説明

抗菌保護を備える、滴下式に分配される液体の包装用小瓶

本発明は、容器内への吸気によって弾性的に可逆変形する壁を有するタンク(15)を備える滴下式に分配される液体の包装用小瓶(2)であり、そのタンク(15)の上には、包装用小瓶の外部に突出したピペット先端部(1)と、前記先端部の基部において液体および空気の通流を通すようにして間置された、部分的に親水性そして部分的に疎水性である抗菌濾過膜(6)を有する液体の分配用のヘッドが載っている。分配用のヘッドに関しては、本発明は、先端部のみを、抗菌濾過膜の外側の前記先端部の表面においてあらゆる細菌の成長を予防する効果を有する殺菌剤を含んだ材料で製造することを提案している。多孔質中央コア体(14)は有利には、液体の排出および空気が戻るための流路に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペット先端部付きの分配用のヘッドを通して一滴ずつ滴下式に分配される液体の包装用小瓶の構想および製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、液体を滴下式に分配することが所望されることとなる全ての分野に適用され、特に医薬品または化粧品向け、または抗微生物保存剤の入っていないあらゆる溶液向けに適用される。
【0003】
非限定的な形で一例として本明細書中でより詳細に記述する本発明の特に好ましい利用分野は、液滴の形で目の中に局所施用されるための眼科用液体の包装および分配に関するものである。
【0004】
大部分の眼科用液剤は、その役割(眼病の治療、癒合、水分補給など)の如何に関わらず、包装用小瓶の内部に設けられたタンクに収納されて市販されており、この包装用小瓶には、その眼科用液剤を直接眼内に分配するためのピペット先端部が具備されている。ピペット先端部には、タンクから外部まで液体を排出する中央流路が貫通している。このピペット先端部は一般にタンクの上方に固定される。より厳密には、本発明の対象である包装用小瓶において先端部は分配用のヘッドの一部を成し、このピペット先端部はこのヘッドにおいて、タンクの排出流路との連通を確保しつつも、包装用小瓶の口の中に密閉状態で挿入される内部部分すなわち液だめのふねとなるナセルまで伸延している。
【0005】
このタイプの包装用小瓶は全て、微生物の増殖に対する保護の問題を提起しており、このような増殖は液滴分配の際に、患者の目に微生物学的汚染をひき起こすおそれがある。これを改善するため、溶液中に混合してとり入れられた抗微生物保存剤を使用することが従来の方法である。しかしながら、例えば塩化ベンザルコニウムなどのような保存剤は、目に攻撃的であるという重大な欠陥を有する。
【0006】
同じ目的で、外部汚染がタンク内に収納された溶液に至るのを妨げるために、タンクと先端部の間の液体の流路に間置された抗菌濾過膜の液滴送り出しシステムを具備することがより頻繁となっている。この溶液は、包装用小瓶の内容物に関して、そして包装用小瓶がピペット先端部を閉じ込めるキャップによって保護されている限り、そしてその商品パッケージ材料によって保護されている限り、満足のいく状態にある。初回使用のために分配用のヘッドが露出された後、この溶液はもはや満足のいく状態にはなく、そのため、寄生の眼科感染症の出現を予防するという配慮から、使用中の包装用小瓶の寿命を制限せざるを得ない。
【0007】
さらに、殺菌活性を示す材料で構成された水循環路が実現される他の部門に存在する措置を採用することで、この問題を処理できると考えた者もいた。特許文書である国際公開第2007/056131号の場合がそれであり、液体が包装用小瓶から、それを通して排出される逆止弁をそのように処理することを想定して、抗菌濾過膜の援用を回避している。この解決法は、求められた有効性を発揮しなかったという事実に加え、消費された液体に置き換わる空気の戻りが全くなく、使用毎に液体タンクの体積が減少するのがわかる不可逆変形する包装用小瓶専用のものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、本発明は本質的に液体包装用小瓶の利用における衛生条件を改善することを目的としており、これにおいて液体タンクは、排出された液体の全体積に置き換わるタンク内への吸気によって弾性的に可逆変形する壁を有し、また、吸気は液体の排出と同じ経路で分配用のヘッドを通して行なわれる。本発明は、同様に、保存剤を含まない眼科用液剤の包装に適した包装用小瓶を提案することによって、抗菌膜が提供する可能性を十分に利用することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の当初、このタイプの包装用小瓶では、目の汚染のおそれが点眼液に由来するものではなく、その先端部が、露出されて使用者が触れるか、二回の使用の間にキャップを付けずに放置するかまたはまぶたにあまりにも近づきすぎない限りは、包装用小瓶自体に由来するものではないことが指摘された。
