説明

抗VEGF−D抗体

本発明は、血管内皮増殖因子-D(VEGF-D)に特異的に結合する単離抗体およびVEGF-Dに特異的に結合するヒト化抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、抗VEGF-D抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ごく最近発見された哺乳動物の血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーメンバーであるVEGF-Dは、細胞表面受容体チロシンキナーゼであるVEGFR-2およびVEGFR-3を活性化する。VEGFR-2およびVEGFR-3は、胚形成の際に血管およびリンパ管の内皮細胞上で発現される。その後、VEGFR-2は主に血管で発現されるが、VEGFR-3はリンパ管で主に発現される。VEGFR-2およびVEGFR-3はいずれも、腫瘍の発生および広がりならびに多数の他の疾患状態において有意な役割を有するように思われる。
【0003】
VEGFR-2は、血管新生のシグナルを伝達するために極めて重要な分子であると考えられているが、VEGFR-3は、主にリンパ管新生に関するシグナルを伝達するように思われる。VEGFR-3はまた、増殖中の血管においてアップレギュレートされて、血管新生シグナル伝達にも関与しうる。
【0004】
VEGF-Dは、プレプロポリペプチドとして合成されて、プロタンパク質コンバターゼによるタンパク質分解プロセシングによって活性化される。ヒトにおいて、VEGFR-2およびVEGFR-3に主に結合するのはVEGF-Dの成熟タンパク質分解プロセシング型である。
【0005】
血管新生は、組織の正常な増殖および発達にとって必要な根本的なプロセスであり、既存の血管からの新しい毛細管の増殖を伴う。血管新生は、胚の発達ならびに正常な組織の増殖、修復、および再生に関係するのみならず、雌性生殖サイクル、妊娠の確立および維持、ならびに創傷および骨折の修復にも関係する。
【0006】
正常な個体において起こる血管新生のほかに、血管新生事象は、多数の病的プロセス、特に腫瘍の増殖および転移、ならびに糖尿病性網膜症、乾癬、および関節症などの、特に微小血管系の血管の増殖が増加している他の状態に関係している。
【0007】
近年の研究により、腫瘍の発達および転移性の腫瘍付着物の形成において血管新生が重要な役割を果たすことが証明されている。VEGF-Dは、マウス癌モデルにおいて腫瘍の血管新生およびリンパ管新生を促進し、原発腫瘍の増殖およびリンパ管によるリンパ節への腫瘍細胞の広がりを容易にする。VEGF-Dは、広範囲の一般的なヒト癌において発現され、いくつかの腫瘍タイプにおけるリンパ管の関与および患者の転帰不良の予後的指標であると報告されている。よって、腫瘍の血管新生およびVEGF-Dの阻害は、有望な新規抗癌治療用物理療法として出現している。
【0008】
VEGF-Dの中和に応答する状態、特に血管新生、および血管新生に関連する癌を防止、制限、または処置するための有効な代替手段が必要である。
【発明の概要】
【0009】
概要
第一の局面は、SEQ ID NO:1として提供される重鎖可変(VH)ドメインアミノ酸配列またはアミノ酸置換1〜10個を含有するその変異体を含む、血管内皮増殖因子-D(VEGF-D)に特異的に結合する単離抗体を提供する。
【0010】
VEGF-Dに対する特異的結合に関係するヒト化重鎖可変(VH)ドメインの相補性決定領域(CDR)は、SEQ ID NO:1の残基31〜35位(CDR1)、50〜66位(CDR2)、および99〜107位(CDR3)に位置し、これはそれぞれ、SEQ ID NO:25の残基31〜35位、50〜66位、および99〜107位に対応する。フレームワーク領域(FR)は、SEQ ID NO:1の残基1〜30位(FR1)、36〜49位(FR2)、67〜98位(FR3)、および108〜118位(FR4)に位置し、これはそれぞれ、SEQ ID NO:25の残基1〜30位、36〜49位、67〜98位、および108〜118位に対応する。
【0011】
いくつかの態様において、SEQ ID NO:1のVHドメインアミノ酸配列を含むVEGF-Dに特異的に結合する単離抗体は、上記のFRの1つまたは複数において1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸置換を含有すると企図される。いくつかの態様において、SEQ ID NO:1のVHドメインは、上記の1つまたは複数のVH CDRにおいて1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を含有する。
【0012】
第二の局面は、CDR1、CDR2、およびCDR3がヒトフレームワーク配列に挿入されている、SEQ ID NO:26として提供されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO:29として提供されるアミノ酸配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28として提供されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、VEGF-Dに特異的に結合するヒト化抗体を提供する。
【0013】
VHドメインアミノ酸配列がSEQ ID NO:1の変異体である態様において、変異体は好ましくは9個以下、より好ましくは8個以下、なおより好ましくは7個以下、およびなおより好ましくは6個以下のアミノ酸置換を含有する(SEQ ID NO:1と比較して)。たとえば、VHドメインアミノ酸配列は、5個以下または4個以下のアミノ酸置換を含有してもよいSEQ ID NO:1の変異体である。好ましい態様において、VHドメインアミノ酸配列は、1、2、または3個のアミノ酸置換を含有するSEQ ID NO:1の変異体である。
【0014】
1つの態様において、VHドメインアミノ酸配列は、1、2、3、5、9、10、11、12、13、16、17、18、19、20、23、24、25、28、40、43、46、48、55、63、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、81、82、83、84、87、88、89、93、95、99、100、110、112、113、114、または117位にアミノ酸置換を含む(位置はSEQ ID NO:1の位置を参照する)SEQ ID NO:1の変異体である。好ましくは、VHドメインアミノ酸配列は、2、3、5、10、12、17、18、19、20、23、25、40、46、48、55、63、65、68、69、73、75、77、81、82、89、95、99、100、112、114、または117位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体である。より好ましくは、VHドメインアミノ酸配列は、10、20、25、55、77または82位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体である。
【0015】
もう1つの態様において、VHドメインアミノ酸配列は、以下からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体である:Q1E;V2A;Q3R;V5A;A9S;E10K;V11L;K12R;Q13K;A16E;S17N;S17G;V18M;V18L;K19R;K19T;V20A;V20I;K23E;A24G;S25G;S25R;T28S;A40M;A40V;Q43K;E46G;M48V;N55S;K63R;K65R;R67Q;V68A;T69A;V68F;T69V;M70F;M70I;T71S;T72A;T72L;D73G;T74K;S75N;T76V;T76I;S77G;M81V;M81L;E82K;E82Q;L83I;L83W;R84S;R87K;S88A;D89G;D89E;D89S;V93M;Y95H;T99A;S100G;R110Q;T112A;L113T;V114A;およびA117S。好ましくは、VHドメインアミノ酸配列は、以下からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体である:V2A;Q3R;V5A;E10K;K12R;S17N;S17G;V18M;K19R;K19T;V20A;K23E;S25G;S25R;A40V;E46G;M48V;N55S;K63R;K65R;V68A;D73G;S75N;S77G;M81V;E82K;D89G;Y95H;T99A;S100G;T112A;V114A;およびA117S。
【0016】
好ましい態様において、VHドメインアミノ酸配列は、E10K、V20A、S25R、N55S、V68A、S77G、およびE82Kからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体である。特に好ましい態様において、VHドメインアミノ酸配列は、E10K、V20A、およびN55Sからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体である。もう1つの態様において、VHドメインアミノ酸配列は、アミノ酸置換N55Sを少なくとも含むSEQ ID NO:1の変異体である。なおもう1つの態様において、VHドメインアミノ酸配列は、3つのアミノ酸置換E10K、V20A、およびN55Sを含むSEQ ID NO:1の変異体である。なおもう1つの態様において、SEQ ID NO:1変異体はSEQ ID NO:13として提供される配列を含む。
【0017】
好ましいSEQ ID NO:1変異体の例には、以下の置換を含む配列が含まれる:E82K;E10KおよびV20A;V68AおよびE82K;ならびにS25R、S77G、およびE82K。
【0018】
好ましいSEQ ID NO:1変異体の例には、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:15として提供される配列が含まれる。
【0019】
第一の局面の単離抗体はまた、VHドメインの他に、SEQ ID NO:5として提供される軽鎖可変(VL)ドメインアミノ酸配列または1〜10個のアミノ酸置換を含有するその変異体を含有してもよい。
【0020】
VEGF-Dに対する特異的結合に関係するヒト化軽鎖可変(VL)ドメインのCDRは、SEQ ID NO:5の残基24〜39位(CDR1)、55〜61位(CDR2)、および94〜102位(CDR3)に位置し、これらはSEQ ID NO:25の残基157〜172位、188〜194位、および227〜235位にそれぞれ対応する。FRは、SEQ ID NO:1の残基1〜23位(FR1)、40〜54位(FR2)、62〜93位(FR3)、および103〜113位(FR4)に位置し、これはSEQ ID NO:25の残基134〜156位、173〜187位、195〜226位、および236〜246位にそれぞれ対応する。
【0021】
いくつかの態様において、SEQ ID NO:5のVLドメインアミノ酸配列を含むVEGF-Dに特異的に結合する単離抗体は、上記のFRの1つまたは複数において1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸置換を含有する。いくつかの態様において、SEQ ID NO:1のVHドメインは、上記の1つまたは複数のVH CDRにおいて1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸残基を含有する。
【0022】
好ましい態様において、第一または第二の局面の抗体は、VHドメインおよびVLドメインを含む。いくつかの変化形において、第一の局面の抗体は、SEQ ID NO:26、29、もしくは28に記載される1個、2個、もしくは3個のVH CDRを含み、および/またはSEQ ID NO:34、35、もしくは36に記載される1個、2個、もしくは3個のVL CDRを含む。いくつかの変化形において、SEQ ID NO:29に記載されるCDRのほかに、第二の局面の抗体は、SEQ ID NO:26もしくは28に記載される1個もしくは2個のVH CDRを含み、および/またはSEQ ID NO:34、35、もしくは36に記載される1個、2個、もしくは3個のVL CDRを含む。
【0023】
もう1つの態様において、第一または第二の局面の抗体は、軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:34、35、または36に記載されるCDR配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、VEGF-D特異的抗体の軽鎖可変領域の少なくとも1つのCDRを含む。いくつかの変化形において、抗体は、SEQ ID NO:34、35、または36に記載されるCDRと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である少なくとも1つのCDRを含む。
【0024】
もう1つの態様において、第一または第二の局面の抗体は、重鎖可変領域が、SEQ ID NO:26、29、または28に記載のCDR配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むが、但し第二の局面の抗体のCDR配列がSEQ ID NO:26、27、および28と同一ではない、VEGF-D特異的抗体の重鎖可変領域の少なくとも1つのCDRを含む。いくつかの変化形において、少なくとも1つのCDRは、SEQ ID NO:26、29、または28のポリペプチドと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるが、但し第二の局面の抗体のCDR配列はSEQ ID NO:26、27、および28と同一ではない。
【0025】
VLドメインアミノ酸配列がSEQ ID NO:5の変異体である態様において、変異体は好ましくは9個以下、より好ましくは8個以下、なおより好ましくは7個以下、およびなおより好ましくは6個以下のアミノ酸置換を含有する。たとえば、VLドメインアミノ酸配列は、5個以下、4個以下、または3個以下のアミノ酸置換を含有してもよいSEQ ID NO:5の変異体である。好ましい態様において、VLドメインアミノ酸配列は、1個または2個のアミノ酸置換を含有するSEQ ID NO:5の変異体である。
【0026】
さらなる態様において、VLドメインアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25の138、144、146、158、165、191、193、198、208、212、221、230、238または241位にそれぞれ対応する、5、11、13、25、32、58、60、65、75、79、88、97、105、または108位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体である。もう1つの態様において、VLドメインアミノ酸配列は、T5I;S11G;V13A;S25T;S32G;N58S;F60S;D65G;T75A;K79R;V88M;T97A;Q105R;およびT108A(SEQ ID NO:25におけるT138I、S144G、V146A、S158T、S165G、N191S、F193S、D198G、T208A、K212R、V221M、T230A、Q238R、およびT241Aにそれぞれ対応する)からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体である。
【0027】
好ましい態様において、VLドメインアミノ酸配列は、S11G;S32G;D65G;およびQ105R(SEQ ID NO:25のS144G、S165G、D198G、およびQ238Rにそれぞれ対応する)からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体である。
【0028】
好ましいSEQ ID NO:5変異体の例には、S11GおよびQ105R;S32G;ならびにD65G(SEQ ID NO:25のS144GおよびQ238R;S165G;ならびにD198Gにそれぞれ対応する)からなる群より選択される1つまたは複数の置換を含む配列が含まれる。
【0029】
好ましいSEQ ID NO:5変異体の例には、SEQ ID NO:17;SEQ ID NO:19;またはSEQ ID NO:21として提供される配列が含まれる。
【0030】
VHおよびVLドメインの好ましい組み合わせの例には、以下が含まれる:
(a)SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5;
(b)SEQ ID NO:1変異体E82K(SEQ ID NO:7)およびSEQ ID NO:5;
(c)SEQ ID NO:1変異体E10KおよびV20A(SEQ ID NO:9)ならびにSEQ ID NO:5;
(d)SEQ ID NO:1変異体V68AおよびE82K(SEQ ID NO:11)ならびにSEQ ID NO:5;
(e)SEQ ID NO:1変異体E10K、V20AおよびN55S(SEQ ID NO:13)ならびにSEQ ID NO:5;
(f)SEQ ID NO:1変異体S25R、S77GおよびE82K(SEQ ID NO:15)ならびにSEQ ID NO:5;
(g)SEQ ID NO:1変異体E82K(SEQ ID NO:7)ならびにSEQ ID NO:5変異体S11GおよびQ105R(SEQ ID NO:17);
(h)SEQ ID NO:1変異体E82K(SEQ ID NO:7)およびSEQ ID NO:5変異体S32G (SEQ ID NO:19);
(i)SEQ ID NO:1変異体E10K、V20AおよびN55S(SEQ ID NO:13)ならびにSEQ ID NO:5変異体S11GおよびQ105R(SEQ ID NO:17);ならびに
(j)SEQ ID NO:1変異体E10K、V20AおよびN55S(SEQ ID NO:13)ならびにSEQ ID NO:5変異体D65G(SEQ ID NO:21)。
【0031】
1つの態様において、成熟VEGF-D(以下により詳細に定義される)に対する第一または第二の局面の抗体の解離定数(KD)は、約40 nM未満、約35 nM未満、約30 nM未満、約25 nM未満、約20 nM未満、約15 nM未満、約10 nM未満、約5 nM未満、約4 nM未満、約3 nM未満、約2 nM未満、約1 nM未満、約900 pM未満、約800 pM未満、約700 pM未満、約600 pM未満、約500 pM未満、約400 pM未満、約300 pM未満、約200 pM未満、約100 pM未満、約50 pM未満、約10 pM未満、または約1 pM未満である。
【0032】
関連する態様において、本発明の抗体は、少なくとも10-7、10-8、10-9 Mまたはそれより高い結合親和性を保持する。さらなる態様において、本発明には、約10-8 M〜10-12 M、約10-9 M〜10-12 M、または約10-9〜10-11 Mの範囲の親和性KdでVEGF-Dに結合する単離抗体の組成物が含まれる;関連する態様において、本発明は、本明細書において記述されるVEGF-Dに関連する障害を処置するためにそのような組成物を用いることを企図する。親和性は、表面プラズモン共鳴が含まれるがこれらに限定されるわけではない当技術分野において周知の技術を用いて測定される。なおさらなる態様において、抗体組成物は無菌的である。
【0033】
好ましい態様において、第一または第二の局面の抗体はモノクローナル抗体である。
【0034】
もう1つの態様において、第一または第二の局面の抗体は、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域などの1つまたは複数の定常ドメインを含む。
【0035】
いくつかの変化形において、軽鎖定常領域はκ軽鎖またはλ軽鎖である。いくつかの変化形において、重鎖定常領域は、IgM鎖、IgG鎖、IgA鎖、IgE鎖、IgD鎖の定常領域、その断片、およびその組み合わせからなる群より選択される。いくつかの変化形において、重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、その断片、およびその組み合わせからなる群より選択されるIgG鎖を含む。いくつかの変化形において、定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域のCH1、CH2、およびCH3領域の少なくとも1つを含む。
【0036】
1つの態様において、抗体は、IgGアイソタイプの1つまたは複数の定常ドメインを含む。もう1つの態様において、抗体は、IgGアイソタイプのヒト定常ドメインを含む。特定の態様において、抗体は、SEQ ID NO:23として提供される重鎖定常領域アミノ酸配列を含む。VLドメインも含む抗体の場合、抗体はまた、SEQ ID NO:24として提供される軽鎖定常領域アミノ酸配列を含んでもよい。
【0037】
なおもう1つの態様において、第一または第二の局面の抗体は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、ミニボディ、または単離VHドメインを含む。SCFVが含まれるがこれらに限定されるわけではないいくつかの変化形において、1つまたは複数のリンカーペプチドを用いて抗体ペプチド配列を付着させてもよい。
【0038】
第一または第二の局面の抗体は、N末端およびC末端を含み、1つの態様において、抗体はN末端またはC末端で切断されてもよく、切断抗体はそれでもなおVEGF-D結合活性を保持する。アミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のN-および/またはC末端の切断(たとえば、SEQ ID NO:1もしくは5または本明細書において記述される他の配列に対して)が具体的に企図される。
【0039】
第一または第二の局面のもう1つの態様に従って、抗体はキメラであり、かつ/または異種由来物質を含む、異種由来物質に付着する、もしくは異種由来物質にコンジュゲートする。異種由来物質は、治療物質または診断物質、たとえば検出可能な標識であってもよい。異種由来物質は、細胞障害剤、放射性同位元素、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、化学発光標識、またはビオチンであってもよい。
【0040】
第三の局面は、第一または第二の局面に従う抗体をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。
【0041】
第四の局面は、第三の局面に従う核酸分子を含むベクターを提供する。例示的なベクターには、好ましくは治療的有効量の、培養細胞発現系におけるコードされたポリペプチドまたは抗体の組み換え的発現に適した発現ベクター;およびヒトなどの哺乳動物においてインビボで発現させるために適した発現ベクターが含まれる。
【0042】
第五の局面は、第一もしくは第二の局面に従う抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、または第四の局面に従うベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。1つの態様に従って、宿主細胞は真核性である。1つの態様において、宿主細胞は哺乳動物性である。
【0043】
第六の局面は、以下の段階を含む、抗体を産生する方法を提供する:第一もしくは第二の局面に従う抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子または第四の局面に従うベクターを含む宿主細胞を培養する段階であって、該細胞が、該コードされる抗体を含む抗体を産生し、かつ該抗体がVEGF-Dに特異的に結合する、段階;および該抗体を得る段階。1つの態様において、抗体は、細胞から培養培地に分泌されて、そこから抗体が得られる。もう1つの態様において、抗体は細胞から得られる。
【0044】
第七の局面は、第六の局面の方法に従って産生された抗体を提供する。
【0045】
第八の局面は、第一もしくは第二の局面に従う抗体、第三の局面に従う核酸、第四の局面に従うベクター、または第五の局面に従う宿主細胞と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0046】
第九の局面は、第一もしくは第二の局面に従う抗体または第三の局面の核酸分子と、使用説明書とを含むキットを提供する。
【0047】
第十の局面は、第一もしくは第二の局面に従う抗体、第三の局面に従う核酸分子、第四の局面に従うベクター、第五の局面に従う宿主細胞、または第八の局面に従う薬学的組成物の治療的有効量を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、血管新生を阻害する方法を提供する。ある態様において、抗体は、約10 ng/kg〜100 mg/kg、2μg/kg〜50 mg/kg、0.1 mg/kg〜30 mg/kg、または0.1 mg/kg〜10 mg/kgの用量で投与される。
【0048】
関連する変化形は、その受容体VEGFR-3およびVEGFR-2のいずれかまたは双方のVEGF-Dによる刺激を、これらの受容体を発現する細胞において阻害する方法である。
【0049】
第十一の局面は、試験試料および参照試料に、第一もしくは第二の局面に従う抗体を接触させる段階;試験試料中に存在する任意のVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによって第一のVEGF-D発現レベルを提供する段階;参照試料中に存在するVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによって第二のVEGF-D発現レベルを提供する段階;試験試料中の第一のVEGF-D発現レベルを決定する段階;参照試料中の第二のVEGF-D発現レベルを決定する段階;および参照試料中の第二のVEGF-D発現レベルと比較して試験試料中の第一のVEGF-D発現レベルがより高いことが、試験試料中の血管新生の増加の指標となる、試験試料中の第一のVEGF-D発現レベルを参照試料中の第二のVEGF-D発現レベルと比較する段階を含む、血管新生を診断する方法を提供する。
【0050】
本発明の関連する変化形は、試料に第一または第二の局面に従う抗体を接触させる段階、およびVEGF-Dに結合した抗体を測定することによって、試料中のVEGF-Dを検出、定量的に検出、または測定する段階を含む、試料中のVEGF-Dを検出、定量的に検出、または測定する方法である。測定する段階は、たとえば抗体上の標識によって、または第二の検出抗体の使用によって容易となる可能性がある。
【0051】
第十二の局面は、血管新生を阻害もしくは診断するために、またはVEGFR-2もしくはR-3のVEGF-Dによる刺激を阻害するために、第一もしくは第二の局面に従う抗体、第三の局面に従う核酸分子、第四の局面に従うベクター、第五の局面に従う宿主細胞、または第八の局面に従う薬学的組成物を用いることを提供する。
【0052】
第十三の局面は、血管新生を阻害するための医薬を製造するために、第一もしくは第二の局面に従う抗体、第三の局面に従う核酸分子、第四の局面に従うベクター、または第五の局面に従う宿主細胞を用いることを提供する。
【0053】
第十四の局面は、試料に第一もしくは第二の局面に従う抗体を接触させる段階、および試料中に存在する任意のVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによってVEGF-D発現レベルを提供する段階を含む、試料中のVEGF-Dの存在を検出する方法を提供する。1つの態様において、方法は、試料中のVEGF-D発現レベルを参照試料中のVEGF-D発現レベルと比較する段階を含み、参照試料と比較して試料中のVEGF-D発現レベルがより高いことが、血管新生の増加の指標となる。
【0054】
第十一、十二、十三、および十四の局面の態様において、血管新生は、血管新生の調節不全、リンパ管新生の調節不全、癌、関節リウマチ、乾癬、リンパ管筋腫症、または他の炎症状態の特徴である。
【0055】
第十五の局面は、以下を含む、VEGF-Dに特異的に結合する単離抗体を提供する:
− SEQ ID NO:5として提供される軽鎖可変(VL)ドメインアミノ酸配列またはアミノ酸置換1〜10個を含有するその変異体。
【0056】
1つの態様において、第十五の局面の抗体は、単離されたVLドメインを含む。
【0057】
第十六の局面において、本発明は、上記の抗体配列の1つまたは複数を含む単離ポリペプチドを提供する。1つの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:1もしくはSEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列、または上記のその変異体の全てまたは一部を含む。関連する態様において、ポリペプチドは、VEGF-D特異的抗体または本明細書において記述されるその変異体のVHおよび/またはVL CDRを1、2、3、4、5、または6個含む。ポリペプチドは、重鎖および/または軽鎖定常領域またはその断片を含むとさらに企図される。
【0058】
当業者は、本発明の1つの局面に関連して記述されるいかなる態様も、本発明の他の局面にも同様に当てはまる可能性があることを認識するであろう。
【0059】
本明細書に添付された当初請求項は、本発明の概要に参照により組み入れられる。用途として記述される本発明は、本発明を異なるように特徴付けする異なるカテゴリの傾向を考慮して、使用方法またはプロセスに関する記述もまた構成し、およびその逆も成り立つとみなされるべきである。
【0060】
前述の概要は、本発明のあらゆる局面を定義すると意図されず、「概要」という見出しは、本発明の追加の局面をいかなるようにも制限すると意図されず、本発明のさらなる詳細は、添付の図面または詳細な説明などの他の章に記述される。本発明の文書全体は、統一された開示として関連すると意図され、たとえ、本文書の同じ文章、段落、または章において特徴の組み合わせが共に見いだされない場合であっても、本明細書において記述される特徴の全ての組み合わせが企図されると理解されるべきである。例を挙げると、タンパク質/抗体治療が記述される場合、ポリヌクレオチド(核酸)治療を含む態様(タンパク質/抗体をコードするポリヌクレオチド/核酸を用いる)が常に具体的に企図されて、その逆もまた当てはまる。
【0061】
前述の他に、本発明には、追加の局面として、先に具体的に言及した変化形よりどちらにしても狭い範囲の本発明の全ての態様が含まれる。概要の章に要約した態様はしばしば、好ましい変化形と共に、詳細な説明において詳しく記述され、これらの変化形は、参照により概要に組み入れられた本発明の一部である。属として記述された本発明の局面に関して、全ての個々の種が本発明の個別の局面であると個々に見なされる。例示的な数値を参照して記述される本発明の局面に関して、そのような値は、引用された値が含まれる範囲または小範囲を記述すると意図されると理解されるべきである。数的範囲と共に記述される局面に関して、全ての小範囲が企図されると理解すべきである。
【0062】
出願人は、添付の特許請求の範囲の全ての範囲を発明したが、本明細書に添付の特許請求の範囲は、他者の先行技術の研究の範囲内を包含しないと意図される。よって、特許事務所または他の団体もしくは個人によって出願人が、ある請求項の範囲内の法定上の先行技術に気づいた場合には、出願人は、そのような法定上の先行技術または法定上の先行技術の明白な変化形をそのような請求項の範囲から具体的に除外するために、そのような請求項の主題を再定義するために適用可能な特許法の下で修正する権利を実行する権利を保有する。そのような修正された特許請求の範囲によって定義された本発明の変化形もまた、本発明の局面として意図される。本発明の追加の特徴および変化形は、本出願の全文から当業者に明らかであり、そのような全ての特徴が本発明の局面として意図される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】VEGF-Dに特異的に結合するヒト化重鎖可変(VH)ドメインのアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を提供する。CDRは、SEQ ID NO:1の残基31〜35位(CDR1)、50〜66位(CDR2)、および99〜107位(CDR3)に位置し、これはSEQ ID NO:25の残基31〜35位、50〜66位、および99〜107位にそれぞれ対応する。FRは、SEQ ID NO:1の残基1〜30位(FR1)、36〜49位(FR2)、67〜98位(FR3)、および108〜118位(FR4)に位置し、これはSEQ ID NO:25の残基1〜30位、36〜49位、67〜98位、および108〜118位にそれぞれ対応する。
【図2】図1に描写されたアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:2)を提供する。
【図3】VEGF-Dに特異的に結合するヒト化重鎖可変(VH)ドメインのアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を提供する。CDRは、SEQ ID NO:3の残基31〜35位(CDR1)、50〜66位(CDR2)、および99〜107位(CDR3)に位置する。
【図4】VEGF-Dに特異的に結合するヒト化重鎖可変(VH)ドメインのアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を提供する。CDRはSEQ ID NO:4の残基31〜35位(CDR1)、50〜66位(CDR2)、および99〜107位(CDR3)に位置する。
【図5】VEGF-Dに特異的に結合するヒト化軽鎖可変(VL)ドメインのアミノ酸配列(SEQ ID NO:5)を提供する。CDRは、SEQ ID NO:5の残基24〜39位(CDR1)、55〜61位(CDR2)、および94〜102位(CDR3)に位置し、これはSEQ ID NO:25の残基157〜172位、188〜194位、および227〜235位にそれぞれ対応する。FRは、SEQ ID NO:1の残基1〜23位(FR1)、40〜54位(FR2)、62〜93位(FR3)、および103〜113位(FR4)に位置し、これはSEQ ID NO:25の残基134〜156位、173〜187位、195〜226位、および236〜246位にそれぞれ対応する。
【図6】図5に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:6)を提供する。
【図7】図1(SEQ ID NO:1)のヒト化VHドメインの変異体(SEQ ID NO:7)のアミノ酸配列を提供する。このVHアミノ酸配列は、クローンF61、HU75、およびHH41によって発現される。
【図8】図7に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:8)を提供する。核酸配列は、クローンF61、HU75、およびHH41に存在する。
【図9】図1(SEQ ID NO:1)のヒト化VHドメインの変異体(SEQ ID NO:9)のアミノ酸配列を提供する。このVHアミノ酸配列はクローンA63によって発現される。
【図10】図9に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:10)を提供する。核酸配列はクローンA63に存在する。
【図11】図1(SEQ ID NO:1)のヒト化VHドメインの変異体(SEQ ID NO:11)のアミノ酸配列を提供する。このVHアミノ酸配列は、クローンAW61によって発現される。
【図12】図11に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:12)を提供する。核酸配列はクローンAW61に存在する。
【図13】図1(SEQ ID NO:1)のヒト化VHドメインの変異体(SEQ ID NO:13)のアミノ酸配列を提供する。このVHアミノ酸配列は、クローンDI26、HH69、およびHX28によって発現される。
【図14】図13に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:14)を提供する。核酸配列は、クローンDI26、HH69、およびHX28に存在する。
【図15】図1(SEQ ID NO:1)のヒト化VHドメインの変異体(SEQ ID NO:15)のアミノ酸配列を提供する。このVHアミノ酸配列はクローンHW78によって発現される。
【図16】図15に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:16)を提供する。核酸配列はクローンHW78に存在する。
【図17】図5(SEQ ID NO:5)のヒト化VLドメインの変異体(SEQ ID NO:17)のアミノ酸配列を提供する。このVLアミノ酸配列は、クローンHU75およびHH69によって発現される。
【図18】図17に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:18)を提供する。核酸配列は、クローンHU75およびHH69に存在する。
【図19】図5(SEQ ID NO:5)のヒト化VLドメインの変異体(SEQ ID NO:19)のアミノ酸配列を提供する。このVLアミノ酸配列は、クローンHH41によって発現される。
【図20】図19に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:20)を提供する。核酸配列はクローンHH41に存在する。
【図21】図5(SEQ ID NO:5)のヒト化VLドメインの変異体(SEQ ID NO:21)のアミノ酸配列を提供する。このVLアミノ酸配列はクローンHX28によって発現される。
【図22】図21に描写されるアミノ酸配列をコードする核酸配列(SEQ ID NO:22)を提供する。核酸配列はクローンHX28に存在する。
【図23】VEGF-Dに特異的に結合するIgG抗体を形成する場合にヒト化VHドメインにカップリングされてもよいヒトIgG重鎖定常領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO:23)を提供する。
【図24】VEGF-Dに特異的に結合するIgG抗体を形成する場合にヒト化VLドメインにカップリングされてもよいヒトIgG軽鎖定常領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO:24)を提供する。
【図25】図1のヒト化VHドメイン、図5のヒト化VLドメイン、および下線の残基によって示されるアミノ酸15個のリンカー配列を含む、VEGF-Dに特異的に結合するヒト化scFv抗原結合断片のアミノ酸配列(SEQ ID NO:25)を提供する。何らかの疑問がある場合、本明細書において参照される番号付けは、この参照アミノ酸配列(SEQ ID NO:25)に由来する。VHは1位〜118位までである。リンカーは、119位〜133位までである。VLは134位〜246位までである。一貫した番号付けを確保するために、IgG抗体に再フォーマットされているscFv抗体についても、同じscFvに基づく番号付けを用いている。たとえば、S144G scFv変化形は、対応するIgG抗体における軽鎖可変領域の11位でのアミノ酸置換を指す:144[scFv上での位置]−133[VL領域の前のリンカーの端部]=IgG重鎖の11位。
【図26】図1および図25のVHドメインのCDR1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:26)を提供する。
【図27】図1および図25のVHドメインのCDR2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:27)を提供する。
【図28】図1および図25のVHドメインのCDR3のアミノ酸配列(SEQ ID NO:28)を提供する。
【図29】クローンF61に由来するヒト化IgG抗体のVEGF-D中和活性を試験する、実施例6に詳述される2つのVEGFR-2-Ba/F3 3Hチミジン取込みバイオアッセイを描写する。3Hチミジン取込みの50%阻害を達成する阻害濃度(IC50)を、用量反応曲線から算出してもよい。黒丸および実線はソース1からのVEGF-Dを表す。黒三角および破線は、ソース2からのVEGF-Dを表す。VEGF-Dによって刺激していない細胞を、試験抗体濃度0.1μg/mlおよび100μg/mlを合わせて実線および破線によって表す。
