説明

折板屋根受具

【目的】本発明は、折板屋根の流れ方向としての屋根板材の長手方向が長尺で、その長手方向に熱伸縮が発生しても、良好に対応できること。
【構成】ユニット収納部1と1個のバネユニットAと取付台座5と屋根面固定部材6とからなること。取付台座5の下部とバネユニットA内に設けた帯ゼンマイ状の定荷重バネ2の先端部とが線状物7にて結束されていること。線状物7がユニット収納部1の上部の方向変換部19を介して連通され、定荷重バネ2の弾性力に抗して屋根面固定部材6が折板屋根9の流れ方向に可動するようにしてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根の流れ方向としての屋根板材の長手方向が長尺で、その長手方向に熱伸縮が発生しても、良好に対応できる折板屋根受具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、折板屋根流れ方向としての屋根板材の長手方向が長尺な場合において、熱伸縮に対応するように種々開発されている。その折板屋根において、山部と谷部とが連続する折板屋根では、外気温度の変化によって、屋根板材の長手方向が長尺な場合、その長手方向に沿って伸縮する。この伸縮量は、夏等の高温時には極めて大きく、熱歪が発生することにより、特に馳締等の連結部の吊子及び支持具による固定箇所では、熱伸縮による大きな歪が現れて、きしみ音が出る音鳴り現象が発生していたので、これを解消すべく、熱伸縮に対応して適宜可動する可動型屋根受具(スライド型固定金具ともいう。)が開発されており、この種のものとして特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
該可動型屋根受具は、施工時の温度条件並びに、完成後の使用状態における伸び側、縮み側の変位を吸収するため、確実にスライド代を確保する必要がある。しかし、施工時、スライド中央位置に吊子をセットした(センタリング)状態で可動型屋根受具を取り付けても、その後屋根葺き作業等を行うと、その段階で可動型屋根受具の吊子が勝手にスライドしてしまい、不適切な(伸縮吸収代が無い)位置で屋根材に固定されることがしばしば生じ得る。この場合、伸縮代のない可動型屋根受具に熱伸縮力が集中し、可動型屋根受具が破損する虞も生じていた。折板屋根の屋根板材によって施工された屋根で、特に大形建造物においては、従来の可動型屋根受具を使用しても、そのスライド性能が十分発揮されないことがあった。また、固定型屋根受具(拘束型固定金具ともいう。)に対して、屋根板材の過大な熱伸縮による荷重が働き、前記固定型屋根受具には損傷が引き起こされることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−255648
【特許文献2】特開2009−203718
【特許文献3】特表2008−503000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような破損については次の要因が考えられる。その折板屋根板材には、熱伸縮力以外に、屋根板材自身の重量、積雪荷重、風荷重、地震荷重等の様々の負荷が掛かる。これらの負荷が掛かった状態では、円滑にスライドしないことが生じ得る。また建物の供用期間中にはこれらの負荷により、躯体や屋根板材が変形し、スライド性能が低下することが考えられる。一般には熱伸縮に対応できるような可動型屋根受具については、特許文献1及び特許文献2に開示されているが、これらの特許文献1,2では上記の問題点や或は施工時、スライド中央位置から吊子がずれてしまうという不都合な点は解決されていない。
【0006】
また、一般に、二重屋根に使用される固定型屋根受具の方が熱伸縮による負荷は大きい。これは、二重屋根を使用する建物では、空調等を備えることが一般であり、そのために、躯体や二重屋根の下葺き用の屋根板材の温度条件の変動が小さく、上葺き用の屋根板材の温度変化がそのまま熱伸縮負荷として断熱具にかかることになる。また、上葺き屋根板材の下に断熱材があることで、熱が上葺き屋根板材の下に逃げにくくなるため、上葺き屋根板材の温度変動が大きくなり、可動型屋根受具の開発の要望がある。
【0007】