【0010】
本発明が提案する包装用小瓶では、滴下式の液体分配用のヘッドは、排出された液体およびその代わりに戻る空気の行程に間置され、内部タンクと連通した状態にある包装用小瓶に密閉状態で取付けられているナセルとピペット先端部との間に取付けられている抗菌濾過膜を有しており、ナセルを除いた先端部のみを、その外部表面においての細菌の増殖を抗菌予防する効果を有する殺菌剤を含んだ材料で製造することが想定されている。
【0011】
このような抗菌濾過膜を含む包装用小瓶はすでにそれ自体公知であり、これらの包装用小瓶は、液滴の排出後に包装用小瓶内に入る空気が有する可能性のある細菌がタンク内まで侵入して残留する液体を汚染することを回避する。この膜は殺菌剤を含んでおらず、その抗菌作用は、その濾過特性に由来する。すなわち、この膜の平均孔径が0.2μm以下(例えば0.1〜0.2μm)であるため、細菌の通過を妨げる。この膜が存在することによって、包装用小瓶の開栓後、製品の使用期間を限定することを条件とするものの、保存剤を含有する必要のない液体を包装するために包装用小瓶を利用することが可能となる。一般的には、使用期限を1ヶ月以内とすることが推奨される。
【0012】
より詳細には、本発明は、容器の内部に吸気することによって弾性的に可逆変形する壁をもつタンクを有しており、この壁に加えられた圧力の作用下で液体を送出し、そして一定用量の液体の送出後に容器がその初期形態に自然に戻ることを可能にし、抗菌濾過膜が部分的に親水性または部分的に疎水性である、液体包装小瓶をも目的としている。このような包装用小瓶の機能原理は、国際公開第2006/000897号において詳述されている。
【0013】
このような包装用小瓶の場合、一方ではタンクの壁に対し使用者によって加えられる圧力の作用下で分配方向に液体が通過できるようにし、他方では液滴の分配後にこの圧力が緩められたときに、空気が逆方向つまり外部からタンクに向かって通過できるようにする、例えばポリアミドまたはポリエーテルスルホン系のポリマー製の、部分的に親水性で部分的に疎水性の二機能膜が利用される。各分配作業の後に外部からタンクに向かって空気が通過できるように、特にラジカル反応開始剤の存在下でのグラフト化によってその構造を修飾することにより、表面の一部が部分的に疎水性にされている濾過膜は、市場で入手可能である。この処理は、特に液体経路を通して配置された表面の20〜50%を占める中央帯上で実施される。
【0014】
一方、国際公開第2006/000897号で記述されているような包装用小瓶は、液体の貯蔵タンクと濾過膜の間に位置づけられる、送出すべき液体の流束を調節する微孔質の疎水性パッドを有している。この包装用小瓶は同様に、包装用小瓶が液体の送出に使用されていない場合に密閉性を作り出す先端部の保護用キャップをも有している。
【0015】
本発明によると、この抗菌濾過膜の先に位置づけされているピペット先端部のみが、殺菌剤で処理されている。このため、タンク内に残留する液体は、材料が殺菌剤を含んでいる部分の表面と接触しない。こうして、殺菌剤がタンク内に残留する液体を経時的に変質することは回避される。仮に液体を滴下式に排出した後にわずかな部分が包装用小瓶内まで戻る可能性があるとしても、圧力平衡状態で吸入された空気と全く同様に、タンク内に侵入する前に膜を通過する際にこの液体の全ての細菌が濾過される。
【0016】
国際公開第2007/056131号においては、液体を含有するタンクへのわずかな吸気も許すことなく液体が排出されるときに通るバルブを形成する先端部を伴う滴下式に分配される液体の包装用小瓶が提案された。この特許文献において、さらにこの先端部または包装用小瓶全体を構成する材料を殺菌剤で処理することが推奨される場合でも、液体をその通過の際で処理することしか問題となり得ない。
【0017】
本発明の好ましい一つの実施態様によると、ピペット先端部の本体は、その総体内に一様に分布している殺菌効果のあるイオン担持ポリマーを含有する材料、特に成形プラスチック材料で形成されている。
【0018】
本発明の枠内で選択されたイオン担持ポリマーは、有利には、それが担持するイオンの殺菌特性のために、細菌株に対してだけでなく酵母菌およびカビに対する有効な抗微生物作用を示す。問題のイオンは、特に銀イオンである。発明者らは、このようなピペット先端部を備える包装用小瓶が有利にも、目に対する毒性を示すことなく、患者に対する優れた生物学的安全性を確保するということを確認した。
