説明

折り畳み式組立棺

【課題】遺体の体液の漏れを防止した折り畳み式組立棺を提供する。
【解決手段】折り畳み式組立棺(A)は、底板(1)と、その両長辺側に取り付けられる側板(2,3)と、その長手方向の両端部に取り付けられる前板(4)及び後板と、天板(6)で構成されている。底板(1)には両長辺部に沿って補強部材(11,11a)が液密に固着され、底板(1)の外端面には幕板(12)が固着されている。底板(1)上面には防水シート(8)がその両側部分で補強部材(11,11a)の内面を覆うようにして敷かれている。各側板(2,3)は、一方の側板(2)を内側へ倒したときには底板(1)の上面(10)に重ねることができ、他方の側板(3)は一方の側板(2)と高さを違えて側板(2)に重ねて折り畳みができるように、一方または双方の側板(2,3)が二折れ蝶番(7)によって補強部材(11,11a)に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み式組立棺に関するものである。更に詳しくは、保管時には折り畳んでコンパクトにしておくことができ、使用時に簡単に組み立てることができる折り畳み式組立棺であって、遺体の体液が棺の外に漏れるのを防止するための防水シートをあらかじめ位置がずれないようにして底板の上面に敷いておくことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棺は製品として保管しておく場合、箱状に形成したものをそのまま保管していたが、内部に空間を有するために嵩張って収容効率が悪かった。現在では、この問題を改善するために、保管時には折り畳んでコンパクトにしておくことができ、使用時に簡単に組み立てることができる折り畳み式の組立棺が提案され、普及してきている。このような棺としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1記載の棺は、天板、二枚の側板、前板、後板及び底板で構成された折り畳み式組立棺であって、各側板は底板に折り畳みができるように接合されている。折り畳み時には、各側板が底板の上で重なり合い、組み立て時には、底板の長手方向の両側の端面が、それぞれ対応する各側板で隠れるように、各側板と底板とが蝶番によって接合されている構成を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−180766
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1記載の棺には次のような課題があった。
例えば事故や災害で亡くなった人の遺体等、棺に収容される遺体によっては体液が出やすい場合がある。本発明においては、棺を構成する各側板は底板に蝶番だけで接合されているので、組み立てた状態でも底板の端面と各側板の内面との間には僅かな隙間が形成されている。このため、底板上面に防水シートを敷いた場合でも、防水シートが前記隙間を十分に覆うことができず、遺体から出た体液が前記隙間から外部へ漏れるおそれがあった。
【0006】
また、仮に防水シートを底板にあらかじめ敷いた形態にする場合、棺を折り畳んだ状態では底板の縁部には所要数の蝶番があるだけでシートがずれないように止めることは難しく、しかも組み立ての際にはシートを底板と側板で挟まないようにする手間がかかり作業が繁雑になる。このため、あらかじめ防水シートを敷いておくこともできない。
【0007】
さらに、前記のように各側板が底板に蝶番だけで接合されている構造では、構造的な強度が不足している。したがって、例えば使用時に収容した遺体によって底板に大きな荷重がかかった状態で持ち上げると、底板が変形しようとするために特定の蝶番に無理な力が作用し、蝶番が変形したり外れたりして、これが原因で底板が大きく変形するおそれがあった。この点を解消するには底板自体を厚くして強度を上げる方法もあるが、これでは棺の重量が重くなり、コスト高になってしまう問題が生じる。
【0008】
(本発明の目的)