一般に、金属製の折板屋根の熱伸縮による場合には、その長さ位置、例えば、先端の50mの位置と、その箇所より20m内側では、伸縮量が相違しているが、そのいずれの箇所でも、同じ力が作用している。これをコイルばねなどで対応させると、伸縮量に応じた,ばね定数となる。そこで、どの位置でも、同じ力が作用するものが望まれていた。その役割をなす原理機構として、定荷重バネが存在しており、これを、金属製の折板屋根の熱伸縮に如何に対応していくかは重要な課題であった。また、特許文献3は、壁などに対応するようにした、定荷重バネを使用した伸縮装置であるが、具体的には、熱伸縮対応に開発されていないものである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、折板屋根の流れ方向としての屋根板材の長手方向が長尺で、その長手方向に熱伸縮が発生しても、それを良好に追従することができ、特に、伸縮量の変化にかかわらず、どの位置でも、同じ力が作用するようにし、さらに、復元機能を持たせるようにすることを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ユニット収納部と、該ユニット収納部に水平軸上を回転可能に設けられた1個のバネユニットと、前記ユニット収納部の頂部に摺動可能に設けられた取付台座と、該取付台座に固定された屋根面固定部材とからなり、該取付台座下部と前記バネユニット内に設けた帯ゼンマイ状の定荷重バネの先端部とが線状物にて結束され、該線状物が前記ユニット収納部の上部の方向変換部を介して連通され、前記定荷重バネの弾性力に抗して前記屋根面固定部材が折板屋根の流れ方向に可動するようにしてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1において、前記バネユニットは、前記定荷重バネと巻き取りのドラムとからなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記取付台座の水平縁は、前記ユニット収納部の上部の挿入溝に摺動可能に形成されてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、請求項1又は2において、前記取付台座の水平縁及び折返し縁は、前記ユニット収納部の上部の頂部に抱持しつつ摺動可能に形成されてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項3又は4において、前記取付台座の水平縁の下面位置に滑動面が存在するようにしてなることを特徴とする折板屋根受具としたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明においては、通常の外気温度から高温又は低温に変化した場合に屋根板材はその熱伸縮が極めて大きくなり、その屋根板材の熱伸縮に伴って屋根面固定部材も可動する。このとき定荷重バネは、弾性力を有することとなり、熱伸縮作用に伴って弾性力による反力を作用させつつ取付台座が摺動して熱伸縮に極めて良好に追従することができる。また、折板屋根が流れ方向に適宜傾斜したタイプのものでは、屋根板材の自重が屋根面固定部材にかかり、長期に亘って下方に移動してしまうものであるが、本発明においては、定荷重バネによって、取付台座が支持されているので、該取付台座がその折板屋根受具の受け持つ部分の重量に対して十分に支持し、屋根板材が下方に移動することを防止することができる。
【0013】
特に、本発明の定荷重バネは、定荷重ばねとしての役割をなすため、金属製屋根の熱伸縮量におけるそれぞれの位置の荷重が殆ど同一荷重となる態様に極めて好適な効果を奏する。請求項2の発明では、請求項1の発明と同等の効果を発揮しうる。請求項3の発明では、簡単な構成で提供できる。請求項4の発明では、高さの低いタイプに良好にできる。請求項5の発明では、摺動がよりスムーズにできると共に、安定した状態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態における折板屋根受具の斜視図、(B)は(A)のバネユニット箇所の要部斜視図、(C)は線状物上端箇所の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における折板屋根受具の一部断面として分解正面図。
【図3】(A)は本発明の一部断面とした正面図、(B)は(A)の(ア)部拡大図、(C)は(A)のY1−Y1矢視断面図である。
【図4】(A)は取付台座が右側に摺動した状態の一部断面とした側面図、(B)は取付台座が左側に摺動した状態の一部断面とした側面図である。
