説明

抗菌性膜

本発明は、請求項1に記載の低浸出性制御放出銀系抗菌性添加剤をポリマーマトリックスの中に含ませることおよびそれを半透性膜中に形成させることによる抗菌性膜の調製を開示する。該抗菌剤は、細菌類および/または藻類による腐敗から該膜系を保護し、膜濾過プロセスの高い効率を維持するのに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、水処理膜またはガス分離膜中における特定の非浸出性抗菌剤の使用に関し、より詳細には、細菌汚染にさらされ得る浄水システムにおける銀系抗菌剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水、湿気または水分に日常的にさらされる場合、ポリマーおよびプラスチックが、例えば基体表面上のコーティングとして使用されたときに、細菌類または藻類による腐食によって損なわれ得るということは知られている。細菌類および藻類の群集からなるバイオフィルムは、上記基体の表面上に定着して腐敗の速度および/または効力の喪失を増大させ得る。空気濾過器系において特定の有機抗菌剤を使用することは、既に提案されている;US-A-2003-038074は、半透性膜の中に2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテルなどの非金属系抗菌剤を組み入れることを教示している。さらに、米国特許第5102547号は、銀、銅およびアンチモンなどの化学修飾を受けていない金属がポリマーの中に組み入れられている半透性高分子膜を開示している。米国特許第6652751号は、予め形成された高分子膜の表面上に静電吸着/吸収によって静菌性金属イオンを付着させること、または、該金属塩を高分子溶液の中に混合させおよび還元剤を含んでいる浴の中に流し込むことを教示している。
【0003】
流入水中に含まれている細菌は当該膜によって集められ、その結果として、当該膜の表面に蓄積する。細菌の急速な増殖によって膜は汚損される。その汚損は、膜を通る水の流れを低減し、その膜の濾過特性に悪影響を及ぼし得る。
【0004】
膜の表面で細菌が増殖する結果として、膜の上流側に、激しい洗浄を用いること以外には除去することが極めて困難なゼラチン状のバイオフィルムが形成される。これは、膜の寿命に悪影響を及ぼし得るし、また、大きな費用を招き得る。長期にわたって抗菌活性を示す膜が求められている。
【0005】
膜に組み込まれた非溶解性抗菌剤は、微生物によるコロニー形成および付着に対して抵抗性を示す膜表面をもたらし、および、より容易に除去される汚染性層を提供する。別の用途は、水の再利用にあるだろう(RO、NF、MFなど)。水の再利用では、たとえ比較的「クリーンな」水を用いても、その膜表面上で微生物が増殖し、汚損を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US-A-2003-038074
【特許文献2】米国特許第5102547号
【特許文献3】米国特許第6652751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス分離で使用される膜物質または例えば飲料水やプロセス水や冷却水などを調製するためもしくはそれらの品質を改善するための水の加工処理で使用される膜物質の表面におけるバイオフィルムの形成を防止することは、本発明の主な実施形態のうちの1つである。調製された当該膜は、脱塩、膜型バイオリアクターおよび他の浄水プロセスにおいて特に有用である。該膜は、半透性膜(これは、慣習的な濾過プロセスにおいて使用される)であり得るか、または、高密度膜(これは、例えば、逆浸透プロセスにおいて使用される)であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、非浸出性抗菌性物質は、当該膜のポリマー組成物に添加される。驚くべきことに、このような手段によって、バイオフィルムの成長が、本発明による抗菌剤を含んでいない同じ膜と比較して少なくとも20%低減され得る(フェノール-硫酸法による炭水化物分析により観察される緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルムの成長によって特徴付けられる)。この効果は、浸出する傾向を有する慣習的な薬剤を用いた場合とは異なって、当該膜の寿命全体を通して、即ち、1年間またはそれ以上にわたって、観察され得る。多くの場合、バイオフィルムの成長は、さらに大きく(少なくとも4分の1(25%)または、さらには、3分の1(33%))、長期にわたって低減される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従って使用される非浸出性抗菌性物質は、一般に、多くの場合粒子形態にあって実質的に水に不溶性である抗菌性物質を含んでいる。該粒子は、通常、無機生物活性物質、特に、不溶性オリゴダイナミック生物活性物質を含んでいる。好ましくは、該非浸出性抗菌性物質は、元素銀および/または担持銀、例えば、高多孔性ミクロ銀、銀ナノ粒子、銀ゼオライト、銀ガラスの形態にある銀系抗菌剤から選択される。該非浸出性抗菌性物質は、当該膜を形成させるポリマー組成物に添加することができる。銀系粒子が分散されている(主に、表面に分散されている)フィルムが形成される。そのような銀を組み入れることは、有利には、添加剤粒子をポリマー流延溶液に添加することによって達成され得る。該膜は、その溶液を凝固浴槽(主に、水)の中に投入した後形成させることができる。かくして、本発明は、さらに、抗菌性高分子膜およびその調製方法にも関する。
【0010】
本発明の膜は、主として、水性液体または水性分散液(例えば、液状食品、飲物、医薬品およびそれらの半製品から選択される水性液体または水性分散液)を濾過するのに有用である。それらは、さらに:
ガスを分離させること;
生物工学または医療において生体分子または生体粒子(例えば、血小板または高分子量生体高分子、例えば、タンパク質)を水性液体または分散液から分離させること;
発電において使用される水を濾過すること;
工業的工程、化学的工程、金属処理、半導体加工処理、パルプおよび紙の加工処理のための水を精製および/または浄化すること、ならびに、特に、飲料水および/または廃水を精製および/または浄化すること;
のために使用することができる。
【0011】
