説明

抗菌性のパッケージ化した医療装置および当該装置を作成する方法

一定の内表面部を含む一定のパッケージの中に一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程、上記パッケージの中に一定の医療装置を位置決めする工程、および上記パッケージ、抗菌剤の供給源および医療装置をその医療装置にその抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、その医療装置における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程により作成したパッケージ化した医療装置。

【発明の詳細な説明】
【発明の内容の開示】
【0001】
関連出願に対するクロス−リファレンス
本特許出願は2002年10月4日に出願されている米国仮特許出願第60/416,114号の恩典を主張している2003年6月25日に出願されている米国特許出願第10/603,317号の恩典を主張している2003年、2月15日に出願されている米国特許出願第10/367,497号の恩典を主張しており、これらのそれぞれの内容は本明細書において参考文献として含まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は一定の抗菌性の医療装置および一定の抗菌性のパッケージ化した医療装置およびこれらの作成方法に関連している。
【0003】
発明の背景
毎年、患者が米国特許において多数の外科処置を受けている。現在のデータは1年当たりに約2700万件の処置を示している。さらに術後のまたは手術の場所における感染(「SSI」)は全ての場合の約2%乃至3%で生じている。従って、この数は毎年675,000件のSSIよりも多い。
【0004】
上記SSIの発生は手術において使用する移植可能な医療装置にコロニーを形成する可能性のある細菌を伴う場合が多い。すなわち、一定の外科処置中において、周囲の雰囲気からの細菌は外科部位の中に入りその医療装置に付着する可能性がある。具体的に言えば、細菌が周囲の組織に対する一定の経路として移植した医療装置を介して広がる可能性がある。このような医療装置における細菌のコロニーの形成は患者に対する感染および傷害を引き起こす。従って、SSIは患者に対する治療の費用を相当に高める可能性がある。
【0005】
適用されて内部に組み込まれている抗菌剤を含む移植可能な医療装置が当業界において開示されて例証されている。例えば、このような装置の例が欧州特許公開第EP0761243号において開示されている。この特許出願において例証されている実際の装置はフレンチ・パーキュフレックス・カテーテルを含む。これらのカテーテルは2,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニル・エーテル(チバ・ガイギ・イルガサン(Ciba Geigy Irgasan)(DP300))およびその他の添加物を含有している一定の塗布槽の中に浸漬塗布されている。その後、このカテーテルはエチレン・オキシドにより滅菌されて30日間にわたり保管される。上記のような溶液により塗布したカテーテルは抗菌性を示し、これらは塗布されてから30日間にわたり一定の増殖培地中に置かれた場合に阻害の一定の領域を形成し、微生物に対して対抗している。しかしながら、この特許出願において上記の滅菌および塗布処理したカテーテルがどのような温度で保管されているかが明らかでない。
【0006】
大部分の移植可能な医療装置は製造されて、滅菌処理された後に、一定の外科処置において使用するために開封されるまで種々のパッケージまたは包装の中に収容される。その後、手術中に、開封されたパッケージ、その中に収容されているパッケージ用の種々の部品、および医療装置が手術室の雰囲気に曝され、その空気から細菌が導入される可能性がある。この場合に、そのパッケージおよびパッケージ用の部品に抗菌性を賦与することにより、そのパッケージの開封後のこれらのパッケージおよび部品における細菌のコロニー形成を実質的に阻止できる。さらに、医療装置自体における抗菌性の賦与との組み合わせにおける上記のような抗菌性のパッケージおよびパッケージ用の部品はその滅菌処理した医療装置の周囲における一定の抗菌性の環境を実質的に確保すると考えられる。
【0007】
発明の概要
本発明は抗菌性の医療装置および抗菌性のパッケージ化した医療装置およびこれらを作成するための方法に関連している。本発明の実施形態によれば、一定の抗菌剤の供給源が利用されている。この医療装置は、1個以上のパッケージ用の部品を伴うか伴わない場合において、一定のパッケージの中に配置されており、十分な条件下に置かれる時に、上記抗菌剤の供給源からその抗菌剤の一部分がそのパッケージ、パッケージ用の部品(用いられている場合)および医療装置に移動する。この抗菌剤の移動は上記のパッケージ、パッケージ用の部品(利用されている場合)および医療装置における細菌の増殖を阻害または抑制するために十分な量において行なわれる。
【0008】
本発明の種々の実施形態によれば、上記パッケージは一定の抗菌剤の供給源を含むか、そのパッケージ内表面部に取り付けた一定の抗菌剤の供給源を有するか、あるいは、そのパッケージの中における1個以上のパッケージ用の部品、または、そのパッケージ自体に対して一体である一定の抗菌剤の供給源を有することができる。あるいは、上記医療装置は一定のパッケージの中に配置して、この医療装置を有するパッケージを一定の外部の抗菌剤の供給源に対して曝露することができる。これらの実施形態においては、上記医療装置は上記パッケージの中に配置されており、一定の抗菌剤を初期的に含まなくてもよく、あるいは、これに配置されている一定の抗菌剤を有する1個以上の表面部分を初期的に含むことも可能である。その後、これらのパッケージ、抗菌剤の供給源および医療装置はその抗菌剤の供給源からそのパッケージおよび医療装置の内表面部に一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の種々の条件下に置かれることにより、その医療装置における細菌のコロニー形成が実質的に阻害される。
【0009】
本発明はまた一定の医療装置を有する一定のパッケージの中に一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程、一定の医療装置を有する一定のパッケージの内表面部に一定の抗菌剤の供給源を取り付ける工程、または上記医療装置を有するパッケージの中における1個以上のパッケージ用の部品またはそのパッケージ自体に対して一体である一定の抗菌剤の供給源を供給する工程を含む一定の抗菌性の医療装置を作成するための方法に関連している。これらの実施形態において、上記パッケージの中に配置されている医療装置は一定の抗菌剤を初期的に含まなくてもよく、あるいは、これに配置されている一定の抗菌剤を有する1個以上の表面部分を初期的に含むことも可能である。その後、これらのパッケージ、抗菌剤の供給源および医療装置はその抗菌剤の供給源からそのパッケージおよび医療装置の内表面部に一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の種々の条件下に置かれることにより、その医療装置における細菌のコロニー形成が実質的に阻害される。
