説明

抗結核剤としてのプレニル化ビスホスホネート

本発明は、式Iの化合物によってマイコバクテリウム感染を治療する方法、及びマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸合成を阻害する方法を提供する。本発明はまた、式Iの新規化合物、並びにその塩及びプロドラッグも提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許文書は、2009年3月20に出願された米国特許出願第61/162,145号の優先権の利益を主張し、その出願は参照によって本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
マイコバクテリウム感染は世界中で重大な健康問題であり続けている。結核は、マイコバクテリウム、特に結核菌が原因となる一般的で死に至る感染性疾患である。
【0003】
現在、マイコバクテリウム感染を治療するのに有用である治療法に対するニーズがある。また、マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸合成を阻害することによって結核を治療するのに有用である治療法に対する特定のニーズもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸合成を阻害する化合物を投与することによって哺乳類(たとえば、ヒト)におけるマイコバクテリウム感染(たとえば、結核)を治療する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグを哺乳類に投与することを含む哺乳類(たとえば、ヒト)におけるマイコバクテリウム感染(たとえば、結核)を治療する方法を提供するが、
【化1】

式中、
は、鎖において1以上のアリール環又はヘテロアリール環を任意で含む、飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルであり、(C〜C20)アルキルは、1以上のハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、アリール又はヘテロアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され;
は、H、ハロ、OH、トリフルオロメチル、−OR、NR、又は飽和若しくは不飽和の(C〜C)アルキルであり、(C〜C)アルキルは1以上のハロによって任意で置換され;
、R、R、及びRはそれぞれ独立してOH又は(C〜C)アルコキシであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであり、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであり、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
はそれぞれ独立して(C〜C)アルキル又はアリールであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであり、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであり、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであり、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
、R、R、R、R、R、R、R、R、R又はRのアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、R及びRはそれぞれ独立してH又は(C〜C)アルキル、又は、哺乳類に対して薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラックである。
【0006】
本発明はまた、有効量の、本明細書で記載されるような式Iの化合物にマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼを接触させることを含む、試験管内又は生体内でマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を阻害する方法も提供する。
【0007】
本発明はまた、マイコバクテリウム感染(たとえば、結核)の予防的処置又は治療的処置に使用するための、本明細書で記載されるような式Iの化合物、又は薬学上許容可能な塩若しくはプロドラッグも提供する。
【0008】
本発明はまた、哺乳類(たとえば、ヒト)におけるマイコバクテリウム感染(たとえば、結核)を治療するのに有用な薬物を製造するための、本明細書で記載されるような式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグの使用も提供する。
【0009】
本発明はまた、哺乳類(たとえば、ヒト)におけるマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を阻害するのに有用な薬物を製造するための、本明細書で記載されるような式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグの使用も提供する。
【0010】
本発明はまた、本明細書で記載されるような式Iの新規の化合物、又はその塩又はプロドラッグも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の化合物13によるマイコバクテリウムのポリプレニルシンターゼ(RV2361c)の阻害を示す図である。
【図2】本発明の化合物23によるマイコバクテリウムのポリプレニルシンターゼ(RV2361c)の阻害を示す図である。
【図3】本発明の化合物24による細菌、スメグマ菌の阻害を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はまた、本明細書で記載される新規の合成中間体及び方法も提供する。
【0013】
特に記載されない限り、以下の定義を使用する。ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードである。アルキル、アルコキシなどは、直鎖基及び分枝鎖基の双方を示すが、たとえば、プロピルのような個々のラジカルへの参照は、イソプロピルが具体的に参照されるように、直鎖ラジカル、分枝鎖異性体のみを包含する。不飽和の(C〜C20)アルキルは、少なくとも1つの不飽和結合(すなわち、二重結合又は三重結合)を伴った(C〜C20)アルキルを意味する。不飽和の(C〜C20)アルキルは、少なくとも1つの不飽和結合(すなわち、二重結合又は三重結合)を伴った(C〜C20)アルキルを意味する。アリールは、フェニルラジカル、又は少なくとも環の1つが芳香族である約9〜10の環原子を有するオルソ縮合の二環式炭素環式ラジカルを意味する。ヘテロアリールは、炭素と、それぞれ、非ペルオキシド酸素、イオウ及びXが存在しないか又はH、O、(C〜C)アルキル、フェニル又はベンジルであるN(X)から成る群から選択される1〜4のヘテロ原子から成る5又は6の環原子を含有する単環式芳香族環のラジカルを意味し、同様に、炭素と、それぞれ、非ペルオキシド酸素、イオウ及びN(X)から成る群から選択される1〜4のヘテロ原子から成る約8又は10の環原子を含有するオルソ縮合の二環式複素環のラジカルを意味する。
【0014】
本明細書で使用されるとき、鎖の中に1以上のアリール又はヘテロアリールを含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖には、1)アリール又はヘテロアリールの原子の1つに連結されるアルキル鎖の一部を有し、アリール又はヘテロアリールの別の原子に連結されるアルキル鎖の別の部分を有するように鎖の中にアリール又はヘテロアリールを有するアルキル鎖、及び2)アリール又はヘテロアリールによって停止するアルキル鎖が挙げられる。
【0015】
本発明の一実施形態では、Rの鎖の中に1以上のアリール又はヘテロアリールの環を含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖は、アリール又はヘテロアリールの原子の1つに連結されるアルキル鎖の一部を有し、アリール又はヘテロアリールの別の原子に連結されるアルキル鎖の別の部分を有するように鎖の中でアリール又はヘテロアリールを含む。
【0016】
用語「プロドラッグ」は、当該技術でよく理解されており、生体内(たとえば、哺乳類のような動物にて)で薬学上活性のある化合物に変換される化合物が挙げられる。たとえば、RemingtonのPharmaceutical Sciences,1980,vol.16,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,61及び42を参照のこと。特に、リン含有化合物(たとえば、ホスホネート)のプロドラッグ形態を調製するのに好適な多数の基が知られている。たとえば、Galmarini,CMら、International Journal of Cancer,2003,107(1),149−154;Wagner,C.Rら、Medicinal Research Reviews,2000,20,417−51;McGuigan,Cら、Antiviral Research,1992,17,311−321;及びChapman,Hら、Nucleosides,Nucleotides & Nucleic Acids,2001,20,1085−1090を参照のこと。本発明は、好適な生体内加水分解性基から調製されるホスホネートのプロドラッグ類似体を包含する。特定の一実施形態では、本発明は、ホスホネートがピバロイルオキシメチルである(すなわち、R、R、R又はRの1以上が−OCHOC(O)C(CHである)式Iの化合物のホスホネートプロドラッグを提供する。
【0017】
キラル中心を有する本発明の化合物が存在してもよく、光学活性のある形態及びラセミ形態で単離されてもよいことが当業者によって十分に理解されるであろう。たとえば、式Iの化合物において一方のリン原子又は双方のリン原子がキラル中心であることが可能である。一部の化合物は多型を呈してもよい。本発明は、本発明の化合物の、本明細書で記載される有用な特性を持つラセミ形態、光学活性形態、多型形態又は立体異性体形態、又はこれらの混合物を包含し、光学活性形態を調製する方法(たとえば、再結晶法によるラセミ形態の分割によって、光学活性のある出発材料からの合成によって、キラル合成によって、又はキラル静止相を用いたクロマト分離によって)、及び当該技術で周知である標準試験を用いて酵素の阻害活性を測定する方法が周知であることが理解されるべきである。
【0018】
ラジカル、置換基及び範囲について以下で記入される具体的な且つ好ましい値は説明のみのためのものであり、それらは、ほかに定義される値又はラジカル及び置換基について定義された範囲内でのほかの値を排除するものではない。
【0019】
具体的には、(C〜C)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル又はヘキシルであることができ;(C〜C)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ又はヘキシルオキシであることができ;(C〜C)アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、又はヘキシルオキシカルボニルであることができ;(C〜C)アルカノイルオキシは、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、又はヘキサノイルオキシであることができ;アリールは、フェニル、インデニル又はナフチルであることができ;ヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル、(又はそのN−オキシド)、チエニル、ピリミジニル(又はそのN−オキシド)、インドリル、イソキノリル(又はそのN−オキシド)、又はキノリル(又はそのN−オキシド)であることができる。
【0020】
の特性値は、不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である。
【0021】
の別の値は、鎖の中に1以上のアリール環を含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である。
【0022】
の別の値は、鎖の中にアリール環を1つ含む不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である。
【0023】
の別の値は、鎖の中に1以上のヘテロアリール環を含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である。
【0024】
の別の値は、鎖の中にヘテロアリール環を1つ含む不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である。
【0025】
の特性値は、式
【化2】

