説明

抗CD20抗体の結晶化

本発明は一般に抗CD20抗体の結晶形態及び結晶化を含む抗CD20抗体の精製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に抗CD20抗体の結晶形態及び結晶化を含む抗CD20抗体の精製に関する。
【背景技術】
【0002】
CD20抗体
リツキシマブ(リツキサン(RITUXAN)(登録商標))抗体は、CD20抗原に対する遺伝子的操作が施されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは1998年4月7日に発行の米国特許第5736137号(Anderson等)において「C2B8」と呼ばれている抗体である。リツキシマブは、再発性又は難治性低悪性度又は濾胞性(follicular)の、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療のためのものである。インビトロ作用機序の研究では、リツキシマブは、ヒト補体に結合し、補体依存性細胞傷害性(CDC)(Reff等, Blood 83(2):435-445 (1994))を介してリンパ系B細胞系統を溶解することが実証されている。また、それは抗体依存細胞性細胞傷害性(ADCC)に対するアッセイにおいて有意な活性を有している。より最近では、リツキシマブはトリチウムチミジン取り込みアッセイにおいて抗増殖効果を有しており、アポトーシスを直接誘導することが示されたが、他の抗CD19及びCD20抗体は誘導しない(Maloney等, Blood 88:637a (1996))。リツキシマブ及び化学療法及び毒素間の相乗効果もまた実験的に観察されている。特に、リツキシマブは、ドキソルビシン、CDDP、VP−16、ジフテリア毒素及びリシンの細胞傷害性効果に対する薬物耐性ヒトB細胞リンパ腫細胞系の感度を高める(Demidem等 Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12(3):177-186 (1997))。インビボ前臨床研究では、リツキシマブが、おそらくは補体及び細胞媒介プロセスを介してカニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄のB細胞を減少させることを示している (Reff等 Blood 83(2):435-445 (1994))。
【0003】
2H7(オクレリズマブ)はヒトB細胞上のCD20表面抗原に対する第二世代ヒト化モノクローナル抗体である。オクレリズマブは関節リウマチ(RA)の治療に対する第III相臨床試験で現在試験されている。
【0004】
CD20抗体に関する特許及び特許文献には、米国特許第5776456号、同第5736137号、同第6399061号、及び同第5843439号、並びに米国特許出願公開第2002/0197255A1号、同第2003/0021781A1号、同第2003/0082172A1号、同第2003/0095963A1号、同第2003/0147885A1号 (Anderson等);米国特許第6455043B1号及び国際公開第00/09160号(Grillo-Lopez, A.);国際公開第00/27428号(Grillo-Lopez及びWhite);国際公開第00/27433号(Grillo-Lopez及びLeonard);国際公開第00/44788第(Braslawsky等);国際公開第01/10462号(Rastetter, W.);国際公開第01/10461号(Rastetter及びWhite);国際公開第01/10460号(White及びGrillo-Lopez);米国特許出願公開第2002/0006404号及び国際公開第02/04021号(Hanna及びHariharan);米国特許出願公開第2002/0012665A1号及び国際公開第01/74388号(Hanna, N.);米国特許出願公開第2002/0058029同Al(Hanna, N.);米国特許出願公開第2003/0103971A1号(Hariharan及びHanna);米国特許出願公開第2002/0009444A1号及び国際公開第01/80884号(Grillo-Lopez, A.);国際公開第01/97858号(White, C.);米国特許出願公開第2002/0128488A1号及び国際公開第02/34790号(Reff, M.);国際公開第02/060955号(Braslawsky等);国際公開第02/096948号(Braslawsky等);国際公開第02/079255号(Reff及びDavies);米国特許第6171586B1号及び国際公開第98/56418号(Lam等);国際公開第98/58964号(Raju, S.);国際公開第99/22764号(Raju, S.);国際公開第99/51642号、米国特許第6194551B1号、米国特許第6242195B1号、米国特許第6528624B1号及び米国特許第6538124号(Idusogie等);国際公開第00/42072号(Presta, L.);国際公開第00/67796号(Curd等);国際公開第01/03734号(Grillo-Lopez等);米国特許出願公開第2002/0004587A1号及び国際公開第01/77342号(Miller及びPresta);米国特許出願公開第2002/0197256号(Grewal, I.);米国特許出願公開第2003/0157108A1号 (Presta, L.);米国特許第6565827B1号、同第6090365B1号、同第6287537B1号、同第6015542号、同第5843398号、及び同第5595721号、(Kaminski等);米国特許第5500362号、同第5677180号、同第5721108号、及び同第6120767号 (Robinson等);米国特許第6410391B1号 (Raubitschek等);米国特許第6224866B1号及び国際公開第00/20864号(Barbera-Guillem, E.);国際公開第01/13945号(Barbera-Guillem, E.);国際公開第00/67795号(Goldenberg);米国特許出願公開第2003/0133930A1号及び国際公開第00/74718号(Goldenberg及びHansen);国際公開第00/76542号(Golay等);国際公開第01/72333号(Wolin及びRosenblatt);米国特許第6368596B1号(Ghetie等);米国特許出願公開第2002/0041847A1号、(Goldenberg, D.);米国特許出願公開第2003/0026801A1号(Weiner及びHartmann);国際公開第02/102312号(Engleman, E.);米国特許出願公開第2003/0068664号(Albitar等);国際公開第03/002607号(Leung, S.);国際公開第03/049694号及び米国特許出願公開第2003/0185796A1号(Wolin等);国際公開第03/061694号(Sing及びSiegall);米国特許出願公開第2003/0219818A1号(Bohen等);米国特許出願公開第2003/0219433A1号及び国際公開第03/068821号(Hansen等);米国特許出願公開第2006/0246004号 (Adams等);米国特許第5849898号及び欧州特許第330191号(Seed等);米国特許第4861579号及び欧州特許第332865号A2 (Meyer及びWeiss);米国特許第4861579号 (Meyer等)及び国際公開第95/03770号(Bhat等)が含まれ、その各々は出典明示により明示的にここに援用される。
【0005】
リツキシマブを用いた治療法に関する文献には、Perotta及びAbuel 「Response of chronic relapsing ITP of 10 years duration to Rituximab」 Abstract # 3360 Blood 10(1)(part 1-2): p. 88B (1998);Stashi等 「Rituximab chimeric anti-CD20 monoclonal antibody treatment for adults with chronic idopathic thrombocytopenic purpura」 Blood 98(4):952-957 (2001);Matthews, R. 「Medical Heretics」 New Scientist (7 April, 2001);Leandro等 「Clinical outcome in 22 patients with rheumatoid arthritis treated with B lymphocyte depletion」 Ann Rheum Dis 61:833-888 (2002);Leandro等 「Lymphocyte depletion in thrumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response. Arthritis and Rheumatism 44(9): S370 (2001);Leandro等 「An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus」, Arthritis & Rheumatism 46(1):2673-2677 (2002);Edwards and Cambridge 「Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes」 Rhematology 40:205-211 (2001);Edwards等 「B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders」 Biochem. Soc. Trans. 30(4):824-828 (2002);Edwards等 「Efficacy and safety of Rituximab, a B-cell targeted chimeric monoclonal antibody: A randomized, placebo controlled trial in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis and Rheumatism 46(9): S197 (2002);Levine and Pestronk 「IgM antibody-related polyneuropathies: B-cell depletion chemotherapy using Rituximab」 Neurology 52: 1701-1704 (1999);DeVita等 「Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis」 Arthritis & Rheum 46:2029-2033 (2002);Hidashida等 「Treatment of DMARD-Refractory rheumatoid arthritis with rituximab.」 Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; Ne Orleans, LA 2002;Tuscano, J. 「Successful treatment of Infliximab-refractory rheumatoid arthritis with rituximab」 Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002.が含まれる。Sarwal等 N. Eng. J. Med. 349(2):125-138 (July 10, 2003)では、DNAマイクロアレイプロファイリングによって同定される急性の腎臓同種異系移植片拒絶反応における分子不均一性が報告されている。
【0006】
哺乳動物細胞培養での抗体の生産
哺乳動物細胞は、主として正しく折り畳まれて構築された異種タンパク質を生産するその能力と翻訳後修飾に対するその能力のために、臨床用途に対する哺乳動物タンパク質の生産のための支配的な系になった。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び様々な他の哺乳動物源から得られた細胞株、例えばマウスミエローマ(NS0)、ベビーハムスター腎臓BHK)、ヒト胎児由来腎臓(HEK−293)及びヒト網膜細胞が、治療用抗体を含む生物製剤の生産に対して規制当局によって承認されている。これらのうち、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が最も一般的に使用されている工業的宿主であり、異種タンパク質の生産に一般的に使用されている。よって、ジヒドロ葉酸レダクターゼネガティブ(DHFR−)CHO細胞を含むCHOにおける大規模な抗体の生産方法が当該分野でよく知られている(例えば、Trill等, Curr. Opin. Biotechnol. 6(5):553-60 (1995)を参照)。
【0007】
通常、生産サイクルを開始するために、少数の形質転換された組換え宿主細胞を数日間培養して増殖させる。細胞が数回の複製を受けたところで、それらを、発酵を受ける準備がなされているより大きな容器に移す。細胞が増殖される培地及び生産サイクル中に存在する酸素、窒素及び二酸化炭素のレベルは生産プロセスに対して有意な影響を有しうる。増殖パラメータは各細胞株に対して特に決定され、これらのパラメータは最適な増殖及び生産条件を確保するために頻繁に測定される。
【0008】
細胞が十分な数まで増殖したところで、それらは大規模な生産タンクに移され、より長い期間、増殖される。プロセスのこの時点で、組換えタンパク質を収集することができる。典型的には、細胞を操作して細胞培養培地中にポリペプチドを分泌させるので、精製プロセスの第一工程は培地から細胞を分離することである。収集は、通常、収集細胞培養液(HCCF)を生産するための遠心分離と濾過を含む。ついで、培地に、細胞片、望まれないタンパク質、塩、ミネラル分他は他の望まれない元素を除去する更なる数工程の精製工程を施す。精製プロセスの終わりでは、タンパク質は非常に純粋で、ヒトの治療用途に適している。
【0009】
このプロセスは過去数十年にわたって多くの研究と改良の主題であったが、抗体のような組換えタンパク質の生産は尚も困難がないとは言えない。精製工程はしばしば時間を費やし、費用が嵩み、更なる問題をもたらす。製造細胞培養からの抗体力価の現在の改善に伴って、抗体の精製は今は扱いにくいサイズのクロマトグラフィーカラムと多量の高価なクロマトグラフィー樹脂を必要とする。CHO細胞培養物からCHO宿主細胞タンパク質(CHOP)を除去するためのプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラムの使用はプロテインAの浸出を含むことが知られており、浸出プロテインAを除去するための更なる精製工程を必要とする。また、抗体のようなポリペプチドの大規模生産は大きな体積の使用と取り扱いを必要とし、これが費用に加わり、満足できる力価を達成するのをしばしば困難にする。よって、抗体のような組換えポリペプチドの大規模精製のための改善された方法が必要とされている。その確立された治療的重要性に鑑みると、複数のクロマトグラフィー精製工程を使用する伝統的な精製スキームに匹敵する収率を維持しながら精製プロセス工程数の低減を可能にするCD20抗体の精製のための改善されたプロセスを提供することが特に望ましい。
【0010】
異種タンパク質の精製プロセスの一部として結晶化を使用することについて限られた報告が存在している。米国特許出願公開第2006/0009387号は、Apo2L/TRAILタンパク質がある条件下で自然に結晶化する傾向を示すことを報告しており、この知見に基づいて、結晶化工程を含むApo2L/TRAILの精製方法を記載している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、抗体、特に完全長抗体は伝統的に結晶化が困難であるが、CD20抗体は哺乳動物細胞培養物の収集細胞培養液(HCCF)から首尾良く結晶化され得るという驚くべき知見に少なくとも部分的に基づいている。特に、本発明は、HCCFから、大きく一様なCD20抗体結晶を含むCD20抗体結晶の形成を可能にする条件の特定を含む。従って、本発明は、精製スキーム中に結晶化工程を含む、哺乳動物細胞培養物からCD20抗体を精製するための方法を提供する。CD20抗体精製スキーム中への結晶化工程の導入は、結晶化を伴わない複数のクロマトグラフィー精製工程を使用する伝統的な精製スキームに匹敵する収率を維持しながらクロマトグラフィー工程とその固有の拡張性の制限をなくする。従って、精製プロセスへの結晶化の実施は、効率、製品収率又は製品品質を損なうことなく顕著な時間と費用の節約を達成する。
【0012】
一態様では、本発明は、混合物からCD20抗体を精製する方法であって、CD20抗体を結晶化し、混合物から結晶性CD20抗体を回収することを含む方法に関する。
他の態様では、本発明は、(a)CD20抗体を結晶化させてCD20抗体結晶を得、(b)CD20抗体結晶を溶解させてCD20抗体溶液を得、(d)CD20抗体溶液にアニオン交換カラムでの精製を施し、(e)CD20抗体を単離する工程を含む方法に関する。
混合物はCD20抗体を含む任意の混合物であり得、例えば任意の真核生物又は原核生物宿主細胞からのCD20抗体の組換え生産中に得られる任意の組成物である。
【0013】
特定の実施態様では、混合物は、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞からの収集細胞培養液(HCCF)である;HCCFはバイオリアクターからその元の濃度を超えて濃縮されうる。
他の実施態様では、精製は、プロテインA精製工程がない状態で実施される。
更に他の実施態様では、精製は、カチオン交換クロマトグラフィー工程がない状態で実施される。
更なる実施態様では、精製は、プロテインA精製工程とカチオン交換クロマトグラフィー工程の双方がない状態で実施される。
【0014】
他の実施態様では、精製スキームはウイルス濾過工程とアニオン交換精製工程を含み、これは好ましくは結晶化精製工程に続いて用いられる。
更なる実施態様では、本発明の精製方法は、次の工程から本質的になるか又は次の工程からなる:(a)濃縮HCCFからのCD20抗体の結晶化、(b)バッファーへのCD20結晶の溶解、(c)得られた溶液をアニオン交換カラムに通過させること、及び(d)アニオン交換カラムを離れる溶離液の濃縮。
【0015】
全ての実施態様において、CD20抗体は、限定するものではないが、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、ヒト化2H7及び2H7変異体を含むヒト化抗CD20抗体、HuMaX−CD20(Genmab)、IMMU−106(ベルツズマブ(veltuzumab)又はhA20としても知られている;Immunomedics)を含む任意の診断用又は治療用CD20抗体でありうる。モノクローナル抗体が好ましく、キメラ、ヒト化又はヒトでありうる。全ての態様において、CD20「抗体」又は「CD20結合抗体」なる用語は特に完全長CD20結合抗体、及びその抗原結合断片、例えばFab又はF(ab’)を含む。よって、CD20結合抗体及びその変異体の結晶化のための方法が特にここに含まれる。
例えば、CD20抗体は、表1に列挙された2h7 CD20抗体変異体A−Iからなる群から選択されうる。特定の実施態様では、CD20抗体は、それぞれ配列番号1及び2;配列番号3及び4;並びに配列表3及び5のVL及びVH対を有する、表1に列挙された2H7 CD20抗体変異体A、C及びHからなる群から選択される。
【0016】
異なった態様では、本発明は、哺乳動物細胞の濃縮された収集細胞培養液(HCCF)からCD20抗体を精製する方法であって、(a)HCCFを濃縮し、(b)結晶化を阻害するpHにて高塩濃度でHCCFを透析し、(c)pHを高めることによってCD20抗体を結晶化させ、(d)CD20抗体結晶を溶解させてCD20抗体溶液を得、(e)CD20抗体溶液にアニオン交換カラムでの精製を施し、(f)得られた精製CD20抗体を単離する工程を含む方法に関する。
丁度前のように、例示的なCD20抗体は、表1に列挙された2h7 CD20抗体変異体A−Iからなる群から選択されうる。特定の実施態様では、CD20抗体は、それぞれ配列番号1及び2;配列番号3及び4;並びに配列表3及び5のVL及びVH対を有する、表1に列挙された2H7 CD20抗体変異体A、C及びHからなる群から選択される。
【0017】
他の態様では、本発明の方法は、IgGのFc領域を含むCD20結合イムノアドヘシンのようなCD20結合配列を含む抗体様分子の結晶化及び精製に関する。一実施態様では、CD20結合イムノアドヘシンは、ヒト化2H7抗体又は表1に記載されたその変異体の一つの可変領域を含む。
開始混合物としてHCCFを使用する全ての実施態様では、HCCFは、CD20抗体濃度が最低約1.5mg/mlになるように濃縮されうる。約15mg/mlのCD20抗体濃度はCHOP(CHO細胞タンパク質)の排除と共に良好な収率の抗体結晶をもたらすが、我々は1.5mg/mlと低い濃度でCD20結合抗体の結晶化を達成することができた。
【0018】
全ての実施態様において、結晶化は、例えば約6.0から約8.0、又は7.8+/−0.2のpHのような広範囲のpHで実施されうる。
結晶化は、例えば約4℃から約40℃の温度、例えば約37℃の温度のような広範囲の濃度範囲で実施されうる。
結晶化は、一又は複数の沈殿剤、例えばPBS、NaCl、NaSO、KCl、KSO、NaHPO、及びKHPOからなる群から選択される一又は複数の沈殿剤、特にKHPOによって誘導されうる。
結晶化はより高いタンパク質濃度で達成するのがより容易であるが、現実的な理由のため、HCCFは大なる度合いには濃縮されない。
【0019】
他の態様では、本発明はCD20抗体の結晶に関する。結晶は、限定しないが、微小針状、針状、球状又は球状ピーナッツ状結晶を含む異なった形状で存在し得、これは個々に又は様々な混合物の形態で、非晶質の非結晶性沈殿物の存在又は不存在下で存在しうる。
【0020】
更なる態様では、本発明はCD20結合抗体結晶を含有する組成物に関する。該組成物は、例えば一又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含有する薬学的組成物でありうる。
本発明は更にB細胞悪性腫瘍又は自己免疫疾患を治療するための方法であって、圧名の方法によって精製されるCD20抗体の有効量を哺乳動物患者に投与することを含む方法に関する。特定の実施態様では、自己免疫疾患は、関節リウマチ及び若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えばループス腎炎、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発神経障害、重症筋無力症、ANCA関連血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、及び視神経脊髄炎(NMO)からなる群から選択される。
これらの及び更なる実施態様は以下に提供される実施例から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に記載された、37℃で20XのPBSを含むビーカー中に透析した150mg/mlの2H7抗体を含む薬剤産物から得られた沈殿物を観察する顕微鏡写真である。
【図2】実施例2に記載された、24℃で6mg/mlの2H7及び10XのPBSを含む溶液から生長させた大きな「ヘイスタック」2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図3】実施例2に記載された、37℃で37.5mg/mlの2H7及び10XのPBSを含む溶液から生長させた針状及び球状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図4】実施例2に記載された、4℃で5mg/mlの2H7及び1PBSを含む溶液から生長させて得られた薄い針状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図5】実施例3に記載された、37℃で37.5mg/mlの2H7及び10XのPBSを含む溶液から生長させた大きな丸い球状及び針状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図6】実施例3に記載された、37℃で5mg/mlの2H7及び10XのPBSを含む溶液から得られた薄い針状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図7】実施例3に記載された、37℃で75mg/mlの2H7及び300mMのNaHPOを含む溶液から生長させた微小針状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図8】実施例3に記載された、37℃で17.5mg/mlの2H7及び500mMのKHPOを含む溶液から得られた大きな球状及びピーナッツ状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図9】実施例3に記載された、37℃で37.5mg/mlの2H7及び500mMのKHPOを含む溶液から生長させた球状ピーナッツ状の2H7抗体結晶の顕微鏡写真である。
【図10−1】図10A−Hは、Tween/トレハロースの存在下(A、C、E、G)及び不存在下(B、D、F、H)における沈殿剤として10XのPBSを使用し、75mg/ml、37.5mg/ml、17.5mg/ml又は5mg/mlの2H7を含む、Q−Sepharoseクロマトグラフィー工程を通して実施された2H7の条件プール(以下「Q−プール」と言う)から得られた濃縮溶液から沈殿させた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図10−2】図10A−Hは、Tween/トレハロースの存在下(A、C、E、G)及び不存在下(B、D、F、H)における沈殿剤として10XのPBSを使用し、75mg/ml、37.5mg/ml、17.5mg/ml又は5mg/mlの2H7を含む、Q−Sepharoseクロマトグラフィー工程を通して実施された2H7の条件プール(以下「Q−プール」と言う)から得られた濃縮溶液から沈殿させた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図10−3】図10A−Hは、Tween/トレハロースの存在下(A、C、E、G)及び不存在下(B、D、F、H)における沈殿剤として10XのPBSを使用し、75mg/ml、37.5mg/ml、17.5mg/ml又は5mg/mlの2H7を含む、Q−Sepharoseクロマトグラフィー工程を通して実施された2H7の条件プール(以下「Q−プール」と言う)から得られた濃縮溶液から沈殿させた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図11−1】図11A−Cは、Tween/トレハロースの存在下(A、B、D)又は不存在下(C、E)における沈殿剤として1MのKHPOを使用し、75mg/ml、37.5mg/ml、又は17.5mg/mlの2H7を含むQ−プールから得られた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図11−2】図11A−Cは、Tween/トレハロースの存在下(A、B、D)又は不存在下(C、E)における沈殿剤として1MのKHPOを使用し、75mg/ml、37.5mg/ml、又は17.5mg/mlの2H7を含むQ−プールから得られた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図12】図12A−Bは、結晶化効率に対するトレハロース及びTweenの影響を模式的にまとめる。
【図13−1】図13A−Hは、コントロールとして15.5mg/mlの2H7を含むQ−プールを使用し、それぞれ10XのPBS、15XのPBS、500mMのKHPO、及び750mMのKHPOの存在下で15.5mg/mlの2H7を含む収集細胞培養液(HCCF)から得られた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図13−2】図13A−Hは、コントロールとして15.5mg/mlの2H7を含むQ−プールを使用し、それぞれ10XのPBS、15XのPBS、500mMのKHPO、及び750mMのKHPOの存在下で15.5mg/mlの2H7を含む収集細胞培養液(HCCF)から得られた2H7抗体結晶の顕微鏡写真を示す。
【図14】沈殿剤として500mMのKHPOを使用するHCCFからの結晶化効率のpH依存性を示す模式図である。2H7濃度は3mg/mlから15.5mg/mlまで変化させた。
【図15】1時間及び18時間での37℃におけるHCCF溶解性曲線を示す。
【図16】1時間及び18時間での24℃におけるHCCF溶解性曲線を示す。
【図17】1時間及び18時間での4℃におけるHCCF溶解性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
「抗体」という用語は最も広義に使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長又は無傷のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片を含む。
【0023】
「抗体断片」は、一般には無傷抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持する無傷抗体の一部のみを含む。本定義によって包含される抗体断片の非限定的な例には、(i)VL、CL、VH及びCH1ドメインを有するFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を有するFab断片であるFab'断片;(iii)VH及びCH1ドメインを有するFd断片;(iv)VH及びCH1ドメイン及びCH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を有するFd'断片;(v)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを有するFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward等, Nature 341, 544-546 (1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した二つのFab'断片を含む二価断片のF(ab')2断片;(ix)単鎖抗体分子(例えば単鎖Fv;scFv) (Bird等, Science 242:423-426 (1988);及びHuston等, PNAS (USA) 85:5879-5883 (1988));(x)同じポリペプチド鎖内に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む二つの抗原結合部位を持つダイアボディ(diabodies)(例えば欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント対(VH−CH1−VH−CH1)を含む「直鎖状抗体」(Zapata等 Protein Eng. 8(10):1057 1062 (1995);及び米国特許第5641870号)が含まれる。
【0024】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる天然に生じる突然変異等の可能性のある突然変異を除いて、同一である。従って、「モノクローナル」なる修飾語は、別の抗体の混合ではない抗体の性質を示す。モノクローナル抗体は非常に特異的で、単一抗原に対するものである。ある実施態様では、モノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を包含しており、この場合の標的に結合するポリペプチドは、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスによって得られたものである。例えば、このような選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールからの、独特のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的に対する親和性を向上させる、標的結合配列をヒト化する、細胞培養液中でのその産生を向上させる、インビボでのその免疫原性を低減する、多特異性抗体を作製する等が可能であること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も本発明のモノクローナル抗体であることが理解されなければならない。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、その抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによって汚染されていない点で有利である。
【0025】
「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作ることができ、それらの技術には例えばハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975);Hongo等, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlow等, Antibodies: A loboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版 1988);Hammerling等: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681, (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ法(例えば、Clarkson等, Nature, 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Sidhu等, J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004);Lee等, J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093 (2004);Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee等, J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004)参照)、及びヒト免疫グロブリン座位又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部を有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生する技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jackobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993);Bruggemann等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号;Marks等, Bio/Technology, 10:779-783 (1992);Longerg等, Nature, 368:856-859 (1994);Morrison, Nature, 368:812-813 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology, 14:845-851 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology, 14:826 (1996);及びLongerg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol., 13:65-93 (1995))が含まれる。
【0026】
ここに記載のモノクローナル抗体は、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から由来するか、特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か相同である一方、鎖の残りが、他の種から由来するか、他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か相同である「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物活性を示す限りはそのような抗体の断片を含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0027】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域からの残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種の高頻度可変領域からの残基(ドナー抗体)によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRsがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部をまた含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。また例えば、Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);及び米国特許第6982321号及び同第7087409号を参照。また、van Dijk及びvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)も参照のこと。抗原刺激に応答して抗体を産生するように修飾されているが、その内在性遺伝子座が無効になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによってヒト抗体を調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6075181号及び同第6150584号を参照)。また、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生産したヒト抗体に関するLi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)も参照のこと。