【0010】
発明の実施形態の詳細な説明
パッケージ化した抗菌性の医療装置
本明細書において記載されている医療装置は一般にモノフィラメント型およびマルチフィラメント型の縫合糸、ヘルニア修復用メッシュ等のような外科用メッシュ、ヘルニア栓子、ブラキー・シード・スペーサー、縫合糸クリップ、縫合糸固定装置、接着防止用メッシュおよびフィルム、および縫合糸結紮クリップを含むがこれらに限定されない種々の移植可能な医療装置および移植片である。さらに、吸収性および非吸収性である種々の移植可能な装置も含まれる。吸収性のポリマーは種々の生理学的な条件に曝される一定時間の期間にわたり身体により崩壊して吸収される一定のポリマーとして定められている。また、吸収性の医療装置は一般的にグリコリド、ラクチド、グリコリドの種々のコポリマー、またはポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、酸化再生セルロースおよびこれらの等価物等のような種々のポリマーの混合物を含むがこれらに限定されない一般的に知られている従来の吸収性のポリマーにより形成されている。好ましくは、上記のポリマーは約70%以上の重合化したグリコリド、約70%以上の重合化したラクチド、重合化した1,4−ジオキサン−2−オン、約70%以上のグリコリドおよびラクチドの重合化したコポリマー、約70%以上のセルロースおよびセルロース誘導体から成る群から選択される種々の高分子材料を含む。好ましくは、吸収性の医療装置はポリジオキサノン、ポリグレカプロン(poliglecaprone)、または一定のグリコリド/ラクチドのコポリマーにより作成されている。さらに、吸収性の医療装置の例はモノフィラメント型およびマルチフィラメント型の縫合糸を含む。このマルチフィラメント型の縫合糸は複数のフィラメントが一定の編組構造で形成されている種々の縫合糸を含む。また、非吸収性の医療装置はモノフィラメント型およびマルチフィラメント型の縫合糸、ヘルニア修復用のメッシュ等のような外科メッシュ、ヘルニア栓子およびブラキー・シード・スペーサーを含み、これらは高分子でもよく非高分子であってもよい。非吸収性のメッシュ装置はポリプロピレン等のようなポリオレフィン、ナイロン等のようなポリアミド、テフロン(登録商標)(Teflon)材料等のような塩素化および/またはフッ素化した炭化水素、あるいは、ダクロン(Dacron)(登録商標)合成ポリエステル等のようなポリエステルを含むがこれらに限定されない種々の高分子材料、あるいはシルク(絹)、コラーゲン、スチール、チタン、コバルト−クロム合金、ニチノール等を含むがこれらに限定されない種々の非高分子材料により全体的にまたは部分的に作成できる。好ましくは、非吸収性の医療装置はナイロンまたはポリプロピレンにより作成されている。
【0011】
適当な抗菌剤はハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシ・ジフェニル・エーテル、またはこれらの組み合わせ物から選択できるがこれらに限定されない。特に、上記の抗菌剤は米国特許第3,629,477号において記載されていて、以下の化学式により示される一定のハロゲン化2−ヒドロキシジフェニル・エーテルおよび/または一定のハロゲン化2−アシルオキシ・ジフェニル・エーテルとすることができる。
【化1】

【0012】
上記の化学式において、それぞれのHalは同一のまたは異なるハロゲン原子を示しており、Zは水素または一定のアシル基を示しており、wは1乃至5の範囲の一定の正の整数を示しており、それぞれのベンゼン環、好ましくは環Aは1個または数個のハロゲン化されていてもよい低級アルキル基、一定のアルコキシ基、アリル基、シアノ基、アミノ基、または低級アルカノイル基も含む。好ましくは、上記ベンゼン環における置換基として、有用な低級アルキル基および低級アルコキシ基の中においてメチル基またはメトキシ基がそれぞれ含まれる。さらに、一定のハロゲン化した低級アルキル基であるトリフルオロメチル基が好ましい。
【0013】
上記化学式のハロゲン−O−ヒドロキシジフェニル・エーテルの抗菌活性に類似している抗菌活性がこれらのO−アシル誘導体を用いても達成することができ、これらは実施における使用の条件下において部分的にまたは完全に加水分解する。特に、酢酸、クロロ酢酸、メチルまたはジメチル・カルバミン酸、安息香酸、クロロ安息香酸、メチルスルホン酸およびクロロメチルスルホン酸が適当である。
【0014】
上記化学式の範囲内にある一例の特に好ましい抗菌剤2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニル・エーテルであり、一般的にトリクロサン(商品名をイルガサンDP300またはイルガケアMPとしてチバ・ガイギ社(Ciba Geigy)により製造されている)として呼ばれている。このトリクロサンは種々の製品において使用されている一定の広範囲な抗菌剤であり、SSIに共通して付随する多数の生物に対して有効である。これらの微生物はブドウ球菌属、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、およびこれらの組み合わせ物を含むがこれらに限定されない。
【0015】
上記抗菌剤は一定のパッケージの内表面部の中に配置されているかこれに取り付けられている一定の抗菌剤の供給源から一定の医療装置に配給できる。具体的に言えば、上記抗菌剤は上記のパッケージ、抗菌剤供給源および医療装置が以下において記載されているような時間、温度および圧力の諸条件に曝される時にその抗菌剤供給源から医療装置に移動する。例えば、上記抗菌剤供給源は一定の抗菌剤を装填した紙の貯蔵器、一定の抗菌剤を装填した多孔質ポーチの貯蔵器、一定の抗菌剤を装填したプラスチックの貯蔵器、一定の抗菌剤を装填したスポンジまたは発泡体の貯蔵器、一定の抗菌剤を装填したテープ、または一定の抗菌剤を装填した錠剤とすることができる。あるいは、上記抗菌剤供給源は上記パッケージ自体に一体にすることができ、その抗菌剤を、パッケージの内表面部に直接的に供給することを含むがこれに限定されない一定の様式で、そのパッケージ自体の中または上に組み込むことができる。このような抗菌剤供給源は紙またはプラスチックの貯蔵器の中にあり、このような貯蔵器は一定のパッケージの中の1個以上のパッケージ用の部品に対して一体にできる。
【0016】
