peptides and peptidomimetics having immune−modulating,anti−inflammatory,and anti−viral activity」に開示される)に対する感受性を推定するための方法を提供する。
【0057】
本発明は、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物(特に、以下の構造のいずれかを形成するように配置された領域A(残基P1〜P5)および領域B(残基P6〜P11)を含む構造を有するCBPペプチドおよびCBPペプチド模倣物)をスクリーニングおよび評価するための方法を提供する:P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11(配列番号1)またはP6,P7,P8,P9,P10,P11,P1,P2,P3,P4,P5(配列番号2)、またはP1,P2,P3,P4,P5(配列番号3)。ここでP1およびP5は、ベンゾイル−フェニルアラニン(Bpa)、またはチロシン(Tyr)、またはフェニルアラニン(Phe)、またはシクロヘキシルアラニン(Cha)、またはフェニル残基の2位、3位、4位、5位および6位にフッ素を有するフェニルアラニン(Phe−2,3,4,5,6−F)またはTyrTyr、またはPhePhe、またはChaPhe−2,3,4,5,6−F、または1つまたは2つのベンゼン様側鎖構造もしくはシクロヘキサン様側鎖構造により占められる側鎖空間と類似する側鎖空間を占有する部分(ここでこの部分は、1つもしくは2つのアミノ酸またはアミノ酸構造/機能アナログであり得る。これらのアナログとしては、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、アミノ酸模倣物、およびキメラ分子が挙げられる)である。P2位およびP4位は、任意のアミノ酸であり、P3は、トリプトファン(Trp)またはTrp側鎖によって占められる空間と類似する側鎖空間を占める任意の部分である。P6位、P7位、P8位、P9位、P10位、P11位は、P2および/またはP3がArgでない場合、5つ以上の位置でアルギニン(Arg)を含み、任意の非Arg位置は、任意のアミノ酸であり得るかまたはなにもない。P2および/またはP3がArgである場合、P6〜P11は、5つ未満のArgを含み得る。
【0058】
本発明は、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止CBPペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物をスクリーニングする方法およびこれらを評価するための方法をさらに提供する。ここでこのCBP化合物は、以下を含む:CBP500(配列番号26);CBP501(配列番号27);CBP504(配列番号29);CBP505(配列番号30);CBP506(配列番号31);CBP510(配列番号32);CBP511(配列番号33);CBP512(配列番号34);CBP603(配列番号37)。前述のCBP化合物の各々の配列は、以下の表1に開示される。
【0059】
本発明は、候補抗癌治療としてのG2チェックポイント抑止CBPペプチドおよびG2チェックポイント抑止CBPペプチド模倣物をスクリーニングするための方法およびこれらを評価するための方法をさらに提供する。ここでこのCBP化合物は、一般構造:上記のP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10,P11(配列番号1)またはP6,P7,P8,P9,P10,P11,P1,P2,P3,P4,P5(配列番号1)の構造を有し、化合物CBP501(配列番号27)と類似のG2チェックポイント抑止活性を有する。当業者は、候補抗癌治療としての他のG2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物をスクリーニングおよび評価するために、本明細書に提供された技術を適合させ得る。
【0060】
(表1.例示的ペプチドおよびペプチド模倣物の配列、配列番号、およびCBPコード名)
【0061】
【表1−1】

【0062】
【表1−2】

【0063】
【表1−3】

(抗癌治療:併用療法)
本発明の別の局面に従って、併用療法に対する被験体の癌細胞の感受性を決定することにより、被験体の抗癌処置の効力を推定するための方法を提供する。一局面に従って、本発明は、DNA損傷因子およびG2チェックポイント抑止因子を含む併用療法を試験するための方法を提供する。一実施形態において、併用療法は、DNA損傷因子であるCPT−11(カンプトテカン−11(これは、イリノテカンまたはカンプトスター(camptostar)としても公知である)およびCBDC402を含む。別の実施形態において、併用療法は、CPT−11およびCBDC004を含む。別の実施形態において、併用療法は、DNA損傷因子であるCDDP(シスプラチンとしても公知のアルキル化剤)およびG2チェックポイント抑止ペプチドであるCBP501(配列番号27)を含む。
