説明

抵抗変化電極構造

燃料電池装置の電極構造は電荷転送部材(112,212,612,712)を有する。電荷転送部材上に配置された導電性部材(605)は電荷転送部材上に配置された電流コレクタ(222,226)を含み、結合器は、電流結合を最適化するための、電荷転送部材を露出させ、非一様抵抗を有する、非一様切取りパターンの形態に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、燃料電池または光電池及び酸素セパレータ、触媒、センサ等のような電気化学装置に関し、特に、そのような電気化学装置のための(収集または分配を含む)電流結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(SOFC)は、正電極層と負電極層の間に挟み込まれた酸化物電解質からなる単セルにかけて気体燃料(例えば水素)を酸化剤(例えば酸素)と電気化学的に反応させることによって直流電気をつくる、エネルギー変換装置すなわち電力発生装置である。現行のSOFC技術の重要な特徴には、全固体構造、複燃料処理能力及び高温動作がある。これらの特徴のため、SOFCには、据置用途及び可搬用途のために開発中である、高性能、無害かつ高効率の電力源となる可能性がある。
【0003】
ほとんどの固体電気化学装置における主な損失は電極及び/または電極/電解質界面で生じることが知られている。濃度偏倚または活性偏倚から、あるいはこれらのいずれからも生じる、これらの損失の最小化がそのような装置の高効率動作に不可欠であることも認識されている。例えば、これらの損失の最小化が固体酸化物燃料電池において大電流及び高電力密度を得るための中心課題である。
【0004】
一般的な動作条件の下で、SOFC単セルの発生電圧は1Vより低い。したがって、実用のためには、単セルを電気的に直列に連結したスタックにして電圧を積み上げる。連結は、スタック内で1つのセルの負極を次のセルの正極に電気的に接続する、相互配線と称されるコンポーネントによって与えられる。通常のSOFCは約1000℃及び大気圧で動作する。
【0005】
SOFCシステムのコストは商業的に競合すると見なされる技術に対して未だに高すぎる。費用は主としてSOFCスタックの性能が劣ることによる。SOFCコスト低減プログラムの焦点は、電解質作成、電極微細構造、及び相互配線の構造と材料である。初めの2つの課題は対処されたが、相互配線の構造と材料は未だに改善する必要がある。
【0006】
薄く、気密な、低抵抗イットリア安定化ジルコニア電解質を作成するためのプロセス技術がいくつか開発されている。活性化抵抗が低い電極微細構造が広く知られており、利用されている。
【0007】
SOFC単セルの一例は、負極のニッケル/YSZとドープトクロム酸ランタン相互配線に接続されたストロンチウムドープマンガン酸ランタン(LSM)正極の間に挟み込まれた酸化物のイットリアドープジルコニア電解質またはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)電解質からなる三層セラミックである。代表的な、最新の単セルは、Sr0.2La0.8MnO(LSM)/8モル%イットリウム安定化ジルコニア(8YSZ)の多孔質複合正極、ニッケル/8YSZの多孔質複合負極及びYSZ電解質が基になっており、800℃で2W/cmをこえる電力密度を送り出す。
【0008】
相互配線の材料と構造には未だに改善が必要である。負極支持構造の相互配線は遷移金属が基になっており、電流を妨げる酸化物スケールが生じる。相互配線及び単セルの構造によっては電極から電流を効率的に集められないことが、最近認識されたばかりである。システム性能への電極における電流分布の役割及び効果は扱われたことがない。
【0009】
システム性能は電極内の電流分配損失によって完全に支配されることがある。実際上、単セルの抵抗効果は無視可能であり得る。
【0010】
負極支持電解質または正極支持電解質とは対照的に、コーニング社の固体酸化物燃料電池(SOFC)構造は、特許文献1に開示されているように、薄く、機械的に可撓性の電解質シートが基になっている。この電解質は電極に対する支持体としてはたらき、特許文献2に開示されているように、「電解質貫通」相互配線のためのバイアホールが穴開けされている。正極支持チューブまたは負極支持プレートなどの素子を搭載している個々の電解質の相互配線によって電圧が積み上げられる他のSOFC構造とは異なり、コーニング型構造では、1枚の電解質薄板上に配置された複数の単セルからの電圧を積み上げるために、相互配線が電解質と一体化されている。