加えて、上記医療装置はその上に随意的に一定の被膜を有することができ、さらに/または、上記抗菌剤供給源からのその医療装置に対する抗菌剤の何らかの移動の前に上部に配置されている一定の抗菌剤を有する1個以上の表面部分を随意的に含むことができる。例えば、一定の医療装置の表面に内部において一定の抗菌剤を有する一定の被膜組成物を供給することが有利である。種々の医療装置ならびにこれらに適用可能な種々の被膜の例が米国特許第4,201,216号、同第4,027,676号、同第4,105,034号、同第4,126,221号、同第4,185,637号、同第3,839,297号、同第6,260,699号、同第5,230,424号、同第5,555,976号、同第5,868,244号、および同第5,972,008号において見ることができ、これらのそれぞれはその全体において本明細書において参考文献として含まれる。例えば、米国特許第4,201,216号において開示されているように、一定の被膜組成物が一定のフィルム形成性のポリマーおよびC6 またはそれよりも高級の脂肪酸の一定の実質的に非水溶性の塩を含むことができる。また、別の例として、一定の吸収性の医療装置のために使用できる一定の吸収性の被膜組成物はポリ(アルキレン・オキシレート)を含むことができ、この場合に、それぞれのアルキレンの部分がC6 またはC4 乃至C12のジオールの混合物から誘導されており、この組成物は米国特許第4,105,034号において開示されているように、一定の溶媒の溶液により一定の医療装置に対して供給される。これらの被膜組成物は一定のポリマーまたはコポリマーを含むことができ、これらは一定の結合剤としてラクチドおよびグリコリドを含むことができる。また、これらの被膜組成物は一定の潤滑剤としてのステアリン酸カルシウム、および一定の抗菌剤を含むこともできる。上記の被膜は、浸漬塗布、噴霧塗布、または懸濁滴下塗布、またはその他の塗布手段等のような溶媒に基づく種々の塗布技法により一定の装置に供給できる。
【0017】
吸収性の医療装置は水分の影響を受けやすく、これらは大気中または体内の水分に曝されると崩壊する装置である。さらに、種々の吸収性のポリマーにより作成されている医療装置が劣化してこれらの強度を失うことが当業界における通常の熟練者おいて知られている。例えば、上記のような縫合糸が使用の前に一定の有意義な時間の期間にわたり水分に曝される場合に、これらの縫合糸における生体内の引張強度の望ましい特性が速やかに失われる。それゆえ、吸収性の医療装置のための気密に密封またはシールしたパッケージを使用することが望ましい。この気密にシールしたパッケージは本明細書において一定の無菌のバリアおよび一定のガス・バリアの両方として作用し、水分および気体の透過を防ぐか実質的に阻止する一定の材料により作成されている一定のパッケージを意味することとして定義されている。
【0018】
上記のような吸収性の医療装置のためのパッケージを構成するために有用な材料は、例えば、ヒートシーラブル・ホイル(ヒートシール可能な箔)として呼ばれる場合の多い、単一層型または多層型の従来の金属箔製品を含む。さらに、これらの種類の箔製品が米国特許第3,815,315号において開示されており、この特許はその全体において本明細書において参考文献として含まれる。また、利用可能な別の種類の箔製品は一定のピーラブル・ホイル(剥離可能な箔)として当該技術分野において呼ばれている一定の箔の積層体である。このようなピーラブル・ホイルおよび種々の支持体の例が米国特許第5,623,810号において開示されており、この特許はその全体において本明細書において参考文献として含まれる。望まれる場合に、上記の金属箔に加えて、あるいは、その代わりに従来の非金属のポリマー・フィルムを用いて吸収可能な種々の医療装置のためのパッケージが形成できる。このようなフィルムは高分子であり、従来のポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ハロゲン化炭化水素およびこれらの種々の組み合わせ物および積層体を含むことができる。また、これらの高分子フィルムは実質的に水分および酸素の透過を阻止し、例えば、気体の侵入を減少するか抑制する鉱物および鉱物酸化物の被膜等のような従来の被膜により被覆できる。上記パッケージは一定のポリマーと金属箔との組み合わせ物、特に、一定のポリエステル/アルミニウム箔/エチルアクリル酸の積層体等のような一定の多層型のポリマー/金属箔の複合体を含むことができる。
【0019】
非吸収性の医療装置は上記材料の任意のものの中に包装できる。加えて、一定の多孔質な材料、例えば、医療品級の紙、または水分および気体に対して透過性である一定の高分子フィルムまたは布地、例えば、デュポン社(DuPont)により製造されていて高密度ポリエチレン繊維により作成されているタイベック(TYVEC)(登録商標)等のような一定の無菌のバリアとして作用する材料により作成されている一定のパッケージの中に非吸収性の医療装置を包装することが望ましい。好ましくは、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも1年、最も好ましくは少なくとも2年の一定の保存寿命を有する抗菌性の医療装置を有することが望ましい場合に、非吸収性の医療装置が気密にシールされているパッケージ等のような吸収性の医療装置において用いられる材料と同一の包装材料の中に包装されている。
【0020】
ブドウ球菌属の微生物は装置に関連する外科部位の感染を伴う生物の全てにおいて最も多く見られる。黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌は一般的に患者の皮膚に存在しており、それゆえ、容易に傷の中に導入される。このようなブドウ球菌に対して有効な抗菌剤は2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニル・エーテルである。この化合物は一定の適当な増殖培地において測定される場合に、さらに、アメリカン・ジャーナル・オブ・インフェクション・コントロール(American Journal of Infection Control),1996年6月、p.209−218においてバーガバ,H.(Bhargava, H.)他により記載されているように0.01ppmの黄色ブドウ球菌に対して最低の阻害濃度(MIC)を有している。このような特定の抗菌剤および特定の微生物に対応するMICの値は他の場合においてその微生物に対して適している増殖培地において存在してその増殖培地をその微生物に対して不適当にする必要のある抗菌剤の最低の濃度、すなわち、その微生物の増殖を阻害する最低の濃度として定められている。本明細書において用いられている語句の「細菌のコロニー形成を実質的に阻害するために十分である一定の量(an amount sufficient to substantially inhibit bacterial colonization)」は黄色ブドウ球菌最低の阻害濃度またはそれ以上として定められている。
【0021】