本発明の膜は、実質的に水不溶性のオリゴダイナミック生物活性物質を含んでいない同じ膜と比較して、フェノール-硫酸法による炭水化物分析によって観察される緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によるバイオフィルムの成長を少なくとも20%低減させることが可能である。
【0012】
これらの特定のタイプの添加剤は、膜に、その膜の抗菌特性を永続的に増強するための活性物質(好ましくは、銀)が充分に分散された状態でゆっくりと放出されるための特定のメカニズムを与える。そのような膜は、高分子物質と放出が制御され且つゆっくりと浸出する上記薬剤から選択される抗菌剤を含んでおり、ここで、該抗菌剤は、その高分子物質全体に均質に分配された状態でまたはその表面の近くの高分子物質の中に分散された状態で組み込まれている。高分子膜は、有機ポリマーから、例えば、WO04/106311の第48頁最後の段落から第54頁にかけて一般的に挙げられている有機ポリマー(29項目)から、調製することができる。好ましいポリマーは、酢酸セルロース類、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ビスフェノール類、ポリエーテルケトン類、スルホン化ポリエーテルケトン類、ポリアミドスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリ塩化ビニル類および他の塩素化ポリエチレン類、ポリスチレン類ならびにポリテトラフルオロエチレン類またはそれらの混合物である。さらに好ましい膜ポリマーは、ポリオレフィン類、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、芳香族ポリスルホン類、芳香族ポリフェニレン-スルホン類、芳香族ポリエーテルスルホン類、ポリアミド、およびそれらのコポリマー、または、ポリオレフィン類、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、およびそれらのコポリマーからなる群、ならびに、膜の製造において一般的に使用される当技術分野で既知の他のポリマーである。
【0013】
例えばパイプ、フィルター、バルブまたはタンクなどのプラスチック製部品を使用する閉鎖水系(closed water systems)(浄水、脱塩)は、細菌類または藻類のコロニー形成とバイオフィルムの形成にさらされる可能性があり、その結果、膜透過性(流速)などの濾過効力が重大な被害を受け、続いて、材料物質の質が低下し、循環液体が汚染される。
【0014】
該表面に関連する他の問題は、藻類または細菌類のバイオフィルムの形成に由来し得る。そのようなバイオフィルムが形成されると、流体力学的特性における望ましくない変化が生じ、および、例えば、パイプ内の流速に対して、または、さらに、ボート、海洋アプリーションもしくは他の湖沼アプリーションを問題なく使用することに対しても、悪影響を及ぼす。
【0015】
本発明の銀添加剤は、以下のものからなる群より選択される:亜鉛化合物と組み合わされた銀ゼオライト、銀亜鉛ゼオライト、銀ガラス、および、大きな比表面積(好ましくは、3m2/g以上)を有する元素銀(金属銀)、例えば、銀ナノ粒子または高多孔性ミクロ銀。これらの銀添加剤は、該膜物質の中で非浸出性であるという有利点をもたらす。即ち、長い作用期間(例えば、数ヶ月または数年)にわたって活性銀を保持しながら、抗菌(オリゴダイナミック)効果を維持するために充分な量の活性銀イオンを供給するという有利点をもたらす。本発明の銀添加剤は、一般的な膜ポリマーを用いて当該活性銀イオンを供給することができる。即ち、荷電したまたは荷電可能な基または分子を膜内に存在させることは必要ではない。本発明は、かくして、半透性膜または高密度膜を含んでいる膜または膜系を包含し、ここで、該膜は、銀ガラス、亜鉛と組み合わされた銀ゼオライトおよび大きな比表面積を有する元素銀からなる群より選択される少なくとも1種類の非浸出性生物活性粒子物質を膜の内部および/または膜の表面の少なくとも一部分の分散された成分として含んでおり、該膜物質は荷電されたまたは荷電可能な基または分子を実質的に含んでいない。さらなる実施形態は、水処理プロセスまたはガス分離プロセスのための膜(ここで、該膜物質は荷電されたまたは荷電可能な基または分子を実質的に含んでいない)の中の抗菌剤としての上記生物活性粒子物質の使用である。さらなる実施形態は、膜ガス濾過系または特に膜水濾過系(ここで、該膜物質は荷電されたまたは荷電可能な基または分子を実質的に含んでいない)の効力を維持する方法であって、ここで、該方法は、亜鉛化合物と組み合わされた銀ゼオライト、銀亜鉛ゼオライト、銀ガラスおよび大きな比表面積を有する元素銀からなる群より選択される銀放出粒子を該膜物質の中に組み入れることによって、該系を細菌類および/または藻類による腐敗から保護することを含む。
【0016】
ゼオライト担持銀および/または亜鉛(亜鉛含有銀ゼオライト)は、米国特許第4,775,585号、米国特許第4,911,898号、米国特許第4,911,899号に開示されている。ゼオライト担持銀は、米国特許第6,585,989号においても教示されている。
【0017】
亜鉛を含んでいるかまたは含んでいないガラス担持銀(銀ガラス)は、例えば、公開された米国特許出願第2005/0233888号に開示されている。銀ガラスの使用は、本発明の好ましい実施形態である。
【0018】
金属銀微粒子を含んでいる抗菌性プラスチック製品は、例えば、公開された米国特許出願第2006/0134313号または米国特許第6,720,006号および米国特許第6,822,034号において教示されている。
【0019】
米国特許第6,984,392号は、抗菌性多孔性ミクロ銀について教示している。
【0020】
ゼオライトは、概して、三次元的に成長した骨格構造を有するアルミノケイ酸塩であり、一般的に、xM2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2O(基本部分としてのAl2O3を用いて記載される)で表され、ここで、Mはイオン交換可能な金属イオン(これは、通常、一価金属または二価金属のイオンである)を表し;nは当該金属の原子価に相当し;xは該金属酸化物の係数であり;yはシリカの係数であり;および、zは結晶水の数である。本発明に係るゼオライトは、少なくとも150m2/gの比表面積を有している。本発明に係るゼオライトは、抗菌性銀を担持する。即ち、銀は、該ゼオライトのイオン交換可能な部位に主に保持されている。