【0064】
本発明の一局面に従って、併用療法の効力を試験する方法が提供され、この併用療法において、癌細胞に対するDNA損傷因子の細胞傷害性が、本明細書に開示されるG2チェックポイント抑止薬剤(G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物およびG2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物を含む)によって強化されるかまたは高められる。この理論に制限されることが望まないが、G2チェックポイント抑止因子が、DNA損傷因子(これは、正常な細胞に対してほとんどまたは何ら細胞傷害性効果がない)の細胞傷害性効果に対して癌細胞を選択的に感受性にし得ることが理解される。多くの従来の抗癌剤は、癌細胞であるか正常な細胞であるかどうかに関係なく、増殖している細胞を標的とし、結果として、多くの従来の抗癌治療は、悪心、下痢または脱毛のような副作用を生じている。対照的に、G2チェックポイント抑止因子は、DNAが損傷した(例えば、細胞周期チェックポイントが損なわれている)細胞を選択的に標的とし、よって、正常な細胞に対しては、ほとんどまたは何ら細胞傷害性の影響がない。よって、本発明は、G2チェックポイント抑止因子がDNA損傷処置の効果を強化する能力について、併用療法をスクリーニングする方法およびこれらを評価する方法を提供する。
【0065】
本発明の別の局面に従って、最も有効な併用療法を同定する方法が提供される。実施例3における模範的な例証に開示されるように、CBP501(配列番号27)とシスプラチン(CDDP)との併用療法は、いずれかの処置単独よりも高いレベルの抗癌活性を有した。実施例3に示されるように、培養したヒト癌細胞を用いるインビトロの結果により、各化合物単独(CBP501およびシスプラチン)が、いくつかの抗癌効力を有するが、化合物の併用が、より著しい抗癌効果を有することが示された。異種移植片腫瘍アッセイを用いて、ヒト癌細胞を宿主マウスに移植し、このマウスにおいて、ヒト癌細胞は腫瘍を生成し、このことにより、候補抗癌治療の効力の代理「インビボ」試験が提供された。次いで、腫瘍を、候補抗癌治療をマウス宿主に投与し、腫瘍サイズに対する効果を測定することによって「インビボで」処理した。異種移植片腫瘍アッセイを使用するインビボの結果により、CBP501とCDDPとの併用が、いずれかの化合物単独より有効であるというインビトロの結果の推定が確認された。
【0066】
本発明の多くの実施形態が記載されてきた。にもかかわらず、種々の改変が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得ることが、理解される。従って、以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を例示するのであって、限定するのではないことが意図される。
【実施例】
【0067】
(実施例1.CBDC402を用いたインビトロでの感受性試験とインビボでの効力試験との相関)
ヒト結腸癌由来細胞株HCT−116の細胞を、細胞のDNA含有量をフローサイトメトリーによって測定するインビトロでの感受性試験、および異種移植片腫瘍増殖を測定するインビボでの効力試験において使用した。従来の抗癌治療CPT−11、新規な候補抗癌治療CBDC402、この2つの化合物の併用、またはコントロール処置(ビヒクル)の効果を、各試験系において測定し、比較した。
【0068】
インビトロでの感受性試験: HCT−116細胞(ATCCから)を、L−グルタミン(Sigma Chemical Co.)と、ペニシリン−ストレプトマイシンと、10%ウシ胎児血清とを含有するマッコイ5A培地(Sigma Chemical Co.)中、37℃にて5% CO/空気中で培養した。培養細胞(1.6×10)を、遠心分離によりペレットにし、次いで、再懸濁し、300μlのKrishan溶液(0.1%クエン酸ナトリウム、50μg/ml ヨウ化プロピジウム、20μg/ml RNase A、0.5% Nonidet P−40)中、4℃で1時間インキュベートした。各細胞におけるDNAの量を、蛍光活性化細胞スキャナ(FACScan(登録商標)Beckton Dickinson,Mountain View,CA)を用いて決定し、結果を、CELLQuest(登録商標)ソフトウェア(Beckton Dickinson)を用いて分析した。
【0069】