【図5】(A)は定荷重バネ箇所の拡大断面図、(B)は定荷重バネの特性グラフである。
【図6】(A)は本発明を馳締部を有する馳締折板屋根に使用した要部正面図、(B)は重合タイプの折板屋根に使用した状態の要部正面略示図、(C)は嵌合タイプの折板屋根に使用した状態の要部正面略示図である。
【図7】(A)は本発明の第2実施形態の要部断面図、(B)は(A)の要部拡大断面図、(C)は第2実施形態の変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明すると、図1乃至図4は本発明の第1実施形態を示すものである。主に、ユニット収納部1と、1個のバネユニットAと、取付台座5、屋根面固定部材6及び線状物7とから構成されている。前記ユニット収納部1は、門形状をなし、該門形状内に、前記バネユニットAが収納されるように構成されている。
【0016】
前記ユニット収納部1は、具体的には、門形状をなす適宜の間隔をおいて形成された垂直状部11,11の上端より頂部12が形成され、前記両垂直状部11,11の下端より下部水平縁13,13が形成されている。そして、前記両垂直状部11,11の上部箇所に逆L形の取付片14,14が固着され、前記頂部12の左右側と前記取付片14,14の上部片との間に、挿入溝15,15が形成されている。
【0017】
前記バネユニットAは、帯ゼンマイ状の定荷重バネ2と、該定荷重バネ2を巻きつけ収納しておくドラム3と、該ドラム3が回転可能に設けられた水平軸4とから構成されている。前記定荷重バネ2は前記ドラム3に巻き掛けされており、前記定荷重バネ2を引き出して使用する。特に、図5(B)に示す特性グラフように、横軸に、巻き出しのストロークSを、縦軸に出力F(トルク)を取ると、最初は、急速に出力が立ち上がり、その後は、出力一定となるように構成されている。このとき、力を止めると、旧位置に戻るように構成されている。
【0018】
前記ドラム3の円筒部3aには、前記定荷重バネ2は、一定幅で、厚さ約0.4乃至約2mm程度のバネ鋼等からなり、その内部端は、接着などされることなく複数回を巻き掛けされた状態で構成されている。その外部端には、プレート片22がリベット等にて固着されている。
【0019】
また、略中央位置に回転可能状態にした前記定荷重バネ2付きドラム3の前記水平軸4は、前記ユニット収納部1の門形状の両垂直状部11,11の内部に軸支されている。前記定荷重バネ2付きドラム3が中央位置にセットされるように、前記垂直状部11とドラム3の鍔部3bとの間に、座金4a及びカラー4bが介在されている。
【0020】
前記取付台座5も高さの低い門形状部51と該門形状部51の両側下端より外側に水平縁52,52が形成されている。該水平縁52,52が、前記ユニット収納部1に形成された前記挿入溝15に挿入され、図4(A)及び(B)において左右方向に摺動自在に設けられている。前記水平縁52,52が摺動しやすいように、前記挿入溝15箇所の頂部12上には、摩擦抵抗の少ない合成樹脂剤などの滑動面16が貼着されている。
【0021】
また、前記頂部12の中央には、前記線状物7の方向を変換する方向変換部19及び貫通孔12aが設けられている。具体的には、平行にした対の回転ドラム19a,19aが設けられ、この間及び貫通孔12aを前記線状物7が挿通される。図3(C)に示すように、前記屋根面固定部材6の熱伸縮方向によって、前記方向変換部19の何れかの回転ドラム19aが回転して対応する。
【0022】
本発明の第2実施形態は、図7(A)及び(B)に示したものである。前記ユニット収納部1は、門形状をなしている。具体的には、左右側の垂直状部11,11の上端から外側に頂部12,12が張出して形成され、その下端より下部水平縁13,13がそれぞれ形成され、前記垂直状部11,11の上端箇所間が別部材の上側連結部17にて連結されている。該上側連結部17の左右側は屈曲片17a,17aがリベットなどにて前記垂直状部11,11に固着されている。
【0023】
また、上側連結部17の中央には、前記線状物7の方向を変換する方向変換部19及び貫通孔17bが設けられている。具体的には、平行にした対の回転ドラム19a,19aが設けられ、この間及び貫通孔17bを前記線状物7が挿通されている。この場合の前記取付台座5は、図7(A)及び(B)に示すように、第1実施形態の部材に加えて、前記水平縁52,52の外端より下側に折返し縁53,53が形成されている。つまり、前記取付台座5の水平縁52及び折返し縁53にて、前記ユニット収納部1の張出しの頂部12を包むようにして摺動するように構成されている。
