説明

折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造

【課題】折り畳み型携帯機器の限られた空間において、ストラップホルダをコンパクトで強固に固定し、かつ組み立てや分解がし易く製造、修理コストがかからないストラップ取り付け部の構造を実現する。
【解決手段】折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造であって、ストラップホルダ4が筐体1のヒンジ円筒部側面の凹部11に収納され、L字形状のピン5が、筐体1に設けた開口部12、及びストラップホルダ4に貫通するピン孔42に挿通されて、筐体1に設けた受け溝13で受け止められる。筐体1に締結されるカバー3によりピン5の両端を押さえて、ストラップホルダ4が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラップ取り付け部の構造、特に、折り畳み型携帯電話のような端末機器に採用されるストラップ取り付け部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話のような端末機器(携帯機器)には、本体を吊り下げて保持するためのストラップが取り付けられる。ストラップには機能とデザイン性を兼ねた様々な器具を付加することもある。このストラップは、筐体本体に一体成形された貫通孔により取り付けてもよいが、小型化、薄型化、樹脂成形上の点で問題がある。そこで、貫通孔を有するストラップホルダ(単に「ホルダ」ともいう)を別途部品として用意し、筐体本体に取り付けることが行われている。筐体本体が略矩形状の場合、ストラップホルダを角部に取り付けることは、引っかかりが少なく本体が取り出し易く、小型化、薄型化、外観の観点から好ましい。
【0003】
下記特許文献1には、携帯機器において、ストラップホルダを筐体本体の角部に取り付けた例が開示されている。
【0004】
図7は、特許文献1に示されたストラップホルダを取り付けた携帯機器を示す図である。
【0005】
図7において、上ケース101と下ケース102は、プリント基板103を挟んで組み立てられる。ストラップホルダ106は、穴108aを有する突起部108と嵌合穴107aを有する嵌合部107からなる。上ケース101と下ケース102からなる略矩形状の本体隅部の開口部109において、ネジ109は、下ケース102の突起部104の貫通穴104aから挿入され、ストラップホルダ106の嵌合穴107aを介して、上ケース101の突起部105のネジ穴に螺合される。これにより、ストラップホルダ105は、一体的に固定される。
【0006】
一方、携帯機器は、操作キーが配列される筐体と、液晶のような表示画面が設けられる筐体を、ヒンジを介して回動自在に組み立てる型が広く普及している。このような2つ折りの折り畳み型携帯機器は、最近、薄型になっており、ストラップを取り付ける部分も場所が限られている。2つ折りの折り畳み型携帯機器において、ストラップホルダを角部に取り付けようとすると、その形状から筐体の比較的厚みのあるヒンジ筒の部分に取り付けるのが、構造上都合がよい。
【0007】
そこで、本出願人は、先願に係る特願2005−244827号において、ストラップ取り付け部のヒンジ部に対して、ピンを貫通させて固定したものを提案している。
【0008】
図8は、上記先願に係るストラップ取り付け部の一例を示す図である。
【0009】
(a)は、ストラップホルダの構成部品を示す分解斜視図、(b)は、固定部付近の上面図、(c)は、(b)のC−C断面図である。
【0010】
図8において、2つ折りの折り畳み型携帯機器は、第1の筐体(以下単に「筐体」という)1、第2の筐体(不図示)、カバー3を有し、ストラップ取り付け部は、2つの筐体のヒンジ円筒部にある。筐体(ケース)1のヒンジ円筒部側面に設けた凹部11に、ストラップホルダ4が納められる。筐体1に設けたピン通路18、ホルダ4に設けた第1ピン孔44、及び筐体1に設けたピン凹部19に、ホルダ4の抜け止めとなる直線状のピン5が差し込まれる。ピン5は、ピン通路18により係止される。ピン5の外れ止めも兼ねるカバー3は、筐体1に対してネジ6により締結される。ホルダ4を、ピン5を用いて筐体1から外れないように固定する構成としている。
このストラップホルダは、小型化しても十分な強度が得られ、意匠性が優れ、また、ピンにより固定されるため組み立ても容易である。
【特許文献1】特開平5−191057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の特許文献1に示されたストラップホルダを取り付けた携帯機器は、折り畳み型携帯機器ではなく、ストラップホルダを角部のヒンジ筒の部分に取り付けることを実現したものではない。
【0012】
上記先願例の場合は、ピン5が抜けないよう強固に保持するため筐体1のピン通路18とピン凹部19が設けられた保持部を厚くする必要があり、機器の厚みが厚くなってしまうという問題があった。また、薄型にしようとした場合はピン5の筐体1への保持強度を確保するためにピン5を筐体1に接着または圧入する必要が生じ、製造コストがかかり専用の設備も必要になるという問題があった。また、接着や圧入をしてしまうと修理などの際に分解できず筐体を壊して分解しなければならず、部品の再使用ができなくなるという問題もあった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、折り畳み型携帯機器の限られた空間において、ストラップホルダをコンパクトで強固に固定し、かつ組み立てや分解がし易く製造、修理コストがかからないストラップ取り付け部の構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明は、折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造であって、ストラップホルダが筐体のヒンジ円筒部側面の凹部に収納され、L字形状のピンが、前記筐体に設けた開口部、及び前記ストラップホルダに貫通するピン孔に挿通されて、前記筐体に設けた受け溝で受け止められており、前記筐体に締結されるカバーにより前記ピンの両端を押さえて、前記ストラップホルダを固定したことを特徴とする。
