説明

抗CD71モノクローナル抗体および悪性腫瘍細胞を治療するためのその使用

本発明は、ADCCメカニズムを誘発するためのエフェクター細胞と有利に会合した新規な抗CD71モノクローナル抗体、特にマウス−ヒトキメラ抗CD71モノクローナル抗体を提供するものである。抗CD71抗体は、それらを含有する薬学的組成物と同様に、悪性腫瘍細胞、特に転移性の皮膚黒色腫細胞およびブドウ膜黒色腫細胞の増殖を阻害し、かつ/またはそれらを死滅させるのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADCCメカニズムを誘発するためのエフェクター細胞と有利に会合した新規な抗CD71モノクローナル抗体、特にマウス−ヒトキメラ抗CD71モノクローナル抗体を提供するものである。抗CD71抗体は、それらを含有する薬学的組成物と同様に、悪性腫瘍細胞、特に転移性の皮膚黒色腫細胞およびブドウ膜黒色腫細胞の増殖を阻害し、かつ/またはそれらを死滅させるのに有用である。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体は、腫瘍標的細胞に直接的に作用するいくつかのメカニズムにより、および/または可溶性の因子または細胞により媒介されるエフェクターメカニズムの活性化により、腫瘍細胞の生存に影響をおよぼし得る。当初、抗体はマウス由来のものであり、そしてヒトに投与されると、外来のマウス免疫グロブリンに対して強力な免疫応答を誘導した。このことは、それらの使用を制限するものであった。遺伝子操作により、治療効果の増大したいわゆるヒト化抗体の開発が可能になった。
【0003】
キメラ抗体は、65〜90%がヒトヌクレオチド配列であり、そしてヒト抗体の定常部またはエフェクター部に融合された、抗原認識をもたらすマウスの可変領域から成る。ヒト化抗体は約95%がヒトであり、そして、抗体の特異性を決定する、マウス抗体の超可変領域または相補性決定領域のみをヒト抗体の骨格上にグラフトすることにより作製される。遺伝子操作したトランスジェニックマウスの開発および合成ヒト抗体ライブラリーの作成における進歩により、商業規模での完全ヒト抗体の産生が可能となった。
【0004】
キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体は初期の抗体構築物よりも低い免疫原性を有し、そして、抗体投与の反復、細胞傷害性細胞および補体を動員する能力の改善、ならびに循環系における安定性の増大を可能にする。これらの改善は、モノクローナル抗体の治療効果の増大に寄与している。小さな抗体断片もまた、大きい無血管性腫瘍、特に固形腫瘍中への抗体の通過を改善するために操作されている。一本鎖の固定された可変(Fv)領域は一つの重鎖可変ドメインおよび一つの軽鎖可変ドメインのみから成り、これらは短いペプチドリンカーにより共有結合されている。これらの断片は、放射性同位体または薬剤を腫瘍部位に送達するために用いられ得る。二つの異なる抗原結合アームを有し、それゆえ二重結合特異性を有する抗体も設計されている。一例は、一方のアームが腫瘍細胞と結合し、他方がエフェクター細胞と結合する場合である。別の例は、アームが、腫瘍細胞上の二つの異なる抗原とだけでなく、自身のFc断片によりエフェクター細胞とも結合する場合である。これらの構築物は、宿主の免疫エフェクター細胞(T細胞、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージ)の動員を通じて、抗体媒介性の腫瘍細胞の死滅を増大させる。
【0005】
モノクローナル抗体により認識される多くの抗原は、悪性細胞だけでなく、健常な成人細胞の少なくとも一つのサブセットによっても発現される。モノクローナル抗体(mAb)療法のための最良の標的抗原は、全ての腫瘍細胞により安定的かつ均一的に発現されるものであり、正常組織により発現されないかまたはほとんど発現されず、(迅速な抗体のクリアランスを回避するため)可溶性型では存在せず、そしてモノクローナル抗体に容易にアクセス可能であるものである。
【0006】
非標識抗体は、1)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)による、エフェクター細胞の動員および活性化、2)受容体−リガンド相互作用の遮断および増殖因子活性の阻止、3)アポトーシスの誘導、ならびに4)サイトカインの分泌という、異なるメカニズムの組合せを通じて、腫瘍細胞を死亡させるかまたはそれらの増殖を停止させる。
【0007】
いくつかの抗体はそれ自体によっては細胞死を誘導せず、代わりに、放射性同位体、毒素、酵素または薬剤を腫瘍部位に送達するために用いられる。腫瘍細胞に対する細胞傷害性作用物質の特異的ターゲティングは、全身投与の用量制限をもたらす副作用を伴うことなく、腫瘍部位で高濃度に到達させる能力を有する。この場合、迅速に内在化される抗原を標的とする抗体は別の利点を提供する。
【0008】
放射免疫複合体は、腫瘍部位に放射物を選択的に送達する。放射性核種に関しては、例えばMX−DTPA、CHX−A’’DPA、C−DOTA、PA−DOTA、DOTA−NCS(2−p−イソチオシアナトベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸)といった改良型キレート化技術を有利に用いて、例えばI131またはY90、ならびに新規のβ(212Pb、混合βγ 177Lu、153Sm、186Re、67Cu、225Ac・・・)またはα(213Bi、211At・・・)放射体を用い得る。細胞傷害性は、抗体の局在化および放射性核種の残留の薬物動態に依存している。強力な放射エネルギーのため、健常組織、特に骨髄も照射される。
【0009】
植物毒素および細菌毒素(例えばリシン、ジフテリア毒素またはシュードモナス毒素)のアルファ鎖は、モノクローナル抗体に直接付着され得る。細胞への結合および細胞内への内在化の後、これらの毒素は低濃度でタンパク質合成を破壊する。これらの毒素はまた一般にヒトにおいて強い免疫応答を引き出し、それによりこれらの反復使用が制限される。
【0010】
ドキソルビシンおよびカリケアマイシンといった薬剤は、モノクローナル抗体に直接付着され得る。カリケアマイシンの抗体媒介性送達により、逆にそれ自体では全身投与には非常に有毒であるこの非常に強力な作用物質の臨床使用が可能になる。
【0011】
これらの様相を再検討するには、M. Harris(2004)およびCancer Highlights(2004)を参照されたい。
【0012】
CD71は、Cys89位においてジスルフィド結合により連結した180kDaのホモ二量体として存在するII型糖タンパク質である。この糖タンパク質は、プロテインキナーゼCによりシステイン62でアシル化され、そしてセリン24でリン酸化される。それは、テトラペプチドYTRF(20〜23番アミノ酸)により構成される内在化シグナルを含有する(Collawn et al, 1993)。未知のプロテアーゼによりArg100とLeu101との間が切断されると、CD71は可溶性になる。Thr104でのO−グリコシル化は、切断に対するCD71の感受性を低減する。哺乳類およびニワトリのトランスフェリン受容体はRGD配列を有し、このことは、接着分子との進化的な関連の可能性を示唆する。配列相同性に関しては、C5a連鎖球菌ペプチダーゼ配列との、そしてPSA配列(前立腺特異的ではないがII型酸性ジペプチダーゼ活性を示す、前立腺特異抗原)との相同性が存在する。CD71のリガンドは、鉄の輸送に関与するタンパク質であるトランスフェリンである。近年、CD71はIgAの受容体でもあるということが示されている(Haddad et al, 2003)。
【0013】