上記MICの実例による説明が感受性のディスク拡散法において見られる。すなわち、特定の抗菌剤を含浸している一定のフィルター紙のディスクまたはその他の物体が試験生物を接種した一定の寒天培地に供給される。その後、上記の抗菌剤が上記の培地の中に拡散する場合に、その抗菌剤の濃度が上記最低の阻害濃度(MIC)よりも高い限りにおいて、影響を受けやすい生物はそのディスクの上またはそのディスクの周囲の一定の距離にわたりいずれも増殖しなくなる。この距離は阻害領域と呼ばれている。上記の抗菌剤が培地内において一定の拡散速度を有すると仮定した場合に、一定の抗菌剤を含浸している一定のディスクの周囲における阻害領域の存在により、その生物が別の場合において十分な増殖培地の中におけるその抗菌剤の存在により阻害されていることが示される。さらに、この阻害領域の直径は上記MICに逆比例する。
【0022】
抗菌性の医療装置を作成するための方法
本発明の種々の方法によれば、一定の医療装置が一定の抗菌剤に直接的に曝されて、一定の抗菌剤の供給源がその医療装置を有するパッケージの中に配置される。例えば、上記パッケージは一定の抗菌剤の供給源を収容することができるか、そのパッケージの内表面部に取り付けられている一定の抗菌剤の供給源を有することができるか、あるいは、その抗菌剤の供給源がそのパッケージの中の1個以上のパッケージ用の部品またはそのパッケージ自体に対して一体にすることができる。これらの実施形態において、一定の医療装置は上記パッケージの中に置かれて初期的に一定の抗菌剤の無い状態にすることができ、あるいは、上部に一定の抗菌剤が配置されている1個以上の表面部分を初期的に有することも可能である。その後、これらのパッケージ、抗菌剤供給源および医療装置がその抗菌剤の供給源からその医療装置に一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の種々の条件下に置かれることにより、その医療装置における細菌のコロニー形成が実質的に阻害される。
【0023】
上記の医療装置が初期的に一定の抗菌剤の無い状態である場合に、この抗菌剤は一定のパッケージ、抗菌剤供給源および医療装置がその抗菌剤の供給源からその医療装置にその抗菌剤の一部分を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の種々の条件下に置かれる時にその抗菌剤供給源からその医療装置に配給される。
【0024】
また、上記の医療装置が初期的に上部に配置されている一定の抗菌剤を有する1個以上の表面部分を含む場合には、その時間、温度および圧力の種々の条件がその医療装置の上に配置されている抗菌剤および抗菌剤供給源の中の抗菌剤のそれぞれの一部分がパッケージの内表面部に蒸気の状態で移動するために十分であることにより、一定の有効量の抗菌剤がその医療装置の上に保持されて、その医療装置およびそのパッケージの内表面部における細菌のコロニー形成が実質的に阻害できる。このような実施形態においては、一定の医療装置における抗菌剤の量または濃度がそのパッケージの環境の中に付加的な抗菌剤を供給することにより安定化されている。
【0025】
あるいは、上記医療装置が一定のパッケージの中に置かれていて、この装置を有するパッケージが一定の外部の抗菌剤供給源に対して間接的に曝露されることも可能であり、その抗菌剤供給源が医療装置を有するパッケージの外部にあることも可能である。具体的に言えば、上記の抗菌剤供給源および医療装置を有するパッケージがその抗菌剤供給源からその医療装置に一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の種々の条件下に置かれることにより、その医療装置における細菌のコロニー形成が実質的に阻害される。このような実施形態において、上記パッケージは一定の気体の抗菌剤供給源がそのパッケージの中に蒸気として透過または伝達できるように、水分および気体に対して透過性である一定の多孔質の材料または高分子フィルム等のような一定の無菌バリアとして作用する材料により作成できる。例えば、上記の医療装置を有するパッケージは一定の密封された環境の中に置くことができ、上記抗菌剤供給源はその密封された環境の中に収容可能であるか、その密封された環境に対して後で導入できる。また、この抗菌剤供給源は抗菌剤の任意の蒸気の形態にすることができる。
【0026】
上記の抗菌剤供給源から医療装置へのトリクロサン等のような一定の抗菌剤の蒸気の移動速度は上記のパッケージおよび医療装置が処理、保管および取り扱われる時間、温度および圧力の種々の条件に実質的に依存している。例えば、図1は一定時間の期間にわたり温度が55℃に維持される場合に(大気圧における一定の閉鎖したバイアル中において)トリクロサンが一定の縫合糸からパッケージ用の部品に移動可能であることを示している。トリクロサン等のような一定の抗菌剤を効果的に蒸気の状態で移動するための条件は一定の閉鎖した環境、大気圧、40℃よりも高い一定温度、および4時間乃至8時間の範囲の一定時間の期間を含む。さらに、一定の医療装置における一定の有効な量または濃度の抗菌剤、すなわち、黄色ブドウ球菌に対応する最低阻害濃度(MIC)またはそれ以上にするために十分な一定時間の期間との組み合わせにおける、上記の種々の条件下において生じる分圧と同じかこれよりも高いその抗菌剤に対応する分圧にするための圧力および温度の任意の組み合わせも含まれる。具体的に言えば、当業界における通常の熟練者において、圧力が低下すると、同一の分圧にするために温度を下げる必要があることが知られている。あるいは、圧力が低下して温度が一定ある場合には、その医療装置において一定の有効な量または濃度の抗菌剤にするために必要とされる時間を短縮する必要がある。一般に、上記抗菌剤供給源の中の抗菌剤の量は、以下において記載されている種々の条件に曝される時に、少なくとも一定の医療装置において有効量の抗菌剤を配給するために必要な量である。
【0027】
医療装置は一般的に滅菌処理してこれらに存在している微生物を実質的に生活不能にする。特に、この滅菌状態または無菌状態は10-6の最低の滅菌度の保証水準を意味する状態として当該技術分野において理解されている。このような滅菌処理の例が米国特許第3,815,315号、同第3,068,864号、同第3,767,362号、同第5,464,580号、同第5,128,101号および同第5,868,244号において記載されており、これらはそれぞれその全体において本明細書において参考文献として含まれる。具体的に言えば、吸収性の種々の医療装置は放射線および熱の影響を受けやすいと考えられる。従って、このような装置を、例えば、エチレン・オキシド・ガス等のような従来の滅菌剤のガスまたは薬剤により滅菌処理することが望ましいと考えられる。
【0028】
一定のエチレン・オキシドによる滅菌処理が以下において記載されており、一定の医療装置に対して抗菌剤供給源から抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件が一定のエチレン・オキシドによる滅菌処理において存在している。しかしながら、このような一定の医療装置に対して抗菌剤供給源から抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件は単独でまたは別の種類の滅菌処理において実施することが可能であり、一定のエチレン・オキシドの滅菌処理または一般の種々の滅菌処理に限定されない。
