説明

抗菌剤及びこれを含有する皮膚外用剤

【課題】ニキビの予防・改善、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療・予防に有用な抗菌剤の提供。
【解決手段】下記の一般式(1):


〔式中、Xは炭素数2〜14のアルキル基を示し、yは5〜15の整数を示す。〕
で表される脂肪酸誘導体又はその塩を有効成分とする抗菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニキビやアトピー性皮膚炎等の皮膚のトラブルに有効な抗菌剤、及び該抗菌剤を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚表面には、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)などの皮膚常在菌が存在し、菌叢を形成している。この常在菌の働きによって、皮膚表面のpHは弱酸性が維持され、そのバリア機能などにより、皮膚の恒常性が保たれている。この皮膚常在菌による菌叢のバランスが崩れると、ニキビ、炎症など皮膚疾患の原因となると考えられている。
【0003】
ニキビ(尋常性ざ瘡)は、皮脂分泌の増加や、アクネ菌(Propionibacterium acnes)の感染等が原因で発症するとされている。
【0004】
また、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、接触皮膚炎等の皮膚疾患をもつ患者の皮膚病巣部においては、健康人の皮膚上に多く存在する表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に加えて、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の顕著な増殖が認められ、症状の悪化や痒みの大きな原因となっている。
【0005】
従って、従来より、ニキビの予防・改善やアトピーなどの皮膚疾患の治療・予防には、これらの原因菌に抗菌活性を有する抗菌剤が用いられている。しかしながら、斯かる抗菌剤を塗布すると、病原性微生物の皮膚への侵入を防止する役目を持っている表皮ブドウ球菌も殺菌してしまうことが多く、皮膚上の細菌分布が不健全な状態になるという問題もあった。
【0006】
一方、主鎖にエーテル結合を有する脂肪酸(炭素数10〜30程度)は、医薬、農薬、香料などのファインケミカルの中間体などとして使用されているが、一部に抗菌作用を有するものが知られており、例えばニキビに対して有効であるとされているもの(特許文献1)や黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有するもの(非特許文献1)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−539093号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yoshiro Abe, Lipids, 1(2), 141-5(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ニキビの予防、改善又は治療、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の予防又は治療に有用な抗菌剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、各種脂肪酸類について検討した結果、下記式(1)で示される、主鎖にエーテル結合を有する脂肪酸誘導体に、アクネ菌(Propionibacterium acnes)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に優れた抗菌活性があり、且つ表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対しては殆ど抗菌活性を示さず、皮膚疾患に対する抗菌剤として有用であることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、以下の1)〜4)に係るものである。
1)下記の一般式(1):
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、Xは炭素数2〜14のアルキル基を示し、yは5〜15の整数を示す。〕
で表される脂肪酸誘導体又はその塩を有効成分とする抗菌剤。
2)Xが炭素数6〜10のアルキル基であり、yが5〜7である上記1)の抗菌剤。
3)少なくともアクネ菌及び黄色ブドウ球菌から選ばれる1種以上の菌に対して抗菌活性を有する上記1)又は2)の抗菌剤。
4)上記1)〜3)の抗菌剤を含有する皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗菌剤によれば、皮膚常在細菌の分布を健全な状態に保ったまま、ニキビ、脂漏性皮膚炎等のアクネ菌感染性皮膚疾患の予防又は治療、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、接触皮膚炎等の皮膚疾患の予防又は治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Staphylococcus epidermidisに対する抗菌作用を示すグラフ。
【図2】Staphylococcus epidermidisに対する抗菌作用を示すグラフ。
【図3】Staphylococcus aureusに対する抗菌作用を示すグラフ。
【図4】Propionibacterium acnesに対する抗菌作用を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の式(1)中、Xで示される炭素数2〜14のアルキル基としては、分岐状又は直鎖状の何れでも良く、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル、イソオクチル基、2−エチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1−イソプロピル−1,2−ジメチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1−イソプロピル−1,2,4,4−テトラメチルペンチル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基などが挙げられ、このうち直鎖または分岐1個を有するものが好ましく、さらに炭素数6〜10のアルキル基が好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル、2−エチルヘキシル基、n−デシル基等がより好適である。
【0017】
yで示される5〜15の整数は、5〜10がより好ましく、5〜7がより好ましい。
【0018】
このうち、アクネ菌に対する抗菌活性の点からは、Xが炭素数6〜10のアルキル基であり、yが5〜7であるのがより好ましく、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性の点からは、Xが炭素数2〜10のアルキル基であり、yが5〜14であるのがより好ましい。
従って、アクネ菌及び黄色ブドウ球菌の2菌に対する抗菌活性の点から、Xが炭素数6〜10のアルキル基であり、yが5〜7であるのがより好ましく、Xが炭素数6〜10のアルキル基であり、yが5であるのが更に好ましい。
【0019】
上記式(1)で示される脂肪酸誘導体は、常法によりその薬理学的に許容される塩とすることができるが、このような塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、又は各種アミン塩等を含むアンモニウム塩やリジン塩、アルギニン塩等のアミノ酸塩やグアニジン塩、アルミニウム塩や亜鉛塩を挙げることができる。
【0020】
式(1)で示される脂肪酸誘導体の一部の化合物は、公知の化合物であり、公知の合成法により製造することができる。
【0021】
例えば、下記反応式で示されるように、式(2)で表されるアルコールと式(3)で表されるハロゲン化アルキル鎖を有するカルボン酸を塩基性物質の存在下で反応させる方法により製造することができる。
尚、下記式中、Zで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、このうち臭素原子が好ましい。
【0022】
【化2】

