説明

抵抗値補正回路

【課題】外付けの基準抵抗と半導体集積回路に形成した抵抗の遅延量を比較して、半導体集積回路に形成した抵抗の抵抗値を補正する抵抗値補正回路を提供する。
【解決手段】半導体集積回路に形成した抵抗29と半導体集積回路の外部に設けられた基準抵抗33に予め設定された周期のクロック信号を入力し、抵抗29から出力された第1の信号A1と基準抵抗33から出力された第2の信号A2との遅延差を検出する遅延判定回路3と、直列接続される複数のフリップフロップにより構成されるフリップフロップ部に、遅延判定回路3で遅延差を計測開始と同時にクロック信号を入力し、フリップフロップごとに順次クロック信号を遅延させ、フリップフロップごとに遅延信号を出力し、遅延差が発生している期間に出力された遅延信号を選択して出力するばらつき検出回路と、を備える抵抗値補正回路1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に設けられた抵抗の抵抗値のばらつきを補正する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路内に作られる抵抗(ポリシリコン)は、製造バラツキによりその抵抗値は±10%〜±20%も変動することがしられている。そこで、その抵抗値を補正するために、外付けの基準抵抗と補正対象の抵抗に同じ電流を流し、補正対象の抵抗値をスイッチで順次切り替え、その両端の電圧を比較し、両電圧がほぼ等しくなる条件を見つけることで、抵抗値の補正をしている。
【0003】
特許文献1によれば、外付けされた標準の抵抗と、集積回路内に形成されている基準の抵抗で分圧された電圧値をディジタルデータとして出力することができるA/D変換器を設け、A/D変換器から出力されるディジタルデータによって集積回路内の被補正抵抗の値を修正する集積回路内抵抗補正が提案されている。
【0004】
特許文献2によれば、LSIの内部基準抵抗と外部基準抵抗と、基準電圧を入力し信号に応じた電圧を出力するD/A変換器と、内部基準抵抗と外部基準抵抗で基準電圧を分圧した電圧とD/A出力電圧を入力し比較するコンパレータと、コンパレータ出力信号を入力しクロックパルスに同期してカウントアップするカウンタと、カウント値を入力してデコードした信号をD/A変換器に出力するデコーダと、カウンタのカウント値とコンパレータ出力信号が反転した時点でカウント値を記憶保持するレジスタと、レジスタの出力をデコードするデコーダと、デコーダの出力信号でスイッチがオン・オフ制御される抵抗ストリングと、を備えて、チップ面積を削減し、抵抗ばらつき補正のためにツェナーダイオードを破壊する等することを不要とした抵抗ばらつき自動補正回路が提案されている。
【0005】
しかしながら、従来の半導体集積回路の抵抗値補正回路や特許文献1、2では、外付けの基準抵抗と半導体集積回路に形成した抵抗の電圧を比較するための補正回路の規模が大きくなるという問題がある。また、補正回路を構成するMOSトランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Transistor)には製造上の特性ばらつきが発生するため、そのばらつきにより補正に誤差を生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−208706号公報
【特許文献2】特開2001−203574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、補正精度劣化がなく回路規模の小さな抵抗値補正回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様のひとつである抵抗値補正回路は、遅延判定回路とばらつき検出回路を備えている。遅延判定回路は、半導体集積回路に形成した抵抗と上記半導体集積回路の外部に設けられた基準抵抗に予め設定された周期のクロック信号を入力し、上記抵抗から出力された第1の信号と上記基準抵抗から出力された第2の信号との遅延差を検出する。ばらつき検出回路は、直列接続される複数のフリップフロップにより構成されるフリップフロップ部に、上記遅延判定回路で上記遅延差を計測開始と同時に上記クロック信号を入力し、上記フリップフロップごとに順次上記クロック信号を遅延させ、上記フリップフロップごとに遅延信号を出力し、上記遅延差が発生している期間に出力された上記遅延信号を選択して出力する。
【0009】
上記構成により、外付けの基準抵抗と半導体集積回路に形成した抵抗の遅延量を比較して、半導体集積回路に形成した抵抗の抵抗値を補正することができる。
