説明

折り機用の用紙検査装置

【課題】センサを用いて折り機にフィードされる前の用紙の状態を検査し,用紙の異常状態として,用紙の姿勢が斜めの状態及び用紙の角に折り込み・破けが発生している状態を検知できる装置を提供する。
【解決手段】用紙検査装置1は,折り機に対して正常な状態で用紙が搬送されるときに,搬送方向で対向する用紙の2隅がそれぞれの検出範囲を通過するように設置される一対のセンサ10と,一対センサ10の出力信号をそれぞれ監視し,一対センサ10の出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりのタイミングに差が発生すると,用紙の状態が異常と判断する用紙検査手段11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,折り機で発生する折り不良を防止するための技術に関し,更に,折り機にフィードされる前の用紙の状態を検査するための発明に関する。
【背景技術】
【0002】
封入封緘機などに備えられた折り機にて用紙を折り加工する際,用紙が折り機に対して真っ直ぐにフィードされ,かつ,フィードされる用紙の角に折り込みや破けが発生していなければ、折り機にて用紙を正常に折り込むことが出来るが,用紙が折り機に対して斜めにフィードされたり,または,用紙の角に折り込みや破けが発生していると,折り機にて用紙を正常に折り込むことが出来ず,折り不良が発生してしまう。
【0003】
例えば,特許文献1に記載があるようなバックル型の折り機の場合,折り不良が発生し,羽根板や折りローラに用紙が詰まると,用紙を取り除くための停止時間が長くなってしまう。また,折り不良の用紙が封筒に封入封緘されて出荷された場合,開封したユーザが用紙に記載されていた内容を読み取ることが出来なかったり,用紙を所定の製品(例えば,葉書)として使用することが出来なかったりする。
【0004】
そこで,センサを用いて折り機にフィードされる前の用紙の状態を検査し,用紙が折り機に対して斜めにフィードされることや用紙の角の折り込み・破けを検知し,これらの現象が発生した場合には,折り機を停止させることが望ましい。
【0005】
センサを用いて折り機で発生する不良を検知する発明としては,特許文献1,2において,折り丁の搬送路上であって折り丁の対角の2隅に相当する位置に配設された一対の折り丁検知手段を備えた折り精度検査装置が開示されているが,この発明は,折り機で折られた折り丁の折り精度を検査するための装置であって,センサを用いて折り機にフィードされる前の用紙の状態を検査するための発明ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−208890号公報
【特許文献2】特開平7−277592号公報
【特許文献3】特開平7−277593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで,本発明は,センサを用いて折り機にフィードされる前の用紙の状態を検査し,用紙の異常状態として,用紙の姿勢が斜めの状態及び用紙の角に折り込み・破けが発生している状態を検知できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明は,折り機に対して正常な状態で用紙が搬送されるときに,搬送方向で対向する用紙の2隅がそれぞれの検出範囲を通過するように設置される一対のセンサと,一対のセンサの出力信号をそれぞれ監視し,一対のセンサの出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりのタイミングに差が発生すると,用紙の状態が異常と判断する用紙検査手段を備えていることを特徴とする折り機用の用紙検査装置である。なお,本発明において,用紙検査手段は,用紙の状態が異常と判断すると,折り機を停止する信号を出力することが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
用紙の異常状態として,用紙の姿勢が斜めの状態及び用紙の角に折り込み・破けが発生している状態が発生すると,一対センサの出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりのタイミングに差が生じるため,一対センサの出力信号を監視すれば,折り機にフィードされる前の用紙の異常状態として,用紙の姿勢が斜めの状態及び用紙の角に折り込み・破けが発生している状態を検知できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る折り機用の用紙検査装置を説明する図。
【図2】用紙検査装置に備えられた機能を説明する図。
【図3】正常状態の用紙を検査したときに得られる一対のセンサの出力信号を説明する図。
【図4】姿勢が斜めの状態の用紙を検査したときに得られるセンサの出力信号を説明する図。
【図5】用紙の角に折り込み・破けが発生している状態の用紙を検査したときに得られるセンサの出力信号を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここから,本発明の実施形態について,本発明の技術分野に係わる当業者が,発明の内容を理解し,発明を実施できる程度に説明する。なお、これから説明する実施形態は一例にしか過ぎず、本発明は,これから説明する実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能である。