【0029】
上述したように、吸収性の医療装置は水分の影響を受けやすく、それゆえ、密封状態の箔のパッケージ等のような気密に密封したパッケージの中に包装されている場合が多い。しかしながら、このような密封状態の箔のパッケージは滅菌ガスに対しても不透過性である。従って、このことに対応してエチレン・オキシド・ガスの滅菌処理においてこの箔のパッケージを利用するために、通気性または透過性の孔を有する箔のパッケージ(例えば、タイベック(TYVEKポリマー)を利用している種々の方法がこれまでに開発されている。このような通気性の孔は上記パッケージの一定の開口端部に備えられていて、空気、水蒸気およびエチレン・オキシドのパッケージの内部への通過を可能にする。その後、滅菌処理が完了した後に、そのパッケージが孔の近くにおいて密封されて、この孔がその密封状態のパッケージから効果的に除外され、この孔が切除されるか他の方法により除去されることにより、一定のガス不透過性の気密に密封したパッケージが製造できる。一定の通気孔を有する別の種類の箔のパッケージはそのパッケージの一端部の近くに備えられている一定の通気孔を有する一定のポーチ型のパッケージであり、この場合に、この孔は一定の通気状態の部分を形成しているパッケージの一面に対して密封される。さらに、滅菌処理が完了した後に、そのパッケージはその通気状態の部分の近くにおいて密封されて、その密封されたパッケージが通気状態の部分から切除される。
【0030】
一例の実施形態において、抗菌剤の供給源がパッケージの内部に配置されていて、そのパッケージの内表面部に取り付けられているか、そのパッケージの中の1個以上のパッケージ用の部品に一体であるかそのパッケージ自体に一体である。その後、周縁部のシールおよび側面のシールがこのパッケージにおいて形成された後に、この包装された医療装置が一定の従来のエチレン・オキシド滅菌装置の中に配置可能になる。このパッケージが一定の箔のパッケージである場合に、その抗菌剤供給源は上述した抗菌剤供給源の任意のものとすることができ、あるいは、この抗菌剤供給源は一定の抗菌剤装填型の通気孔とすることができる。例えば、トリクロサン等のような一定の抗菌剤を酢酸エチルおよびトリクロサンの一定の溶液によりタイベック(Tyvek)の部材片を塗布することによりそのタイベックの通気孔に装填することができ、この抗菌剤装填型の通気孔がこれを一定の気密包装用の材料に取り付けることにより一定のパッケージの中に配置され、さらに、一定の医療装置がこの気密包装用の材料の中に配置され、この気密包装用の材料の周縁部が上記医療装置を封入して気体の上記通気孔を通るその気密包装用の材料の中への通過を可能にする一定の様式で密封され、この抗菌剤装填型の通気孔を有する包装用の材料および医療装置がその医療装置に抗菌剤装填型の通気孔から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置かれ、この包装材料が密封されて医療装置が封入されると共に通気孔が除外されて、この通気孔が切除されることにより一定の抗菌性の医療装置が製造される。
【0031】
別の実施形態において、上記抗菌剤供給源は医療装置を有するパッケージの外部における滅菌用またはその他の装置の中に導入できる。例えば、医療装置がパッケージの中に配置され、この医療装置を有するパッケージが一定の抗菌剤供給源に対して曝露され、これらの医療装置を有するパッケージおよび抗菌剤供給源がそのパッケージの中の医療装置に抗菌剤供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置かれることにより、その医療装置における細菌のコロニー形成が実質的に阻害される。このパッケージは水分および気体に対して透過性である一定の多孔質材料または高分子フィルム等のような一定の無菌のバリアとして作用する材料または気密に密封されたパッケージを形成する一定の材料により作成できる。
【0032】
上記工程の開始の前に、滅菌装置が約25℃の内部温度まで加熱可能になる。この滅菌装置は上記の加湿および滅菌の各工程を通して約22℃乃至37℃に維持される。次に、一定の真空が約1.8kPa乃至6.0kPaの真空状態を達成するために上記滅菌装置に供給される。一定の加湿工程において、水蒸気が注入されて滅菌処理する製品に対する水蒸気の一定の供給源が与えられる。これにより、包装した医療装置は約60分乃至90分間の一定時間の期間にわたり、蒸気滅菌装置の中において水蒸気に曝すことが可能になる。しかしながら、この時間は滅菌処理する医療装置により変更可能である。
【0033】
上記工程における加湿処理の部分に続いて、上記滅菌装置は約42kPa乃至48kPaの一定の圧力まで窒素ガス等のような乾燥した不活性ガスの導入により加圧することが可能になる。この結果、望ましい圧力に到達すると、純粋なエチレン・オキシドが約95kPaの圧力に到達するまで滅菌装置の中に導入可能になる。このエチレン・オキシドは包装した医療装置を滅菌するために有効な一定時間の期間にわたり維持できる。例えば、このエチレン・オキシドは外科縫合糸の場合において約360分乃至600分にわたり滅菌装置内において維持できる。また、別の医療装置を滅菌処理するために必要とされる時間はその製品の種類および包装に応じて変更可能である。その後、エチレン・オキシドは滅菌装置から排気することが可能になり、この装置は滅菌処理して包装されている医療装置から残留している水分およびエチレン・オキシドを除去するために約150分乃至300分にわたり約0.07kPaの一定の圧力において減圧状態に維持できる。その後、この滅菌装置の中の圧力を大気圧に戻すことが可能になる。
【0034】
上記方法の次の段階は一定の乾燥工程である。上記の包装した医療装置は所定の水準までこの包装した医療装置から残留している水分および水蒸気を有効に除去するために十分な多数の工程にわたり乾燥した窒素および真空に曝露することにより乾燥できる。これらの工程の間に、上記の包装した医療装置は室温よりも高い種々の温度において多数の圧力の増減の条件下に置くことができる。具体的に言えば、乾燥チャンバーのジャケット温度を乾燥工程の全体にわたり約53℃乃至57℃の一定温度に維持できる。しかしながら、縫合糸等の場合には約65℃乃至70℃等のような比較的に高い温度が使用可能であり、滅菌処理する医療装置に応じて温度を高くすることができる。一定の典型的な乾燥工程は約100kPaまで窒素により圧力を高める工程、180分乃至240分の一定期間にわたり約0.07kPaの一定圧力にチャンバーを排気する工程、100kPaの一定圧力まで窒素を再導入して約90分間にわたり窒素を循環する工程、約240分乃至360分の一定期間にわたり約0.01kPaの一定圧力にチャンバーを排気してさらに4時間乃至96時間にわたり0.005kPaよりも低い一定圧力に維持する工程を含む。一般的に約24時間かかる上記の加湿、滅菌および乾燥の各工程の終了時に、上記容器を乾燥窒素ガスにより大気圧に戻す。このようにして、所定の水分量への乾燥が完了した後に、包装した医療装置を乾燥チャンバーから取り出して一定の湿度を調整した保管領域の中において保管することが可能になる。