であり、式中、
、R、R、R10及びR11の1つはYであり、そのほかはそれぞれ独立してH、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C〜C)アルキル、NR又はS(O)NRであり、R及びRはそれぞれH又は(C〜C)アルキルであり;XとYの炭素の合計が5〜20であるという条件で、
Yは、飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルであり;
Xは、(CRであり、nは0、1、2、3、4、又は5であり、CRのそれぞれについて、R及びRはそれぞれ独立してH又は(C〜C)アルキルである。
【0026】
式Iの化合物の特定の群は、R及びRがそれぞれHである化合物である。
nの特定値は1である。
の特定値はYである。
の特定値はYである。
Yの特定値は飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルである。
Yの別の値は、3−メチル−2−ブテン−1−イルである。
【0027】
の特性値は、
【化3】

である。
【0028】
の別の値は、
【化4】

である。
【0029】
の別の値は、
【化5】

である。
【0030】
の別の値は、
【化6】

である。
【0031】
の特定値は、飽和又は不飽和の(C〜C)アルキル、OH又はHである。
の別の値は、飽和又は不飽和の(C〜C)アルキル、OH又はHである。
の別の値は、飽和又は不飽和の(C〜C)アルキル、OH又はHである。
の別の値は、OH又はHである。
の別の値は、Hである。
【0032】
一実施形態では、式Iの化合物は、
【化7】

又はその塩又はプロドラッグである。
【0033】
別の実施形態では、式Iの化合物は、
【化8】

である。
【0034】
式Iの化合物の特定の群は、R、R、R及びRがそれぞれOHである化合物である。
【0035】
本発明は、本明細書で記載される新規化合物を提供する。たとえば、本発明は、Rが、鎖において1以上のヘテロアリール環を含み、任意で1以上のアリール環を含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルである、式(I)の新規化合物を提供し、その際、(C〜C20)アルキルは、1以上のハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、アリール又はヘテロアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換されるが、
但し、Rが、ピリジン環を1つ含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルであり、該ピリジン環がピリジン窒素を介してRのアルキル鎖に連結されないという条件があり、また
該化合物が、
【化9】

ではないという条件がある。
【0036】
一実施形態では、本発明は、Rが、NRによって置換される
【化10】

である式Iの化合物を除外する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、R
【化11】

である式Iの化合物を除外する。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、R
【化12】

であり、RがH又は(C〜C)アルキルであり、Rがカルボキシによって置換されるフェニルである式Iの化合物を除外する。
【0039】
本発明は、Rが、−(C〜C20)アルキル−Zである新規化合物を提供するが、その際、(C〜C20)アルキルは飽和又は不飽和であり、1以上のハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、Zは、1以上(たとえば、1、2、3又は4)の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換されるヘテロアリールである。
【0040】
の特定値は、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル、(又はそのN−オキシド)、チエニル、ピリミジニル(又はそのN−オキシド)、インドリル、イソキノリル(又はそのN−オキシド)、又はキノリル(又はそのN−オキシド)である
【0041】
の別の値は、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリミジニル(又はそのN−オキシド)、インドリル、イソキノリル(又はそのN−オキシド)、又はキノリル(又はそのN−オキシド)である。
【0042】
の別の値は、フリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリミジニル(又はそのN−オキシド)、インドリル、イソキノリル(又はそのN−オキシド)、又はキノリル(又はそのN−オキシド)である。
【0043】
の別の値は、インドリルである。
【0044】
本発明の方法で使用される代表的な化合物は、スキーム1〜2で説明されるように調製することができる。
【0045】
本発明の代表的な化合物は、フェニル基がヘテロアリール基で置き換えられているスキーム1〜2で説明されるように調製することができる。
【0046】
スキーム1(化合物の一般的調製)
【化13】