【0023】
〔式中、X及びyは前記と同じものを示し、Zはハロゲン原子を示す。〕
当該反応は、溶媒存在下又は非存在下に行うことができる。
溶媒を使用する場合の溶媒は、反応に影響を及ばさないものであれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メトキシエタン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0024】
塩基性物質としては、NH4OH(アンモニア水)、アルカリ金属水酸化物(KOH,NaOH等)、炭酸塩(Na2CO3,K2CO3等)が挙げられる。また第4級アンモニウム塩を用いてもよい。
【0025】
反応は、窒素雰囲気下で、通常、0℃〜120℃、好ましくは40℃〜100℃で、20分〜48時間、好ましくは60分〜4時間、行うことが好ましい。
【0026】
反応終了後、得られた式(1)で示される脂肪酸誘導体の単離精製手段は、中和、洗浄、抽出、再結晶、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合せて行うことができる。
【0027】
式(1)で示される脂肪酸誘導体又はその塩は、後記実施例に示すように、アクネ菌(Propionibacterium acnes)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して優れた抗菌作用を発揮し、且つ表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)に対しては抗菌活性を示さない。
ここで、抗菌活性を有するとは、例えば抗菌性評価においてコントロールに比して菌数を1/10以下に減少させることをいい、抗菌活性を有しないとは、例えば抗菌性評価においてコントロールに比して菌数を1/10以下に減少させないことをいう。
【0028】
従って、式(1)で示される脂肪酸誘導体又はその塩は、それ自体で、ニキビ、脂漏性皮膚炎等のアクネ菌感染性皮膚疾患の予防又は治療、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の予防又は治療のための抗菌剤となり得る。また、当該抗菌剤は、後述する、医薬品や化粧品等に一般的に用いられる他の成分を配合した組成物として、或いは皮膚外用剤として使用することができる。
【0029】
上記組成物又は皮膚外用剤を医薬として使用する場合には、錠剤、カプセル剤、軟膏、スティック状剤、水剤、エキス剤、ローション剤、乳剤、パップ剤等の形態とすることができ、中でも外用医薬品としての使用が好ましい。例えば軟膏剤とする場合には、油性基剤をベースとするもの、水中油型又は油中水型の乳化系基剤をベースとするもののいずれであってもよく、油性基剤としては、例えば植物油、動物油、合成油、脂肪酸及び天然又は合成のグリセライド等が挙げられる。
また、当該医薬には、他の薬効成分、例えば鎮痛消炎剤、殺菌消毒剤、収斂剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤、抗生物質等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0030】
また、化粧料として使用する場合には、種々の形態、例えば、油中水型又は水中油型の乳化化粧料、洗顔剤、化粧水、乳液、スキンクリーム、ファンデーション、口紅、頭皮用化粧料(ローション、頭皮リフレッシャー等)、頭髪化粧料(シャンプー、ヘアトニック、育毛剤等)等とすることができる。
【0031】
当該化粧料には、更に化粧料成分として一般に使用されている油分、セラミド類、擬似セラミド類、ステロール類、保湿剤、抗酸化剤、一重項酵素消去剤、粉末成分、色剤、紫外線吸収剤、美白剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料、植物エキス、各種皮膚栄養剤等を任意に組み合わせて配合することができる。
【0032】
尚、各製剤のpHは効果の点からpH4〜8が好ましく、pH4〜7がより好ましい。
【0033】
上記組成物又は皮膚外用剤中の式(1)で示される脂肪酸誘導体又はその塩の含有量は、0.001〜20質量%が好ましく、更に好ましくは、0.01〜5質量%である。
【0034】
本発明の抗菌剤の投与量は、投与形態、治療対象となる動物種、個々の体重及び状態により異なるが、式(1)で示される脂肪酸誘導体又はその塩として、1日あたり0.1〜2000mg、好ましくは1〜500mgである。
【実施例】
【0035】
製造例1 6-デシロキシ-ヘキサン酸の合成
窒素雰囲気下、デカノール20mLに水酸化カリウム2.4g(40mmol)を添加し、80℃にて加熱攪拌、水酸化カリウムが溶解後、6-ブロモヘキサン酸2.0g(10mmol)を添加し、100℃に昇温した。GC分析にて原料6-ブロモヘキサン酸の消失を確認した後、クロロホルム50mL、1N硫酸25mL(50mmol)を加え、酸性化し、水洗を行なった。濃縮後、蒸留にて主留分を得たが(GC純度94%)、着色していたためシリカゲルカラム精製を行ない、下記の6-デシロキシ-ヘキサン酸(化合物1)1.7g(GC純度98%、収率64%)を得た。
【0036】
【化3】