【0028】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここで開示されたヒト抗体を製造するための何れかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、当該分野で知られている様々な技術を使用することによって生産することが可能である。一実施態様では、ヒト抗体はファージライブラリーから選択され、ここでファージライブラリーがヒト抗体を発現する(Vaughan等, Nature Biotechnology 14:309-314 (1996):Sheets等, PNAS, (USA)95:6157-6162(1998);Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウス中に導入することにより産生することができる。暴露時に、遺伝子再構成、アセンブリ及び抗体レパートリーを含む、あらゆる点でヒトに見られるものと密接に類似しているヒト抗体の産生が観察される。このアプローチ法は、例えば米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;第5661016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368: 856-859 (1994);Morrison等, Nature 368: 812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対して抗体を生産するヒトBリンパ球の不死化によって調製されてもよい(そのようなBリンパ球は、個体から回収されてもよいし、インビトロで免疫化されていてもよい)。例えば、Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985);Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991);及び米国特許第5750373号を参照のこと。
【0029】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞毒性への抗体の関与を示す。
【0030】
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。例えば、高頻度可変領域は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つのHVRを含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例えば、Xu等 Immunity 13:37-45 (2000);Johnson及びWu, Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo編, Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。例えば、Hamers-Casterman等 Nature 363:446-448(1993);Sheriff等 Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照のこと。
【0031】
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0032】
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる:VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら各々を規定するために、上掲のKabat等に従って番号を付した。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義する高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0033】
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットに記載のアミノ酸位番号付け」なる用語及びその異なる言い回しは、上掲のKabat 等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR内の短縮又は挿入に相当する2、3のアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82b及び82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のKabat番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲すべてにわたって、一般的に、可変ドメインの残基を指す場合にはカバット番号付けシステムを用いる(およそ、軽鎖の残基1−107と重鎖の残基1−113)(例として、Kabat 等, Sequences of Immunological Interest. 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。一般的に、イムノグロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」を用いる(EUインデックスはKabat 等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)において報告されており、出典明示によってここに明示的に援用される)。ここで別の定義を記載しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基の数の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する。ここで別の定義をしない限り、抗体の定常ドメイン内の残基の数の参照は、EU番号付けシステムによって番号付けした残基を意味する(例えば、米国特許仮出願第60/640323号、EU番号付けについての図を参照)。
【0035】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、更にこれらの幾つかは、例えばIgG(非A及びAアロタイプを含む)、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgA等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られており、一般に、例えばAbbas等 Cellular and Mol. Immunology, 4版 (W.B. Saunders, Co., 2000)に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有的又は非共有的結合によって形成される大きな融合分子の一部であってもよい。
【0036】
「Fc領域」なる用語は、無傷の抗体のパパイン消化によって生成されうる免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は天然配列Fc領域又は変異型Fc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はおよそCys226の位置又はおよそPro230からの位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。従って、無傷の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。免疫グロブリンのFc領域は一般に、CH2ドメインとCH3ドメインの2つの定常ドメインを含み、場合によってCH4ドメインを含む。
【0037】
特に明記しない限り、本明細書中の免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、出典明記によって本明細書中に特別に援用される上掲のKabat等のEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」(「Cg2」ドメインとも呼ばれる)は、通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基まで延びている。CH2ドメインは、別のドメインと親密な対にならないという点で独特である。代わりに、2つのN結合分岐炭水化物鎖が、無傷の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入される。炭水化物はドメイン−ドメイン対の代替物を提供し、CH2ドメインの安定化を助けることができると推測される。Burton, Molec. Immunol. 22:161-206 (1985)を参照のこと。ここで、CH2ドメインは天然配列のCH2ドメイン又は変異体CH2ドメインとすることができる。
【0038】
「CH3ドメイン」は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまでの範囲(つまり、IgGの約341位のアミノ酸から約447位のアミノ酸)を含む。ここでは、CH3領域は、天然配列のCH3ドメインか、又は変異体CH3ドメイン(例えば、その一鎖に「隆起」が導入され、それに対応して他の鎖に「空洞」が導入されたCH3ドメイン:出典明示によって明示的にここに援用される米国特許第5821333号を参照)とすることができる。このような変異体CH3ドメインを使用してここに記載された多重特異性(例えば二重特異性)抗体を作製することができる。
【0039】
「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1の約Glu216又は約Cys226から約Pro230まで延びていると定義される(Burton, Molec. Immunol.22:161-206(1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、同じ位置に内部重鎖S−S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を配置することによりIgG1と整列させることができる。ここでのヒンジ領域は、天然配列のヒンジ領域か、又は変異体ヒンジ領域とすることができる。変異体ヒンジ領域の2つのポリペプチド鎖は、一般に1つのポリペプチド鎖につき少なくとも1つのシステイン残基を保持しており、よって2つの変異体ヒンジ領域のポリペプチド鎖は2つの鎖の間にジスルフィド結合を形成することができる。ここでの好ましいヒンジ領域は、天然配列のヒトヒンジ領域、例えば天然配列のヒトIgG1ヒンジ領域である。
【0040】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の少なくとも一の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害作用(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)、食作用;細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター; BCR)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることを必要とし、そのような抗体のエフェクター機能を評価するための当該分野で知られている様々なアッセイを使用して評価されうる。
【0041】
「無傷(インタクト)」抗体は抗原結合可変領域並びに軽鎖定常ドメイン(CL) 及び重鎖定常ドメインCH1, CH2及びCH3を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。好ましくは、無傷抗体は一又は複数のエフェクター機能を有する。
「親抗体」又は「野生型」抗体はここに開示された抗体変異体と比較して一又は複数のアミノ酸配列改変を欠くアミノ酸配列を含む抗体である。よって、親抗体は一般にここに開示された抗体変異体の対応する高頻度可変領域のアミノ酸配列とはアミノ酸配列が異なる少なくとも一つの高頻度可変領域を有している。親ポリペプチドは、天然配列(つまり天然に生じる)抗体(天然に生じる対立遺伝子変異体)、又は天然に生じる配列の既存のアミノ酸配列修飾(例えば挿入、欠失及び/又は他の改変)を有する抗体を含みうる。開示全体を通して、「野生型」、「WT」、「wt」及び「親」又は「親の」抗体は交換可能に使用される。
【0042】
ここで用いる「抗体変異体」又は「変異体抗体」は、親抗体のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ある実施態様では、抗体変異体は、親抗体の重鎖又は軽鎖の可変ドメインの何れかのアミノ酸配列と、約75%から100%未満、より好ましくは約80%から100%未満、より好ましくは約85%から100%未満、より好ましくは約90%から100%未満、及び最も好ましくは約95%から100%未満のアミノ酸配列同一性又は類似性があるアミノ酸配列を有する。抗体変異体は一般に一又は複数のその高頻度可変領域中に又はそれに隣接して一又は複数のアミノ酸変更を含むものである。
【0043】
「変異体Fc領域」は、少なくとも一のアミノ酸修飾により、天然配列のFc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。ある実施態様では、変異体Fc領域は、天然配列のFc領域もしくは親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも一のアミノ酸置換、例えば、天然配列のFc領域又は親ポリペプチドのFC領域に約1から約10のアミノ酸置換、好ましくは約1から約5のアミノ酸置換を有する。ここでの変異体Fc領域は、典型的には、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と、例えば少なくとも約80%の配列同一性を有するか、又は少なくとも約90%の配列同一性を、又は少なくとも約95%の配列又はそれ以上の同一性を有するであろう。
【0044】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体アイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0045】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞傷害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞傷害性の形態を意味する。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。あるいは、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているもののような動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。
【0046】
「補体依存性細胞傷害」もしくは「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1成分が、その同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。Fc領域アミノ酸配列を変更してC1q結合能力が増大又は減少したポリペプチド変異体(変異形Fc領域を有するポリペプチド)は、米特許第6194551B1号及び国際公開第1999/51642号に記述される。また例えばIdusogie等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0047】
「親和性成熟」抗体は、その一又は複数のCDRに一又は複数の変更を有するものであって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性が改善される。一実施態様では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の又は更にはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当該分野において既知の方法により生産される。Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992年)は、VHドメイン及びVLドメインのシャフリングによる親和成熟を記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas等, Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155 (1995);Yelton等, J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson等, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0048】
「治療用抗体」なる用語は、疾患の治療に使用される抗体を意味する。治療用抗体は様々な作用機序を有しうる。治療用抗体は、抗原に結合し、それに関連した標的の通常の機能を中和しうる。例えば、癌細胞の生存に必要とされるタンパク質の活性をブロックするモノクローナル抗体は細胞死を生じさせる。他の治療用モノクローナル抗体は、抗原に結合し、それに関連した標的の通常の機能を活性化しうる。例えば、モノクローナル抗体は細胞上のタンパク質に結合しアポトーシスシグナルを惹起させうる。また他のモノクローナル抗体は、疾患組織上にのみ発現する標的抗原に結合しうる;モノクローナル抗体への、例えば化学療法剤又は放射性剤のような毒性のペイロード(有効剤)のコンジュゲーションは疾患組織への毒性ペイロードの特異的デリバリーのための薬剤をつくることができ、健常な組織への害を減少させる。治療用抗体の「生物学的に機能的な断片」は無傷抗体に帰する生物学的機能の幾らか又は全てとは言わなくとも少なくとも一つを示し、該機能は標的抗原に対する特異的結合を少なくとも含む。
【0049】
「精製された」は、分子が試料中にそれが含まれる試料の少なくとも80−90重量%の濃度で存在していることを意味する。
精製される抗体を含むタンパク質は、好ましくは本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均質(つまり、汚染タンパク質等がない)である。
「本質的に純粋な」タンパク質は、組成物の全重量に基づいて、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質を含むタンパク質組成物を意味する。
「本質的に均質な」タンパク質は、組成物の全重量に基づいて、少なくとも約99重量%のタンパク質を含むタンパク質組成物を意味する。
【0050】
「保存安定」なる用語は、商業的流通網における製品に対して許容される有効期間、例えば与えられた温度で少なくとも12ヶ月、好ましくは与えられた温度で少なくとも24ヶ月の有効期間を有する製剤を記述するために使用される。場合によっては、かかる保存安定製剤は、5%以下の凝集体、10%以下の二量体、及び/又は電荷不均一性又は生物学的活性の最小変化を含む。タンパク質の分解経路は化学的不安定性(つまり、新規な化学物質を生じる結合形成又は切断によるタンパク質の修飾を含む任意のプロセス)又は物理的不安定性(つまり、タンパク質の高次構造の変化)を含みうる。化学的不安定性は、例えばアミド分解、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離又はジスルフィド交換から生じうる。物理的不安定性は、例えば変性、凝集、沈殿又は吸着から生じうる。3つの最も一般的なタンパク質分解経路はタンパク質凝集、アミド分解及び酸化である。Cleland等 Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4): 307-377 (1993)。
【0051】
ここで使用される場合、「溶解性」は、水溶液中あるとき、完全に溶解され、視覚検査によって評価して可視できる粒子のない清澄から僅かに乳白色の溶液を生じるポリペプチドを意味する。溶液の濁度(又はタンパク質の溶解度)の更なるアッセイは、1cmの経路長細胞を用いて340nmから360nmでのUV吸光度を測定することによって行うことができ、20mg/mlでの濁度は0.05吸光度単位未満である。
【0052】
「保存料」は製剤中において細菌、ウイルス、及び真菌が増殖するのを防止するように作用することができ、抗酸化剤又は他の化合物が製剤の安定性を維持するために様々な形で機能しうる。例には、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物)、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。他のタイプの化合物には、芳香族アルコール、例えばフェノール及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、及びm−クレゾールが含まれる。場合によっては、かかる化合物はフェノール又はベンジルアルコールである。保存料又は他の化合物は場合によってはCD20抗体製剤の液体又は水性形態に含まれるが、通常は製剤の凍結乾燥形態では含められない。後者の場合、保存料又は他の化合物は、典型的には再構成に使用される注射用水(WFI)又は注射用静菌水(BWFI)中に存在する。
【0053】
「界面活性剤」は、製剤中におけるタンパク質の変性又は濁度を減少させるように作用しうる。界面活性剤の例には、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート、例えばポリソルベート20、60、又は80、ポロキサマー、例えばポロキサマー184又は188、プルロニックポリオール、エチレン/プロピレンブロックポリマー又は当該分野で知られている任意の他のものが含まれる。
【0054】
抗体の「生物学的に機能的な断片」は無傷の抗体の一部分のみを含み、ここで、該部分は無傷抗体に存在する場合、その部分に通常は関連する機能の少なくとも一つ、多い場合は殆ど又は全てを保持している。一実施態様では、抗体の生物学的に機能的な断片は無傷抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持している。他の実施態様では、抗体の生物学的に機能的な断片、例えばFc領域を含むものは、無傷抗体に存在する場合、Fc領域に通常関係する生物学的機能、例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合の少なくとも一つを保持する。一実施態様では、抗体の生物学的に機能的な断片は無傷抗体と実質的に同様なインビボ半減期を有する一価抗体である。例えば、抗体のかかる生物学的に機能的な断片は断片にインビボ安定性を付与することができるFc配列に結合した抗原結合アームを含みうる。
【0055】
「単離された」抗体は、同定されその自然環境の成分から分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、その抗体の研究、診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。ある実施態様では、抗体は、(1)例えばローリー法で測定した場合95重量%を越える抗体、ある実施態様では99重量%を越えるまで、(2)例えばスピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、又は(3)例えばクーマシーブルー又は銀染色を用いた非還元又は還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性まで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0056】
「プロテインA」又は「ProA」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、その天然源から回収されるプロテインA、合成的に(例えば、ペプチド合成あるいは組換え技術により)産生されるプロテインA、Fc領域等のC2/C3領域を持つタンパク質と結合する能力を保持しているその変異体を含む。プロテインAはRepligen、Pharmacia及びFermatechから商業的に購入することができる。プロテインAは一般に固相支持材料に固定される。「ProA」なる用語はまたプロテインAが共有的に結合されたクロマトグラフィー固体支持体マトリックスを含むアフィニティクロマトグラフィー樹脂又はカラムを意味する。
【0057】
「クロマトグラフィー」なる用語は、混合物中の対象の溶質が、混合物の個々の溶質が移動相の影響下で、又は結合及び溶離プロセスにおいて、静止媒体を通して移動する速度の差の結果として混合物中の他の溶質から分離されるプロセスを意味する。
「アフィニティクロマトグラフィー」及び「プロテインアフィニティクロマトグラフィー」なる用語はここでは交換可能に使用され、対象のタンパク質又は対象の抗体が可逆的かつ特異的に生体分子特異的リガンドに結合されるタンパク質分離技術を意味する。好ましくは、生体分子特異的リガンドは、クロマトグラフィー固相物質に共有的に結合し、溶液がクロマトグラフィー固相材料に接触するとき溶液中の対象のタンパク質に接近可能である。対象のタンパク質(例えば抗体、酵素、又はレセプタータンパク質)はクロマトグラフィー工程中に生体分子特異的リガンド(例えば抗原、基質、共因子、又はホルモン)に対するその特異的結合親和性を保持する一方、混合物中の他の溶質及び/又はタンパク質はリガンドには有意には又は特異的には結合しない。固定されたリガンドへの対象のタンパク質の結合は、汚染タンパク質又はタンパク質不純物がクロマトグラフィー媒体を通過することを許容する一方、対象のタンパク質は固相物質上の固定化リガンドに特異的に結合したままである。ついで、対象の特異的に結合したタンパク質は低pH、高pH、高塩、競合リガンド等で固定化リガンドから活性形態で除去され、先にカラムを通過することが可能にされた汚染タンパク質又はタンパク質不純物を含まない溶離バッファーと共にクロマトグラフィーカラムを通過させられる。任意の成分を、その各特異的な結合タンパク質、例えば抗体を精製するためのリガンドとして使用することができる。
【0058】
「非アフィニティクロマトグラフィー」及び「非アフィニティ精製」なる用語は、アフィニティクロマトグラフィーが利用されない精製プロセスを意味する。非アフィニティクロマトグラフィーは、対象の分子(例えばタンパク質、例えば抗体)及び固相マトリックス間の非特異的相互作用に依存するクロマトグラフィー技術を含む。
【0059】
「カチオン交換樹脂」は負に荷電し、よって、固相の上又は中を通過する水溶液中のカチオンと交換される遊離のカチオンを有する固相を意味する。固相に結合してカチオン交換樹脂を形成する負に荷電したリガンドは、例えば、カルボキシレート又はスルホネートでありうる。市販のカチオン交換樹脂は、カルボキシ-メチル-セルロース、アガロース上に固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、SP-SEPHAROSE FAST FLOW(A commercially available mixed mode ion exchange resin is )又はSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標)、GE Healthcare製)及びアガロース上に固定化されたスルホニル(例えば、S-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、GE Healthcare製)を含む。「混合モードイオン交換樹脂」はカチオン、アニオン、及び疎水性部分で共有的に修飾された固相を意味する。市販の混合モードイオン交換樹脂は、弱いカチオン交換基、低濃度のアニオン交換基、及びシリカゲル固相支持体マトリックスに結合した疎水性リガンドを含むBAKERBOND ABX(商標)(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)である。
【0060】
「アニオン交換樹脂」は、例えばそれに結合した第4級アミノ基等の一又は複数の正荷電リガンドを有する、正に荷電した固相を意味するためにここで使用される。市販のアニオン交換樹脂は、DEAEセルロース、QAE SEPHADEX(商標)及びQ SEPHAROSE(商標)FAST FLOW(商標)(GE Healthcare)を含む。
【0061】
「バッファー」は、その酸−塩基結合成分の作用によりpH変化に抗する溶液を意味する。例えばバッファーの所望のpHに応じて使用できる様々なバッファーが、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D.編, Calbiochem Corporation (1975)に記載されている。一実施態様では、バッファーは、約2から約9、あるいは約3から約8、あるいは約4から約7、あるいは約5から約7の範囲のpHを有する。この範囲内にpHを制御するバッファーの非限定的例は、MES、MOPS、MOPSO、トリス、HEPES、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、及びアンモニウムバッファー、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0062】
「負荷バッファー」は、対象とするポリペプチド分子及び一又は複数の不純物を含む組成物をイオン交換樹脂に負荷するのに使用するものである。負荷バッファーは、対象とするポリペプチド分子(及び一般には一又は複数の不純物)がイオン交換樹脂に結合するような、又は対象のタンパク質が不純物が樹脂に結合している間、カラムを通過するような、伝導率及び/又はpHを有する。
「中間バッファー」は、対象とするポリペプチド分子の溶離に先立って、一又は複数の不純物をイオン交換樹脂から溶離するのに使用される。中間バッファーの伝導率及び/又はpHは、一又は複数の不純物がイオン交換樹脂から溶離されるが、対象とするポリペプチドの有意な量は溶離されないようなものである。
【0063】
「洗浄バッファー」なる用語は、ここで用いられる場合、対象とするポリペプチド分子の溶離に先立って、イオン交換樹脂を洗浄又は再平衡化するのに使用されるバッファーを意味する。簡便には、洗浄バッファー及び負荷バッファーは同じであってもよいが、そうである必要はない。
「溶離バッファー」は、対象とするポリペプチドを固相から溶離するのに使用される。溶離バッファーの伝導率及び/又はpHは、対象とするポリペプチドがイオン交換樹脂から溶離されるようなものである。
「再生バッファー」は、イオン交換樹脂を再生してそれが再利用できるようにするのに使用される。再生バッファーは、実質的に全ての不純物と対象とするポリペプチドをイオン交換樹脂から除去するのに必要な伝導率及び/又はpHを有する。
【0064】
ここで使用される「実質的に同様の」又は「実質的に同じ」なる用語は、当業者が、2つの値の差異が、該値(例えばKd値)により測定される生物学的特徴の点において生物学的及び/又は統計的有意性が殆どないか又はないと考えるように、2つの数値(例えば一方は本発明の抗体に関連し、他方は参照/コンパレータ抗体)の間に十分に高度な類似性があることを示す。前記2つの値の差異は、参照/コンパレータ抗体値の関数として、例えば約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。
【0065】
ここで使用される「ベクター」なる用語は、それが連結している他の核酸を輸送することのできる核酸分子を意味するものである。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは付加的なDNAセグメントがライゲートされうる環状二本鎖DNAを意味する。他のタイプのベクターはファージベクターである。他のタイプのベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへライゲーションすることができる。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入によって宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある種のベクターは、それらが作用可能に連結している遺伝子の発現を方向づけ得る。このようなベクターは、ここでは、「組換え発現ベクター」、あるいは単に「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で利用される発現ベクターは、しばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」及び「ベクター」を交換可能に使用することができる。
【0066】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を達成するために必要ならば間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって著作され、そのソースコードは米国著作権庁(ワシントン D.C.,20559)に使用者用書類と共に提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社(サウスサンフランシスコ, カリフォルニア)から公的に入手可能であり、又はソースコードからコンパイルされうる。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされなければならない。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0067】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対するある程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることが理解されるであろう。特に断らない限りは、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直ぐ上の段落に記載されるようにして得られる。
【0068】
「治療」は治療的処置及び予防又は阻害的処置の両方を意味する。治療が必要なものには、既に疾患に罹患しているもの並びに予防すべき疾患あるものが含まれる。ここでの「治療」は疾患及び特定の疾患の徴候及び症状の軽減を包含する。
治療の目的のための「哺乳動物」は、哺乳動物として分類される任意の動物、例えばヒト、非ヒト高等霊長類、他の脊椎動物、家畜、及び動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0069】
B.発明を実施するための例示的方法及び材料
本発明は、CD20抗体結晶及びCD20抗体の回収及び精製方法を提供する。特に、本発明は、他の汚染物質、例えば汚染タンパク質及び/又は他の不純物が伴う混合物からCD20抗体を回収し精製するために結晶化を含む方法を提供する。特定の実施態様では、本発明は、組換え宿主培養物又は細胞可溶化物、例えばCD20抗体を生産する大腸菌組換え宿主細胞の哺乳動物細胞培養又は細胞可溶化物から、CD20抗体を回収し精製する方法を提供する。
【0070】
これらの精製方法の基礎は、抗体断片を含むCD20抗体が精製プロセス全体を通して最適な操作を可能にする際す及び形態で、高純度で直ぐに結晶化する条件の同定である。結晶化工程を含む精製スキームは良好にスケールアップ可能であり、よってCD20抗体の大規模な精製に使用することができることが更に見出された。
【0071】
精製スキーム中への結晶化工程の導入により、結晶化を伴わない複数のクロマトグラフィー精製工程を使用する伝統的な精製スキームに匹敵する収率を維持しながら、精製プロセス工程の低減を可能にする。従って、精製プロセス中での結晶化の実施は、効率、収率又は製品品質を損なうことなく有意な節約が達成される。
【0072】
本発明の実施には、別段の記載がない限り、当業者の技量の範囲内にある分子生物学の一般的な技術を使用する。かかる技術は文献に十分に説明されている。例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, (J. Sambrook等, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989);Current Protocols in Molecular Biology (F. Ausubel等編, 1987改訂); Essential Molecular Biology (T. Brown編, IRL Press 1991);Gene Expression Technology (Goeddel編, Academic Press 1991);Methods for Cloning and Analysis of Eukaryotic Genes (A. Bothwell等編, Bartlett Publ. 1990);Gene Transfer and Expression (M. Kriegler, Stockton Press 1990);Recombinant DNA Methodology II (R. Wu等編, Academic Press 1995);PCR: A Practical Approach (M. McPherson等, IRL Press at Oxford University Press 1991);Oligonucleotide Synthesis (M. Gait編, 1984);Cell Culture for Biochemists (R. Adams編, Elsevier Science Publishers 1990);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. Miller及びM. Calos編, 1987);Mammalian Cell Biotechnology (M. Butler編, 1991);Animal Cell Culture (J. Pollard等編, Humana Press 1990);Culture of Animal Cells, 2版 (R. Freshney等編, Alan R. Liss 1987);Flow Cytometry and Sorting (M. Melamed等編, Wiley-Liss 1990);シリーズMethods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Wirth M.及びHauser H. (1993);Immunochemistry in Practice, 3版, A. Johnstone及びR. Thorpe, Blackwell Science, Cambridge, MA, 1996;Techniques in Immunocytochemistry, (G. Bullock及びP. Petrusz編, Academic Press 1982, 1983, 1985, 1989);Handbook of Experimental Immunology, (D. Weir及びC. Blackwell編);Current Protocols in Immunology (J. Coligan等編 1991);Immunoassay (E. P. Diamandis及びT.K. Christopoulos編, Academic Press, Inc., 1996);Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2版) Academic Press, New York; Ed Harlow及びDavid Lane, Antibodies A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988;Antibody Engineering, 2版 (C. Borrebaeck編, Oxford University Press, 1995);及びシリーズAnnual Review of Immunology;シリーズAdvances in Immunologyを参照のこと。
【0073】
B.1 CD20抗体の生産
(i)CD20抗体
様々な実施態様では、本発明は、2H7 CD20抗体の結晶形態と、少なくとも一の結晶化工程を含むかかる抗体の精製方法を提供する。特定の実施態様では、ヒト化2H7抗体は表1に列挙された抗体である。