【0024】
図7(C)に示したものは、本発明の第2実施形態の変形例であり、前記ユニット収納部1は、第2実施形態と同一である。この場合の前記取付台座5は、平坦状主板54が形成され、この外端より下側に折返し縁53,53が形成されている。つまり、前記取付台座5の平坦状主板54の端部側と折返し縁53にて、前記ユニット収納部1の張出しの頂部12を包むようにして摺動するように構成されている。
【0025】
前記屋根面固定部材6は、後述する屋根板材9の種類に基づいて種々のタイプが存在する。まず馳締タイプの屋根板材9では、屋根面固定部材6は馳締用吊子としての役割をなすものであり、取付基部61と馳締舌片部62とからなる。馳締舌片部62は、図1に示すように、首部621の上端から馳締屈曲部622が形成されている。該馳締屈曲部622は、延長方向を長手方向として形成されている。前記首部621は、前述したように、取付基部61から略垂直状に立ち上がり形成されたものである。
【0026】
前記馳締屈曲部622は、弧状屈曲片622a,頂片622b,弧状端縁622cが形成されており、後述の馳締タイプの屋根板材9の弧状に形成された下馳部94と上馳部95に対応するものである。具体的には、図1(E)に示すように、前記首部621の上端には、弧状屈曲片622aが形成され、該弧状屈曲片622aの上端より頂片622bが形成され、該頂片622bの端部より弧状端縁622cが形成されている。また、前記頂片622bは、平坦状に形成されている。
【0027】
具体的には、前記首部621の上端の長手方向の長さと、馳締屈曲部622の長手方向の長さとが同一で一致するように形成されている〔図1(A)参照〕。また、特に図示しないが、前記馳締屈曲部622の変形例としては、角状に形成されることもあり、具体的には略三角形状に屈曲形成されたものである。この角状の馳締屈曲部622を有する馳締舌片部62は、角馳タイプの屋根板材に適応するものである。前記取付基部61には、取付孔が形成され、前記取付台座5にボルト等の固着具にて固着される。
【0028】
屋根面固定部材6には、その他のタイプとして、後述するように嵌合キャップ材97を使用する嵌合タイプの屋根板材9に適応するもの〔図6(C)参照〕や、屋根板材9,9同士の山形部同士を重合させて連結する重合タイプの屋根板材9に適応するもの〔図6(B)参照〕や、重合する山形部同士に嵌合屈曲部が設けてあり、重合且つ嵌合させて連結するタイプに適応するもの等が存在する。
【0029】
また、屋根板材9は、種々の折板タイプが存在するものであり、馳締タイプ〔図6(A)参照〕、嵌合キャップ材97を使用する嵌合タイプ〔図6(C)参照〕,山形部同士を重合して連結する重合タイプ〔図6(B)参照〕,山形部に嵌合屈曲部が形成され、山形部同士を重合且つ嵌合して連結する嵌合タイプ等が存在する。まず馳締タイプの屋根板材9としては、図6(A)に示すように、主板91の幅方向両側部分より立上り側部92,92が形成され、両立上り側部92,92の両端より頂部93,93が形成され、該頂部93,93の一方の端から下馳部94が形成され,他方の頂部93の端には上馳部95が形成されている。前記屋根板材9は、金属製であり、具体的には金属板からドラム成形等によって成形されたものである。
【0030】
そして、このような屋根板材9,9 …が複数並設され、隣接する屋根板材9,9 同士の下馳部94と上馳部95との間に、前記馳締舌片部62における馳締屈曲部622が介在され、前記下馳部94と前記上馳部95と前記馳締屈曲部622を介して馳締め結合され馳締外囲体が施工される。具体的には、前記屋根面固定部材6の馳締屈曲部622の内方側(又は下面側)に下馳部94が巻き込まれ、前記馳締屈曲部622の外方側(上面側)に上馳部95が巻き付けるように覆う構造となる。馳締舌片部62の長手方向と、屋根板材9の長手方向とは一致している。すなわち、屋根板材9の熱伸縮における伸縮方向と、屋根面固定部材6の馳締舌片部62の長手方向とが一致しているものである。
【0031】