【0047】
スキーム2(化合物の一般的調製)
【化14】

【0048】
化合物が十分に塩基性又は酸性なので安定な酸性又は塩基性の塩を形成できる場合、塩としての化合物の投与が適当であってもよい。薬学上許容可能な塩の例は、生理的に許容可能なアニオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、たとえば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩及びα−グリセロリン酸塩である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩を含む好適な無機塩も形成されてもよい。
【0049】
薬学上許容可能な塩は、当該技術で周知の標準手順を用いて、たとえば、生理的に許容可能なアニオンを提供する好適な酸にアミンのような十分に塩基性の化合物を反応させることによって得られてもよい。カルボン酸のアルカリ金属(たとえば、ナトリウム、カリウム又はリチウム)塩又はアルカリ土類金属(たとえば、カルシウム)塩を作製することもできる。
【0050】
式Iの化合物を医薬組成物として処方し、選択された投与経路、すなわち、経口的に又は非経口的に、静脈内の、筋肉内の、局所の、又は皮下の経路に適合させた種々の形態でヒト患者のような哺乳類宿主に投与することができる。
【0051】
従って、本化合物は、薬学上許容可能なビヒクル、たとえば、不活性の希釈剤又は吸収できる食用キャリアとの併用で、たとえば、経口的に、全身に投与してもよい。それらは、硬質若しくは軟質の殻ゼラチンカプセルに内包されてもよく、錠剤に圧縮されてもよく、又は患者の食事用食物に直接取り込んでもよい。経口での治療投与については、活性化合物を1以上の賦形剤と組み合わせ、服用可能な錠剤、頬内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁剤、シロップ、ウエハーなどの形態で使用してもよい。そのような組成物及び製剤は少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。組成物及び製剤の比率は当然変化してもよく、好都合に、所与の単位投与形態の約2〜約60重量%の間であってもよい。そのような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、有効投与レベルが得られるようなものである。
【0052】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどは、以下:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;及びスクロース、フルクトース若しくはアスパルタームのような甘味剤も含有してもよく、又はペパーミント、冬樹油、若しくはサクランボ風味のような香味剤が添加されてもよい。単位投与形態がカプセルである場合、上記の物質に加えて、植物油やポリエチレングリコールのような液体キャリアを含有してもよい。種々のそのほかの物質は、コーティングとして存在してもよく、又はそうでなければ、固体の単位投与形態の物理的形状を改変してもよい。たとえば、錠剤、丸薬、又はカプセルを、ゼラチン、ワックス、セラック又は糖などで被覆してもよい。シロップ又はエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてのスクロース又はフルクトース、保存剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、染料並びにサクランボ若しくはオレンジの風味のような香味剤を含有してもよい。当然、単位投与形態を調製するのに使用される物質は、薬学上許容可能であり、採用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性の製剤及び装置に組み入れられてもよい。
【0053】
活性化合物は、点滴又は注射によって静脈内に又は腹腔内に投与されてもよい。活性化合物又はその塩の溶液は、水で調製することができ、非毒性の界面活性剤と任意で混合することができる。分散物もグリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物、及び油の中で調製することができる。保存及び使用の普通の条件下で、これらの製剤は保存剤を含有して微生物の増殖を妨げる。
【0054】
注射又は点滴に好適な医薬投与形態には、無菌の注射用若しくは点滴用の溶液又は分散液の即時製剤に適合する、任意でリポソームに内包される有効成分を含む無菌の水溶液又は分散液又は無菌の粉末を挙げることができる。あらゆる場合で、最終的な投与形態は、無菌の流体であり、製造及び保存の条件下で安定であるべきである。液体のキャリア又はビヒクルは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性のグリセリルエステル、及び好適なそれらの混合物を含む溶媒又は液状分散媒体であることができる。たとえば、リポソームの形成によって、分散液の場合必要とされる粒度の維持によって、又は界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。種々の抗菌剤及び抗真菌剤、たとえば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって微生物の作用の妨害をもたらすことができる。多くの場合、たとえば、糖、緩衝液又は塩化ナトリウムのような等張剤を含めることが好ましい。組成物における吸収を遅らす剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって注射用組成物の延長された吸収をもたらすことができる。
【0055】
好適な注射用溶液は、必要に応じて、上記で列挙された種々のそのほかの成分と共に、必要とされる量の活性化合物を適当な溶媒に組み入れ、その後、フィルターで滅菌することによって調製される。無菌の注射用溶液を調製するための無菌の粉末の場合、好ましい方法は真空乾燥法及び凍結乾燥法であり、有効成分の粉末に加えて、予め無菌濾過した溶液に存在する追加の所望の成分が得られる。
【0056】
局所投与については、本化合物は、液体である場合、純粋な形態で塗布されてもよい。しかしながら、固体であっても液体であってもよい皮膚科学的に許容可能なキャリアと組み合わせた組成物又は製剤として皮膚にそれを投与することが一般に望ましい。
【0057】
有用な固形キャリアには、たとえば、タルク、粘土、微細結晶性セルロース、シリカ、アルミナなどのような微細に分割された固形物が挙げられる。有用な液体キャリアには、水、アルコール類又はグリコール類又は水/アルコール/グリコールの混合物が挙げられ、その中で、本化合物は、任意で非毒性の界面活性剤の助けを借りて、有効なレベルで溶解され、又は分散され得る。芳香剤及び追加の抗菌剤のようなアジュバントを添加して所与の用途に対する特性を最適化することができる。得られた液体組成物を吸収性パッドから塗布することができ、それを使用して帯具及びそのほかの包帯に含浸させることができ、又はポンプ型の若しくはエアゾール型のスプレーを用いて患部に噴霧することができる。
【0058】
たとえば、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、修飾セルロース又は修飾鉱物物質のような増粘剤を液体キャリアと共に用いて、使用者の皮膚に直接塗布するための薄延可能なペースト、ジェル、軟膏、石鹸なども形成することができる。
【0059】
式Iの化合物を皮膚に送達するのに使用できる有用な皮膚用組成物の例は、当該技術で既知であり、たとえば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)及びWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照のこと。
【0060】
式Iの化合物の有用な投与量は、動物モデルにおいて試験管内の活性と生体内の活性を比較することによって決定することができる。マウス及びそのほかの動物における有効な投与量をヒトに外挿する方法は当該技術で既知であり、たとえば、米国特許第4,938,949号を参照のこと。
【0061】
治療で使用するのに必要とされる化合物、又はその活性のある塩若しくは誘導体の量は、選択される特定の塩によって異なるだけでなく、投与経路、治療される症状の性質及び患者の年齢や症状によっても異なり、最終的には主治医又は臨床医の裁量である。
【0062】
所望の用量は好都合に、単回用量で提示されてもよく、又は適当な間隔で投与される分割用量、たとえば、1日当たり2、3、4回以上の副用量として提示されてもよい。副用量自体はさらに、たとえば、大まかに間隔を空けた多数回の投与、たとえば、吸入器からの複数回の吸入に、又は眼への複数回の点眼の投与によって、分割されてもよい。
【0063】
本発明の特定の実施形態は、本明細書で記載されるような式Iの有効量の化合物にマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼを接触させることを含む、生体内又は試験管内においてマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を阻害する方法を提供する。該方法はまた、動物(たとえば、ヒトのような哺乳類)において有効量の式Iの化合物によってマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼを阻害することも含む。本発明はまた、試料において式Iの化合物によってマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を阻害する方法を提供するが、その際、試料には、水溶液(たとえば、喀痰)、組織、生検又は細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、試験管内又は生体内においてマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を調べるためのプローブとして式Iの化合物を使用する方法も提供する。
【0064】
マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸感染の阻害剤として作用する本発明の化合物の能力は、当該技術で周知であり、以下の試験Aで記載される薬理学モデルを用いて決定されてもよい。マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼは、結核菌の生存に必須であることが知られている(Crick, D.C., Schulbach, M.C., Zink, E.E., et al., Journal of Bacteriology, 2000, 182 (20), 5771-5778; Sassetti, C. M., Boyd, D. H., Rubin, E. J., Mol. Microbiol., 2003, 48(1),77-84)。従って、マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼに対して阻害活性を有する化合物は結核を治療する治療剤として有用であり得る。
【0065】
マイコバクテリウム、スメグマ菌の増殖を阻害する本発明の化合物の能力は、当該技術で周知であり、以下の試験Bで記載される薬理学モデルを用いて決定されてもよい。従って、マイコバクテリウム、スメグマ菌の増殖を阻害する化合物は、結核を含むマイコバクテリウムを治療する治療剤として有用であり得る。
試験A:マイコバクテリウムのポリプレニルシンターゼ(Rv2361c)の阻害
【0066】
N末端にHisタグを付けたデカプレニル二リン酸シンターゼ(Rv2361c)を含有するプラスミドで大腸菌DE3BL21star(Invitrogen)を形質転換した。次いで対数相に細菌を増殖させ、0.1mMのIPTGを室温で一晩添加することによって発現を誘導した。次いで細胞を遠心によって沈殿させ、その後、300mMのNaClと10mMのイミダゾールと1mMのフッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)を含有する50mMのトリスpH8に再浮遊させた。1mg/mLのリソソームを室温で30分間用いて細胞を溶解した。溶解物をHisSelect(Sigma)ニッケル親和性樹脂カラムに負荷し、0.1%のTriton−X100(TX100)を最終の洗浄に加え、溶出緩衝液に含めることを除いて、製造元の指示書に従って洗浄し、250mMのイミダゾールで溶出した。
【0067】
50mMのトリスpH7.9緩衝液、1mMのMgCl、0.15%のTriton−X100、1mMのDTT、30ngの組換え酵素、及び言及されない限り、100μMのFPP及び30μMの14C−IPPを含有する20μLの反応物にて通常、酵素アッセイを実施した。基質を加える前に化合物を加え、37℃にて10分間予備インキュベートし、その後、基質を加えて37℃にて10分間、反応を進めた。次に300μLのブタノール飽和した水を加え、次いで1mLの水飽和したブタノールを加えた。生成物を含有するブタノール層を抽出し、洗浄し、次いで液体シンチレーションカウンタを用いて放射活性を定量した。
【0068】
式Iの化合物は、マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼに対する活性を有することが見い出された。図1は、化合物13による精製マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼ(RV2361c)の阻害を示す一方で、図2は、化合物23によるRV2361cの阻害を示す。
【化15】