また、上記遅延判定回路は、2つのインバータの間に上記抵抗を形成する第1の遅延回路と、2つのインバータの間に上記基準抵抗を接続する第2の遅延回路と、上記第1の遅延回路の出力である上記第1の信号と上記第2の遅延回路の出力である第2の信号の上記遅延差の検出を排他的論理和回路により行う。
【0010】
また、上記ばらつき検出回路の上記フリップフロップ部は、上記直列接続される複数のフリップフロップにより構成される第1のフリップフロップ部と、第2のフリップフロップ部と、第3のフリップフロップ部を備え、上記第1のフリップフロップ部は、上記遅延判定回路で上記遅延差を計測開始と同時に上記クロック信号を入力し、該フリップフロップごとに順次上記クロック信号を遅延させ、最終段のフリップフロップの出力を上記第2のフリップフロップ部に出力し、上記第2のフリップフロップ部は、上記第1のフリップフロップ部の出力信号をフリップフロップごとに順次遅延させ、上記フリップフロップごとに遅延信号を出力し、上記第3のフリップフロップ部は、上記遅延差が発生している期間に上記第2のフリップフロップ部から出力された上記遅延信号を選択して出力する。
【0011】
また、上記第3のフリップフロップ部から出力される上記遅延信号により、抵抗値を切り替え可能な調整抵抗を備えた調整機能付き抵抗の抵抗値を切り替える。
【発明の効果】
【0012】
外付けの基準抵抗と半導体集積回路に形成した抵抗の遅延量を比較して、半導体集積回路に形成した抵抗の抵抗値を補正することにより、精度劣化がなく回路規模の小さい抵抗補正回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】抵抗値補正回路の構成と調整機能付き抵抗を示す図である。
【図2】抵抗値補正回路の各回路の出力タイムチャートを示す図である。
【図3】抵抗値補正回路の各回路の出力タイムチャートを示す図である。
【図4】抵抗値補正回路の各回路の出力タイムチャートを示す図である。
【図5】調整機能付き抵抗の構成を示す図である。
【図6】調整機能付き抵抗の制御方法を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
(実施例1)
図1は、抵抗値補正回路を示す図であり、図2〜図4は、抵抗値補正回路内の各回路の出力のタイムチャートを示す図である。
【0015】
図1に示す抵抗値補正回路1は、半導体集積回路に形成した抵抗の抵抗値のばらつきを調整する回路である。抵抗値補正回路1は、D型のフリップフロップ4〜25、(論理回路)を備えている。
【0016】
遅延判定回路3は、半導体集積回路に形成した抵抗と半導体集積回路の外部に設けられた基準抵抗に予め設定された周期のクロック信号を入力し、抵抗から出力された第1の信号と基準抵抗から出力された第2の信号の遅延差を検出する。
【0017】
本例では、遅延判定回路3は、第1の遅延回路26、第2の遅延回路30、遅延比較部34を備えている。第1の遅延回路26は、インバータ27、28と抵抗29を備え、インバータ27の出力端子と抵抗29の一方の端子が接続され、抵抗29の他方がインバータ28の入力端子に接続されている。なお、抵抗29は半導体集積回路に形成した抵抗の代表となる抵抗である。第2の遅延回路30は、インバータ31、32と基準抵抗33を備え、インバータ31の出力端子と基準抵抗33の一方の端子が接続され、基準抵抗33の他方がインバータ32の入力端子に接続されている。なお、基準抵抗33は半導体集積回路の外部に外付けされた抵抗値の変動が少ない精度のよい抵抗である。
【0018】
また、遅延判定回路3は、まず後述する図1に示すフリップフロップ4の出力端子Qから出力される信号Aをインバータ27、31に入力し、抵抗29、33を介してインバータ28、32から出力する。このインバータ28から出力された信号A1(第1の信号)と、インバータ32から出力された信号A2(第2の信号)を、遅延比較部34に入力して比較する。この比較した結果である信号B(遅延差の検出結果)は、フリップフロップ18〜25の入力端子Dに入力される。なお、本例では遅延比較部34は排他的論理和(XOR)を用いている。
【0019】
ばらつき検出回路35は、直列接続される複数のフリップフロップ4〜25により構成されるフリップフロップ部は、遅延判定回路3で遅延差を計測開始と同時にクロック信号CLKを入力し、フリップフロップごとに順次クロック信号CLKを遅延させ、フリップフロップごとに遅延信号を出力し、遅延差が発生している期間に出力された遅延信号を選択して出力する。
【0020】
ばらつき検出回路35のフリップフロップ部は、直列接続される複数のフリップフロップにより構成される後述する第1のフリップフロップ部と、第2のフリップフロップ部と、第3のフリップフロップ部を備えている。