また、前記下馳部94と上馳部95との総称として馳部ということもある。馳締外囲体は、屋根板材9,9 ,…から構成される。前記下馳部94及び上馳部95は、共に丸馳としたものであり、略円弧状に形成されたものである。また下馳部94と上馳部95との別の実施形態では、角形状としたものが存在する。角形状としたものでは、略三角形状に折曲形成されるものである。
【0032】
図6(C)は、被嵌合部96と、嵌合キャップ材97とから構成される。このタイプの屋根板材9に適応する屋根面固定部材6では嵌合吊子63が使用される。そして、隣接する屋根板材9,9の対向する被嵌合部96,96が前記嵌合吊子63によって前記折板屋根受具の取付台座5上に固定され、対向する前記被嵌合部96,96と前記嵌合吊子63に前記嵌合キャップ材97が嵌合固定される。また、前記取付台座5と嵌合吊子63との間には適宜な部材が固着され、該嵌合吊子63を固定するための螺子軸64が設けられており、ナットを介して前記嵌合吊子63が固定される。
【0033】
図6(B)では、重合タイプの屋根板材9であり、屋根板材9に形成された山形部98,98同士を重合させるものである。この場合には、前記取付台座5上に螺子軸64が設けられている。そして、山形部98,98の頂部同士が重合されると共に、その頂部同士に前記螺子軸64が貫通し、ナットが該螺子軸64に締め付けられて固定される。
【0034】
本発明の折板屋根受具の取付台座5は、屋根を構成する屋根板材9の熱伸縮に伴って、該屋根板材9の伸び又は縮みと共に移動し、屋根板材9の熱伸縮に確実に追従することができる。具体的には、屋根板材9の伸び又は縮みに伴って、ユニット収納部1内の定荷重バネ2の弾性力に抗して適宜引き出される。この弾性力が、伸び又は縮み量にかかわらず常に一定値Fなる力で作用している。この一定値Fなる力で作用していることが定荷重バネ2による特性である。また、本発明の折板屋根受具は、建築現場に持ち込まれたときの状態は、定荷重バネ2が旧位置の巻き付き状態に維持されており、前記ユニット収納部1の長手方向中心位置となっている前記取付台座5として構成されている。そして、屋根施工直後であっても、前記屋根面固定部材6を取り付けた前記取付台座5は常にセンタリングが保持できる。
【0035】
折板屋根Rを構成する屋根板材9は、該屋根板材9の長手方向に沿って熱伸縮するものであり、屋根板材9の長手方向が折板屋根Rの流れ方向と一致する。すなわち折板屋根Rは、流れ方向に熱伸縮が行われることになる。なお、ここで前記屋根板材9の正方向の移動は、屋根板材9の熱伸縮の伸び方向と同一の方向であり、前記屋根板材9の反対方向の移動も、屋根板材9の熱伸縮の縮み方向と同一の方向である。この熱伸縮の伸び量、縮み量は、場所、場所によって異なるが、水下側又は水上側の先端側が大きくなっている。しかるに、その取付位置としての折板屋根受具取付箇所それぞれでは、同じ力が作用するという現象を呈している。このような状況下において、本発明の弾性力が常に一定値Fなる力で作用する定荷重バネ2による特性が重要である。このようなことで、折板屋根Rにおける屋根板材9の熱伸縮を良好に吸収することができ、板鳴り現象を防止することができる。
【0036】
本発明の折板屋根Rを使用して屋根の施工を行う工程について説明する。ここでは、折板屋根Rは、馳締タイプのものであり、折板屋根Rを構成する屋根板材9は馳締タイプのものである。本発明の折板屋根受具は、現場に搬送されるときには、前記屋根面固定部材6の取付台座5は、定荷重バネ2の弾性力によってユニット収納部1の長手方向に対して略中立状態に維持されている〔図1(C),(D)参照〕。それゆえに、屋根面固定部材6を取付台座5に固着するときには、定荷重バネ2の巻きつけた状態で、且つ屋根面固定部材6を折板屋根受具に対して中立状態にしつつ、屋根板材9に前記屋根面固定部材6を固着する。
【0037】
まず、平行或いは所定の規則に基づいて配置施工された複数の母屋,胴縁等の構造材100上に複数の折板屋根受具のユニット収納部1が配置固着される。次に、幅方向に複数配置固着された折板屋根受具のそれぞれの間に前記屋根板材9が配置され、幅方向に隣接する屋根板材9,9の対向する下馳部94と上馳部95が前記屋根面固定部材6の馳締舌片部62の馳締屈曲部622によって馳締固定され、これによって屋根板材9が折板屋根受具に支持固定される。折板屋根受具は、その施工が完了するまで、屋根面固定部材6はユニット収納部1に対して略中立状態にある。したがって、屋根面固定部材6の位置をユニット収納部1に対して一々調整しながら固定する必要はなくなり、作業効率を向上させることができる。