【図30】クローンHW78に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図31】クローンHH69に由来するヒト化抗体を試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図32】ソース2からのVEGF-Dを、破線ではなくて黒三角および実線で表すことを除き、クローンHH41に由来するヒト化IgG抗体を2つ組で試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図33】クローンHX28に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図34】クローンHU75に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図35】クローンDI26に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図36】クローンAW61に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29のバイオアッセイを描写する。
【図37】それぞれの対応する解離定数(KD)値に対してプロットした、クローンF61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61に由来するヒト化IgG抗体の、ソース1およびソース2 VEGF-D二量体のIC50から算出したIC50の平均値を描写する。
【図38】クローンF61に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図39】クローンHW78に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図40】クローンHH69に由来するヒト化抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図41】クローンHH41に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図42】クローンHX28に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図43】クローンHU75に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図44】クローンDI26に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図45】クローンAW61に由来するヒト化IgG抗体を試験する図29の1つのバイオアッセイを描写する。垂直の破線はIC50を表す。
【図46】SEQ ID NO:27のアミノ酸残基6位に対応するN55S置換を含む、図1および図25のVHドメインのCDR2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:29)を提供する。
【図47】ヒトVEGF-Dポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:30)を提供する。
【図48】図39のポリヌクレオチドによってコードされるヒトVEGF-Dアミノ酸配列(SEQ ID NO:31)を提供する。
【図49】ヒトVEGFR-3の細胞外ドメインをコードするDNA断片のPCR増幅のために用いられるフォワードプライマーのポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:32)を提供する。
【図50】ヒトVEGFR-3の細胞外ドメインをコードするDNA断片のPCR増幅のために用いられるリバースプライマーのポリヌクレオチド配列(SEQ ID NO:33)を提供する。
【図51】図5および図25のVLドメインのCDR1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:34)を提供する。
【図52】図5および図25のVLドメインのCDR2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:35)を提供する。
【図53】図5および図25のVLドメインのCDR3のアミノ酸配列(SEQ ID NO:36)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
詳細な説明
本発明を以下の非制限的な実施例および図面を参照することによってより詳細に記述する。
【0065】
「リンパ管新生」は、特に既存のリンパ管からのリンパ管の形成を指す。
【0066】
「血管新生」は、血管の形成、特に既存の血管からの新しい毛細管の増殖を指す。
【0067】
重要なことに、VEGF-DおよびVEGF-Cによって誘導されるリンパ管新生は、リンパ管およびリンパ節への腫瘍細胞の転移性の広がりを促進し、腫瘍におけるVEGF-DおよびVEGF-Cによって誘導される血管新生は、固形腫瘍の増殖および転移性の広がりを促進しうる。さらに、臨床病理学的データから、広範囲の一般的なヒト癌においてこれらの増殖因子が役割を果たすことが示されている。たとえば、VEGF-D発現は、結腸直腸癌における総生存率および無病生存率の双方にとって独立した予後因子であると報告された。
【0068】
本明細書において用いられる「機能的変異体」または「変異体」は互換的に用いることができ、これには、VEGF-Dに特異的に結合して、その生物活性を部分的または完全に遮断、中和、低減、または拮抗する天然のアミノ酸配列変異体または人工的に改変されたアミノ酸配列変異体のいずれかが含まれる。そのような人工的に改変された変異体は、当業者に周知である組み換えDNA変異誘発技術の合成化学によって作製されうる。
【0069】
SEQ ID NO:1変異体を産生するためにSEQ ID NO:1として提供されるVHドメインアミノ酸配列におけるアミノ酸置換の個数は、10個以下である。SEQ ID NO:1変異体を産生するためにSEQ ID NO:1として提供されるVHドメインアミノ酸配列におけるアミノ酸置換の好ましい数は、1、2、または3個である。
【0070】
SEQ ID NO:5変異体を産生するために、SEQ ID NO:5として提供されるVLドメインアミノ酸配列におけるアミノ酸置換の個数は、10個以下である。SEQ ID NO:5変異体を産生するためにSEQ ID NO:5として提供されるVLドメインアミノ酸配列におけるアミノ酸置換の好ましい数は、1または2個である。
【0071】
ふさわしくは、SEQ ID NO:1の機能的変異体は、SEQ ID NO:1と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、なおより好ましくは少なくとも92%、なおより好ましくは少なくとも93%、およびなおより好ましくは少なくとも94%のアミノ酸配列同一性を有する。ふさわしくは、SEQ ID NO:1の機能的変異体は、SEQ ID NO:1と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、およびなおより好ましくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する。SEQ ID NO:1の機能的変異体は、SEQ ID NO:1と少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有してもよい。
【0072】
ふさわしくは、SEQ ID NO:5の機能的変異体は、SEQ ID NO:5と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、なおより好ましくは少なくとも92%、なおより好ましくは少なくとも93%、およびなおより好ましくは少なくとも94%のアミノ酸配列同一性を有する。ふさわしくは、SEQ ID NO:5の機能的変異体は、SEQ ID NO:5と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、およびなおより好ましくは少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する。SEQ ID NO:1の機能的変異体は、SEQ ID NO:5と少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有してもよい。
【0073】
いずれにせよ、機能的変異体はなおも、VEGF-Dに特異的に結合して、その生物活性を部分的または完全に遮断、中和、低減、または拮抗することができるであろう。
【0074】
これらのアミノ酸配列の機能的アミノ酸配列変異体は、アミノ酸配列または機能的アミノ酸配列変異体を産生するために、これらのアミノ酸配列のアミノ酸および/または機能的核酸配列の置換、交換、付加、挿入、省略、および/または欠失によって得ることができる。特に、これは、機能的変異体としてその特性を失うことなく保存的置換を含むアミノ酸配列を指す。本発明の抗体またはその機能的変異体のアミノ酸配列はまた、それらがその効果に対して強く負の影響を及ぼさない限り、ペプチドもしくはポリペプチドに、またはグリコシル基、脂質、リン酸基、アセチル基等などのさらなる化学基に連結させることができる。
【0075】
本明細書において用いられるように、「置換された」または「置換」には、アミノ酸残基の置換、交換、付加、挿入、省略、および/または欠失が含まれる。
【0076】
本発明の抗体を含むVHまたはVLアミノ酸配列の機能的変異体は一般的に、アミノ酸配列を改変する段階の後に、VEGF-Dとの特異的結合能、および/またはVEGF-Dの生物活性の部分的または完全な遮断、中和、低減、または拮抗能に関して、得られた抗体をアッセイする段階によって同定されてもよい。
【0077】
このように、アミノ酸の個々の置換、付加、および/または省略によって、抗体の機能、すなわちVEGF-Dとの特異的結合能が強く損なわれない限り、具体的に記述されるアミノ酸配列を変化させることができる。
【0078】
天然に存在するアミノ酸の他に、非天然アミノ酸、または修飾アミノ酸も同様に本発明において企図され、本発明の範囲内である。実際に、本明細書において用いられるように、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、およびアミノ酸アナログ、ならびに各々のDまたはL立体異性体を指す。
【0079】
天然のアミノ酸には、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、バリン(V)、ヒドロキシプロリン(Oおよび/またはHyp)、イソジチロシン(IDT)、およびジイソジチロシン(di-IDT)が含まれる。ヒドロキシプロリン、イソジチロシン、およびジイソジチロシンは、翻訳後に形成される。天然のアミノ酸、特に遺伝的にコードされる20個のアミノ酸を用いることが好ましい。
【0080】
置換は、置換されるアミノ酸が参照配列における対応するアミノ酸と類似の構造的または化学的特性を有する、保存的アミノ酸置換であってもよい。または置換は、非保存的アミノ酸置換であってもよい。
【0081】
例として、保存的アミノ酸置換は、1つの脂肪族または疎水性アミノ酸、たとえばアラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンの、別のアミノ酸への置換;1つのヒドロキシル含有アミノ酸、たとえばセリンおよびトレオニンの、別のアミノ酸への置換;1つの酸性残基、たとえばグルタミン酸またはアスパラギン酸の、別のアミノ酸への置換;1つのアミド含有残基、たとえばアスパラギンおよびグルタミンの、別のアミノ酸との交換;1つの芳香族残基、たとえばフェニルアラニンおよびチロシンの、別のアミノ酸との交換;1つの塩基性残基、たとえばリジン、アルギニン、およびヒスチジンの、別のアミノ酸との交換;ならびに1つの低分子アミノ酸、たとえばアラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、およびグリシンの、別のアミノ酸との交換を伴う。
【0082】
構成成分であるVHまたはVLアミノ酸配列が、アミノ酸側鎖のレベルで、アミノ酸のキラリティのレベルで、および/またはペプチド骨格のレベルで化学的に修飾されている抗体変異体を得てもよい。これらの変更は、類似のまたは改善された治療的、診断的、および/または薬物動態特性を有するVHおよび/またはVLアミノ酸配列を提供すると意図される。
【0083】
たとえば、アミノ酸配列が、対象に注射後にペプチダーゼによる切断に対して感受性がある場合、特に感受性のあるペプチド結合を切断不可能なペプチド結合に交換することによって、より安定でこのように治療物質としてより有用なペプチドを提供することができる。同様に、L-アミノ酸残基の交換は、アミノ酸配列を、タンパク質分解に対する感受性をより低くするための標準的な方法であり、最終的に、ペプチド以外の有機化合物により類似にする標準的な方法である。同様に有用であるのは、t-ブチルオキシカルボニル、アセチル、テニル、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、および2,4-ジニトロフェニルなどのアミノ末端ブロッキング基である。効力の増加、活性の持続、精製の容易さ、および/または半減期の増加を提供する他の多くの改変は、当業者に公知であろう。
【0084】
「構成成分VHアミノ酸配列」という用語は、SEQ ID NO:1として提供されるVHアミノ酸配列、またはVEGF-Dに特異的に結合する抗体に含まれる1〜10個のアミノ酸置換を含有するその変異体を指す。
【0085】
「構成成分VLアミノ酸配列」という用語は、SEQ ID NO:5として提供されるVLアミノ酸配列またはVEGF-Dに特異的に結合する抗体に含まれる1〜10個のアミノ酸置換を含有するその変異体を指す。
【0086】
シングルドメイン抗体の場合において、抗体は本質的に、「構成成分VHアミノ酸配列」からなる。
【0087】
本明細書において用いられる本発明の「物質」または「治療物質」は、本発明に従う、その抗原結合断片が含まれる抗体、核酸分子、ベクター、または薬学的組成物を指す。
【0088】
本発明の抗体はまた、SEQ ID NO:1もしくはその変異体、またはSEQ ID NO:5もしくはその変異体に近接することができる非特異的リンカーを含んでもよい。そのようなリンカーは生物活性に関係しない。むしろ、リンカーは、アミノ酸配列と機能的部分のあいだのスペーサーとして役立つ可能性がある。1つの例は、ビオチンが抗体を固定するために用いられる、抗体とビオチンのあいだで用いられるリンカーであろう。リンカーの他の用途には、精製または検出を助けるための部分の付着が含まれる。またはおよび重要なことに、リンカーは、細胞または組織などの特定の標的に空間的または時間的に抗体を特異的に送達することができる部分を抗体に付着させてもよい。
【0089】
VEGF-Dポリペプチド
VEGF-D(SEQ ID NO:30および31;図39および40)を、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)および(Achen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 548-553, 1998)に詳細に記述されているように単離した。
【0090】
VEGF-Dは、当初N末端およびC末端タンパク質分解プロセシングを受けるプレプロペプチドとして発現されて、非共有的に連結された二量体を形成する。VEGF-Dは、内皮細胞においてその受容体VEGFR-3およびVEGFR-2を通してマイトゲン応答を刺激する。胚形成の際に、VEGF-Dは、複雑な時間的および空間的パターンで発現されて、その発現は、成体の心臓、肺、および骨格筋において持続する。
【0091】
プレプロ-VEGF-Dポリペプチドは、アミノ酸21個の推定のシグナルペプチドを有し、これはプレプロ-VEGF-Cのプロセシングと類似の様式でタンパク質分解によって明らかにプロセシングされる。SEQ ID NO:31のアミノ酸残基93〜201位を含有するが、残基1〜92位および202〜354位を欠損する「組み換え型成熟」VEGF-DであるVEGF-D△N△Cは、受容体VEGFR-2およびVEGFR-3の活性化能を保持して、非共有的に連結した二量体として会合するように思われる。
【0092】
アミノ酸配列および変異体の準備
構成成分VHまたはVLアミノ酸配列、ならびに構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体は、任意の適した様式で調製されうる。たとえば、ポリペプチドは、組み換えによって、合成によって、またはこれらの方法の組み合わせによって産生されうる。そのようなペプチドを調製するための手段は当技術分野において十分に理解されている。
【0093】
ポリペプチドは、市販のペプチドシンセサイザー、たとえば固相合成によって合成されてもよく、または同様に無細胞翻訳系およびアミノ酸配列をコードするDNA構築物に由来するRNA分子を用いて産生されてもよい。または、ポリペプチドは、各々のアミノ酸配列をコードするDNA配列を含む発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトさせる段階、および宿主細胞におけるポリペプチドの発現を誘導する段階によって作製される。
【0094】
組み換えによる産生の場合、アミノ酸配列またはその変異体をコードする配列を含む組み換え型構築物を、リン酸カルシウム法によるトランスフェクション、DEAEデキストラン法によるトランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質によるトランスフェクション、電気穿孔、形質導入、scrape lading法、弾動による導入または感染などの慣用の方法によって宿主細胞に導入する。遺伝子工学による産生法の例は、大腸菌(E. coli)などの微生物の操作である。これらは、それらがアミノ酸配列を発現するように操作される。
【0095】
VH、またはVHおよびVLアミノ酸配列、またはその変異体を含むポリペプチドを、たとえば哺乳動物細胞、酵母、細菌、昆虫細胞、または他の細胞などの適した宿主細胞において、慣用の技術を用いて適当なプロモーターの制御下で発現させてもよい。適した宿主には、大腸菌、P.パストリス(P. pastoris)、COS細胞、293 HEK細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。適した宿主株を形質転換して宿主株を適当な細胞密度まで増殖させた後、細胞を遠心沈降によって回収して、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた粗抽出物を、ペプチドまたはその変異体をさらに精製するために保持する。
【0096】
組み換えによって発現されたペプチドの精製
酸抽出などの、細胞沈降物または細胞培養培地からの初回抽出による単離などの、形質転換宿主細胞から組み換え型タンパク質を単離するための慣用の技法の後に、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿などの塩析、および1つまたは複数のクロマトグラフィー段階を用いて、組み換え型VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列、または構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列を含む抗体を、組み換え型細胞培養物から回収および単離してもよい。そのようなクロマトグラフィーには、水性陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、またはレクチンクロマトグラフィーが含まれてもよい。ペプチドが単離および/または精製の際に変性する場合、タンパク質をリフォールドするための周知の技術を使用して、活性なコンフォメーションを再生してもよい。
【0097】
グリコシル化アミノ酸配列またはその変異体を産生する場合には、組み換え技術を用いることが好ましい。グリコシル化ペプチドまたはその変異体を産生するために、COS-7およびHep-G2細胞などの哺乳動物細胞を組み換え技術において使用することが好ましい。
【0098】
核酸分子
「核酸分子」、「核酸」、「核酸配列」、および「機能的核酸分子」は、本明細書において互換的に用いられ、本発明に従う抗体の対応する構成成分VHまたはVLアミノ酸配列をコードする任意の核酸分子、DNAまたはRNAを指す。これらのDNAまたはRNA分子はまた、ベクターに存在しうる。
【0099】
本発明はまた、構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体のみならず、構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列をコードする単離核酸分子を提供する。本発明の核酸分子はまた、ストリンジェントな条件で、好ましくは高ストリンジェント条件で、構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列をコードする核酸分子にハイブリダイズすることができる配列を有する核酸分子を包含する。当業者は、ハイブリダイゼーション条件が、核酸分子結合複合体またはプローブの融解温度(Tm)に基づくことを認識するであろう。
【0100】
本明細書において用いられるように、「ストリンジェントな条件」という用語は、約Tm−5〜約Tm−20の範囲内(プローブの融解温度より約5℃〜約20℃低い)で起こる「ストリンジェンシー」である。
【0101】
本明細書において用いられるように、「高ストリンジェント」条件は、少なくとも0.2×SSC緩衝液および少なくとも65℃を使用する。当技術分野において認識されるように、ストリンジェンシー条件は、プローブの長さおよび性質、すなわちDNAまたはRNA;標的配列の長さおよび性質;塩濃度;ならびにホルムアミド、デキストラン硫酸およびポリエチレングリコールなどの他の成分の濃度などのハイブリダイゼーション溶液の多数の要因を変化させることによって達成されうる。これらの要因は全て、先に記載した条件と同等であるストリンジェンシー条件を生成するために変化させてもよい。
【0102】
構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列をコードする配列を含む核酸分子を、当技術分野において公知である化学的方法または組み換え法を用いて、全体または部分的に合成してもよい。
【0103】
核酸分子は、構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列を産生するために有用であり、ゆえに本発明の抗VEGF-D抗体を産生するために有用である。たとえば、ペプチドをコードするRNA分子を、そのようなペプチドを調製するために、無細胞翻訳系においてまたは宿主細胞において用いてもよい。
【0104】
本発明の抗体の構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列をコードする核酸分子を用いて、当技術分野において周知の技術を用いて組み換え型ペプチドを発現させることができる。
【0105】
本発明の核酸分子はまた、コドン使用の縮重を考慮に入れて本発明の抗体のアミノ酸配列から誘導することができるDNA配列にも関する。これは、異なる発現宿主におけるコドン使用に関する知識と同様に、当技術分野において周知であり、構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列、または構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体の組み換えによる発現を最適化するために役立つ。
【0106】
本発明はまた、上記の核酸分子の全てと相補的である核酸分子を提供する。
【0107】
本発明の核酸分子を、本発明の抗体の構成成分VHまたはVHおよびVLアミノ酸配列の組み換えによる産生のために用いる場合、核酸分子には、アミノ酸配列のコード配列単独、またはリーダーもしくは分泌配列、プレ、プロ、またはプレプロタンパク質配列、または他の融合ペプチド部分をコードする配列などの他のコード配列とインリーディングフレームであるアミノ酸配列のコード配列が含まれてもよい。たとえば、融合ペプチドの精製を容易にするマーカー配列をコードすることができる。本発明のこの局面のある態様において、マーカー配列は、pQEベクター(Qiagen, Inc.)において提供されるヘキサ-ヒスチジンペプチドであるか、HAタグであるか、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼである。
【0108】
核酸分子はまた、転写された非翻訳配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、ならびにmRNAを安定化させる配列などの、5’および3’非コード配列を含有してもよい。
【0109】
ベクター、宿主細胞、発現
本発明はまた、本発明の核酸分子を含むベクター、本発明のベクターによって遺伝子工学操作された宿主細胞、および構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列または構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体の組み換え技術による産生にも関する。
【0110】
構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列をコードする核酸分子または構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体をコードする核酸分子を発現ベクターに導入して、細胞を形質転換するために用いてもよい。適した発現ベクターには、たとえば染色体、非染色体、エピソーム、ウイルス由来系および合成DNA配列、たとえばトランスポゾン、挿入エレメント、細菌プラスミド、ファージDNA、酵母プラスミド、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、バクテリオファージ、SV40派生体、ワクシニア、アデノウイルス、パポバウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、バキュロウイルス、およびレトロウイルスなどのウイルスDNAに由来するベクター、ならびにプラスミドと、コスミドおよびファージミドなどのバクテリオファージ遺伝子エレメントとに由来するベクターなどの、その組み合わせに由来するベクターが含まれる。DNA配列は、当技術分野において公知の慣用の技法によって発現ベクターに導入されてもよい。
【0111】
発現系は、発現を調節するのみならず発生させる制御領域を含有してもよい。
【0112】
発現ベクターにおいて、アミノ酸配列をコードするDNA配列は、mRNA合成を指示する発現制御配列、すなわちプロモーターに機能的に連結する。そのようなプロモーターの代表的な例には、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージラムダPLプロモーター、および原核細胞もしくは真核細胞またはウイルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターが含まれる。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含有してもよい。
【0113】
組み換え型発現ベクターにはまた、複製開始点、および形質転換細胞、すなわち異種由来DNA配列を発現している細胞の選択を可能にするための大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子などの選択可能なマーカーが含まれてもよい。抗体の構成成分VHもしくはVLアミノ酸配列または抗体そのものをコードする核酸分子を、翻訳開始および終止配列とインフレームとなるようにベクターに組み入れてもよい。
【0114】
無細胞翻訳系もまた、本発明のDNA構築物に由来するRNAを用いてそのようなタンパク質を産生するために使用することができる。
【0115】
組み換えによる産生に関して、宿主細胞を、本発明の核酸分子に関する発現系またはその一部を組み入れるように遺伝子工学操作することができる。宿主細胞への核酸分子の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン法によるトランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質によるトランスフェクション、電気穿孔、形質導入、scrape loading、弾動による導入、または感染などの方法を用いて当業者によって行われうる。
【0116】
適当な宿主の代表的な例には、髄膜炎菌(meningococci)、連鎖球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、大腸菌、ストレプトミセス(Streptomyces)、および枯草菌(Bacillus subtilis)細胞などの細菌細胞;真菌細胞、およびアスペルギルス(Aspergillus)細胞;酵母細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293およびBowes黒色腫細胞などの動物細胞;ならびに植物細胞が含まれる。
【0117】
一般的に、宿主においてアミノ酸配列を産生するために核酸分子を維持、伝播させる、または発現させるために適した任意の系またはベクターを用いてもよい。適当な核酸配列を、任意の多様な周知のおよびルーチン技術によって発現系に挿入してもよい。
【0118】
翻訳されたアミノ酸配列を小胞体の内腔に、ペリプラスム間隙に、または細胞外環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを所望のアミノ酸配列に組み入れてもよい。これらのシグナルは、アミノ酸配列に対して内因性であってもよく、またはそれらは異種由来シグナルであってもよい。
【0119】
追加の例示的な発現構築物には、ウイルスまたはウイルスゲノムに由来する工学操作構築物が含まれる。発現構築物は一般的に、本明細書において記述される任意の核酸分子が含まれる、発現される遺伝子または結合構築物をコードする核酸、および同様に投与される細胞における遺伝子の発現を行うであろう追加の調節領域を含む。そのような調節領域には、たとえばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル等が含まれる。
【0120】
多様なウイルスベクターを用いてDNAを細胞に導入してもよい。そのような態様において、関心対象遺伝子を含有するウイルスベクターを含む発現構築物は、アデノウイルス(たとえば、各々が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,824,544号;米国特許第5,707,618号;米国特許第5,693,509号;米国特許第5,670,488;米国特許第5,585,362号を参照されたい)、レトロウイルス(たとえば、各々が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,888,502号;米国特許第5,830,725号;米国特許第5,770,414号;米国特許第5,686,278号;米国特許第4,861,719号を参照されたい)、アデノ随伴ウイルス(たとえば、各々が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,474,935号;米国特許第5,139,941号;米国特許第5,622,856号;米国特許第5,658,776号;米国特許第5,773,289号;米国特許第5,789,390号;米国特許第5,834,441号;米国特許第5,863,541号;米国特許第5,851,521号;米国特許第5,252,479号を参照されたい)、アデノウイルス-アデノ随伴ウイルスハイブリッド(たとえば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,856,152号を参照されたい)、またはワクシニアウイルスもしくはヘルペスウイルス(たとえば、各々が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,879,934号;米国特許第5,849,571号;米国特許第5,830,727号;米国特許第5,661,033号;米国特許第5,328,688号を参照されたい)ベクターであってもよい。本明細書において記述される他のベクターも同様に使用してもよい。
【0121】
他の態様において、非ウイルス送達が企図される。これらには、リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb, Virology, 52:456-467 (1973); Chen and Okayama, Mol Cell Biol, 7:2745-2752, (1987); Rippe, et al., Mol. Cell Biol., 10:689-695 (1990))、DEAE-デキストラン(Gopal, Mol. Cell Biol, 5:1188-1190 (1985))、電気穿孔(Tur-Kaspa, et al., Mol. Cell Biol, 6:716-718, (1986); Potter, et al, Proc. Nat. Acad. Sci USA, 81:7161-7165, (1984))、直接マイクロインジェクション(Harland and Weintraub, J. Cell Biol, 101:1094-1099 (1985))、DNAロードリポソーム(Nicolau and Sene, Biochim. Biophys. Acta, 721:185-190 (1982) (Radler, et al, Science, 275(5301):810-4, (1997)); Fraley, et al, Proc. Natl Acad. Sci USA, 76:3348-3352 (1979); Felgner, Sci Am., 276(6):102-6 (1997); Felgner, Hum. Gene Ther., 7(15):1791-3, (1996))、細胞超音波(Fechheimer, et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 84:8463-8467 (1987))、高速微小発射物を用いる遺伝子衝突(Yang, et al, Proc. Natl Acad. Sci USA, 87:9568-9572 (1990))、受容体媒介トランスフェクション(Wu and Wu, J. Biol Chem., 262:4429-4432 (1987); Wu and Wu, Biochemistry, 27:887-892 (1988); Wu and Wu, Adv. Drug Delivery Rev., 12:159-167 (1993))、および裸のDNAの注入(Dubensky, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81 :7529-7533 (1984))(Benvenisty and Neshif, Proc. Nat. Acad. Sci USA, 83:9551-9555 (1986))が含まれる。
【0122】
治療遺伝子をコードする核酸を細胞に送達するために使用することができる他のベクター送達系には、受容体媒介送達ビヒクルが含まれる。受容体媒介遺伝子ターゲティングビヒクルは一般的に2つの成分からなる:細胞受容体特異的リガンドおよびDNA結合物質。アシアロオロソムコイド(ASOR)(Wu and Wu (1987)、前記)、トランスフェリン(Wagner, et al, Proc. Natl Acad Sci USA, 87(9):3410-3414 (1990))、ASORと同じ受容体を認識する合成ネオ糖タンパク質(Ferkol, et al, FASEB. J, 7:1081-1091 (1993); Perales, et al, Proc. Natl. Acad. Sci, USA 91:4086-4090 (1994))、および上皮細胞増殖因子(EGF)(Myers, EPO 0273085)が含まれるいくつかのリガンドが受容体媒介遺伝子移入のために用いられている。
【0123】
ベクター/発現構築物は任意で、5'隣接配列、複製開始点、転写終止配列、選択可能なマーカー配列、リボソーム結合部位、シグナル配列、および1つまたは複数のイントロン配列などのエレメントを含有してもよい。5'隣接配列は、同種由来(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または株から)、異種由来(すなわち、宿主細胞種または株以外の種)、ハイブリッド(すなわち、1つより多いソースからの5'隣接配列の組み合わせ)、合成であってもよく、または本来のポリペプチド5'隣接配列であってもよい。
【0124】
遺伝子治療のためのプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサー、レトロウイルスの長末端反復(LTR)、ケラチン14プロモーター、およびαミオシン重鎖プロモーターが含まれる。
【0125】
さらなる態様において、発現構築物は、細胞からの成熟ポリペプチドまたはタンパク質の分泌を指示するように作用する分泌シグナルアミノ酸配列をコードするペプチドまたはヌクレオチド配列などのシグナル配列を含む。遺伝子治療ベクターにおいて用いるための例示的なシグナル配列は、当技術分野において周知である。
【0126】
抗体
「抗体」という用語は、その最も広い意味で用いられ、具体的にたとえばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(アンタゴニストおよび中和抗体が含まれる)、多価エピトープ特異性を有する抗体組成物、および一本鎖抗体を含む。「抗体」という用語はまた、所望の生物活性または免疫学的活性を示す限り、抗体の断片(すなわち、抗体断片)を含む。
【0127】
「抗体断片」は、抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗原結合断片は、断片が由来する抗体と同じ抗原結合特異性を保持し、同じまたは類似の中和能を保持する。
【0128】
本発明のある態様において、VEGF-Dの活性を中和する抗原結合断片が提供される。そのような断片は、記述の抗体のFab、Fab'、F(ab')2、Fv、ScFv断片などの無傷、および/またはヒト化および/またはキメラ抗体の機能的な抗原結合断片であってもよい。同様に、シングルドメイン「抗体」も含まれる。
【0129】
従来、そのような断片は、無傷の抗体のタンパク質分解消化によって、たとえばパパイン消化によって産生されるが、組み換えによって形質転換された宿主細胞から直接産生されてもよい。その上、抗原結合断片は、多様な工学操作技術を用いて産生してもよい。Fv断片は、その2つの鎖の相互作用エネルギーがFab断片より低いように思われる。VHとVLドメインの会合を安定化させるために、それらは、ペプチド、ジスルフィド架橋、および「ノブインホール」変異に連結されている。
【0130】
本明細書において用いられるように、「抗体」には、具体的に免疫グロブリンおよびそこから誘導することができる任意の機能的断片の双方が含まれる。
【0131】
「特異的結合」、「特異的に結合する」、「特異的に結合する」、または「特異的である」という用語は、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、分子が特定のポリペプチド上の特定のエピトープに結合する結合を指す。そのような結合は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる。特異的結合は、たとえば一般的に結合活性を有しない類似の構造の分子である対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって測定されうる。たとえば、特異的結合は、標的、たとえば過剰量の非標識標的と類似である対照分子との競合によって決定されうる。この場合、特異的結合は、標識標的のプローブに対する結合が過剰量の非標識標的によって競合的に阻害される場合に示される。
【0132】
本明細書において用いられるように、「特異的結合」は、抗体の構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列、または構成成分VHもしくはVHおよびVLアミノ酸配列を含む本発明の抗体と、VEGF-Dポリペプチドとの相互作用に関連して用いられる。
【0133】