【0069】
試験B:細菌、スメグマ菌の増殖阻害
スメグマ菌(ATCC607)はアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手し、ADC(Sigma)、0.5%グリセロール及び0.05%Tween−80を含有する7H9ブロス(Sigma)で培養した。細菌を対数相に増殖させ、次いで希釈し、分取し、指示した薬剤の存在下で2日間増殖させた。分光光度計を用いて540nmでの光学吸収の関数として増殖を測定した。或いは、液体培養物のアリコートを寒天含有プレートに広げ、次いでそれを2日間増殖させ、その後コロニー形成単位(CFU)の数を数え、mL当たりで正規化した。
【0070】
図3は、化合物イソニアジド(イソニコチニルヒドラジン)に対して化合物24による細菌スメグマ菌の増殖阻害を示す。
【化16】

【0071】
ここで、以下の非限定の実施例によって本発明を説明する。
【0072】
一般
H−NMR、13C−NMR、31P−NMRを用いて又は適宜、基準試料との比較によって化合物を特定した。カラス器具は使用前に火炎乾燥した。特に指示されない限り、陽圧アルゴン雰囲気下で撹拌しながら反応を行った。特に言及されない限り、NMRデータはすべてCDClにて300MHzで回収した。
【0073】
実施例1:化合物13の合成
【化17】