【0021】
フリップフロップ4は、入力端子Dに入力されるイネーブル信号ENBがローレベルからハイレベルになった後、クロック端子Cに入力されるクロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、出力端子Qから出力される信号Aがローレベルからハイレベルになる。なお、ローレベルは、例えば、電圧値が0V付近のレベルである。ハイレベルは、例えば、該回路に供給される電圧値付近のレベルである。なお、イネーブル信号は、例えば、抵抗値補正回路1の外部で生成されるパワーオン信号(Power On Reset Signal)である。また、クロック信号は、例えば抵抗値補正回路1の外部または内部で発振器により生成される一定周期の信号である。
【0022】
フリップフロップ5〜17は、直列接続され、それぞれのクロック端子Cにクロック信号CLKが入力される。なお、フリップフロップ5〜9を第1のフリップフロップ部、フリップフロップ10〜17を第2のフリップフロップ部という。
【0023】
第1のフリップフロップ部は、遅延判定回路3で遅延差を計測開始と同時にクロック信号を入力し、該フリップフロップごとに順次クロック信号を遅延させ、最終段のフリップフロップの出力を第2のフリップフロップ部に出力する。
【0024】
第2のフリップフロップ部は、第1のフリップフロップ部の出力信号をフリップフロップごとに順次遅延させ、フリップフロップごとに遅延信号を出力する。
ばらつき検出回路35は、まずフリップフロップ4の出力端子Qからフリップフロップ5の入力端子Dへ入力される信号Aがローレベルからハイレベルになった後、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ5の出力端子Qから出力される信号がローレベルからハイレベルになる。
【0025】
次に、フリップフロップ5の出力端子Qからフリップフロップ6の入力端子Dへ入力される信号がローレベルからハイレベルになった後、クロック信号CLKがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ6の出力端子Qから出力される信号がローレベルからハイレベルになる。
【0026】
以降、このように、前の段のフリップフロップの出力信号がハイレベルになった後、クロック信号CLKがハイレベルになると、次の段のフリップフロップから出力される信号がハイレベルになるという動作がフリップフロップ6〜17において行われる。
【0027】
すなわち、フリップフロップ5〜17により、抵抗値補正回路1の遅延時間がカウントされる。
フリップフロップ18〜25は、互いに直列接続され、それぞれの入力端子Dに抵抗値補正回路1から出力される信号Bが入力される。なお、フリップフロップ18〜25を第3のフリップフロップ部という。第3のフリップフロップ部は、遅延差が発生している期間に第2のフリップフロップ部から出力された前記遅延信号を選択して出力する。
【0028】
例えば、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ10の出力端子Qからフリップフロップ18のクロック端子Cに入力される信号Cがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ18の出力端子Qから出力される信号Q0がローレベルからハイレベルになる。
【0029】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ11の出力端子Qからフリップフロップ19のクロック端子Cに入力される信号Dがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ19の出力端子Qから出力される信号Q1がローレベルからハイレベルになる。
【0030】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ12の出力端子Qからフリップフロップ20のクロック端子Cに入力される信号Eがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ20の出力端子Qから出力される信号Q2がローレベルからハイレベルになる。
【0031】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ13の出力端子Qからフリップフロップ21のクロック端子Cに入力される信号Fがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ21の出力端子Qから出力される信号Q3がローレベルからハイレベルになる。
