説明

抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品

【課題】 抵抗値の温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)を確実に小さい値とするとともに、ノイズ特性の改善を図る。
【解決手段】 導電性材料、ガラス組成物及び添加物が有機ビヒクル中に分散されてなる抵抗体ペーストであって、前記添加物として、AXO(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Xは、周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有する。前記Xは、Sn、Ge、Cから選ばれる少なくとも1種である。また、導電性材料、ガラス組成物及び添加物が有機ビヒクル中に分散されてなる抵抗体ペーストであって、前記添加物として、AZ(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Zは5価の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有する。前記Zは、Ta、Nb、Vから選ばれる少なくとも1種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料、ガラス組成物及び添加物を含有する抵抗体ペーストに関するものであり、さらには、かかる抵抗体ペーストを用いて形成される抵抗体、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば抵抗体ペーストは、一般に、抵抗値の調節及び結合性を与えるためのガラス組成物と、導電性材料と、有機ビヒクルとを主たる成分として構成されており、これを基板上に印刷した後、焼成することによって、厚さ5〜20μm程度の抵抗体が形成される。そして、この種の抵抗体ペースト(抵抗体)においては、通常、導電性材料として鉛ルテニウム酸化物等が用いられ、ガラス組成物として酸化鉛(PbO)系ガラス等が用いられている。
【0003】
近年、環境問題が盛んに議論されてきており、例えば半田材料等においては、鉛を除外することが求められている。抵抗体ペーストや抵抗体においても例外ではなく、したがって、環境に配慮した場合、前記のように導電性材料として鉛ルテニウム酸化物を使用することや、ガラス組成物としてPbO系ガラスを使用することは避けなければならない。
【0004】
このような状況から、鉛フリーの抵抗体ペースト、厚膜抵抗体についての研究が各方面でなされている。例えば特許文献1には、抵抗体ペーストに例えばCaTiOを0vol%超、13vol%以下、若しくはNiOを0vol%超、12vol%以下含有させることが好ましく、さらにはCuO、ZnO、MgO等の添加物を同時に添加させることが好ましい旨の記述があり、それにより、高い抵抗値を有しながらも、抵抗値の温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)が小さい抵抗体を得ることに適した鉛フリーの抵抗体ペーストを提供することが可能である旨、記載されている。
【特許文献1】特開2003−197405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉛フリーの抵抗体において改善すべき課題として、前述のTCR及びSTOLに加えてノイズ特性の悪化が挙げられる。しかしながら、前記特許文献1においては、抵抗体のノイズ特性の問題を認識しておらず、当然ながらノイズ値を改善するための対策は全く講じられていない。
【0006】
そこで本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、抵抗値の温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)を確実に小さい値とするとともに、ノイズ特性の改善を図ることが可能な抵抗体ペーストを提供することを目的とする。また、本発明は、前記抵抗体ペーストを用いて作製された抵抗体、さらにはこの抵抗体を有する電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本発明に係る抵抗体ペーストは、導電性材料、ガラス組成物及び添加物が有機ビヒクル中に分散されてなる抵抗体ペーストであって、前記添加物として、AXO(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、、Xは、周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有することを特徴とする。また、本発明に係る抵抗体ペーストは、導電性材料、ガラス組成物及び添加物が有機ビヒクル中に分散されてなる抵抗体ペーストであって、前記添加物として、AZ(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Zは5価の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有することを特徴とする。さらに、本発明に係る抵抗体は、前記抵抗体ペーストを用いて形成されたことを特徴とする。さらにまた、本発明に係る電子部品は、前記抵抗体を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種と周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素Xとを含む複合酸化物AXO、及び/又はMg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種と5価の元素とを含む複合酸化物AZを添加物として抵抗体ペーストに含有させる点に特徴がある。詳細なメカニズムは不明であるが、添加物としてAXO及び/又はAZを用いることで、形成される抵抗体のTCR特性及びSTOL特性を確保しつつ、ノイズ特性の改善が実現される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抵抗体ペーストを用いることで、鉛フリーの組成でありながら、TCR、STOL及びノイズ特性のいずれにおいても優れた抵抗体、並びに電子部品を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した抵抗体ペースト、抵抗体及び電子部品の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