p−プレニル−フェネチリデンビスリン酸四ナトリウム塩(13):CHClにおける化合物12(0.775g、1.74ミリモル、1.00当量)の撹拌された溶液を氷槽にて0℃に冷却し、2,4,6−コリジン(1.16mL、8/5ミリモル、5.03当量)を加え、その後TMSBr(1.13mL、8.74ミリモル、5.02当量)をゆっくり加え、一晩撹拌した。トルエンを加え、真空で取り除いた。この工程を3回繰り返した。粗精製の物質を乾燥させた後、残留物をNaOH溶液(1.73M、5mL、8.65ミリモル、4.97当量)で処理し、室温で一晩撹拌した。溶液にアセトンを加え、得られた物質を3℃にて72時間冷却した。溶液を濾過し、冷却アセトンで何回か固形物を洗浄し、真空で乾燥させた。D0にて 1H NMR δ 1.70 (3H, bs), 1.71 (3H, bs), 2.29 (1H, tt, JHP=21.9Hz, J=5.8Hz), 3.08 (2H, dt, Jt=16.3Hz, Jd=6.9Hz), 3.31 (2H, d, J=7.5Hz), 5.35-5.42 (1H, m), 7.17 (2H, d, J=7.8Hz), 7.29 (2H, d, J=8.1Hz) 31PNMR (プロトン分離) δ 20.24
化合物12は以下のように調製した。
【0074】
a)p−ブロモベンジル−t−ブチルジメチルシリルエーテル(10):アルゴン雰囲気下で、4−ブロモベンジルアルコール(4.73g、25.7ミリモル、1.0当量)のCHCl溶液に撹拌しながら、イミダゾール(4.39g、64.ミリモル、2.5当量)を加えた。溶液を0℃に冷却し、次いでTBSCl(4.70g、31.2ミリモル、1.2当量)を加えた。反応混合物を一晩撹拌した。HOで溶液の反応を止め、CHClで抽出し、乾燥させ(MgSO)、濃縮した。シリカゲルの短プラグを介したフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中15%EtOAc)を用いた精製によって収率96%(7.40g)でTBS保護されたアルコール化合物10を得た。1H NMR δ 0.07 (6H, s), 0.92 (9H, s), 4.67 (2H, S), 7.17 (2H, d J = 8.7Hz), 7.42 (2H, d, J = 8.4Hz) 13CNMR δ 140.4, 131.2 (2C), 127.7 (2C), 120.5, 64.3, 25.9 (3C), 18.5, -5.3 (2C)
【0075】
b)p−プレニルベンジルアルコール(11):化合物10(6.61g、21.9ミリモル、1.0当量)の撹拌されたTHE溶液をドライアイス/アセトンの槽にて−78℃に冷却した。いったん冷却が完了すると、シリンジを介してtiBuLi(11.5mL、THF中で2.1M、1.1当量)をゆっくり加え、溶液を15分間撹拌した。シリンジを介して臭化プレニル(4.26g、28.6ミリモル、1.3当量)を一滴ずつ加えた。溶液を2時間−78℃で保持し、次いで徐々に室温に温め、一晩撹拌した。得られた混合物の反応をHOで止め、ジエチルエーテルで抽出し、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。粗精製の混合物をさらに精製することなく次に進めた。粗精製混合物の撹拌されたTHE溶液を氷槽で0℃に冷却し、THF(27.1mL、27.1ミリモル、1.0当量)におけるTBAFの1M溶液を反応容器に一滴ずつ加えた。反応物を4時間撹拌し、その時点でジエチルエーテルによって溶液を希釈し、HOを加えた。得られた混合物をジエチルエーテルで抽出し、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中10%EtOAc)を用いた精製によって2工程にわたって収率77%で(2.99g)化合物11を得た。11 HNMR δ 1.70 (3H, s), 1.73 (3H, s), 2.78 (1H, bs), 3.31 (2H, d, J = 7.5 Hz), 4.51 (2H, s), 5.25-5.33 (1H, m), 7.12 (2H, d, J = 8.4Hz), 7.20 (2H, d, J = 8.1Hz) 13C NMR δ 141.0, 138.2, 132.4, 128.3 (2C), 127.1 (2C), 123.0, 64.7, 33.9, 25.6, 17,7 HRMS (ESI, m/z) c(M)12160についての計算値:176.1201.観察値176.1199
【0076】
c)p−プレニル−フェネチリデンビスリン酸テトラエチルエーテル(12):化合物(11)(4.46g、25.3ミリモル、1.0当量)の撹拌されたCHCl溶液を氷槽にて0℃に冷却した。冷却した溶液に、無水トリエチルアミン(4.58mL、40.0ミリモル、1.6当量)を加え、その後、MsCl(2.36mL、30.5ミリモル、1.2当量)を一滴ずつ加えた。溶液を30分間撹拌した。アルゴン雰囲気下で乾燥したフラスコにLiBr(5.55g、63.9ミリモル、2.5当量)を入れ、無水THFに溶解した。次いでシリンジを介してこれを反応容器に移した。反応混合物を1.5時間撹拌し、その時点で、HOを加え、続いてNaCl飽和溶液を加えることによって溶液の反応を止めた。得られた溶液をCHClで抽出し、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮して粗精製の臭化物を得た。
【0077】
NaH(油中60%、0.932g、23.3ミリモル、1.0当量)の撹拌されたTHF溶液に15−クラウン−5(0.51mL、2.58ミリモル、0.1当量)を加えた。溶液を氷槽にて0℃に冷却した。溶液を完全に冷却した後、シリンジを介してテトラエチルメチレンビスホスホネート(7.38g、25.6ミリモル、1.1当量)をゆっくり加え、30分間撹拌してアニオンの完全な形成を促した。次に、シリンジを介して、粗精製臭化物のTHF溶液を反応容器にゆっくり加えた。混合物を直ちに氷槽から取り出し、一晩撹拌した。フルオラシルの層を介して溶液を濾過し、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中で6〜8%のEtOHの勾配)を用いて精製を達成し、2工程にわたって、目標のビスホスホネート化合物12を収率61%(6.89g)で、及び副産物化合物(12b)を収率2%(0.311g)で得た。化合物12 1H NMR δ 7.11 (2H, dd, Jo = 8.3, Jm = 2.1 Hz), 7.01 (2H, dd, Jo = 7.8, Jm = 2.1 Hz), 5.23-5.16 (1H, m), 4.10-3.94 (8H, m), 3.22 (2H, d, J = 7.2 Hz), 3.09 (2H, td, Jt = 6.3, Jd = 1.8 Hz), 2.68-2.45 (1H, m), 1.65 (3H, s), 1.63 (3H, s), 1.19 (12H, td, Jt= 7.2, Jp= 2.7 Hz) 13CNMR 8 139.8, 136.7 (1C, t, Jp = 7.4 Hz), 132.1, 128.7 (2C), 127.9 (2C), 123.1, 62.4-62.1 (4C, m), 38.9, 33.7, 30.6, 25.5, 17.6, 16.1 (4C, d, Jp = 7.2 Hz), 31P NMR δ 23.6; 二アルキル化ビスホスホネート化合物12b 1H NMR δ 7.35 (4H, d, Jo = 7.8 Hz), 7.05 (4H, d, Jo =7.8 Hz), 5.33-5.25 (2H, m), 4.04-3.92 (8H, m), 3.36-3.25 (8H, m), 1.72 (6H, s), 1.70 (6H, s), 1.13 (12H, t, Jt = 6.9 Hz), 13C NMR δ 139.8 (2C), 133. 2C, t, Jp = 6.5 Hz), 131.8 (2C), 131.5 (4C), 127.0 (4C), 123.3 (2C), 62.0-61.8 (4C, m), 48.7 (1C, t, Jp = 130.2), 37.1 (2C, 4.8 Hz), 33.8 (2C), 25.5 (2C) 17.5 (2C), 15.8 (4C, t, Jp = 3.5 Hz), 31PNMR δ 24.5. HRMS (ESI, m/z)(M)335Oについての計算値:604.3083.観察値:604.3086.
【0078】
実施例2:化合物17の合成
【化18】