本発明の目的は、保管時には折り畳んでコンパクトにしておくことができ、使用時に簡単に組み立てることができる折り畳み式組立棺であって、遺体の体液が棺の外に漏れるのを防止するための防水シートをあらかじめ位置がずれないようにして底板の上面に敷いておくことができ、組み立て後に防水シートを敷く手間を省いて、製品としての付加価値を高めた折り畳み式組立棺を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記目的に加えて、棺を構成する底板が変形しにくく、棺としての強度により優れている折り畳み式組立棺を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
底板と、底板の両長辺側に取り付けられる側板と、各側板の長手方向の両端部に取り付けられる前板及び後板と、各側板と前板及び後板の上側に載置される天板を備えており、
底板には、少なくとも両長辺部に沿って底板の縁部から所要高さに立ち上げて補強部材が液密に固着されており、
底板の外周面には補強部材を隠す幕板が固着されており、
幕板の上端縁部は補強部材の上面と面一か、または上側に位置しており、
各側板は、一方の側板を底板側へ倒したときには底板の上面に重ねることができ、他方の側板は前記一方の側板と高さを違えて該側板に重ねて折り畳みができるように、一方または双方の側板が二折れ蝶番によって補強部材に取り付けられ、各側板は立てたときに補強部材の上面に載るようにしてあり、
底板(1)の上面には防水シートが敷設されており、防水シートの両側は補強部材の内面まで覆っている、
折り畳み式組立棺である。
【0010】
特許請求の範囲及び本明細書にいう「二折れ蝶番」とは、三枚の板部を同じ方向へ並べて設け、各板部の間の二箇所の接続部において回動できるように、または折れ曲がることができるように例えば薄肉に形成されている構造のものをいう。
二折れ蝶番の両端側の板部には、底板、補強部材や側板等、対象物に対する二折れ蝶番の固定を補助する手段、例えばネジ孔や釘孔等が設けられている。
二折れ蝶番は、可燃性の合成樹脂で形成するのが好ましいが、可燃性で十分な強度があれば他の素材を採用するこもできる。合成樹脂製のものとしては、例えば三枚の板部と接続部を一体に成形した構造があげられる。
【0011】
(作用)
本発明に係る折り畳み式組立棺の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0012】
折り畳み式組立棺においては、底板(1)に少なくとも両長辺部に沿って底板(1)の縁部から所要高さに立ち上げて補強部材(11,11a)が液密に固着されている。また、底板(1)の上面(10)には防水シート(8)が敷設されており、防水シート(8)の両側は補強部材(11,11a)の内面(111)まで覆っている。
この構成により、防水シート(8)は、補強部材(11,11a)間に底板(1)と補強部材(11,11a)の間の接合部を覆った状態で仮止めすることができ、しかも組み立て時における各側板(2,3)の動きは防水シート(8)の状態に影響しないので、防水シート(8)が挟まらないようにする手間もかからず、簡単かつ迅速に組み立てることができる。したがって、万一の災害時に多数の犠牲者が出た場合でも、迅速に納棺することができる。
【0013】
また、仮に防水シート(8)がずれるなどして体液が漏れた場合でも、補強部材(11,11a)が底板(1)に液密に固着されているので、棺の外部に漏れることは防止できる。
さらには、棺を折り畳んだ状態で防水シート(8)を底板(1)にあらかじめ敷いておくことができるようになり、組み立て後に防水シート(8)を敷く手間が省けるので、製品としての付加価値を高めることができる。
【0014】
また、底板(1)は、前記補強部材(11,11a)と、底板(1)の外端面に固着されている幕板(12,12a)によって補強されている。この構造により、使用時に底板(1)に対し大きな荷重がかかっても底板(1)自体が変形しにくく、各側板(2,3)を取り付けている各二折れ蝶番(7)に力がほぼ均等に分散して作用する。したがって、二折れ蝶番(7)が変形したり外れたりすることはなく、それが原因で底板(1)が大きく変形してしまうことを防止できる。
【0015】
また、折り畳み式組立棺を折り畳み状態にするには、天板(6)を外し、さらに各側板(2,3)から前板(4)と後板(5)を外し、各側板(2,3)を底板(1)側へ倒すようにする。側板(2,3)を倒す際は、まず一方の側板(2)を底板(1)側へ倒して底板(1)の上面(10)に重ね、次に他方の側板(3)を倒して前記一方の側板(2)と高さを違えて該側板(2)に重ねる。