【0037】
白色固体, 融点 31℃;
IR(cm-1, ATR法) : 2924, 2854, 1709, 1465, 1114;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.85(t, J=7Hz, 3H), 1.20-1.47(m, 16H), 1.52-1.70(m, 6H), 2.33 (t, J=8Hz, 2H), 3.35-3.45(m, 4H).
【0038】
製造例2 8-オクチロキシ-オクタン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりにオクタノール、6-ブロモヘキサン酸を8-ブロモオクタン酸に変更して、下記の8-オクチロキシ-オクタン酸(化合物2)1.1g(GC純度99%、収率40%)を合成した。
【0039】
【化4】

【0040】
白色固体, 融点 31℃;
IR(cm-1, ATR法) : 2927, 2855, 1709, 1465, 1114 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.85(t, J=7Hz, 3H), 1.18-1.38(m, 16H), 1.49-1.66(m, 6H), 2.32 (t, J=8Hz, 2H), 3.33-3.43(m, 4H).
【0041】
製造例3 8-(2-エチル-ヘキシロキシ)-オクタン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりに2-エチルヘキサノール、6-ブロモヘキサン酸を8-ブロモオクタン酸に変更して、下記の8-(2-エチル-ヘキシロキシ)-オクタン酸(化合物3)1.0g(GC純度99%、収率36%)を合成した。
【0042】
【化5】

【0043】
無色油状物;
IR(cm-1, ATR法) : 2957, 2929, 2857, 1709, 1462, 1109 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.80-0.90(m, 6H), 1.18-1.40(m, 14H), 1.45-1.65(m, 5H), 2.32 (t, J=8Hz, 2H), 3.20-3.3.30(m, 2H), 3.32-3.40(m, 2H).
【0044】
製造例4 11-(2-エチル-ヘキシロキシ)-ウンデカン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりに2-エチルヘキサノール、6-ブロモヘキサン酸を11-ブロモウンデカン酸に変更して、下記の11-(2-エチル-ヘキシロキシ)-ウンデカン酸(化合物4)1.4g(GC純度、98%、収率46%)を合成した。
【0045】
【化6】