m−プレニル−フェネチリデンビスリン酸四ナトリウム塩(17):化合物16(0.767g、1.72ミリモル、1.00当量)の撹拌されたCHCl溶液を氷槽にて0℃に冷却し、2,4,6−コリジン(1.14mL、8.60ミリモル、5.00当量)を加え、次いでTMSBr(1.11mL、8.58ミリモル、4.99当量)を加え、一晩撹拌した。トルエンを加え、真空で取り除いた。この工程を3回繰り返した。粗精製の物質を乾燥させた後、残留物をNaOH溶液(1.73M、5mL、8.65ミリモル、5.03当量)で処理し、室温にて一晩撹拌した。アセトンを溶液に加え、得られた物質を3℃にて72時間冷却した。溶液を濾過し、冷却アセトンで数回固形物を洗浄し、真空で乾燥させた。D0中にて 1HNMR δ 1.72 (3H, s), 1.73 (3H, s), 2.19 (1H, tt, JPH = 21.0Hz, J = 6.3Hz), 3.08 (2H, dt, Jd = 6.3Hz, Jt = 15.3Hz), 3.35 (2H, d, J = 7.5Hz), 5.38-5.44 (1H, m), 7.06-7.10 (1H, m), 7.22-7.31 (3H, m). 31P NMR (分離プロトン) δ 20.04.
化合物16は以下のように調製した。
【0079】
a)m−プレニルベンジt−ブチルジメチルシリルエーテル(14):3−ブロモベンジルアルコール(26.7ミリモル、1.00当量)のCHCl溶液に、0℃にてイミダゾール(130.6ミリモル、4.90当量)を加え、次いでTBSCI(34.7ミリモル、1.30当量)を加えた。反応混合物を室温に温め、一晩撹拌させた。HOの添加によって溶液の反応を止め、CHClで抽出し、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中8%のEtOAc)を用いた最終的な精製によって、TBS保護されたアルコールを収率90%(7.26g)で得た。H−NMRと13C−NMR双方のデータは文献に相関した(参照: Matsuda, Kazuhiko; Hamada, Masayuki; Nishimura, Keiichiro; Fujita, Toshio. Quantitative structure-activity studies of pyrethroids. 17. Physicochemical substituent effects of substituted benzyl esters of kadethric acid on symptomatic and neurophysiological activities. Pesticide Biochemistry and Physiology (1989), 35(3), 300-14.))。
【0080】
b)m−プレニルベンジルアルコール(15):化合物14(5.89g、19.5ミリモル、1.0当量)の撹拌されたTHF溶液をドライアイス/アセトンの槽にて−78℃に冷却した。冷却がいったん完了すると、シリンジを介して2.1MのnBuLiのヘキサン溶液(10.2mL、21.5ミリモル、1.1当量)をゆっくり加え、溶液を15分間撹拌した。その後、シリンジを介して臭化プレニル(3.82g、25.6ミリモル、1.31当量)を一滴ずつ加え、溶液を−78℃で2時間保持し、次いで徐々に室温に温め、一晩撹拌した。HOの添加によって、得られた混合物の反応を止め、ジエチルエーテルで抽出し、MgSOで乾燥させ、真空で濃縮した。さらに精製することなく粗生成物をさらに進めた。粗生成物をTHFに溶解し、およそ2M濃度の溶液を作製した。溶液を0℃に冷却し、1MのTBAFのTHF溶液(23.3ミリモル、1.2当量)を反応容器に一滴ずつ加えた。反応物を4時間撹拌し、その時点でHOを加えることによって反応を止めた。得られた混合物をジエチルエーテルで抽出し、乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン中10%のEtOAc)による最終的な精製によって、2工程にわたって収率72%(2.48g)で目標の化合物を得た。 1HNMR δ 1.70 (3H, s), 1.73 (3H, s), 2.57 (1H, bs), 3.31 (2H, d, 7.2Hz), 4.54 (2H, s), 5.26-5.44 (1H, m), 7.06-7.13 (3H, m), 7.20-7.26 (1H, m) 13C NMR δ 142.0, 140.9, 132.4, 128.5, 127.4, 126.9, 124.3, 122.9, 65.0, 34.2, 25.6, 17.7 HRMS (ESI, m/z) (M)C12160についての計算値:176.1201.観察値176.1204
【0081】
c)m−プレニル−フェネチリデンビスリン酸テトラエチルエーテル(16):化合物15(2.00g、11.4ミリモル、1.0当量)の撹拌されたCHCl溶液を氷槽にて0℃に冷却した。冷却した溶液に、無水トリエチルアミン(2.01mL、14.5ミリモル、1.3当量)を加え、次いでMsCl(1.05mL、13.6ミリモル、1.2当量)を一滴ずつ加えた。溶液を30分間撹拌した。アルゴン雰囲気下でLiBr(2.52g、29.0ミリモル、2.6当量)を乾燥したフラスコに入れ、無水THFに溶解した。次いでシリンジを介してこれを反応容器に移した。反応混合物を1.5時間撹拌し、その時点でHOを加え、続いてNaCl飽和溶液を加えることによって溶液の反応を止めた。得られた溶液をCHClで抽出し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空で濃縮した。粗精製臭化物を次の反応に利用する際、さらなる精製は実施しなかった。
【0082】
NaH(油中60%、0.437g、10.9ミリモル、1.0当量)の撹拌されたTHF溶液に15−クラウン−5(0.21mL、1.06ミリモル、0.1当量)を加えた。溶液を氷槽にて0℃に冷却した。溶液を完全に冷却した後、シリンジを介してテトラエチルメチレンビスホスホネート(3.46g、12.0ミリモル、1.1当量)をゆっくり加え、30分間撹拌してアニオンの完全な形成を促した。次に、シリンジを介して、粗精製臭化物のTHF溶液を反応容器にゆっくり加えた。混合物を直ちに氷槽から取り出し、一晩撹拌した。フルオラシルの層を介して溶液を濾過し、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中で6%のEtOHの勾配)を用いて精製を達成し、2工程にわたって、目標のビスホスホネート化合物16を収率47%(2.40g)で、及び化合物16bを収率4%(0.75g)で得た。化合物16:1H NMR δ 7.11 (1H, Jo = 8.1, Jo = 7.2 Hz), 7.04-7.00 (2H, m), 6.94 (1H, Jo = 7.2 Hz), 5.25-5.16 (1H, m), 4.12-3.93 (8H, m), 3.23 (2H, d, J = 8.1 Hz), 3.15 (2H, td, Jt = 16.5, Jd = 6.0 Hz), 2.69-2.47 (1H, m), 1.66 (3H, s), 1.64 (3H, s), 1.20 (12H, td, Jt= 7.2, Jd = 6.6 Hz) 13CNMR δ 141.5, 139.5 (1C, t, Jp = 7.5 Hz), 132.1, 128.7, 128.0, 126.2, 126.0, 122.9, 62.4-62.1 (4C, m), 38.8 (1C, t, Jp = ), 34.1, 30.9 (1C, t, Jp = 5.1 Hz), 25.6, 17.6, 16.1 (4C, d, Jp = 6.6 Hz) 31P NMR δ 23.6; ジアルキルビスホスホネート化合物16b:1H NMR δ 7.28 (2H, d, Jo= 6.9 Hz), 7.27 (2H), 7.15 (2H, t, Jo = 8.1 Hz), 7.02 (2H, d, Jo = 7.8 Hz), 5.35-5.29 (2H, m), 4.04-3.91 (8H, m), 3.37-3.26 (8H, m), 1.72 (6H, s), 1.70 (6H, s), 1.13 (12H, t, Jt = 6.9 Hz), 13C NMR δ 140.5 (2C), 136.7 (2C), 132.0 (2C), 131.8 (2C), 129.0 (2C), 127.2 (2C), 126.4 (2C), 123.4 (2C), 62.0 (4C, t, Jp = 3.4 Hz), 48.9 (1C, t, 4 = 137.8), 37.6 (2C, m), 34.3 (2C), 25.6 (2C), 17.7 (2C), 16.0 (4C, t, Jp = 3.2Hz). 31P NMR δ 25.0 HRMS (ESI, m/z) (M)3350についての計算値:604.3083.観察値:604.3080
【0083】
実施例3.化合物22の合成
【化19】