【0016】
このように、各側板(2,3)は二折れ蝶番(7)の使用状態で高さの異なる二箇所に設けられている回動中心となる各接続部を利用して高さを違えることができ、底板(1)及び両側板(2,3)をほぼ平行にすることができるので、倒す際に二折れ蝶番(7)に無理な力がかからないようにして各側板(2,3)を折り畳むことができる。これにより、折り畳み式組立棺は折り畳んだ状態で底板(1)と両側板(2,3)の間に余分な空間がなく、全体をコンパクトに保管することができる。
【0017】
また、幕板(12)の上端縁部は補強部材(11,11a)の上面(110)と面一か、または上側に位置しており、各側板(2,3)を立てたときに下面が補強部材(11,11a)の上面(110)に載るようにしてあるので、折り畳み式組立棺を組み立てたときに補強部材(11,11a)と各側板(2,3)の接合面でできる線が幕板(12)に隠れて外部から見えないので、外観が見苦しくならない。
【発明の効果】
【0018】
本発明は前記構成を有し、次のような効果を備えている。
(a)本発明に係る折り畳み式組立棺において、防水シートは、補強部材間に底板と補強部材の間の接合部を覆った状態で仮止めすることができ、しかも組み立て時における各側板の動きは防水シートの状態に影響しないので、防水シートが挟まらないようにする手間もかからず、簡単かつ迅速に組み立てることができる。したがって、万一の災害時に多数の犠牲者が出た場合でも、迅速に納棺することができる。
また、仮に防水シートがずれるなどして体液が漏れた場合でも、補強部材が底板に液密に固着されているので、棺の外部に漏れることは防止できる。さらには、棺を折り畳んだ状態で防水シートを底板にあらかじめ敷いておくことができるようになり、組み立て後に防水シートを敷く手間が省けるので、製品としての付加価値を高めることができる。
【0019】
(b)折り畳み式組立棺は、底板が少なくとも両長辺部に沿って固着されている補強部材によって補強されており、底板の外端面に固着されている幕板によっても同じく補強されている。この構造により、使用時に底板に対し大きな荷重がかかっても底板自体が撓むなどの変形を起こしにくく、各側板を取り付けている各二折れ蝶番に力がほぼ均等に分散して作用する。したがって、二折れ蝶番が変形したり外れたりすることはなく、それが原因で底板が大きく変形してしまうことを防止できる。
また、各側板は二折れ蝶番の使用状態で高さの異なる二箇所に設けられている回動中心となる各接続部を利用して高さを違えることができ、各板をほぼ平行にすることができるので、倒す際に二折れ蝶番に無理な力がかからないようにして各側板を折り畳むことができる。これにより、折り畳み式組立棺は全体をコンパクトにして保管することができる。
【0020】
(c)幕板の上端縁部は補強部材の上端縁部と面一か、または上側に位置しており、各側板は立てたときに下面が補強部材の上面に載るようにしてあるので、折り畳み式組立棺を組み立てたときに、補強部材と各側板の接合面でできる線が幕板に隠れて外部から見えない。したがって、棺の外観が見苦しくならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明に係る折り畳み式組立棺の実施の形態を示す要部分解斜視図、
図2は折り畳み式組立棺の中間部分を一部省略した縦断面説明図、
図3は底板と側板の接続に使用される二折れ蝶番の斜視図、
図4は各側板を底板側へ倒して折り畳んだ状態を示す断面図、
図5は各側板を立てた状態を示す断面説明図である。
【0022】
折り畳み式組立棺Aは、底板1と、底板1の両長辺側に内側の底板1側へ倒すことができるように接続された側板2、3と、側板2、3の間に取り付けられる前板4と後板5及び天板6を備えた構造である。各板はいずれも木製であるが、これに限定されるものではなく、強度が十分であれば、例えば紙製のもの等を採用することもできる。
【0023】
底板1は、所要の長さ及び幅を有する長方形状の板体である。底板1の周縁部に沿う上面10には、両長辺側の全長にわたり補強部材11、11aが釘着と接着によって液密に固定されている。補強部材11、11aは、断面長方形状の木製の角材であり、底板1を補強できる十分な強度を有している。底板1の外端面と補強部材11の外端面とは面一になるように形成されている(図4、図5参照)。