【0074】
表1の抗体変異体A、B及びIの各々は、軽鎖可変配列(V):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKR(配列番号1);及び
重鎖可変配列(V):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号2)
を含む。
【0075】
表1の抗体変異体C、D、F及びGの各々は、軽鎖可変配列(V):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYLHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWAFNPPTFGQGTKVEIKR(配列番号3)、及び
重鎖可変配列(V):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSASYWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号4)
を含む。
【0076】
表1の抗体変異体Hは、配列番号3(上記)の軽鎖可変配列(V)と重鎖可変配列(V):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSYRYWYFDVWGQGTLVTVSS (配列番号5)
を含む。
【0077】
表1の抗体変異体A、B及びIの各々は、完全長軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYMHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWSFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号6)
を含む。
【0078】
表1の変異体Aは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号7)
を含む。
【0079】
表1の変異体Bは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号8)
を含む。
【0080】
表1の変異体Iは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGDTSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSNSYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNAALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号15)
を含む。
【0081】
表1の抗体変異体C、D、F、G及びHの各々は、完全長軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVSYLHWYQQKPGKAPKPLIYAPSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQWAFNPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号9)
を含む。
【0082】
表1の変異体Cは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSASYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号10)
を含む。
【0083】
表1の変異体Dは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSASYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)
を含む。
【0084】
表1の変異体Fは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSASYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNAALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号12)
を含む。
【0085】
表1の変異体Gは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSASYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNAALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHWHYTQKSLSLSPGK(配列番号13)
を含む。
【0086】
表1の変異体Hは完全長重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYNMHWVRQAPGKGLEWVGAIYPGNGATSYNQKFKGRFTISVDKSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVVYYSYRYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNATYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNAALPAPIAATISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号14)
を含む。
【0087】
ある実施態様では、ヒト化2H7抗体は、IgG Fcにアミノ酸変更を更に含み、野生型IgG Fcを有する抗体に対して、少なくと60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、より好ましくは少なくとも100倍、好ましくは少なくとも125倍、更により好ましくは少なくとも150倍から約170倍、ヒトFcRnに対して増加した結合親和性を示す。
【0088】
IgG中のNグリコシル化部位はC2ドメインのAsn297にある。本発明のヒト化2H7抗体組成物は、Fc領域を有する先のヒト化2H7抗体の何れかの組成物を含み、ここで組成物中の抗体の約80−100%(好ましくは約90−99%)が糖タンパク質のFc領域に結合したフコースを欠く成熟コア糖鎖構造を含む。そのような組成物は、FcγRIIIA(F158)への結合に驚くべき改善を示すことがここで実証されており、これは、ヒトIgGとの相互作用においてFcγRIIIA(V158)ほど効果的ではない。FcγRIIIA(F158)は、正常で健常なアフリカ系アメリカ人及び白人においてはFcγRIIIA(V158)より一般的である。Lehrnbecher等 Blood 94:4220 (1999)を参照のこと。歴史的には、最も一般的に用いられる産業用宿主の一つであるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で産生される抗体は、フコシル化されていない集団におよそ2〜6%を含有する。しかしながら、YB2/0及びLec13は、78〜98%のフコシル化されていない種を有する抗体を産生しうる。Shinkawa等, J Bio. Chem. 278 (5), 3466-347 (2003)は、YB2/0及びLec13細胞で産生される抗体であってFUT8活性をほとんど持たない抗体がインビトロで有意に増加したADCC活性を示すことを報告した。また、フコース含量が少ない抗体の作製は、例えばLi等 (GlycoFi) "Optimization of humanized IgGs in glycoengineered Pichia pastoris" Nature Biology オンライン出版 22 Jan. 2006;Niwa R.等 Cancer Res. 64(6): 2127-2133 (2004);米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta);米国特許第6602684号及び米国特許出願公開第2003/0175884号(Glycart Biotechnology);米国特許出願公開第2004/0093621号、米国特許出願公開第2004/0110704号、米国特許出願公開第2004/0132140号(全てKyowa Hakko Kogyo)に記載されている。
【0089】
二重特異性ヒト化2H7抗体は、抗体の1本のアームが本発明のヒト化2H7抗体のH及び/又はL鎖の抗原結合領域を少なくとも有し、他のアームは第二抗原に対してV領域結合特異性を有する抗体を包含する。特定の実施態様では、第二抗原は、CD3、CD64、CD32A、CD16、NKG2D又は他のNK活性化リガンドからなる群から選択される。
【0090】
本発明はまた限定するものではないが、再発性又は難治性低悪性度又は濾胞性のCD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のため;CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾン)又は他のアントラサイクリン系化学療法計画との併用でびまん性大細胞型B細胞、CD20陽性、非ホジキンリンパ腫(DLBCL−一タイプのNHL)の最初に使われる治療のため;安定な疾患又はCVP化学療法での第一治療後に部分的な又は完全な応答を達成する患者における濾胞性CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫の治療のために臨床実務に使用されている治療用抗体のリツキサン(登録商標)(リツキシマブ)を含む他のCD20抗体の精製を含む。
【0091】
(ii)抗体生産
ここでのCD20抗体を含むモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記のように免疫し、免疫化に用いられたタンパク質と特異的に結合する抗体を産生するか又は産生することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いてミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親ミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親のミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含むであろう(HAT培地)。
【0092】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性であるものである。これらの中でも、好ましいミエローマ細胞株は、マウスミエローマ株、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAより入手し得るMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、及び例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAより入手し得るSP−2又はX63−Ag8−653細胞由来のものである。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の生産についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって決定される。
【0093】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地を含む。また、そのハイブリドーマ細胞は、動物において腹水症腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製手順により、培地、腹水、又は血清から好適に分離される。
【0094】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はミエローマ細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体の組換え生産は以下に更に詳細に記載される。
【0095】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して生成された抗体ファージライブラリーから単離することができる。
Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体のそれぞれの単離を記述している。続く刊行物は、鎖シャフッリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0096】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾されうる。
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0097】
(iii)ヒト化及びヒト抗体
ヒト化抗体には非ヒトである由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の対応する配列に齧歯類CDRs又はCDR配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾らかのCDR残基と場合によっては幾らかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0098】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作製する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものに最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0099】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムが購入可能である。これら表示を調べることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0100】
別法として、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えばJakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);及びDuchosal等 Nature 355:258 (1992)を参照されたい。ヒト抗体はまたファージ-ディスプレイライブラリーから誘導することもできる (Hoogenboom等, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Vaughan等 Nature Biotech 14:309 (1996))。抗体ファージディスプレイライブラリーからのヒト抗体の生産は更に以下に記載する。
【0101】
(iv)抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照)。しかし、これらの断片は今は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収し、化学的に結合させてF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。以下の実施例に記載されているような他の実施態様では、F(ab')はF(ab')分子の構築を促進するためにロイシンジッパーGCN4を使用して形成される。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号を参照。
【0102】
(v)抗体の組換え生産
抗体の組換え生産のために、抗体をコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは直ぐに単離され、常套的な手法を用いて(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドを使用することによって)配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、これらに制限されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製起点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列である(例えば、特に出典明示によりここに援用される米国特許第5534615号に記載)。
【0103】
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。一つの好適な大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31446)であるが、他の大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような株も好適である。これらの例は限定するものではなく例示的なものである。
【0104】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、多数の他の属、種及び菌株も、一般的に入手可能でここで使用でき、例えば、シゾサッカロマイセスポンベ;クルイベロマイセス宿主、例えばK.ラクティス、K.フラギリス(ATCC12424)、K.ブルガリカス(ATCC16045)、K.ウィッケラミイ(ATCC24178)、K.ワルチイ(ATCC56500)、K.ドロソフィラルム(ATCC36906)、K.サーモトレランス、及びK.マルキシアナス;ヤローウィア(EP402226);ピチアパストリス(EP183070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(EP244234);アカパンカビ;シュワニオマイセス、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス;及び糸状真菌、例えばパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム、及びコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌及びクロカビが使用できる。
【0105】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞はまた多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリが同定されている。トランスフェクションのための種々のウィルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL-1変異体とボンビクス・モリ NPVのBm-5株が公に利用でき、そのようなウィルスは本発明においてここに記載したウィルスとして使用でき、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞の形質転換に使用できる。綿、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養をまた宿主として利用することができる。
【0106】
しかしながら、脊椎動物細胞における興味が最もあり、培養(組織培養)中の脊椎細胞の増殖は近年では常套的な手順になった。有用な哺乳動物宿主細胞の例は、SV40(COS-7,ATCC CRL 1651)で形質転換させたサル腎CV1細胞株;ヒト胚腎細胞系(293又は懸濁培養で成長するようにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol. 36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL10);チヤイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather, Biol. Reprod. 23: 243-251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト頚管腫瘍細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci. 383: 44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝臓癌株(Hep G2)である。
【0107】
一実施態様では、ここでのCD20抗体はdp12.CHO細胞中で生産され、そのCHO−K1 DUX−B11細胞からの生産はEP307247に記載されている。CHO−K1 DUX−B11細胞は、順に、Simonsen, C. C.,及びLevinson, A. D., (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2495-2499及びUrlaub G.,及びChasin, L., (1980) Proc. Natl. Acad. Sci USA 77:4216-4220に記載された方法に従って、CHO−K1(ATCC番号CCL61 CHO−K1)細胞から得られた。また他のCHO−K1(dhfr)細胞株が知られており、本発明の方法において使用することができる。
【0108】
ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を生産するのに使用される哺乳動物宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。商業的に入手可能な培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM)、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、その全ての開示が出典明示によりここに援用されるHam及びWallace(1979), Meth. in Enz. 58:44, Barnes及びSato(1980), Anal. Biochem. 102:255、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;又は同4560655号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;米国特許再発行第30985号;又は米国特許第5122469号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地は何れも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0109】
B.2 CD20抗体の結晶化
結晶化は小分子の精製に広く使用されている。しかしながら、一般に、タンパク質に対する、特に三次元抗体構造の適切な構築が特別な問題を提起する完全長抗体に対する結晶化条件を見出すことは非常に困難で、面倒である。結晶化に影響するパラメータは、例えば、溶解度、核形成及び生長速度、及び結晶サイズ分布を含み、各々が温度、pH、バッファー、不純物等の更なるパラメータの関数である。抗体は小分子又は小タンパク質又はより単純な構造のタンパク質より結晶化させるのが更に困難であるので、治療用抗体の回収及び精製は結晶化工程を滅多に含まない。
【0110】
B.3 CD20抗体の回収及び精製における結晶化の使用
本発明の方法において、結晶化はCD20抗体の回収及び精製のための一カラム又は二カラムスキームにおける重要な工程である。
例えばCHOのような哺乳動物細胞における組換え抗体の生産、回収及び精製のプロトコルは次の工程を含みうる:
細胞は撹拌タンクバイオリアクターシステムで培養することができ、流加培養法が用いられる。好ましい流加培養法では、哺乳動物宿主細胞及び培養培地が最初は培養容器に供給され、更なる培養栄養分が、連続的に又は離散的な増分で、培養中に培養物に供給され、培養の終了前に定期的な細胞及び/又は産物収集がなされるか又はなされない。流加培養法は、例えば、定期的に全培養物(細胞と培地を含む)が取り除かれ、新鮮培地によって置き換えられる半連続流加培養法を含みうる。流加培養法は、(細胞と全ての培養栄養分を含む)細胞培養のための全成分を培養プロセスの最初に培養容器に供給する単純なバッチ培養とは区別される。流加培養法は、上清がプロセス中に培養容器から除去されない限りにおいて、灌流培養とは更に区別できる(灌流培養では、細胞は、例えば濾過、封入、マイクロキャリアへの係留等によって培養中に拘束され、培養培地が連続的に又は間欠的に導入され、培養溶液から除去される)。
【0111】
更に、培養の細胞は、特定の宿主細胞及び考えられる特定の生産計画に適している任意のスキーム又は常套手段に従って増殖させることができる。従って、単一工程又は複数工程培養手順を用いることができる。単一工程培養では、宿主細胞が培養環境中に播種され、細胞培養の単一生産相の間にプロセスが用いられる。あるいは、多段階培養を使用することができる。多段階培養では、細胞は多くの工程又は相において培養されうる。例えば、細胞は、第一工程又は増殖相培養で増殖させることができ、ここで、おそらくは保存から取り除かれた細胞が増殖と高い生存性を促進するために適した培地中に播種される。細胞は、宿主細胞培養への新鮮培地の添加によって適切な期間の間、増殖相に維持されうる。
【0112】
ある実施態様では、流加又は連続細胞培養条件は、細胞培養の増殖相における哺乳動物細胞の増殖を亢進するために案出されうる。増殖相において、細胞は増殖に対して最大にされる条件下でその時間の間、増殖させられる。培養条件、例えば温度、pH、溶存酸素(dO)等は、特定の宿主で使用されるものであり、当業者には明らかであろう。一般に、pHは、酸(例えばCO)又は塩基(例えばNaCO又はNaOH)の何れかを使用して約6.5から7.5の間のレベルに調節される。CHO細胞のような哺乳動物細胞の培養に適した温度範囲は約30℃から38℃の間であり、適切なdOは空気飽和の5−90%である。
【0113】
特定の段階で、細胞を、細胞培養の生産相又は工程の接種に使用することができる。あるいは、上述のように、生産相又は工程は接種又は増殖相又は工程と連続的でありうる。
細胞培養の生産相における細胞培養環境は典型的には制御される。よって、糖タンパク質が生産されるならば、哺乳動物宿主細胞の細胞特異的生産性に影響を及ぼす因子は、所望のシアル酸含量が得られる糖タンパク質において達成されるように操作することができる。好ましい態様では、細胞培養プロセスの生産相には、細胞培養の生産相のパラメータが関与する細胞培養の遷移相が先行する。このプロセスの更なる詳細は、その全体の開示が出典明示によりここに明示的に援用される米国特許第5721121号、及びChaderjian等, Biotechnol. Prog. 21(2):550-3 (2005)に見出される。
【0114】
発酵後、タンパク質は精製される。細胞片からのタンパク質の精製の手順は最初はタンパク質の発現部位に依存する。あるタンパク質は細胞から回りの増殖培地中に直接分泌させられうる;他のものは細胞内に生産される。後者のタンパク質では、精製プロセスの最初の工程は細胞の溶解を含み、これは、機械的剪断、浸透圧ショック、又は酵素処理を含む様々な方法によってなすことができる。そのような破壊は細胞の全内容物をホモジネート中に放出し、加えてその小さいサイズのために除去が難しい細胞下断片をつくり出す。これらは一般に分画遠心法又は濾過によって除去される。小さい規模であるが、タンパク質生産の過程での細胞の自然死及び細胞内宿主細胞タンパク質及び成分の放出のために直接分泌されたタンパク質の場合にも同じ問題が生じる。
【0115】
対象のタンパク質を含む清澄な溶液がひとたび得られたら、細胞によって生産される他のタンパク質からのその分離は、通常、異なったクロマトグラフィー技術の組合せを使用して試みられる。これらの技術は、その電荷、疎水性の度合い、又はサイズに基づいてタンパク質の混合物を分離する。幾つかの異なったクロマトグラフィー樹脂をこれらの技術の各々に利用することができ、関連した特定のタンパク質に対して精製スキームを精確に誂えることが可能になる。これらの分離法の各々の本質は、タンパク質が長いカラムを異なった速度で移動させ、それらがカラムを更に通過するにつれて増加する物理的分離を達成するか、又は分離媒体に選択的に付着させた後、異なった溶媒によって差次的に溶離させうることである。ある場合には、所望のタンパク質は、不純物がカラムに特異的に付着し、対象のタンパク質が付着しないときに、不純物から分離され、つまり対象のタンパク質は「フロースルー」中に存在する。よって、哺乳動物宿主細胞の細胞培養物からの組換えタンパク質の精製は、一又は複数のアフィニティ(例えばプロテインA)及び/又はイオン交換クロマトグラフィー工程を含みうる。
【0116】
イオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質の精製に一般的に使用されるクロマトグラフィー技術である。イオン交換クロマトグラフィーでは、溶質の表面の荷電パッチが、回りのバッファーのイオン強度が低いとして、クロマトグラフィーマトリックスに結合した反対の電荷に引き寄せられる。溶離は、イオン交換マトリックスの荷電部位のついて溶質と競合させるためにバッファーのイオン強度(つまり、伝導率)を増加させることによって一般に達成される。pHを変化させ、それによって溶質の電荷を変更することは溶質の溶離を達成するための他の方法である。伝導率又はpHの変化は徐々である(勾配溶離)か又は段階的(段階溶離)でありうる。過去では、これらの変化は漸進的であった;つまりpH又は伝導率は単一の方向に増加又は減少させられる。