【0021】
ゼオライトに担持された銀は、表面改質銀担持ゼオライトであり得、または米国特許第6,071,542号に記載されている銀亜鉛ゼオライトまたはであり得る。
【0022】
本発明において有用なゼオライト物質の中で、銀イオンまたは亜鉛イオンは、イオン交換部位に存在し得るか、結晶質フレームの内部に存在し得るか、または、両方のタイプの部位に存在し得る。
【0023】
ゼオライトに担持された銀は、通常、ゼオライト物質の約0.1〜約5重量%を構成する。
【0024】
ガラスに担持された銀も亜鉛を含み得る。即ち、ガラスに担持された銀は、銀ガラスまたは銀亜鉛ガラスであり得る。ガラスに担持された銀は、例えば、公開された米国特許出願第2005/0233888号(この特許出願の開示内容は、参照により本明細書に組み入れる)の中で教示されている。該ガラスは、例えば、銀および/もしくは亜鉛を付加的に含んでいるマグネシウム-ナトリウム-ホスフェート-ボレートガラスであることができるか、または、銀および/もしくは亜鉛を付加的に含んでいるアルミニウム-ホスフェート-ボレートガラスであることができる。
【0025】
ガラスに担持された銀は、通常、ガラス物質の約0.1〜約5重量%を構成する。
【0026】
上記で記載したように、(通常、イオン形態の)銀を含んでいる支持体上の銀放出粒子は、亜鉛と組み合わせて使用する(ゼオライト粒子の場合)、または、亜鉛と組み合わせて使用することができる(銀-ガラス粒子の場合)。これらの添加剤の中の亜鉛も、一般に、イオンの形態にある。銀と亜鉛を含んでいる場合、これらの物質は、同じタイプの粒子の中に両方のタイプの金属を含み得るか、または、銀を含んでいる1種類以上の粒子と亜鉛を含んでいる1種類以上の他の種類の粒子の混合物として使用し得る。例えば、亜鉛を含んでいる銀ゼオライトは、銀亜鉛ゼオライト、亜鉛ゼオライトと混合された銀ゼオライト、亜鉛ガラスと混合された銀ゼオライト、別の亜鉛塩(例えば、酸化亜鉛)と混合された銀ゼオライトまたはそのような物質の組合せ、例えば、酸化亜鉛と混合された銀亜鉛ゼオライトなどから選択され得る。そのような組合せにおける「ゼオライト:亜鉛塩」の重量比は、多くの場合、1:1〜1:10の範囲にある。
【0027】
例えば、亜鉛を含んでいる銀ガラスは、銀亜鉛ガラス、亜鉛ガラスと混合された銀ガラス、亜鉛ゼオライトと混合された銀ガラス、別の亜鉛化合物と混合された銀ガラスまたはそのような物質の組合せから選択され得る。銀ガラスは、好ましくは、酸化亜鉛とは組み合わさない。銀亜鉛ガラスの好ましいタイプは、ホスフェートおよび/またはボレートガラスの場合のように、酸化亜鉛を本質的に含んでいない。銀に加えて、これらのガラス中の他のカチオンは、多くの場合、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウムおよび亜鉛(銀亜鉛ガラスの場合)から選択される。好ましい銀亜鉛ガラス中の「Ag:Zn」の重量比は、約1:30から約1:60にまで及ぶ。
【0028】
担持された亜鉛(例えば、ゼオライトまたはガラスに担持された亜鉛)を使用する場合、亜鉛は、通常、この種類の物質の約0.1〜約5重量%を構成する。
【0029】
銀含有粒子(銀ゼオライト、銀亜鉛ゼオライト、銀ガラス、元素銀)を亜鉛を含んでいる別の物質と組み合わせて使用する場合、「銀:亜鉛」の重量比は、通常、10:1〜約1:500の範囲から選択される。
【0030】
銀ゼオライトを亜鉛化合物と組み合わせて使用すること、および、特に、銀亜鉛ゼオライトを使用することは、本発明の好ましい実施形態である。
【0031】
有利な添加剤粒子組成物としては、例えば、当該添加剤粒子100重量部に基づいて、
5〜50重量部(特に、10〜40重量部)の銀ゼオライトもしくは銀亜鉛ゼオライトおよび50〜95重量部(特に、60〜90重量部)の亜鉛化合物(ここで、該亜鉛化合物は、実質的に水不溶性であり、例えば、酸化亜鉛または亜鉛ゼオライトなどである)を含んでいる銀放出粒子を含んでいる組成物;
または、
50〜100重量部(特に、100重量部)の銀ガラスもしくは銀亜鉛ガラスおよび0〜50重量部(特に、0重量部)の亜鉛化合物(ここで、該亜鉛化合物は、実質的に水不溶性であり、例えば、酸化亜鉛または亜鉛ゼオライトなどである)を含んでいる銀放出粒子を含んでいる組成物;
などを挙げることができる。
【0032】
銀含有粒子との組合せにおいて有用なさらなる物質としては、上記で記載した担持されている亜鉛および亜鉛塩に加えて、リン酸塩(例えば、リン酸カルシウム)、ハイドロタルサイトまたはさらに下記において挙げられている充填剤物質(さらなる添加剤についての12項目のリスト)などがある。これらのさらなる物質と銀および/または亜鉛含有粒子の重量比は、多くの場合、5:95〜95:5の範囲から選択される。
【0033】
元素銀は、ミクロスケールであり得るか、または、ナノスケールであり得る。ナノスケールの抗菌性銀は、例えば、米国特許第6,822,034号(該特許の関連する開示内容は、参照により本明細書に組み入れる)に開示されている。ナノ銀は、通常、5〜100nmの範囲から選択される平均粒子径を有する。この物質中の少量の銀は、酸化銀の形態にあってもよい。ナノスケールの抗菌性銀は、好ましくは、銀塩(例えば、溶液、例えば、硝酸銀の溶液)の還元によってではなく物理的手段(例えば、物理的な蒸着プロセス)によって得る。ナノスケールの元素銀を使用することは、本発明の好ましい実施形態である。金属銀についても、米国特許第6,984,392号(該特許の開示内容も、参照により本明細書に組み入れる)において教示されている。本発明に従って使用される多孔性ミクロ銀は、好ましくは、約10nm〜約100nmの平均粒子径を有する一次粒子を含んでおり、この一次粒子は、約1から約20μmに及ぶ(好ましくは、10〜20μmの)平均粒子径を有する凝集体を形成する。これらの凝集体は、最大で95%の多孔度を有し得る。それらの多孔度は、通常、50%を超えており、好都合には、70〜95%である。多孔性ミクロ銀を使用することは、本発明の好ましい実施形態である。
【0034】
本発明において有用な元素銀粒子は、一般に、有意な量の亜鉛を含んでいない。即ち、当該元素銀粒子の中の非銀金属原子(これは、亜鉛を包含する)の割合(%)は、通常、1原子%未満であり、特に、0.1原子%未満である。