【0035】
上記滅菌処理の完了時に、その抗菌性の医療装置、パッケージおよび/またはパッケージ用の部品はこれらの抗菌性の装置、パッケージおよび/またはパッケージ用の部品またはその近くにおける細菌のコロニー形成を実質的に阻害するために有効な一定量の抗菌剤を有している。以下における実施例は、一定の気密に密封されているパッケージを用いる場合に、一定の医療装置を滅菌および包装した後でその装置を一定の外科処置において使用する前に、少なくとも6ヶ月にわたり、好ましくは少なくとも1年、最も好ましくは少なくとも2年にわたり、一定の有効量の抗菌剤を有している一定の抗菌性の医療装置を製造することが可能になることを例証している。
【0036】
実施例1
初期的に一定の抗菌剤を実質的に含まず、一定のプロピレンの縫合糸トレーの中に配置されているサイズ5−0の染色されている27インチ(68.6cm)の長さのビクリル(VICRYL)(登録商標)縫合糸(エシコン社(Ethicon, Inc.)から市場において入手可能である90%のグリコリドおよび10%のL−ラクチドにより作成した一定のコポリマーにより構成されている一定の編組状のマルチフィラメント型の縫合糸)が内部に一定の抗菌剤供給源を有しているそれぞれのパッケージの中に配置される。これらの実施例において、パッケージ用の部品、すなわち、それぞれ約0.45gの重量で上記縫合糸トレーを被覆するために用いられている医療品級のクラフト・ペーパーにより作成されている紙のふたが酢酸エチル中において5重量%のトリクロサンを含有している一定の溶液中に個々のふたを浸漬することにより塗布される。それぞれのふたは約5秒間にわたり上記の溶液中に保持されて、一晩にわたり室温において自然に空気乾燥された後に、上記縫合糸トレーの上に置かれる。各ふたにおいて存在しているトリクロサンはその乾燥したふたの全重量の2重量%乃至3重量%の範囲であった。その後、それぞれが上記の縫合糸、縫合糸トレーおよびトリクロサン装填した紙のふたを有している縫合糸組立体が別々のキャビティの中に配置され、これらのキャビティは一定の剥離可能な箔のパッケージ用の材料、すなわち、このパッケージ用の材料の中の各キャビティの中への空気、水蒸気およびエチレン・オキシドの通過を可能にするためにそのパッケージ用の材料の一定の開口端部に取り付けられている一定のタイベック(TYVEK)(登録商標)の通気孔を有する一定のエチルアクリル酸塗布型のアルミニウム箔の複合材料の中に形成されている。その後、上記の縫合糸組立体が滅菌処理され、この滅菌処理により、これらの縫合糸組立体は上記縫合糸に上記抗菌剤供給源、すなわち、トリクロサン装填型の紙のふたから一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に適宜に置かれる。さらに、この滅菌処理が完了した後に、個々のキャビティが密封されて、通気孔が効果的に排除されることにより、内部に一定の縫合糸組立体をそれぞれ収容している密封状態のパッケージが形成される。その後、これらの縫合糸はパッケージから取り出されて阻害試験領域に置かれる。
【0037】
以下の表において含まれているデータは24時間にわたる37℃におけるトリプシン・ダイズ・ブロス中において増殖した黄色ブドウ球菌(ATCC6538)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(ATCC51625)、大腸菌(ATCC8739)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・ファエシウム(ATCC700221)、またはストレプトコッカス・アガラクチカエ(ATCC624)により試験する場合に、各縫合糸において行なった阻害試験領域から得られている。上記の培養物は無菌の0.85%の塩水中に希釈されて、1ミリリットル当たりに1,000,000cfu(コロニー形成単位)の濃度を有する接種材料を形成している。また、それぞれの試験生物において、上記縫合糸は5cmの断片に無菌状態で切断されている。その後、これらの断片は0.1mlの接種材料を伴う別々の無菌のペトリ皿の中に置かれる。次に、トリプシン・ダイズ寒天をこれらの皿の中に注ぎ入れ、各プレートを48時間にわたり37℃で培養した。その後、各阻害領域を縫合糸から目に見える増殖のエッジ部分までのミリメートル単位の距離として読み取る。
【表1】

【0038】
実施例2
この実施例は、上記縫合糸が一定のPDS(登録商標)II縫合糸(エシコン社(Ethicon, Inc.)から市場において入手可能な一定のモノフィラメント型のポリジオキサノン縫合糸)であること、および上記紙のふたが酢酸エチル中に10重量%のトリクロサンを含有している一定の溶液中にその個々のふたを浸漬することにより被覆されていることを除いて、上記実施例1と同一である。
【表2】

【0039】
実施例3
この実施例は、上記縫合糸が一定のプロレン(PROLENE)(登録商標)縫合糸(エシコン社(Ethicon, Inc.)から市場において入手可能な一定のモノフィラメント型のポリプロピレン縫合糸)であること、および上記紙のふたが酢酸エチル中に10重量%のトリクロサンを含有している一定の溶液中にその個々のふたを浸漬することにより被覆されていることを除いて、上記実施例1と同一である。
【表3】

【0040】
実施例4および5
これらのサンプルの調製は上記トリクロサン装填型の紙のふたの代わりに1.1重量%(実施例4)または5.6重量%(実施例5)のトリクロサン、15重量%のグリコリドおよびラクチドのコポリマー、および残りの酢酸エチルを含有している一定の溶液を抗菌剤供給源として使用していることを除いて、上記実施例1の調製と同一である。これらの溶液の0.5mlを剥離可能な箔のパッケージ用の材料中に形成されている別々のキャビティの中に、すなわち、それぞれの縫合糸組立体の下に配置して、一晩にわたり室温で自然に乾燥したことにより、実施例4は各キャビティの中に5mgのトリクロサンを有しており、実施例5は各キャビティの中に25mgのトリクロサンを有していた。その後、それぞれ一定のポリプロピレンのトレーの中に巻かれていて一定の紙のふたにより被覆されている27インチ(68.6cm)の縫合糸を有する縫合糸組立体をそれぞれのキャビティの中に入れた後に滅菌処理した。
【表4】

【0041】
上記の実施例4および5は上記箔のキャビティの中の一定の抗菌剤の貯蔵手段の使用が黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対して試験した場合に一定の阻害領域を示す製品を作成する有効な手段であることを示している。さらに、以下の表は上記実施例5において説明されている手順により調製されている縫合糸による一定の組織通過の調査によるデータを示している。具体的に言えば、一定の針を一定の無菌の縫合糸に手動により取り付けた後に、生の鳥の胸部に10回通してトリクロサンが除去されるか否かを決定した。これらのデータは黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌について試験した場合に相当な阻害領域が組織に縫合糸を通した後においても依然として残っていることを示している。