より詳しくは、「特異的結合」は、成熟VEGF-Dポリペプチド、すなわち完全長のプレプロポリペプチドがN-およびC末端の双方でタンパク質分解によってプロセシングされて、およそ21 kDa(単量体として)の長さがアミノ酸残基およそ110〜115個の成熟した活性なVEGF-D△N△Cタンパク質を産生して、二量体として自己会合するVEGF-Dとの相互作用に関連して用いられる。「成熟VEGF-D」に結合する抗体の目的に関して、「成熟VEGF-D」という用語は、(a)SEQ ID NO:31のアミノ酸91〜205位内の(および任意で91〜205位が含まれる)完全長のVEGF-Dの断片である;(b)二量体として自己会合する;および(c)本明細書において記述されるBa/F3アッセイによってアッセイした場合に生物活性である、直前に記述したN-およびC末端プロセシングVEGF-D△N△Cを指すことを意味する(異なるN-またはC末端残基を有することにより、より大きいまたはより小さい他の型の生物活性N-およびC末端プロセシングVEGF-Dが存在する可能性があり、これは他の文脈において成熟VEGF-Dと呼ばれることがある)。例示的な成熟型VEGF-Dは、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、国際特許出願PCT/US97/14696(WO98/07832)および(Achen et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 95: 548-553, 1998)に記述されている。
【0134】
「特異的結合」はまた、VEGF-Dの生物活性を部分的または完全に遮断する、中和する、低減させる、または拮抗する本発明の物質に関連して用いられる。
【0135】
本明細書において用いられる「特異的結合」は、本発明の抗体が、VEGF-Cにいかなる実質的な程度にも結合または中和することができないことを示す。
【0136】
詳しくは、特異的結合とは、非特異的標的に対する解離定数より少なくとも2倍大きい解離定数(KD)を有する分子、好ましくは非特異的標的に対する解離定数より少なくとも4倍、6倍、8倍、10倍、またはそれより大きいKDを有する分子を指す。または、特異的結合は、標的に対して少なくとも約10-4 M、または少なくとも約10-5 M、または少なくとも約10-6 M、または少なくとも約10-7 M、または少なくとも約10-8 M、または少なくとも約10-9 M、または少なくとも約10-10 M、または少なくとも約10-11 M、または少なくとも約10-12 M、またはそれ未満のKDを有する分子として表現されうる。ある態様において、本明細書において記述される抗体は、約10-8 M〜10-12 M、または約10-9 M〜10-12 M、または約10-9 M〜10-11 Mの範囲の親和性KdでVEGF-Dに結合する。親和性は、表面プラズモン共鳴、または実施例において記述される技術が含まれるがこれらに限定されるわけではない、当技術分野において周知の技術を用いて測定される。
【0137】
本発明の抗体は、VEGF-Dタンパク質を分析するために用いられてもよい。
【0138】
一本鎖抗体を産生するための技術を用いて、本発明の抗体を産生することができる。同様に、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物が含まれる他の生物を用いて本発明の抗体を発現させてもよい。
【0139】
「単離抗体」は、その天然の環境の成分から同定および分離および/または回収されている抗体である。その天然の環境の混入成分は、抗体の診断または治療的使用を妨害する材料であり、これには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が含まれる可能性がある。一般的に、抗体は、(1)Lowry法によって決定した場合に抗体の重量の95%より多くなるまで、および最も好ましくは重量で99%より多くまで、(2)スピニングカップシーケネーター(spinning cup sequenator)を用いることによってN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3)還元もしくは非還元条件下でクーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いてSDS-PAGEによって均一になるまで、精製されるであろう。単離抗体には、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないことから、組み換え型細胞におけるインサイチュー抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体は少なくとも1つの精製段階によって調製されるであろう。
【0140】
抗体断片を用いる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性断片が好ましい。
【0141】
モノクローナル抗体
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種由来の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち集団を含む個々の抗体が、微量で存在する可能性がある起こりうる天然に存在する変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、1つの抗原性部位に向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体が含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に向けられる。その特異性の他に、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入することなくそれらが合成される可能性があるという点において有利である。
【0142】
修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されてはならない。モノクローナル抗体の調製に関して、連続的な細胞株培養によって産生された抗体を提供する任意の技術を用いることができる。例には、ハイブリドーマ技術、トリオーマ技術、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV-ハイブリドーマ技術が含まれる。
【0143】
DNAを発現ベクターに入れてもよく、次にこれを、そうでなければ抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトさせて、組み換え型宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。
【0144】
モノクローナル抗体または抗体断片は、抗体ファージライブラリから単離されうる。高親和性(nM範囲)ヒト抗体は、非常に大きいファージライブラリを構築するための戦略として、チェーンシャッフリングのみならず、複合感染およびインビボ組み換えによって生成されうる。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替法である。
【0145】
ファージディスプレイ技術を用いて、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体および抗体断片を産生することができる。ファージディスプレイは多様なフォーマットで行うことができる。V-遺伝子セグメントのいくつかのソースをファージディスプレイのために用いることができる。
【0146】
抗体をコードするDNAを改変して、キメラまたは融合抗体ポリペプチドを産生してもよい。本明細書において用いられるモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、鎖の残りが、もう1つの種に由来するまたはもう1つの抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体のみならず、それらが所望の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片が含まれる。
【0147】
抗体断片
「抗体断片」は、抗体の部分、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ダイアボディ;直線状抗体;一本鎖抗体分子(たとえば、ラクダ、サメIgNAR);および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0148】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、残りのFc断片を生じ、この呼称は容易な結晶化能を反映している。各々のFab断片は抗原結合に関して一価であり、すなわち、1つの抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処置は1つの大きいF(ab')2断片を生じ、これは二価の抗原結合活性を有するジスルフィド連結した2つのFab断片におおよそ対応し、なおも抗原とクロスリンクすることができる。Fab'断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端で抗体ヒンジ領域から1つまたは複数のシステインが含まれる追加の残基を有することにより、Fab断片とは異なる。Fab' SHは定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するFab'に関する本明細書での呼称である。F(ab')2抗体断片は、当初、それらのあいだにヒンジシステインを有するFab'断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも同様に公知である。
【0149】
「Fv」は、完全な抗原認識結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、堅固に非共有的に会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらのフォールディングから、2つのドメインは、抗原結合のためのアミノ酸残基を与えて、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(HおよびL鎖から各々3個のループ)を広げる。しかし、1つの可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3個のCDRのみを含むFvの半分)でさえも、抗原の認識および結合能を有することができる。そのような抗体断片は典型的に、「シングルドメイン抗体」と呼ばれる。
【0150】
「scFv」と省略される「一本鎖Fv」は、1つのポリペプチド鎖に接続されるVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、scFvポリペプチドはさらに、それによってscFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成することができるポリペプチドリンカーをVHおよびVLドメインのあいだに含む。
【0151】
ScFv断片は、当業者に周知の方法によって産生されうる。ScFvは、大腸菌などの細菌細胞において産生されてもよいが、より好ましくは真核細胞において産生される。ScFvの短所には、産物が一価であるために多価結合によるアビディティの増加が排除されること、および短い半減期が含まれる。これらの問題を克服する試みには、化学的カップリングによりまたは非対形成C末端システイン残基を含有するScFvの自然発生的部位特異的二量体化により追加のC末端システインを含有する、ScFvから産生された二価(ScFv')2が含まれる。
【0152】
状況によっては、全抗体よりむしろ抗体断片を用いる長所が存在する。断片のサイズがより小さいことによって、急速なクリアランスが可能となり、固形腫瘍に対するアクセスの改善に至る可能性がある。
【0153】
抗体断片を産生するために、様々な技術が開発されている。従来、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク質分解消化によって誘導された。しかし、組み換え型宿主細胞によって、これらの断片を直接産生することができる。Fab、Fv、およびScFv抗体断片は全て、大腸菌において発現されて、大腸菌から分泌させることができ、このようにこれらの断片の大量を容易に産生することができる。抗体断片は、抗体ファージライブラリから単離することができる。または、Fab'-SH断片を大腸菌から直接回収して、化学的にカップリングさせてF(ab')2断片を形成することができる。もう1つのアプローチに従って、F(ab')2断片は、組み換え型宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、インビボ半減期が増加したFabおよびF(ab')2断片も同様に用いてもよい。
【0154】
抗体断片を産生するための他の技術は、当業者に明らかであろう。選択される抗体はscFv断片である。FvおよびscFvは、定常領域を欠く無傷の結合部位を有する唯一の種であり、このようにそれらはインビボで用いる際に非特異的結合を低減させるために適している。抗体断片はまた、「直線状の抗体」であってもよく、これは単特異性であっても、二重特異性であってもよい。
【0155】
二重特異性および多価抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体は、完全長の抗体または抗体断片(たとえば、F(ab')2二重特異性抗体)として調製されうる。
【0156】
ペプチドリンカーを3〜12残基に短縮することによって、ScFvに多量体を形成させることができ、「ダイアボディ」を形成させることができる。「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ではなくて鎖間での対形成が得られるように、VHおよびVLドメインのあいだに短いリンカー(約5〜10残基)を有するscFv断片を構築することによって調製され、それによって二価の断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が得られる低分子抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在する2つの「クロスオーバー」scFv断片のヘテロ二量体である。
【0157】
二重特異性抗体断片を作製するための代替「ダイアボディ」技術に従って、断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成するには短すぎるリンカーによってVLに接続されたVHを含む。よって、1つの断片のVHおよびVLドメインは、もう1つの断片の相補的VLおよびVHドメインと強制的に対を形成し、それによって2つの抗原結合部位を形成する。scFv二量体を用いることによって二重特異性抗体断片を作製するもう1つの戦略も同様に報告されている。
【0158】
リンカーを還元することによってなおさらに、ScFV三量体(「トリアボディ」)および四量体(「テトラボディ」)を得ることができる。二価のScFV分子の構築はまた、タンパク質二量体形成モチーフとの遺伝子融合によって達成され、「ミニ抗体」および「ミニボディ」を形成することができる。第三のペプチドリンカーによって2つのScFv単位を連結することにより、ScFv-ScFvタンデム((ScFv)2)も同様に産生してもよい。二重特異性ダイアボディは、もう1つの抗体のVLドメインに短いリンカーによって接続された1つの抗体のVHドメインからなる2つの一本鎖融合産物の非共有的会合を通して産生されうる。そのような二重特異性ダイアボディの安定性は、ジスルフィド架橋もしくは「ノブインホール」変異の導入によって、または2つのハイブリッドScFv断片がペプチドリンカーを通して接続される一本鎖ダイアボディ(ScDb)の形成によって増強されうる。たとえばScFv断片を、IgG分子のCH3ドメインに、またはヒンジ領域を通してFab断片に融合させることによって、四価の二重特異性分子が利用可能である。または、四価の二重特異性分子は、二重特異性一本鎖ダイアボディの融合によって作製されている。より小さい四価の二重特異性分子も同様に、ScFv-ScFvタンデムを、ヘリックスループヘリックスモチーフを含有するリンカーによって二量体形成させることによって(DiBiミニ抗体)、または分子内対形成を防止する方向に4つの抗体可変ドメイン(VHおよびVL)を含む一本鎖分子(タンデムダイアボディ)によって形成することができる。二重特異性F(ab')2断片は、Fab'断片の化学的カップリングによって、またはロイシンジッパーを通してのヘテロ二量体形成によって作製することができる。
【0159】
抗原に結合することができる、ドメイン抗体または「dAb」として知られている単離されたVHおよびVLドメインも同様に利用可能である。
【0160】
二重特異性抗体には、クロスリンクまたは「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有的に連結された抗体で構成される。抗体は、クロスリンク剤を伴うタンパク質化学が含まれる合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製されてもよいと企図される。たとえば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の1つをアビジンにカップリングさせて、もう一方をビオチンにカップリングさせることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便なクロスリンク法を用いて作製してもよい。適したクロスリンク剤およびクロスリンク技術は当技術分野において周知である。
【0161】
二重特異性抗体を作製する方法は当技術分野において公知である。完全長の二重特異性抗体の従来の産生は、2つの鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づいている。
【0162】
異なるアプローチに従って、望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。たとえば、化学的連結を用いて二重特異性抗体を調製することができる。
【0163】
最近の進歩により、大腸菌からFab'-SH断片を直接回収することが容易となっており、これを化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができる。組み換え型細胞培養物から二重特異性抗体断片を直接作製および単離するための様々な技術も同様に記述されている。
【0164】
2つより多い価数を有する抗体が本発明において用いるために企図される。たとえば、三重特異性抗体を調製することができる。本発明の二重特異性抗体および三重特異性抗体の例示的なエピトープには、追加のVEGF-Dエピトープおよび他のVEGFファミリーメンバー(VEGF-A、-B、-C;PDGF-A、-B、-C、および-D)からのエピトープが含まれる。たとえば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Eriksson et alの米国特許出願公開第2005/0282233号を参照されたい。
【0165】
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体より速くインターナライズ(および/または異化)される可能性がある。本発明において用いられる抗体は、3つまたはそれより多くの抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外である)(たとえば、四価の抗体)でありえて、これらは抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組み換え発現によって容易に産生されうる。多価抗体は、二量体化ドメインと3つまたはそれより多くの抗原結合部位とを含みうる。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはからなる)。このシナリオにおいて、抗体は、Fc領域と、Fc領域に対してアミノ末端で3つまたはそれより多くの抗原結合部位とを含むであろう。本明細書における好ましい多価抗体は、3個〜約8個の抗原結合部位を含む(またはからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖を含み(および2つのポリペプチド鎖を含んでもよく)、ポリペプチド鎖は、2つまたはそれより多くの可変ドメインを含む。例として、ポリペプチド鎖は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含んでもよく、式中VD1は第一の可変ドメインであり、VD2は第二の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2は、アミノ酸またはポリペプチドを表し、ならびにnは、0または1である。例として、ポリペプチド鎖は、以下を含んでもよい:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖。本明細書における多価抗体は、例として約2個〜約8個の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含んでもよい。本明細書において企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意でCLドメインをさらに含む。
【0166】
本発明に従うそのような抗体はまた、変異体またはその断片のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を検出するための分析または診断法において使用されてもよい。
【0167】
投与のための組成物
本発明の抗体または他の物質は、薬学的組成物または獣医学組成物として提供されてもよい。
【0168】
「薬学的組成物」は、ヒトに投与するために適している組成物である。「獣医学組成物」は、動物に投与するために適している組成物である。
【0169】
本発明の方法において用いられる薬学的または獣医学的組成物は、薬学的に許容される担体を含んでもよく、任意でもう1つの治療物質を含んでもよい。各々の担体、希釈剤、アジュバント、および/または賦形剤は薬学的に「許容され」でなければならない。
【0170】
「薬学的に許容される担体」は、生物学的にまたはそれ以外で望ましい材料を意味し、すなわち材料は、選択された活性物質と共に個体に投与されて、それによっていかなる望ましくない生物効果も引き起こさず、またはそれが含有される薬学的組成物の他のいかなる成分とも有害なように相互作用しない。
【0171】
同様に、「薬学的に許容される」塩またはエステルは、生物学的またはそれ以外で望ましい塩またはエステルである。
【0172】
本明細書において用いられるように、「薬学的担体」は、物質を対象に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤、またはビヒクルである。担体は液体または固体であってもよく、考えにある計画される投与様式によって選択される。各担体は、生物学的にまたはそれ以外で望ましいという意味で薬学的に「許容され」なければならず、すなわち担体は、いかなるまたは実質的に有意な反応を引き起こすことなく、物質と共に対象に投与される可能性がある。
【0173】
薬学的組成物を、慣用の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する製剤で、経口、局所適用、または非経口投与してもよい。
【0174】
本明細書において用いられる「非経口」という用語には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、結膜下、腔内、経皮、および皮下注射、肺もしくは鼻腔に投与するためのエアロゾル、またはたとえば浸透圧ポンプによる注入による投与が含まれる。
【0175】
本発明の物質は、VEGF-Dに関連する血管新生、特に癌様疾患の血管新生に向けられてもよい。または、物質は、VEGF-Dの中和に応答する状態に向けられてもよい。状態には、血管新生、特に血管新生の調節不全、リンパ管新生の調節不全、関節リウマチ、乾癬、リンパ管筋腫症、および他の炎症状態が含まれてもよい。
【0176】
薬学的組成物
薬学的組成物は、本発明の核酸分子、ベクター、または抗体を含んでもよい。好ましくは、薬学的組成物は、本発明の抗体を含む。そのような薬学的組成物は一般的に、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む。
【0177】
獣医学的組成物
本発明の核酸分子、ベクター、または抗体はまた、たとえば当技術分野において慣用である方法によって調製されてもよい獣医学的組成物の形状で用いるために表されてもよい。そのような獣医学的組成物の例には、
(a)経口投与、外部適用、たとえば水薬(たとえば、水性または非水性溶液または懸濁液);錠剤またはボーラス;飼料と混合するための粉末、顆粒、またはペレット;特に反芻動物に投与する場合に第一胃の中で保護されるように適合させた、舌に適用するための練り餌;
(b)たとえば滅菌溶液または懸濁液としての皮下、筋肉内、または静脈内注射による非経口投与;または(適当であれば)懸濁液もしくは溶液が乳首から乳腺に導入される乳腺内注射;
(c)たとえば皮膚に適用されるクリーム、軟膏、もしくはスプレーとしての局所適用;または
(d)たとえばペッサリー、クリームまたはフォームとしての膣内投与
のために適合された組成物が含まれる。
【0178】
本発明の物質は、異なるように、たとえばカプセル剤形または錠剤剤形で静脈内、皮下、または経口投与されうる。物質が核酸分子を含有する場合、投与はまた、生物から細胞を採取する段階、核酸分子をこれらの細胞に貫入させる段階、および処置した細胞を生物に再度貫入させる段階を含む、エクスビボ技法を用いて行うことができる。
【0179】
担体および賦形剤
許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これらには、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸の緩衝液などの緩衝液、アスコルビン酸が含まれる抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは抗体などのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはPEGなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0180】
経口賦形剤は、たとえば(1)炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;(2)コーンスターチまたはアルギン酸などの造粒および崩壊剤;(3)デンプン、ゼラチン、またはアカシアなどの結合剤;ならびに(4)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクなどの潤滑剤であってもよい。これらの錠剤は、非コーティングであってよく、または消化管での崩壊および吸収を遅らせて、それによってより長い期間持続的な作用を提供するために公知の技術によってコーティングされてもよい。たとえば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの遅延放出材料を使用してもよい。
【0181】
当業者に公知の任意の適した担体を本発明の薬学的組成物において使用してもよいが、担体のタイプは、投与様式および実質的な放出が望ましいか否かに応じて変化するであろう。皮下注射などの非経口投与の場合、担体は好ましくは、水、生理食塩液、アルコール、脂肪、ロウ、または緩衝液を含む。
【0182】
生物分解性のミクロスフェア(たとえば、ポリ乳酸ガラクチド)もまた、本発明の薬学的組成物のための担体として使用してもよい。任意で薬学的組成物は補助剤を含む。
【0183】
本発明の抗体、核酸分子、ベクター、または薬学的組成物は、錠剤、水性または油性懸濁液、ロゼンジ、トローチ、粉剤、顆粒剤、エマルション、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤として経口投与されてもよい。経口で用いるための組成物はまた、薬学的に洗練された味のよい調製物を提供するために、甘味料、香料、着色剤、および保存剤の群から選択される物質を含有してもよい。適した甘味料には、スクロース、乳糖、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンが含まれる。適した崩壊剤には、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンゴム、ベントナイト、アルギン酸、または寒天が含まれる。適した着香料には、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、サクランボ、オレンジ、またはラズベリー香料が含まれる。適した保存剤には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムが含まれる。適した潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクが含まれる。適した遅延放出物質には、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが含まれる。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合して物質を含有してもよい。
【0184】
非経口投与のための組成物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、またはエマルションが含まれる。水性および非水性滅菌注射用溶液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および組成物をレシピエントの血液と等張にする溶質、ならびに懸濁剤または濃化剤が含まれてもよい水性および非水性滅菌懸濁剤を含有してもよい。
【0185】
非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩液および緩衝培地が含まれる水、アルコール/水溶液、エマルションまたは懸濁剤が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムが含まれ、乳酸加リンゲル静脈内ビヒクルには液体および栄養補給剤、電解質補給剤(リンゲルデキストロースに基づく補給剤などの)等が含まれる。保存剤、ならびにたとえば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、増殖因子、および不活性気体等などの他の添加剤も同様に存在してもよい。
【0186】
薬学的組成物はまた、補助的、追加の、または増強された治療的機能を提供する他の活性化合物を含有してもよい。
【0187】
増殖因子(たとえば、BMP、TGF-P、FGF、IGF)、サイトカイン(たとえば、インターロイキンおよびCDF)、抗生物質、および処置される状態にとって有益な他の任意の治療物質などの他の治療的に有用な物質を、任意で本発明の物質に含めてもよく、または本発明の物質と同時にもしくは連続的に投与してもよい。それらの目的のために有効である可能性がある他の物質には、腫瘍壊死因子(TNF)、酸性もしくは塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)または肝細胞増殖因子(HGF)の血管新生活性を阻害もしくは中和することができる抗体、組織因子、プロテインC、もしくはプロテインSの凝固活性を阻害もしくは中和することができる抗体、HER2受容体に結合することができる抗体、またはたとえばアルキル化剤、葉酸拮抗剤、核酸代謝の抗代謝剤、抗生物質、ピリミジンアナログ、5-フルオロウラシル、シスプラチン、プリンヌクレオシド、アミン、アミノ酸、トリアゾールヌクレオシド、もしくはコルチコステロイドなどの1つもしくは複数の慣用の治療物質が含まれる。そのような他の物質は、投与される組成物に存在してもよく、または個別に投与されてもよい。同様に、物質は、ふさわしくは、連続的に、または放射線照射もしくは放射活性物質の投与を伴うか否かによらず、放射線処置と併用して投与される。
【0188】
1つの態様において、腫瘍の血管形成は、併用治療において攻撃される。本発明の物質は、たとえば腫瘍またはもしあればその転移病巣の壊死を観察することによって決定される治療的有効量で、腫瘍を有する患者に投与されてもよい。この治療は、これ以上の有益な効果が観察されなくなるまで、または臨床検査により腫瘍もしくはいかなる転移病巣の痕跡も示されなくなるまで継続される。次に、TNFを単独で、またはα-、β-、もしくはγ-インターフェロン、抗-HER2抗体、ヘレグリン、抗ヘレグリン抗体、D-因子、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、または抗プロテインC抗体、抗プロテインS抗体、もしくはC4b結合タンパク質などの腫瘍における微小血管凝固を促進する物質などの補助物質、または熱もしくは放射線と併用して投与する。
【0189】
補助物質は、その有効性が多様であることから、慣用の様式でのマトリクススクリーニングによって腫瘍に及ぼすその影響を比較することが望ましい。抗体などの本発明の物質、およびTNFの投与は、望ましい臨床効果が達成されるまで繰り返される。または、抗VEGF剤をTNFと共に、および任意で補助物質と共に投与してもよい。固形腫瘍が、脚または全身循環からの隔離を受けやすい他の位置で見いだされる場合、本明細書において記述される治療物質は、孤立した腫瘍または臓器に投与される。他の態様において、抗FGFもしくは抗PDGF中和抗体などの、FGFまたは血小板由来増殖因子(PDGF)のアンタゴニストが、本発明の物質と共に患者に投与される。創傷治癒または望ましい新生血管形成期間のあいだ、本発明の物質による処置を中断してもよい。
【0190】
本発明の物質は、単独で、または化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入、またはこれらの任意の組み合わせなどの1つもしくは複数の追加の治療と併用して投与されうる。他の処置戦略の状況におけるアジュバント療法と同様に、長期間の治療が等しく可能である。
【0191】
本発明の抗体は、疎水性、親水性、イオン性、および/または共有的相互作用により、異種由来ポリペプチド、異種由来核酸、毒素、またはプロドラッグに会合してもよい。1つの態様において、本発明は、異種由来ポリペプチドまたは核酸に会合させた本発明の抗体を投与することによる、本発明の組成物の細胞への特異的送達法を提供する。1つの例において、本発明は、標的細胞に治療タンパク質を送達する方法を提供する。もう1つの例において、本発明は、一本鎖核酸(たとえば、アンチセンスまたはリボザイム)または二本鎖核酸(たとえば、細胞のゲノムに組み入れられうるまたはエピソームとして複製することができ、および転写されうるDNA)を標的細胞に送達する方法を提供する。
【0192】
もう1つの態様において、本発明は、毒素または細胞障害性プロドラッグに会合させた本発明の抗体を投与することによる、細胞の特異的破壊(たとえば、腫瘍細胞の破壊)のための方法および組成物を提供する。特異的態様において、本発明は、毒素または細胞障害性プロドラッグに会合させた本発明の抗体を、VEGF-D受容体発現細胞に接触させることによって、VEGF-D受容体を発現する細胞を特異的に破壊するための組成物、およびインビトロまたはインビボ法を提供する。
【0193】
「毒素」とは、内因性の細胞障害性エフェクター系に結合してこれを活性化させる化合物、放射性同位元素、ホロ毒素、修飾毒素、毒素の触媒サブユニット、または既定の条件下で細胞死を引き起こす細胞表面内もしくは表面上に通常存在しない任意の分子もしくは酵素を意味する。本発明の方法に従って用いられてもよい毒素には、当技術分野において公知の放射性同位元素、たとえば固有のまたは誘導された内因性の細胞障害性エフェクター系に結合する抗体(またはその補体固定含有部分)、チミジンキナーゼ、エンドヌクレアーゼ、RNAse、α毒素、リシン、アブリン、シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシンA、ジフテリア毒素、サポリン、モモルジン、ゲロニン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、α-サルシン、およびコレラ毒素などの化合物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。「細胞障害性プロドラッグ」とは、細胞に通常存在する酵素によって細胞障害性化合物に変換される非毒性化合物を意味する。本発明の方法に従って用いられてもよい細胞障害性プロドラッグには、安息香酸のグルタミル誘導体、マスタードアルキル化剤、エトポシドまたはマイトマイシンCのリン酸誘導体、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、およびドキソルビシンのフェノキシアセトアミド誘導体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0194】
ある態様において、本発明の治療物質は単独で用いられうる。または、物質は、増殖障害(たとえば、腫瘍)の処置または予防に向けられる他の慣用の抗癌治療アプローチと併用して用いられてもよい。たとえば、そのような方法を予防的な癌の防止、術後の癌の再発および転移の防止、ならびに他の慣用の癌治療の補助剤として用いることができる。本発明は、慣用の癌治療(たとえば、化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法、および手術)の有効性が、本発明の治療物質を用いることを通して増強されうることを認識する。
【0195】
多種多様な慣用の化合物が抗新生物活性を有することが示されている。これらの化合物は、固形腫瘍を退縮させるために、転移およびさらなる増殖を防止するために、または白血病もしくは骨髄悪性疾患における悪性細胞の数を減少させるために、化学療法における薬剤として用いられている。化学療法は、様々なタイプの悪性疾患を処置するために有効であるが、多くの抗新生物化合物は、望ましくない副作用を誘導する。2つまたはそれより多くの異なる処置を組み合わせると、処置は相乗的に作用して、処置の各々の用量を低減させて、それによってより高用量で各化合物が発揮する有害な副作用を低減させる可能性があることが示されている。他の例において、処置に不応性である悪性疾患は、2つまたはそれより多くの異なる処置の併用治療に応答する可能性がある。
【0196】
本発明の治療物質を、もう1つの慣用の抗新生物剤と併用して同時にまたは連続的に投与する場合、そのような治療物質は、抗新生物剤の治療効果を増強する、またはそのような抗新生物剤に対する細胞の抵抗性を克服することが見いだされる可能性がある。これによって、抗新生物剤の用量を減少させて、それによって望ましくない副作用を低減させる、または抵抗性細胞における抗新生物剤の有効性を回復することができる。
【0197】
併用抗腫瘍治療のために用いられてもよい薬学的化合物には、例を挙げると以下が含まれる:アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、BCG、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレクスド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン。
【0198】
ある化学療法抗腫瘍化合物は、その作用機序によってたとえば以下の群に分類されることがある:ピリミジンアナログ(5-フルオロウラシル、フロクスリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリンアナログ、葉酸拮抗剤および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗代謝剤/抗癌剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンなどの微小管破壊剤、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)などの天然物、DNA障害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イフォスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド、およびエトポシド(VP16))が含まれる抗増殖/抗有糸分裂剤;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミスラマイシン)、およびマイトマイシンなどの抗生物質;酵素(L-アスパラギンを全身性に代謝して、自身のアスパラギン合成能を有しない細胞を枯渇させるL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよびアナログ、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)およびアナログ、ストレプトゾシン)、トラゼン-ダカルバジン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸アナログ(メトトレキサート)などの抗増殖抗有糸分裂抗代謝剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化剤、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP-470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(たとえば、VEGF阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断剤;酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシンおよびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、およびプレニソロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導剤、およびカスパーゼ活性化剤;ならびに染色質破壊剤。