(3E,7E)−8−(1H−インドール−1−イル)−4,8−ジメチルノナ−3,7−ジエン−1,1−ビスリン酸四ナトリウム塩(22):2,4,6−コリジン(0.39mL、2.94ミリモル)のCHCl溶液を氷槽にて0℃に冷却し、ブロモトリメチルシラン(0.38mL、2.94ミリモル)を加えた。溶液を20分間撹拌し、シリンジを介して原液として化合物21を加えた。溶液を一晩撹拌し、揮発物を取り除いた。トルエンを加え、真空で溶媒を取り除いた。得られた残留物をNaOH水溶液(1M、1.9mL、1.9ミリモル)で処理し、一晩撹拌した。混合物をアセトンに注ぎ、3℃にて72時間保持し、濾過した。レチン酸塩を乾燥させ、HOに溶解し、濾過し、真空で濃縮し、化合物22を得た(115mg、60%)。 1H NMR δ 7.60 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.21-7.12 (m, 2H), 7.06 (dd, J = 7.5, 7.2 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 5.57-5.46 (m, 1H), 5.36-5.30 (m, 1H), 4.57 (s, 2H), 2.51-2.37 (m, 2H), 2.16-1.93 (m, 4H), 1.62 (tt, J = 21.6, 5.7 Hz, 1H), 1.57 (brs, 3H), 1.38 (brs, 3H); 13C NMR δ 136.3, 134.6, 131.8, 129.9, 128.5, 128.2, 127.5 (t, J = 8.6 Hz, 1C), 121.7, 121.1, 119.7, 110.7, 100.3, 53.9, 41.7 (t, J = 115.6, 1C), 39.1, 26.3, 26.2, 15.7, 13.3; 31P NMR δ 20.8
【0084】
化合物21は以下のように調製した。
【0085】
a)(2E,6E)−8−(1H−インドール−1−イル)−3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニルアセテート(18):インドール(849mg、7.25ミリモル)を無水DMFに溶解し、溶液を氷槽にて0℃に冷却し、固形NaH(油中で60%、320mg、8.00ミリモル)を慎重に加えた。添加がいったん完了したら、溶液を30分間激しく撹拌した。(2E,6E)−8−ブロモ−3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニルアセテート(2.32g、8.43ミリモル)をTHFに溶解し、シリンジを介して、得られた溶液を反応混合物にゆっくり加えた。混合物を氷槽から取り出し、一晩撹拌した。水を加え、混合物をエーテルに注いだ。溶液をジエチルエーテルで抽出し、抽出物を乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中10%のEtOAc)によって最終的な精製を達成し、化合物18(1.10g、49%)を得た。1HNMR δ 7.62 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22-7.14 (m, 1H), 7.11-7.04 (m, 1H), 6.49 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 5.35-5.25 (m, 2H), 4.56 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 4.48 (s, 2H), 2.21-2.12 (m, 2H), 2.10-2.02 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.67 (s, 3H), 1.51 (s, 3H); 13CNMR 171.1, 141.5, 136.3, 131.5, 128.5, 128.0, 126.9, 121.2, 120.7, 119.2, 118.7, 109.7, 101.0, 61.2, 54.1, 38.9, 25.7, 21.0, 16.3, 14.0; HRMS (EI+, m/z) C2025NOについての計算値:311.1885.観察値:311.1889
【0086】
b)(2E,6E)−8−(1H−インドール−1−イル)−3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1−オール(19):化合物18(1.00g、3.22ミリモル)をMeOHに溶解し、KCO(2.5g、18.1ミリモル)を加え、溶液を一晩撹拌した。重力濾過によって固形KCOを取り除き、水を加えた。約80%のMeOHが除かれるまで溶液を濃縮し、次いでジエチルエーテルを加えた。ジエチルエーテルで水性層を抽出し、抽出物を乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中30%のEtOAc)によって最終的な精製を達成し、化合物19(411mg、47%、5%のBFSM)を得た。1HNMR δ 7.62 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.20-7.05 (m, 3H), 6.49 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 5.35-5.23 (m, 2H), 4.59 (s, 2H), 4.09 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 2.18-2.11 (m, 2H), 2.07-2.01 (m, 2H), 1.63 (s, 3H), 1.53 (s, 3H); 13CNMR 138.3, 136.1, 131.2, 128.4, 128.1, 126.9, 123.8, 121.1, 120.7, 119.1, 109.7, 100.7, 59.0, 53.9, 38.8, 25.6, 16.0, 13.9; HRMS (EI+, m/z) C1823NOについての計算値:269.1780.観察値:269.1770
【0087】
c)1−((2E,6E)−8−ブロモ−2,6−ジメチルオクタ−2,6−ジエニル)−1H−インドール(20):化合物19(1.00g、3.72ミリモル)のTHF溶液を氷槽で0℃に冷却した。トリエチルアミン(0.67mL、4.81ミリモル)を加え、次いでMsCl(0.38mL、4.91ミリモル)を加えた。得られた懸濁液を0℃で1時間撹拌し、固形LiBr(814mg、9.37ミリモル)を加えた。助けなく溶液を室温に温め、2時間撹拌した。水を加え、溶液をジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO上で乾燥させ、塩基性アルミナの層を介して濾過した。溶媒を真空で取り除き、さらに精製することなく、得られた粗精製の油を以下の工程(化合物21の合成)で用いた。
【0088】
d)3E,7E)−8−(1H−インドール−1−イル)−4,8−ジメチルノナ−3,7−ジエン−1,1−ビスリン酸テトラエチルエーテル(21):0℃におけるNaH(油中60%、150mg、3.75ミリモル)のTHF懸濁液に、シリンジを介してテトラエチルメチレンビスホスホネート(1.10g、3.81ミリモル)を加えた。得られた混合物を20分間撹拌し、化合物20(1.24g、3.72ミリモル)を加えた。助けなく溶液を室温に温め、一晩撹拌した。水を加え、ジエチルエーテルで溶液を抽出し、合わせた抽出物を乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(ヘキサン中8%のEtOH)によって最終的な精製を達成し、所望のビスホスホネート化合物21(625mg、31%)を得た。1HNMR δ 7.61 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.18 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.11-7.05 (m, 2H), 6.49 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.35-5.31 (m, 2H), 4.59 (s, 2H), 4.21-4.13 (m, 8H), 2.73-2.54 (m, 2H), 2.32 (tt, J = 23.4, 6.3 Hz, 1H), 2.18-2.09 (m, 2H), 2.05-1.94 (m, 2H), 1.63 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 1.33 (t, J = 6.9 Hz, 12H); 13CNMR 136.2, 136.1, 131.0, 128.5, 128.0, 127.5, 122.1 (t, J = 7.3 Hz, 1C), 121.2, 120.6, 119.1, 109.6, 100.9, 62.3 (dd, J = 8.5, 7.0 Hz, 4C), 54.1, 39.1, 37.3 (t, J = 131.8, 1C), 26.1, 23.9 (t, J = 4.8 Hz, 1C), 16.3 (d, J = 7.4 Hz, 4C), 15.9, 13.9; HRMS (EI+, m/z), C2743NOの計算値:539.2566.観察値:539.2567
【0089】
実施例4.
以下は、ヒトにおける治療用途及び/又は予防用途のための式Iの化合物(「化合物X」)を含有する、代表的な医薬投与形態を示す。
【0090】
(i)錠剤1 mg/錠剤
化合物X= 100.0
ラクトース 77.5
ポビドン 15.0
クロスカメロースナトリウム 12.0
微細結晶性セルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム 3.0
300.0
【0091】
(ii)錠剤2 mg/錠剤
化合物X= 20.0
微細結晶性セルロース 410.0
デンプン 50.0
グリコール酸ナトリウムデンプン 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
500.0
【0092】
(iii)カプセル mg/カプセル
化合物X= 10.0
コロイド状二酸化珪素 1.5
ラクトース 465.5
ゲル化前デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
600.0
【0093】
(iv)注射1(1mg/mL) mg/mL
化合物X=(遊離の酸形態) 1.0
リン酸二塩基ナトリウム 12.0
リン酸一塩基ナトリウム 0.7
塩化ナトリウム 4.5
0.1Nの水酸化ナトリウム溶液 q.s.
(7.0〜7.5に合わせたpH)
注射用水 q.s.ad1mL
【0094】
(v)注射2(10mg/mL) mg/mL
化合物X=(遊離の酸形態) 10.0
リン酸一塩基ナトリウム 0.3
リン酸二塩基ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
0.1Nの水酸化ナトリウム溶液 q.s.
(7.0〜7.5に合わせたpH)
注射用水 q.s.ad1mL
【0095】
(vi)エアゾール mg/缶
化合物X= 20.0
オレイン酸 10.0
トリクロロモノフルオロメタン 5000.0
ジクロロジフルオロメタン 10000.0
ジクロロテトラフルオロエタン 5000.0
【0096】
上記製剤が、薬学技術で周知の従来の手順によって得られ得る。
【0097】
本明細書で引用された出版物、特許及び特許文書はすべて、あたかも参照によって個々に組み入れられるかのように参照によって本明細書に組み入れられる。本発明は、種々の特定の及び好ましい実施態様及び技法を参照して説明してきた。しかしながら、多数の変化形及び改変が、本発明の精神と範囲の中にありながら、為されてもよいことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコバクテリウム感染の予防的処置又は治療的処置のための式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグ;
【化1】