各細胞のDNA含有量を、24時間目に測定した。CBDC402処置単独(2μM、10μM、または50μMを3時間)は、インビトロでのHCT−116細胞のDNA含有量を変化させなかった(図1A;上パネル)。CPT−11処置(50μMで3時間)により、細胞周期分布は劇的に変化し、ここでG1期にある細胞集団は減少し、G2/M期にある細胞集団は増大した。この結果により、G1に達しない集団は何ら増加しなかったので、細胞が細胞周期のG2/M期で停止した(増殖が阻害された)が、細胞は死滅しないことが示された。CPT−11(50μMで3時間)およびCBDC402(2μM、10μM、50μMで、3時間)の両方での併用処置に曝したHCT−116細胞は、CPT−11誘導性G2/M集団およびG1集団の両方の蓄積の減少を示し、G1に達しない(死細胞)集団(図1A、下パネル)の増加もまた示した。このことは、この併用処置が、HCT−116細胞に対して細胞傷害性であることを示した。
【0070】
インビトロでの感受性試験のこれらの結果により、CBDC402単独では、インビボでのHCT−116異種移植片腫瘍増殖を抑制せず、CPT−11は、中程度に腫瘍増殖を抑制し、CBDC402とCPT−11との併用療法は、腫瘍増殖を最も効率的に抑制する、ということが推定された。
【0071】
代理インビボ効力試験: 図1Bは、異種移植片腫瘍アッセイを含む代理インビボ効力試験の結果を示す。HCT−116細胞を、雄性SCIDマウス(重症複合型免疫不全マウス,Charles River Lab.,Wilmington,MA)に細胞を皮下注射することにより移植した。この腫瘍の大きさが、約0.2cmの大きさに達したときに、処置を開始した。腫瘍の大きさを、ノギスを用いて1週間に3回測定した。腫瘍体積を、以下のように計算した:体積(cm)=[幅(mm)×長さ(mm)]/2000。平均腫瘍サイズ(体積)を標準偏差とともにプロットした(図1b)。動物を、American Association for Laboratory Animal Careの指針に従って飼育した。このプロトコルは、CanBas Co.Ltdの社内動物ケア委員会によって承認された。
【0072】
SCIDマウスにおいて樹立したHCT−116異種移植片(0.2cm)を、以下を腹腔内注射することによって2週間処置した:ビヒクル単独(DMSO、1週間に2回)、CBDC402(40mg/kg;1週間に2回)、CPT−11(20mg/kg;1週間に1回)、またはCBDC402(1週間に2回)とCPT−11(1週間に1回)との併用。図1(b)に示されるように、CPBC402単独では、腫瘍増殖を有意に抑制しなかったが、CPT−11は、中程度の腫瘍抑制活性を有し、CBDC402+CPT−11は、強い腫瘍抑制活性を示した。この結果は、上記のCBDC004を用いたインビトロでの感受性試験の結果に基づく推定と相関している。
【0073】
(実施例2.CBDC004を用いる、インビトロでの感受性試験とインビボでの効力試験との相関)
ヒト結腸癌由来細胞株HCT−116の細胞を、細胞のDNA含有量をフローサイトメトリーによって測定するインビトロでの感受性試験、および異種移植片腫瘍増殖を測定するインビボでの効力試験において使用した。従来の抗癌治療CPT−11、新規な候補抗癌治療CBDC004、この2つの化合物の併用、またはコントロール処置(ビヒクル)の効果を、各試験系において測定し、比較した。
【0074】
インビトロでの感受性試験:HCT−116細胞およびフローサイトメトリーを用いるインビトロでの感受性試験を、CBDC004をCBDC402の代わりに用いるという改変を行って、上記のように行った。各細胞のDNA含有量を、24時間目に測定した。CBDC004処置単独(2μM、10μM、50μMで3時間)は、インビトロでのHCT−116細胞のDNA含有量を変化させなかった(図2A;上パネル)。CPT−11単独での処置(50μMで3時間)により、細胞周期分布は劇的に変化し、ここでG1期にある細胞集団は減少し、G2/M期にある細胞集団は増大した。このことにより、G1に達しない集団は何ら増加しなかったので、上記細胞は、細胞周期のG2/M期で停止したが、死滅しないことが示された。CPT−11(50μMで3時間)およびCBDC004(2μM、10μM、50μMで、3時間)の両方での併用処置に曝したHCT−116細胞は、CPT−11単独を超えるほどには、DNA含有量を変化させなかった(図2A、下パネル)。
【0075】
インビトロでの感受性試験のこれらの結果により、CBDC004単独では、インビボでのHCT−116異種移植片腫瘍増殖を抑制せず、CPT−11は、中程度にこの腫瘍増殖を抑制し、CBDC004とCPT−11との併用療法は、CPT−11単独と同程度でこの腫瘍増殖を抑制する、ということが推定された。
【0076】
代理インビボ効力試験: HCT−116異種移植片腫瘍増殖に対する種々の化合物の効果を測定する代理インビボ効力試験を、CBDC402の代わりに、CBDC004を用いるという改変を行って、上記のように実施した。
【0077】