【0199】
ある態様において、併用抗血管新生治療のために用いられてもよい薬学的化合物には:(1)bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)などの「血管新生分子」の放出の阻害剤;(2)抗bFGF抗体などの血管新生分子の中和剤;および(3)コラゲナーゼ阻害剤、基底膜ターンオーバー阻害剤、血管新生抑制性ステロイド、真菌由来血管新生阻害剤、血小板因子4、トロンボスポンジン、D-ペニシラミンおよび金チオリンゴ酸塩などの関節炎治療薬、ビタミンD3アナログ、α-インターフェロン等が含まれる血管新生刺激に対する内皮細胞応答の阻害剤、が含まれる。その上、血管新生を阻害するために用いることができる広く多様な化合物、たとえばエンドスタチンタンパク質または誘導体、アンジオスタチンのリジン結合断片、メラニンまたはメラニン促進化合物、プラスミノーゲン断片(たとえば、プラスミノーゲンのKringles 1〜3)、トロポインサブユニット、ビトロネクチンのアンタゴニスト、サポシンBに由来するペプチド、抗生物質またはアナログ(たとえば、テトラサイクリンまたはネオマイシン)、ジエノゲスト含有組成物、ペプチドに連結されたMetAP-2阻害性コアを含む化合物、化合物EM-138、カルコンおよびそのアナログ、ならびにnaladase阻害剤が存在する。
【0200】
本発明の抗体などの物質はまた、他の抗血管新生因子と併用して投与されてもよい。他の抗血管新生因子の代表的な例には:抗浸潤因子、レチン酸およびその誘導体、パクリタキセル、スラミン、組織メタロプロテナーゼ-1阻害剤、組織メタロプロテナーゼ-2阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2、および様々な型のより軽い「d族」の遷移金属が含まれる。
【0201】
軽い「d族」遷移金属には、たとえば、バナジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ニオビウム、およびタンタル種が含まれる。そのような遷移金属種は、遷移金属錯体を形成してもよい。上記の遷移金属種の適した錯体には、オキソ遷移金属錯体が含まれる。
【0202】
バナジウム錯体の代表的な例には、バナジン酸塩およびバナジル錯体などのオキソバナジウム錯体が含まれる。適したバナジン酸錯体には、たとえば、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、およびオルトバナジン酸ナトリウムなどのメタバナジン酸およびオルトバナジン酸錯体が含まれる。適したバナジル錯体には、たとえばバナジルアセチルアセトネートおよび硫酸バナジル1水和物および3水和物などの硫酸バナジル水和物が含まれる硫酸バナジルが含まれる。
【0203】
タングステンおよびモリブデン錯体の代表的な例にもまた、オキソ錯体が含まれる。適したオキソタングステン錯体には、タングステン酸錯体および酸化タングステン錯体が含まれる。適したタングステン酸錯体には、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸ナトリウム2水和物、およびタングステン酸が含まれる。適した酸化タングステンには、酸化タングステン(IV)および酸化タングステン(VI)が含まれる。適したオキソモリブデン錯体には、モリブデン酸塩、酸化モリブデン、およびモリブデン錯体が含まれる。適したモリブデン酸錯体には、モリブデン酸アンモニウムおよびその水和物、モリブデン酸ナトリウムおよびその水和物、ならびにモリブデン酸カリウムおよびその水和物が含まれる。適した酸化モリブデンには、酸化モリブデン(VI)、酸化モリブデン(VI)、およびモリブデン酸が含まれる。適したモリブデン錯体には、たとえば、モリブデニルアセチルアセトネートが含まれる。他の適したタングステンおよびモリブデン錯体には、たとえばグリセロール、酒石酸および糖に由来するヒドロキソ誘導体が含まれる。
【0204】
広く多様な他の抗血管新生因子もまた利用してもよく、それらも本発明の文脈の範囲内である。代表的な例には、血小板因子4;硫酸プロタミン;硫酸化キチン誘導体(ズワイガニ外皮から調製);硫酸化多糖類ペプチドグリカン複合体(SP-PG)(この化合物の機能は、エストロゲンなどのステロイド、およびクエン酸タモキシフェンの存在下で増強される可能性がある);スタウロスポリン;たとえばプロリンアナログ、シスヒドロキシプロリン、d,L-3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン(Thiaproline)、α,α-ジピリジル、フマル酸アミノプロピオニトリルが含まれるマトリクス代謝の調節剤;4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3H)-オキサゾロン;メトトレキサート;ミトキサントロン;ヘパリン;インターフェロン;2マクログロブリン血清;ChIMP-3;キモスタチン;シクロデキストリンテトラデカ硫酸;エポネマイシン;カンプトテシン;フマギリン;金チオリンゴ酸ナトリウム;抗コラゲナーゼ血清;α2-アンチプラスミン;ビサントレン;ロベンザリット二ナトリウム(N-(2)-カルボキシフェニル-4-クロロアンスロニル酸二ナトリウムまたは「CCA」);サリドマイド;血管新生抑制性ステロイド;AGM-1470;カルボキシアミノイミダゾール;およびBB94などのメタロプロテナーゼ阻害剤が含まれる。
【0205】
さらなる治療物質との「併用」投与には、同時(並行)および任意の順序での連続的投与が含まれる。
【0206】
投与の容易さおよび用量の均一性のために、単位投与剤形で獣医学的または薬学的組成物を調製することは特に有利である。本明細書において用いられる単位投与剤形は、処置される対象に関する単位用量として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体に関連して望ましい治療効果を生じるように算出された活性化合物の既定量を含有する。本発明の単位投与剤形の仕様は、活性化合物の独自の特徴、達成される特定の治療効果、および個体を処置するためにそのような活性化合物を合成する際の当技術分野における固有の制限によって左右され、直接依存する。または、組成物は多用量剤形で表されてもよい。
【0207】
用量単位の例には、密封アンプルおよびバイアルが含まれてもよく、使用直前に滅菌液体担体を添加するだけでよいフリーズドライ状態で保存されてもよい。
【0208】
組成物はまた、投与説明書と共に容器、パック、またはディスペンサーに含まれてもよい。
【0209】
本発明の薬学的および獣医学的組成物の用量および望ましい薬物濃度は、想像される特定の使用に応じて変化するであろう。適当な用量または投与経路の決定は、当業者の医師の熟練の範囲内である。ある態様において、抗体は、約10 ng/kg〜100 mg/kg、2μg/kg〜50 mg/kg、0.1 mg/kg〜30 mg/kg、または0.1 mg/kg〜10 mg/kgのあいだの用量で投与される。
【0210】
本発明の物質のインビボ投与を使用する場合、通常の用量は、投与経路に応じて、1日あたり哺乳動物の体重あたり約10 ng/kg〜100 mg/kg、またはそれより多く、好ましくは約1μg/kg/日〜10 mg/kg/日まで異なってもよい。特定の用量および送達法に関する指針は文献に提供される。処置化合物および障害が異なれば、異なる組成物が有効であると予想され、ならびに1つの臓器または組織を標的とする投与は、たとえばもう1つの臓器または組織への投与とは異なる様式の送達を必要とする可能性があると予想される。
【0211】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適した例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが含まれ、マトリクスは成型品、たとえば被膜またはマイクロカプセルの形であってもよい。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(たとえば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性のエチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドで構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グルコール酸などのポリマーは、100日間にわたって分子を放出することができるが、より短い期間でタンパク質を放出するハイドロゲルもある。封入された抗体が体内に長期間留まると、それらは37℃で水分に曝露された結果として変性するかまたは凝集する可能性があり、それによって生物活性の喪失および免疫原性の起こりうる変化が起こる。関係する機序に応じて、安定化のための合理的戦略を考案することができる。たとえば、凝集の機序が、チオ-ジスルフィド相互交換を通しての分子間S-S結合の形成であることが発見された場合、スルフヒドリル残基を修飾することによって、酸性溶液から凍結乾燥することによって、適当な添加剤を用いて水分含有量を制御することによって、および特異的ポリマーマトリクス組成物を開発することによって、安定化を達成してもよい。
【0212】
本発明の物質の徐放性投与が、たとえば本発明の物質の投与を必要とする血管新生および/または癌の処置に適した放出特徴を有する組成物において望ましい場合、物質の微小封入が企図される。活性成分はまた、たとえばコアセルベーション技術または界面重合化法によって調製されたマイクロカプセル、たとえばそれぞれコロイド薬物送達系(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおける、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに捕捉されてもよい。持続的放出のための組み換え型タンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン(rhIFN)、インターロイキン-2、およびMNrgp120について行われて成功している。
【0213】
これらのタンパク質の徐放性組成物は、その生物学的利用率および広範囲の生物学的分解特性により、ポリ乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用いて開発された。PLGAの分解産物である乳酸とグリコール酸は、ヒトの体内で速やかに除去されうる。その上、このポリマーの分解性は、その分子量および組成に応じて数ヶ月から数年のあいだ調節することができる。
【0214】
VEGF-Dが細胞内であり、全抗体を用いて状態を処置する場合、インターナライズする抗体が好ましい。しかし、リポフェクションまたはリポソームも同様に抗体または抗体断片を細胞に送達するために用いることができる。
【0215】
「リポソーム」は、薬物を哺乳動物に送達するために有用である、様々なタイプの脂質、リン脂質、および/または界面活性剤で構成される小胞である。リポソームの成分は、一般的に、生体膜の脂質配置と類似の二層形成で配置される。
【0216】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物による逆相蒸発法によって生成されうる。リポソームは、既定の孔径のフィルターを通して押し出されて、所望の直径を有するリポソームを生じる。
【0217】
本明細書における組成物はまた、処置される特定の適応にとって必要な1つより多くの活性化合物、好ましくは互いに有害に影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物を含有してもよい。またはもしくはそれに加えて、組成物は、その機能を増強する物質を含んでもよい。そのような分子は、ふさわしくは、意図される目的にとって有効である量で併用されて存在する。
【0218】
方法および使用
本発明は、血管新生、特に血管新生の調節不全、または急速に増殖中の組織における血管新生を阻害する方法、および対象における腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。
【0219】
本発明にはまた、VEGF-Dの過剰発現に関連する血管新生および/または癌を処置する方法が含まれ、同様に本発明に従う物質を用いることにも関する。または、本発明は、中和VEGF-Dに応答する状態を処置する方法を提供する。1つの態様において、状態には、血管新生の調節不全、リンパ管新生の調節不全、関節リウマチ、乾癬、リンパ管筋腫症、または他の炎症状態が含まれてもよい。
【0220】
「処置する」または「処置」は、目的が血管新生および/または癌を防止、改善、低減、または遅らせる(少なくする)ことである治療的処置および予防的または防止的手段の双方を指す。
【0221】
「防止する」、「防止」、「防止的」、または「予防」は、異常または症状が含まれる状態、疾患、障害、または表現型の発生を抑える、または妨げる、防御する、もしくはそれらから保護することを指す。防止を必要とする対象は、状態を発症する傾向を有してもよい。防止の成功は、治療物質を投与された群が、プラセボのみを投与された類似の対照群と比較して、状態、疾患、障害、または表現型のより低い発生率を有するまたは発生が遅れる、多数の対象を伴う試験において証明されうる。
【0222】
「改善する」または「改善」という用語は、異常または症状が含まれる状態、疾患、障害、または表現型の減少、低減、または消失を指す。処置を必要とする対象は、状態を既に有してもよく、または状態を有する傾向を有してもよく、または状態が防止される対象であってもよい。
【0223】
「対象」には哺乳動物が含まれる。哺乳動物はヒトであってもよく、または家畜、動物園の動物、もしくはコンパニオンアニマルであってもよい。本発明の方法は、ヒトの医学的処置に適していると特に企図されるが、本発明の方法はまた、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマル、ならびにウマ、ウシ、およびヒツジなどの家畜動物、またはネコ科、イヌ科、ウシ科、および有蹄類などの動物園動物の処置が含まれる獣医学的処置に応用可能である。対象は、血管新生の調節不全および/または癌または他の障害に罹っていてもよく、または血管新生の調節不全および/または癌または他の障害に罹っていなくてもよい(すなわち、検出可能な疾患を有しない)。
【0224】
方法は、VEGF-Dを阻害するために適当である、および/またはVEGF-Dに特異的に結合してこれを中和する本発明の抗体を含む、治療的有効量の薬学的または獣医学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む。
【0225】
「治療的有効量」という用語は、血管新生および/または癌または他の状態を処置するために有益であるレベルまで対象または哺乳動物におけるVEGF-D活性を低減することができる物質の量を指す。治療的有効量は、血管新生および/または癌または他の状態を処置することに関連して経験的にルーチンで決定されてもよく、それによって余命が増加するであろう。
【0226】
なおもう1つの態様において、本発明は、対象を処置するためにインビボで本発明の核酸分子の発現を指示するベクターによって本発明の抗体を送達する段階を含む、血管新生および/または癌または他の状態を処置する方法に関する。
【0227】
本発明に従う物質は、様々な新生物および非新生物疾患および障害の処置において有用である可能性がある。このように、本発明は、本発明の物質の治療的有効量をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、本明細書において記述されるまたはそうでなければ当技術分野において公知の血管新生関連疾患および/または障害を処置する方法を提供する。
【0228】
本発明の物質によって処置されうる新生物および関連状態、癌、腫瘍、悪性および転移状態、組織および臓器には、母斑症に関連する異常な血管増殖、進行悪性疾患、男性胚細胞腫、星状細胞腫、胆管、胆嚢、白血病などの血液腫瘍、脳、乳腺、海綿状血管腫、頚部、絨毛癌、結腸、結腸直腸、浮腫(脳腫瘍に関連する浮腫など)、子宮内膜症、子宮内膜、食道、線維肉腫、胃癌、神経膠芽種、頭頚部癌、血管芽腫、血管腫、胚芽腫、カポジ肉腫、腎臓、喉頭、平滑筋肉腫、肝臓、肺、髄芽腫、メージュ症候群、黒色腫、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、乏突起神経膠腫、骨原性肉腫、卵巣、膵臓、耳下腺、原発腫瘍および転移、前立腺、直腸、腎細胞、網膜芽腫、横紋筋肉腫、神経鞘腫、皮膚、固形腫瘍、胃、精巣、莢膜腫、甲状腺、尿管、子宮、およびウィルムス腫瘍が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0229】
1つの態様において、抗体は、皮膚癌、頭頚部癌、乳腺腫瘍、およびカポジ肉腫などの癌を処置するために局所に送達されてもよい。他の態様において、たとえば嚢内投与によって表在性膀胱癌を処置するために抗体を利用してもよい。
【0230】
抗体などの物質は、腫瘍または腫瘍部位近傍に、注射またはカテーテルによって直接送達されてもよい。当然、当業者によって認識されるように、処置される癌に従って適当な投与様式は変化するであろう。
【0231】
本発明の物質は、癌のほかに、血管新生を伴う他の障害を処置するために有用である可能性がある。処置に反応する非新生物状態には、聴神経腫、加齢関連黄斑変性、血管線維腫、動静脈奇形、アテローム斑、腹水、アテローム性動脈硬化症、良性腫瘍、大脳側副枝、慢性炎症、角膜移植片拒絶および他の組織移植拒絶、冠動脈側副枝、クローン病、創傷治癒遅延、糖尿病性および他の増殖性網膜症、子宮内膜症、線維筋性形成異常、肉芽形成、血管腫、血友病関節、過形成性瘢痕(ケロイド)、虚血性四肢血管新生、肺炎症、黄斑変性、心筋血管新生、血管新生緑内障、ネフローゼ症候群、神経線維腫、偽関節骨折、眼の血管新生疾患、オスラー・ウェーバー症候群、心膜滲出液(心膜炎に関連する浸出液などの)、プラーク新生血管形成、胸膜滲出液、子かん前症、乾癬、化膿性肉芽腫、網膜芽腫、未熟児網膜症、水晶体後線維増殖、関節リウマチ、ルベオーシス、強皮症、毛細血管拡張症、甲状腺過形成(グレーヴス病が含まれる)、トラコーマ、ブドウ膜炎および眼の翼状片(異常な血管増殖)、血管癒合、脈管形成、ならびに肉芽創が含まれる。
【0232】
加齢関連黄斑変性(AMD)は、高齢者集団における重度の視力喪失の主たる原因である。滲出性AMDは、脈絡膜新生血管形成および網膜色素上皮細胞剥離を特徴とする。脈絡膜新生血管形成は、予後の劇的な悪化に関連することから、本発明の物質は、AMDの重症度を低減させるために特に有用であると予想される。
【0233】
本発明の1つの態様において、本発明の抗体を過形成性瘢痕またはケロイドに投与する段階を含む、過形成性瘢痕およびケロイドを処置する方法が提供される。過形成性瘢痕またはケロイドの進行を防止するために、本発明の抗体をこれらの病変に直接注射してもよい。この治療は、それによって過形成性瘢痕およびケロイドの発生が起こることが知られている状態(たとえば、熱傷)の予防的処置において特に貴重であり、好ましくは増殖相が進行し始めた後(初回損傷後およそ14日)であるが、過形成性瘢痕またはケロイドの発生前に開始される。
【0234】
本発明の物質によって処置されうる新生血管形成に関連する眼の障害には、血管新生緑内障、糖尿病性網膜症、網膜芽腫、水晶体後線維増殖、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片新生血管形成のみならず、他の眼の炎症疾患、眼の腫瘍、および脈絡膜または虹彩の新生血管形成に関連する疾患が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0235】
このように、本発明の1つの態様は、血管の形成が阻害されるように、物質(抗体が含まれる)の治療的有効量を患者の角膜に投与する段階を含む、角膜新生血管形成(角膜移植片新生血管形成が含まれる)などの眼の新生血管疾患を処置する方法を提供する。簡単に説明すると、角膜は、通常血管を欠如する組織である。しかし、ある病的状態では、毛細管が辺縁部の角膜周囲血管叢から角膜の中に伸長することがある。角膜が血管形成されると、角膜は曇り、患者の視力の低下が起こる。角膜が完全に混濁すると、失明が起こる可能性がある。たとえば角膜の感染症(たとえば、トラコーマ、単純ヘルペス角膜炎、リーシュマニア症、およびオンコセルカ症)、免疫学的プロセス(たとえば、移植片の拒絶、スティーブンス-ジョンソン症候群)、アルカリ熱傷、外傷、炎症(任意の原因の)、毒性および栄養欠乏状態、ならびにコンタクトレンズ装着の合併症が含まれる、広く多様な障害によって角膜の新生血管形成が起こりうる。
【0236】
1つの態様において、本発明の抗体は、生理食塩液において局所投与のために調製されて(眼科用調製物において一般的に用いられる保存剤および抗菌剤のいずれかと併用して)、点眼液で投与されてもよい。溶液または懸濁液は、その純粋型で調製されて、1日数回投与されてもよい。または、上記のように調製された抗血管新生組成物はまた、角膜に直接投与されてもよい。抗血管新生組成物は、角膜に結合する粘膜接着性のポリマーと共に調製されてもよい。抗血管新生因子または抗血管新生組成物は、慣用のステロイド治療の補助として利用されてもよい。血管新生応答を誘導する可能性が高いことが知られている角膜病変(化学熱傷などの)では、局所適用治療もまた予防的に有用である可能性がある。これらの状況では、その後の合併症を防止するために役立つように、おそらくステロイドと併用した処置を直ちに開始してもよい。
【0237】
上記の抗体は、顕微鏡下での誘導により眼科医によって角膜支質に直接注射されてもよい。好ましい注射部位は、個々の病変の形態によって変化してもよいが、投与の目標は、成長中の血管の先端(すなわち、血管と正常角膜のあいだに散在)に組成物を留置することであろう。ほとんどの例において、これは成長中の血管から角膜を「保護する」ために辺縁部周囲の角膜注射を伴うであろう。この方法は、角膜の新生血管形成を予防的に防止するために、角膜の傷害後直ちに利用されてもよい。この状況において、角膜病変とその望ましくない潜在的辺縁部血液供給とのあいだに散在する辺縁部周囲の角膜に、材料を注射することができるであろう。移植した角膜の毛細管浸潤を防止するために、そのような方法をまた類似の様式で利用してもよい。徐放性型では、注射は1年に2回または3回を必要とするのみであろう。注射そのものに起因する炎症を低減させるために、ステロイドもまた注射溶液に添加することができるであろう。
【0238】
本発明の物質は、血管の形成が阻害されるように、抗体などの物質の治療的有効量を患者の眼に投与する段階を含む、血管新生緑内障を処置するために用いられてもよい。1つの態様において、物質は、初期の血管新生緑内障を処置するために眼に局所適用投与されてもよい。他の態様において、物質は、前眼房角の領域に注射することによって埋め込まれてもよい。他の態様において、物質が房水の中に持続的に放出されるように、物質は任意の位置に留置されてもよい。本発明のもう1つの態様において、血管の形成が阻害されるように、抗体の治療的有効量を患者の眼に投与する段階を含む、増殖性糖尿病性網膜症を処置する方法が提供される。
【0239】
方法の1つの態様において、増殖性糖尿病性網膜症は、網膜における抗体の局所濃度を増加させるために、房水または硝子体に物質を注射することによって処置されてもよい。好ましくは、この処置は、光凝固を必要とする重度の疾患を得る前に開始されるべきである。
【0240】
本発明のもう1つの態様において、血管の形成が阻害されるように、抗体の治療的有効量を患者の眼に投与する段階を含む、水晶体後線維増殖を処置する方法が提供される。化合物を、硝子体内注射および/または眼内インプラントによって、局所投与してもよい。
【0241】
その上、本発明の抗体などの物質によって処置、防止、診断、および/または予後を判定することができる障害および/または状態には、固形腫瘍、白血病などの血液腫瘍、腫瘍の転移、カポジ肉腫、良性腫瘍、たとえば血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫、関節リウマチ、乾癬、眼の血管新生疾患、たとえば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖、ルベオーシス、網膜芽腫、ブドウ膜炎、創傷治癒の遅延、子宮内膜症、血管形成、肉芽形成、過形成性瘢痕(ケロイド)、偽関節骨折、強皮症、トラコーマ、血管癒合、心筋血管新生、冠動脈側副枝、脳血管側副枝、動静脈奇形、虚血性脚血管新生、オスラー・ウェーバー症候群、プラーク新生血管形成、毛細管拡張症、血友病関節、血管線維腫、線維筋性形成異常、肉芽創、クローン病、アテローム性動脈硬化症、胚着床にとって必要な血管形成を防止することによる産児制限剤、月経の制御、ネコひっかき病(Rochele minalia quintosa)、潰瘍(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、バルトネラ症および桿菌性血管腫などの病理的結末として血管新生を有する疾患が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0242】
産児制限法に関連する1つの態様において、胚の着床を遮断するために十分な物質の量は、性交および受精が起こる前または後に投与され、このように有効な避妊法、おそらく「緊急避難」法を提供する。抗体はまた、月経の制御に用いられてもよく、または子宮内膜症の処置における腹腔洗浄液としてもしくは腹腔内埋め込みのためのいずれかとして投与されてもよい。
【0243】
本発明の抗体は、縫合性肉芽腫を防止するために外科用縫合糸に組み入れられてもよい。
【0244】
抗体は広く多様な外科技法において利用されてもよい。たとえば、本発明の1つの態様において、組成物(たとえば、スプレーまたは被膜の形状での)を利用して、正常な周辺組織を悪性組織から隔離するために、および/または周辺組織への疾患の広がりを防止するために、腫瘍を除去する前に領域にコーティングまたは噴霧してもよい。本発明のもう1つの態様において、組成物(たとえば、スプレーの形状での)は、腫瘍をコーティングするため、または所望の位置での血管新生を阻害するために内視鏡技法によって送達されてもよい。本発明のなおもう1つの態様において、抗血管新生活性を有する本発明の物質、たとえば抗VEGFD抗体を含む組成物によってコーティングされている外科用メッシュを、外科用メッシュが利用される可能性がある任意の技法において利用してもよい。たとえば、本発明の1つの態様において、抗血管新生組成物を有する外科用メッシュを、構造に対する支持を提供するために、および抗血管新生因子の量を放出するために、腹部癌切除手術(たとえば、結腸切除後)の際に利用してもよい。
【0245】
本発明のさらなる態様に従って、その部位での癌の局所再発および新しい血管の形成が阻害されるように、切除後の腫瘍の切除辺縁部に抗体などの本発明の物質を投与する段階を含む、腫瘍切除部位を処置する方法が提供される。本発明の1つの態様において、抗血管新生剤、たとえば抗体は、腫瘍切除部位に直接投与される(たとえば、抗体によって腫瘍の切除辺縁部を綿棒で拭き取る、ブラシをかける、またはそうでなければコーティングすることによって適用される)。または、抗体を、投与前に公知の外科用ペーストに組み入れてもよい。本発明の態様は、悪性疾患のために肝臓切除後に、および神経外科手術後に適用される可能性がある抗体を企図する。
【0246】
本発明の1つの態様において、抗体は、たとえば乳腺、結腸、脳、および肝腫瘍が含まれる、広く多様な腫瘍の切除辺縁部に投与されてもよい。たとえば、本発明の1つの態様において、抗体は、その部位での新しい血管の形成が阻害されるように、切除後に神経学的腫瘍部位に投与されてもよい。
【0247】
本発明の抗体などの物質は、免疫細胞の増殖、分化、または動員(走化性)を活性化または阻害することによって、免疫系の欠損または障害を処置するために有用である可能性がある。免疫細胞は、造血と呼ばれるプロセスを通して発達して、多能性幹細胞から骨髄(血小板、赤血球、好中球、およびマクロファージ)およびリンパ(BおよびTリンパ球)細胞を産生する。これらの免疫欠損または障害の病因は、遺伝的、癌またはいくつかの自己免疫疾患などの体性、後天性(たとえば、化学療法または毒素)、または感染性であってもよい。その上、本発明の物質は、特定の免疫系の疾患または障害のマーカーまたは検出器として用いることができる。
【0248】
本発明の抗体などの物質は、造血細胞の欠損または障害を処置または検出するために有用である可能性がある。たとえば、抗体は、ある(または多くの)タイプの造血細胞の減少に関連する障害を処置するための努力において、多能性幹細胞が含まれる造血細胞の分化および増殖を増加させるために用いることができるであろう。免疫欠損症候群の例には、血液タンパク質障害(たとえば、無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症)、毛細血管拡張性運動失調、分類不能型免疫不全、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV-BLV感染症、白血球接着欠損症候群、リンパ球減少症、貪食細胞殺細菌機能障害、重度複合免疫不全(SCID)、ヴィスコット-オールドリッチ障害、貧血、血小板減少症、またはヘモグロビン尿症が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0249】
抗体などの物質をまた、止血(出血の停止)または血栓溶解活性(凝血の形成)を調節するために用いることができる。たとえば、止血または血栓溶解活性を増加させることによって、抗体を血液凝固障害(たとえば、無フィブリノーゲン血症、凝固因子欠損)、血液血小板障害(たとえば、血小板減少症)、または外傷、手術、もしくは他の原因に起因する創傷を処置するために用いることができるであろう。または、止血または血栓溶解活性を減少させることができる物質を用いて、心臓発作(梗塞)、卒中、または瘢痕形成の処置において重要な凝血を阻害または溶解することができるであろう。
【0250】
抗体などの物質はまた、自己免疫障害を処置または検出するために有用である可能性がある。多くの自己免疫障害は、免疫細胞が自己を異物材料として不適当に認識することに起因する。この不適当な認識によって免疫応答が起こり、それによって宿主組織の破壊が起こる。ゆえに、免疫応答、特にT-細胞の増殖、分化、または走化性を阻害することができる物質を投与すれば、自己免疫障害の防止において有効な治療となる可能性がある。
【0251】
本発明の抗体などの物質によって処置または検出されうる自己免疫障害の例には、アジソン病、溶血性貧血、抗リン脂質症候群、関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎、眼炎、水疱性類天疱瘡、天疱瘡、多発性内分泌腺症、紫斑病、ライター病、スティッフマン症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性紅斑性狼瘡、自己免疫性肺炎症、ギヤン-バレー症候群、インスリン依存性真性糖尿病、および自己免疫性炎症性眼科疾患が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0252】
同様に、喘息(特にアレルギー性喘息)または他の呼吸器系の問題などのアレルギー反応および状態もまた、本発明の抗体などの物質によって処置される可能性がある。その上、物質はアナフィラキシー、抗原性分子に対する過敏症、または血液型不適合を処置するために用いることができる。
【0253】
抗体などの物質はまた、臓器の拒絶または移植片-対-宿主病(GVHD)を処置または防止するために用いられてもよい。臓器の拒絶は、宿主免疫細胞による免疫応答を通しての移植された組織の破壊によって起こる。同様に、免疫応答はまた、GVHDにも関係しているが、この場合、異物である移植された免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答、特に、T-細胞の増殖、分化、または走化性を阻害する抗体などの物質の投与は、臓器の拒絶またはGVHDを防止するために有効な治療である可能性がある。
【0254】
同様に、本発明の抗体などの物質はまた、炎症を調節するために用いられてもよい。たとえば、抗体は、炎症応答に関係する細胞の増殖および分化を阻害する可能性がある。これらの分子は、感染症に関連する炎症(たとえば、敗血症ショック、敗血症、または全身性炎症反応症候群(SIRS))、虚血-再灌流損傷、エンドトキシン致死、関節炎、補体による超急性拒絶、腎炎、サイトカインまたはケモカイン誘導性肺損傷、炎症性腸疾患、クローン病、またはサイトカイン(たとえば、TNFまたはIL-1)の過剰産生により生じる炎症が含まれる、慢性および急性状態の双方の炎症状態を処置するために用いることができる。
【0255】
本発明の抗体などの物質は、新生物が含まれる過増殖障害を処置または検出するために用いることができる。物質は、直接または間接的な相互作用を通して障害の増殖を阻害してもよい。または、物質は、過増殖障害を阻害することができる他の細胞を増殖させてもよい。
【0256】
たとえば、免疫応答を増加させることによって、特に過増殖障害の抗原の質を増加させることによって、またはT-細胞を増殖させる、分化させる、もしくは動員することによって、過増殖障害を処置することができる。この免疫応答は、既存の免疫応答を増強することによって、または新規免疫応答を開始することによって増加する可能性がある。または、免疫応答を減少させることはまた、化学療法剤などの過増殖障害を処置する方法であってもよい。
【0257】
本発明の抗体などの物質によって処置または検出されうる過増殖障害の例には、腹部、骨、乳腺、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頚部、脳、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、前立腺、胸部、および尿生殖器に位置する新生物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0258】
いくつかの態様において、物質は、乳癌を処置、防止、または改善するために用いられてもよい。他の態様において、物質は脳の癌を処置、防止、または改善するために用いられてもよい。いくつかの態様において、物質は、頭頚部癌を処置、防止、または改善するために用いられてもよい。他の態様において、物質は、前立腺癌を処置、防止、または改善するために用いられてもよい。他の好ましい態様において、物質は、結腸癌を処置、防止、または改善するために用いられてもよい。他の態様において、物質は、カポジ肉腫を処置、防止、または改善するために用いられてもよい。
【0259】
同様に、他の過増殖障害も同様に、本発明の抗体などの物質によって処置または検出されうる。そのような過増殖障害の例には、高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖障害、パラプロテイン血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球増殖症、および新生物のほかに、上記の臓器系に存在する他の任意の過増殖疾患が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0260】
本発明の物質の生物活性は、当技術分野において公知の標準的なアッセイによって測定されうる。例には、リガンド結合アッセイおよびスキャッチャードプロット分析;受容体二量体化アッセイ;細胞リン酸化アッセイ;チロシンキナーゼリン酸化アッセイ;BrdU標識および細胞計数実験などの内皮細胞増殖アッセイ;VEGF-D依存的細胞増殖アッセイ;ならびに血管新生アッセイが含まれる。血管新生を測定する方法は標準的である。血管新生は、非分岐血管セグメントの数(単位面積あたりのセグメント数)、機能的血管密度(単位面積あたりの灌流された血管の全長)、血管の直径、血管チャンネルの形成、または血管容積密度(単位面積あたりの各セグメントの長さおよび直径に基づいて算出された全血管体積)を測定することによってアッセイされうる。これらのアッセイは、精製受容体またはリガンドまたはその双方のいずれかを用いて行うことができ、インビトロまたはインビボで行うことができる。これらのアッセイはまた、遺伝的に導入されたまたは天然に存在するリガンドまたは受容体またはその双方を用いて細胞において行うことができる。VEGF-Dの生物活性を阻害する物質は、VEGF-Dの生物活性の少なくとも10%、好ましくは20%、30%、40%、または50%の減少、および好ましくは60%、70%、80%、90%またはそれより大きい減少を引き起こすであろう。生物活性の阻害はまた、IC50によっても測定されうる。好ましくは、VEGF-Dの生物活性を阻害する物質は、100 nM未満、より好ましくは10 nM未満、および最も好ましくは1 nM未満のIC50を有するであろう。
【0261】
本明細書を通して、本文がそうでないことを必要としている場合を除き、「含む」という用語または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変化形は、記載の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含めるが、他の任意の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を除外しないことを含意すると理解されるであろう。
【0262】
同様に、本明細書において用いられるように、単数形「1つの」、「1つの(an)」、および「その」には、本文が明らかにそれ以外であることを指示している場合を除き、複数の局面が含まれる。
【0263】
本発明は、明快にするおよび理解する目的のためにいくぶん詳細に記述してきたが、本明細書において記述される態様および方法に様々な改変および変更を行ってもよく、それらも本明細書に開示される本発明の概念の範囲に含まれることは、当業者に明らかであろう。
【0264】
本明細書において引用された任意の特許または特許出願が含まれる参考文献は全て、参照により本明細書に組み入れられる。いかなる参考文献も先行技術を構成すると認めたわけではない。本明細書において多数の先行技術の刊行物が参照されているが、この参照は、これらの文書のいかなるものも、オーストラリア、または他の任意の国における当技術分野における共通の一般的知識の一部を形成すると認めたわけではないと明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0265】
本発明を以下の実施例を参照して、さらに詳細に記述する。実施例は説明する目的に限って提供され、それ以外であると明記されている場合を除き、制限すると意図されない。このように、本発明は、本明細書において提供される教示の結果として明らかになるであろう任意のおよび全ての変化形を包含する。
【0266】
組み換え型ヒトVEGF-Dは、以下から得た:ソース1、成熟二量体VEGF-Dを提供するCommonwealth Scientific and Industrial Research Organisation(CSIRO);およびソース2、精製VEGF-D単量体を提供するR&D Systems(カタログ番号622-VD/CF)。完全長のヒトVEGF-Dはまた、ヒトVEGF-Dを発現するようにトランスフェクトしたCHO細胞からの条件培地として得られた(ソース3)。
【0267】
実施例1
ヒト化抗VEGF-D抗体として最初に評価するために、いくつかのヒトフレームワークをscFv断片として選んだ。これらを1A、3A、および4Aと呼んだ。SEQ ID NO:1、3、および4はそれぞれ、1A、3A、および4Aの可変フレームワークを含む。
【0268】
(表1)SEQ ID NO:1によって定義されるscFvフレームワーク1Aと比較してscFvフレームワーク3Aおよび4AのVHドメイン内でのフレームワーク変化の要約