【0015】
また、他の本発明は、折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造であって、ストラップホルダが筐体のヒンジ円筒部側面の凹部に収納され、L字形状のピンが、前記筐体に設けた開口部、前記ストラップホルダに貫通するピン孔、及び前記筐体に設けた貫通孔に挿通されており、前記筐体に締結されるカバーにより前記ピンの両端を押さえて、前記ストラップホルダを固定したことを特徴とする。
【0016】
[作用]
L字形状のピンを筐体側から差し込みストラップホルダに貫通させ、ピンはカバーの締結により押さえられ、回り止めと抜け止めが行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ストラップホルダと筐体に対して差し込まれたL字形状のピンが両端でカバーにより押さえられ、広い面でピンの回り止めと抜け止めが行われる。それにより、ストラップホルダは、確実に固定され、コンパクトかつ強固なストラップ取り付け部の構造を実現できる。
【0018】
また、ピンがL字形状で持ち易く接着や圧入による固定も行わないため、組み立てが容易で製造コストや設備費も抑えられる。
【0019】
更に、接着や圧入による固定を行わないため、ストラップ取り付け部が破損等した場合はピンを外すことでホルダのみを容易に交換することができ、筐体を再使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1の携帯機器を示す斜視図である。
【0022】
2つ折りの折り畳み型携帯機器は、第1の筐体1(以下単に「筐体」という)、第2の筐体2、カバー3を有し、2つの筐体のヒンジ部にはホルダ4が取り付けられる。これらは、上記先願例の構成と共通している。
【0023】
図2は、本実施形態のストラップ取り付け部の構成部品を示す分解斜視図である。
【0024】
図2において、筐体1のヒンジ円筒部側面に設けた凹部11に、ホルダ4が納められる。ホルダ4は、凹部11に対してヒンジ軸回りに回転不能でガタツキが生ずるような隙間がない形状となっている。
【0025】
ホルダ4には、ストラップを通すための係止部41が形成され、貫通するピン孔42が略平板状の筐体1の面に対して傾斜して設けられる。筐体1には凹部11内の対向する位置に開口部12と受け溝13が設けられる。開口部12に連接して横溝14が形成される。開口部12、ピン孔42、受け溝13にホルダ4の抜け止めとなるL字形状のピン5が斜めに差し込まれる。カバー3は、筐体1に設けた横溝14に嵌合したピン5の外れ止めも兼ねる。筐体1とカバー3は、ネジ6により締結される。
【0026】
図3は、本実施形態のストラップ取り付け部の組み立て後の状態を示す詳細図である。
【0027】
図3において(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A断面図、(d)はカバー3を外した状態の上面図である。
【0028】
(組み立て方法)
次に、実施形態1の携帯機器における組み立て方法の各工程について図面を参照して説明する。
【0029】
図2において、まず、筐体1の凹部11にホルダ4を嵌め込む。次にピン5の先端51を筐体1に設けた開口部12から斜めに挿入し、ホルダ4のピン孔42を通し、先端51が筐体1の受け溝13に突き当たるまで差し込む。
【0030】
図4は、ピン5を差し込んだ状態から後の工程を示す斜視図である。
【0031】
図4において、(a)はピン5を差し込んだ状態を示す図、(b)はピン5を回転した状態を示す図である。
【0032】
図4(a)において、ピン5を差し込んだ状態からピン5の後端52を図に示す矢印の方向に回転させ筐体1の横溝14の部分に納める。次に、図4(b)において、筐体1にカバー3の爪32を嵌合しネジ5で筐体1とカバー3を締結する。図3(c)は、このときの状態を示しており、ピン5の後端52は、筐体1の横溝14内でカバー3の内面により押さえられ、先端51は、カバー3のリブ31で押さえられ、筐体1の受け溝13の下面で狭持される。接着や圧入による固定も行わずに、ピン5は回転が阻止され、抜け防止が行われる。それにより、ホルダ4は確実に固定される。
【0033】
[実施形態2]
本発明の実施形態2について説明する。
【0034】
図5は、本実施形態のストラップ取り付け部の構成部品を示す分解斜視図である。
【0035】
図6は、本実施形態のストラップ取り付け部の組み立て後の状態を示す詳細図である。
【0036】
図6において、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0037】
本実施形態は、貫通するピン孔43が略平板状の筐体1の面に対して平行して設けられる。筐体1には凹部11内の対向する位置に開口部15と貫通孔16が設けられる。開口部15に連接して、横溝17、切り欠き18が形成される。開口部15、ピン孔43、貫通孔16にホルダ4の抜け止めとなるL字形状のピン5が差し込まれる。このときピン5は、切り欠き18の側から筐体1の面に対して平行して差し込まれ、先端51が貫通孔16を貫通した後、後端52を回転し横溝17に収納する。このとき、横溝15内においてピン5の後端52の上方に空間が生ずる。
【0038】
筐体1とカバー3は、ネジ6により締結される。カバー3のリブ33は、横溝15内の上記空間に嵌合し、ピン5の後端52を押さえてピン5の回り止めを行う。また、カバー3の湾曲部により、貫通孔16から出たピン5の先端51を押さえる。実施形態1と同様に、接着や圧入による固定も行わずに、ピン5は回転が阻止され、抜け防止が行われる。それにより、ホルダ4は確実に固定される。本実施形態は、より薄型のホルダを取り付ける場合に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、折り畳み型携帯電話など、ストラップ取り付け部を有する携帯機器だけでなく、ストラップ取り付け以外にも筐体に取り付けるフックやヒンジユニット、各種カバーキャップ類の取り付け部の固定などにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態1の携帯機器を示す斜視図