SCIDマウスにおいて樹立したHCT−116異種移植片(0.2cm)を、以下を腹腔内注射することによって2週間処置した:ビヒクル単独(DMSO、1週間に2回)、CBDC004(30mg/kg;1週間に2回)、CPT−11(20mg/kg;1週間に1回)、またはCBDC402(1週間に2回)とCPT−11(1週間に1回)との併用。図2Bに示されるように、CBDC004は、単独でも、PCT−11との併用においても腫瘍増殖を抑制しなかった。そしてCPT−11は、中程度の腫瘍抑制活性を有した。これらの結果は、上記のCBDC004を用いたインビトロでの感受性試験の結果に基づく推定と相関している。
【0078】
(実施例3.臨床適用のための感受性試験のシミュレーション)
臨床状況のための感受性試験のシミュレーションとして、SCIDマウスにおけるMIAPaCa2細胞の樹立された異種移植片腫瘍を、マウスから抽出し、従来の抗癌治療および新規の候補抗癌治療CBP501(配列番号27)の存在下または非存在下で、以下のプロトコルに従って、インビトロで培養した。
【0079】
(プロトコル:)
(1日目 抽出した異種移植片腫瘍からの単一細胞懸濁液の調製)
MIAPaCa2細胞の異種移植片腫瘍を、異種移植片腫瘍を有するマウスから切り出し、37℃、5%CO/空気で、完全培養培地(DMEM(Dainihonseiyaku Co.,Osaka,Japan)(MIAPaCa2のための2.5% ウマ血清(Invitrogen Co.,Carlsbad,CA)と、10% ウシ胎仔血清(Equitech−bio,Kerrville,TX)を含有)10mlを含む10cmプレートに入れた。この組織を、小片にスライスし、非腫瘍組織を可能な限り除去した。このスライスした小片を、完全培養培地を含む別の10cmプレートに入れ、カミソリの刃で切り刻んだ。次いで、細胞を、ピペットで出し入れして培養培地に分散させ、1200×gで5分間遠心分離した。
【0080】
次いで、その細胞ペレットを、コラゲナーゼを含む緩衝液中で、37℃で2時間インキュベートした。2回目の遠心分離の後、その細胞ペレットを、トリプシンを含む緩衝液中で、室温で5分間インキュベートし、次いで、培養培地に懸濁し、ナイロンメッシュに通して、再度遠心分離した。ペレットになった細胞を再懸濁し、この再懸濁した細胞をチャンバースライドに播種し、インキュベーター中で一晩培養した。
【0081】
(2日目 抗癌治療での細胞の処理)
チャンバースライド中の細胞を、抗癌治療またはコントロール処理で、以下のように処理した:コントロール溶液、10μMのCBP501(配列番号27)、10μg/mlのシスプラチン(CDDP)、またはCBP501とシスプラチンとの組み合わせを、チャンバースライドに添加し、3時間インキュベートした。培養培地を交換し、チャンバースライドを、さらに24時間〜48時間培養した。
【0082】
(3日目、4日目または5日目 染色および分析)
示された日(3日目、4日目または5日目)のはじめに、培地をチャンバースライドから吸引し、70%エタノールを添加し、その後15分間室温でインキュベートすることで、細胞を固定した。上清を廃棄し、50μg/ml ヨウ化プロピジウム(Sigma,St.Louis,MO)(0.1% RNase(Sigma)含有)を含有するリン酸緩衝化生理食塩水をスライドに添加し、室温で30分間インキュベートした。チャンバースライド上の細胞を、次いで、レーザー走査サイトメトリー(Olympus顕微鏡を備えたLSC(登録商標)System)で分析した。
【0083】
(結果)
図3Aに示されるように、CBP501(配列番号27)での処理は、DNA含有量の値のヒストグラム(特に、G1期にある細胞に対応するヒストグラム)の形状を拡げるが、細胞周期分布は、有意に変化しなかった。シスプラチン(CDDP)での処理により、G2/M期にある細胞の蓄積が生じた。CBP501とシスプラチンとを併用して処理すると、G1のピークおよびG2/Mのピークがともに劇的に減少し、G1期に達しない集団(これは細胞死を示す)が増加した。各ヒストグラムにおける(垂線の間の)「1」と記されたピークは、細胞培養物に夾雑している、癌でないマウスの正常な線維芽細胞のG1集団を示す。細胞形態を直接観察すると、この併用処置により、腫瘍細胞の集団における細胞死が劇的に増加したことが示された。
【0084】
これらの結果により、CBP501(配列番号27)またはシスプラチン(CDDP)いずれかでの処理は、腫瘍細胞に対して何らかの影響を有するが、CBP501とシスプラチンとの併用処理は、いずれかの処理単独よりも有効であり、そして併用処理は、腫瘍細胞に対して非常に有効であるということが推定された。
【0085】
代理インビボ効力試験: 異種移植片腫瘍アッセイを使用する代理インビボ効力試験を、改変をして、上記のように行った。MIAPaCa2細胞(n=5)を、雄性SCIDマウス(Charles River Lab.,Wilmington,MA)に細胞を皮下注射することによって移植した。腫瘍の大きさが約0.15cmの大きさに達したときに、処置を開始した。腫瘍の大きさを、ノギスを用いて1週間に3回測定した。腫瘍体積を、以下のように計算した:体積(cm)=[幅(mm)×長さ(mm)]/2000。平均腫瘍サイズ(体積)を標準偏差とともにプロットした(図1b)。動物を、American Association for Laboratory Animal Careの指針に従って飼育した。このプロトコルは、CanBas Co.Ltdの社内動物ケア委員会によって承認された。