【0032】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ14の出力端子Qからフリップフロップ22のクロック端子Cに入力される信号Gがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ22の出力端子Qから出力される信号Q4がローレベルからハイレベルになる。
【0033】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ15の出力端子Qからフリップフロップ23のクロック端子Cに入力される信号Hがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ23の出力端子Qから出力される信号Q5がローレベルからハイレベルになる。
【0034】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ16の出力端子Qからフリップフロップ24のクロック端子Cに入力される信号Iがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ24の出力端子Qから出力される信号Q6がローレベルからハイレベルになる。
【0035】
また、信号Bがローレベルからハイレベルになった後、フリップフロップ17の出力端子Qからフリップフロップ25のクロック端子Cに入力される信号Jがローレベルからハイレベルになると、フリップフロップ25の出力端子Qから出力される信号Q7がローレベルからハイレベルになる。
【0036】
すなわち、フリップフロップ18〜25により、抵抗値補正回路1の抵抗29と基準抵抗33の抵抗値の違いによる遅延時間の差と、抵抗値の大小を示す信号Q0〜Q7が出力される。
【0037】
上記構成により、半導体集積回路内部の抵抗29と基準抵抗33の抵抗値が略等しい場合は、信号Q0〜Q7は全て「0」になる。また、基準抵抗33に比べて抵抗29の方が大きい場合は、信号Q7側に「1」が表れ、抵抗29の方が小さい場合は、信号Q0側に「1」が表れる。半導体集積回路内部の抵抗値が大きいほど信号Q7側に「1」が表れ、抵抗値が小さいほど信号Q0側に「1」が表れる。このディジタル出力が、抵抗値のばらつきを表わしていることになるので、この信号Q0〜Q7を利用して、他の回路内の抵抗値を補正することができる。
(動作説明)
図2に半導体集積回路内部に形成する抵抗の抵抗値が予め想定した範囲であった場合のタイムチャートである。本例では図1の抵抗29と外付け基準抵抗33が略同じ抵抗値の場合である。
【0038】
図2の縦軸には図1に示した抵抗値補正回路1の信号CLK、ENB、A、A1、A2、B〜J、Q0〜Q7が示され、横軸には時間が示されている。
図2の例では、タイミングT1とT2のクロック信号CLKの立下りで、イネーブル信号ENBがローレベルからハイレベルに変化し、タイミングT2でフリップフロップ4の出力端子Qから信号Aが遅延判定回路3の第1の遅延回路26と第2の遅延回路30に入力される。このとき、第1、第2のフリップフロップ部のフリップフロップ4〜17も並行して動作を開始する。
【0039】
タイミングT12(破線範囲201)では、信号Aが第1の遅延回路26により遅延した信号A1と、信号Aが第2の遅延回路30により遅延した信号A2がローレベルからハイレベルに変化する。図2の場合予め想定した範囲で抵抗29が形成されたため、信号A1と信号A2は同じタイミングで変化をする。そのため遅延比較部34の出力である信号Bは変化しないので、第3のフリップフロップ部の入力端子Dには信号Bが入力されないため信号Q0〜Q7は変化しない。つまり、イネーブル信号である信号Bが入力されないために出力端子Qから出力される信号Q0〜Q7は、ローレベルのままである。
【0040】
その結果、半導体集積回路内部の抵抗が標準(Typical)で仕上がった場合、第3のフリップフロップ部の出力はQ[7:0]=「00000000」となる。
図3に半導体集積回路内部に形成する抵抗の抵抗値が予め想定した範囲より大きくできた場合のタイムチャートである。
【0041】
図3の縦軸には図1に示した抵抗値補正回路1の信号CLK、ENB、A、A1、A2、B〜J、Q0〜Q7が示され、横軸には時間が示されている。