【0019】
抗菌効果は、有利にはピペット先端部の表面に及ぼされる。この表面上、そして特に目と接触するおそれのある表面に存在する殺菌性イオンは、その場所で静菌効果を発揮し、先端部の汚染後にはじまることとなる細菌の増殖を阻害する。この細菌汚染は、例えば液滴の投与のときに、組織または眼液の先端部との接触によって、目の中または目の周りに存在する細菌に由来する可能性がある。この汚染は同様に、より一般的に、分配時に使用者の指と故意にまたは不慮に接触することによってか、または全く単純に二回の使用の間に、先端部がキャップで保護されていない場合に周囲の空気または異物によって発生し得るものである。さらに、およそ数マイクロリットルの液体残留物は、排出流路内だけではあるが、各分配作業の後に常に先端部内に再吸引される。これらの残留物は、先端部内の微生物の増殖にとっての源泉を形成する可能性のある好適な湿潤環境を構成する。
【0020】
経時的にそして様々な利用に応じて、材料中に存在する殺菌性イオンがそれらを担持するポリマーの内部で先端部の表面の方向に移動して、この表面から作用に応じて消費されたイオンに置き換わる。
【0021】
こうして、本発明に係るピペット先端部は有利にもその外部表面と同様に内部表面で、使用者の健康または快適さにとって害であるほどに充分高い細菌濃度を生み出す可能性があると考えられる微生物の増殖から保護された状態にあり続ける。特に、こうして、分配の瞬間に先端部を通る液体が汚染されることが回避される。さらに、先端部は、その後の分配の瞬間に目と先端部が接触することにより眼の直接的な汚染源を構成することが決してない。タンク内での液体の汚染を妨げるために抗菌膜をその基部に内蔵する分配用先端部の場合は、分配の際に、膜を通して液体が通過する瞬間に液体が必然的に汚染されると考えられる生体フイルムつまりバイオフイルムがピペット先端部の表面に形成されるおそれも削減される。
【0022】
本発明に係る先端部の製造方法は、有利にも、実施がきわめて簡単である。殺菌効果のあるイオンが充填されたポリマー粒子は、プラスチック材料にとり入れられ、加熱後に均質な混合物が得られるようになっており、この混合物から先端部の成形工程が実施される。
【0023】
この方法は、成形による分配用の先端部の従来の製造方法に比べて、唯一つの単純な補足的な過程、すなわち成形方法の最初に成形すべき先端部を形成する主材料と抗菌ポリマーを混合する過程しか必要としない。
【0024】
殺菌効果をもつイオンとしては、銀イオンが特に好ましい。この銀イオンは、従来からその抗微生物特性から公知であるが、総量中数パーセントの濃度の銀イオン担持ポリマーは人間の眼に対して毒性を有さない。この銀イオンは大部分の細菌、酵母菌、キノコ類およびその他の類似の微生物に対して有効である。この銀イオンは、微生物細胞膜に結合し、その本来の機能をじょう乱させる。このイオンは、また、微生物細胞壁を通して侵入し、その中で電子供与性基および負荷電基と、ならびに酵素内に頻出するチオール基と結合する。こうして微生物細胞の機能不全を引き起こし、これが微生物細胞の死滅を急速にひき起こす。
【0025】
例えば銀イオンは、ポリエチレン中に細かく分散した状態でこれらのイオンを含有し、無機イオン交換樹脂により担持される顆粒状で材料中にとり入れられる。特に、使用がきわめて容易で安全性が高いという利点を示すこのような顆粒は、市販されている。
【0026】
先端部本体の形成のために混合物に内包される殺菌性イオン担持ポリマー粒子の割合は、有利には混合物の合計重量の、重量%で、1〜10%そして好ましくは2〜5%の間に含まれる。
【0027】
本発明に係るピペット先端部は、液体を排出するために中央に狭い流路が貫通した単一の環状部品で形成することができる。
【0028】
本発明の特に有利な一つの実施形態によると、ピペット先端部は、排出された液体または再吸引された空気の循環に提供された通過用断面を、殺菌剤で充填された材料の表面によって区切られた複数の流路に振り分けるような形でつくられる。このために、本発明は特に、先端部の中に比較的大きな内部中央流路を設け、この内部中央流路に液体を排出するための複数の副流路を形成する中央コア体を挿入すること、そして、この中央コア体を、総体内に分布した殺菌剤を含有する材料で製造することを想定している。
【0029】
この中央コア体の利点は、外部から侵入する空気、ひいては外部からの細菌汚染源に対して副流路の抗微生物材料製の壁が提供する接触面が単一の流路の場合よりも大きいことから、先端部での細菌の増殖を阻害する観点から見た有効性が更に改善されることにある。