【0117】
治療用抗体の工業的精製の更なる詳細については、例えばその全開示が出典明示によりここに明示的に援用されるFahrner等, Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 18:301-27 (2001)を参照のこと。
CHO細胞培養物から抗体のような組換えタンパク質を精製するための典型的なプロトコルは、次の工程を含む:(1)プロテインAクロマトグラフィー、(2)カチオン交換クロマトグラフィー、(3)ウイルス濾過、(4)アニオン交換クロマトグラフィー及び(5)限外濾過−ダイアフィルトレーション(UFDF)。
プロテインAクロマトグラフィーは、CHO細胞タンパク質(CHOP)、CHO細胞DNA、ゲンタマイシン、インスリン、及び不活性なウイルス汚染物を除去する。
【0118】
カチオン交換クロマトグラフィーは、ヒスチジン、リジン及びアルギニンと樹脂の表面上の性質が酸性である荷電基との相互作用によって生体分子を保持する。カチオン交換樹脂は、例えばSigma Aldrichのような様々な製造者の製品品目から商業的に利用できる。カチオン交換輸送体は、例えばカルボキシメチル官能基(弱カチオン交換輸送体、例えばCMセルロース/SEPHADEX(登録商標)又はスルホン酸官能基(強カチオン交換輸送体、例えばSP SEPHADEX(登録商標))を担持する樹脂を含む。本発明の方法の第二クロマトグラフィー精製工程では、強カチオン交換カラム、例えばSP−SEPHADEX(登録商標)、SPECTRA/GEL(登録商標)強カチオン交換輸送体等、TSKゲル強カチオン交換輸送体等が好ましい。SP−SEPHAROSE(登録商標)カラムの場合には、不純物の大部分をカラムを通過させながら、負に荷電した官能基を有する架橋アガロースマトリックスがCD20抗体に結合する。溶離は、塩勾配溶離又は段階溶離を使用して実施できるが、収率を落とすことなく次の結晶化工程に対して良好な条件を提供するので、段階溶離が好ましい。溶離バッファーは通常塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを含み、塩濃度はカチオン交換カラムの要求に合致するように選択される。SP−SEPHAROSE(登録商標)カラムは結合したCD20タンパク質を除去するためにかなり高い塩濃度を必要とする一方、次の結晶化工程に対しては、タンパク質溶解度を低下させるために比較的低い塩濃度が好ましい。典型的には、約100−150mMのNaSO又は100−200mMのNaCl濃度が使用される。典型的な溶離バッファーは200mMのNaCl、50mMのHEPES、0.05%のトリトンX−100、1mMのDTT(pH7.5)からなる。カチオンクロマトグラフィーを残りのCHOP、浸出プロテインA、残りのCHO DNA、ゲンタマイシン、インスリン及び抗体凝集物を除去するために使用した。
【0119】
ウイルス濾過工程が高レベルのレトロウイルス排除をもたらす。
アニオン交換クロマトグラフィーは、正に荷電し、例えば一又は複数の正に荷電したリガンド、例えば第4級アミノ基がそれに結合した樹脂を用いる。商業的に入手可能なアニオン交換樹脂はDEAEセルロース、QAE SEPHADEX(登録商標)及びQセファロースFast Flow(登録商標)(GE Healthcare)を含む。アニオン交換工程はCHOP及びCHO DNA及びウイルス不純物の最終残留物を除去し、UFDF工程はQプールを濃縮し処方する。
【0120】
本発明は、伝統的な精製プロセスの一又は複数の工程が結晶化工程によって置き換えられる精製スキームを提供する。よって、例えば、プロテインA及び続くカチオン交換精製工程を、HCCFの濃縮後にCD20抗体の結晶化が続く工程によって置き換えることができる。結晶化工程はCHOP、CHO DNA、ゲンタマイシン及びインスリンを効果的に除去する。結晶化工程を含む方法では、CHOP及びCHO DNAレベルは、二つのクロマトグラフィー精製工程後の対応レベルよりも低い。また、プロテインAクロマトグラフィー工程が含まれないので、浸出プロテインAを除去する必要はなく、有意な節約になる。よって、組換え細胞培養物からCD20抗体を精製するためにここに記載された新規方法は、原料とプロセス工程の低減を生じ、CD20抗体の大規模生産に適した非常に効率的でスケールアップ可能な生成スキームを生じる。
実施例は哺乳動物(CHO)細胞培養物からの精製を例証しているが、同様のアプローチが、細菌、例えば大腸菌細胞からのCD20抗体の精製に適用できる。CD20抗体が大腸菌中で生産される場合、典型的には全細胞ブロスが収集され、ホモジナイズされて大腸菌細胞を壊して開け、細胞質内に抗体を放出する。例えば遠心分離によって固形細片を除去した後、混合物を、例えばSP−セファロースFast Flowカラム(Amersham Pharmacia, Sweden)のようなカチオン交換クロマトグラフィーカラムに充填する。
【0121】
典型的なプロトコルでは、大腸菌細胞の発酵によって得られる全細胞ブロスのpHが、例えばナトリウムHEPES又は任意の他の適切なバッファーの添加によって約7.5に調節される。細胞を市販のホモジナイザーに一又は複数回通過させることによって破裂させて開放し、細胞片を除去し、細胞可溶化物を清澄にする。特定の処理パラメータ、例えば試薬の選択及び濃度は、出発の全細胞ブロスの組成、例えば細胞密度に依存する。この場合、結晶化工程は、例えばSP−SEPHAROSE(登録商標)精製のようなカチオン交換に続くかも知れない。濃度は異なった温度で溶解度差を最大にするのに十分に高くなければならないが、室温又は室温近くで自然の結晶化を惹起するほど高過ぎてはいけない。
【0122】
結晶化が完了すると、CD20抗体結晶が例えば濾過によって除去される。結晶は、組み込み攪拌機を使用して濾過の間懸濁したまま維持され得、又は充填層に堆積させることができる。圧密化された結晶ケーキの形成を避けることが重要であり、これにより所望の流速を達成することが可能になる。流速は変動し得、典型的には約200cm/hrから約100cm/hrである。流速は使用される装置と濾過の間に加えられる圧力に依存しうる。濾過はバッチ式で又は連続的に実施されうる。
結晶化と分離の後に、抗CD20抗体結晶を再溶解し、保存され又は意図された用途に適した製剤に転化されうる。
あるいは、更なるクロマトグラフィー精製工程を加えて、抗溶媒(PEG)残留物及びバッファー成分を除去することにより純度を更に改善し、残留細胞外タンパク質、内毒素、二量体、及び凝集体のレベルを減少させることができる。
【0123】
要約すると、本発明のCD20結合抗体に対する精製方法は、HCCFを濃縮し、適切な条件下で抗体を結晶化し、得られた抗体結晶を除去洗浄し、抗体結晶を再溶解し、抗体溶液にクロマトグラフィー精製工程、例えばQ-Sepharoseクロマトグラフィーを施し、例えば限外濾過/ダイアフィルトレーションを使用して精製抗体を所望の製剤に交換する工程を含む。
【0124】
B.4 治療方法における精製抗体の使用
本発明の方法によって精製されるCD20結合抗体は、最先端の治療法として又は他の治療後に、又は第二治療剤と併用されて、同時に、連続的に又は交互のレジメンの何れかで、自己免疫疾患又はB細胞悪性腫瘍を治療し又は軽減するのに有用である。好ましい実施態様では、抗体は静脈内又は皮下的に投与される。
【0125】
CD20陽性B細胞悪性腫瘍を治療する方法は、結晶化を使用する本発明によって精製されたCD20抗体の治療的有効量を、悪性腫瘍を持つ患者に投与することを含む。特定の実施態様では、CD20抗体は表1に記載されたヒト化2H7抗体である。特定の実施態様では、B細胞悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(LPHD)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性リンパ球性リンパ腫(CLL)を含むB細胞リンパ腫又は白血病である。B細胞リンパ腫が非ホジキンリンパ腫(NHL)である場合、NHLには、限定されないが、濾胞性リンパ腫、再発性濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周辺帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、脾臓周辺帯リンパ腫、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫が含まれる。ある実施態様では、B細胞リンパ腫は、無痛性リンパ腫、侵襲性リンパ腫、及び高度に侵襲性リンパ腫からなる群から選択される。特定の実施態様では、ヒト化CD20結合抗体又はその機能的断片は、無痛性NHL、例えば再発性無痛性NHL及びリツキシマブ抵抗性無痛性NHLを治療するために使用される。
【0126】
ここでの「自己免疫性疾患」は、個体自身の組織又は器官又はその同時分離体又は徴候又はそれらから生じる症状から生じまたそれらに対する疾患又は障害である。これらの自己免疫性及び炎症性疾患の多くにおいて、限定するものではないが、高ガンマグロブリン血症、高レベルの自己抗体、組織中の抗原抗体複合体沈着、副腎皮質ステロイド又は免疫抑制性治療の利点、及び罹患した組織中のリンパ系細胞凝集塊を含む多くの臨床用及び研究用のマーカーが存在しうる。B細胞媒介性自己免疫性疾患に関して何か一つの理論に限定されるものではないが、B細胞は、自己抗体産生、免疫複合体形成、樹状及びT細胞活性化、サイトカイン合成、ケモカインの直接放出、及び異所性新リンパ形成に対しての病巣の提供を含む、多くの機構的な経路によりヒト自己免疫性疾患において病原性効果を示すことが考えられる。これらの経路の各々が、自己免疫性疾患の病状に異なった度合いで寄与しうる。
【0127】
「自己免疫性疾患」は、臓器特異的疾患(すなわち、免疫応答が、内分泌系、造血系、皮膚、循環器系、胃腸及び肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経系などといった臓器系に対して特異的である)又は複数の臓器系に影響しうる全身性疾患(例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、多発性筋炎など)でありうる。好ましい前記疾患には、自己免疫性リウマチ学疾患(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、強皮症、SLE及びループス腎炎などの狼瘡、多発性筋炎/皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、及び乾癬の関節炎など)、自己免疫性胃腸及び肝臓疾患(例えば、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病)、自己免疫性胃炎及び悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆管萎縮症、原発性硬化性胆管炎、及び小児脂肪便病など)、血管炎(例えば、チャング-シュトラウス血管炎、ウェゲナー肉芽腫症及び多発動脈炎を含むANCA陰性血管炎及びANCA関連血管炎)、自己免疫性神経学的疾患(例えば、多発性硬化症、眼球クローヌスミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び自己免疫性多発性神経炎など)、腎臓疾患(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、及びベルガー病など)、自己免疫性皮膚科疾患(例えば、乾癬、蕁麻疹、蕁麻疹、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、及び皮膚紅班性狼瘡など)、血液系疾患(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後の紫斑病、及び自己免疫溶血性貧血など)、アテローム性動脈硬化、ブドウ膜炎、自己免疫性聴覚疾患(例えば、内耳疾患及び聴力障害など)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植及び自己免疫性内分泌系疾患(例えば、インスリン依存型糖尿病(IDDM)などの糖尿病関連の自己免疫性疾患、アジソン病及び自己免疫性甲状腺疾患(例えばグレーブス病及び甲状腺炎)など)が含まれる。より好ましい前記疾患には、例えば、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、ANCA関連血管炎、狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎及び糸球体腎炎が含まれる。
【0128】
場合によって上記のものを包含するここで定義される他の自己免疫性疾患の特定の例には、限定されるものではないが、関節炎(急性及び慢性の関節リウマチ、例えば若年発症関節リウマチ及び段階、例えば関節リウマチ関節滑膜炎、痛風又は痛風性関節炎、急性の免疫学的な関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、II型コラーゲン誘導性の関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、スティル病、椎骨関節炎、骨関節炎、慢性関節炎プログレディエンテ、変形性関節炎、慢性多発性関節炎プリマリア、反応性関節炎、閉経期の関節炎、エストロゲン枯渇関節炎、及び強直性脊椎炎/リウマチ様脊椎炎)、自己免疫性リンパ系増殖性疾患、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬、アトピー、例えばアトピー性疾患、例えば花粉症及びジョブ症候群、皮膚炎、例えば接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、原発性刺激物接触皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎、x連鎖過剰IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例えば慢性自己免疫性蕁麻疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、全身性硬化症などの硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊髄視神経MS、原発性進行性MS(PPMS)、及び再発性寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、皮膚硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、胃腸炎症、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸炎潰瘍、顕微鏡的大腸炎、膠原性大腸炎、多発性大腸炎、壊死性全腸炎、及び経壁性大腸炎、及び自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎症、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば、成人又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、移植片対宿主病、遺伝性血管性浮腫などの血管性浮腫、髄膜炎の脳神経損傷、妊娠ヘルペス、妊娠性類天疱瘡、陰嚢掻痒、自己免疫性早期卵巣機能不全、自己免疫性症状による急性聴力損失、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例えば、慢性又は急性の糸球体腎炎、例えば原発性GN、免疫媒介性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN(RPGN)、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌不全、亀頭炎、例えば形質細胞限局性亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、薄板状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、妊娠前角化症、膿皮症壊疽、アレルギー性状態及び応答、食物アレルギー、薬剤アレルギー、昆虫アレルギー、希なアレルギー性疾患、例えば肥満細胞症、アレルギー性応答、湿疹、例えばアレルギー性又はアトピー性湿疹、乾皮性湿疹、異常発汗剤湿疹及び小胞の掌蹠湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、妊娠中の胎児のABO式血液型など外来性抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、ループス、例えばループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス及び円板状エリテマトーデス、脱毛症ループス、SLE、例えば皮膚SLE又は亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)及び紅班性狼瘡汎発、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例えば小児IDDM、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性大腸炎、糖尿病性大動脈疾患、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎(例えば大脈管脈管炎、例えばリウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎、中脈管脈管炎、例えば川崎病及び結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎、免疫血管炎、CNS血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎のような壊死性血管炎、ANCA陰性脈管炎、及びANCA関連脈管炎、例えばチャーグ-ストラウス症候群(CSS)、ウェゲナー肉芽腫症、及び顕微鏡的多発血管炎)、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例えば自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、例えば汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、単神経炎、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス-ジョンソン症候群、類天疱瘡又は天疱瘡、例えば水疱性類天疱瘡、瘢痕性(粘膜)類天疱瘡、皮膚類天疱瘡、尋常性天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡、及び天疱瘡エリテマトーデス、後天性表皮水疱症、眼炎症、好ましくは自己免疫誘導結膜炎症、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、自己免疫性状態による熱性損傷、子癇前症、免疫複合体疾患、例えば免疫複合体腎炎、抗体が媒介する腎炎、神経炎症性疾患、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、輸血後紫斑病(PTP)、ヘパリン誘発性血小板減少及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、強膜炎、例えば特発性のセラト強膜炎、上強膜炎、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、グレーブス眼症(眼疾患又は甲状腺眼症)、多腺性症候群、例えば自己免疫多腺性症候群、例えばタイプI(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例えば神経系新生物関連症候群、例えばランバート-イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)、及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、間質性肺炎、例えばリンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、急性発熱性好中性皮膚病、角層下膿疱症、一過性棘融解皮膚病、肝硬変、例えば原発性胆管萎縮症及び肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック又はコエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、例えば混合性クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病)、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、多発性軟骨炎、例えば抵抗性又は再発性又は再発する多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、角膜炎、例えばコーガン症候群/非梅毒性間質性角膜炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状ヘルペス関連疼痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び意義不明の単クローン性γグロブリン血症、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性又は分節性又は限局性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として、自己免疫脱髄性病及び慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、ドレスラー症候群、円形脱毛症、完全脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、例えば、抗精子抗体によるもの、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、寄生虫病、例としてリーシュマニア症、トリパノソーマ症、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間隙肺線維形成、間質性肺線維形成、繊維化縦隔炎、肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性又は慢性)又はFuchの毛様体炎、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウィルス感染、敗血症(全身性炎症反応症候群(SIRS))、内毒血症、膵炎、甲状腺炎(thyroxicosis)、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンス症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、慢性過敏性肺炎、結膜炎、例として、春季カタル、乾性角結膜炎、及び流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血-再灌流障害、移植臓器再灌流、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺性疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患(大脳血管性不足)、例として動脈硬化脳症及び動脈硬化症網膜症、アスペルマトジェネシス(aspermatogenesis)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、癩性結節性紅斑、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感音性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、
交感性眼炎(ophthalmia symphatica)、新生児眼球炎、視神経炎、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、ケルバン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、非悪性胸腺腫、リンパ濾胞性胸腺炎、白斑、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球-粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、自己免疫多腺性症候群、例えば多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋症、例えば拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、アレルギー性副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症-筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含む肉芽腫、アナフィラキシー、脊椎関節症、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブルトン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、例えば慢性関節リウマチ、リンパ節炎、血圧応答の減退、血管機能不全、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、虚血性再灌流障害、心筋又は他の組織の再灌流損傷、リンパ腫気管気管支炎、炎症性皮膚病、急性炎症性成分を有する皮膚病、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、ナルコレプシ、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症が含まれる。
【0129】
B.5 製剤
疾患の治療に使用するために、本発明の結晶化方法によって精製した2H7抗体を、静脈内投与のための約20mg/mlの抗体、20mMの酢酸ナトリウム、4%のトレハロース二水和物、0.02%のポリソルベート20,pH5.5を含有する液体製剤に調製することができる。約20mg/mlのヒト化2H7抗体を、20mMの酢酸ナトリウム、240mM(8%)のトレハロース二水和物,pH5.3、0.02%のポリソルベート20に含有する液体製剤もまた提供される。2H7抗体はまた約150mg/mlの抗体を30mMの酢酸ナトリウム,pH5.3、7%のトレハロース無水物、0.02%のポリソルベート20(Tween20(登録商標))に含有する製剤に皮下投与のために製剤化することもできる。
【0130】
本発明の更なる詳細は次の非限定的な実施例において提供される。
全ての特許、特許出願、刊行物、製品説明書、及びプロトコルがこの出願を通して引用され、その開示は全体が出典明示によりここに援用される。
【実施例】
【0131】
次の実施例は例証するためのものであって本発明を限定するものではない。実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション,マナッサス,バージニア州である。以下の実施例において、2H7は、別の記載がない限り、ヒト化2H7抗体変異体Aを意味する。
【0132】
実施例1
透析結晶化研究
1.2H7の透析結晶化に対するPBS濃度の影響
透析研究のための材料と方法
1.150mg/mlの2H7薬剤物質
2.Pierce Slide−Alyzer(登録商標)透析カセット,30kDaカットオフ
3.PBS 20X及び1X
4.1Lのガラスビーカー
【0133】
攪拌棒を有するガラスビーカーに1LのPBSを満たした。売主の指示書に従って、カセットを30秒PBSで予浸した後、18 1/2ゲージ針を使用して3mlの2H7を満たした。カセットをビーカーに浮かせ、上部をアルミホイルで覆った。実験の終わりに、カセットを取り除き、18 1/2ゲージのシリンジを用いて上清を除去した。ついで、カセットを膜の端に沿って切って開け、スパチュラを使用して残りの物質を膜フィルムから掻き取った。
20X及び1XのPBSを用いて0.1X、1X、10X及び20Xの溶液を作製した。150mg/mlのバルク抗体(2H7薬剤物質)を、各PBS濃度を含むビーカー中に透析した。全ての実験は37℃で実施した。
【0134】
2H7薬剤物質の組成(aka製剤バルク):
150mg/mlの2H7
30mMの酢酸ナトリウム,pH5.3
7%のトレハロース無水物
0.02%のポリソルベート20
【0135】
結果
表2は、20時間後の各カセットの視覚観察結果を示す。図1は20Xの場合の沈殿物を示す。観察のために顕微鏡スライドに配した物質は薄膜をつくり、顕微鏡で観察している間に乾燥して亀裂した(図2)。