【0011】
つまり、コーニング型構造は他の構造より高い電圧電力密度を送り出す潜在能力を有する。材料コストが低いだけでなく、電解質貫通相互配線を有する可撓性電解質構造は相互配線材料問題と電極への(電極から電流を集めるための)電流分配問題を同時に解決することができる。
【0012】
コストは市場性の最終的な決定要因であるが、いかなる構造においても性能はコストにリンクしている。燃料電池については一般に面積比抵抗(ASR)が良度指数として挙げられる。セル電圧対電流密度のグラフの絶対勾配がセルの面積比抵抗(Ω-cm)として定められる。
【0013】
材料特性、プロセス条件及び構造の形状寸法などの多くの要因がASRに寄与する。プロセスの効果を考慮しなければ、SOFCを構成するために用いられるほとんどの材料は既知である。ある構造の性能及びコストは予測可能であり、最適化できる。
【0014】
活性偏倚及び酸素イオン輸送に対する抵抗が単セルの内部抵抗への主要な寄与である。低内部抵抗セルの理論的作成及び基本的特徴は既知である。ある状況においては濃度偏倚が性能に強く影響することができるが、そのような効果は一般に、5A/cmをこえる電流密度のときあるいは燃料または酸化剤が不足している条件下を除き、無視できる。構造の次段階において、電流は正極から相互配線パッドに集められ、バイアを介して別の相互配線パッドに流れて、最後にコーニング型ストリップセルの負極を通して分配される。
【0015】
単セルは電極における電流の分配及び収集を容易にするように構成されるべきである。しかし、十分良く構成された単セルの高電流密度は、それでも、電流分配中に損なわれ得る。分配/収集損失は、電極が広すぎるか、薄すぎるかまたは導電度が不十分な場合に、過度になる。これは特に正極のLSMに対して当てはまる。LSMの導電度は負極のニッケルについての24,000S/cmに比較して100S/cmに過ぎない。20μm厚LSM正極についての、電力損失を最小限に抑えるための理論最適電極幅はほぼ1mmより狭い。現行では、そのような幅のストリップセル電極の作成は困難である。現在は、電流分配を容易にするために、約10μm厚の多孔質銀−パラジウム合金の高導電度(>10,000S/cm)層が正極上面に被着されている。電気導体が比較的平らであり、銀−パラジウム合金(例えば、70%銀−30%パラジウム)でつくられる、そのような燃料電池が特許文献2に説明されている。特許文献2に開示される銀−パラジウム平電気導体の使用はほとんどの用途において十分良く機能するが、いくつかの用途においては、燃料電池の耐久性を制限し、コスト要件を満たすことができない。銀は通常のSOFC動作温度において揮発性であり、可動である。
【0016】
1つの解決策は、金のようなより耐熱性の貴金属電流コレクタで銀を置き換えることであろう。キロワットあたりの電流コレクタの材料コストは、4000×ASR×p×d×tという式で推定され、セルのASRと関係付けることができる。ここで、pはドルで表したグラムあたりの電流コレクタ材料のコスト、dは密度、tは指定されたASRの達成に必要な厚さである。金の導電度は銀と同様であり、したがって金層も10μm厚であることが望ましいであろう。最大電力において約0.5W/cmの性能目標は0.5Ω-cmのASRに相当する。これだけで電流コレクタについての推定材料コストはキロワットあたり約200ドルになり、これは高すぎる。
【0017】
したがって、銀に依存せず、及び/または正極電流コレクタにおける貴金属の使用を最小限に抑える、製作可能な相互配線構造が望ましい。銀を排除する解決策は動作温度範囲も600〜800℃から600〜900℃まで広げる。これは、温度管理束縛条件が若干緩和され、高温でASRを低めることができるので、有利である。
【0018】
したがって、与えられた材料特性、コスト及び製作可能性の組合せの束縛条件の下で性能を最適化し(ASRを最小化し)、同時にスタックレベルで電力出力を最大化するという、様々なSOFC構造の選択肢が必要とされている。バイア及びバイア/電極コンタクトとともに単セルの構造を改善するような条件には、無銀、固定された単セルあたりの貴金属量、限定された単セルあたりの相互配線数、作成可能な電極幅、酸化物正極電流コレクタの使用及び整形バイア等がある。