【0024】
底板1の両長辺側には、底板1の外端面と補強部材11、11aの外端面に接着して化粧材である幕板12が固定されている。また、底板1の両短辺側には、底板1の外端面に同じく化粧材である幕板12aが接着して固定されている(図2参照)。本実施の形態では、底板1の両短辺側には補強部材は設けられていないが、長辺側と同様に補強部材を設けることもできる。
【0025】
底板1の両長辺側の幕板12と、両短辺側の幕板12aは、上面が面一となる同じ高さに形成されており、底板1の四隅で互いに接着されている。また、幕板12、12aの上面120の高さは、補強部材11、11aの上面110よりやや高くなるように形成されており、幕板12は補強部材11の上面110と後述する側板2、3の下面22、32で形成される線を隠すことができるようになっている。(図5参照)。
【0026】
なお、幕板12、12aの上面120の高さを補強部材11、11aの上面110と面一に形成し、前記接合部を幕板12、12aの上面120と同じ高さにして意匠的に目立たないようにすることもできる。
前記両側板2、3は、底板1の上面10に固定された補強部材11、11aに所要数の二折れ蝶番7により、底板1側へ倒すことによって折り畳みができるように取り付けられている。二折れ蝶番7による取付構造については後述する。
【0027】
また、底板1の上面10には防水シート8(図4、図5に図示しており、図1、図2では省略している)が敷かれている。防水シート8は、幅方向の両側部分で、底板1に液密に固着されている補強部材11、11aの内面111までを覆っている。
【0028】
ここで、二折れ蝶番7の構造を図3を参照して説明する。
二折れ蝶番7は合成樹脂製であり、成形によって一体につくられている。二折れ蝶番7は、全体が長方形の板状であり、中央の板部72の両側に薄肉に形成した可曲部74、75を配し、その外側に取付板部71、73を接続した構造である。二折れ蝶番7は、補強部材11、11aと側板2、3の取り付けに必要十分な剛性と、二箇所にある可曲部74、75での折り曲げができる柔軟性(または撓み性)を備えている。
【0029】
可曲部74、75は、板部72、取付板部71、73をつなぎ方向においてほぼ等幅で区分けするものであり、互いに反対側となる面に平行に設けられている。なお、板部72と取付板部73の幅は、後述するように補強部材11、11aの底面(符号省略:実質的に底板1の上面10と同じ面)から上面110までの高さの1/2の長さに設定されている。
【0030】
可曲部74、75は同じ構造を有しており、両側斜面が表面と45°の角度で断面ほぼV字状に設けられた溝の底部に断面山形状の条部を設けた構造である。この構造により、二折れ蝶番7は板部72、取付板部71、73を可曲部74、75で折り曲げることができる。板部72、取付板部71、73は、図3に示す直板状態から可曲部74、75が設けられている面側へ最大180°折り曲げることができる。
【0031】
両端側の取付板部71、73には、それぞれ二箇所にネジ用孔76が表裏面を貫通して設けられており、ネジ用孔76の近傍の三箇所にはネジ用孔76より径小な釘位置決め用孔77が表裏面を貫通して設けられている。
なお、二折れ蝶番7は、厚みが見える側面から見て点対称構造となっており、表裏を間違わなければ、長手方向については方向性がないので取り付け作業がしやすい。
【0032】
側板2、3は長方形の板状に形成され、それぞれ長手方向の両端寄りの内側となる面、つまり内面20、30にガイド21、31がネジで固定されている。ガイド21は所要間隔をおいて上下二箇所に設けられ、ガイド31も同様に所要間隔をおいて上下二箇所に設けられている(主に図1参照)。
【0033】
また、前記前板4と後板5は長方形の板状に形成され、互いに同様の構造を有している。前板4と後板5は、それぞれ幅方向の両側端面に蟻溝40、50が下端部から上端部近傍まで形成されている。前板4と後板5は、後述するように蟻溝40、50とガイド21、31を係合させることによる蟻継ぎで側板2、3間に取り付けられる。
【0034】
次に、二折れ蝶番7による側板2、3と補強部材11、11aの取付構造を説明する。