【0012】
図1は,本実施形態に係る折り機用の用紙検査装置1を説明する図である。本実施形態に係る用紙検査装置1は,フィーダ4によりフィードされた用紙5を折り機3に搬送する搬送機2上に設けられた一対のセンサ10を利用して用紙5の状態を検査するために開発された装置である。なお,今後,一対のセンサ10のそれぞれを区別して記載するとき,それぞれを区別するための符号(a,b)を付加して記載する。
【0013】
図2は,用紙検査装置1に備えられた機能を説明する図である。用紙検査装置1は,任意のプログラムを実装可能なコンピュータ装置を利用して実現される装置で,このようなコンピュータ装置としては,PLC(Programmable Logic Controller)やパーソナルコンピュータが想定できる。
【0014】
図2で図示したように,用紙検査装置1には,一対のセンサ10が接続され,用紙検査装置1として利用するコンピュータ装置に実装されたコンピュータプログラムにより実現される手段として,搬送機2上に配置される一対のセンサ10の出力を利用して,搬送機2上の用紙5の状態を検査する用紙検査手段11が備えられている。
【0015】
まず,搬送機2上に配置される一対のセンサ10について説明する。搬送機2上に配置される一対のセンサ10は,用紙5の検出の有無により出力が変わるセンサ10が用いられ,それぞれのセンサ10は,用紙5を検出したときにONになり,用紙5を検出しないときはOFFになるように調整されている。
【0016】
折り機3のフィードされる手前で用紙5を検出できるように,一対のセンサ10は折り機3のフィード部の手前に配置され,一対のセンサ10それぞれは,折り機3に対して正常な状態で用紙5が搬送されるときに,搬送方向で対向する用紙5の2隅が検出範囲を通過するように設置されている。
【0017】
次に,用紙検査装置1に備えられ,搬送機2上に配置される一対のセンサ10の出力を利用して,搬送機2上の用紙5の状態を検査する用紙検査手段11について説明する。
【0018】
上述したように,一対のセンサ10それぞれは,折り機3に対して正常な姿勢で用紙5が搬送されるときに,搬送方向で対向する用紙5の2隅が検出範囲を通過するように設置されるため,センサ10の検出範囲を用紙5が通過したときの出力信号は,用紙5の状態が正常状態の場合と異常状態の場合とでは異なることを利用して,用紙検査装置1の用紙検査手段11は,搬送機2上の用紙の状態に異常状態が発生していることを検知する。
【0019】
具体的には,用紙5の状態が異常状態の場合,すなわち,用紙5の姿勢が斜めの状態,または,用紙5の角に折り込み・破けが発生している状態の場合,センサ10の検出範囲を用紙5が通過したときの一対センサ10の出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりのタイミングに差が生じるため,用紙検査装置1に備えられた用紙検査手段11は,一対センサ10の出力信号を監視し,一対センサ10の出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりにタイミングの差が発生すると,用紙5の状態が異常状態と判断し,折り機3を停止する信号を折り機3に出力する処理を実行する。
【0020】
まず,用紙5の状態が正常状態の場合に,一対のセンサ10から出力される出力信号について説明する。図3は,正常状態の用紙5を検査したときに得られる一対のセンサ10の出力信号を説明する図である。なお,用紙5の状態が正常状態であるとは,用紙5の姿勢が折り機3に対して真っ直ぐの状態で,かつ,用紙5の角に折り込みや破けが発生していない状態を意味する。
【0021】
図3において,ライン6aは,用紙5を矢印の方向に搬送したときに,センサ10aの検出範囲が用紙5上を通過するラインを示している。用紙5が矢印の方向に搬送され,ライン6aに該当する用紙5の箇所がセンサ10aの検出範囲を通過開始すると,センサ10aの出力信号はONに立ち上がり,ライン6aに該当する用紙5の箇所がセンサ10aの検出範囲を通過終了すると,センサ10aの出力信号はOFFに立ち下がる。
【0022】
同様に,ライン6bは,用紙5を矢印の方向に搬送したときに,センサ10bの検出範囲が用紙5上を通過するラインを示している。用紙5が矢印の方向に搬送され,ライン6bに該当する用紙5の箇所がセンサ10bの検出範囲を通過開始すると,センサ10bの出力信号はONに立ち上がり,ライン6bに該当する用紙5の箇所がセンサ10bの検出範囲を通過終了すると,センサ10bの出力信号はOFFに立ち下がる。
【0023】
図3に図示したように,用紙5の状態が正常状態の場合,ライン6aとライン6bの開始位置及び終了位置について,搬送方向における位相差はないため,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち上がり及び立ち下がりにタイミングの差は発生しない。
【0024】
