説明

抗菌性組成物

【課題】
本発明は、従来技術の問題点に鑑み、透明〜半透明の液性を呈するとともに安全性、使用性に優れ、特にフケ菌及び/又はアクネ菌に対して持続的な抗菌力を有する抗菌性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の抗菌性組成物は、粒子径が10nm〜100nmで、且つその平均粒子径が20nm〜30nmの範囲にある微粒子状の金属銀を0.0004重量%〜0.0040重量%配合してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粒子状の金属銀を含有する透明性の抗菌性組成物で、特にフケ菌及びアクネ菌に対して有効な人体用の抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属としての銀は装身具や食器等として古くから愛用されており、人体に対しても安全であることが知られている。一方菌やバクテリア等の微生物に対しては殺菌剤や制菌剤として、その抗菌性が報告され、これに関する組成物も提示されている。例えばコロイド状金属銀をゼオライト等のセラミックスに担持させる銀担持ゼオライトを用いた口腔用組成物(特開平5−163125)、同化粧料(特開平7−101821)、同ニキビ治療用皮膚外用剤(特開平7−109217)などがある。
【0003】
これらは銀イオンを徐放するように設計され、溶出したAg+イオンが抗菌力を示すと言われているが、そのメカニズムの詳細は解明されておらず、菌体の細胞膜内に浸透し、酵素を阻害することにより抗菌力を示すという考え方が有力といわれている。
【0004】
しかしながら、これらセラミックス担持体は水不溶性のため、透明な製剤が得られないだけでなく、経時的に液剤中で徐々に沈降し沈殿が生じる。従ってこの沈降を防ぐために製剤を高粘性にする必要があるので剤型が限られ、皮膚に塗布する時など使用性が悪かった。
【0005】
そこで、金属銀を平均粒子径1〜5nmの微粒子とすることにより、水中でも容易に分散し、しかも透明の液性を呈する組成物が提案され(特開2004−231534)、これにより従来の欠点である使用性と保存安定性が改善された。
【0006】
通常このような微粒子状の金属銀は、粒子径が小さくなるほど単位重量当りの表面積が大きくなるため銀イオンとして放出されやすくなり、抗菌力が高くなると考えられるが、反面イオン化が早い分持続性が短くなる。特に粒子径が10nm未満になると、初期の抗菌力は非常に高いものの、大過剰に菌が存在する場合や連続的に菌が発生する場合は徐々に抗菌力が低下し、長時間あるいは長期間抗菌力を維持するには不向きであった。
【0007】
また、粒子径が10nm未満の金属銀の抗菌スペクトルを調べたところ大きさが比較的小さな一般の細菌には効果があるものの、フケ菌やアクネ菌のような比較的大きな真菌に対しては効果が劣ることが判明した。
【0008】
以上のように、これら従来の方法においてはその効果は不充分で満足すべき結果が得られなかった。
【0009】
【特許文献1】 特開平5−163125号公報
【特許文献2】 特開平7−101821号公報
【特許文献3】 特開平7−109217号公報
【特許文献4】 特開2004−231534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、抗菌性、安全性、使用性に優れ、透明の液性を呈する安定な抗フケ菌及び/又は抗アクネ菌用の抗菌性組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の抗菌性組成物は、粒子径が10nm〜100nmで、且つその平均粒子径が20nm〜30nmの範囲にある微粒子状の金属銀を0.0004重量%〜0.0040重量%配合してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の抗菌性組成物は、透明〜半透明の液性を呈するとともに安全性、使用性に優れ、特にフケ菌及び/又はアクネ菌に対して持続的な抗菌力を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の抗菌性組成物は、好ましくは粒子径が10nm〜100nmで、且つその平均粒子径20〜30nmの微粒子状の金属銀を0.0004重量%〜0.0040重量%配合することで得られる。
【0014】
本発明に使用する微粒子状の金属銀として、具体的には精華源興生物医薬科技有限公司製の高活性銀抗菌原液L−01が挙げられる。このものは微粒子状の金属銀4,000ppmを含む水性液で粒子径は10nm〜100nmで、平均粒子径が約25nmである。
【0015】
その他の微粒子状の金属銀としては、例えばLife Plus社製のColloidal Silver、Nosebag Enterprices社製のColloidal Silver、Vitamin Research Products社製のMild Silver Protein、NANO E&C社製のNano Silver等が市販されているが、これらの平均粒子径は全て10nm未満である。なお、これらの濃度は20〜2,000ppmと様々である。
【0016】
本発明による抗菌性組成物における微粒子状の金属銀の配合量は、好ましくは0.0004重量%(4ppm)〜0.0040重量%(40ppm)で、0.0004重量%未満では効果を発揮せず、0.0040重量%を超えて配合しても効果はあまり変わらず不経済である。
【0017】