【0046】
無色油状物;
IR(cm-1, ATR法) : 2925, 2855, 1709, 1463, 1111 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.80-0.90(m, 6H), 1.18-1.40(m, 20H), 1.45-1.65(m, 5H), 2.32 (t, J=8Hz, 2H), 3.20-3.3.30(m, 2H), 3.32-3.40(m, 2H).
【0047】
製造例5 11-イソブチロキシ-ウンデカン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりにイソブタノール、6-ブロモヘキサン酸を11-ブロモウンデカン酸に変更して、下記の11-イソブチロキシ-ウンデカン酸(化合物5)1.8g(GC純度、98%、収率68%)を合成した。
【0048】
【化7】

【0049】
白色固体, 融点 42℃;
IR(cm-1, ATR法) : 2951, 2918, 2853, 1696, 1472, 1112 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.85-0.95(m, 6H), 1.20-1.40(m, 12H), 1.50-1.68(m, 4H), 1.78-1.92 (m, 1H), 2.34(t, J=7Hz, 2H), 3.17(q, J=7Hz, 2H), 3.39(t, J=7Hz, 2H).
【0050】
製造例6 15-エトキシ-ペンタデカン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりにエタノール、6-ブロモヘキサン酸を15-イオドペンタデカン酸メチルに変更して、15-エトキシ-ペンタデカン酸メチルを得た後に、加水分解を行ない、15-エトキシ-ペンタデカン酸(化合物6)1.3g(GC純度98%、収率78%)を合成した。
【0051】
【化8】

【0052】
白色固体, 融点 53℃;
IR(cm-1, ATR法) : 2979, 2915, 2849, 1698, 1471, 1111 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 1.20(t, J=7Hz, 3H), 1.22-1.42(m, 20H), 1.50-1.70(m, 4H), 2.35(t, J=7Hz, 2H), 3.38-3.58(m, 4H).
【0053】
製造例7 6-オクチロキシ-ヘキサン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりにオクタノールに変更して、下記の6-オクチロキシ-ヘキサン酸(化合物7)1.2g(GC純度、98%、収率50%)を合成した。
【0054】
【化9】

【0055】
淡黄色油状物;
IR(cm-1, ATR法) : 2931, 2858, 1708, 1113 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.85(t, J=7Hz, 3H), 1.20-1.34(m, 10H), 1.35-1.43(m, 2H), 1.50−1.60(m, 4H), 1.60-1.67(m, 2H), 2.34(t, J=7Hz, 2H), 3.34-3.40(m, 4H).
【0056】
参考製造例1 6-(2-ヘキシロキシ-エトキシ)-ヘキサン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりに2-ヘキシロキシ-エタノールに変更して、6-(2-ヘキシロキシ-エトキシ)-ヘキサン酸(比較化合物1)0.9g(GC純度99%、収率36%)を合成した。
【0057】
【化10】

【0058】
無色油状物;
IR(cm-1, ATR法) : 2931, 2860, 1736, 1708, 1458, 1115 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.86(t, J=7Hz, 3H), 1.20-1.50(m, 10H), 1.50-1.75(m, 4H), 2.32(t, J=7Hz, 2H), 3.39-3.54(m, 4H), 3.55(bs, 4H).
【0059】
参考製造例2 8-(2-ヘキシロキシ-エトキシ)-オクタン酸の合成
製造例1と同様にして、デカノールの代わりに2-ヘキシロキシ-エタノール、6-ブロモヘキサン酸を8-ブロモオクタン酸に変更して、8-(2-ヘキシロキシ-エトキシ)-オクタン酸(比較化合物2)1.9g(GC純度98%、収率65%)を合成した。
【0060】
【化11】