【0035】
使用する元素銀の量は、当該ポリマーの重量に基づいて、例えば、約0.01〜約5.0重量%である。例えば、使用する元素銀の量は、当該ポリマーの重量に基づいて、約0.01〜約2.0重量%であるか、または、約0.01〜約1.0重量%である。
【0036】
使用する担持されている銀の量は、当該ポリマーの重量に基づいて、例えば、約0.001〜約0.2重量%である。例えば、使用する担持されている銀の量は、当該ポリマーの重量に基づいて、約0.01〜約0.2重量%であるか、または、約0.05〜約0.2重量%である。これらの重量のレベルは、当該銀に基づいている。
【0037】
元素銀と担持されている銀の混合物を使用する場合、「元素銀/担持されている銀」の重量/重量比(銀を基準とする)は、例えば、約1:10〜約1:100である。
【0038】
抗菌剤などのさらなる添加剤、例えば、ジ-もしくはトリハロゲノ-ヒドロキシジフェニルエーテル類、例えば、ジクロサンもしくはトリクロサン、3,5-ジメチル-テトラヒドロ-1,3,5-2H-チオジアジン-2-チオン、ビス-トリブチルスズオキシド、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-ブチル-ベンゾイソチアゾリン、10,10'-オキシビスフェノキシアルシン、亜鉛-2-ピリジンチオール-1-オキシド、2-メチルチオ-4-シクロプロピルアミノ-6-(α,β-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-シクロプロピルアミノ-6-tert-ブチルアミノ-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(α,β-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、IPBC、カルベンダジムまたはチアベンダゾールなども、ポリマー膜の中に存在させることができる。
【0039】
有用なさらなる添加剤は、下記に挙げられている物質またはそれらの混合物から選択することができる:
1. 酸化防止剤
1.1. アルキル化モノフェノール類、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;
1.2. アルキルチオメチルフェノール類、例えば、2,4-ジオクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール;
1.3. ヒドロキノン類およびアルキル化ヒドロキノン類、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン;
1.4. トコフェロール類、例えば、α-トコフェロール;
1.5. ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、例えば、2,2'-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール);
1.6. アルキリデンビスフェノール類、例えば、2,2'-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール);
1.7. O-ベンジル化合物、N-ベンジル化合物およびS-ベンジル化合物、例えば、3,5,3',5'-テトラ-tert-ブチル-4,4'-ジヒドロキシジベンジルエーテル;
1.8. ヒドロキシベンジル化マロネート類、例えば、ジオクタデシル-2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート;
1.9. 芳香族ヒドロキシベンジル化合物、例えば、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン;
1.10. トリアジン化合物、例えば、2,4-ビス(オクチルメルカプト)-6-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン;
1.11. ベンジルホスホネート類、例えば、ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;
1.12. アシルアミノフェノール類、例えば、4-ヒドロキシラウラニリド;
1.13. 一価アルコールまたは多価アルコールとβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル類
1.14. 一価アルコールまたは多価アルコールとβ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸のエステル類
1.15. 一価アルコールまたは多価アルコールとβ-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル類
1.16. 一価アルコールまたは多価アルコールと3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸のエステル類
1.17. β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド類、例えば、N,N'-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミド;
1.18. アスコルビン酸(ビタミンC);
1.19. アミン系酸化防止剤、例えば、N,N'-ジ-イソプロピル-p-フェニレンジアミン;
2. 紫外線吸収剤および光安定剤
2.1. 2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)-ベンゾトリアゾール;
2.2. 2-ヒドロキシベンゾフェノン類、例えば、その4-ヒドロキシ誘導体;
2.3. 置換安息香酸および非置換安息香酸のエステル類、例えば、サリチル酸4-tert-ブチル-フェニル;
2.4. アクリレート類、例えば、α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリル酸エチル;
2.5. ニッケル化合物、例えば、2,2'-チオ-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]のニッケル錯体;
2.6. 立体障害性アミン類、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート;