本発明の抗菌性組成物は、その透明性を生かし一般的なローションやジェル等の剤型とすることができ、その際本発明の効果を損なわない範囲内で一般的に用いられる各種成分、例えば、溶剤、油剤、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、増粘剤、着色剤、着香剤、抗炎症剤等を配合することができる。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合量は重量%とする。
【0019】
表1に微粒子状の金属銀の平均粒子径が、20〜30nmのものと10nm未満のものについて、各種菌に対するそれぞれの最小発育阻止濃度(MIC)を示した。なお使用した微粒子状の金属銀のうち実施例としては精華源興生物医薬科技有限公司製の高活性銀抗菌原液L−01(平均粒子径25nm:4,000ppm)を使用し、比較例としてはLife Plus社製のColloidal Silver(平均粒子径1nm:20ppm)をロータリーエバポレーターで減圧下(650〜750mmHg、55〜65℃)にて10倍に濃縮して用いた。
【0020】
表1に示すとおり実施例1の微粒子状の金属銀は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)以外の菌において、その最小発育阻止濃度(MIC)が比較例1のそれより優れていることが判明した。
【0021】
次に、以下の処方例1〜4の抗菌性組成物を作成し、これらについてフケ菌及びアクネ菌のチャレンジテストを行った。チャレンジテストは接種した菌が死滅した場合、更に植菌して抗菌力の持続性を調べた。
【0022】
処方例1:スキンローション
(1) 濃グリセリン 5.0%
(2) プロピレングリコール 4.0%
(3) エタノール 10.0%
(4) ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 2.0%
(5) 微粒子状の金属銀溶液(20ppm) 50.0%
(6) 精製水 29.0%
上記成分(1)〜(6)を順次加える。
【0023】
処方例2:ボディジェル
(1) カルボキシビニルポリマー 0.4%
(2) キサンタンガム 0.1%
(3) L−アルギニン(10%水溶液) 4.0%
(4) 1,3−ブチレングリコール 5.0%
(5) 微粒子状の金属銀溶液(20ppm) 50.0%
(6) 精製水 40.5%
成分(1)を成分(6)に分散する(A)。成分(2)を成分(4)に分散して(A)に溶解後、成分(3)を加えてゲル化し、成分(5)を混合する。
【0024】
処方例3:シャンプー
(1) ラウリル硫酸ナトリウム液(30%) 40.0%
(2) ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.5%
(3) 濃グリセリン 0.5%
(4) プロピレングリコール 2.0%
(5) 微粒子状の金属銀溶液(20ppm) 50.0%
(6) 精製水 3.0%
上記成分(1)〜(6)を順次加える。
【0025】
処方例4:ヘアトニック
(1) グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
(2) 1−メントール 0.1%
(3) エタノール 45.0%
(4) ジプロピレングリコール 2.0%
(5) 微粒子状の金属銀溶液(20ppm) 50.0%
(6) 精製水 2.8%
成分(1)を成分(5)に溶解、成分(2)を成分(3)に溶解した後、全てを混合する。
【0026】
なお、上記成分のうち微粒子状の金属銀溶液(20ppm)において、実施例としては精華源興生物医薬科技有限公司製の高活性銀抗菌原液L−01(平均粒子径25nm:4,000ppm)を精製水で200倍に希釈して用い、比較例としてはLife Plus社製のColloidal Silver(平均粒子径1nm:20ppm)をそのまま用いた。
【0027】
表2に示すとおり、1回目の植菌では実施例2〜4及び比較例2〜4ともにフケ菌及びアクネ菌を死滅させることができたが、この状態で再度植菌した場合(2回目)、実施例2〜4ではフケ菌及びアクネ菌を再び死滅させることができたが、比較例2〜4では完全に死滅させることができなかった。この結果により実施例2〜4の方が比較例2〜4より抗菌力の持続性が優れていることが判明した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が10nm〜100nmで、その平均粒子径が20nm〜30nmの範囲にある微粒子状の金属銀を配合してなる抗菌性組成物
【請求項2】
液性が透明又は半透明である請求項1に記載の抗菌性組成物
【請求項3】
抗フケ菌及び/又は抗アクネ菌に用いる人体用の請求項1又は請求項2に記載の抗菌性組成物
【請求項4】
微粒子状の金属銀の配合量が0.0004重量%〜0.0040重量%である請求項1〜請求項3に記載の抗菌性組成物

【公開番号】特開2006−169222(P2006−169222A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382463(P2004−382463)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(397031304)エステートケミカル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】