【0061】
無色油状物;
IR(cm-1, ATR法) : 2930, 2857, 1737, 1709, 1457, 1113 ;
1H-NMR(CDCL3, ppm) : 0.86(t, J=7Hz, 3H), 1.20-1.38(m, 12H), 1.50-1.65(m, 6H), 2.32(t, J=7Hz, 2H), 3.39-3.48(m, 4H), 3.55(bs, 4H).
【0062】
試験例
(1)使用菌株
表皮ブドウ球菌としてStaphyllococus epidermidis NBRC12993、黄色ブドウ球菌としてStaphyllococus aureus NBRC13276、アクネ菌としてPropionibacterium acnes JCM6425を使用した。
【0063】
(2)使用培地
表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌の培養にはSCD寒天培地(ダイゴ社製)を、アクネ菌の培養には変法GAM寒天培地(ニッスイ社製)を、マラセチア菌の培養にはYM寒天培地(DIFCO社製)又はYMOLP寒天培地(YM寒天4.1%、LP希釈液(ダイゴ社製)3.0%、オリーブ油1.0%)を使用した。菌体数の計測には、上記寒天培地にLP希釈液を添加させたものを使用した。
【0064】
(3)表皮ブドウ球菌に対する抗菌性評価
pH=6に調整した50mMリン酸緩衝液(1カリウム及び2カリウム)4.5mLにソルビタンモノステアレートを終濃度0.1%、サンプル濃度0.01%になるように添加した(コントロールはソルビタンモノステアレートのみを終濃度0.01%で添加)。30℃で2日間培養した表皮ブドウ球菌を生理食塩水に終濃度105〜107個/mLとなるように懸濁し、この懸濁液0.5mLを上記調製液に接種した。十分に混合し、所定時間30℃で放置した後、その液より50μL採取した。5mLのLP希釈液にて不活性化した後、LP希釈液にて適宜希釈して菌体数計測用寒天培地に塗布した。30℃で培養した後、生育したコロニー数を計測した。
その結果、表皮ブドウ球菌に対しては、どの化合物も抗菌性を示さなかった(図1、2)。
【0065】
(4)黄色ブドウ球菌に対する抗菌性評価
実施例1と同様にして、表皮ブドウ球菌を黄色ブドウ球菌に変更して抗菌性を評価した(サンプル濃度はいずれも0.01%にて評価)。
その結果、化合物1、2、3、4、5、6、7に高い抗菌効果が認められた(図3)。
【0066】
(5)アクネ菌に対する抗菌性評価
pH=6に調整した50mMリン酸緩衝液(1カリウム及び2カリウム)4.5mLにソルビタンモノステアレートを終濃度0.01%、サンプル濃度0.01%になるように添加した(コントロールはソルビタンモノステアレートのみを終濃度0.01%で添加)。37℃で嫌気条件下、5日間培養したアクネ菌を生理食塩水に終濃度105〜107個/mLとなるように懸濁し、この懸濁液0.5mLを上記調製液に接種した。十分に混合し、所定時間37℃嫌気条件下で放置した後、その液より50μL採取した。5mLのLP希釈液にて不活性化した後、LP希釈液にて適宜希釈して菌体数計測用寒天培地に塗布した。37℃嫌気条件下で培養した後、生育したコロニー数を計測した。
その結果、化合物1、2、3、7に高いアクネ菌抑制効果が認められた(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1):
【化1】

〔式中、Xは炭素数2〜14のアルキル基を示し、yは5〜15の整数を示す。〕
で表される脂肪酸誘導体又はその塩を有効成分とする抗菌剤。
【請求項2】
Xが炭素数6〜10のアルキル基であり、yが5〜7である請求項1記載の抗菌剤。
【請求項3】
少なくともアクネ菌及び黄色ブドウ球菌から選ばれる1種以上の菌に対して抗菌活性を有する請求項1又は2記載の抗菌剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の抗菌剤を含有する皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−144453(P2012−144453A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2078(P2011−2078)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】