本発明の抵抗体ペーストは、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物として、AXO(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Xは、周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有し、これら成分からなる抵抗体組成物が有機ビヒクルと混合されてなるものである。
【0012】
また、本発明の抵抗体ペーストは、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物として、AZ(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Zは5価の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有し、これら成分からなる抵抗体組成物が有機ビヒクルと混合されてなるものである。
【0013】
ここで、導電性材料は、絶縁体であるガラス組成物中に分散されることで、構造物である抵抗体に導電性を付与する役割を持つ。導電性材料としては、鉛を実質的に含まない鉛フリーの導電性材料を用いる。具体的にはRuを含む導電性材料、例えば、RuO、またはRu複合酸化物を用いる。Ru複合酸化物としては、CaRuO、SrRuO、BaRuO、BiRuから選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
【0014】
ガラス組成物は、その組成は特に限定されないが、本発明では環境保全上、鉛を実質的に含まない鉛フリーのガラス組成物を用いることが好ましい。なお、本発明において、「鉛を実質的に含まない」とは、不純物レベルを越える鉛を含まないことを意味し、不純物レベルの量(例えば、ガラス組成物又は導電性材料中の含有量が0.05質量%以下程度)であれば含有されていてもよい趣旨である。鉛は、不可避不純物として極微量程度に含有されることがある。
【0015】
ガラス組成物は、抵抗体とされたとき、抵抗体中で導電性材料及び添加物を基板と結着させる役割を持つ。ガラス組成物としては、原料である修飾酸化物成分、網目形成酸化物成分等を混合し、ガラス化したものを用いることができ、特に、主たる修飾酸化物成分として、アルカリ土類金属の酸化物、具体的にはCaO、SrO、BaOから選ばれる1種若しくは2種以上を用いた、いわゆるCaO系ガラスが好適である。
【0016】
前記ガラス組成物におけるその他の成分であるが、網目形成酸化物成分としては、B及びSiOを挙げることができる。
【0017】
また、前記主たる修飾酸化物成分の他、その他の修飾酸化物成分として、任意の金属酸化物を用いることができる。具体的な金属酸化物としては、例えばZrO、Al、ZnO、CuO、NiO、CoO、MnO、Cr、V、MgO、LiO、NaO、KO、TiO、SnO、Y、Fe、MnO、Mn、Ta2O、Nb、Sc、In等を挙げることができ、これらから選ばれる1種若しくは2種以上を用いればよい。
【0018】
ガラス組成物の各成分は、抵抗体の抵抗値に応じて選択することができる。
【0019】
本発明では、添加物として、AXO(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Xは、周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物(以下、単にAXOと称する。)、又はAZ(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Zは5価の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物(以下、単にAZと称する。)を用いることが大きな特徴点である。
【0020】
先ず、AXOについて説明する。本発明では、式中Xとして、周期表IVb族であるSn、Ge、Cから選ばれる少なくとも1種を用いる必要がある。なお、周期表IVb族に属するが、Siはガラス中に網目形成酸化物として多量に含まれており抵抗体の特性に支障を来すおそれがあるためである。また、式中XとしてSiを用いる場合ノイズ特性改善効果を得ることができない。Pbの使用は、実質的に鉛を含まない鉛フリーの抵抗体を得る観点で不適当である。したがって本発明では、元素Xとして、Sn、Ge、Cからなる群から選択して用いる必要がある。なお、前記AXOは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種の元素Aの酸化物AOと、周期表IVb族の元素Xの酸化物XO(ただしPbO、SiOを除く)との複合酸化物と表すことができる。
【0021】
また、前記AZ中、5価の元素Zとしては、具体的には、Ta、Nb、Vが例示される。なお、前記AZは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種の元素Aの酸化物AOと、5価の元素Zの酸化物Zとの複合酸化物と表すことができる。
【0022】
抵抗体ペーストは、前記AXO及び/又は前記AZに加えて、添加物としての金属材料を含むことが好ましい。金属材料としては、Ag、Pd、Ag−Pd合金等、任意の導電性金属の微粒子等が使用可能であるが、特に、前記複合酸化物との組み合わせという観点からは、Agが最も好適である。複合酸化物と金属材料との組合せで抵抗体ペーストに添加することで、形成される抵抗体のヒートサイクルや熱安定性等を向上できる。
【0023】