2.7. オキサミド類、例えば、4,4'-ジオクチルオキシオキサニリド;
2.8. 2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン類、例えば、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル[または、-4-ドデシル/トリデシルオキシフェニル])-1,3,5-トリアジン;
3. 金属不活性化剤、例えば、N,N'-ジフェニルオキサミド;
4. ホスフィト類およびホスホニト類、例えば、亜リン酸トリフェニル;
5. ヒドロキシルアミン類、例えば、N,N-ジベンジルヒドロキシルアミン;
6. ニトロン類、例えば、N-ベンジル-α-フェニルニトロン;
7. 硫黄含有相乗剤(thiosynergist)、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル;
8. 過酸化物捕捉剤、例えば、β-チオジプロピオン酸のエステル類;
10. 塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリアミド類、ポリウレタン類、高級脂肪酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛;
11. 造核剤、例えば、無機物質、例えば、タルカム、金属酸化物;
12. 充填剤および強化剤、例えば、炭酸カルシウム、シリケート、ガラス繊維、ガラスビーズ、アスベスト、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物および水酸化物、カーボンブラック、黒鉛、木粉および他の天然産物の粉末もしくは繊維、合成繊維;
13. 他の添加剤、例えば、可塑剤、滑剤、乳化剤、顔料、レオロジー添加剤(rheology additives)、触媒、流れ調整剤、蛍光増白剤、防炎加工剤、帯電防止剤および発泡剤;
14. ベンゾフラノン類およびインドリノン類、例えば、以下のものに開示されているもの:U.S.4,325,863、U.S.4,338,244、U.S.5,175,312、U.S.5,216,052、U.S.5,252,643、DE-A-4316611、DE-A-4316622、DE-A-4316876、EP-A-0589839、EP-A-0591102、EP-A-1291384。
【0040】
有用な安定剤および添加剤のさらなる詳細については、WO 04/106311(これは、参照により本明細書に組み入れる)の第55〜65頁のリストも参照されたい。
【0041】
該物質には、さらに、親水性を高める添加剤、例えば、WO 02/42530に開示されている添加剤も含ませることができる。
【0042】
例えば、該高分子物質には、場合により、約0.01〜約10重量%、好ましくは、約0.025〜約5重量%、特に、約0.1〜約3重量%の1種類以上の上記さらなる安定剤または添加剤を含ませることができる。
【0043】
一般に、本発明の各態様、例えば、銀および/または亜鉛含有粒子を含んでいる上記添加剤の使用方法、対応する使用ならびに開示されている膜系などは、好ましくは、それぞれの特定の実施形態、例えば、上記膜物質、上記に記載されている特定の実施形態または以下に記載されている好ましいさらなる態様と組み合わされる。
【0044】
好ましい態様
適切な抗菌性添加剤は、好ましくは、イオン性添加剤を含んでいない高度に多孔性の元素銀ミクロ粒子およびナノ粒子ならびに銀ゼオライトから選択される。5〜150nmの寸法を有する銀一次粒子は凝集し得るが、そのような凝集体を好ましくは使用する。銀ゼオライト添加剤は、ゼオライト構造の一部分である銀イオンが極めて遅い制御された浸出速度を有しているので、湿潤条件下で長期間にわたって活性を示すという有利点を有している。この添加剤は、広い範囲の細菌類に対して特に活性を示す。そのような物質は、「IRGAGUARD」のブランド名で「Ciba Specialty Chemicals Inc.」によって市販されている。
【0045】
元素銀ミクロ粒子およびナノ粒子は、非常に耐久力があり、効力が極めて長い時間にわたって持続することが期待される用途に適している。好ましい多孔性ミクロ元素銀は、「Hygate 4000」の名称で「Biogate」から入手できる。それは純粋な銀を含んでいるので、銀の低い絶対濃度で使用することができる。
【0046】
該抗菌性銀粒子は、当該ポリマーの総質量に対して、有利には、約0.3〜約10重量%の量、特に、0.5〜8重量%の量で使用することができる。
【0047】
抗菌性膜を調製する方法は、多くの場合、以下に概説されているステップに従う。
【0048】
ステップ1において、ポリマーを有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなど)または適切な溶媒混合物(例えば、前記溶媒の混合物)に溶解させる。一般的な他の溶媒は文献中に見いだされる。ステップ2において、溶媒のフラクションに銀系添加剤を添加し、例えば超音波ミキサーまたは他の適切な任意の混合装置を用いて、充分に分散させる。ステップ3において、例えば機械式撹拌機を最適の速度で使用して、該添加剤のスラリーをポリマー溶液全体に分散させる。ステップ4において、添加剤とポリマーの混合物に、膜組成物中で一般的に使用される他の添加剤(主に、有機および/または高分子添加剤、例えば、上記で挙げられているもの、例えば、造孔剤(pore former)および/または親水性添加剤)を添加し得る。ステップ5において、得られた溶液を既知方法で薄膜に流延し、それによって、膜の少なくとも一方の面上に抗菌剤が分散されている半透性膜または高密度膜が得られる。あるいは、ステップ5において、得られた溶液を、制御された方法でポリマーが沈澱するポリマーの非溶媒の中に計量供給して、抗菌剤が分散されている半透性膜または高密度膜を形成させる。膜調製のさらなる代替的方法は、トラックエッチング、延伸、浸出、界面重合、焼結、ゾル・ゲル法、活性膜層の付加、グラフト、スパッターデポジッションである。
【0049】
該膜は、独立した膜として使用し得るか、または、支持体の上に流延して複合膜とすることができる。多くの場合、半透性膜が使用される。
【0050】
好ましい実施形態では、水の加工処理は、膜濾過系で実施される。
【0051】