【0136】
2.2H7の透析結晶化に対する温度の影響
先の実験に基づき、1XのPBSをこの研究に選択した。実験は、2−8℃の部屋、室温、及びインキュベータ環境をそれぞれ使用して4℃、24℃及び37℃で実施した。先の実験におけるように、結晶化は150mg/mlの2H7バルクを使用して実施した。
結果
表3は24時間の終わりでの顕微鏡観察を強調している。

【0137】
検討
最初に多量のタンパク質が溶液から出て、これが溶液のタンパク質濃度を減少させることが推定された。この低いタンパク質濃度で、ついで結晶が形成しうる。これは、24℃の条件の場合であるようであり、その場合、白色沈殿物の帯が結晶であると思われるものを有する半透明の層と同時に形成された。しかしながら、顕微鏡下では、結晶は粘性の高い不透明な白色沈殿物中に混合しており、分離できなかった。
【0138】
実施例2
PBSバッチ研究
実施例1に記載された透析研究後に、バッチ法でまた知られている直接混合による2H7の結晶化を、沈殿剤としてPBSを使用して研究した。実験は、透析実験で使用された3つの温度ポイントで低濃度の2H7をPBSと直接混合する際の反応を観察するように設計した。
【0139】
バッチ結晶化
全てのバッチ結晶化研究では、2H7 CD20抗体溶液を5ml管に加え、所望の温度で平衡化した。沈殿剤溶液(同じ温度)を管に加えて、混合物をLab Quake Tube振盪機で連続的に回転させた。実験終了時に(典型的には18+時間)、顕微鏡で試料を観察した。ついで、管を遠心分離した。上清を滅菌濾過し、抗体濃度を分析した。
【0140】
材料と方法
1. 150mg/mlの2H7バルク
2. トレハロース/Tweenなしの2H7バッファー
3. 20X及び1XのPBS
4. 5mlのFalcon管BD Falconポリスチレンチューブ
5. Pall Acrodisc 13mmシリンジフィルター0.2mm SuporメンブレンPall #4602
6. 5mlのシリンジ
7. Lab Quake Tube振盪機
8. 微量遠心管
9. 島津UV/VIS分光光度計
【0141】
2H7溶液を5ml管に加え、与えられた温度で平衡化した。同じ温度で所定量のPBSを5ml管に加え、混合物をLab Quake Tube振盪機で連続的に回転させた。実験終了時に、顕微鏡で試料を観察した。1mlの試料を5ml管から微量遠心管に移し、1000rpmで10分間、遠心分離した。ついで、上清をシリンジと13mmフィルターを使用して濾過し、別の微量遠心管に入れた。ついで、この溶液を従ってUV/VIS分析のために製剤バッファーで希釈した。
【0142】
1.3つの温度ポイントでの沈殿剤に対するタンパク質の比
150mg/mlの2H7を、30mMの酢酸ナトリウムバッファーを使用して、5−100mg/mlの範囲の濃度に希釈した。1XのPBSに対する2H7抗体溶液の比を変化させ、実験を4℃、24℃、及び37℃で実施した。結果を24時間にわたって観察した。
【0143】
結果
如何なる条件でも変化は観察されなかった。全ての管は清澄のままであった。
検討
より高濃度のPBSが直接混合の場合には必要となるかも知れない。
【0144】
2.3つの温度ポイントでの沈殿剤に対するタンパク質の比
20XのPBSをDI水で希釈して作製した10XのPBSを使用して先の実験を繰り返した。観察は4日目まで実施した。
【0145】
結果
結晶は全ての温度で見られた。それらは、表4に示すように、サイズと形状が大きく異なっていた。溶液中の最終2H7濃度によって分類された4日目の顕微鏡観察のまとめを表5に示す。


