説明

抵抗変化型メモリ

【課題】従来技術に比較して高い再現性で確実に抵抗のヒステリシス特性及びメモリ特性を発現させることができる抵抗変化型メモリとその製造方法を提供する。
【解決手段】PrCa1−xMnOにてなるPCMO層を下部電極と上部電極とにより挟設してなる抵抗変化型メモリにおいて、上記PCMO層と上記上部電極もしくは下部電極との間に金属酸化物層を挿入形成した。ここで、上記金属酸化物は上記上部電極の金属の酸化物であり、上記上部電極と下部電極の少なくとも一方はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)のうちのいずれかにてなる。上記抵抗変化型メモリは、正の直流電圧領域において、上記第1の低抵抗状態と上記第1の高抵抗状態の2値を有するとともに、負の直流電圧領域において、上記第2の高抵抗状態と上記第2の低抵抗状態の2値を有することにより、合計4値の情報を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集積化した大規模不揮発性メモリに応用可能な抵抗変化型メモリとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗変化型メモリ材料として、Pr0.3Ca0.7MnO(以下、従来技術の説明において、「PCMO」という。)を用いた場合(例えば、非特許文献1及び3参照。)、各種の金属を電極としてその上に取付けて、電圧を印加して(あるいは電流を流して)抵抗を変化させ、抵抗の高い状態と、低い状態の2つの状態を使い分けて、データを記憶させる。従来技術では、無秩序に金属を多数選び出し、それぞれの金属毎に、適しているかどうかを判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−340786号公報。
【特許文献2】特開2007−288008号公報。
【特許文献3】特開2008−021750号公報。
【特許文献4】特開2008−053704号公報。
【特許文献5】特開2008−066438号公報。
【特許文献6】特開2009−170006号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は従来技術に係る抵抗変化型メモリの構造を示す縦断面図であり、図4は図3の抵抗変化型メモリの抵抗ヒステリシス特性を示すグラフである。
【0005】
図3に示すように、誘電体基板20上に白金(Pt)の下部電極21を形成した後、PCMO抵抗変化層22を形成し、その上に、例えば銀などの金属を上部電極23として形成する。下部電極21と、上部電極23の間に、電圧源25により電圧を印加して電流を流すと、抵抗が変化して、低抵抗状態から高抵抗状態へ遷移することがある。一旦遷移すると、逆向きの電圧を印加して、高抵抗状態から、低抵抗状態へ遷移させない限り、元の状態には戻らない。このような抵抗状態は、長時間、電源のサポート無しに保持されるので、パーソナルコンピュータや携帯電話機などのメモリとして用いると、電源を切ってもメモリ状態が保持される、いわゆる不揮発性メモリとして用いることができる。ところが、この特性が出現する再現性が悪いという問題点があった。
【0006】
例えば、図4は、従来技術に係る、タングステン(W)を上部電極23に用いた場合の抵抗のヒステリシス特性を測定したものである。上部電極23に印加する電圧を正側にスキャンし、再度0Vに戻し、さらに負側にスキャンし、再び0Vに戻したものである。図4から明らかなように、この素子では、抵抗の変化がほとんど起きていない(抵抗変化が起きる場合もある。)。この素子の応用を考える場合、10億個規模を集積化した大規模なメモリとしての応用が期待されることから、高い再現性で、メモリ特性が発現することが要求されるが、この条件を満たしていないという問題があった。また、統一的に、金属を探索する手法がないので、各種金属を用いて順に試みることが必要であり、効率が悪いという問題点があった。
【0007】
なお、ここでは便宜上、タングステンを上部電極として説明したが、素子動作上は電極の上下に特に意味はなく、入れ替えても同様の議論になる。従って、本明細書においては簡潔のために上部電極に着目した記述とするが、それらは下部電極に読み替えても有効なことは言うまでもない。また、電極は、上部電極/PCMO層/下部電極の縦積みに限定されるものではなく、PCMO層の片面(上面もしくは下面)に両電極を設置してもよい。このように横型にすると素子面積が大きくなるデメリットがあるが、両電極ともPCMO層の形成後に設置するため、電極材料の選択の自由度が広がるメリットがある。例えば、高価なPtを使う必要がなく、低コストなメモリが製造できる。