次に,用紙5の状態が異常状態の場合に,一対のセンサ10から出力される出力信号について説明する。なお,用紙5の状態が異常状態であるとは,用紙5の姿勢が折り機3に対して斜めの状態か,または,用紙5の角に折り込みや破けが発生している状態を意味する。
【0025】
まず,用紙5の姿勢が斜めの状態の場合に,一対のセンサ10から出力される出力信号について説明する。図4は,姿勢が斜めの状態の用紙5を検査したときに得られるセンサ10の出力信号を説明する図である。
【0026】
図4において,図3と同様に,ライン6cは,用紙5を矢印の方向に搬送したときに,センサ10aの検出範囲が用紙5上を通過するラインを示し,また,ライン6dは,用紙5を矢印の方向に搬送したときに,センサ10bの検出範囲が用紙5上を通過するラインを示している。
【0027】
図4に図示したように,用紙5が折り機3に対して斜めの姿勢の場合,用紙5が斜めの姿勢になることにより,ライン6cの開始位置及び終了位置の搬送方向における位相は,ライン6dの開始位置及び終了位置の搬送方向における位相よりも早くなり,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち上がり及び立ち下がりの両方にタイミングの差Δtが発生する。
【0028】
なお,正常状態の用紙5が一対のセンサ10の検出範囲を通過している途中に,用紙5が斜めの状態になった場合,正常状態のときと同様に,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち上がりにはタイミングの差が発生しないが,途中から用紙5が斜めの状態になったことにとり,用紙5の姿勢が斜めのときと同様に,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち下がりにタイミングの差が発生することになる。
【0029】
図5は,用紙5の角に折り込み・破けが発生している状態の用紙5を検査したときに得られるセンサ10の出力信号を説明する図である。
【0030】
図5において,図3と同様に,ライン6eは,用紙5を矢印の方向に搬送したときに,センサ10aの検出範囲が用紙5上を通過するラインを示し,また,ライン6fは,用紙5を矢印の方向に搬送したときに,センサ10bの検出範囲が用紙5上を通過するラインを示している。
【0031】
図5に図示したように,用紙5の角に折り込み・破けが発生している状態の場合,用紙5の角に折り込み・破けの箇所には用紙5がないことになるため,ライン6eの開始位置の搬送方向における位相は,ライン6fの開始位置の搬送方向における位相よりも遅くなり,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち上がりにのみタイミングの差Δtが発生する。なお,ライン6eの終了位置の搬送方向における位相は,ライン6fの終了位置の搬送方向における位相と同じであり,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち下がりにタイミングの差は生じない。
【0032】
なお,図5では,搬送方向の先頭の用紙5の角に折り込み・破けが発生しているが,搬送方向の後方の用紙5の角に折り込み・破けが発生している場合,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち上がりにタイミングに差が発生しないが,センサ10aとセンサ10bの出力信号間において立ち下がりにタイミングの差が生じることになる。
【0033】
このように,用紙5の状態が異常状態の場合,すなわち,用紙5の姿勢が斜めの状態,または,用紙5の角に折り込み・破けが発生している状態の場合,一対のセンサ10の出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりにタイミングの差が発生することになるため,一対のセンサ10の出力信号を監視することで,折り機3にフィードされる前の用紙5の状態が異常状態であることを検知できる。
【符号の説明】
【0034】
1 用紙検査装置
10 一対のセンサ
10a,b センサ
11 用紙検査手段
2 搬送機
3 折り機
4 フィーダ
5 用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り機に対して正常な状態で用紙が搬送されるときに,搬送方向で対向する用紙の2隅がそれぞれの検出範囲を通過するように設置される一対のセンサと,前記一対のセンサの出力信号をそれぞれ監視し,前記一対のセンサの出力信号間において立ち上がり又は立ち下がりのタイミングに差が発生すると,用紙の状態が異常状態と判断する用紙検査手段を備えていることを特徴とする折り機用の用紙検査装置。
【請求項2】
前記用紙検査手段は,用紙の状態が異常状態と判断すると,折り機を停止する信号を出力することを特徴とする,請求項1に記載の用紙検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111590(P2012−111590A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261315(P2010−261315)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】