側板2、3の厚さは、補強部材11、11aの幅と同じになるように形成されている(図5参照)。側板2は補強部材11に、また側板3は補強部材11aに、それぞれ複数の二折れ蝶番7によって取り付けられている。取り付けに使用される二折れ蝶番7の数は適宜設定される。
【0035】
側板2の補強部材11に対する取付構造と、側板3の補強部材11aに対する取付構造は同様であるので、側板2の取付構造を例にとり説明し、側板3の取付構造の説明は省略する。
側板2は、内面20が補強部材11の内面111と面一になるようにして補強部材11の上面110に載置し、その状態で図3に示す直板状の二折れ蝶番7を内面20と内面111間で渡すようにして取り付けられている。
【0036】
二折れ蝶番7は、上側となる可曲部74が設けられている側の面を内面111に接面させ、さらに下端辺部を底板1の上面10に当接させるようにする(図1、図4、図5参照)。二折れ蝶番7は、この状態で取付板部73を補強部材11の内面111にネジ着し、取付板部71を側板2の内面20にネジ着することにより固定されている。この取付構造によって、側板2、3は図5に示す立てた状態から外側へ倒すことはできず、底板1側へのみ倒すことができる。
【0037】
そして、側板2、3の長手方向の両端部には、前板4と後板5が取り付けられる。前板4と後板5は、前記したように、蟻溝40、50とガイド21、31を係合させることによる蟻継ぎ構造によって側板2、3間に取り付けられている。
なお、天板6は周縁部下面を側板2、3及び前板4、後板5の上面に載置させて被せられる(図2参照)。
【0038】
(作用)
図1ないし図5(主に図4、図5)を参照して折り畳み式組立棺Aの作用を説明する。
折り畳み式組立棺Aは、図2に示す組み立てた状態にする前には、図4に示すように折り畳んでおくことができる。なお、図4では他の構成部材である前板4、後板5及び天板6の図示は省略している。
【0039】
折り畳み式組立棺Tにおいては、底板1の上面10に防水シート8が敷かれており、防水シート8は、その両側部分で、底板1に液密に固着されている補強部材11、11aの内面111までを覆っている。
これにより、防水シート8は、補強部材11、11a間に底板1と補強部材11、11aの間の接合部を覆った状態で仮止めすることができる。しかも、後述する組み立て時において、各側板2、3の動きは防水シート8とは離れており、防水シート8の状態に影響しない。
【0040】
したがって、棺を組み立てる際に各側板2、3と底板1や補強部材11、11aで防水シート8が挟まれないようにする手間もかからず、簡単かつ迅速に組み立てることができる。また、棺を折り畳んだ状態で防水シート8を底板1にあらかじめ敷いておくことができるようになり、組み立て後に防水シート8を敷く手間が省けるので、製品としての付加価値を高めることができる。
【0041】
なお、側板2、3の折り畳み方は次のとおりである。
図4では、まず先に図で左側の側板2を底板1側へ倒し、各ガイド21を底板1の上面10に当接させて載置する。次に、右側の側板3を底板1側へ倒し、各ガイド31を側板3の上側となった面(符号省略)に当接させて載置する。このとき、下になった側板2と上になった側板3は、各二折れ蝶番7の作用によって双方の高さがほぼ側板2の厚さの分だけ異なった状態でほぼ平行になっている。
【0042】
詳しく説明すると、側板2側の二折れ蝶番7は、側板2が内側に倒れることにより、中間の板部72が下側の可曲部75で内側へ折れ曲がり、側板2が底板1に載置されたときには上端側の取付板部71は可曲部74で板部72とは反対側へ折れ曲がる。このようにして、側板2は底板1との間に各ガイド21の厚さの分だけ隙間を設けて、底板1とほぼ平行に載置される。
【0043】
次に、側板3側の二折れ蝶番7は、側板3が内側に倒れることにより、上端側の取付板部71が前記側板2の場合と相違して、下側の可曲部75より一段高い可曲部74で内側へ折り曲げられる。側板3は側板2との間に各ガイド31の厚さの分だけ隙間を設けて、側板2とほぼ平行に載置される。このようにして、各側板2、3は各二折れ蝶番7に大きな負担をかけることなく折り畳むことができ、保管時には全体をコンパクトにしておくことができるので、保管スペースをより有効に活用することができる。
【0044】