トランスフェリン鉄は中性pH下でCD71と結合し、そしてpHが約5のエンドソーム区画中に内在化する。鉄は放出され、未知のメカニズムにより細胞質中に運び込まれる。アポトランスフェリンはpH5ではCD71に結合したままであり、pHが約7.4である細胞表面に戻る。中性pH条件下ではアポトランスフェリンはもはやCD71に対する親和性を有さず、したがって別のサイクルを開始させる。CD71のこの特徴は、抗体に結合した薬剤、毒素または放射性元素を内在化させるためにこの表面分子を用いることを可能にする(Lee et al,2000)(Li et al,2002)(Ng et al,2002)(Shinohara et al,2000)。CD71は、非共有結合によりTCRのζ鎖とシスで結合するが、この場合、それはシグナル伝達に関与し得る。さらにCD71単量体は、ジスルフィド結合によりインテグリンCD29/CD49d(VLA4)と複合体を形成すると推定される。
【0014】
CD71は、いくつかの代謝経路において不可欠である鉄の取り込みを制御することにより、細胞増殖において不可欠な役割を果たす。これは、トランスフェリンとの結合およびそのエンドサイトーシスにより起こるものである。CD71の発現は、RNAの安定性を通じて転写後調節され、それは、鉄の細胞内レベルにも依存している。IRE−BP(鉄応答性エレメント結合タンパク質)は、二つの異なる形態、即ちIRP−1およびIRP−2で存在する。IRP−1はミトコンドリアのアコニターゼに類似しており、一方、IRP−2に関しては未だアコニターゼ活性は報告されていないが、しかしながらこれは構造的にアコニターゼと相同である。鉄が欠乏している場合、IRP−1およびIRP−2はIRE(RNAの非翻訳3’領域に位置する鉄応答性エレメント)と呼ばれる特定の配列と結合することによりCD71のRNAを安定化する。鉄のレベルが高い場合、IREに対するIRE−BPの親和性は低く、そしてRNAは分解に対してより感受性がある。さらに、酸化窒素は、IRE−BPの結合を活性化することにより、そしてRNAを安定化することにより、CD71の発現を変化させる。
【0015】
CD71は、白血球および静止細胞ではほぼ検出不可能である。この発現は、細胞の活性化および増殖により上向き調節される。これらの理由から、CD71は多数の腫瘍を治療するための選択の対象であると思われる。それにもかかわらず、赤血球系では、赤血球前駆体および網状赤血球はCD71を発現する。これは、赤血球生成および神経発達の両方に影響をおよぼす重篤な表現型を有する、CD71トランスフェリン受容体を欠くマウスからも推定される(Levy et al.,1999)。これは、Larrick J.W.およびHyman E.S(1984年)により、後天性鉄欠乏性貧血の場合のヒトにおいても示された。一方、このことは、幹細胞がCD71を発現しないことを示し、抗CD71抗体が抗腫瘍療法に有用であり得ることを裏付けている(Zech et al,2003)。その上、CD71は脳内皮で発現し、そしてこれは、特に神経膠腫を治療するために、薬剤の脳血管関門の通過を可能にする(Lee et al,2001)。最後に、この最後の特性は、所定の状況下で有害である場合、クロロキンの同時投与により阻害され得る。
【0016】
転移性黒色腫は予後が非常に不良な腫瘍であり、その出現率は、現代の生活スタイルのため、そして日光への長期に渡る、繰り返しの、そして無防備な曝露のために、増大しつつある。フランスでは年に少なくとも約6000の新規の症例が報告されており、出現率はパリおよびその地域における居住者100,000人当たり9人である。これらの症例の3分の1は、対象が40歳未満である場合に生じる。予後は最初の腫瘍の深さに密接に関連し、そして転移性黒色腫の症例の約100%で死亡に至る。20余年前から、従来の、またはより革新的な種々の療法が試験されてきたが、それらによっては予後は変化せず、転移性黒色腫の致死という結果も変わらなかった。腫瘍抗原および自己反応性CTLの同定を含む、より良好な一般的知識にも関わらず、免疫療法は依然として上手くいっていない。免疫療法は、腫瘍細胞のワクチン接種に、四量体会合ペプチド、アジュバント、サイトカインまたは樹状細胞を種々の方法で伴わせてきたが、しかし依然として有効ではない。このことは少なくとも部分的には、宿主の免疫不全により説明され得る(Ugurel S,2004)。ガングリオシドGD2、GD3、GM2、p97メラノトランスフェリン、高分子量のp240抗原に対する抗体といった、黒色腫に限定される抗原を標的とするモノクローナル抗体が用いられてきた(Noronha EJ,1998)。臨床試験により、これらの抗体が最小限の毒性で投与され得ることが示されている。それにもかかわらず、今日まで、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体も含め(Mills L,2002)、単独で、または毒素(Shinohara H,2000)、化学療法、GM−CFS等の増殖因子、IL2インターロイキン(Soiffer RJ,1997)、TNF、もしくはインターフェロンと組合せて、実際に効果を示すことが立証された抗体はない。
【0017】
さらに特定的には、脈絡膜黒色腫および皮膚黒色腫はともに、神経堤由来である。転移性脈絡膜黒色腫に罹患する人はほとんどいない。これらの黒色腫は、播種の様式、および転移により罹患する器官という二つの点で互いに異なる。したがって、転移性脈絡膜黒色腫の播種は、血行性のみによる。90%を超える症例において、第一転移部位(しばしば唯一の)は肝臓である。他の腫瘍局在を発症する患者はほとんどおらず、その大多数が広範な肝臓転移の診断がされた6ヶ月後に腫瘍巣が原因で死亡する。皮膚黒色腫は、播種が血行性およびリンパ性の両方であるために、非常に可変的で予測不可能な進展の様式を示す。他の器官も影響を受け得るが、脳に対するより特異的な向性が存在する。これら二つの黒色腫の診断は大部分が限局段階で行われる。したがって、付随する治療は局所的なものであり、それは、脈絡膜黒色腫のための外科的行為または放射線療法、そして皮膚黒色腫のための外科的行為から成る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のように、外科処置および放射線療法以外の、アジュバント治療の一部として適用される、または転移性疾患のために適用される従来の治療方法は、効果という点で非常に限定されるということに注目すべきである。さらに、長期入院を要するこれらの治療は、痛みを伴い、楽ではなく、そしてその多くは費用がかかる。したがって、従来の治療の他に、免疫療法といった革新的なアプローチを開発する必要があると思われる。局所的治療(外科処置、化学療法および放射線療法)の他の治療方法は、転移性脈絡膜黒色腫に関しては存在せず、そして転移性皮膚黒色腫に関しては非常に限定される。したがって、転移性黒色腫に罹患した患者の生存を増大させるためには、新規のアプローチが開発されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
図1:抗CD71 mAb BA120gにより誘導される、黒色腫細胞株A375の増殖の阻害の動態
A375黒色腫細胞株から得た10個の細胞を、96平底組織培養プレートのウェルに、抗体および10%ウシ胎仔血清を含有する0.1mlのRPMI1640の存在下で0日目に分配した。CD101に対する5μgの精製モノクローナル抗体「BB27」、またはCD2に対する「O275」、またはCD71に対する「BA120g」を培養開始時に三組のウェルに添加し、2、3または4日後、培養の最後の16時間に、1mCiのH[Tdr]で細胞をパルスした。液体シンチレーションカウンターを用いてH[Tdr]の取り込みを測定した。
【0020】
図2:25μg/mLの抗CD71モノクローナル抗体Ba120gの、腫瘍細胞株の増殖に対するin vitroでの阻害効果