前記AXO及び/又は前記AZと前記金属材料との併用により、他の添加物を用いなくてもTCRやSTOLを十分に改善することができるが、必要に応じて、他の添加物が含まれていてもよい。添加物としては、任意の金属酸化物を挙げることができるが、特に、CuOを併用することで、TCR、STOL、信頼性等をより一層改善することが可能である。
【0024】
また、添加物として、前記AXO及び/又は前記AZとともに、Mg、Ca,Sr、Baから選ばれる少なくとも1種とTiとを含む複合酸化物を併用してもよい。Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種とTiとを含む複合酸化物とは、具体的にはBaTiO、SrTiO、CaTiO、MgTiO等である。
【0025】
前述の抵抗体組成物は、有機ビヒクル中に分散することで抵抗体ペーストとされるが、抵抗体ペースト用の有機ビヒクルとしては、この種の抵抗体ペーストに用いられるものがいずれも使用可能であり、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ブチルメタクリレート等のバインダ樹脂と、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、アセテート、トルエン、各種アルコール、キシレン等の溶剤とを混合して用いることができる。このとき、各種の分散剤や活性剤、可塑剤等を用途等に応じて適宜併用することも可能である。
【0026】
前記有機ビヒクルの配合比率であるが、抵抗体組成物の質量(W1)と、有機ビヒクルの質量(W2)の比率(W2/W1)が、0.25〜4(W2:W1=1:0.25〜1:4)であることが好ましい。より好ましくは、前記比率(W2/W1)が0.5〜2である。前記比率を外れると、抵抗体を例えば基板上に形成するのに適した粘度の抵抗体ペーストを得ることができなくなるおそれがある。
【0027】
抵抗体を形成するには、前述の成分を含む抵抗体ペーストを例えば基板上にスクリーン印刷等の手法で印刷(塗布)し、850℃程度の温度で焼成すればよい。基板としては、Al基板やBaTiO基板の誘電体基板や、低温焼成セラミック基板、AlN基板等を用いることができる。基板形態としては、単層基板、複合基板、多層基板のいずれであってもよい。多層基板の場合、抵抗体は、表面に形成してもよいし、内部に形成してもよい。形成された抵抗体においては、前記抵抗体ペーストに含まれる抵抗体組成物の組成が、ほぼそのまま維持される。
【0028】
抵抗体の形成に際しては、通常、基板に電極となる導電パターンを形成するが、この導電パターンは、例えば、AgやPt、Pd等を含むAg系の良導電材料を含む導電ペーストを印刷することにより形成することができる。また、形成した抵抗体の表面に、ガラス膜等の保護膜(オーバーグレーズ)を形成してもよい。
【0029】
本発明の抵抗体を適用可能な電子部品としては特に限定されないが、例えば単層または多層の回路基板、チップ抵抗器等の抵抗器、アイソレータ素子、C−R複合素子、モジュール素子の他、積層チップコンデンサ等のコンデンサやインダクタ等が挙げられ、コンデンサやインダクタ等の電極部分にも適用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0031】
<ガラス組成物の作製>
、SiO、CaCO、SrCO、BaCO、ZrO、Ta等の化合物を表1の組成となるように所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、ガラス組成物粉末を得た。得られたガラス粉末の組成を下記表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
<導電性材料、添加物>
導電性材料として、RuO、CaRuO、SrRuO、BaRuOを用いた。また、添加物として、BaNb、SrNb、CaNb、MgNb、BaSnO、SrSnO、CaSnO、MgSnO、BaTa、BaV、BaGeO、BaCO、BaTiO、SrTiO、CaTiO、MgTiO、CuO等を適宜選択して用いた。さらに、添加物として、Ag、Pd、Ag−Pd合金を適宜選択して用いた。
【0034】
<有機ビヒクルの作製>
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
【0035】
<抵抗体ペーストの作製>
導電性材料、ガラス組成物粉末、添加物及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料、ガラス組成物粉末、及び添加物の合計質量と有機ビヒクルの質量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、質量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。
【0036】
<抵抗体の作製>
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95質量%、Ptの割合は5質量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度は850℃、その温度での保持時間は10分間とした。
【0037】
このようにして導体が形成されたアルミナ基板上に、先に作製した抵抗体ペーストをスクリーン印刷法にて所定の形状(1mm×1mmの方形状)のパターンで塗布し、乾燥した。その後、導体焼き付けと同じ条件で抵抗体ペーストを焼き付け、抵抗体を得た。
【0038】
<抵抗体の特性評価>
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定した。試料数24個の平均値を求めた。
【0039】
(2)TCR
室温25℃を基準として、−55℃及び125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおくと、CTCR及びHTCRは以下のように表される。
CTCR(ppm/℃)=[(R-55−R25)/R25/80]×1000000