【0269】
実施例2
scFv抗体の特徴付け
3つのヒト化scFv変異体1A、3A、および4Aに関して動態の値を得た(表2)。単離されたscFv試料は全て、抗FLAGアフィニティおよびゲル濾過クロマトグラフィーによって単量体のピークとして精製された。アミンカップリングを用いてVEGF-DをCM5表面上に直接固定することによって、アナライトとしてscFvを用いてBIAcore(商標)分析を行った。結合の分析をBIAevaluation動態分析ソフトウェアを用いて行った。反復実験は全て、異なるタンパク質発現であり、25℃で行った。
【0270】
(表2)ヒト化scFv変異体の概要

* いくつかの反復実験の平均値、表3を参照されたい。
【0271】
scFv 1Aを、さらなる分析および可能性がある最適化のために選択した。
【0272】
1A scFvおよび他のscFv変異体の大腸菌における発現および精製
小規模発現
ScFvを、標準的な方法論を用いて大腸菌において小規模で(10 ml)発現させて、上清への発現に関して評価した。全ての場合において、発現レベルは良好であり、scFvの検出可能なレベルが上清に存在した。
【0273】
小規模scFv発現を用いて粗ペリプラスム分画を調製して、BIAcore(商標)バイオセンサーを用いてVEGF-Dに対する結合活性に関して評価した。これらのBIAcore(商標)アッセイにおいてscFvがVEGF-Dに結合できることは、それらが大腸菌において適切に折り畳まれる傾向があり、機能的結合タンパク質を形成することを示した。
【0274】
大規模発現および精製
1A scFvとVEGF-Dのあいだの基礎結合レベルを確立するために、大規模大腸菌発現を行った。1A scFvの発現に関して問題はなかった。1A scFv調製物の精製および濃縮は、その後の分析にとって十分量の精製タンパク質を生成して、いかなる有意な凝集も起こらなかった。
【0275】
1A scFvに関するベースライン親和性の確立
VEGF-Dに対する精製1A scFvの結合を、BIAcore(商標)バイオセンサー(表3)を用いて分析した。全体的に、データは、1A scFvがおよそ13.1 nMの親和性でVEGF-Dに結合することを示した。
【0276】
(表3)1A scFvに関する結合データの完全な分析