【0086】
SCIDマウスにおいて樹立したHCT−116異種移植片(0.2cm)を、以下を腹腔内注射することによって2週間にわたり、各週に2回(すなわち、1日目、5日目、8日目および12日目に)処置した:ビヒクル単独(DMSO);CBP501(120mg/m);シスプラチン(CDDP、3mg/kg);CBP501(30mg/m)とシスプラチン(CDDP、3mg/kg)との併用;CBP501(60mg/m)とシスプラチン(CDDP、3mg/kg)との併用;CBP501(120mg/m)とシスプラチン(CDDP、3mg/kg)。図3Bに示されるように、CBP501単独またはシスプラチン(CDDP)単独では、腫瘍増殖にほとんどまたは何ら効果がなかった。しかし、CBPとシスプラチン(CDDP)との併用処置により、異種移植片腫瘍増殖の有意な阻害が生じた。興味深いことに、CBP501とシスプラチン(CDDP)との併用の効果は、CBP501の濃度に無関係であるようであった:30mg/m、60mg/m、120mg/mのCBP501を使用した併用処置は、同様の有効性を示した。対照的に、CBP501単独では、試験した最高濃度である120mg/mでも、異種移植片腫瘍増殖は有意には阻害されなかった。
【0087】
これらの結果は、上記のようなCBP501とシスプラチン(CDDP)とを用いるインビトロでの感受性試験の結果に基づく推定と相関している。
【0088】
添付の特許請求の範囲に規定される本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、好ましい実施形態に対して種々の改変が行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、HCT−116細胞に対するCBDC402、CPT−11、およびCBDC402とCPT−11との併用の効力を試験するための、フローサイトメトリーを用いるインビトロ感受性試験(図1A)、および異種移植片腫瘍アッセイを用いる代理インビボ効力試験(図1B)の相関を示す。
【図2】図2は、HCT−116細胞に対するCBDC004、CPT−11、およびCBDC004とCPT−11との併用の効力を試験するための、フローサイトメトリーを用いるインビトロ感受性試験(図2A)、および異種移植片腫瘍アッセイを用いる代理インビボ効力試験(図2B)の相関を示す。
【図3A】図3は、臨床適用のための感受性試験のシミュレーションを示す。このシミュレーションは、MIAPaCa2細胞に対するCBP501、シスプラチン(シスジアミンジクロロ白金、CDDP)またはCBP501とシスプラチンとの併用の効力を試験するために、チャンバースライド上の培養異種移植片腫瘍細胞のレーザースキャニングサイトメトリーを用いるインビトロ感受性試験(図3A)、および異種移植片腫瘍アッセイを用いる代理インビボ効力試験からの結果を比較する。
【図3B】図3は、臨床適用のための感受性試験のシミュレーションを示す。このシミュレーションは、MIAPaCa2細胞に対するCBP501、シスプラチン(シスジアミンジクロロ白金、CDDP)またはCBP501とシスプラチンとの併用の効力を試験するために、チャンバースライド上の培養異種移植片腫瘍細胞のレーザースキャニングサイトメトリーを用いるインビトロ感受性試験からの結果(図3A)と、異種移植片腫瘍アッセイを用いる代理インビボ効力試験からの結果とを比較する。
【図4A】図4は、抗癌治療の効力を推定するために使用される例示的G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物の構造およびCBDCコード名を示す。
【図4B】図4は、抗癌治療の効力を推定するために使用される例示的G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物の構造およびCBDCコード名を示す。
【図4C】図4は、抗癌治療の効力を推定するために使用される例示的G2チェックポイント抑止非ペプチド化合物の構造およびCBDCコード名を示す。
【0090】
(表1) 表1は、抗癌治療の効力を推定するために使用される例示的なG2チェックポイント抑止ペプチドおよびG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物の配列、配列番号、およびCBPコード名を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補抗癌治療に対する患者の癌細胞の感受性を決定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該患者の癌細胞のサンプルを、インビトロで該候補抗癌治療に曝す工程;