【0019】
詳しくは、一般に、特に正極全体に電子を分配するために用いられる電流収集構造内で、銀を排除するSOFC構造には、
1) システムの現用寿命を延ばす、
2) 比電力がより高い場合に、より高温での動作を可能にする、及び
3) 動作中の温度管理の束縛条件を緩和する、
という利点がある。
【特許文献1】米国特許第5273837号明細書
【特許文献2】米国特許第6623881号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、燃料電池の耐久性を高めるが、費用効率が高い、特定の組成及び/または特定の形状寸法を有する導電性電流コレクタを利用する燃料電池が必要とされている。この要求及びその他の要求は本発明の燃料電池及び電気導体によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
低電圧大電流発電装置のための電極構造は電荷転送部材を有する。電流結合を最適化するために、一様ではない抵抗を有する導電部材が電荷転送部材上に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の詳細な説明を、添付図面とともに、参照することによって本発明のさらに完全な理解を得ることができる。
【0023】
図1〜10を参照すれば、本発明にしたがう燃料電池またはその他の電気化学変換器などの低電圧大電流発電装置に用いることができる導電部材のいくつかの異なる実施形態が開示されている。以下に説明される燃料電池は固体酸化物燃料電池(SOFC)であるが、SOFCだけでなくその他のタイプの燃料電池も本発明に用い得ることは当然である。したがって、本発明にしたがう燃料電池及び燃料電池を作成するための方法は限定された態様で解されるべきではない。さらに、一様ではないかまたは抵抗が変化する電流収集構造の正確なパターンは用途が異なれば変わり得るから、同じパターンが持続される必要はない。
【0024】
図6を参照すれば、低電圧大電流発電装置のための電極構造が示されている。本電極構造は電荷転送部材612を有する。電流収集を最適化するために、非一様抵抗を有する導電部材605が電荷転送部材612上に配置される。導電部材605は電荷転送部材612上に配置された電流コレクタ226を含む。バイアコンタクト5が電流コレクタ226と電荷転送部材612を相互接続する。バイアコンタクト5は、合せて電気導体104を形成するバイア充填材で埋められたバイアホールまたは開口114を有するバイアパッドまたはバイアタブ104を含む。電荷転送部材612は、燃料電池として用いるための可撓性電解質108の相対面上に配置された負極または正極とすることができるであろう、電極である。しかし、本発明の抵抗変化電極構造と同じ電極構造を用いることができるであろう他の用途も考えられる。
【0025】
電荷転送部材612は一般に、正極612における酸素の還元のような実電荷移行反応を実施するために電解質シートに密着している電極層である。上面に配置されたパターン付層は電流コレクタ/ディストリビュータである。電極612は短距離にかけて電流を流すためにいくらかの導電度をもつ必要があるが、そのような導電度は通常、コーニング型SOFC構造のための可撓性電解質108の場合における可撓性のようなその他のいくつかの要件を緩和せずに電極612の全面にわたって電流を流すには不十分である。したがって、電流収集機能を果たすためには導電度がより高い第2の材料を用いる必要がある。正極612については、空気中で安定でありしかも高導電度を有する材料の数は限られている。例えば、Au,Pd,Rh,Ir,白金及び銀はLSMより高い導電度を有するが、高価である。しかし、白金/銀または金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)のコストは、本発明の教示による負極への特別に整形された構造及び(Ni)ニッケルまたは銅(Cu)の使用によって低減される。
【0026】