用いた細胞株は、三つの黒色腫細胞株A375、M74およびDauv1、赤白血病細胞株K562、T細胞白血病細胞株Jurkat、HTLV1+細胞株C8166、ならびに髄芽細胞腫細胞株Devであった。培養は三回実施した。細胞を、5μgの精製BA120gまたはコントロールCD2 mAbの存在下で4日間増殖させ、次に培養の最後の16時間、1mCiのH[TdR]でパルスした。BA120gでの取り込みのレベルに対する、アイソタイプが一致する無関連な抗体での取り込みのコントロールレベルの間の割合を求めることにより、阻害%を算定した。コントロールcpmは、A375に関しては287,989、M74に関しては44,740、Dauv1に関しては108,389、K562に関しては70,519、Jurkatに関しては10,655、C8166に関しては74,292、そしてDevに関しては179,220であった。
【0021】
図3:A375細胞の増殖に対する抗CD71 mAbの影響
CD2に対する精製mAb「O275」、またはCD71に対する「BA120g」および「CY1G4」、ならびに抗体なし(Ab)を、培養開始時に25μg/mLで0.2ml添加した。1000個の細胞の培養を三回実施した。細胞を、5μgの精製BA120gまたはコントロールCD2 mAbの存在下で4日間増殖させ、次に培養の最後の16時間、1mCiのH[TdR]でパルスした。
【0022】
図4から図8:ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列
−図4:マウス抗CD71抗体BA120gの重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)およびヌクレオチド配列(配列番号3)。
−図5:ヒトガンマ1免疫グロブリンの重鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号5)およびヌクレオチド配列(配列番号7)。
−図6Aおよび図6B:マウス抗CD71抗体BA120gの択一的な軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号2、配列番号11)およびヌクレオチド配列(配列番号4、配列番号12)。
−図7:ヒトカッパ免疫グロブリンの軽鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号6)およびヌクレオチド配列(配列番号8)。
−図8:ヒトガンマ4免疫グロブリンの重鎖の定常領域のアミノ酸配列(配列番号9)およびヌクレオチド配列(配列番号10)(GENBANK、n°BC025985)。
【0023】
第一の様相において、本発明は、配列番号1の少なくとも一つの重鎖およびその配列が配列番号2と配列番号11から選択される少なくとも一つの軽鎖を含む少なくとも一つの可変領域を含む、抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片に関するものである。
【0024】
「抗体」という用語は、その抗体、消化断片、特定部分、および変異体を含むものとし、その中には、抗体様物質が含まれるか、あるいは、抗体またはその特定断片もしくは特定部分の構造および/または機能を模倣する抗体の部分、例えば一本鎖抗体およびその断片が含まれる。
【0025】
「機能的断片」としては、CD71受容体と結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、CD71と結合し得る抗体断片またはその部分、例えば、これらに限定されないが、Fab(例えばパパイン消化による)、Fab’(例えばペプシン消化および部分的還元による)およびF(ab’)(例えばペプシン消化による)、facb(例えばプラスミン消化による)、pFc’(例えばペプシンまたはプラスミン消化による)、Fd(例えばペプシン消化、部分的還元および再凝集による)、FvまたはscFv(例えば分子生物学的手法による)断片が本発明に包含される。
【0026】
このような断片は、当該技術分野で既知であるような、および/または本明細書中に記載されるような、酵素切断、合成または組換え技術により産生され得る。抗体は、一つまたは複数の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を用いることで、種々の切断型形態でも産生され得る。例えばF(ab’)重鎖部分をコードする組合せ遺伝子は、重鎖のCHドメインおよび/またはヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計され得る。抗体の種々の部分は、従来の技術により化学的に共に連結されるか、あるいは遺伝子操作技術を用いて連続したタンパク質として調製され得る。
【0027】
別の実施態様によれば、抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片は、配列番号3によりコードされる少なくとも一つの重鎖および配列番号4と配列番号12から選択される配列によりコードされる少なくとも一つの軽鎖を含む、少なくとも一つの可変領域を含む。
【0028】
抗体は、好ましくはBA120と呼ばれるハイブリドーマ細胞株により産生され、CNCM I−3449の番号で、2005年6月14日にCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(パスツール研究所、パリ、フランス)に寄託されている。
【0029】
第二の様相では、本発明は、本明細書中に記載されるような少なくとも一つの抗CD71モノクローナル抗体と特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体またはその機能的断片に関するものである。
【0030】
したがって、本明細書中に記載されるようなモノクローナルまたはキメラ抗CD71抗体に加えて、本発明は、本発明のこのような抗体に特異的な抗イディオタイプ(抗Id)抗体に関するものでもある。抗Id抗体は、一般的に別の抗体の抗原結合領域と関連する独自の決定基を認識する抗体である。抗Idは、Id抗体の供給源として同一の種および遺伝子型の動物(例えばマウス系統)を抗体またはそのCDR含有領域で免疫付与することにより調製され得る。免疫付与された動物は、免疫付与した抗体のイディオタイプ決定基を認識してそれに反応し、抗Id抗体を産生する。抗Id抗体は、さらに別の動物において免疫応答を誘導するための「免疫原」としても用いられ、いわゆる抗抗Id抗体を産生し得る。
【0031】
第三の様相では、本発明は、配列番号1の少なくとも一つの重鎖およびその配列が配列番号2と配列番号11から選択される少なくとも一つの軽鎖を含む可変領域を含む、マウス−ヒトキメラ抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片に関するものである。
【0032】
「マウス−ヒトキメラ抗体」とは、本明細書中では、可変領域がマウス由来であり、一方、定常領域がヒト由来である抗体を意味する。このようなキメラ抗体を産生する多数の方法が現在まで報告されており、したがって当業者の一般的知識の一部を構成している。
【0033】
別の実施態様によれば、マウス−ヒトキメラ抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片は、配列番号3によりコードされる少なくとも一つの重鎖および配列番号4と配列番号12から選択される配列によりコードされる少なくとも一つの軽鎖を含む可変領域を含む。
【0034】
さらに別の実施態様では、キメラ抗体またはその機能的断片は、
−配列番号5と配列番号9から選択される配列の少なくとも一つの重鎖、および/または
−配列番号6の少なくとも一つの軽鎖