該抗菌剤の作用は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)または緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の菌株、および、水性環境中に存在し得る他の菌株にまでおよび、さらに、酵母菌、皮膚糸状菌、藻類などにも及ぶ。
【0052】
該膜(大抵は、高分子有機物質から調製される)は、逆浸透、限外瀘過、ナノ濾過、ガス分離、浸透気化および/またはマイクロ濾過に関して知られている膜であり得る。
【0053】
それらは、単独のフィルムとして流延し得るか、または、複合膜の製造において支持体フィルムまたは膜の上に流延し得る。また、それらは、フラットシート、微細中空繊維、毛細管、渦巻き型、管状またはプレートおよびフレーム形状を有し得る。
【0054】
さらに、それらは、非対称であり得るかまたは対称であり得る。非対称な膜は、該膜の一方の面上に、もう一方の面上の孔径とは異なる孔径を有している。対称な膜は、両方の面上に同じ孔径を有している。
【0055】
本発明の抗菌剤による膜物質(膜が形成される前)または膜(完成した構造)の処理は、例えば、当該膜物質もしくは当該膜構造の中に組み入れること、または、当該膜の表面(コーティング)の中に組み入れることを含んでいる。そのような組み入れは、例えば、沈澱プロセスまたは成形(押し出し)プロセスを含んでいる。
【0056】
該抗菌剤は、一般に、その高分子物質の中に十分に固定される。即ち、それらは、概して、非浸出性である。該抗菌剤は、好ましくは、溶液からの元素銀の沈澱によるのではなくそのまま添加される。該抗菌剤は、好ましくは、銀塩の還元によってin situで形成させることはしない。
【0057】
該膜系は、通常、高分子構造を有する少なくとも1の成形された半透性膜または高密度膜および該高分子物質中に組み入れられ且つ該物質全体に分散されている(または、場合によりコーティング層中の)制御放出性/遅延浸出性の抗菌剤を含んでいる。
【0058】
該膜用の高分子物質は、好ましくは、酢酸セルロース類、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド類、ポリエステル類、芳香族ポリスルホン類、芳香族ポリフェニレンスルホン類、芳香族ポリエーテルスルホン類、ビスフェノール類、ポリエーテルケトン類、スルホン化ポリエーテルケトン類、ポリアミドスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリ塩化ビニル類、塩素化ポリエチレン、ポリスチレン類およびポリテトラフルオロエチレン類またはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0059】
酢酸セルロース類、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド、ポリスルホン類、塩素化ポリエチレンおよびポリフッ化ビニリデン類からなる膜が好ましい。
【0060】
該膜の有効性(例えば、濾過特性または流速に関連した性能)は、一般に、組み込まれている本発明の抗菌剤(ここで、該抗菌剤は、細菌類が膜の表面上にバイオフィルムを形成するのをまたは膜に穴を空けるのを防止する)によって悪影響を受けない。
【0061】
該抗菌剤の濃度は、膜調製において使用されるポリマーの重量に基づいて、約0.01〜5重量%、好ましくは、0.1〜2.0重量%であり得る。
【0062】
抗菌剤を含んでいる半透性膜または高密度膜の調製は、概して、当技術分野において知られている。
【0063】
酢酸セルロース膜は、例えば、複合溶液(ドープ溶液)から、例えば、二酢酸セルロースと三酢酸セルロースの混合物および上記で示されている量の抗菌剤を含んでいる複合溶液(ドープ溶液)から、支持体(織物)の上に流延する。使用する溶媒は、例えば、当該抗菌剤が容易に溶解するジオキサン/アセトン混合物である。
【0064】
それらは、支持体(ポリエステル製織物)の上に流延すること可能であり、また、低温で沈澱させることもできる。
【0065】
例えばポリアクリロニトリル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルケトン類、ポリフッ化ビニリデン類またはスルホン化ポリフッ化ビニリデン類からの、中空糸膜の調製において、使用する溶媒は、例えば、非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンおよびそれらの混合物である。
【0066】
該抗菌剤は、上記溶媒または溶媒混合物の中に容易に分散可能であり、そして、例えばドープ溶液を中空糸を形成させるための紡糸口金に通すことによって、非溶媒がドープ溶液と接触したときに、当該ポリマーと一緒に沈澱する。
【0067】
複合ポリアミド膜などの複合膜は、ポリスルホンと抗菌剤のドープ溶液を補強織物(ポリエステル)の上に流延することによって調製することができる。水と接触したときに、該ポリスルホンおよび該抗菌剤は補強織物の上に沈澱してフィルムを形成する。乾燥後、このポリスルホンフィルム(膜)を有機カルボン酸塩化物溶液で充分に濡らした後、水性アミン溶液で充分に濡らし、それによって、ポリアミド層が当該ポリスルホン膜の上に形成される。乾燥後、逆浸透用の複合膜が得られる。
【0068】
本発明の代替的な実施形態では、濾過系全体(膜、パイプ、タンクなど)を濯ぎ液の重量に基づいて0.01〜2.0%の抗菌剤を含んでいる濯ぎ液で濯ぎ洗いすることによって、該膜濾過系に抗菌特性を与えることができる。該抗菌剤は、通常、膜(濾過)系の高分子物質に対して独立しており、そして、その高分子物質の仕上げ層(例えば、コーティング)の中に拡散することによって、バイオフィルムの成長と細菌類および藻類による腐敗に対して長期間持続する保護が達成され得る。
【0069】
上記濯ぎ洗い法は、抗菌性が枯渇した膜濾過系の抗菌活性を再活性化するのにも適している。
【0070】
好ましくは、該濯ぎ液(これは、本発明のもう1つの目的である)は、該抗菌剤に加えて界面活性剤(ここで、該界面活性剤は、非イオン性化合物、アニオン性化合物または両性イオン性化合物であり得る)、金属イオン封鎖剤、ヒドロトロープ剤、アルカリ金属水酸化物(アルカリ度の源)、防腐剤、充填剤、染料、香料などのような慣習的な成分を含んでいる水性製剤である。
【0071】