【表5】

【0042】
実施例6および7
上記縫合糸が一定のPDS(登録商標)II縫合糸であることを除いて、実施例6の調製は実施例4の調製と同一であり、実施例7の調製は実施例5の調製と同一である。
【表6】

【0043】
上記実施例6および7は上記箔のキャビティの中の一定の抗菌剤の貯蔵手段の使用が黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対して試験した場合に一定の阻害領域を示す製品を作成する有効な手段であることを示している。さらに、以下の表は上記実施例7において説明されている手順により調製されている縫合糸による一定の組織通過の調査によるデータを示している。具体的に言えば、一定の針を一定の無菌の縫合糸に手動により取り付けた後に、生の鳥の胸部に10回通してトリクロサンが除去されるか否かを決定した。これらのデータは黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌について試験した場合に相当な阻害領域が組織に縫合糸を通した後においても依然として残っていることを示している。
【表7】

【0044】
実施例8乃至10
これらのサンプルの調製はサイズ5−0の染色したビクリル(VICRYL)(登録商標)プラス縫合糸(エシコン社(Ethicon, Inc.)から市場において入手可能なグリコリドおよびラクチドの一定のコポリマー、ステアリン酸カルシウムおよび酢酸エチルにより構成されている一定の被膜混合物中に含まれているトリクロサンを有している90%グリコリドおよび10%L−ラクチドにより作成されている一定のコポリマーにより構成されている一定の編組状のマルチフィラメント型の抗菌性の縫合糸)であることを除いて、上記実施例1と同一である。この結果、実施例8は上記被膜混合物の全重量に基づいて1.0重量%のトリクロサンをその被膜混合物中に含有しており、実施例9は2.0重量%、および実施例10は3.0重量%含有していた。
【表8】

【0045】
実施例11および12
これらの実施例は上記縫合糸が上記被膜混合物の中に2重量%のトリクロサンを伴うサイズ2−0の一定の染色したビクリル(VICRYL)(登録商標)プラス縫合糸であることを除いて、上記実施例4および5と同一である。
【表9】

【0046】
実施例13
この実施例はサイズ2−0および染色しているビクリル(VICRYL)(登録商標)縫合糸を用いて上記抗菌剤供給源が一定のタイベック(Tyvek)(登録商標)の通気性の部材片であることを除いて上記実施例1と同一である。このタイベック部材片の一面は20重量%のトリクロサンを含有している酢酸エチルにより手動で塗布されている。上記の縫合糸、一定のポリプロピレンの縫合糸トレーおよび一定の紙のふたをそれぞれ含む縫合糸の組立体が一定のパッケージ用の材料の中の各キャビティの内部に空気、水蒸気およびエチレン・オキシドの通過を可能にするためにそのパッケージ用の材料の一定の開口端部に上記のトリクロサンを装填したタイベック(TYVEK)(登録商標)の通気性の部材片を取り付けている一定の剥離可能な箔のパッケージ用の材料の中に形成されている分離しているキャビティの中にそれぞれ配列する。その後、これらの縫合糸の組立体が滅菌処理される。さらに、この滅菌処理の完了後に、上記の個々のキャビティを密封して通気孔を効果的に排除することにより、それぞれ一定の縫合糸組立体を内部に収容している密封したパッケージを形成する。その後、これらの縫合糸を各パッケージから取り出して、阻害試験領域に置く。各サンプルはそれぞれの縫合糸から採取され、全てのサンプルが黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌について試験した場合にそれぞれ阻害領域を示した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一定の時間の関数としての55℃における一定の医療装置から一定のパッケージ化用の部品への一定の抗菌剤の移動を示しているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の抗菌性の縫合糸において、
一定のパッケージの中に一定の縫合糸および一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程を含み、この抗菌剤がハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシジフェニル・エーテル、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択されており、さらに
前記パッケージ、縫合糸および抗菌剤の供給源をその縫合糸にその抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、その縫合糸における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程を含む手順により作成した縫合糸。
【請求項2】
一定の縫合糸および少なくとも1個のパッケージ用の部品を有する抗菌性の縫合糸組立体において、
一定のパッケージの中に一定の縫合糸組立体および一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程を含み、この抗菌剤がハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシジフェニル・エーテル、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択されており、さらに
前記パッケージ、縫合糸組立体および抗菌剤の供給源をその縫合糸にその抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、その縫合糸組立体における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程を含む手順により作成した縫合糸組立体。
【請求項3】
一定の抗菌性のパッケージ化した医療装置において、
一定の内表面部を含む一定のパッケージの中に一定の医療装置および一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程を含み、この抗菌剤がハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシジフェニル・エーテル、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択されており、さらに