【0030】
本発明の有利な一つの特徴によると、中央コア体は、先端部の外部本体(外側部分)に含有されているものと異なる殺菌剤を有する。これにより、細菌の増殖に対する有効性を拡大することができ、実際、先端部の部分に応じて最も適合された、異なる抗菌スペクトルを有する殺菌剤を組合せることができる。以上で説明したとおり、銀イオンのようなイオンを担持する殺菌剤は、これらの殺菌性イオンを経時的に放出し、先端部の外部表面にとって、そしてバイオフイルムの形成を防止するために有利な作用を有する。
【0031】
本発明の特定の特徴の一つによると、中央コア体は、殺菌剤としてフェノール系化合物、特に含塩素フェノール系化合物から選択された化合物を含む。好ましくは、この含塩素フェノール系化合物は、トリクロサンの名称で知られている5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノールである。この化合物は、広い抗菌スペクトルを示す。この化合物は一部の研究によると、細菌の膜および/または細胞質に対する作用による殺生物作用、および細胞膜の再生および構築に必要な脂肪酸の合成を主に阻害して細菌の増殖を妨げる静菌作用を有する。
【0032】
本発明の有利な特徴の一つによると、中央コア体は、ピペット先端部の外部主要本体を形成するために用いられているものと同じ基本材料で形成されている。
【0033】
中央流路を画定する先端部の外部主要本体と中央コア体は、各々互いに独立して、全く異なる成形作業において製造され、次に流路内に中央コア体を挿入することによって互いに組立てられる。
【0034】
このような実施形態において、本発明は有利にも、副流路が中央コア体の外部表面に彫られた溝から形成されることを想定している。この特徴は、先端部の製造方法と連携して排出用の流路の壁の表面状態をより良好な制御を可能にするため、特に有利であることが判明している。
【0035】
実際、従来の先端部、すなわち液体の排出のための狭い中央流路を有する先端部の場合、流路の形成は、成形方法の後に、まだ完全に硬化していない材料中で非常に細い針を用いた穿孔によって実施される。工業生産レベルでは、このような方法は、中央流路の表面に微小な不規則性を作り出し、場合によっては流路の厚い壁に停留のマイクロポケットの形成を生み出す可能性がある。これらのマイクロポケットは、細菌の増殖のためのニッチを構成する。
【0036】
本発明に係る先端部において、液体の排出用の流路は、複数の副流路を含む。これらの副流路は、適切な形状の金型を用いた中央コア体の成形の際に溝を形成するその製造方法のため、細菌やその他の微生物が中に棲みついて増殖することができる表面の凹凸の無い、より平滑な壁を呈している。
【0037】
副流路の数は、好ましくは二本、好ましくは四本あり、中央コア体の軸を中心として規則的に分布しており、各分配作業の後に先端部に吸引される空気との大きな接触面を確保するようになっている。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態の一つによると、中央コア体は、多孔質の熱可塑性の材料製であり、とりわけ、主にポリオレフィン系で、より特定的には、ポリエチレンファミリーから選択された(先端部の外部主要本体がそうであるように)ものである。ポリエチレンは、この材料に対し、液体の停滞を回避する疎水性を付与する。
【0039】
このような多孔質材料は、好ましくは焼結材料である。この焼結材料は、ポリマー(主要成分)の融点より低い温度で実施される、金型内で予め冷間圧縮された熱可塑性ポリマーの粒子の熱処理、すなわち焼結によって得られる。この製造方法は、粒子を溶融させることなく互いに結合させ、かつ特に温度と圧力に働きかけることで材料の多孔度を制御することができる。殺菌剤は、さまざまな要領で、すなわち総体として基本ポリマーと共にマスターバッチで、または殺菌処理済みポリマーと基本ポリマーの攪拌によって、さらには添加剤を伴うまたは伴わない表面処理によって、添加することが可能である。ある一つの特定なケースによると、多孔質ポリマー材料を焼結により製造し、次に得られた焼結材を殺菌剤で処理する。このような多孔質材料およびそれらの製造方法は、例えば国際公開第01/65937号に記述されている。
【0040】
有利には、本発明のこの実施形態において、多孔質の熱可塑性の材料の孔は、百マイクロメートルの規模の平均寸法を有する。この寸法は、例えば0.1〜0.2mm(100〜200μm)の間に含まれていてよい。
【0041】