上記成分およびそれらの濯ぎ液における使用については、当業者はよく知っている。
【0072】
該抗菌剤は、水の中に存在している殆ど全ての種類の細菌類の増殖を防止する上で極めて有効であり、ゆっくりとした制御された浸出性を示し、安全であって且つヒトおよび動物の皮膚に対して無毒性であり、ならびに、良好な生物分解性を示す。要するに、該抗菌剤は、抗菌剤として同様に使用される例えばトリクロロ-ヒドロキシジフェニルエーテル類などと比較した場合、水系環境中において、より好ましい生態学的プロフィールを示す。
【実施例】
【0073】
以下の試験方法および実施例は、例証的な目的のみのためのものであって、どのようにも本発明を限定するものと解釈されるべきではない。室温(r.t.)は、20〜25℃の範囲内の温度を表す。「一晩」は、12〜16時間の範囲内の期間を表す。「パーセント(%)」は、特に別途示されていない限り、重量基準である。
【0074】
実施例または他の個所で使用されている略語:
BSA ウシ血清アルブミン
SEM 走査型電子顕微鏡
EDAX エネルギー分散X線分光法
材料および方法
「Ultra son E6020P」(BASF)は、使用する前に120℃で24時間乾燥させる。化学薬品および添加剤は、受領したままの状態で使用する。
【0075】
実施例1
銀ゼオライト-PES膜の調製
膜は、典型的な非溶媒転相法によって調製する。ポリエーテルスルホン(PES)(14g)をN-ジメチルピロリドン(NMP)(41g)に60℃で2時間溶解させる。必要とされる量の銀ゼオライト(ポリマーに対する添加剤の重量%:0.5〜5重量%)を約10gのNMPの中に完全に分散させ、上記ポリマー溶液に添加して均質な溶液が得られるまで約1時間撹拌する。ポリエチレングリコール-400(34g)を上記混合物に添加し、1時間撹拌する。均質な溶液が得られた後、該流延溶液を一晩放置して気泡を完全に放出させる。その溶液を鋼製のGardnerナイフを用いてガラス製プレートの上に200μmの湿潤厚さで流延し、ミリQ水の凝固浴中に浸漬する。形成された膜を剥がし、次いで、多量の水で洗浄して溶媒および他の有機残渣を除去する。膜は、SEMおよびEDAX分析による試験に付す。対照膜と改質された膜の微細構造は、限外濾過膜用の膜の形態と一致している。結果は、添加剤が膜の両面に申し分なく分散していることを示した。
【0076】
実施例2
膜の一般的な性能に対する抗菌性添加剤の影響について、水透過流束(water flux)およびBSA濾過を測定することによって評価する。15.2cm2の有効膜表面積を有するデッドエンド撹拌セルを用いて、水透過流束およびBSA濾過を測定する。撹拌機の速度を400rpmに維持し、80kPaの圧力を高圧ガス容器から誘導する。パーソナルコンピューターに連結させた直示天秤を用いて、時限透過物収集(timed permeate collection)によって該流束をモニターする。ウシ血清アルブミン(67kDa)をモデルタンパク質として使用する。ミリQ脱イオン水を用いて、0.5重量%BSAの溶液を調製する。
【0077】
実験プロトコルは、当該膜の一片を切断すること、それを膜モジュール(セル)に挿入することおよび純水(ミリQ)流束を80kPaの圧力で15〜30分間流すことを含んでいた。初期水透過流束の次に、BSA(0.5重量%)限外濾過について、室温で、運転圧力80kPaで、少なくとも1時間評価する。透過物(permeate)中のBSAの濃度を、UV-VIS分光計を用いて測定する。溶質排除は、λ=280nmにおける吸収測定値から計算する。表1は、膜の濾過性能について要約している。
【0078】
ブレンド膜の性能が未処理(対照)膜に極めて類似しており、従って、当該添加剤は膜の固有の分離性能を損なうことはないということが分かる。
【0079】
表1:膜についての透過流束および分離データ
【表1】

【0080】
実施例3(バイオフィルムの成長)
ポリエーテルスルホンを使用する限外濾過抗菌性ブレンド膜を、実施例1に記載されている方法と同様の方法で調製する。バッチ流CDC Biofilm Reactor(BioSurface Technologies)を用いて、直径1.27cmの当該膜の上で、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のバイオフィルムを48時間成長させる。形成されたバイオフィルムの量を、標準的なフェノール-硫酸法炭水化物分析を用いて評価する。各サンプルについて、4つの試験片を試験する。抗菌性ブレンド膜では、バイオフィルムの形成は、対照膜よりも少なかった。特に、4重量%銀ゼオライトブレンド膜および1重量%元素ミクロ銀ブレンド膜では、バイオフィルムの成長は有意に少ない。表2は、バイオリアクター内で48時間後における種々の膜についての幾つかの結果について例証している。
【0081】
表2:48時間で炭水化物分析を用いて定量されたバイオフィルムの減少割合(%)(PES対照との比較)
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀ガラス、亜鉛と組み合わされた銀ゼオライトおよび大きな比表面積を有する元素銀からなる群より選択される銀放出粒子の、水処理プロセスまたはガス分離プロセスのための膜中での抗菌剤としての使用。
【請求項2】
前記水処理プロセスが、食品、飲物、医薬品およびそれらの半製品から選択される水性液体もしくは分散液を濾過すること、生物工学もしくは医療において生体分子もしくは生体粒子を水性液体もしくは分散液から分離させること、発電において使用される水を濾過すること、ならびに/または、工業的工程、化学的工程、金属処理、半導体加工処理、パルプおよび紙の加工処理のための水を精製および/もしくは浄化すること、ならびに、特に、飲料水および/もしくは廃水を精製および/もしくは浄化すること
を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記銀放出粒子が、亜鉛化合物と組み合わされた銀ゼオライト、銀亜鉛ゼオライト、銀ガラスおよび比表面積が3m2/g以上の元素銀、例えば、平均粒径5〜100nmの銀ナノ粒子または多孔度50%以上のミクロ銀から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記銀放出粒子が、膜ポリマー、例えば、該粒子をポリマー流延溶液に添加することにより得ることが可能な膜ポリマーに分散されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