図10にプロットされているデータは、少量の熱安定性がより高い白金で銀−パラジウム電流コレクタを置き換え得ることを示す。本例では、三種の電流収集/分配状況について、温度の関数として酸素励起試料の高周波抵抗またはオーミック抵抗を測定するために広く知られているインピーダンススペクトロスコピー手法を用いた。オーミック抵抗は電流収集/分配損失及び電解質内の酸素イオン輸送に対する抵抗を含む。〜8μm厚の90%Ag/10%Pd合金電極を両電極の全面にわたる電流結合のために用いたときに、最小抵抗が得られた。本発明に教示されるように、90%Ag/10%Pd電流コレクタの一方を最適化された形状をもつ〜1μm厚の白金金属電流コレクタで置き換えると、小さく、ささやかな、抵抗増加がおこる。残りの90%Ag/10%Pd電流コレクタを最適化されたプロファイルをもつ別の薄い白金電流コレクタで置き換えると、さらにささやかな抵抗増加がおこる。図10に見られるように、電流結合に最適化された形状をもつ、薄く、費用効率の高い量の、貴金属でつくられた電流コレクタは、2つの厚いAg/Pd電流結合器を用いる基準試料とほとんど同等に良好である。最も重要なことには、形状及び厚さが同じAg/Pdの使用により、白金の場合についてと同様のオーミック抵抗が得られるが、上限使用温度は低下し、寿命は短くなるであろう。電極幅10,バイア114の構造パラメータ、バイア配置12及び電流収集構造226の整形、プロファイル形成、異なる輸送特性をもつ材料の使用等の効果が、本発明によって教示される。
【0027】
電流収集構造226の厚さプロファイル形成は、図6に示されるように下の電荷転送部材612を露出させる切取り部をもつ一層だけの存在によるかまたは多層によるかまたはその他の抵抗変化によるかにかかわらず、
1) 貴金属の使用が必要であっても、量が最小限に抑えられ、同時に性能が最大化される、
2) 電解質108の単位面積あたりの、またはグリッドアレイの単セル610あたりの、バイアホール114の数、あるいは単セル上の引出し点の数が低減される、
3) 現行技術で容易に製作される電極幅10の使用が可能になる、
という特定の利点を有する。
【0028】
例えば、図7において、正方セル構造601及びやや狭い電極幅10と組み合された場合に、電極612上にテーパが付けられ/プロファイル形成された分配構造を有する、おそらくは少量の貴金属(Pt,Au,Pd)と混合された、コバルト酸ランタンストロンチウム(LSC)のような高導電度(1000S/cm)酸化物に基づく電流収集構造226は、低減されたASR及びAg/Pt/Pd合金電流コレクタをもつストリップセル構造より低いコストにおいて、等しいかまたは優れた性能を提供できる。
【0029】
すなわち、本発明は、1)正極または負極の上の厚さプロファイルが形成された電流収集構造の使用、2)ASRを最小限に抑える厚さプロファイルが形成された電流収集構造の使用、3)ASRを最小限に抑えるプロファイルを近似する厚さプロファイルが形成された電流収集構造の使用、及び4)連続バイアコンタクトまたは離散バイアコンタクトをともなう、プロファイルが形成された電流収集構造の使用を教示する。
【0030】
図1A及び1Bを参照すれば、1次元または列型に相互接続された単セル配置についての、電気導体104で相互に接続された電気化学セル102列を有する燃料電池100の上面図及び側断面図が示されている。厚さ変化電流コレクタ226の形態にある抵抗変化導電部材が図1Bの側断面図及び正極側を示している図1Aの上面図に示される。抵抗変化電流コレクタは正極上に配置されることが好ましい。しかし、同様の構造を、負極上にだけまたは負極上にも配置することができる。基本的に、燃料電池100は、改善されたセル設計フレキシビリティを提供し、同時に高強度、高い機械的結合性及び温度サイクル及び熱衝撃による熱劣化に対する高い耐性を維持する、薄くしなやかな電極/電解質構造を基にしている。本電極/電解質構造は、(例えば)イットリア(Y)安定化ジルコニア(ZrO)で作成することができる、薄く可撓性の固体酸化物電解質シート108を有する。電極/電解質構造はさらに、電解質シート108の相対面上に配置された負極電極110(例えば負極燃料電極110)及び正極電極112(例えば正極空気電極112)のアレイを有する。負極電極110は(例えば)ニッケル-ZrOサーメットでつくることができる。また、正極電極112は(例えば)ストロンチウムドープマンガン酸ランタン{(La0.8Sr0.2)MnO}でつくることができる。電極110及び112は電解質シート108上で連続層を形成せず、代りに、複数の離散領域すなわち電気化学セル102を定める。電気化学セル102は、電解質シート108のバイアホール114を貫通して延び、電極110と112に接する、1つまたはそれより多くの電気導体104(例えば、バイア充填材、セル相互配線)によって、直列、並列または直並列に、電気的に相互接続される。電気導体104は3つの領域104a,104b及び104cを有する。すなわち、電流は正極112から相互配線パッド領域104cに集められ、バイア領域104bを通って別の相互配線パッド領域104aに流れ、最後に負極110全体にわたって分配される。