【0277】
BIAcore(商標)off-rate
scFv結合特性に基づくスクリーニングは、BIAcore(商標)バイオセンサーによる表面プラズモン共鳴(SPR)測定を伴った。scFv変異体を大腸菌培養物200μLにおいて発現させて、上清を用いて未加工のoff-rateのみの動態を生成して、これを1Aまたは他の変異体と「比較して」評価した。
【0278】
scFv変異体の完全なBIAcore(商標)特徴付け
scFv変異体をBIAcore(商標)バイオセンサーを用いて完全に特徴付けした。単離されたscFv試料は全て、抗FLAGアフィニティクロマトグラフィーの後にゲル濾過クロマトグラフィーを行うことによって単量体のピークとして精製された。BIAcore(商標)分析は、アミンカップリングを用いてCM5表面上にVEGF-Dを直接固定することによって、アナライトとしてscFvを用いて行った。結合の分析は、BIAevaluation動態分析ソフトウェアを用いて行った。反復実験は全て、異なるタンパク質発現であり、25℃で行った。
【0279】
scFv変異体
点突然変異をRNAに導入することによって、1A scFvの変異体を既存の発現プラスミドから構築した。750塩基対毎におよそ1〜2個のヌクレオチドの変化を作製した。これによって、アミノ酸の改変1〜4個を含有するscFv変異体のパネルが得られた。多数回のラウンドの変異誘発を行った。全体で、クローン19,840個をELISAプロトコール(記述していない)を用いてスクリーニングした。
【0280】
結果
ELISAスクリーニングによって、1Aと比較してVEGF-Dに関する親和性が明らかに改善した変異体を全体で合わせて586個同定した。これらの変異体586個をBIAcore(商標)によって分析して、そのoff-rate動態を確立した。このより詳細な分析により、VEGF-Dに対する結合の改善(特にoff-rateに関して)を示した独自のscFv変異体21個が同定された。scFvクローン21個の最終プールもまた、大腸菌において良好な発現特徴を示した。
【0281】
表4は、ELISAおよびSPRスクリーニングから選択されたクローンから同定された独自のアミノ酸変化形を示す。
【0282】
(表4)scFvクローンのoff-rateランキング