有利には、同様に本発明のこの実施形態において、先端部の外側部分の末端部分および多孔質材料は、符合した、つまりぴったり一致する同様の円筒形状を有する。このことは、先端部のこの部分の壁と中央コア体の間に液体が停滞するのを回避することができる。中央コア体のこの円筒形状は、液体が分配されるために、この中央コア体を通る際に負荷損失を最小限におさえる折衷策であり、他方では抗菌性接触面を最適化するものである。この実施形態の特定の一つのケースによると、先端部の末端部分は多孔質材料で現物型成形された形状を有する。この末端部分は、互いの形状が正確にぴったり一致するように多孔質材料の現物型成形により作られている。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、先端部は、中央流路の基部に、流路内の中央コア体の弾性ラチェット機構作用による固定のために、中央コア体の基部に形成された相補的な周囲溝と協働する周囲突起を有している。中央コア体は流路内に強制的に挿入され、その基部に形成された突起によりこの流路の内部にしっかり維持される。突起と溝は、先端部すなわちそれぞれ中央流路を画定するその外側部分およびその中央コア体の成形作業の際に形成される。
【0043】
本発明について、ここで図1〜4を参照しながら、好ましい特徴およびその利点の枠内でさらに完全に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る分配用のヘッドの先端部を示す長手方向平面に沿った断面図を表わす。
【図2】図1の先端部の中央コア体を斜視図で、そして先端部内のその収納部を長手方向の平面方向に沿った断面図で示す。
【図3】図1の先端部の平面A−Aに沿った断面図を示す。
【図4】本発明に係る多孔質中央コア体を備えた先端部の長手方向の平面に沿った断面図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係る分配用のヘッドの第一のタイプの分配用の先端部1の一例が、図1に表わされている。
【0046】
分配用のヘッドは、包装用小瓶2の頸部の内部に密閉性の丸襞装飾様突起19によって密閉状態で取付けられるように想定されているナセル13を含む。先端部1は、このナセルからその軸に沿って延在している。先端部は、そのフランジ4によりこのナセルに溶着されている。
【0047】
包装用小瓶は、有利には保存剤を含有しない洗眼剤を収納するための弾性的に可逆変形する壁によって区切られた図示されていないタンクを備えている。タンクの柔軟な壁を手で押した場合、液体はナセル13の内部導管の中に配置された流束を調節するパッドに強制的に通される。タンクが自然にその初期状態に自然に戻ると、同じ導管から空気の流入が誘発される。
【0048】
先端部は長手方向の中央流路3を有し、この中央流路は、先端部をその基部4から(垂直に置かれた包装用小瓶を考慮して)その上端部に位置づけられる液体を排出するための孔5に至るまで、その高さの全体にわたって通っている。
【0049】
先端部1の基部の下には、タンクから先端部までの液体の、および流入する空気の通路に対して横方向に、抗菌濾過膜6が配置されている。この膜は、外部汚染からタンク内に収納された液体を保護することを目的としたものである。
【0050】
先端部の本体12は、総体内に殺菌効果のあるイオン担持ポリマーを内包するプラスチック材料、特にポリエチレンタイプのポリマーで構成されている。このポリマーは、従来の先端部材料と相溶性を有するように選択される。この理由だけでも、これはポリエチレン系であることが好ましい。これは、先端部の成形組成物にいつでも取込むことができる状態の粉末または顆粒または球の形で市販されている。殺菌剤は、好ましくはポリマーの巨大な分子に担持される銀イオンで構成されている。
【0051】
このような銀イオンは、皮膚および眼球粘膜に最も一般的に存在する数多くの細菌株、酵母菌株およびカビ菌株、特にシュードモナス菌株およびブドウ球菌株に対して有効であるものとして公知である。
【0052】
本発明の枠内で使用可能な、銀イオンが充填されたポリマー、特にポリエチレンで構成された市販の製品としては、例えばClariant S.p.A.製のAlphaSan(登録商標)またはAddmaster Ltd.が販売するBiomasterを挙げることができる。
【0053】
本発明に係る先端部は、ポリエチレンとの均質混合物の抗微生物ポリマーを含む混合物から従来の成形方法により製造される。ポリエチレン中の銀イオン担持ポリマー顆粒の割合は、重量%で、およそ5%である。
【0054】