【0031】
図2〜3を参照すれば、電気導体204によって相互に接続された電気化学セル202列を有する、別の燃料電池200の図が示されている。図2A及び2Bに見られるように、燃料電池200は、負極電極210のアレイ及び正電極212のアレイがその相対面上に配置された電解質シート208を有する、電極/電解質構造を基にしている。電極210及び212並びに電解質シート208は複数の電気化学セル202を定める。電気化学セル202は、電解質シート208のバイアホール214を通して延び、電極210と212と接する、1つまたはそれより多くの電気導体204(例えば、バイア充填材、セル相互配線)によって、直列、並列または直並列に、電気的に相互接続される。
【0032】
図1Bの電気導体104の領域分配の代りに、図2Bの電気導体204は複合電気導体であり、バイア充填材203及び2つのバイアパッド構造205a及び205bを含む。バイア充填材203は電解質シート208のバイアホール214の1つの内に配置されてバイアホール214を気密封止する。また、2つのバイアパッド構造205a及び205bは、バイアホール214の両側から延びるバイア充填材203の両端に取り付けられる。図示されるように、バイアパッド構造205aは負極電極210及びバイア充填材203の一端に接する。同様に、バイアパッド構造205bは正極電極212及びバイア充填材203の他端に接する。したがって、電流は正極212から相互配線パッド領域205bに集められ、バイア領域203を通って別の相互配線パッド205aに流れ、最後に負極210全体にわたって分配される。
【0033】
この実施形態の重要な態様は、バイアパッド構造205a及び205bが電解質シート208及びバイア充填材203にともなう酸化状態及び還元状態のいずれとも接していないことである。したがって、2つのバイアパッド構造205a及び205bは、バイア充填材料203をつくるために用いられる材料と比較して、コストが低く、改善された特性を有する、様々な材料でつくることができる。2つのバイアパッド構造205a及び205bを、図2A及び2Bに示されるような別形成部とはせず、電極210及び212の一体露出部とし得ることも当然である。
【0034】
図1及び2は、電気導体104及び204あるいはバイアパッド構造205a及び205bを個別素子として示す。個別導体104及び204を設けることにより、導体と電解質シート108及び208の間のCTE(熱膨張係数)不整合による応力が軽減される。別の実施形態において、電気導体104及び204と電極110,112,210及び212の間の電気的接続は、図1及び2に示されるような個別パッドではなく、連続材料配線で行うことができる。コスト要件及びバイアパッド材料に比較した電極材料の相対導電度に加えて、バイアパッド材料と電解質材料のCTE整合にも基づいて、適切な選択を行うことができる。
【0035】
図3を参照すれば、図2A及び2Bに示される燃料電池200内に必要に応じて組み込むことができるいくつかの追補コンポーネント層を側断面図が詳細に示している。燃料電池200を作成するために選ばれる材料に依存して、いくつかの追補コンポーネント層を付加することが有益であり得る。例えば、負極電極210には導電性電流コレクタ層222を必要に応じて含めることができる。同様に、正電極210には導電性電流コレクタ層226を含めることができる。
【0036】
連続バイアコンタクトをもつ従来のストリップセル構造の数学的解析により、2つの重要な結果が予測される。第1に、電極幅/バイアコンタクト離隔についての汎用構造パラメータが得られる。スタックレベルにおいて単セルに近い性能が実現されることが保証されるためには、図1に見られるような、電極幅/バイアコンタクト間隔10、すなわち離隔wが、式1:
【数1】

【0037】