【図2】実施形態1のストラップ取り付け部の構成部品を示す分解斜視図
【図3】実施形態1のストラップ取り付け部の組み立て後の状態を示す詳細図、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A断面図、(d)はカバー3を外した状態の上面図
【図4】実施形態1のピン5を差し込んだ状態から後の工程を示す斜視図、(a)はピン5を差し込んだ状態を示す図、(b)はピン5を回転した状態を示す図
【図5】実施形態2のストラップ取り付け部の構成部品を示す分解斜視図、
【図6】実施形態2のストラップ取り付け部の組み立て後の状態を示す詳細図、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B断面図
【図7】特許文献1に示されたストラップホルダを取り付けた携帯機器を示す図
【図8】先願に係るストラップ取り付け部の一例を示す図、(a)はストラップホルダの構成部品を示す分解斜視図、(b)は固定部付近の上面図、(c)は(b)のC−C断面図
【符号の説明】
【0041】
1…第1の筐体(筐体)
2…第2の筐体
3…カバー
4…ストラップホルダ
5…ピン
6…ネジ
11…凹部
12,15…開口部
13…受け溝
14,17…横溝
16…貫通孔
18…切り欠き
41…係止部
42,43…ピン孔
31,33…リブ
32…爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造であって、ストラップホルダが筐体のヒンジ円筒部側面の凹部に収納され、L字形状のピンが、前記筐体に設けた開口部、及び前記ストラップホルダを貫通するピン孔に挿通され、前記筐体に設けた受け溝で受け止められており、前記筐体に締結されるカバーにより前記ピンの両端を押さえて、前記ストラップホルダを固定したことを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造。
【請求項2】
請求項1に記載の折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造において、前記ピンは、平板状の筐体の面に対して傾斜して挿通され、その先端が前記カバーに設けたリブにより押さえられ、その後端が前記開口部に連接した横溝に嵌合され、前記カバーにより押さえられていることを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造。
【請求項3】
請求項1に記載の折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造を組み立てる方法であって、ストラップホルダを筐体のヒンジ円筒部側面の凹部に収納する工程、L字形状のピンを前記筐体に設けた開口部、及び前記ストラップホルダを貫通するピン孔に挿通し、前記筐体に設けた受け溝で受け止める工程、前記ピンの後端を回転し前記開口部に収納する工程、更に前記筐体にカバーを締結する工程を有することを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造の組み立て方法。
【請求項4】
折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造であって、ストラップホルダが筐体のヒンジ円筒部側面の凹部に収納され、L字形状のピンが、前記筐体に設けた開口部、前記ストラップホルダを貫通するピン孔、及び前記筐体に設けた貫通孔に挿通されており、前記筐体に締結されるカバーにより前記ピンの両端を押さえて、前記ストラップホルダを固定したことを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造。
【請求項5】
請求項4に記載の折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造において、前記ピンは、平板状の筐体の面に対して平行に挿通され、その先端が前記カバーにより押さえられ、その後端が前記開口部に連接した横溝に嵌合され、前記カバーに設けたリブにより押さえられていることを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造。
【請求項6】
請求項4に記載の折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造を組み立てる方法であって、ストラップホルダを筐体のヒンジ円筒部側面の凹部に収納する工程、L字形状のピンを前記筐体に設けた開口部、前記ストラップホルダを貫通するピン孔、及び前記筐体に設けた貫通孔に挿通する工程、前記ピンの後端を回転し前記開口部に収納する工程、更に前記筐体にカバーを締結する工程を有することを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造の組み立て方法。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造において、ストラップ取り付け部をフック取り付け部としたことを特徴とする折り畳み型携帯機器におけるフック取り付け部の構造。
【請求項8】
請求項1、2、4又は5に記載の折り畳み型携帯機器におけるストラップ取り付け部の構造を有する端末機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−193583(P2008−193583A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28056(P2007−28056)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】