を含む定常領域をさらに含む。
【0035】
さらに別の実施態様では、キメラ抗体またはその機能的断片は、
−配列番号7と配列番号10から選択される配列によりコードされる少なくとも一つの重鎖、および/または
−配列番号8によりコードされる少なくとも一つの軽鎖
を含む定常領域をさらに含む。
【0036】
第四の様相によれば、本発明は、本明細書中に記載される抗CD71モノクローナル抗体と生物活性分子との間の結合生成物に関するものである。
【0037】
このような生物活性分子は、以下から選択され得る。
A)金属
金属は、放射性同位体および非放射性金属、例えばNMRに有用なガドリニウムから選択される。好ましくは、金属は、
−ガンマ放射体(例えばI131)、
−ベータ放射体(例えばY90、Lu177)、
−アルファ放射体(例えばBi212、Bi213、Ac225、At211
のような放射性同位体である。
治療または診断目的に用いられる主要な放射性同位体は、アクチニウム225、アクチニウム227、砒素72(PET画像診断)、アスタチン211、ビスマス212および213、臭素75(PET画像診断)、臭素77、コバルト55(PET画像診断)、銅61(PET画像診断)、銅64(PET画像診断および処理)、銅67(PET画像診断)、ヨウ素123(PET画像診断)、ヨウ素131、ルテチウム177(PET画像診断および処理)、オスミウム194、ラドン223、レニウム186、ルテニウム105、テルビウム149、タリウム228および229、イットリウム90および91である。
これらの同位体は、抗体と直接的に、あるいは、大環状分子、DTA、DTPAといったキレート化剤を通じて間接的に連結され得る。
いずれの場合も、抗体と同位体との結合、あるいは抗体とキレート化剤/同位体との結合は、直接的であり得るか、またはリンカーを介した間接的なものであり得る。
【0038】
B)毒素または細胞毒
ジフテリア毒素(A鎖)、シュードモナス外毒素、リシン(A鎖)、アブリン、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスペプチド(PAP)、トリカテクム(tricathecum)、およびその機能的断片といった、種々の毒性分子が用いられ得る。
ここでも、結合は直接的であるか、またはリンカーを介したものであり得る。
【0039】
C)薬剤
適切な薬剤は、細胞傷害性および/または細胞溶解性である。例として、インターフェロン、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、タキソール、タキソテール、ナベルビン、アドリアマイシン等が挙げられる。
薬剤は、直接的にまたはリンカーを介して用いられ得る。
【0040】
D)製剤(galenic)ベクター
これは、抗体輸送、半減期、細胞通過、治療効果等を改善するために興味深いものである。
種々のベクターが用いられ得る(リポソーム、ナノ粒子、ポリマー、陽イオン性エマルション、陰イオン性エマルション、中性エマルション、デンドライトーマ(dendritomas)等)。
有利には、製剤ベクターは、放射性同位体、薬剤、毒素、核酸、特にアンチセンスRNAといった別の生物活性分子を運びうる。
さらにまた、結合はリンカーを介して直接的または間接的であり得る。
【0041】
E)所定の細胞型と結合し得る生体分子
例としては、認識特異性を問わない抗体、二重特異性抗体、組換えタンパク質が挙げられる。
ここでの目的は、少なくとも二重特異性分子を得ることである。
【0042】
F)酵素
例としては、RNアーゼが挙げられる。
【0043】
G)核酸
抗体は、アンチセンスRNAといった核酸または合成オリゴヌクレオチドと、直接的にまたは非直接的に結合され得る。
【0044】
H)ビオチン型、ストレプトアビジン型、またはアビジン型分子
このような分子は、抗体の結合特異性を改善するのに興味深いものである。
【0045】
より詳細には、本発明の結合生成物は、
−ベータ−、アルファ−またはガンマ−放射性同位体、
−リシン型またはアブリン型分子の毒性のA鎖およびジフテリア毒素のA鎖といった毒素またはその機能的断片、
−メトトレキサート、マイトマイシン、アドリアマイシンといった細胞溶解性薬剤、
−有利にはアンチセンスRNAを含む、リポソームベクターおよび陽イオン性エマルションといった製剤ベクター、
−二重特異性分子を得るための、抗体または組換えタンパク質といった、所定の細胞型と結合し得る生体分子、
−RNアーゼ、
−アンチセンスRNA、
−ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジン
から選択される生物活性分子を組み込む。
【0046】
いくつかの実施態様では、結合生成物は、リンカー、好ましくはC5〜C15リンカーを含んでおり、結合生成物が例えばエステラーゼプロドラッグと接触すると生物活性分子が放出される。
【0047】
第五の様相によれば、本発明は、
−本明細書中に記載される少なくとも一つの抗CD71モノクローナル抗体、またはその少なくとも一つの機能的断片、あるいは
−上記のような少なくとも一つの結合生成物、
ならびに薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物に関するものである。
【0048】
好ましい一つの実施態様では、本発明の薬学的組成物はさらに、抗体に対するFc受容体を発現するかまたは発現する能力を有し、そして標的細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)反応を媒介し得る、ヒト白血球エフェクター細胞を含む。
【0049】
この点で、上記のヒト白血球エフェクター細胞は有利には、リンパ球、単球、マクロファージ、NK細胞、顆粒球、好酸球、および肥満細胞から選択され得る。
【0050】
本発明の第六の様相は、悪性腫瘍細胞の増殖を阻害し、かつ/または悪性腫瘍細胞を死滅させる方法であって、それを必要とする患者に、
−上記のような抗CD71モノクローナル抗体もしくはその機能的断片、またはこのような断片を含む構築物、
−上記のような結合生成物、および
−上記のような薬学的組成物
から選択される少なくとも一つの物質を、前記物質が悪性腫瘍細胞に結合するための条件下および十分な量で提供し、それにより悪性腫瘍細胞の増殖の阻害および/または死滅を引き起こすことを包含する方法に関するものである。
【0051】
「抗体断片を含む構築物」という用語は、前記断片をコードするポリヌクレオチド配列の生成物、ならびにアルブミン、オボアルブミンといった安定化機能または輸送機能を有するポリペプチドまたはその断片を意味する。また該用語は、抗体または抗体断片を、アジュバント、および/または、リポソーム、陽イオン性小胞もしくはエマルジョンもしくはナノ粒子といった、前記抗体の輸送および/もしくは安定性を確実にする分子もしくは構造体と組合せた複合体も意味し得る。さらに該用語は、アジュバント、ならびに/または分子の輸送および/もしくは安定化を確実にする分子もしくは構造体と結合した、上記のような配列の生成物の組合せを意味する。
【0052】
本発明に包含される治療方法は、原発性の腫瘍または癌に対するものを含むが、しかし有利には転移を治療するのに有用なものである。一例として、悪性腫瘍細胞を阻害するかまたは死滅させる方法は、患者の悪性腫瘍細胞にモノクローナル抗体または結合断片が結合するために十分な条件下で、患者に一つまたは複数の上記の物質を投与することを包含する。腫瘍細胞への抗体またはそれらの結合断片の結合は、患者の免疫細胞による細胞の阻害または死滅を誘導する。
【0053】
このような抗体媒介性治療または療法は、腫瘍細胞または癌細胞を対象とする他の治療、例えば放射線療法、化学療法等を、ならびに上記の一つまたは複数の治療/療法手順によってオプソニン化した癌細胞または腫瘍細胞に対する免疫系の攻撃を増強するための補助的療法を伴い得る。