番号付けは、SEQ ID NO:25に由来する。* CDR内で起こる変化形を上付き文字で記す:H1、重鎖CDR1;H2、重鎖CDR2;H3、重鎖CDR3;L1、軽鎖CDR1;L2、軽鎖CDR2;L3、軽鎖CDR3。** 変異はscFvリンカー領域で起こる。
【0283】
変化形の分析
変化形は重鎖および軽鎖全体に広がり、アミノ酸10位(E10K)、20位(V20A)、55位(N55S)、および82位(E82K)で4個の明白な変異体ホットスポット(すなわち、独立したクローンから単離された同じ位置での5個またはそれより多くの変化)が存在した。ホットスポット1個はCDR領域内(N55S)で起こり;ホットスポット3個は、重鎖のFR内に位置した。多数の変異体がまた、アミノ酸144位(S144G)および198位(D198G)位に軽鎖変化形を有した。重鎖において回収された変化形の多様性は、軽鎖において認められた多様性より大きかった。多くの変異体が互いに様々な組み合わせで回収された。たとえば、E82K変異体(当初、クローンF61で回収された)およびE10K変異体(クローンA63において回収)は、クローンCK61において共に単離された。同様に、D198G変異体およびE10K+V20A+N55S変異体(クローンDI26において回収)は、クローンHX28において共に単離された。
【0284】
各クローンについて単離された変化形の最終スペクトルは、scFvの全体的な結合を改善するが、個々の変化形の関与または「重み」はしばしば、予測することが困難であり、しばしば予測不可能な累積結果が存在する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、N55SなどのホットスポットでのCDRの変化形は、VEGF-D上の標的エピトープとscFvとの相互作用に直接影響を及ぼすことによって結合に関与する可能性が最も高い。重鎖変異体E82Kまたは軽鎖変異体S144Gなどのフレームワーク変化はおそらく、結合に対してより軽微な効果を有し、標的エピトープと比較してCDRをシフトさせるように、または互いに関して重鎖および軽鎖を再配置するように作用する。Q238R変異体は、いかなる程度にも結合親和性に影響を及ぼさないように思われ、おそらくscFv安定化、フォールディング、または発現の変化である。
【0285】
scFv変異体の最終のランキングおよび特徴付け
クローンF61、A63、AR7、AW61、CJ37、DI126、およびDA18を大規模発現培養において産生して、抗FLAGアフィニティクロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製した。VEGF-Dに対する結合動態を、既に記述されているように、BIAcore(商標)バイオセンサーを用いて測定した。7個全てのscFv(表5)が、scFv 1Aに対して少なくとも2.5倍の改善を示し、クローンAR74(2.12 nM)、DI26(3.12 nM)およびF61(3.31 nM)はそれぞれ、クローン1Aに対して6.2倍、4.2倍、および4倍の改善を示した。
【0286】
(表5)選択されたscFv変異体の特徴付け

§ クローン1Aに対する倍率の改善
【0287】
実施例3
IgG抗体の特徴付け
「野生型」ヒト化scFv 1Aおよび選択されたscFv変異体クローンを、さらなる分析のためにIgG(たとえば、Ig-1A)にリフォーマットして、scFv断片がリフォーマットされたIgGとしての親和性を保持していることを確認した。
【0288】
クローン1Aおよび選択されたscFv変異体クローンを、IgG発現ベクターにサブクローニングして、配列を確認し、IgG産生のために哺乳動物細胞にトランスフェクトした。IgGを細胞培養上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーの後にゲル濾過によって精製した後、BIAcore(商標)バイオセンサーを用いる結合動態の評価のために適当に希釈した。
【0289】
以下に記述されるバイオセンサープロトコールを、試験されるVEGF-Dの特異的抗体および種に応じて様々な分析のために用いた。
【0290】
Ig-1Aの結合は当初、16.1 nMであると決定された(表6)。これらの最初の結合実験は、scFv 1AがIgGにリフォーマットされた際に(Ig-1A)その結合を保持することを確認した。
【0291】
(表6)マウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体およびIg-1Aに関するVEGF-D結合データ

* マウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体の最初の特徴付けは代替捕捉法を用いて行われたことに注意されたい。
【0292】
直接のマウス抗体捕捉
マウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体を、当初の試験において固定された4700 RUと比較して、抗体1000 RUをCM5チップ表面に固定したことを除き、Achen et al.(Eur. J. Biochem. (2000) 267: 2505-2515)に記述されるプロトコールの改変版を用いて分析した。この変更は、当初のプロトコールにおいて固定された高レベルのモノクローナル抗体が有意な質量輸送の制限を引き起こし、on-rate値を有意に過少評価して、off-rate値をかなり誇張したために行われた。
【0293】
抗マウスIgG(Fc)捕捉
このプロトコールを用いてVEGF-D二量体に対するマウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体の結合動態を測定した。
【0294】
抗マウスFc特異的IgGの固定
CM5チップ上の2つのフローセルをNHS.EDCの混合物を用いて25℃で7分間活性化した。抗マウスIgG抗体(BIAcore(商標)、BR-1008-38)を、pH 5の10 mM酢酸ナトリウム中で30μg/mlに希釈して、2つの表面上に7〜10分間注入して、およそ10,000 RUの捕捉分子密度を得た。表面をエタノールアミン(1 M、pH 8.2)によって7分間ブロックして、10 mMグリシン-HCl、pH 1.7の180秒間の注入5回を用いて予め条件付けした。固定および条件付け段階を、HBS-Nランニング緩衝液を用いて流速10μl/分で行った。
【0295】
マウスIgG特徴付け
マウス抗体結合実験をHBS-EP+ランニング緩衝液を用いて25℃で行った。アナライトをランニング緩衝液において希釈して、捕捉密度500 RUとなるように流速10μl/分で100〜200秒間注入した。捕捉された表面を7分間安定化させた後、VEGF-D二量体アナライトを流速70μl/分で180秒間注入して、解離を10分間モニターした。10 mMグリシン-HCl、pH 1.7の流速10μl/分での3分間の注入によって、抗原表面を再生した。参照表面およびブランク注入からのダブルリファレンスを用いてデータを処理した。IgG/抗原相互作用の結合定数を、1:1の相互作用モデルにグローバルフィットさせたデータを用いて決定した。リガンド捕捉のわずかに異なる量を考慮に入れるために、Rmaxパラメータを局所的に設定した。屈折指数は一定であった(RI=0)。
【0296】
抗ヒトIgG(Fc)捕捉
このプロトコールは、VEGF-Dに対するIgG結合動態を測定するために用いられた。
【0297】
抗ヒトFc特異的IgGの固定
CM5チップ上の2つのフローセルをNHS.EDCの混合物を用いて25℃で7分間活性化した。ヤギ抗ヒトFc精製IgG抗体(2 mg/ml、Invitrogen)を、pH 5の10 mM酢酸ナトリウム中で1:5倍希釈して、2つの表面上に10〜15分間注入して、およそ10,000 RUの捕捉分子密度を得た。表面をエタノールアミン(1 M、pH 8.2)によって7分間ブロックして、100 mM H3PO4の12秒間の注入5回を用いて予め条件付けした。固定段階を、HBS-Nランニング緩衝液を用いて流速10μl/分で行った。
【0298】
IgGの特徴付け
IgG結合実験は全て、HBS-EP+ランニング緩衝液を用いて25℃で行った。アナライト(Ig-1Aおよび変異体)をランニング緩衝液において希釈して、捕捉密度500 RUとなるように流速10μl/分で100〜200秒間注入した。捕捉された表面を7分間安定化させた後、VEGF-Dを流速70μl/分で180秒間注入して、解離を7分間モニターした。100 mM H3PO4の12秒間のパルスによって、抗原表面を再生した。参照表面およびブランク注入からのダブルリファレンスを用いてデータを処理した。IgG/抗原相互作用の結合定数を、1:1の相互作用モデルにグローバルフィットさせたデータを用いて決定した。リガンド捕捉のわずかに異なる量を考慮に入れるために、Rmaxパラメータを局所的に設定した。屈折指数は一定であった(RI=0)。
【0299】
VEGF-D二量体に対するIgG結合の測定
異なる2つのバイオセンサーアッセイフォーマットを用いて、ソース1 VEGF-D二量体に対するIgG結合動態を測定した。
【0300】
プロトコールA:第一のアッセイフォーマットであるプロトコールAは、抗ヒトIgG(Fc)抗体を用いてIgGがバイオセンサーチップ表面上に捕捉されて、ソース1 VEGF-D二量体が溶液中でのアナライトとしてチップ上を流れるアッセイ系を用いた。これによって、全てのIgG分子が活性な方向で確実に抗原に提示された。
【0301】
SPRプロトコールを、VEGF-Dの二量体性質を補うようにわずかに修正した。Ig-1AまたはIgG変異体を、IgGまたはIgG変異体の1000 RUを抗ヒトチップ表面上に捕捉したことを除き、上記の抗ヒトIgG(Fc)捕捉に関して記述したように、抗ヒト捕捉キットを用いて分析した。ソース1 VEGF-Dを、アナライトとして25 nM、12.5 nM、6.25 nM、3.13 nM、および1.56 nMの濃度で実施した。このアプローチを用いて生成された動態は、実験パラメータセットにおいて正確である。この標準アッセイプロトコールは、1:1の相互作用を試験するために最も適しており、このように、IgG変異体とVEGF-D二量体のあいだの結合を分析するためには理想的でない可能性がある。このことを考慮して、プロトコールBも同様に用いた。
【0302】
プロトコールB:第二のアッセイフォーマットであるプロトコールBにおいて、IgGおよびVEGF-D抗原の方向をプロトコールAに対して逆転させた。ソース1 VEGF-D二量体を、アミンカップリングによってチップ表面上に直接固定して、マウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体、Ig-1A、またはIgG変異体をこの表面上にアナライトとして4 nM、1.33 nM、および0.44 nMの濃度で流した。このプロトコールによって、チップ上に固定される二量体VEGF-Dの密度を低減させることによってアビディティ効果を制御することができ、実際に、分析されるシステムの二価の結合特性を低減させる。
【0303】
抗原の固定
CM5チップ上の4つのフローセルを全てNHS.EDCの混合物を用いて25℃で7分間活性化した。フローセル1をフローセル2〜4に対する非改変(活性化およびブロック)参照として用いた。ソース1 VEGF-D二量体を、pH 4の10 mM酢酸ナトリウムにおいて1〜3μg/mlに希釈して、IgGのアビディティ効果を最小限にするために、10、15、および20 RUの低いリガンド密度を達成するために異なる長さの期間3つの表面上に注入した。表面を全てエタノールアミン(1 M、pH 8.2)によって7分間ブロックして、100 mM H3PO4;1M NaClの10秒間の注入5回を用いて予め条件付けした。固定段階は、HBS-Nランニング緩衝液を用いて流速30μl/分で行った。
【0304】
IgG特徴付け
IgG結合実験は全て、HBS-EP+ランニング緩衝液を用いて25℃で行った。アナライト(マウス参照抗VEGF-Dモノクローナル抗体およびヒト化変異体)を流速70μl/分で200秒間注入して、解離を250秒間モニターした。100 mM H3PO4;1 M NaClの10秒間のパルスによって、抗原表面を再生した。マウスおよびヒト化変異体のために用いたアナライト濃度は、4 nM、1.33 nM、および0.44 nMであった。参照表面およびブランク注射からのダブルリファレンスを用いて、データを処理した。IgG/抗原相互作用の結合定数を、1:1の相互作用モデルにグローバルフィットさせた3つの抗原表面から決定した。屈折指数パラメータは一定であった(RI=0)。
【0305】
ソース1 VEGF-D二量体に対する結合結果
マウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体と精製ソース1 VEGF-D二量体との相互作用を、上記の抗マウスIgG(Fc)捕捉法を用いて行った。ソース1 VEGF-D二量体に対する結合を、上記のプロトコールAおよびBを用いて測定した。
【0306】
要約すると、双方のアッセイフォーマットを用いて、以下に記載される6個のIgGに関してピコモル濃度範囲の親和性が観察された(表7Aおよび表7B)。たとえばHU75はプロトコールAおよびBを用いてそれぞれ、127 pMおよび400 pMの二量体結合親和性を証明し、これは当初のマウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体に対してそれぞれ、23.6倍または11.5倍の改善に等しく、ヒト化Ig-1Aに対してそれぞれ、5.5倍および4.4倍の改善に等しい。HH69、HW78、HH41、およびHX28が含まれる他の変異体は、ヒト化Ig-1Aに対して、プロトコールAを用いて5.5倍〜1.8倍の改善を示し、プロトコールBを用いて5.5倍〜2.0倍の改善を示した。変異体DI26は、ヒト化Ig-1Aに対して1.0倍(プロトコールA)および2.0倍(プロトコールB)の改善を証明した。
【0307】
(表7A)ソース1 VEGF-D二量体に対するIgGの特徴付け。プロトコールA−バイオセンサーチップ上に捕捉されたIgG、VEGF-D二量体を溶液中でアナライトとして用いる。

【0308】
(表7B)ソース1 VEGF-D二量体に対するIgGの特徴付け。プロトコールB−バイオセンサーチップ上に捕捉されたVEGF-D、IgGを溶液中でアナライトとして用いる。

* CDR内で起こる変異体を上付き文字で印をつける。H2:重鎖CDR2;L1:軽鎖CDR1。
§ Ig-1Aに対する倍率の改善
【0309】
マウス抗VEGF-Dモノクローナル抗体とソース2 VEGF-Dとの相互作用のバイオセンサー分析を、上記の直接マウス抗体捕捉法を用いて行った。ソース2 VEGF-Dに対するIg-1Aの動態測定を、上記の抗ヒトIgG(Fc)捕捉プロトコールを用いて行った。ナノモル濃度範囲の親和性が以下に記載される4つのIgGに関して観察された(表8)。
【0310】
(表8)ソース2 VEGF-D単量体に対するIgG結合

* CDR内で起こる変異体を上付き文字で印をつける。H2:重鎖CDR2。
§ Ig-1Aに対する倍率の改善
【0311】
実施例4
変異誘発由来クローンの抗体において検出されたVHドメイン変異体において同定された全てのアミノ酸置換の要約を表9に提供する。
【0312】
(表9)変異誘発後の特異的クローンにおけるVH変異体の要約

FR、フレームワーク領域;CDR、相補性決定領域。
【0313】
実施例5
変異誘発由来クローンの抗体において検出されたVLドメイン変異体において同定された全てのアミノ酸置換の要約を表10に提供する。
【0314】
(表10)変異誘発後の特異的クローンにおけるVL変異体の要約

FR、フレームワーク領域;CDR、相補性決定領域。
【0315】
実施例6
VEGFR-2-Ba/F3 3Hチミジン取込みバイオアッセイにおけるIgG抗体の中和活性の試験
このアッセイは、Achen et al.(Eur. J. Biochem. (2000) 267: 2505-2515)において広く記述されている。
【0316】
背景
VEGFR-2-Ba/F3細胞株は、VEGFR-2の細胞外ドメインとEpoRの膜貫通および細胞質ドメインとからなるキメラ受容体を発現する。Ba/F3細胞はIL-3依存的である。IL-3の非存在下では、VEGFR-2-Ba/F3細胞は、マウスVEGFR-2の細胞外ドメインに結合してクロスリンクすることができる増殖因子の存在下に限って生存して増殖する。
【0317】
方法論
細胞培養
VEGFR-2-Ba/F3細胞株を以下において培養した:
DMEM(Gibco)
10%FBS(Gibco)
10%WEHI-3BD-条件培地(IL-3のソース)
1 mg/mL G418(Geneticin, Gibco、4℃の暗所で保存)
4 mM Glutamax(Gibco)
【0318】
バイオアッセイに関して、IL-3ソース(すなわち、10% WEHI-3BD条件培地)を省略した。
【0319】
細胞を3日毎に1:15倍希釈することによって継代した。
【0320】
バイオアッセイプレート
− 290 gに等しい回転速度で5分間の洗浄を行った;
− 対数中間期の細胞をIL-3を含有する培地から除去して、氷冷MT-PBS中で3回洗浄した;
− 除去された細胞をIL-3を欠損する培地(すなわち、DMEM、10%FBS、1 mg/mL G418、および4 mM Glutamax)において1回洗浄した;
− IL-3を欠損する培地およそ450μLに細胞を7.4×104個/mlの濃度で浮遊させた(細胞を0.04%1:1トリパンブルーPBS溶液を用いて計数した);
− 試験試料を細胞容積の10%v/vで添加した、すなわち細胞135μL+試験試料15μL(全量150μL/ウェル);
− 各試験試料を3つ組で試験した;
− 細胞135μL(7.4×104 個/mL)を各ウェルに加えた(可能であれば、マルチチャンネルピペットを用いて)−これは細胞およそ10,000個/ウェルに等しかった。
【0321】
増殖因子滴定曲線
− VEGF-D試験試料15μLを、上記のようにIL-3欠損培地に浮遊させたVEGFR-2-Ba/F3細胞135μLを含有する各ウェルに加えた;
− VEGF-D試料を希釈倍数10倍で連続希釈した(3つ組で行った);
− VEGF-Dの終濃度が4000、2000、1000、500、250、125、62.5、31.25、15.625、7.8、3.9、および0 ng/mLであるように試料を調製した;
− IL-3含有培地150μL中でのVEGFR-2-Ba/F3細胞のウェルを対照として用いた;
【0322】
VEGFR-2-Ba/F3細胞に関するVEGF-Dの有効濃度(EC)を算出した。典型的に、EC50〜EC80の範囲のECをアッセイにおいて用いるために選択した。EC50〜EC80値に基づいて、ソース1 VEGF-D(CSIRO)を5 ng/mLの濃度で用い、ソース2 VEGF-D(R & D Systems)を100 ng/mLの濃度で用いた。
【0323】
抗体濃度を変化させたVEGF-Dに対する細胞の用量反応
抗体7.5μLを1:2倍連続希釈で各ウェルに加えて(3つ組)、ウェルにおいて50、25、12.5、6.25、3.125、1.5625、0.78125、0.39、および0 μg/mL(抗体緩衝液のみ)の濃度を得た。濃度5 ng/mL(ソース1)および100 ng/ml(ソース2)のVEGF-D 7.5μLを各ウェルに加えた。抗体プラスVEGF-D混合物をPBS中で4℃で1時間インキュベートした後、以下に記述されるように細胞に添加した。
【0324】
アッセイ
− 上記のように希釈して1時間インキュベートした抗体プラスVEGF-D 15μLを各ウェルの細胞に加えた;
− アッセイプレートを37℃、10%CO2で48時間インキュベートした;
− 濃度20μCi/mLの3H-チミジン50μLを各ウェルに加えた(1μCi/ウェルに等しい)
− アッセイプレートを37℃で4時間インキュベートした;
− 細胞を96ウェルプレートセルハーベスタを用いて回収して、液体シンチレーションカウンターを用いて計数した;
− 結果を、取り込まれた3H-チミジン×103(cpm)対試料濃度(ng/mL)としてプロットした。
【0325】
本実施例において、抗体F61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61を、VEGF-DおよびVEGF-Cに関する中和活性に関して試験した。実験を2回行った:実験1および実験2。
【0326】
結果
実験1のIgG抗体クローンF61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61のVEGF-D中和活性の結果を図29〜36に表し、実験2の結果を図38〜45に表す。各々の図は、VEGF-D中和活性を発揮するIgG抗体を示す、3Hチミジン取込みの阻害を例証する。抗体のVEGF-D中和活性(IC50)の要約を表11〜15に提供する。対照的に、クローンF61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61のIgG抗体は、VEGF-Cの存在下で3H-チミジン取込みを阻害せず、このように実質的なVEGF-C中和活性を発揮しなかった。
【0327】
(表11)選択されたヒト化IgG抗体に関する実験1 IC50の要約