【0008】
さらに、これまで、秩序ある金属の選定方法がなかった。また、従来の金属材料を上部電極として用いた、抵抗変化型メモリでは、抵抗変化が生じる再現性が低かったので、これを改善する素子構成法を構築する必要がある。また、新たな、抵抗変化型メモリとして用いることができる材料を見出す必要がある。
【0009】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して高い再現性で確実に抵抗のヒステリシス特性及びメモリ特性を発現させることができる抵抗変化型メモリとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る抵抗変化型メモリは、PrCa1−xMnOにてなるPCMO層を下部電極と上部電極とにより挟設してなる抵抗変化型メモリにおいて、
上記PCMO層と上記上部電極もしくは下部電極との間に金属酸化物層を挿入形成したことを特徴とする。
【0011】
上記抵抗変化型メモリにおいて、上記金属酸化物は上記上部電極もしくは下部電極の金属の酸化物であることを特徴とする。
【0012】
また、上記抵抗変化型メモリにおいて、上記上部電極と下部電極の少なくとも一方はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)のうちのいずれかにてなることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る抵抗変化型メモリの製造方法は、下部電極上にPrCa1−xMnOにてなるPCMO層を形成するステップと、
上記PCMO層上に金属酸化物層を形成するステップと、
上記金属酸化物層上に上部電極を形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
なお、横型の素子とする場合には、通常のマスクを用いた選択的なエッチングにより、所望の電極/PCMO界面にのみ金属酸化物層を挿入することができる。
【0015】
上記抵抗変化型メモリの製造方法において、上記金属酸化物は上記上部電極の金属の酸化物であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る抵抗変化型メモリの製造方法は、下部電極上に金属酸化物層を形成するステップと、
上記金属酸化物層上にPrCa1−xMnOにてなるPCMO層を形成するステップと、
上記PCMO層上に上部電極を形成するステップとを含むことを特徴とする抵抗変化型メモリの製造方法。
【0017】
上記抵抗変化型メモリの製造方法において、上記金属酸化物は上記下部電極の金属の酸化物であることを特徴とする。
【0018】
さらに、上記抵抗変化型メモリの製造方法において、上記上部電極と下部電極の少なくとも一方はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)のうちのいずれかにてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
従って、本発明に係る抵抗変化型メモリとその製造方法によれば、PrCa1−xMnOにてなるPCMO層を下部電極と上部電極とにより挟設してなる抵抗変化型メモリにおいて、上記PCMO層と上記上部電極もしくは下部電極との間に金属酸化物層を挿入形成した。これにより、従来技術に比較して高い再現性で確実に抵抗のヒステリシス特性及びメモリ特性を発現させることができる抵抗変化型メモリとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る抵抗変化型メモリの構造を示す縦断面図である。
【図2】図1の抵抗変化型メモリの抵抗ヒステリシス特性を示すグラフである。
【図3】従来技術に係る抵抗変化型メモリの構造を示す縦断面図である。
【図4】図3の抵抗変化型メモリの抵抗ヒステリシス特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施例について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0022】