【0054】
さらに特定的には、ヒト白血球エフェクター細胞をさらに含む上記のような薬学的組成物を用いる場合、前記ヒト白血球エフェクター細胞は、悪性腫瘍細胞の増殖の阻害および/または死滅を必要とする前記患者の自家細胞または同種細胞である。事実上、細胞は血球成分除去により、そしていくつかの場合には水簸により、患者またはドナーから得られる。それらは、物質による処理の後、あるいはサイトカイン(IL2など)または増殖因子(GM−CSFおよびIL4)の存在下での短期間の培養の後、あるいは凍結(自己血輸血の場合など)の後に、新たに注入して戻される。
【0055】
一つの実施態様においては、前記悪性腫瘍細胞は、固形腫瘍の細胞から選択される。これらの細胞は、例えば転移性皮膚黒色腫、転移性ブドウ膜黒色腫、神経膠芽腫、腎細胞癌、肝細胞癌(HCC)、卵巣腺癌、膵臓腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳腺癌、結腸直腸腺癌、血液悪性腫瘍の細胞である。好ましくは、悪性腫瘍細胞は、転移性皮膚黒色腫または転移性ブドウ膜黒色腫の細胞である。
【0056】
有利には、上記の方法はさらに、前記提供の前に、前記悪性腫瘍細胞における細胞内トランスフェリンレベルおよび/または細胞内鉄レベルを激減させる工程を包含する。例えば細胞内鉄レベルは、デフェロキサミンまたはフェリチンを用いて激減され得る。
【0057】
さらに、本発明の方法では、上記のような物質はさらに、調節性T細胞との結合により、前記患者における免疫応答を増強し得る。実際、CD71は調節性T細胞により発現されるため、調節性T細胞に抗CD71モノクローナル抗体が結合することで、調節性T細胞による免疫応答の抑制を阻害することが可能である。
【0058】
さらにまた、上記で言及されたような物質は、1)胎児の有核赤血球を同定することにより胎児病を診断し、胎児の赤血球を分類するため、2)トランスフェリン受容体/フェリチンの割合を調べることにより、貧血患者における貧血のタイプを確定するため、3)増殖中の細胞を伴う微小転移を同定し、それらを分類するために用いられ得る。
【0059】
さらに、それらの物質は、自家移植のためのGM−CSFの注射後に得られる末梢血CD34+幹細胞から増殖中の細胞をパージするためにex vivoで用いられ得る。それはまた、臍帯血または骨髄の活性化細胞を枯渇させるためにも用いられ得る。さらにそれは、静止T reg細胞がCD71を発現しない一方CD25を発現するため、活性化した/増殖中の細胞を枯渇させるために抗CD25 mAbの代わりに用いられ得る。
【0060】
前記の物質は、1)ATLおよびHTLV1+T細胞白血病を治療するため、2)脳血管関門を越えて薬剤または別の抗体(二重特異性mAb中にまたはアビジン融合タンパク質中に組み込まれる可能性がある)を送達するために、in vivoでも用いられ得る。
【0061】
第七の様相によれば、本発明は、配列番号3、4および12で示される一つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子に関するものである。前記配列は、それぞれマウス抗CD71抗体の可変領域の重鎖および軽鎖をコードする。
【0062】
本発明の第八の様相は、上記のような核酸分子を含む発現ベクターに関するものである。
【0063】
第九の様相は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞または宿主生物に関するものである。
【0064】
第十の様相では、本発明は、上記のようなキメラ抗体を産生する方法であって、
a)本発明の少なくとも一つの発現ベクターで適切な宿主細胞を形質転換する工程、
b)前記宿主細胞を、発現を促進する条件下で培養する工程、
c)培養培地から集合したキメラ抗体を精製する工程
を包含する方法に関する。
【0065】
別の実施態様によれば、本発明のキメラ抗体を産生する方法は、
a)(i)上記の核酸分子、ならびに
(ii)ヒトガンマ免疫グロブリンの定常領域の重鎖または軽鎖をコードする、配列番号7、8および10で示される一つまたは複数のヌクレオチド配列
を含む、少なくとも一つの発現ベクターで適切な宿主細胞を形質転換する工程、
b)前記宿主細胞を、発現を促進する条件下で培養する工程、そして
c)培養培地から集合したキメラ抗体を精製する工程
を包含する。
【0066】
本発明の第十一の様相は、本明細書中に開示される抗CD71モノクローナル抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドに関するものである。
【0067】
本発明の第十二の様相によれば、本発明は、それを必要とする患者においてex vivoでCD71陽性細胞を枯渇させる方法であって、
a)CD71陽性細胞を含有すると思われる前記患者の生体サンプルを、
−本発明の抗CD71モノクローナル抗体もしくはその機能的断片、またはこのような断片を含む構築物、
−本明細書中に開示される結合生成物、および
−上記のような薬学的組成物
から選択される少なくとも一つの物質と接触させること、
b)前記物質と前記生体サンプル中に含有されるCD71陽性細胞との間で形成される複合体を除去すること、そして
c)「パージされた」生体サンプルを回収すること
を包含する方法に関するものである。
【0068】
好ましくは、本発明の方法はさらに、前記「パージされた」生体サンプルを前記患者に戻す工程を包含する。
【0069】
一つの実施態様では、前記生体サンプルは、骨髄サンプル、CD34+細胞で濃縮された血液、臍帯血の多能性幹細胞、幹細胞から選択される。
【0070】
別の実施態様では、前記患者は、例えば自家骨髄または同種骨髄などによる移植を受けているか、あるいは移植を必要としている。あるいは前記患者は癌を有し、例えば、該患者は、高線量の放射線療法または化学療法を受けた後に悪性増殖性細胞が枯渇した自家CD34+幹細胞の移植を必要とする。さらに別の場合には、前記患者は、自己免疫疾患および神経免疫疾患から選択される疾患を有し得る。
【0071】
第十三の様相によれば、本発明は、癌を有する患者における免疫応答を増強する方法であって、
−上記のような抗CD71モノクローナル抗体もしくはその機能的断片、またはこのような断片を含む構築物、
−上記のような結合生成物、ならびに
−本明細書中に開示されるような薬学的組成物
から選択される少なくとも一つの物質を、前記物質が調節性T細胞と結合するための条件下および十分な量で前記患者に提供し、それにより前記調節性T細胞による前記免疫応答の抑制を阻害することを包含する方法に関する。
【0072】
特に、このような物質、特に抗CD71モノクローナル抗体は、免疫療法/ワクチンアジュバントとして有用である。
【0073】
一つの実施態様では、患者は、黒色腫、特に皮膚黒色腫もしくはブドウ膜黒色腫、または卵巣癌または肝臓癌を有する。
【0074】
本発明の他の実施態様および利点は、以下の非限定的な実施例において示される。
【実施例】
【0075】
I 材料および方法
【0076】
I−1 mAbの産生および精製
ヒト胸腺T細胞クローン(BA120g。BA120とも呼ばれ、CNCM I−3449、CY1G4、BB27の番号で、2005年6月14日にCNCMに寄託された)、または以前に記載された胸腺細胞(O275)(Boumsell L. et al,1980)でBALB/cマウスまたはBiozzi高応答性マウスを免疫付与することにより、mAbを得た。記載されたように、NS1を用いて細胞融合を実行した(Gouttefangeas C. et al.,1992)。
【0077】