成形の製造方法の後、殺菌剤は、先端部の全総体中に存在し、特に使用者の眼または手と接触する可能性のあるその外部表面と同様、その中央流路3を画定する内部表面にも存在する。
【0055】
先端部の中央流路3の内部には、中央コア体7が配置されており、これは図2に斜視図で表わされている。中央コア体7は、それが中に収納される中央流路3の形状と相補的な形状、すなわち、上下に広がった、全体として円錐の形状を呈する。その外径は流路3の内径に合わせて調整され、こうして液体は流路と中央コア体の間を流れることができなくなっている。
【0056】
中央コア体7の外部表面上には、中央コア体7の軸を中心にして規則的に分布した四本の溝8が形成されている。
【0057】
中央コア体7は、それを取り囲む先端部12の本体と同じ基本材料、特にポリエチレンから成形方法によって製造されているが、有利には、先端部の外部表面に効果を及ぼすように本体12に含有されたものとは異なる殺菌剤を含んでいる。
【0058】
この殺菌剤は、ここではトリクロサンである。トリクロサンは、広い抗菌(および抗真菌)スペクトルを有する。その表面にある溝8は、金型にとりわけ適合された形状によって、成形方法の際に形成される。
【0059】
図3で例示されているように中央コア体7が流路3内に配置されたときに、中央コア体7の外部壁と流路3の内部壁の間には溝8のところで、小さな断面の副流路11が形成される。これらの副流路11は、先端部の基部から排出のための孔5までの液体の通過を確保している。この副流路の空気との接触面は平滑かつ規則的であり、空気、液体および細菌の停滞区域は無い。
【0060】
中央流路3の基部で先端部1は、この場所において流路の直径を削減している環状突起9を有している。中央コア体7にいたっては、同じくその基部で、突起9と相補的な環状溝10を有している。
【0061】
先端部1の外側部分12と中央コア体7は各々従来の成形方法によって製造され、その後互いに組立てられる。
【0062】
本発明に係る先端部の取付けに際し、中央コア体7は、液滴を放出するためのクラウンを形成する排出用の流路を取り囲む先端部の上端部にぶつかるまで、流路3に強制係合により挿入される。この位置で、環状溝10は、突起9と対面した状態にある。これら二つの要素は、弾性クリック作用により固着し、流路の内部に中央コア体をしっかりと維持する。
【0063】
本発明は、その好ましい実施形態によると、前述の溝付き中央コア体を、先端部を流れる排出用の流路に同じ要領で挿入される多孔質中央コア体で置き換えることによって、先端部内を貫通する排出用の流路を通して複数の流路に振り分けることで液体流束を分割するという同じ機能を確保することを想定している。
【0064】
その利点は多数ある。一方では、流束はより多くに分割され、分布はより細かい。他方では、流路は、排出のときに液体が触れる材料により一様に充填されることができる。さらに他方では、イオン剤よりも含塩素フェノール系有機化合物のファミリーの殺菌剤を利用することが、多孔質の形状と組合せた場合に目の汚染のおそれに対して最も有効な手立てとなる。
【0065】
このような分配用のヘッドが備わった包装用小瓶が図4に表わされている。
【0066】
前述のものと同様分配用のヘッドは、先端部1が一体化されているナセル13を含み、包装用小瓶の頸部2に力で導きいれたインサートを形成する。このナセルは、先端部とは反対側の包装用小瓶内で十字形の四つの半径方向壁で終結する。
【0067】
分配用のヘッドのナセル13は、包装用小瓶2の頸部の内部に密閉性の丸襞装飾様突起19によって密閉状態で取付けられ、そこから先端部1が突出して包装用小瓶の軸内に伸延する。包装用小瓶の内部には、有利には保存剤を含まない洗眼剤を収納するための、弾性的に可逆変形する円筒形壁により区切られたタンク15が設けられている。保護用キャップ16および不正開封防止リング21が外部から全体を補完している。
【0068】
包装用小瓶2の頸部は、先端部1のフランジの下に、タンクから先端部への液体および流入する空気の通路に対して横方向に 配置された抗菌濾過膜6を有している。この抗菌濾過膜は、先端部のフランジに押しつけることによって作動中に自由に支持されている。この抗菌濾過膜はこのフランジ(二つの部材間の溶着作業の際におぼろにできるビードを有する)の周囲のクラウンとナセルの終端面にある協働範囲22との間の熱溶着によって、その周囲に固定されている。
【0069】
微孔質の多孔質パッド17が、分配用のヘッドの中央ぐりに配置されている。これはそれ自体、その液体流束の調節機能および空気圧の平衡化機能を含め、従来どおりのものである。その構造は、およそ50ミクロンに等しい孔径に対応する密度の下で交絡した糸のフェルト構造である。