【0328】
実験1のIC50およびソース1 VEGF-DのKDに基づいて選択されたクローンF61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61に由来する抗体の中で上位4位までのIgG抗体を表12に要約する。
【0329】
(表12)上位の候補ヒト化IgG抗体

【0330】
クローンF61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61のIgG抗体の各々に関する実験1 IC50を算出して、そのそれぞれのKD値に対してプロットした(図37)。抗体を、最もよい抗体が最も低いIC50およびKD値を示す3つの群に、すなわち図37の左下に分類する。この測定に従って、8個のこの群における上位4位までのIgG抗体は、HW78、HH69、HX28、およびDI26であった。
【0331】
(表13)VEGF-Dソース毎の選択されたヒト化IgG抗体の実験1および2 IC50およびランキング

【0332】
(表14)VEGF-Dソース毎のおよび実験毎の選択されたヒト化IgG抗体の実験1および2 IC50平均値およびランキング

【0333】
(表15)選択されたヒト化IgG抗体に関する実験1および2 IC50の全平均値およびランキング

【0334】
実施例7
VEGFR-3-Ba/F3 3Hチミジン取込みバイオアッセイにおけるIgG抗体の中和活性の試験
バックグラウンド
VEGFR-3-Ba/F3細胞株は、VEGFR-3の細胞外ドメインと、EpoRの膜貫通および細胞質ドメインとからなるキメラ受容体を発現する。Ba/F3細胞はIL-3依存的である。IL-3の非存在下で、VEGFR-3-Ba/F3細胞は、マウスVEGFR-3の細胞外ドメインに結合してクロスリンクすることができる増殖因子の存在下に限って生存および増殖する。このように、このアッセイを用いて、本明細書において記述される抗体がVEGFR-3活性を中和できるか否かを評価する。
【0335】
Ba/F3細胞に、ヒトVEGFR-3の細胞外ドメインとマウスエリスロポエチン受容体(EpoR)の膜貫通および細胞外ドメインとを含有するキメラ受容体を安定にトランスフェクトさせた(Achen et al. 2000 Eur J Biochem 267: 2505-2515)。キメラ受容体は、部位特異的変異誘発を用いてマウスEpoR cDNAの細胞外および膜貫通ドメインをコードする領域の接合部でBglII制限酵素部位を導入することによって作製される。これに先だって、天然に存在するBglII部位を消失させるために、EpoRの細胞質ドメインをコードする領域のEpoR cDNAにサイレント変異を導入する。プラスミドpcDNA1/Amp(Invitrogen)においてサブクローニングされた膜貫通および細胞質ドメインをコードするEpoR cDNAの断片を、ヒトVEGFR-3の完全な細胞外ドメインをコードするDNAからなるPCR産物にBglII部位でライゲートして、VEGFR-3細胞外ドメインとEpoRの膜貫通および細胞質ドメインとからなる融合タンパク質をコードするcDNAを生成する。ヒトVEGFR-3の細胞外ドメインをコードするDNA断片をプライマー

を用いてPCRによって増幅して、EpoRプラスミド構築物のHindIII-BamHI部位にHindIII-BamHI断片としてライゲートすることができる。キメラ受容体をコードするDNAを発現ベクターpEF-BOSにサブクローニングして、Ba/F3細胞株にpgk-Neo(マウスホスホグリセレートキナーゼ-1遺伝子のプロモーターの制御下でネオマイシン抵抗性遺伝子を含有するプラスミド)と共に20:1の比率で同時トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をG418において選択して、VEGFR-3-EpoRキメラ受容体(分子量〜150,000)を発現する細胞株を、抗ヒトVEGFR-3ポリクローナル抗体(R & D Systems, Minneapolis, MN, USA)による免疫沈降およびウェスタンブロット分析によって同定する。キメラ受容体の発現をヒトVEGFR-3の細胞外ドメインに対して特異的なmAb 9D9を用いてフローサイトメトリーによって確認する。受容体を発現する細胞株をBa/F3-VEGFR-3-EpoRと命名する。
【0336】
受容体型チロシンキナーゼファミリーメンバーは、Ba/F3などの造血細胞におけるシグナル伝達が不良であるが、EpoR細胞質ドメインからのシグナル伝達によって、IL-3の非存在下で細胞の生存および増殖が起こることから、キメラ分子が用いられる。Ba/F3-VEGFR-3-EpoRは、IL-3の非存在下で公知のVEGFR-3リガンド、たとえばVEGF-DまたはVEGF-Cによって救出されうる。対照的に、VEGFR-3を発現しない親細胞株は、公知のVEGFR-3リガンドに応答せず、このことは公知のリガンドに対するBa/F3-VEGFR-3-EpoR細胞株の応答がキメラ受容体に依存することを示している。
【0337】
候補抗体組成物を、Ba/F3-VEGFR-3-EpoR細胞を用いるそのような細胞増殖バイオアッセイにおいてVEGFR-3の活性化の阻害能に関してスクリーニングする。キメラ受容体の細胞外ドメインに対する公知のリガンド(たとえば、成熟VEGF-D)の結合または細胞外ドメインのその後のクロスリンクを低減させる化合物は、公知のリガンドの存在下であっても、IL-3の非存在下で細胞死を引き起こすであろう。
【0338】
VEGFR-3に関する公知のリガンドの試料を、候補組成物と共にNaCl/Pi中で4℃で1時間インキュベートした後、混合物を、IL-3を欠如する細胞培養培地(たとえば、10%(v/v)ウシ胎児血清、50 mM L-グルタミン、50μgml-1 ゲンタマイシン、1 mgmL-1 G418を含有するダルベッコ改変イーグル培地)によって1:10に希釈する。得られた培地は、VEGFR-3に関する公知のリガンドおよそ500 ngmL-1および様々な濃度の候補化合物を含有するであろう。次に、Ba/F3-VEGFR-3-EpoR細胞を培地において37℃で48時間インキュベートする。3H-チミジン1μCiを添加してさらに4時間インキュベートした後、たとえば自動セルハーベスタを用いて回収することによってDNA合成を定量する。3Hチミジン取込みをβシンチレーション計数によって測定する。
【0339】
実施例8
VEGFR-2-Ba/F3およびVEGFR-3-Ba/F3の3Hチミジン取込みバイオアッセイにおけるIgG抗体の中和活性の試験
方法論 クローンF61、HW78、HH69、HH41、HX28、HU75、DI26、およびAW61に由来するIgG抗体8個を、実施例6および7に従って、VEGFR-2-Ba/F3(実施例6)およびVEGFR-3-Ba/F3(実施例7)バイオアッセイにおいてヒトVEGF-Dの3つの型(ソース1、2、および3)による受容体活性化の遮断能に関して試験した。中和モノクローナル抗体および可溶性VEGFR-3受容体を陽性対照として用いた(示していない)。
【0340】
固定量のVEGF-Dタンパク質を異なる量の抗体と共に混合して、ソース1およびソース2 VEGF-Dに関して500 ng/mlの濃度を生じ、ソース3 VEGF-Dに関して1250 ng/mlの濃度、および各抗体に関して0〜36,000 ng/mlの濃度を得た。50μLを3つ組で96ウェルマイクロタイタープレートにおいて平板培養した。VEGFR-2-Ba/F3細胞に関して、測定可能な増殖/生存応答を達成するために必要なVEGF-D濃度を実験によって決定して、タンパク質の利用率を考慮して調節した。等量のVEGFR-2-Ba/F3またはVEGFR-3-Ba/F3細胞浮遊液(400,000個/ml)を加えた(培養物の総容積は100μl/ウェル)。2日後、5 mg/ml MTTのPBS溶液10μlを各ウェルに加えて、さらに2時間インキュベートした後、10%SDS/10 mM HCl溶液100μlを加えることによって細胞を溶解した。37℃で終夜インキュベートして2時間撹拌した後、マイクロタイタープレート分光光度計によってOD(540 nm)を測定した。
【0341】
結果 抗体8個は全て、試験した3つ全てのVEGF-Dタンパク質によるVEGFR-2およびVEGFR-3の活性化をいずれも阻害した。ソース1およびソース2 VEGF-Dは、VEGFR-2バイオアッセイにおいて高い抗体濃度ではほぼベースラインまで阻害された。ソース1およびソース2 VEGF-Dの阻害は、VEGFR-3バイオアッセイにおいて最も良好であった。VEGFR-3バイオアッセイにおいて最も良好な抗体はHX28であり、これはソース1およびソース2 VEGF-Dの阻害に関して対照VEGFR-3可溶型受容体に近かった。HX28およびDI26はVEGFR-3バイオアッセイにおいてソース3 VEGF-Dの阻害に関して最も良好な抗体であった。実施例8のVEGFR-3-Ba/F3バイオアッセイの定性的結果を表16に表す。上位3位までにランクされた抗体は実施例6の表12および15に示される抗体と同じである。
【0342】
(表16)VEGFR-3-Ba/F3バイオアッセイにおいてランクされたヒト化IgG抗体

【0343】
実施例9
商業的規模での抗体産生
クローンHH69、HX28、およびDI26に由来するIgG抗体を商業的規模で産生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1として提供される重鎖可変(VH)ドメインアミノ酸配列またはアミノ酸置換1〜10個を含有するその変異体を含む、血管内皮細胞増殖因子-D(VEGF-D)に特異的に結合する単離された抗体。
【請求項2】
SEQ ID NO:26として提供されるアミノ酸配列を有するCDR1、SEQ ID NO:29として提供されるアミノ酸配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28として提供されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、CDR1、CDR2、およびCDR3がヒトフレームワーク配列内に挿入されている、VEGF-Dに特異的に結合するヒト化抗体。
【請求項3】
VHドメインアミノ酸配列が、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、わずか5個以下、または4個以下のアミノ酸置換を含有するSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
VHドメインアミノ酸配列が、1、2、または3個のアミノ酸置換を含有するSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
VHドメインアミノ酸配列が、1、2、3、5、9、10、11、12、13、16、17、18、19、20、23、24、25、28、40、43、46、48、55、63、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、81、82、83、84、87、88、89、93、95、99、100、110、112、113、114、または117位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項6】
VHドメインアミノ酸配列が、2、3、5、10、12、17、18、19、20、23、25、40、46、48、55、63、65、68、69、73、75、77、81、82、89、95、99、100、112、114、または117位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項7】
VHドメインアミノ酸配列が、10、20、25、55、77、または82位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項8】
VHドメインアミノ酸配列が、Q1E;V2A;Q3R;V5A;A9S;E10K;V11L;K12R;Q13K;A16E;S17N;S17G;V18M;V18L;K19R;K19T;V20A;V20I;K23E;A24G;S25G;S25R;T28S;A40M;A40V;Q43K;E46G;M48V;N55S;K63R;K65R;R67Q;V68A;V68F;T69A;T69V;M70F;M70I;T71S;T72A;T72L;D73G;T74K;S75N;T76V;T76I;S77G;M81V;M81L;E82K;E82Q;L83I;L83W;R84S;R87K;S88A;D89G;D89E;D89S;V93M;Y95H;T99A;S100G;R110Q;T112A;L113T;V114A;およびA117Sからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項9】
VHドメインアミノ酸配列が、V2A;Q3R;V5A;E10K;K12R;S17N;S17G;V18M;K19R;K19T;V20A;K23E;S25G;S25R;A40V;E46G;M48V;N55S;K63R;K65R;V68A;D73G;S75N;S77G;M81V;E82K;D89G;Y95H;T99A;S100G;T112A;V114A;およびA117Sからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項10】
VHドメインアミノ酸配列が、E10K;V20A;S25R;N55S;V68A;S77G;およびE82Kからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項11】
VHドメインアミノ酸配列が、E10K、V20A、およびN55Sからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項12】
VHドメインアミノ酸配列がアミノ酸置換N55Sを少なくとも含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項13】
VHドメインアミノ酸配列が、アミノ酸置換E10K、V20A、およびN55Sを含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項14】
VHドメインアミノ酸配列が、SEQ ID NO:13として提供される配列を含むSEQ ID NO:1変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項15】
VHドメインアミノ酸配列が、E82K;E10KおよびV20A;V68AおよびE82K;ならびにS25R、S77G、およびE82Kからなる群より選択される置換を含むSEQ ID NO:1の変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項16】
VHドメインアミノ酸配列が、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:11、またはSEQ ID NO:15として提供される配列を含むSEQ ID NO:1変異体を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項17】
SEQ ID NO:5として提供される軽鎖可変(VL)ドメインアミノ酸配列またはアミノ酸置換1〜10個を含有するその変異体を含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の抗体。
【請求項18】
SEQ ID NO:1として提供される重鎖可変(VH)ドメインアミノ酸配列またはアミノ酸置換1〜10個を含有するその変異体と、SEQ ID NO:5として提供される軽鎖可変(VL)ドメインアミノ酸配列またはアミノ酸置換1〜10個を含有するその変異体とを含む、VEGF-Dに特異的に結合する単離された抗体。
【請求項19】
VLドメインアミノ酸配列が、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、または3個以下のアミノ酸置換を含有するSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項20】
VLドメインアミノ酸配列が、1個または2個のアミノ酸置換を含有するSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項21】
VLドメインアミノ酸配列が、5、11、13、25、32、58、60、65、75、79、88、97、105 または108位にアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項22】
VLドメインアミノ酸配列が、T5I;S11G;V13A;S25T;S32G;N58S;F60S;D65G;T75A;K79R;V88M;T97A;Q105R;およびT108Aからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項23】
VLドメインアミノ酸配列が、S11G;S32G;D65G;およびQ105Rからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項24】
VLドメインアミノ酸配列が、S11GおよびQ105R;S32G;ならびにD65Gからなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項25】
VLドメインアミノ酸配列が、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:21として提供される配列を含むSEQ ID NO:5の変異体を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項26】
VHおよびVLドメインが、
(a)SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5;
(b)SEQ ID NO:1変異体E82K(SEQ ID NO:7)およびSEQ ID NO:5;
(c)SEQ ID NO:1変異体E10KおよびV20A(SEQ ID NO:9)ならびにSEQ ID NO:5;
(d)SEQ ID NO:1変異体V68AおよびE82K(SEQ ID NO:11)ならびにSEQ ID NO:5;
(e)SEQ ID NO:1変異体E10K、V20AおよびN55S(SEQ ID NO:13)ならびにSEQ ID NO:5;
(f)SEQ ID NO:1変異体S25R、S77GおよびE82K(SEQ ID NO:15)ならびにSEQ ID NO:5;
(g)SEQ ID NO:1変異体E82K(SEQ ID NO:7)ならびにSEQ ID NO:5変異体S11GおよびQ105R(SEQ ID NO:17);
(h)SEQ ID NO:1変異体E82K(SEQ ID NO:7)およびSEQ ID NO:5変異体S32G(SEQ ID NO:19);
(i)SEQ ID NO:1変異体E10K、V20AおよびN55S(SEQ ID NO:13)ならびにSEQ ID NO:5変異体S11GおよびQ105R(SEQ ID NO:17);または
(j)SEQ ID NO:1変異体E10K、V20AおよびN55S(SEQ ID NO:13)ならびにSEQ ID NO:5変異体D65G(SEQ ID NO:21)
を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項27】
成熟VEGF-Dに対する前記抗体の解離定数(KD)が、約40 nM未満、または約35 nM未満、または約30 nM未満、または約25 nM未満、または約20 nM未満、または約15 nM未満、または約10 nM未満、または約5 nM未満、または約4 nM未満、または約3 nM未満、または約2 nM未満、または約1 nM未満、または約900 pM未満、または約800 pM未満、または約700 pM未満、または約600 pM未満、または約500 pM未満、または約400 pM未満、または約300 pM未満、または約200 pM未満、または約100 pM未満、または約50 pM未満、または約10 pM未満、または約1 pM未満である、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項28】
モノクローナルである、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項29】
1つまたは複数の定常ドメインを含む、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項30】
IgGアイソタイプの1つまたは複数の定常ドメインを含む、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項31】
IgGアイソタイプのヒト定常ドメインを含む、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項32】
SEQ ID NO:23として提供される重鎖定常領域アミノ酸配列を含む、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項32】
VLドメイン、SEQ ID NO:24として提供される軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む、請求項18記載の抗体。
【請求項33】
Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFV、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、ミニボディ、または単離されたVHドメインを含む、請求項1または請求項2記載の抗体。
【請求項34】
N末端およびC末端を含み、かつ該N末端または該C末端で切断される、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項35】
キメラであるか、または異種由来部分をさらに含む、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項36】
異種由来物質にコンジュゲートする、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体。
【請求項37】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項38】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む、ベクター。
【請求項39】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む、単離された宿主細胞。
【請求項40】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、かつ真核性である、単離された宿主細胞。
【請求項41】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、かつ哺乳動物性である、単離された宿主細胞。
【請求項42】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む宿主細胞を培養する段階であって、該細胞が、該コードされる抗体を含む抗体を産生し、かつ該抗体がVEGF-Dに特異的に結合する、段階;および
該細胞または培養物から該抗体を得る段階
を含む、該抗体を産生する方法。
【請求項43】
請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む宿主細胞を培養する段階であって、該細胞が、該コードされる抗体を含む抗体を産生し、かつ該抗体がVEGF-Dに特異的に結合する、段階;および
該抗体を得る段階であって、該抗体が該細胞から培養培地中に分泌され、そこから該抗体を得る、段階
を含む、該抗体を産生する方法。
【請求項44】
請求項42または請求項43記載の方法によって産生される、抗体。
【請求項45】
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体、または請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項46】
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体、または請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子と、使用説明書とを含む、キット。
【請求項47】
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体;
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子;
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物;または
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物
の治療的有効量を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、血管新生を阻害する方法。
【請求項48】
試験試料および参照試料に、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体を接触させる段階;
該試験試料中に存在するVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによって第一のVEGF-D発現レベルを提供する段階;
該参照試料中に存在するVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによって第二のVEGF-D発現レベルを提供する段階;
該試験試料中の第一のVEGF-D発現レベルを決定する段階;
該参照試料中の第二のVEGF-D発現レベルを決定する段階;および
該試験試料中の第一のVEGF-D発現レベルを該参照試料中の第二のVEGF-D発現レベルと比較する段階であって、該参照試料中の第二のVEGF-D発現レベルと比較して該試験試料中の第一のVEGF-D発現レベルがより高いことが、該試験試料中の血管新生の増加の指標となる、段階
を含む、血管新生を診断する方法。
【請求項49】
血管新生を阻害または診断するための、
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体;
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子;
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物;または
請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物
の使用。
【請求項50】
血管新生を阻害するための医薬の製造における、請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体の、または請求項1、2、もしくは18のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸分子の、使用。
【請求項51】
試料に、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体を接触させる段階;および
該試料中に存在する任意のVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによってVEGF-D発現レベルを提供する段階
を含む、該試料中のVEGF-Dの存在を検出する方法。
【請求項52】
試料に、請求項1、2、または18のいずれか一項記載の抗体を接触させる段階;
該試料中に存在するVEGF-Dに対する抗体の特異的結合を決定することによってVEGF-D発現レベルを提供する段階;および
該試料中のVEGF-D発現レベルを参照試料中のVEGF-D発現レベルと比較する段階であって、該参照試料と比較して該試料中のVEGF-D発現レベルがより高いことが、血管新生の増加の指標となる、段階
を含む、該試料中のVEGF-Dの存在を検出する方法。
【請求項53】
血管新生が、血管新生の調節不全、リンパ管新生の調節不全、癌、関節リウマチ、乾癬、リンパ管筋腫症、または他の炎症状態の特徴である、請求項47、48、もしくは52のいずれか一項記載の方法または請求項49もしくは請求項50記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate


【公表番号】特表2012−522491(P2012−522491A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502394(P2012−502394)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000376
【国際公開番号】WO2010/111746
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511237944)ベジニクス ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】