スクリーニングを二段階で実施した。間接免疫蛍光染色およびフローサイトメトリー分析の後、免疫付与細胞と反応しているすべてのハイブリドーマ上清を保存した。さらに、活性化した細胞と高強度で反応するが静止細胞とは反応しない上清を保存した。選択mAbを含有する培養物は、限界希釈によって二回クローニングされた。プリスタンまたは不完全フロイントアジュバントで初回免疫したBalb/cマウスまたはヌードマウスから腹水を採取した。腹水をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、プロテインGカラム上で精製し、そして限外濾過により滅菌し、そしてさらに指示濃度で利用した。ELISAアイソタイピングキットで判定したところ、BA120g、O275およびBB27はIgG1アイソタイプ、CY1G4は、IgG2aアイソタイプ、そしてIVG42はIgG2bアイソタイプに属する。O275は、免疫沈降および組織分布によりCD2を認識することが示されたが、一方、BB27はCD101を認識する。これらの抗体は、IgG1アイソタイプに属するためネガティブコントロールとして選択されたが、CD2分子およびCD101分子はメラノサイト細胞株で欠けており、CD2はNK細胞により発現され単球によっては発現されない一方で、CD101は単球のみにより発現される。
【0078】
I−2 細胞および細胞株
ヒトPMNCをFicoll−Hipaque(F/H)密度勾配遠心分離により調製した。単核球を、インフォームドコンセント後に健常なボランティアから得た。単球、NK細胞またはT細胞を、メーカー(Stem cell technologies、グルノーブル、フランス)の指示に従って、適切な幹細胞ロゼット分離枯渇系を用いて単離した。
【0079】
ヒト黒色腫細胞株A375、M74およびDauv1ならびに他の細胞株の培養物を、37℃、5%CO下のインキュベーター内の10%FCSおよび抗生物質を含有するRPMI1640中で、対数増殖で維持した。A375、M74およびDauv1を、それらがアポトーシスに対する感受性の種々のレベルを表すことが予め示されていたため選択した。要するに、Dauv 1およびM74はIFNγの存在下でFasのみに対して感受性であり、TNF、抗FasおよびTrailに対して耐性である。逆に、A375は、IFNγのみを除いて、すべての上記シグナルに感受性である。
【0080】
接着細胞株は標準的なトリプシン処理(0.02mMグルコース/PBS中の0.5mg/mlトリプシン)により回収した。すべての細胞培養物をマイコプラズマ汚染について検査した。
【0081】
用いた培養中の他の細胞株は、Dev(髄芽細胞腫)、Jurkat(T細胞白血病株)、C8166(HTLV1+細胞株)およびK562(赤白血病)であった。
【0082】
I−3 免疫蛍光染色およびフローサイトメトリー
間接免疫蛍光を、Qifiquit(DakoCytomation、トラップ、フランス)で提供されたFITC結合抗マウスIgGを用いて、精製mAbにより実施した。以前に記載されたように、シングルレーザーXLアナライザーEpics(Coulter、マイアミ、フロリダ州)により、定量的なフローサイトメトリー分析を実施した。
【0083】
I−4 増殖分析
細胞を、96ウェル平底組織培養プレート中で、種々の濃度の精製mAbの存在下または非存在下で4日間培養した。通常、培養開始時に0.2mlウェル当たり、5μgの精製mAb(25μg/ml)を添加した。最後の12〜16時間の培養中、1mCiのH[TdR]で細胞をパルスした。液体シンチレーションカウンター(Topcount、Packard instrument、メリデン、コネチカット州)を用いて、H[TdR]の取り込みを測定した。
【0084】
I−5 交差的遮断の実験およびビオチニル化OKT9の結合分析
A375細胞を30分間、BA120g、CY1G4、Tf−FeまたはNS1腹水とともに4℃または37℃でインキュベートした後、ビオチン標識抗CD71 mAb OKT9を添加し、さらに20分間インキュベートした。次に、一回洗浄した後、ストレプトアビジン−フルオレセインを添加し、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。下記の表2に示すように、平均蛍光強度を記録した。
Ba120GおよびCy1G4:15μg(飽和状態)
コントロールの腹水 NS1:2μl
OKT9−Biot:1μl
【0085】
II 結果
【0086】
II−1 A375黒色腫細胞株の増殖の抗CD71 BA120g誘導性の阻害の動態
極少数の抗CD71 mAbのみが細胞増殖を阻害し得ることが従来の報告により示されている。腫瘍細胞増殖の有意な阻害のためには、広範な受容体の架橋が必要であると仮定された(Taetle et al.,1986、Lesley et al.,1985)。これは、IgG抗CD71 mAbが、トランスフェリン受容体の下向き調節と分解を誘導するにも関わらず細胞増殖の阻害に有効でなかった理由を説明し得た。
【0087】
ウェル当たり10(または5×10)個のA375細胞を用いた場合、H[Tdr]の取り込みは4日目に最大であり(図1)、その後急激に低減した(図示されていない)。ともにIgG1アイソタイプである、5μg(25μg/ml)の抗CD2「O275」mAbまたは抗CD101「BB27」mAbの存在下では、増殖の動態の変化は認められなかった。逆に、IgG1アイソタイプの抗CD71 mAb BA120gの存在下では、2日目から4日目まで横這いであった(図1)。
【0088】
II−2 抗CD71 BA120gはすべての細胞株の増殖を阻害する
細胞増殖のBA120g誘導性の阻害が他の細胞株で観察されるか否かを判定することが目的であった。したがって、A375のほかに、黒色腫細胞株M74およびDauv1、T細胞株JurkatおよびHTLV1+細胞株C8166、赤白血病細胞株K562、ならびに髄芽細胞腫細胞株Devを試験した。すべての場合において、BA120gは図2に示すように4日目に高レベルの阻害を誘導し、すべての場合で70%を上回る阻害に達した。
【0089】
II−3 抗CD71 mAb BA120gのみがA375黒色腫細胞株の増殖を阻害する
A375の増殖に対する二つの他の抗CD71 mAbの阻害作用を調べた。CY1G4はIgG2aアイソタイプに属するが、4G42はIgG2bである。この三つのmAbは抗CD71 mAbであることが、組織分布および免疫沈降により以前に示されている。図3で分かるように、BA120gのみがA375細胞の増殖を阻害したが、CY1G4(図3に示されている)および4G42(図示されていない)はA375の増殖を変化させなかった。
【0090】
II−4 黒色腫細胞株上の抗CD71結合部位の定量
抗CD71 mAbにおけるそれらの細胞増殖阻害の能力の差が、黒色腫細胞とのそれらのそれぞれの結合における差に関連するか否かを試験することが目的であった。三つの黒色腫細胞株A375、Dauv1およびM74、ならびに髄芽細胞腫細胞株DEV上の、BA120gおよびCY1G4によって同定される部位の数の比較分析を実施した。したがって、標準化したFITC結合抗マウス免疫グロブリン抗体および較正用ビーズ(Qifikit)を用いた。表1は、抗CD71結合部位の数は2つのmAbで同様であり、そしてCY1G4でわずかに高かったことを示す。表1はさらに、結合部位の数は、Devよりも3つの黒色腫細胞株で高かったが、この髄芽細胞腫細胞株は、BA120gにより増殖が阻害された(図2に示されている)。
【0091】
【表1】

【0092】
II−5 BA120g結合部位の研究