また、側板2、3は二折れ蝶番7を使用して同じ取付構造で取り付けられているので、必ずしも側板2側から倒す必要はなく、逆に側板3を先に倒して、その上に側板2を載置して折り畳むこともできる。したがって、折り畳み作業時に側板を倒す順番を選択・確認する手間がかからず、折り畳み作業をスムーズに行うことができる。
なお、側板2、3のうち一方側(倒したときに上になる側、下になる側どちらでもよい)を二枚の板を有する一般的な蝶番で取り付けた構造とすることもできる。
【0045】
折り畳み式組立棺Aの組み立ては、図5に示すように、まず側板2、3を起こして下面22、32を補強部材11、11aの上面110に載置するようにして垂直に立て、次に側板2、3に前板4と後板5を取り付け、さらに上部に天板6を載置して簡単に行うことができる。また、このときの側板2、3の動きは、前記したように防水シート8の状態に影響しない。なお、このように組み立てた状態において、前記したように幕板12は補強部材11と側板2、3の接合面で形成される線を隠すことができるので、外観が見苦しくならない。
【0046】
また、底板1は補強部材11、11a及び幕板12によって両長辺側が補強され、さらに両短辺側も幕板12aによって補強されて曲がりにくくなっており、使用時に底板1に大きな荷重がかかった状態で持ち上げても、各二折れ蝶番7にはほぼ均等に分散して力が作用する。したがって、二折れ蝶番7が変形したり外れたりすることはなく、それが原因で底板1が大きく変形してしまうことを防止できる。
【0047】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る折り畳み式組立棺の実施の形態を示す要部分解斜視図。
【図2】折り畳み式組立棺の中間部分を一部省略した縦断面説明図。
【図3】底板と側板の接続に使用される二折れ蝶番の斜視図。
【図4】各側板を底板側へ倒して折り畳んだ状態を示す断面図。
【図5】各側板を立てた状態を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0049】
A 折り畳み式組立棺
1 底板
10 上面
11、11a 補強部材
110 上面
111 内面
12、12a 幕板
120 上面
2 側板
20 内面
21 ガイド
22 下面
3 側板
30 内面
31 ガイド
32 下面
4 前板
40 蟻溝
5 後板
50 蟻溝
6 天板
7 二折れ蝶番7
71 取付板部
72 板部
73 取付板部
74 可曲部
75 可曲部
76 ネジ用孔
77 釘位置決め用孔
8 防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板(1)と、底板(1)の両長辺側に取り付けられる側板(2,3)と、各側板(2,3)の長手方向の両端部に取り付けられる前板(4)及び後板(5)と、各側板(2,3)と前板(4)及び後板(5)の上側に載置される天板(6)を備えており、
底板(1)には、少なくとも両長辺部に沿って底板(1)の縁部から所要高さに立ち上げて補強部材(11,11a)が液密に固着されており、
底板(1)の外周面には補強部材(11,11a)を隠す幕板(12)が固着されており、
幕板(12)の上端縁部は補強部材(11,11a)の上面(110)と面一か、または上側に位置しており、
各側板(2,3)は、一方の側板(2)を底板(1)側へ倒したときには底板(1)の上面に重ねることができ、他方の側板(3)は前記一方の側板(2)と高さを違えて該側板(2)に重ねて折り畳みができるように、一方または双方の側板(2,3)が二折れ蝶番(7)によって補強部材(11,11a)に取り付けられ、各側板(2,3)は立てたときに補強部材(11,11a)の上面(110)に載るようにしてあり、
底板(1)の上面(10)には防水シート(8)が敷設されており、防水シート(8)の両側は補強部材(11,11a)の内面(111)まで覆っている、
折り畳み式組立棺。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−285192(P2009−285192A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141515(P2008−141515)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506423936)フジ創芸株式会社 (2)
【Fターム(参考)】