【0038】
本発明の折板屋根受具による折板屋根Rの熱伸縮に対する作用について説明する。なお、ここでは、定荷重バネ2が使用されたものについて説明する。外気の温度変化により、折板屋根Rの流れ方向に熱伸縮が発生する。すなわち、折板屋根Rを構成する屋根板材9の長手方向に熱伸縮が発生する。該屋根板材9を支持固定する屋根面固定部材6は、熱伸縮に伴って移動する。このとき、該屋根面固定部材6と共に取付台座4がユニット収納部1に対して可動(移動)することになる。たとえば、屋根板材9の熱伸縮により、前記屋根面固定部材6が図3(B)に示すように、中立位置から左側に移動する。すると、取付台座5も右側に移動する。取付台座5が可動することによって、ユニット収納部1内に収納された定荷重バネ2は引き出され、弾性力を蓄えられることになる。
【0039】
そして、外気の温度が変化する前の温度に戻ると屋根板材9も、熱伸縮によって変化する前の元の長さに戻ろうとする。定荷重バネ2の弾性力によって、前記取付台座5を元の位置(例えば中立位置)に戻そうとするように働く。図3(C)は、外気の温度変化により、屋根板材9の熱伸縮と共に前記屋根面固定部材6が、中立位置から右側に移動した場合である。
【0040】
この場合についても、前述した前記屋根面固定部材6が、中立位置から左側に移動した場合と略同様の状態となるが、この場合でも、前記定荷重バネ2が巻き出されることになる。このように、取付台座5が可動することによって、定荷重バネ2に弾性力が蓄えられることになる。そして、温度変化が生じて前記屋根板材9が元の長さとなるような熱伸縮が生じたときには、前記定荷重バネ2の弾性力が取付台座5を元の位置に戻ることを補助(アシスト)し、屋根面固定部材6が屋根板材9の熱伸縮に正確且つ良好に追従することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…ユニット収納部、A…バネユニット、12…頂部、13…下部水平縁、
15…挿入溝、16…滑動面、19…方向変換部、2…定荷重バネ、4…水平軸、
5…取付台座、52…水平縁、53…折返し縁、6…屋根面固定部材、7…線状物、
R…折板屋根。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット収納部と、該ユニット収納部に水平軸上を回転可能に設けられた1個のバネユニットと、前記ユニット収納部の頂部に摺動可能に設けられた取付台座と、該取付台座に固定された屋根面固定部材とからなり、該取付台座下部と前記バネユニット内に設けた帯ゼンマイ状の定荷重バネの先端部とが線状物にて結束され、該線状物が前記ユニット収納部の上部の方向変換部を介して連通され、前記定荷重バネの弾性力に抗して前記屋根面固定部材が折板屋根の流れ方向に可動するようにしてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項2】
請求項1において、前記バネユニットは、前記定荷重バネと巻き取りのドラムとからなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記取付台座の水平縁は、前記ユニット収納部の上部の挿入溝に摺動可能に形成されてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記取付台座の水平縁及び折返し縁は、前記ユニット収納部の上部の頂部に抱持しつつ摺動可能に形成されてなることを特徴とする折板屋根受具。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記取付台座の水平縁の下面位置に滑動面が存在するようにしてなることを特徴とする折板屋根受具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−82637(P2012−82637A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231024(P2010−231024)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000175973)三晃金属工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】