【0070】
環状の切り込み18により、強制的に抗菌濾過膜6を通された液体の流束を排出用の中央流路3に向かって排水することができる。
【0071】
先端部の本体12は、図1の別の先端部について先に記述したとおりに作られるが、その上部部分は(円錐形ではなく)円筒形である。この主要本体12は、銀イオン担持ポリマー殺菌剤を含む主にポリエチレン系のポリマー材料で作られている。
【0072】
図5に斜視図で表わされている中央コア体14は、多孔質の円筒形中央コア体であり、この多孔質中央コアは、先端部の上部部分のものと相補的な形状をし、そして先端部の中央流路3を満たすサイズを有する。この多孔質中央コア体は、中央流路3の空間全体を占有して、液体の微小液滴またはその利用の際に液滴が排出された後に先端部内に戻る空気との接触面を可能なかぎり広くする。こうして、滴下する液体が通るときに生み出される負荷損失も回避される。
【0073】
この多孔質中央コア体は、センチメートル規模の長さ、すなわち特に0.5〜2.5cmの間に含まれる長さ、およびミリメートル規模の直径、より詳細には2〜6ミリメートルの間に含まれる直径を有する。
【0074】
この多孔質中央コア体14は、ポリマーの総体内に拡散した有機分子で構成された殺菌剤を含む焼結ポリエチレンを主とした多孔質の熱可塑性材料で作られており、もはや先端部の本体と同じように金属イオンを含むポリマーでは作られていない。この実施例においては、焼結材料製の多孔質中央コア体14はトリクロサンを含む一方、先端部の外側部分12は銀イオンを主とした殺菌剤を含んでいる。
【0075】
その平均孔径は、十分の一ミリメートル規模であり、より特定的にはおよそ150μmである。このような多孔質材料は特にPOREX Corporationから市販されている。
【0076】
この多孔質中央コア体14は、先端部の中央流路3内に圧入して導き入れられた。
【0077】
別の実施形態によると、先端部の外側部分12は、多孔質中央コア体14の現物型成形により作られる。この現物型成形により、それぞれ多孔質中央中央コア体14および中央流路3の一部の形状が完全に一致する先端部を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
このように構成された本発明に係る実施例として提示された二つのタイプの先端部を伴う包装用小瓶の分配用のヘッドは、外部環境によって汚染される可能性のある先端部の外部壁においてと同様に、各々の液体の分配作業の後に外部から再吸引される液体の残留物および空気によって汚染される可能性のある液体を排出するための流路の壁においても、重要な抗微生物作用を示す。眼環境内で一般的な汚染物質に対して有効であることが判明したこの抗微生物作用は、これらの表面において細菌の増殖を阻害し、正常な先端部を保ち、消費者の眼の微生物学的な安全性を確保することができる。
【0079】
以上の記述は、本発明が自ら定めた目的をいかに達成できるかを明確に説明している。特に、本発明は、抗菌作用によりその使用期間全体にわたり微生物学的に正常な状態を保ち、こうして使用者にとって良好な微生物学的な安全性を確保するピペット先端部を伴う、特に眼科用の液体の包装用小瓶を提供する。
【0080】
ただし、本発明が以上で具体的に記述され図中に表わされた実施形態に限定されず、反対に等価の手段を介してあらゆる変形形態に拡大されるものであることが以上の記述からわかる。
【符号の説明】
【0081】

1 先端部
2 包装用小瓶
3 中央流路
4 フランジ 基部
5 孔
6 抗菌濾過膜
7 中央コア体
8 溝
9 突起
10 環状溝
11 副流路
12 主要本体
13 ナセル
14 多孔質中央コア体
15 タンク
16 保護用キャップ
17 多孔質パッド
18 環状の切り込み
19 丸壁装飾様突起
21 不正開封防止リング
22 協働範囲
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】国際公開第2007/056131号
【特許文献2】国際公開第2006/000897号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滴下式に分配される液体の包装用小瓶であり、該包装用小瓶は、分配用のヘッドを通してタンク内への吸気によって弾性的に可逆変形する壁を有するタンクを備え、該液体が前記壁に加えられる圧力の作用下で該分配用ヘッドから送出されるものであり、