図1は本発明の実施例に係る抵抗変化型メモリの構造を示す縦断面図であり、図2は図1の抵抗変化型メモリの抵抗ヒステリシス特性を示すグラフである。本実施例に係る抵抗変化型メモリは、抵抗変化メモリ材料である、PrCa1−xMnO(ここで、xは0.1から0.5の範囲であって、好ましくは、xは0.3であり、以下、本発明に係る実施例において「PCMO」という。)にてなるPCMO層12上に形成する上部電極14の金属として、6A族の金属(クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のうちのいずれか1つ)を選択し、図1に示すように、PCMO層12と上部電極14との界面に、これらの6A族の金属の酸化物からなる金属酸化物層13を挿入形成することにより図2の良好な抵抗ヒステリシス特性を有する抵抗変化型メモリを得ることを特徴としている。
【0023】
まず、図1の抵抗変化型メモリの製造方法について以下に説明する。
【0024】
例えばおもて面にシリコン酸化膜(SiO)を形成してなるSiO/Si誘電体基板(半導体基板であってもよい。)10上に例えばプラチナ(Pt)にてなる下部電極11を形成した。下部電極11としてプラチナ(Pt)を用いた理由は、PCMO層12の作成に、高い温度が必要なため、これに耐える金属として、プラチナ(Pt)を用いている。他の融点が比較的高い貴金属である、イリジウム(Ir)やパラジウム(Pd)などを用いることも可能である。ここで、シリコン酸化膜(SiO)を用いているが、プラチナ(Pt)などの貴金属は、これと密着性が悪いので、膜厚約10nmのチタン(Ti)をArイオンによるスパッタ法により形成後、引き続いて、プラチナ(Pt)をスパッタ法により膜厚100nm形成して下部電極11を形成した。
【0025】
次いで、下部電極11上に、PCMO層12をMOD(Metal Organic Decomposition)法により形成した(当該方法及び別の形成方法については詳細詳述する。)。ここでは、溶液の条件や、塗布時の基盤の回転数を調整し、1回の塗布で、30nmのPCMO薄膜にてなるPCMO層12を形成している。120°Cで5分間加熱乾燥後、800°Cで3分間加熱している。この工程を繰り返すことにより、厚い膜が得られる。例えば、5回繰り返すと150nmの厚さのPCMO層12が得られる。ここで得られる特性には、PCMO層12の厚さは大きくは影響しないが、ここでは、3回繰り返した。90nmの膜を用いた。ここでは、詳細の説明を省くが、スパッタ法で、基板温度を600°Cから1000°C程度でPCMO層12を作成することでも、良好な抵抗変化型メモリの特性が得られる。
【0026】
引き続いて、PCMO層12上に6A族の金属の酸化物にてなる金属酸化物層13を形成する。ここでは一例としてタングステン(W)の酸化物を用いる例を示すが、モリブデン(Mo)やクロム(Cr)でも同様である。タングステン(W)金属を、Ar雰囲気を用いたスパッタ法により10nmの厚さで形成する。これを大気雰囲気中で500°Cで3分加熱して酸化タングステン(WOx:xは好ましくは3である。)膜を形成した。このとき、酸化タングステン(WOx)を作成する手法としては、他の手法でも良い。例えば、同様にタングステン(W)膜を作成後、酸素を含むプラズマ処理により作成する(温度は、室温から、500°C程度で、熱のみによる処理温度は低くて構わない。)。あるいは、タングステン(W)をターゲットとして、酸素を含むプラズマでスパッタすることによりタングステン酸化物(WOx)を形成することができる。膜厚は、ここでは、タングステン(W)で10nmであるので、タングステン酸化物(WOx)の膜厚としては、15nm程度である。タングステン酸化物(WOx)の膜厚の範囲としては、3nmから30nm程度であればよく、さらに好ましくは、5nmから25nm程度、より好ましくは10nmから20nm程度が良い。そして、最後に、上記金属酸化物層13に、タングステン(W)からなる上部電極14を形成した。
【0027】
次いで、PCMO層12の形成方法について以下詳述する。その方法は以下の通り2通りある。
【0028】
1つは、MOD法あるいは有機金属堆積法である。有機金属を有機溶媒に溶かし込んだ溶液を誘電体基板(本実施例では、誘電体基板10上の下部電極11)上に塗布し、誘電体基板を回転させることで溶液を基板上に均一な厚さにスピンコート法により塗布する。それを加熱乾燥(80°Cから400°Cの温度)することで、溶媒を蒸発させ(有機金属材料も、一部分解することもある)て、基板上に定着させる。次いで、高温(500°Cから1000°Cの温度)焼成することで、有機金属材料を分解・反応させ、目的の薄膜が得るのである。この方法の特徴は、所望の化合物薄膜の組成に対応した混合比で有機金属材料の組成比を調整しておくことで、組成比を変えることができる。このため、組成の制御が比較的容易であることが挙げられる。加えて、高価な真空装置を必要としないため、安価に成膜することができるという点がある。酸化物材料の場合は、大気中(酸素を含む雰囲気中)での加熱処理を行うことができるために、上記の利点が活かせるが、酸化に弱い材料には適用しにくいという問題がある。本研究の場合のように、ペロブスカイト酸化物などの場合には、極めて簡便で安価な手法であるといえる。