トランスフェリン受容体上の、そのリガンドであるトランスフェリン鉄とは異なる部位に結合することが既知である、参照の抗CD71抗体OKT9と同じエピトープに、BA120gが結合していたか否かを調べた。そのために、交差的遮断の実験を実施したが、これにおいて、黒色腫細胞の最初のインキュベーションは、コントロールの腹水であるNS1、または2つの抗CD71 mAbであるBA120gもしくはCY1G4、またはトランスフェリン鉄とともに行った。次に、直接的にビオチニル化したOKT9の結合を上記のように分析した。以下の表2に示した結果は、CY1G4がOKT9の結合を阻害し得た一方、BA120gおよびトランスフェリン鉄の両方はCD71上の異なるエピトープに結合していたことを明瞭に示している。言い換えれば、BA120gは、CY1G4もしくはOKT9の両方とは異なる、またはそのリガンドであるトランスフェリン鉄とは異なるエピトープを同定する。
【0093】
【表2】

【0094】
II−6 BA120gの結合はCD71のリガンドであるトランスフェリン鉄によってもヒトAB血清によっても遮断されない
ヒト血清は、トランスフェリン鉄受容体および可溶性トランスフェリン受容体の両方を含有する。したがって、トランスフェリン鉄またはヒト血清のいずれかが細胞へのBA120gの結合を遮断するか否かを判定することは重要であった。以下の表3に示すように、10%ヒトAB血清の存在下では、BA120gの結合は、10%ウシ胎仔血清の存在下での結合と比較して増大した。さらに、トランスフェリン鉄の添加は、ヒトAB血清に対してさえ、BA120gの結合をわずかに低減しただけであった。したがって、A375黒色腫細胞株上のBA120g結合部位の数は、ヒトAB血清またはトランスフェリン鉄の存在下では有意に変化しない。
【0095】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】抗CD71 mAb BA120gにより誘導される黒色腫細胞株A375の増殖の阻害の動態を示したグラフ。
【図2】25μg/mLの抗CD71モノクローナル抗体Ba120gの、腫瘍細胞株の増殖に対するin vitroでの阻害効果を示したグラフ。
【図3】A375細胞の増殖に対する抗CD71 mAbの影響を示したグラフ。
【図4】ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列。
【図5】ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列。
【図6A】ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列。
【図6B】ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列。
【図7】ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列。
【図8】ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列。
【0097】
参考文献
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Lesley et al.,(1985) MoI. Cell. Biol. 5(8): 1814−21

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の少なくとも一つの重鎖およびその配列が配列番号2と配列番号11から選択される少なくとも一つの軽鎖を含む少なくとも一つの可変領域を含む、抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項2】
配列番号3によりコードされる少なくとも一つの重鎖および配列番号4と配列番号12から選択される配列によりコードされる少なくとも一つの軽鎖を含む少なくとも一つの可変領域を含む、抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項3】
BA120と呼ばれ、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(パスツール研究所、パリ、フランス)に2005年6月14日に番号CNCM I−3449で寄託された、ハイブリドーマ細胞株により産生される、請求項1または2に記載の抗体またはその機能的断片。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の、少なくとも一つの抗CD71モノクローナル抗体に特異的に結合する、抗イディオタイプ抗体またはその機能的断片。
【請求項5】
配列番号1の少なくとも一つの重鎖およびその配列が配列番号2と配列番号11から選択される少なくとも一つの軽鎖を含む一つの可変領域を含む、マウス−ヒトキメラ抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項6】
配列番号3によりコードされる少なくとも一つの重鎖および配列番号4と配列番号12から選択される配列によりコードされる少なくとも一つの軽鎖を含む一つの可変領域を含む、マウス−ヒトキメラ抗CD71モノクローナル抗体またはその機能的断片。
【請求項7】
−配列番号5と配列番号9から選択される配列の少なくとも一つの重鎖、および/または
−配列番号6の少なくとも一つの軽鎖
を含む定常領域をさらに含む、請求項5または6に記載のキメラ抗体またはその機能的断片。
【請求項8】
−配列番号7と配列番号10から選択される配列によりコードされる少なくとも一つの重鎖、および/または
−配列番号8によりコードされる少なくとも一つの軽鎖
を含む定常領域をさらに含む、請求項5または6に記載のキメラ抗体またはその機能的断片。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の、抗CD71モノクローナル抗体と、金属、毒素、薬剤、製剤(galenic)ベクター、所定の細胞型と結合し得る生体分子、酵素、核酸、ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジンから選択される、生物活性分子との間の結合生成物。
【請求項10】
前記金属が放射性同位体および非放射性金属から選択される、請求項9に記載の結合生成物。
【請求項11】
前記毒素がジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、リシン、アブリン、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスペプチド(PAP)、トリカテクム(tricathecum)、およびその機能的断片から選択される、請求項9に記載の結合生成物。
【請求項12】
前記薬剤が細胞傷害性および/または細胞溶解性の薬剤である、請求項9に記載の結合生成物。
【請求項13】
前記生物活性分子が
−ベータ、アルファ、またはガンマ放射性同位体、
−リシン型またはアブリン型分子の毒性のA鎖およびジフテリア毒素のA鎖といった毒素またはその機能的断片、
−メトトレキサート、マイトマイシン、アドリアマイシンといった細胞溶解性薬剤、
−有利にはアンチセンスRNAを含む、リポソームベクターおよび陽イオン性エマルションといった製剤(galenic)ベクター、
−二重特異性分子を得るための、抗体または組換えタンパク質といった、所定の細胞型と結合し得る生体分子、
−RNアーゼ、
−アンチセンスRNA、
−ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジン
から選択される、請求項9に記載の結合生成物。
【請求項14】
前記生物活性分子がリポソームベクターまたは陽イオン性エマルションといった製剤(galenic)ベクターにより運ばれる、請求項9〜13のいずれか一つに記載の結合生成物。
【請求項15】