これにおいて前記液体分配用のヘッドは、それによって前記タンクと連通した状態にある包装用小瓶の内部に密閉状態で取付けられるナセル(13)と、該液体を排出する孔によって通過する中央流路が貫通する包装用小瓶の外部へとそれ自身を延在するピペット先端部(1)を備え、
また、前記ピペット先端部は前記ナセルを除いて選択的に、前記先端部の外部表面において細菌の増殖を予防する効果を有する殺菌剤を含有する材料で製造されているのに対し、前記先端部、すなわち該先端部と前記ナセルの間での基部に取付けられた抗菌濾過膜が、該液体の分配後に包装用小瓶の中に再度流入する空気の通流を通すようにして間置されている、包装用小瓶。
【請求項2】
前記先端部の本体が、該本体の総体内に一様に分布しているイオン担持ポリマーを殺菌剤として含有する材料で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の包装用小瓶。
【請求項3】
前記殺菌性イオンが、銀イオンであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の包装用小瓶。
【請求項4】
前記先端部の材料中の殺菌効果を有するイオン担持ポリマーの割合が、重量%で、1〜10%、好ましくは2〜5%の間に含まれることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の包装用小瓶。
【請求項5】
前記先端部の中央流路内に、液体を排出するための複数の副流路を設けた中央コア体が挿入されることを特徴とする、請求項4に記載の包装用小瓶。
【請求項6】
前記先端部の内部の前記中央コア体が、含塩素フェノール系化合物をベースとする殺菌剤を含む材料で製造されていることを特徴とする、請求項1〜5に記載の包装用小瓶。
【請求項7】
前記中央コア体(7)を構成する材料が、殺菌化合物として5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノールまたはトリクロサンを含有することを特徴とする、請求項6に記載の包装用小瓶。
【請求項8】
前記副流路が、前記中央コア体の外部表面に彫られた溝によって形成されていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一つに記載の包装用小瓶。
【請求項9】
前記副流路が、前記中央コア体の軸の周囲に規則的に分布しており、その数が少なくとも二本、好ましくは四本であることを特徴とする、請求項8に記載の包装用小瓶。
【請求項10】
先端部の内部の前記中央コア体(7)が、特に主にポリエチレン系の多孔質の熱可塑性の焼結材料製であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一つに記載の包装用小瓶。
【請求項11】
前記多孔質材料の孔が、百マイクロメートルの規模の平均寸法を有することを特徴とする、請求項10に記載の包装用小瓶。
【請求項12】
前記先端部の外部主要本体の排出流路の末端部分および多孔質材料製の中央コア体は、円筒形状を有しており、排出流路の末端部分の円筒形状が該多孔質中央コア体の円筒形状にぴったり一致することを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一つに記載の包装用小瓶。
【請求項13】
前記先端部の末端部分が、多孔質材料の現物型成形により製造されることを特徴とする、請求項12に記載の包装用小瓶。
【請求項14】
前記中央流路の基部に、流路内の前記中央コア体の弾性クリック作用による固着のために、前記中央コア体の基部に形成された相補的な周囲溝と協働する周囲突起を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の包装用小瓶。
【請求項15】
保存剤を含有しない眼科用液剤の包装のために使用されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の包装用小瓶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−529425(P2011−529425A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520614(P2011−520614)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006420
【国際公開番号】WO2010/013131
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(503171360)
【氏名又は名称原語表記】LABORATOIRES THEA
【Fターム(参考)】