暗く影を付けた欄は非晶質の固形沈殿物が観察されたことを表している。空欄は変化がないことを表している。%値は結晶形成を生じた各条件に対する結晶化効率を示している。
24℃で生長させられた大きな「ヘイスタック状」結晶は図2に見られる。図3は37℃で見られる不規則な不均一結晶の例である。4℃で形成された小さい針状は図4に見られる。
【0146】
検討
結晶化は、管内の最終2H7濃度が<50mg/mlである場合、37℃条件で最もよく見られた。24℃では、大きなヘイスタック状結晶が6.65mg/mlとそれ以下で観察された。これらの結晶は大きかったが、結晶化効率は低かった。結果はまた2H7溶液に対するPBSの比(v/v)が余り重要ではないことを示している。従って、簡単にするために、これから後の実験では、2H7溶液に対するPBSの比を1:1(v/v)とすることを決めた。これから後の実験では、2H7がこの条件では広範囲の濃度で結晶化したので、温度は37℃に固定した。また、この温度によりプロセス設計における最も大なるフレキシビリティが達成される。
【0147】
実施例3
塩スクリーニング研究
塩スクリーニング研究の目的は、2H7結晶化を誘導するために使用できる他の塩を同定することであった。出発点は、PBSバッファーを構成する個々の塩を調べることであった。これらの後に、同様な性質を持つ他の塩を試験した。
【0148】
材料と方法
1. トリス−HCl
2. トリス−塩基
3. NaCl
4. NaSO
5. KCl
6. KSO
7. NaHPO
8. KHPO
9. 30nMの酢酸ナトリウムバッファー
10. 2H7薬剤物質
【0149】
100mlの1Mの原液を各塩に対して20mMのトリス−HClバッファー中で調製した。これらの原液を、20mMのトリス−HClを使用して各実験に対して所望の濃度に希釈した。最終塩濃度は、2H7溶液と組み合わせたとき1:1に希釈されたので、開始溶液の半分であった。2H7バルクの5つの濃度希釈物を、酢酸ナトリウムバッファーを使用して作製した。結晶化実験は、実施例2に記載されたバッチ研究と同じ手順を使用して37℃で行った。10XのPBSはポジティブコントロールとして実験し、20mMのトリス−HClバッファーはネガティブコントロールとして実験した。
【0150】
1.塩スクリーニング
500mMと1MをNaCl、Na2SO4、KCL及びKSOに対して作製した。
結果
ある程度の結晶化はKCl及びNaClで見られた。NaSOの場合は沈殿物と結晶の混合物をつくった。2H7の大部分が沈殿物として溶液から出た後に結晶化があったようであった。これは、10XのPBSでの透析実験で観察されたものと同様であった。KSOでは変化は見られなかった。10XのPBSの結晶の結晶形態は、タンパク質濃度と共に大きく変化した。針状と混合された大きい丸い結晶が高濃度で見られたが、低濃度では針状体が形成された(図5及び6)。
【0151】
2.リン酸塩スクリーニング
300mM及び1M溶液をKHPO及びNaHPOに対して作製した。
結果
結晶化は双方の塩を使用して観察された。NaHPO結晶は、図7に示す様に主として薄い針状であった。針状体の長さは2H7濃度に反比例した。新しいピーナッツ形状がKH2PO4塩で観察された(図8)。ピーナッツ状体の幾らかは大きな球状形態にクラスター形成さえされていた(図9)。この形状は、より厚く、おそらくはより堅牢であるので、典型的に見られる針状よりも好ましい。顕微鏡観察の結果は表6にまとめる。表7は、NaHPOの場合の結晶化効率がKHPO実験のものよりも更に低いことを示している。

上表中、暗い影の欄は結晶化がないことを表し、空欄は変化がないことを表している。グレーの欄は沈殿物と結晶の混合物を表している。AS=非晶質固形物。
【0152】

【0153】
検討
結晶化効率及び可能な2H7濃度の範囲に基づいて、結果は、最良の結晶化がKHPOとPBSで見られることを示唆している。1MのKHPOの条件は75と17.5mg/mlの間で>90%の結晶化を生じた。これらの結晶は、コントロールで見られる針状よりもより堅牢であると思われるピーナッツ状を有していた。コントロール、10XのPBSは主として薄い針状結晶をつくったが、結晶化は最も大きなタンパク質濃度範囲;75−5mg/mlにわたって観察された。PBS;KCl,NaHPO及びNaClの他の個々の成分は同様の結晶化特性を示さなかったが、これは予想されなかった。更なる研究では、PBSの最も大きな成分がNaClであり、これが最も低いレベルの結晶化特性を示していた。後の実験はPBS及びKHPO条件の双方を考察するために設計した。
【0154】
実施例4
トレハロース及びポリソルベートを伴う2H7及び伴わない2H7の比較
先の実験で使用された2H7は最終の2H7薬剤物質からのものであり、ポリソルベート(TWEEN(登録商標))20とトレハロースの双方を含んでいる。これらの成分が結晶化に交絡効果を有していると考えた。これらの成分の影響を研究するために、Q−Sepharoseクロマトグラフィーを通過させた2H7抗体のプールを濃縮した。このQ−プール(ここで、Q−はQ−Sepharoseを意味する)を、限外濾過(UF)を使用して濃縮した。最終のバルク物質とは異なり、TWEEN(登録商標)20及びトレハロースは製剤から離脱していた。Q−工程は典型的には最終のクロマトグラフィー工程であり、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)を経由した濃縮及び製剤化に先行する。ついで、濃縮されたQ−プール物質を、バルク製品と並べて比較した。
【0155】
材料と方法
1. 2H7バルク物質(2H7薬剤物質)
2. 169.7mg/mlの2H7濃縮Q−プール
3. 酢酸ナトリウムバッファー
バルク及び濃縮物質の双方を酢酸ナトリウムバッファーで希釈して、沈殿剤と1:1で組み合わせたとき、次の開始濃度を生じた。

バッチ研究で記載された方法(実施例1)を使用して、タンパク質を結晶化させた。
Q−Sepharoseプールの組成:
169.7mg/mlの2H7
20mMの酢酸ナトリウム,pH5.3
【0156】
1. 10XのPBSスクリーニング+/−TWEEN及びトレハロース
5つの濃度で双方のタイプの2H7を比較するために沈殿剤として10XのPBSを使用
結果

表8は、TWEEN及びトレハロースの存在下と不存在下の双方で見られる結晶化効率を明らかにしている。図10A−Hは各濃度に対する結晶形態を比較している。
【0157】
検討
TWEEN(登録商標)及びトレハロースの存在は結晶化効率に無視できる影響しか有していないと思われる。1.5mg/mlの濃度で結晶化が観察されたのは最初であった。 これは、トレハロース及びTWEEN(登録商標)を伴わない場合においてのみであった。4%だけが結晶化し、これは一回の実験であったので、TWEEN(登録商標)/トレハロースなしに2H7が低濃度でタンパク質を結晶化すると結論的に言うための十分な証拠はない。トレハロース/TWEEN(登録商標)は結晶のサイズ及び形態に有意な影響を有している。図10A−Hに見られるように、バルク2H7は全てのタンパク質濃度で大きな結晶を形成した。最も顕著なことには、5mg/mlで、長い.5mmの針状体がTWEEN(登録商標)/トレハロースの存在下で形成され、.05mmの微小針状体がTWEEN(登録商標)/トレハロースの不存在下で形成されている。
【0158】
2. KHPO結晶化+/−TWEEN(登録商標)及びトレハロース
1MのKHPO溶液を沈殿剤として用いて、5つの濃度で2H7の双方のタイプを比較した。結果を図11A−Eに示す。図11A−Eは結晶形態に対するTWEEN(登録商標)及びトレハロースの影響を捉える。以下の表9は、結晶化効率における差を示している。TWEEN(登録商標)及びトレハロースの存在は、結晶化効率に無視できる影響を有しているに過ぎなかったが、結晶のサイズと形態に対して顕著な影響を有している。37.5mg/mlでは、ピーナッツ状及び涙滴状結晶が2H7バルクで見られたが、TWEEN(登録商標)及びトレハロースがない場合には小さく、粉末状の不規則な結晶が生じた。沈殿は500mMのKHPO−75mg/lのトレハロースで見られた。
【0159】

【0160】
まとめ
この研究のデータから結論される知見は、TWEEN(登録商標)/トレハロースが結晶化効率に影響を及ぼさないということである(図12)。該データはまたTWEEN(登録商標)/トレハロースが結晶サイズ及び形態に影響を及ぼすことを示唆している。より大きくより一様な結晶は、KH2PO4及び10XのPBSの双方の場合においてTWEEN(登録商標)/トレハロースの存在下で観察された。最もありうることは、TWEEN(登録商標)がこの差異の原因であることである。トレハロースはバルク物質の凍結及び解凍中におけるタンパク質の低温貯蔵保護に使用される糖である。ポリソルベート20は抗体薬剤製剤の大半に加えられる非イオン性界面活性剤であり、これらの薬剤を変性及び凝集から保護するように作用する。このもののような非イオン性界面活性剤は、脂肪酸トリグリセリドから誘導される疎水性領域を含んでいる。疎水性相互作用によって推進される結晶格子の形成をTWEEN(登録商標)が助けることはありうる。結晶の形態及びサイズを、TWEEN(登録商標)又は他の界面活性剤を加えることによって操作することができることはありうる。
【0161】
実施例5
収集細胞培養液(HCCF)からの結晶化
この点まで、2H7バルク及び濃縮Q−プールは首尾良く結晶化された。これらの抗体供給源の双方が高度に精製されている。精製プロセスにおける一又は複数のクロマトグラフィー工程を削減するために結晶化を使用することの実行可能性を評価する目標を遂行するために、余り精製されていない材料からの2H7の結晶化を調べた。理想的には、2H7は収集細胞培養液(HCCF)から直接結晶化されるであろう。これは、細胞培養プロセスが終了し、細胞が遠心分離を介して分泌2H7を含む液から除去される後に精製プロセスに入る材料である。2H7をHCCFから結晶化させることができるならば、我々はプロセスの任意の工程でタンパク質を多分結晶化することができる。得られた2H7 HCCFは収集の時点で1.44mg/mlの力価を有していた。この濃度で精製された2H7の一貫した結晶化が見られなかった場合には、この材料の幾らかを、限外濾過(UF)を使用して濃縮した。この実験のための最少の作動体積は約500mlであり、我々はおよそ10Lの材料を有しており、よってHCCFの最大濃度に限定された。実際の応用では、10Xを更に越えるHCCFの濃度は操作時間のために望ましくないであろう。Q−プール及びバルク実験からの推定では、抗体がおよそ11Xまで濃縮されるならば、>60%の回収率を期待することができる。これらの理由から、10LのHCCFを15.5mg/mlまで濃縮した。
【0162】
材料と方法
1. 濃縮された2H7 HCCF
2. 2H7 HCCF
3. KHPO
4. PBS
凍結したHCCFを、解凍後に.2mmのフィルターに通して濾過した。HCCFの希釈物を、同じロットの濃縮HCCF及びストレートHCCFを使用して作製した。結晶化の同じバッチ研究法をこの研究で使用した。結晶化の終わりに、上清のタンパク質濃度を、Pro Sep Aクロマトグラフィーを使用して測定した。
【0163】
1. HCCF結晶化 概念的な実施の証拠
1M及び1.5MのKHPO溶液及び20X、15X、及び10XのPBS溶液を使用した。
全ての場合、HCCFは15.5mg/mlであった。
15.5mg/mlのQ−プールをコントロールとして使用した。
【0164】
結果
結晶化は、20X、15X及び10XのPBS及び双方の濃度のKHPOで観察された。より高いPBS濃度は、典型的な1Xの作動濃度に希釈していなかったPBSの原液から生じた。結晶形態及びサイズに顕著な差があった (図13A-H)。
【0165】
2. HCCF結晶化スクリーニング
15.5から1.44mg/mlとしたHCCF希釈
2M−200mMのKHPO溶液
20X−1XのPBS
結果
結晶化は5Xから20Xの範囲のPBS濃度と、1.5Mから1Mの間のKH2PO4濃度で観察された(表10)。
【0166】

【0167】
3. HCCF pHスクリーニング
15.5から1.44mg/mlとしたHCCF希釈
pH6、6.5、7、7.7及び8で調製した10XのPBS溶液。
pH6、6.5、7、7.7及び8で調製した500mMのKHPO
結果
2H7は6.0から8.0の範囲のpHに対して変化した度合いで結晶化する。10XのPBSで結晶化した最も大きな範囲の濃度はpH7においてであった(表11)。pH7では、0.77mg/ml、4.25、及び7.75mg/mlが結晶化したが、1.5mg/mlはしなかった。結晶化が0.77mg/mlで観察されたのはこれが最初であり、これは非濃縮HCCF液体であった。その濃度での結晶化効率は低く、29%で、この結果は繰り返すことができなかった。pH6.5での10XのPBSに対する低い収率と結晶化の範囲は、未調節のpHが6.7であるので、意外である。結晶化は、500mMのKHPOでは広範囲のpH値とタンパク質濃度に対して達成された。7.5及び8では、2H7は、1.5と7.75mg/mlの間の最も大きな範囲の濃度で結晶化した(表12を参照)。表13は、異なった濃度のPBS及びKHPOで観察された結晶形態を明らかにしている。
【0168】



【0169】
検討
二つの塩の総括的な結晶化効率を比較すると、KHPOが各pH値において一貫して高い収率を有している。最も高い値は7.5において見られ、そこでは、全ての濃度が>80%の収率を示し、2つの場合が>92%であった。これに対して、10XのPBSの場合の何れも84%より大きな収率を有していなかった。結晶化効率はタンパク質濃度と共に増加する。pHが増加した場合、500mMのKHPOが低い濃度で2H7を結晶化させるのに効果的であった。pH6では、結晶化は4.25mg/ml及びそれ以上でのみ見られた。pH7.5では、HCCFは、1Xの例外を除いて試験した全ての濃度で結晶化した。収率の減少で分かるように、pH7.5と8.0の間のどこかに効果のピークがあるように思われることはまた興味深い。
pHはまた結晶の形態に影響を有していた。PBSでは、針状体が、4.25及び7.75mg/mlの全てで見られたが、針の長さは低い濃度で一貫して大きかった。これは、低い濃度では、核形成が少なく、代わりに既存の結晶の生長及び延長化が大きいことを示唆している。多くの小さい結晶は、迅速な制御されていない結晶化プロセスの特徴である。KHPOの条件を調べると、pHが増加するにつれて、結晶の形態は針状体から不規則なクラスター及び球状体になった。
【0170】
まとめ
このHCCF結晶化研究では、濃縮された2H7が、2H7バルク及び濃縮Q−プール材料を結晶化すると同定されたものと同じ沈殿剤を使用してHCCFから直ぐに結晶化することが見出された。濃縮していないHCCFから2H7を一貫して結晶化させることはできなかった。バルク及び濃縮Q−プール材料の場合と同様に、2H7濃度が減少するにつれて、低い結晶化効率が見られた。沈殿剤のpHは、結晶化効率及び結晶化する2H7の濃度に有意な効果を有している。pH7.5での500mMのKHPOが最も広い範囲の2H7濃度に対して最も高い結晶の収率を示した。
HCCFからの2H7結晶の形態及びサイズが、濃縮Q−プールから得られたものよりも良好で、2H7バルクで見られた結晶に最も匹敵することがまた決定された。HCCF培地中のプルロニック68界面活性剤が、バルク材料中に見出されたポリソルベート20と同様な効果を有していることがまたありうる。結晶の形態はまた探求した沈殿剤のpH値の範囲にわたっても変動した。よって、pHは、下流のプロセシングに最も適した形態を達成するために操作することができるパラメータである。
【0171】
この研究から以降は、我々は専らKHPOを使用する。スケールアップの観点から、PBSに対する材料の要件はKHPOのものより更に大きい。PBSはまた製造に使用されるステンレス鋼のタンクと反応可能な高濃度でNaClを含んでいる。我々はまた概念スクリーニングのHCCF結晶化の証明とHCCF結晶化スクリーニングにおいて匹敵する結果を観察した。HCCFのpHスクリーニングにおいて、我々は、KHPOで、最も高い効率と、最も大きい範囲のpHフレキシビリティ及び形態を見出した。次の研究では、我々は、より正確なpH範囲及び結晶化プロセスの発達する相マップを調べることによって沈殿剤条件を最適化することを更に検討する。
【0172】
実施例6
収集細胞培養液(HCCF)法のためのプロセスパラメーターの更なる解析
2H7がHCCFから直ぐに結晶化することを決定した後、焦点をバルク及びQ−プール材料から、濃縮HCCFからの結晶化にシフトした。精製の観点からは、プロテインA精製工程(Pro−A)のような費用と時間がかかり労力が集中する上流のプロセスを結晶化と置き換えることが最も有用であろう。この研究の目標は沈殿剤の条件を更に洗練することである。
【0173】
材料と方法
KHPO
濃縮2H7 HCCF
pH最適化からの2H7 HCCF
7と8の間の6のポイントでの500mMのKHPO溶液
1.44mg−8.5mg/mlの2H7濃度
二組実施
【0174】
結果
結晶化は広範囲の濃度に対して観察された。最も高い結晶化効率は8.5mg/mlのHCCF 2H7濃度で見られた。

500mMのKHPOを使用するpHの関数としてのHCCF結晶化効率の模式図を図14に示す。
【0175】
検討
図14に見られるように、2.5mg/mlの2H7及びそれ以上では、pH7.6及び8.0の間の結晶化効率に殆ど差はない。pH7.5及び8の間の結晶化効率の最大及び減少はこの実験では観察されなかった。1.5mg/mlの濃度の2H7は7.0及び7.2では結晶化しなかった。pHが8.0まで増加すると、結晶化効率に有意な増加がまたあった。KHPOとHCCFが組み合わされた場合の各管中の最終のpHは、加えられたKHPO溶液のものより一貫して0.2−0.3少なかった。
【0176】
まとめ
これらの実験に基づくと、CCFからの結晶化では、KH2PO4の最適なpHは7.8+/−0.2であり、塩の最適な濃度は1Mである。しかしながら、データが示すように、他のpH及び濃度もまた作用する。
【0177】
実施例7
溶解研究
先の実施例に記載された研究から、結晶の沈殿と核形成が観察される領域が決定された。ここでは、我々は、新しい結晶形成をもはや生じないが代わりに結晶生長が見られる準安定な領域を決定する。このために、我々は結晶が溶液に再び溶解し始める条件を決定する。溶解性研究は、KHPO pH及び濃度の因子を決定し、2H7に対する結晶化相マップを完成する溶解度曲線を開発することを目的とする。
【0178】
材料と方法
1. 2H7濃縮HCCF
2. 2H7 HCCF
3. KHPO
大きなバッチ法を使用して結晶を調製した。管からの上清を、卓上吸引器を使用して除去した。pH7.2のおよそ50mlのKHPOをファルコン管に加え、これをついで振盪して塩溶液に結晶を再懸濁させた。ついで、この混合物を再び遠心分離し、この上清を新鮮なKHPOと交換した。このプロセスは2X繰り返した。
KHPO中の第三の再懸濁後に、2mlのこの混合物を5mlのファルコン管に配した。該管を一回遠心分離し、上清を吸引し、所望の条件で2mlのKHPOと置き換えた。
これらの管をローテータに配し、18+時間放置した。この時間の終わりに、およそ1mlの混合物を、微量遠心管中に13mmフィルターを持つシリンジによって濾過した。溶液中のタンパク質濃度を、Pro A分析を使用して測定した。
【0179】
1. KHPO濃度溶解研究
.150Mから1.5Mの範囲の7.8のKHPO溶液
水をコントロール条件として使用
1時間と18時間で濃度を測定
4℃、室温24℃、及び37℃
結果
溶解度曲線を図15−17に示す。
検討
結晶が750mM及びそれ以下で溶液に再溶解したことが見出された。これは、4℃でインキュベートし、26.7%が1時間以内に溶解する場合に最も速い速度で生じると思われる。これは、結晶化がより高い温度で最適であるという我々の理解と一致している。24℃と37℃の溶解速度と割合の間に殆ど差はないと思われる。
【0180】
実施例8
結晶化工程を含む濃縮HCCFから出発する精製
先の実験に基づいて、結晶化単位操作の基本工程、つまり、濃縮、結晶化、線上及び溶解を、二つのクロマトグラフィー工程に置き換えることができる。この実施例では、出発材料は濃縮HCCFであり、これはこの新しい2H7精製プロセスを通して流される。ついで、生成物純度及び品質データを集め、伝統的な精製プロセスと比較する。
【0181】
材料と方法
1. 濃縮2H7 HCCF
2. 1MのKH2PO4
3. 250mlフラスコ
4. Q−Sepharoseバッファー
5. Q−Sepharoseカラム
6. Centriprep
15.g mg/mlでの70mlの2H7 HCCFを、大バッチ法を使用して、750mlのKH2PO4を用いて250mlのフラスコ中で結晶化させた。結晶を洗浄し、最適化プロセスを使用して、Q−プールバッファー中に溶解させた。試料を採った。与えられたプロセス条件でQ−Sepharoseカラムを使用して精製された2H7プールと試料を採った。Q−プールを、Centri−prepを使用して濃縮し、試料を採った。試料を力価CHOPレベル及び凝集体について分析した。
【0182】
結果
我々は少量の材料(<1L)を濃縮しているので、centriprepを使用して抗体を濃縮した。1Lより大きい体積では、卓上TFFを使用することができる。UF/DFは一般に最終生成物の純度と品質に殆ど影響を持たないので、centriprepは許容可能な代替手段と見られた。