図3の例では、タイミングT1とT2のクロック信号CLKの立下りで、イネーブル信号ENBがローレベルからハイレベルに変化し、タイミングT2でフリップフロップ4の出力端子Qから信号Aが遅延判定回路3の第1の遅延回路26と第2の遅延回路30に入力される。このとき、第1、第2のフリップフロップ部のフリップフロップ4〜17も並行して動作を開始する。
【0042】
タイミングT12〜T15(破線範囲301)では、タイミングT12とT13の間において、信号Aが第2の遅延回路30により遅延して信号A2がローレベルからハイレベルに変化する。遅延比較部34はこの変化を検出して信号Bをローレベルからハイレベルに変化させる。例えば、遅延比較部34に排他的論理和を用いれば、信号A1がローレベル「0」で、信号A2がハイレベル「1」であるので信号Bはハイレベル「1」を出力する。
【0043】
次に、タイミングT13とT14では、第3のフリップフロップ部の入力端子Dにはハイレベルの信号Bが入力される。信号Bがハイレベルの間にローレベルからハイレベルに変化したフリップフロップ14、15の出力信号G、Hが、フリップフロップ22、23に入力され、信号Q4、Q5がローレベルからハイレベルに変化する。他の信号Q0〜Q3、Q6、Q7は変化しない。
【0044】
次に、タイミングT14とT15の間において、信号Aが第1の遅延回路26により遅延して信号A1がローレベルからハイレベルに変化する。遅延比較部34はこの変化を検出して信号Bをハイレベルからローレベルに変化させる。例えば、遅延比較部34に排他的論理和を用いれば信号A1がハイレベル「1」で、信号A2がハイレベル「1」であるので信号Bはローレベル「0」を出力する。
【0045】
その結果、半導体集積回路内部の抵抗の抵抗値が大きくなるほうにばらついた場合、遅延時間が大きくなるので、第1の遅延回路26の立ち上りのタイミングが第2の遅延回路30の立ち上りタイミングより遅くなり、タイミング差がある期間だけ遅延比較部34の出力は「1」となる。
【0046】
図4に半導体集積回路内部に形成する抵抗の抵抗値が予め想定した範囲より小さくできた場合のタイムチャートである。
図4の縦軸には図1に示した抵抗値補正回路1の信号CLK、ENB、A、A1、A2、B〜J、Q0〜Q7が示され、横軸には時間が示されている。
【0047】
図4の例では、タイミングT1とT2のクロック信号CLKの立下りで、イネーブル信号ENBがローレベルからハイレベルに変化し、タイミングT2でフリップフロップ4の出力端子Qから信号Aが遅延判定回路3の第1の遅延回路26と第2の遅延回路30に入力される。このとき、第1、第2のフリップフロップ部のフリップフロップ4〜17も並行して動作を開始する。
【0048】
タイミングT10〜T13(破線範囲401)では、タイミングT12とT13の間において、信号Aが第1の遅延回路26により遅延して信号A1がローレベルからハイレベルに変化する。遅延比較部34はこの変化を検出して信号Bをローレベルからハイレベルに変化させる。例えば、遅延比較部34に排他的論理和を用いれば、信号A2がローレベル「0」で、信号A1がハイレベル「1」であるので信号Bはハイレベル「1」を出力する。
【0049】
次に、タイミングT11とT12では、第3のフリップフロップ部の入力端子Dにはハイレベルの信号Bが入力される。信号Bがハイレベルの間にローレベルからハイレベルに変化したフリップフロップ12、13の出力信号E、Fが、フリップフロップ20、21に入力され、信号Q2、Q3がローレベルからハイレベルに変化する。他の信号Q0、Q1、Q4〜Q7は変化しない。
【0050】
次に、タイミングT12とT13の間において、信号Aが第2の遅延回路30により遅延して信号A2がローレベルからハイレベルに変化する。遅延比較部34はこの変化を検出して信号Bをハイレベルからローレベルに変化させる。例えば、遅延比較部34に排他的論理和を用いれば信号A2がハイレベル「1」で、信号A1がハイレベル「1」であるので信号Bはローレベル「0」を出力する。
【0051】
その結果、半導体集積回路内部の抵抗の抵抗値が小さくなるほうにばらついた場合、遅延時間が小さくなるので、第1の遅延回路26の立ち上りのタイミングが第2の遅延回路30の立ち上りタイミングより早くなり、タイミング差がある期間だけ遅延比較部34の出力は「1」となる。
【0052】
このように、遅延時間から抵抗値のばらつきを検出することにより、フリップフロップとクロック信号のシンプルな構成で、抵抗値の補正が可能となる。
(実施例2)
実施例2は、図1に示した抵抗値補正回路1を用いて調整機能付き抵抗2を調整するものである。
【0053】
図5のAに調整機能付き抵抗2の内部回路を示す。調整機能付き抵抗2は、例えば、抵抗R、調整抵抗R0〜R7、スイッチSW0から構成されている。