エステラーゼプロドラッグと接触した時に前記生物活性分子を放出するよう、C5〜C15リンカーを含む、請求項9〜14のいずれか一つに記載の結合生成物。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の少なくとも一つの抗CD71モノクローナル抗体、または少なくとも一つのその機能的断片ならびに薬学的に許容可能な担体を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
請求項9〜15のいずれか一つに記載の少なくとも一つの結合生成物、ならびに薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項18】
抗体に対するFc受容体を発現するかまたは発現する能力を有し、そして標的細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)反応を媒介し得る、ヒト白血球エフェクター細胞をさらに含む、請求項16または17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記ヒト白血球エフェクター細胞がリンパ球、単球、マクロファージ、NK細胞、顆粒球、好酸球、および肥満細胞から選択される、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
悪性腫瘍細胞の増殖を阻害し、かつ/または悪性腫瘍細胞を死滅させるための方法であって、それを必要とする患者に、
−請求項1〜8のいずれか一つに記載の抗CD71モノクローナル抗体もしくはその機能的断片、またはこのような断片を含む構築物、
−請求項9〜15のいずれか一つに記載の結合生成物、および
−請求項16〜19のいずれか一つに記載の薬学的組成物
から選択される少なくとも一つの物質を、前記物質が悪性腫瘍細胞に結合するための条件下および十分な量で提供し、それにより悪性腫瘍細胞の増殖の阻害および/または死滅を引き起こすことを包含する方法。
【請求項21】
請求項18または19に記載の薬学的組成物が用いられる場合、前記ヒト白血球エフェクター細胞が、悪性腫瘍細胞の増殖の阻害および/または死滅を必要とする前記患者の自家細胞または同種細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記悪性腫瘍細胞が転移性皮膚黒色腫、転移性ブドウ膜黒色腫、神経膠芽腫、腎細胞癌、肝細胞癌(HCC)、卵巣腺癌、膵臓腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳腺癌、結腸直腸腺癌、血液悪性腫瘍の細胞から選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記提供の前に、前記悪性腫瘍細胞における細胞内トランスフェリンレベルおよび/または細胞内鉄レベルを激減させる工程をさらに包含する、請求項20〜22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも一つの物質がさらに、調節性T細胞との結合により、前記患者における免疫応答を増強し得る、請求項20〜23のいずれか一つに記載の方法。
【請求項25】
配列番号3、4および12で示される一つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項27】
請求項26に記載の発現ベクターを含む宿主細胞または宿主生物。
【請求項28】
請求項5または6に記載のキメラ抗体を産生する方法であって、
a)請求項26に記載の少なくとも一つの発現ベクターで適切な宿主細胞を形質転換する工程、
b)前記宿主細胞を、発現を助ける条件下で培養する工程、そして
c)培養培地から集合したキメラ抗体を精製する工程
を包含する方法。
【請求項29】
請求項7または8に記載のキメラ抗体を産生する方法であって、
a)(i)請求項25に記載の核酸分子、ならびに
(ii)配列番号7、8および10で示される一つまたは複数のヌクレオチド配列
を含む少なくとも一つの発現ベクターで適切な宿主細胞を形質転換する工程、
b)前記宿主細胞を、発現を助ける条件下で培養する工程、そして
c)培養培地から集合したキメラ抗体を精製する工程
を包含する方法。
【請求項30】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の、抗CD71モノクローナル抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項31】
それを必要とする患者においてex vivoでCD71陽性細胞を枯渇させる方法であって、
a)CD71陽性細胞を含有すると思われる前記患者の生体サンプルを、
−請求項1〜8のいずれか一つに記載の抗CD71モノクローナル抗体もしくはその機能的断片、またはこのような断片を含む構築物、
−請求項9〜15のいずれか一つに記載の結合生成物、および
−請求項16〜19のいずれか一つに記載の薬学的組成物
から選択される少なくとも一つの物質と接触させること、
b)前記物質と前記生体サンプル中に含有されるCD71陽性細胞との間で形成される複合体を除去すること、そして
c)「パージされた」生体サンプルを回収すること
を包含する方法。
【請求項32】
前記「パージされた」生体サンプルを前記患者に戻す工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記生体サンプルが、骨髄サンプル、CD34+細胞で濃縮された血液、臍帯血の多能性幹細胞、幹細胞から選択される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が移植を受けているか、または移植を必要としている、請求項31〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項35】
前記患者が癌を有する、請求項31〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
前記患者が自己免疫疾患および神経免疫疾患から選択される疾患を有する、請求項31〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項37】
癌を有する患者における免疫応答を増強する方法であって、該患者に、
−請求項1〜8のいずれか一つに記載の抗CD71モノクローナル抗体もしくはその機能的断片、またはこのような断片を含む構築物、
−請求項9〜15のいずれか一つに記載の結合生成物、ならびに
−請求項16〜19のいずれか一つに記載の薬学的組成物
から選択される少なくとも一つの物質を、前記物質が調節性T細胞と結合するための条件下および十分な量で提供し、それにより該調節性T細胞による前記免疫応答の抑制を阻害する方法。
【請求項38】
前記癌が黒色腫、特に皮膚黒色腫およびブドウ膜黒色腫、卵巣癌および肝臓癌から選択される、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−509497(P2009−509497A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516448(P2008−516448)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002331
【国際公開番号】WO2007/000671
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507409726)
【氏名又は名称原語表記】MONOCLONAL ANTIBODIES THERAPEUTICS
【出願人】(507138930)アンスティテュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル(インセルム) (4)
【Fターム(参考)】