【0183】
まとめ
該プロセスは2H7の精製に成功した。CHOPレベルは標準的なプロセスの範囲内であった。凝集体レベルは現在のプロセスにおいてよりも高かったが、それらは2H7に対する分析証明書の範囲内であった。つまり、少なくとも部分的には、凝集体を除去するためのSP−SEPHAROSE(登録商標)工程を除く。凝集体を除去するためにQ−SEPHAROSE(登録商標)工程を最適化することが可能である場合もある。より多くの凝集体はまた2H7 HCCFの濃縮のための剪断速度によるものでありうる。UFを凝集体に対する影響について研究する。
【0184】
実施例9
hu 2H7変異体Hの結晶化に対するリン酸カリウム濃度の影響
精製された2H7変異体Hを用いて試験を実施して、2H7変異体Aと同様な条件(表1を参照)でそれが結晶化するかどうかを調べた。
材料と方法
1. 23mg/mlの2H7変異体H無条件バルク(濃縮されダイアフィルトレーションされたがトレハロース又はTween(商標)が添加されなかった材料)
2. 1Mのリン酸カリウム,pH7.8
3. 精製水
水とリン酸カリウムを混合して0−1.0Mの一連のリン酸塩濃度を作製した。無条件バルクと共にこれらを37℃に加熱した後、1:1で混合し、24時間混合しながら37℃でインキュベートした。ついで、試料を遠心分離し、上清を、2H7変異体H濃度についてアッセイした。
結果

検討
この実験は、2H7変異体Aに対して発見された条件が2H7変異体Hに適用可能であることを確認した。2H7変異体Hは変異体Aと同様な結晶化挙動を示したが、pH7.8において250mMのリン酸カリウムの場合のみおよそ100%の結晶化効率を達成した。
【0185】
実施例10
変異体Cの結晶化に対するリン酸カリウム濃度の影響
精製された変異体Cを用いて試験を実施して、2H7変異体Aと同様な条件でそれが結晶化するかどうかを調べた。
材料と方法
1. 25.3mg/mlの変異体C無条件バルク(濃縮されダイアフィルトレーションされたがトレハロース又はTweenが添加されなかった材料)
2. 1Mのリン酸カリウム,pH7.8
3. 精製水
水とリン酸カリウムを混合して0−1.0Mの一連のリン酸塩濃度を作製した。無条件バルクと共にこれらを37℃に加熱した後、1:1で混合し、24時間混合しながら37℃でインキュベートした。ついで、試料を遠心分離し、上清を、変異体C濃度についてアッセイした。
結果

検討
この実験は、2H7変異体Aに対して発見された条件が変異体Cに適用可能であることを確認した。変異体Cは変異体Aと同様な結晶化挙動を示したが、pH7.8において300mMのリン酸カリウムの場合のみおよそ100%の結晶化効率を達成した。
【0186】
実施例11
濃縮HCCFからの変異体Cの結晶化に対するリン酸カリウム濃度及びpHの影響
変異体C濃縮HCCFを用いて試験を実施して、変異体Cの結晶化及びその結果の精製に対するpH及びリン酸塩濃度の影響を決定した。
材料と方法
1. 13.8mg/mlの変異体C濃縮HCCF,1.8×10ng/mgの宿主細胞タンパク質
2. 1Mのリン酸カリウム,pH3,pH4,pH5,pH6,pH7,pH8
3. 精製水
水とリン酸カリウムを37℃で濃縮HCCFに添加して、0.2から0.5Mのリン酸塩濃度での一連の結晶化実験を作製した。これらは2グループで行い、変異体C濃度を各々において一様に保ち、よって各グループの最も高いリン酸塩濃度がそのグループの最終の希釈率を決めた。混合し、24時間を越えてインキュベーションした後、試料を遠心分離し、上清を残留変異体Cについて測定した。最初のグループからの試料に対して、結晶を溶解させ、変異体C及び宿主細胞タンパク質濃度を測定して結晶化後の純度を評価した。

【0187】
検討
2H7変異体Aと同様に、結晶化を誘導するのに必要とされるリン酸塩濃度はpHの増加と共に減少する。pH5では、使用されるリン酸塩濃度でほんの少しの結晶化が観察されただけであった。pH3及び4では、変異体Cは結晶化するよりむしろ沈殿した。沈殿は、それが混合時に瞬時に生じ、生成した固形物が沈まず、再溶解され得ない点で結晶化と異なる。宿主細胞タンパク質のレベルは全ての場合において出発材料の0.2%未満まで低減させられ、これは、結晶化が有効な精製ツールであることを示している。
【0188】
実施例12
HCCFからの変異体Cの精製への結晶化の応用
高いpHでの結晶化を誘導したリン酸カリウム濃度でpH5において変異体Cが結晶化しなかったので、0.4Mのリン酸カリウムpH5.0を用いたダイアフィルトレーションを初期HCCP濃縮工程中に導入した。ついで、結晶化は濃縮HCCFをpH7.8に調節することによって誘導した。
【0189】
材料と方法
1. 1.8mg/mlの変異体C HCCF
2. 0.4Mのリン酸カリウム,pH5
3. Millipore限外濾過装置
変異体C HCCFの10Lのアリコートを限外濾過によって〜10倍に濃縮した。ついで、それを5ダイアボリュームの0.4Mのリン酸カリウム(pH5.0)を用いてダイアフィルトレーションした。濃縮した変異体C HCCFを系から回収し、37℃に調節し、ついでpH7.8にした。試料を穏やかに撹拌しながら37℃で46時間インキュベートしたところで、結晶を遠心分離によって回収した。結晶の各バッチを、0.4Mのリン酸カリウム(pH8)で2回洗浄した後、25mmトリス(pH8)に溶解した。完全な溶解を達成するには結晶プールをpH5.5に調節しなければならなかった。
【0190】
結果

【0191】
検討
上記の結晶化手順は、出発の変異体C HCCFから宿主細胞タンパク質の99%を取り除いた。76%の収率は標準的な抗体プロセスに匹敵する。抗体溶液に結晶化溶液を直接添加するよりも結晶化溶液にダイアフィルトレーションにより抗体を結晶化することにより、結晶化中の抗体濃度を高く維持することが可能になる。ダイアフィルトレーションは、二つの機能を達成する−それは、HCCF溶液を同時に濃縮しながら、異なったバッファー中への交換方法(この場合は、HCCFから所望の塩及びpHを有する結晶化バッファー中へ)である。結晶化の終わりでの可溶性抗体の濃度は開始濃度に依存しないので、より高い抗体濃度で開始することで潜在的な収率を増加させる。ダイアフィルトレーションによる結晶化バッファー中への交換は、結晶化剤の要求される濃度が薬剤の溶解限度に近い場合に特に有用である。例えば、抗体溶液を濃縮リン酸カリウムで希釈することによってリン酸カリウムの溶解度で結晶化を行うことは不可能であろうが、これはダイアフィルトレーションによって達成可能である。
【0192】
結論
我々は、ヒト化モノクローナル抗体の2H7及びその変異体を結晶化することができることを証明した。結晶化は、KHPOの存在下で増加した温度(4−40C)で最適であることが決定された。2H7は、濃縮され、精製された場副、濃縮Q−プール及び濃縮HCCFから結晶化された。プロセス条件を最適化することによって、90%を越える結晶化効率を濃縮HCCFから達成することができた。高レベルの純度のため、HCCF結晶化は、最も長く最も高価なクロマトグラフィー工程であるプロテインAクロマトグラフィーとSP−SEPHAROSEクロマトグラフィーに取って代わることができる。これは、1グラムの2H7を精製することによって直接証明された。最終製品は伝統的なプロセスで見られる製品に匹敵した。よって、結晶化は2H7とその変異体を精製するための実行可能なプロセス工程である。
【0193】
実験は特定のCD20抗体、つまりヒト化2H7抗体変異体で実施したが、このアプローチは、限定するものではないが、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、及びここに特に開示された2H7変異体を含む他のCD20抗体を結晶化するために等しく適している。
【0194】
ここに例証的に記載された発明は、ここに特に開示されていない何れの要素、限定もない状体で好適に実施することができる。よって、例えば、「含有する(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等の用語は広く限定しないで読み取られなければならない。また、ここで用いられる用語及び表現は、限定するものではなく、説明の用語として使用されているもので、かかる用語及び表現を示された発明又はその一部の如何なる均等物も排除するように使用する意図はなく、請求項記載の発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。よって、本発明は好適な実施態様によって特に開示されたけれども、ここに具現化した発明の任意の特徴、変更及び変形は当業者によって容易になされ得、かかる変更及び変形もここに開示された発明の範囲内であるとみなされることが理解されなければならない。発明はここでは広く上位概念的に記載されている。その上位概念的開示内に入るより狭い種及び下位概念グループのそれぞれもまたこれらの発明の一部を形成している。これは、除去される材料が特に記載されているかどうかにかかわらず、上位概念から任意の主題事項を取り除くことを許容する仮定又は否定的限定を各発明の上位概念的記載内に含む。加えて、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、当業者はマーカッシュ群のメンバーの個々のメンバー又はサブメンバーによっても発明がまた記載されていると認識するであろう。更に、例えば「配列番号1から配列番号100」のように、発明のある態様への参照が、個々のメンバーの範囲を列挙している場合、その列挙のあらゆるメンバーを個々に列挙しているのと同等であることが意図され、またあらゆる個々のメンバーが請求項に個々に含められ又は排除されうることが理解されなければならない。
【0195】
ここでの発明の記載から、様々な均等物を用いて本発明の概念をその範囲から逸脱しないで実施することができることは明らかである。更に、本発明はある実施態様を特に参照して記載されているが、当業者は、発明の精神及び範囲から逸脱することのない形及び詳細で変更を行うことができることを認識するであろう。記載された実施態様はあらゆる点で説明のためのものであり限定のものではないと考えられる。発明はここに記載の実施態様に限定されず、発明の範囲を逸脱しないで多くの均等物、再構成物、変更及び置換が可能であることがまた理解されなければならない。よって、更なる実施態様が本発明の範囲内及び次の特許請求の範囲にある。ここで言及された全ての米国特許、特許出願;外国特許及び特許出願;科学文献;書物;及び刊行物は、あたかも各個々の特許又は刊行物が、完全に記載されているように図面、図表を含み、特にかつ個々に出典明示により援用されるべきことが示されているかの如く、その全体が出典明示によりここに援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物からCD20抗体を精製する方法であって、CD20抗体を結晶化し、上記混合物からCD20抗体を回収することを含む方法。
【請求項2】
上記混合物には事前の凍結乾燥が施されていない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記混合物がCD20抗体を生産する組換え細胞培養の濃縮された収集細胞培養液(HCCF)である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞培養が哺乳動物細胞培養である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
精製が、プロテインA精製工程がない状態で実施される請求項4に記載の方法。
【請求項7】
精製が、カチオン交換クロマトグラフィー工程がない状態で実施される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
精製がウイルス濾過工程とアニオン交換クロマトグラフィー工程を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項9】
(a)CD20抗体を結晶化させ、(b)CD20抗体結晶をバッファーに溶解させ、(c)工程(b)から得られた溶液にアニオン交換クロマトグラフィーを施し、(d)アニオン交換クロマトグラフィーから得られた溶離液を濃縮する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物細胞の濃縮された収集細胞培養液(HCCF)からCD20抗体を精製する方法であって、(a)HCCFを濃縮し、(b)CD20抗体を結晶化させ、(c)CD20結晶を溶解させてCD20溶液を得、(d)CD20溶液にアニオン交換カラムでの精製を施し、(e)CD20抗体を単離する工程を含む方法。
【請求項11】
CD20抗体が2H7抗体である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CD20抗体が、表1に列挙された2H7 CD20抗体変異体A−Iからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
それぞれ配列番号1及び2;配列番号3及び4;並びに配列表3及び5のVL及びVH対を有する、表1に列挙された2H7 CD20抗体変異体A、C及びHからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
HCCFが約1.5mg/mlかそれより多いCD20抗体濃度まで濃縮される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
結晶化が約6.0から約8.0のpHで実施される請求項10に記載の方法。
【請求項16】
結晶化が7.8+/−0.2のpHで実施される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結晶化が約4℃から約40℃の温度で実施される請求項10に記載の方法。
【請求項18】
結晶化が約37℃の温度で実施される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
結晶化が、PBS、NaCl、NaSO、KCl、KSO、NaHPO、及びKHPOからなる群から選択される一又は複数の沈殿剤によって誘導される請求項10に記載の方法。
【請求項20】
沈殿剤がKHPOである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物細胞の濃縮された収集細胞培養液(HCCF)からCD20抗体を精製する方法であって、(a)HCCFを濃縮し、(b)結晶化を阻害するpHにて高塩濃度でHCCFを透析し、(c)pHを高めることによってCD20抗体を結晶化させ、(d)CD20抗体結晶を溶解させてCD20抗体溶液を得、(e)CD20抗体溶液にアニオン交換カラムでの精製を施し、(f)得られた精製CD20抗体を単離する工程を含む方法。
【請求項22】
CD20抗体が、表1に列挙された2H7 CD20抗体変異体A−Iからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
それぞれ配列番号1及び2;配列番号3及び4;並びに配列表3及び5のVL及びVH対を有する、表1に列挙された2H7 CD20抗体変異体A、C及びHからなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
CD20抗体の結晶。
【請求項25】
微小針状、針状、球状又は球状ピーナッツ状形態を有している請求項24に記載の結晶。
【請求項26】
請求項24に記載の結晶を含んでなる組成物。
【請求項27】
一又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含有する薬学的組成物である請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
CD20関連症状又は疾患の治療方法において、請求項1又は請求項21に記載の方法によって精製されたCD20抗体の有効量を哺乳動物患者に投与することを含む方法。

【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【公表番号】特表2011−507870(P2011−507870A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539708(P2010−539708)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/087008
【国際公開番号】WO2009/085765
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】