(式中、
は、鎖において1以上のアリール環又はヘテロアリール環を任意で含む、飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖であり、該(C〜C20)アルキルは、1以上のハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、該アリール又はヘテロアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され;
は、H、ハロ、OH、トリフルオロメチル、−OR、NR、又は飽和若しくは不飽和の(C〜C)アルキルであり、該(C〜C)アルキルは1以上のハロによって任意で置換され;
、R、R、及びRはそれぞれ独立してOH又は(C〜C)アルコキシであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
はそれぞれ独立して(C〜C)アルキル又はアリールであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
、R、R、R、R、R、R、R、R、R又はRのアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、R及びRはそれぞれ独立してH又は(C〜C)アルキルである)。
【請求項2】
式中、
は、鎖において1以上のアリール環又はヘテロアリール環を任意で含む、飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖であり、該(C〜C20)アルキルは、1以上のハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、任意のアリール又はヘテロアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され;
は、H、ハロ、OH、トリフルオロメチル、−OR、NR、又は飽和若しくは不飽和の(C〜C)アルキルであり、該(C〜C)アルキルは1以上のハロによって任意で置換され;
、R、R、及びRはそれぞれ独立してOH又は(C〜C)アルコキシであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
はそれぞれ独立して(C〜C)アルキル又はアリールであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成する
請求項1の化合物、又は哺乳類に対して薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグ。
【請求項3】
マイコバクテリウム感染が結核である請求項1の化合物。
【請求項4】
が不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である請求項1の化合物。
【請求項5】
が、鎖において1以上のアリール環を含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である請求項1の化合物。
【請求項6】
が、式
【化2】

のものであり、式中、R、R、R、R10及びR11の1つはYであり、そのほかはそれぞれ独立してH、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、(C〜C)アルキル、NR又はS(O)NRであり、R及びRはそれぞれH又は(C〜C)アルキルであり;
XとYの炭素の合計が5〜20であるという条件で、
Yは、飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルであり;
Xは、(CRであり、nは0、1、2、3、4、又は5であり、CRのそれぞれについて、R及びRはそれぞれ独立してH、又は(C〜C)アルキルである請求項1の化合物。
【請求項7】
及びRがそれぞれHである請求項6の化合物。
【請求項8】
nが1である請求項6の化合物。
【請求項9】
がYである請求項6の化合物。
【請求項10】
がYである請求項6の化合物。
【請求項11】
Yが、飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキルである請求項6の化合物。
【請求項12】
Yが、3−メチル−2−ブテン−1−イルである請求項6の化合物。
【請求項13】

【化3】

である請求項1の化合物。
【請求項14】

【化4】

である請求項1の化合物。
【請求項15】
が、鎖においてヘテロアリール環を含む不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である請求項1の化合物。
【請求項16】
ヘテロアリール環がインドリルである請求項15の化合物。
【請求項17】
が、
【化5】

である請求項1の化合物。
【請求項18】
が、飽和又は不飽和の(C〜C)アルキル、OH又はHである請求項1の化合物。
【請求項19】
、R、R及びRがそれぞれOHである請求項1の化合物。
【請求項20】
式Iの化合物が、
【化6】

である請求項1の化合物。
【請求項21】
式Iの化合物のプロドラッグである請求項1の化合物。
【請求項22】
、R、R又はRの1以上が−OCHOC(O)C(CH)である請求項21の化合物。
【請求項23】
式Iの化合物が、
【化7】

から選択されないという条件で式Iの化合物、又はその塩若しくはプロドラッグ:
【化8】

(式中、
がピリジン環を1つ含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖である場合、ピリジン環はピリジンの窒素を介してRのアルキル鎖に連結されないという条件で、R1は、鎖において1以上のヘテロアリール環を含み、且つ任意で1以上のアリール環を含む飽和又は不飽和の(C〜C20)アルキル鎖であり、該(C〜C20)アルキルは、1以上のハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、該アリール又はヘテロアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され;
は、H、ハロ、OH、トリフルオロメチル、−OR、NR、又は飽和若しくは不飽和の(C〜C)アルキルであり、該(C〜C)アルキルは1以上のハロによって任意で置換され;
、R、R、及びRはそれぞれ独立してOH又は(C〜C)アルコキシであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
はそれぞれ独立して(C〜C)アルキル又はアリールであり;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
及びRはそれぞれ独立してH、(C〜C)アルキル若しくはアリールであるか、又はR及びRはそれらが連結される窒素と一緒にピロリジノ環、ピペリジノ環、モルフォリノ環若しくはチオモルフォリノ環を形成し;
、R、R、R、R、R、R、R、R、R又はRのアリールは、1以上の(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルカノイル、(C〜C)アルカノイルオキシ、(C〜C)アルコキシカルボニル、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、NR又はS(O)NRによって任意で置換され、R及びRはそれぞれ独立してH又は(C〜C)アルキルである)。
【請求項24】

【化9】

の化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグである請求項23の化合物。
【請求項25】
請求項23に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグと、薬学上許容可能な希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項26】
マイコバクテリウム感染の予防的処置又は治療的処置のための請求項23に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグ。
【請求項27】
哺乳類におけるマイコバクテリウム感染を治療するために薬物を製造するための、請求項1〜24のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグの使用。
【請求項28】
マイコバクテリウム感染が結核である請求項27の使用。
【請求項29】
動物(たとえば、ヒト)に請求項1〜24のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグを投与することを含む、動物においてマイコバクテリウム感染を治療する方法。
【請求項30】
マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼを、請求項1〜24のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグの有効量と接触させることを含む、マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を阻害する方法。
【請求項31】
哺乳類においてマイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性を阻害するために薬物を製造するための、請求項1〜24のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグの使用。
【請求項32】
マイコバクテリウムのポリプレニルピロリン酸シンターゼの活性の予防的阻害又は治療的阻害のための、請求項1〜24のいずれか1項に記載の式Iの化合物、又は薬学上許容可能なその塩若しくはプロドラッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−521365(P2012−521365A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501031(P2012−501031)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/028187
【国際公開番号】WO2010/108190
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511293663)ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】