【0029】
2つ目の手法は、スパッタ法によるもので、PCMO層12の所望の組成のターゲットを用意し、これをAr雰囲気、あるいは若干酸素を含んだAr雰囲気中で、スパッタし、PCMO層12を形成するものである。その際、基板温度を例えば600°Cから1000°C程度で作成することで、良好な抵抗変化型メモリの特性が得られる。
【0030】
さらに、図2の抵抗ヒステリシス特性について以下に説明する。
【0031】
図2において、電圧源15によりタングステン(W)にてなる上部電極14に印加する電圧を0Vから正方向にスキャンしている。図2から明らかなように、最初は低抵抗であるが、1Vを超えたところで、抵抗の変化が始まり(図2右側の下のカーブ31)、2Vまでスキャンしたところで、電圧を下げ始めると、抵抗が高い状態となっている。この状態で、0Vまで電圧を下げると、高抵抗状態が維持される。すなわち、例えば、この状態から再び正の電圧を印加しても、抵抗の高い方のカーブ(図2右側の上のカーブ32)上を変化するのみであり、低抵抗に遷移することはない。
【0032】
また、図2から明らかなように、0Vから、さらに負側に電圧を印加していくと、最初は高抵抗状態を維持する。すなわち、−1V付近までは、安定に高抵抗状態が維持されている。−1Vより正側で、電圧を0Vに向う方向に引き戻せば、高抵抗のカーブ(図2左側の上のカーブ33)に沿って元に戻るだけであり、低抵抗に遷移しない。言い換えると、−1Vより正側の電圧で、抵抗を読み出せば、高抵抗と言う状態を破壊することなく、状態を読み出すことができることになる。
【0033】
さらに、負側にいくと、−1.5V付近で、低抵抗状態に遷移する。ここで、電圧を0V側に引き戻すと、低抵抗のカーブに沿って変化する。高抵抗状態と同様に、0V状態で、この状態は安定であり、負側に電圧を印加しても、高抵抗に遷移することはない。また、この低抵抗状態は、1V程度の正電圧まで、安定であり、1Vを超えない限り、低抵抗のカーブ(図2右側の下のカーブ34)に沿って変化するので、低抵抗状態を破壊することなく読み出すことができる。従って、このデバイスの場合は、±1の範囲内であれば、抵抗の状態を破壊することなく、低抵抗と高抵抗のどちらの状態にいるのかを読み出すことができることになる。
【0034】
ここでは、±2Vの範囲で電圧をスキャンした例を示したが、当該電圧範囲を大きくしても、あるいは1.5V程度まで下げても、抵抗変化は得られる。電圧を大きくした方が、大きな抵抗変化率が得られる。すなわち、正方向に電圧を印加し、高抵抗状態に遷移させることを、書き込みと考えれば、書き込み電圧を高くする方が、大きな抵抗の比率が得られることになる。ただし、これを低抵抗状態に戻す、負の電圧(消去電圧に相当する)も若干大きくなることに注意を要する。
【0035】
また、図2は、正負で特性が非対称であるが、これは、高抵抗状態、低抵抗状態、ともに、非線形なI−V特性を示すためである。これは、PCMO層12が半導体的な性質を持つことに起因しており、ショットキー接合のようなモデルで説明できる。
【0036】
以上説明したように、本実施例によれば、下部電極11と上部電極14により挟設されるPCMO層12と、下部電極11との間において金属酸化物層13を形成することにより、従来技術に比較して高い再現性(本発明者の実験によれば、ほぼ100%の確率)で確実に抵抗のヒステリシス特性及びメモリ特性を発現させることができる抵抗変化型メモリを形成できる。
【0037】
図1に示す本実施例による構成では、PCMO層12と上部電極14との間に挟む金属酸化物層13の膜厚が重要である。この厚さは、おおむね、3nm〜30nm程度である。また、その作成方法としては、6A族金属(タングステン(W)、モリブデン(Mo)又はクロム(Cr))を真空蒸着やスパッタ法により堆積した後に酸化する手法、あるいは、6A金属を、酸素を含む雰囲気中でスパッタする方法、あるいは、6A金属の酸化物を真空蒸着やスパッタ法などで形成する方法などがある。
【0038】