前記パッケージ、抗菌剤の供給源および医療装置をそのパッケージの内表面部および医療装置にその抗菌剤の供給源から少なくとも一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、そのパッケージの内表面部および医療装置における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程を含む手順により作成したパッケージ化した医療装置。
【請求項4】
前記抗菌剤の供給源が一定の抗菌剤を装填した貯蔵器である請求項3に記載のパッケージ化した医療装置。
【請求項5】
前記抗菌剤の供給源が前記パッケージの中に位置決めされている請求項3に記載のパッケージ化した医療装置。
【請求項6】
前記抗菌剤の供給源が前記パッケージの内表面部にある請求項3に記載のパッケージ化した医療装置。
【請求項7】
前記抗菌剤の供給源が前記パッケージの中の1個以上のパッケージ用の部品またはそのパッケージに対して一体である請求項3に記載のパッケージ化した医療装置。
【請求項8】
前記医療装置が上部に配置されている一定の抗菌剤を有する1個以上の表面部分を含み、この抗菌剤がハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシジフェニル・エーテル、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択されており、前記医療装置において配置されている抗菌剤および前記抗菌剤の供給源の中の抗菌剤のそれぞれの一部分が前記パッケージの内表面部に蒸気の状態で移動すると共に、前記パッケージ、抗菌剤の供給源および医療装置が前記時間、温度および圧力の条件下に置かれる時に、一定の有効量の抗菌剤が前記医療装置において維持されることにより、そのパッケージの内表面部および医療装置における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する請求項3に記載のパッケージ化した医療装置。
【請求項9】
一定の抗菌性の縫合糸を作成するための方法において、
一定のパッケージの中に一定の縫合糸および一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程を含み、この抗菌剤がハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシジフェニル・エーテル、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択されており、さらに
前記パッケージ、縫合糸および抗菌剤の供給源をその縫合糸にその抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、その縫合糸における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程を含む方法。
【請求項10】
一定の有効量の前記抗菌剤が前記抗菌剤の供給源から前記パッケージの内表面部に蒸気の状態で移動することにより、そのパッケージにおける細菌のコロニー形成を実質的に阻害する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一定の抗菌性の医療装置を作成する方法において、
一定の内表面部を有する一定のパッケージの中に一定の医療装置および一定の抗菌剤の供給源を位置決めする工程を含み、この抗菌剤が前記パッケージの中におけるハロゲン化ヒドロキシル・エーテル、アシルオキシジフェニル・エーテル、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択されており、さらに
前記パッケージ、抗菌剤の供給源および医療装置をその医療装置にその抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、その医療装置における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程を含む方法。
【請求項12】
一定の有効量の前記抗菌剤が前記抗菌剤の供給源から前記パッケージの内表面部に蒸気の状態で移動することにより、そのパッケージにおける細菌のコロニー形成を実質的に阻害する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗菌剤の供給源が一定の抗菌剤を装填した貯蔵器である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗菌剤の供給源が前記パッケージの中に位置決めされている請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記抗菌剤の供給源が前記パッケージの内表面部にある請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記抗菌剤の供給源が前記パッケージの中の1個以上のパッケージ用の部品またはそのパッケージに対して一体である請求項12に記載の方法。
【請求項17】
一定の抗菌性の医療装置を作成するための方法において、
一定の医療装置を一定の抗菌剤の供給源に曝露する工程、および
前記医療装置および抗菌剤の供給源をその医療装置にその抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件下に置くことにより、その医療装置における細菌のコロニー形成を実質的に阻害する工程を含む方法。
【請求項18】
前記医療装置に前記抗菌剤の供給源から一定の有効量の抗菌剤を蒸気の状態で移動するために十分な時間、温度および圧力の条件が40℃の一定温度および大気圧、および4時間乃至8時間の範囲の一定時間の期間の条件下において得られる分圧と同じかこれよりも高い前記抗菌剤に対応する一定の分圧を得るために十分である一定の圧力および一定の温度である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
滅菌処理およびパッケージ化の後の少なくとも6ヶ月で、開封および一定の外科処置における使用の前において一定の有効量の抗菌剤を有する一定の抗菌性のパッケージ化した医療装置。

【図1】
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【公表番号】特表2006−501975(P2006−501975A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501066(P2005−501066)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/030598
【国際公開番号】WO2004/032703
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】