抵抗Rは、例えば、フィルタなどを構成する抵抗であり、抵抗値の変動を極力避けたいような箇所に使用するものである。調整抵抗R0〜R3は抵抗Rに直列に接続され端子P0−P1間の抵抗値を調整する抵抗である。調整抵抗R4〜R7は抵抗Rに並列に接続され端子P0−P1間の抵抗値を調整する抵抗である。
【0054】
スイッチSW0〜SW7は、調整抵抗R0〜R7に並列に接続され、抵抗値補正回路1の出力Q0〜Q7により制御される。また、スイッチSW0〜SW7は図5のBに示すようにNMOSトランジスタ51とPMOSトランジスタ52により構成してもよい。図5のBではNMOSトランジスタ51のゲート端子Sから信号Q(Q0〜Q7の何れか)か、または信号Qを反転した信号を入力し、PMOSトランジスタ52のゲート端子SBから信号Q(Q0〜Q7の何れか)か、または信号Qを反転した信号を入力する。NMOSトランジスタ51のドレイン端子とPMOSトランジスタ52のソース端子が接続されている端子P2、NMOSトランジスタ51のソース端子とPMOSトランジスタ52のドレイン端子が接続されている端子P3は、調整抵抗R0〜R7の両端に接続される。
【0055】
上記のように構成した調整機能付き抵抗2のスイッチSW0〜SW7は、図6に示す表A、Bのように制御される。実施例2では従来のようにメモリなどにこの表A、Bのパターンを記録する必要がないため、回路規模を小さくすることができる。
【0056】
図6の表Aは、抵抗補正回路1の出力信号Q0〜Q7[0:7]とスイッチSW0〜SW7のON/OFFの関係を示している。また、図6の表Bは、抵抗補正回路1の出力信号Q0〜Q7とスイッチSW0〜SW7の端子接続の例を示している。
【0057】
図6の表Aでは、抵抗補正回路1の出力信号Q0〜Q7が「00001111」の場合には、スイッチSW0〜SW7をすべてOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて小さい状態を示している(遅延時間:−4)。出力信号Q0〜Q7が「00001110」の場合には、スイッチSW0をオン(クローズ)にし、スイッチSW1〜SW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて小さい状態を示している(遅延時間:−3)。出力信号Q0〜Q7が「00001100」の場合には、スイッチSW0、SW1をオン(クローズ)にし、スイッチSW2〜SW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて小さい状態を示している(遅延時間:−2)。出力信号Q0〜Q7が「00001000」の場合には、スイッチSW0〜SW2をオン(クローズ)にし、スイッチSW3〜SW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて小さい状態を示している(遅延時間:−1)。出力信号Q0〜Q7が「00000000」の場合には、スイッチSW0〜SW3をオン(クローズ)にし、スイッチSW4〜SW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準状態であることを示している(遅延時間が許容範囲内)。出力信号Q0〜Q7が「00010000」の場合には、スイッチSW0〜SW4をオン(クローズ)にし、スイッチSW5〜SW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて大きい状態を示している(遅延時間:+1)。出力信号Q0〜Q7が「00110000」の場合には、スイッチSW0〜SW5をオン(クローズ)にし、スイッチSW6〜SW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて大きい状態を示している(遅延時間:+2)。出力信号Q0〜Q7が「01110000」の場合には、スイッチSW0〜SW6をオン(クローズ)にし、スイッチSW7をOFF(オープン)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて大きい状態を示している(遅延時間:+3)。出力信号Q0〜Q7が「11110000」の場合には、スイッチSW0〜SW7をオン(クローズ)にする。この状態は抵抗値が標準に比べて大きい状態を示している(遅延時間:+4)。
【0058】