膜ガス濾過系または特に膜水濾過系の効力を維持する方法であって、亜鉛化合物と組み合わされた銀ゼオライト、銀亜鉛ゼオライト、銀ガラスおよび大きな比表面積を有する元素銀からなる群より選択される銀放出粒子を該膜物質の中に組み入れることによって、該系を細菌類および/または藻類による腐敗から保護することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記膜が、有機ポリマーから、好ましくは、酢酸セルロース類、ポリアクリロニトリル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ビスフェノール類、ポリエーテルケトン類、スルホン化ポリエーテルケトン類、ポリアミドスルホン類、ポリフッ化ビニリデン類、ポリ塩化ビニル類、ポリスチレン類およびポリテトラフルオロエチレン類またはそれらの混合物からなる群より選択される有機ポリマーから、さらに好ましくは、ポリオレフィン類、ポリエステル、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン類、芳香族ポリスルホン類、芳香族ポリフェニレン-スルホン類、芳香族ポリエーテルスルホン類、ポリアミドおよびそれらのコポリマーからなる群より選択される有機ポリマーから調製される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組み入れられている粒子が元素銀または銀および亜鉛を含んでおり、後者が、添加剤粒子100重量部に基づいて、
5〜50重量部の銀ゼオライトもしくは銀亜鉛ゼオライトおよび50〜95重量部の亜鉛化合物を含んでおり、ここで、該亜鉛化合物は、実質的に水不溶性であるか;
または、
50〜100重量部の銀ガラスもしくは銀亜鉛ガラスおよび0〜50重量部の亜鉛化合物を含んでおり、ここで、該亜鉛化合物は、実質的に水不溶性であり;
実質的に水不溶性である該亜鉛化合物は、好ましくは、酸化亜鉛および亜鉛ゼオライトから選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記銀放出粒子の量が、膜ポリマーの重量に基づいて、0.3〜10重量%を構成する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜系が、さらなる抗菌剤、特に、ジ-およびトリハロゲノ-ヒドロキシジフェニルエーテル類、例えば、ジクロサンもしくはトリクロサン、3,5-ジメチル-テトラヒドロ-1,3,5-2H-チオジアジン-2-チオン、ビス-トリブチルスズオキシド、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-ブチル-ベンゾイソチアゾリン、10,10'-オキシビスフェノキシアルシン、亜鉛-2-ピリジンチオール-1-オキシド、2-メチルチオ-4-シクロプロピルアミノ-6-(α,β-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-シクロプロピルアミノ-6-tert-ブチルアミノ-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(α,β-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、IPBC、カルベンダジムまたはチアベンダゾールから選択される抗菌剤を含んでいる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種類の非浸出性生物活性物質を膜の内部および/または膜の表面の少なくとも一部分の分散された成分として含んでいる半透性膜または高密度膜を含んでいる膜系であって、該分散された非浸出性生物活性物質が、実質的に該膜に対して化学的に結合することなく、該膜に結合している粒子の形態にあり、
該膜が、非浸出性生物活性物質を含んでいない同じ膜と比較して、フェノール-硫酸法による炭水化物分析によって観察される緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のバイオフィルムの成長を少なくとも20%低減させることを特徴としている、前記膜系。
【請求項11】
前記非浸出性生物活性物質が、実質的に水不溶性であるオリゴダイナミック生物活性物質、好ましくは、亜鉛化合物と組み合わされた銀ゼオライト、銀亜鉛ゼオライト、銀ガラスおよび大きな比表面積を有する元素銀からなる群より選択される実質的に水不溶性であるオリゴダイナミック生物活性物質である、請求項10に記載の膜系。
【請求項12】
水性液体を濾過するための半透性膜または高密度膜を含んでいる膜系であって、該膜が請求項1〜4または6〜8のいずれか1項に記載されている銀放出粒子および有機ポリマーを含んでいる、前記膜系。
【請求項13】
抗菌性濾過膜を調製する方法であって、請求項1、3または7に記載されている銀放出粒子をポリマー、特に、請求項6に記載されているポリマーの中に含ませることおよび該ポリマーを半透性膜または高密度膜中に形成させることを含む、前記方法。
【請求項14】
前記銀放出粒子を前記膜に含ませることを、沈澱法もしくは成形法、例えば押し出しによって実施するか、または、溶融流延法もしくは溶液流延法によって実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
膜濾過系における水性液体の処理方法、特に、水処理方法であって、請求項1、3または7に記載されている銀放出粒子を該膜に組み入れることを含む、前記方法。

【公表番号】特表2011−500306(P2011−500306A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528359(P2010−528359)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063000
【国際公開番号】WO2009/047154
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(508095474)ポリマーズ シーアールシー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】