ここで、上記実施例では、上部電極14として、タングステン(W)を用い、中間の酸化物としても、タングステン酸化物(WOx)を用いているが、本発明はこれに限らず、同金属を用いる必要は必ずしも無く、上部電極14は、他の6A族金属又は6A族ではない他の金属、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)又は銅(Cu)などでも良い。同じ金属材料を用いるメリットとしては、スパッタ法で作成する場合に、他の金属ターゲットを必要としない点、あるいは、6A金属酸化物を、酸素を含むプラズマで酸化する手法を用いると、雰囲気ガスをArなどの不活性ガスに換えるだけで、連続して上部電極14まで形成でき、工程を簡略化できる。
【0039】
以上の実施例において、素子動作上は電極の上下に特に意味はなく、入れ替えても同様の議論になる。従って、本実施例においては簡潔のために上部電極14に着目した記述としたが、それらは下部電極11に読み替えても有効なことは言うまでもない。また、電極は、上部電極14/PCMO層12/下部電極11の縦積みに限定されるものではなく、PCMO層12の片面(上面もしくは下面)に両電極11,14を設置してもよい。このように横型にすると素子面積が大きくなるデメリットがあるが、両電極ともPCMO層12の形成後に設置するため、電極材料の選択の自由度が広がるメリットがある。例えば、高価なPtを使う必要がなく、低コストなメモリが製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上詳述したように、本発明に係る抵抗変化型メモリとその製造方法によれば、PrCa1−xMnOにてなるPCMO層を下部電極と上部電極とにより挟設してなる抵抗変化型メモリにおいて、上記PCMO層と上記上部電極との間に金属酸化物層を挿入形成した。これにより、従来技術に比較して高い再現性で確実に抵抗のヒステリシス特性及びメモリ特性を発現させることができる抵抗変化型メモリとその製造方法を提供することができる。そして、特に、本発明は例えば集積化した大規模不揮発性メモリに応用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…誘電体基板、
11…下部電極、
12…PCMO抵抗変化層、
13…金属酸化物層、
14…上部電極、
15…電圧源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PrCa1−xMnOにてなるPCMO層を下部電極と上部電極とにより挟設してなる抵抗変化型メモリにおいて、
上記PCMO層と上記上部電極もしくは下部電極との間に金属酸化物層を挿入形成し、
上記金属酸化物は上記上部電極もしくは下部電極の金属の酸化物であり、
上記上部電極と下部電極の少なくとも一方はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)のうちのいずれかにてなり、
上記抵抗変化型メモリは、
上記上部電極と上記下部電極との間に所定の正の第1の直流電圧を印加することにより、所定の第1の抵抗値を有する第1の低抵抗状態となり、その後、上記正の第1の直流電圧よりも高い正の第2の直流電圧を印加することにより、上記第1の抵抗値より高い第2の抵抗値を有する第1の高抵抗状態となり、
上記上部電極と上記下部電極との間に所定の負の第3の直流電圧を印加することにより、所定の第3の抵抗値を有する第2の高抵抗状態となり、その後、上記負の第3の直流電圧よりも低い負の第4の直流電圧を印加することにより、上記第3の抵抗値より低い第4の抵抗値を有する第2の低抵抗状態となり、
上記抵抗変化型メモリは、正の直流電圧領域において、上記第1の低抵抗状態と上記第1の高抵抗状態の2値を有するとともに、負の直流電圧領域において、上記第2の高抵抗状態と上記第2の低抵抗状態の2値を有することにより、合計4値の情報を記憶することを特徴とする抵抗変化型メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58792(P2013−58792A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256096(P2012−256096)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2009−202483(P2009−202483)の分割
【原出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(396023993)株式会社半導体理工学研究センター (150)
【Fターム(参考)】