図6の表Bに示すようにスイッチSW0〜SW7を制御する場合には、図5のBに示すように各端子S、SBに信号を入力する。SW0では、端子Sに信号Q0を反転した信号を入力し、端子SBに信号Q0を入力する。SW1では、端子Sに信号Q1を反転した信号を入力し、端子SBに信号Q1を入力する。SW2では、端子Sに信号Q2を反転した信号を入力し、端子SBに信号Q2を入力する。SW3では、端子Sに信号Q3を反転した信号を入力し、端子SBに信号Q3を入力する。SW4では、端子Sに信号Q4を入力し、端子SBに信号Q4を反転した信号を入力する。SW5では、端子Sに信号Q5を入力し、端子SBに信号Q5を反転した信号を入力する。SW6では、端子Sに信号Q6を入力し、端子SBに信号Q6を反転した信号を入力する。SW7では、端子Sに信号Q7を入力し、端子SBに信号Q7を反転した信号を入力する。
【0059】
上記のように信号Q0〜Q7を用いて制御することにより回路規模を小さくすることができる。
また、上記実施例の抵抗値補正回路1は、フリップフロップ5〜9により遅延判定回路3の遅延時間のばらつきを調整する開始時間を任意に設定することができる。
【0060】
また、上記実施例では、クロック信号CLKの周期は特に限定されない。例えば、クロック信号の周期をさらに短くすることで、より細かい単位時間で遅延時間のばらつきを調整することができる。
【0061】
また、上記実施例では、抵抗値補正回路1の遅延時間のばらつきを8段階(8ビット)で調整する構成であるが、遅延時間のばらつきの調整段階数は特に限定されない。例えば、フリップフロップを増やすことで、より多い調整段階数で遅延時間のばらつきを調整することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 抵抗値補正回路、
2 調整機能付き抵抗、
3 遅延判定回路、
4〜25 フリップフロップ、
26 遅延回路、
27、28、31、32 インバータ、
29 抵抗、
30 遅延回路、
33 基準抵抗、
34 遅延比較部、
35 ばらつき検出回路、
51、52 トランジスタ
R 抵抗、
R0〜R7 調整抵抗、
SW0〜SW7 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路に形成した抵抗と前記半導体集積回路の外部に設けられた基準抵抗に予め設定された周期のクロック信号を入力し、前記抵抗から出力された第1の信号と前記基準抵抗から出力された第2の信号との遅延差を検出する遅延判定回路と、
直列接続される複数のフリップフロップにより構成されるフリップフロップ部に、前記遅延判定回路で前記遅延差を計測開始と同時に前記クロック信号を入力し、前記フリップフロップごとに順次前記クロック信号を遅延させ、前記フリップフロップごとに遅延信号を出力し、前記遅延差が発生している期間に出力された前記遅延信号を選択して出力するばらつき検出回路と、
を備えることを特徴とする抵抗値補正回路。
【請求項2】
前記遅延判定回路は、
2つのインバータの間に前記抵抗を形成する第1の遅延回路と、
2つのインバータの間に前記基準抵抗を接続する第2の遅延回路と、
前記第1の遅延回路の出力である前記第1の信号と前記第2の遅延回路の出力である第2の信号の前記遅延差の検出を排他的論理和回路により行うことを特徴とする請求項1に記載の抵抗値補正回路。
【請求項3】
前記ばらつき検出回路の前記フリップフロップ部は、
前記直列接続される複数のフリップフロップにより構成される第1のフリップフロップ部と、第2のフリップフロップ部と、第3のフリップフロップ部を備え、
前記第1のフリップフロップ部は、前記遅延判定回路で前記遅延差を計測開始と同時に前記クロック信号を入力し、該フリップフロップごとに順次前記クロック信号を遅延させ、最終段のフリップフロップの出力を前記第2のフリップフロップ部に出力し、
前記第2のフリップフロップ部は、前記第1のフリップフロップ部の出力信号をフリップフロップごとに順次遅延させ、前記フリップフロップごとに遅延信号を出力し、
前記第3のフリップフロップ部は、前記遅延差が発生している期間に前記第2のフリップフロップ部から出力された前記遅延信号を選択して出力することを特徴とする請求項2に記載の抵抗値補正回路。
【請求項4】
前記第3のフリップフロップ部から出力される前記遅延信号により、抵抗値を切り替え可能な調整抵抗を備えた調整機能付き抵抗の抵抗値を切り替えることを特徴とする請求項3に記載の抵抗値補正回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−213186(P2010−213186A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59543(P2009−59543)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】