(b)該候補抗癌治療に曝した後に、該サンプル中の各癌細胞のDNA含有量を測定する工程;および
(c)該候補抗癌治療に曝した後に、該サンプルの細胞周期分布を決定する工程;
を包含し、ここで該候補抗癌治療に曝した後の該サンプルの細胞周期分布における変化は、該治療に対する該患者の癌細胞の感受性を示す、方法。
【請求項2】
前記候補抗癌治療に曝した後の前記サンプル中のG1期に達していない集団の増加は、該治療が前記患者の癌細胞に対して細胞傷害性であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記候補抗癌治療に曝した後の前記サンプル中のG2/M期集団の増加は、該治療が、前記患者の癌細胞の増殖を阻害することを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記候補抗癌治療に対する前記患者の非癌細胞の感受性を決定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、約3日間以内に完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、約4日間以内に完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、約5日間以内に完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
癌細胞の複数のサンプルを、複数の候補抗癌治療に曝す工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
各治療に対する前記患者の癌細胞の感受性に基づいて、前記複数の候補抗癌治療を順位付けする工程をさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者にとって最も有効な候補抗癌治療を同定する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記候補抗癌治療は、DNA損傷因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記候補抗癌治療は、G2チェックポイント抑止因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記G2チェックポイント抑止因子は、非ペプチドのG2−チェックポイント抑止化合物であり、該非ペプチドのG2−チェックポイント抑止化合物は、4−クロロ−安息香酸4−メトキシ−フェニルエステル(CDBC004)、4−クロロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC401)、4−ブロモ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC402)、3,4,5−トリフルオロ−安息香酸p−トリルエステル(CBDC403)、4−フルオロ−安息香酸4−ブロモ−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC404)、3,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC405)、2,4−ジクロロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC406)、4−フルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC407)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−安息香酸p−トリルエステル;エタンとの化合物(CBDC408)、4−クロロ−安息香酸3,4−ジメチル−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC409)、4−クロロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC410)、4−フルオロ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル;エタンとの化合物(CBDC411)、4−ブロモ−安息香酸4−フルオロ−フェニルエステル(CBDC412)、4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメチル−フェニルエステル(CBDC413)、4−ブロモ−安息香酸4−ヒドロキシ−フェニルエステル(CBDC414)、4−ブロモ−安息香酸4−トリフルオロメトキシ−フェニルエステル(CBDC415)、4−ブロモ−安息香酸6−メチル−ピリジン−3−イルエステル(CBDC418)、4−ブロモ−チオ安息香酸O−p−トリルエステル(CBDC440)、4−ブロモ−ジチオ安息香酸p−トリルエステル(CBDC441)、または4−ブロモ−チオ安息香酸S−p−トリルエステル(CBDC442)から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記G2チェックポイント抑止因子は、G2チェックポイント抑止ペプチドまたはG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記G2チェックポイント抑止ペプチドまたはG2チェックポイント抑止ペプチド模倣物は、CBP500(配列番号26)、CBP501(配列番号27)、CBP504(配列番号29)、CBP505(配列番号30)、CBP506(配列番号31)、CBP510(配列番号32)、CBP511(配列番号33)、CBP512(配列番号34)、またはCBP603(配列番号37)から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記候補抗癌治療は、併用療法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記併用療法は、DNA損傷因子およびG2チェックポイント抑止因子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記G2チェックポイント抑止因子は、前記DNA損傷因子の細胞傷害性効果に対して癌細胞を選択的に感受性にする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記DNA損傷因子はイリノテカン(CPT−11)であり、前記G2チェックポイント抑止因子はCBDC402である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記DNA損傷因子はイリノテカン(CPT−11)であり、前記G2チェックポイント抑止因子はCBDC004である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記DNA損傷因子はシスプラチン(CDDP)であり、前記G2チェックポイント抑止因子はCBP501(配列番号27)である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
候補抗癌治療の代理インビボ効力試験をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記代理効力試験は、異種移植片腫瘍アッセイである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法。前記異種移植片腫瘍アッセイは、以下の工程:
(a)前記患者の癌細胞のサンプルを代理宿主に移植する工程;
(b)該代理宿主において腫瘍を形成させる工程;
(c)該代理宿主を候補抗癌治療で処置する工程;および
(d)該腫瘍に対する該候補抗癌治療の効果を測定する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
患者に対する抗癌治療の効力を推定するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該患者の癌細胞のサンプルを、該候補抗癌治療にインビトロで曝す工程;
(b)該候補抗癌治療に曝した後に、該癌細胞のサンプルの細胞周期分布を決定する工程;および
(c)該患者の癌細胞に対する該候補抗癌治療の細胞傷害性を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記患者の非癌細胞のサンプルを、前記候補抗癌治療にインビトロで曝す工程、および該患者の非癌細胞に対する該候補抗癌治療の細胞障害性を決定する工程により、該候補抗癌治療の安全性を決定する工程をさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者にとって最も有効な抗癌治療を選択するための方法であって、複数の候補抗癌治療に対して請求項26に記載の方法を行う工程、および該患者の癌細胞に対して最大の細胞傷害性を有し、かつ該患者の非癌細胞に対して最小の細胞傷害性を有する治療を選択する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2007−501608(P2007−501608A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522446(P2006−522446)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002792
【国際公開番号】WO2005/014856
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504275568)株式会社 キャンバス (6)
【Fターム(参考)】