HTCR(ppm/℃)=[(R125−R25)/R25/100]×1000000
CTCR及びHTCRのうち絶対値の大きい方をTCR値とした。TCR≦±100ppm/℃が特性の基準となる。
【0040】
(3)STOL(短時間過負荷)
抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/4)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が400Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を400Vにて行った。STOL≦±0.1%が特性の基準となる。
【0041】
(4)ノイズ特性
Quan-Tech社製のmodel315cにより測定した。試料数10個の平均値を求めた。500kΩ〜1MΩレベルにおいて、15dB以下が特性の基準となる。なお、一般に、抵抗値が高くなるほどノイズ値が大となる傾向を示す。
【0042】
<複合酸化物の検討>
前記抵抗体ペーストの作製に際して、ガラス組成物粉末1、CaRuOを用いるとともに、添加物としてBaTiO、BaNb、BaTa、BaV、BaSnO、BaGeO、BaCO、(Ba、Sr、Ca)(Nb、Ta)、(Ba、Sr、Ca)(Sn、Si)O、SrTiO、SrNb、SrSnO、CaTiO、CaNb、CaSnO、MgTiO、MgNb、MgSnO、Ag、CuOから選択して用い、前記抵抗体の作製の項の記述にしたがって試料1〜試料18の抵抗体を作製した。各試料における抵抗体組成物の組成、及び特性評価結果を表2に示す。なお、以下の表においても同様であるが、本発明で規定する範囲から外れる試料等(比較例に相当する)には*印を付した。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から、添加物としてBaと5価の元素とを含む複合酸化物AZを含有する試料2〜試料4、及びBaと周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素とを含む複合酸化物AXOを含有する試料5〜7は、TCR及びSTOLが良好な値を示すとともに、添加物としてBaTiOを含有する試料1に比べて、ノイズ特性が良好な結果となっている。特にBaと5価の元素とを含む複合酸化物AZを含有する試料2〜試料4において、ノイズ特性の大幅な改善が図られている。また、試料8及び試料9に示すようにAZ、AXOで示す式中、A、X、Zとして複数種類の元素を用いる場合も、試料2〜試料7と同様にノイズ特性の改善効果を得ることができた。
【0045】
<導電性材料、ガラス組成物、添加物の検討>
前記抵抗体ペーストの作製に際して、下記表3に示す成分を選択して用い、前記抵抗体の作製の項の記述にしたがって試料19〜試料36の抵抗体を作製した。これら各試料における抵抗体組成物の組成、及び特性評価結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3中、試料19〜試料24から、導電性材料としてRuO、SrRuO、BaRuOを用いた場合も、CaRuOを用いた場合と同様に、添加物としてAZ等を含有することで、TCR及びSTOLを両立するとともに、ノイズ値の改善が図られている。
【0048】
また、試料25〜試料30から、組成中の修飾酸化物成分等を変化させた場合(ガラス組成物粉末2〜ガラス組成物粉末4)も、添加物としてAZ等を含有することで、TCR及びSTOLを両立するとともに、ノイズ特性改善効果が得られている。
【0049】
さらに、抵抗体ペースト中に金属材料やその他の添加物としてCuOを含まない場合(試料31及び試料34)、添加物としてAgの代わりにPd及びAg−Pd合金を用いた場合(試料32及び試料33)、添加物としてAZとBaTiOとを併用した場合(試料35)のいずれにおいても、本発明は有効であることが確認された。また、試料36に示すように、添加物としてAXOとAZとを併用することも有効であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料、ガラス組成物及び添加物が有機ビヒクル中に分散されてなる抵抗体ペーストであって、
前記添加物として、AXO(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Xは、周期表IVb族(ただしPb及びSiを除く)の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有することを特徴とする抵抗体ペースト。
【請求項2】
前記Xは、Sn、Ge、Cから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト。
【請求項3】
導電性材料、ガラス組成物及び添加物が有機ビヒクル中に分散されてなる抵抗体ペーストであって、
前記添加物として、AZ(式中Aは、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種、Zは5価の元素から選ばれる少なくとも1種である。)で示される複合酸化物を含有することを特徴とする抵抗体ペースト。
【請求項4】
前記Zは、Ta、Nb、Vから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の抵抗体ペースト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の抵抗体ペーストを用いて形成されたことを特徴とする抵抗体。
【請求項6】
請求項5記載の抵抗体を有することを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2006−261250(P2006−261250A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73976(P2005−73976)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】