より小さくなるべきである。ここで、RSCは単セルの固有性能、σはいかなる電流収集構造226も含む正極構造全体のみかけの導電度、tは正極構造212の厚さ、σはいかなる電流収集構造222も含む負極構造全体のみかけの導電度、tは負極構造210の厚さである。本発明の可撓性電解質燃料電池構造には、上記構造パラメータより小さな電極幅及びバイアコンタクト離隔10が好ましい。負極支持型デバイスについてはより厚い電解質を利用することができるが、コストの増大とともに、デバイスの電気的性能にも耐熱衝撃性にも、問題がおこり得る。
【0038】
第2の結果は、電極幅10、導電度、及び(電流収集構造222及び226を含む)厚さで表されるASRについての解析式である。この式は、式2:
【数2】

【0039】
の通りであり、ここでkは、
【数3】

【0040】
であり、kは、
【数4】

【0041】
である。
【0042】
1Ω-cmないしそれより小さいいずれかの固有単セル抵抗で始めて、式2で解かれると、ASR<0.99Ω-cmを与える、電極幅10、電極厚及び、同じかまたは異なる材料、多孔度等を有する、負極210または正極212上のいかなる電流収集構造222または226も含めた見かけの電極導電度が、好ましい。
【0043】
式2は、一様な物理特性及び電極幅に沿う寸法を仮定している。本発明の教示にしたがえば、電極の、例えば厚さまたは組成にプロファイルを形成することによって、ASRをさらに下げることができる。例えば、15μmAg合金層が正極212の上面上の電流コレクタ226として用いられる。Agだけでも所望のASRを達成するに適する高導電度を提供するが、高温においてAgは可動であり、昇華し易い。Ag電流コレクタの寿命は、貴金属との合金にしたときでさえ、問題である。合金内の貴金属のコストは受容できる。電流コレクタ226としてコバルト酸ランタンストロンチウム(LSC)などの導電度がより高い酸化物、バイアコンタクト5に対する電流コレクタ226内の貴金属の賢明な配置及び現在の値の1cmから〜5mmへの電極幅10のいくらかの縮小の組合せを用いることで銀を排除することができる。すなわち、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、及びLSCなどのランタン遷移金属酸化物ペロブスカイトを、また導電度が高いその他のいかなる材料も、本発明にしたがい、電極組成とは異なる電流コレクタ組成として用いることができる。
【0044】
電流コレクタの抵抗は、1次元的に変える代りに2次元的に変えることもできる。ASRは、固有抵抗が0.25Ω-cm,見かけの負極導電度が10,000S/cm,負極厚が15mmであって、厚さが15μmで導電度が10S/cmの第1の層212及び厚さが0.1μmで導電度が25,000S/cmの第2の層を電流コレクタとする正極を有する単セルについて、電極幅10すなわちwの関数として変化する。材料特性は、多孔質Ni/8YSZ負極、10μm厚8YSZ電解質、Au/Ag/Pd/Ptのような高導電度電流コレクタをもつLSM/8YSZ正極からなる実SOFCとほとんど同じになるように選んだ。抵抗は、一様厚電流コレクタ/正極構造について、0.1cmの電極幅に対する約0.2Ω-cmから4.0cmの電極幅に対する4.8Ω-cmまで増大する。しかし、本発明の教示にしたがえば、単位面積あたりの高導電度材料の総量が固定されているという束縛条件の下で電流コレクタ厚プロファイルが性能について最適化されれば、抵抗は最も広い4cmの電極幅についてほぼ5%(3.4Ω-cmに)下がると計算される。
【0045】
2次元の場合についての図4を参照すれば、(0.1〜4.0cmの範囲にある)様々な電極幅に対する、高さが変化する、すなわちy次元での、最適厚さプロファイルが示されている。電流コレクタ226の厚さが正極−バイアコンタクト5においてゼロに近づいていることに注目されたい。最適プロファイルの形成は困難であるかまたは費用がかかることがあり得る。そのような場合、最適プロファイルはブロックで近似することができる。材料コスト/体積束縛条件の下で、バイアコンタクト5に対する位置及び寸法はプロファイル形成によって最大の利益が実現されるように最適化することができる。負極210及び正極212上の電流収集構造222及び226の厚さプロファイル形成が可能である。したがって、最適厚さプロファイルの使用及び、低費用で、容易に作成される、近似形状、ブロックまたはその他の形状の、最適プロファイルへの使用が、本発明に教示される。
【0046】
図5を参照すれば、下層の正極面に張り出している、低地陸塊、半島、砂丘にかなり似ている、突出電流コレクタの透視すなわちトポロジー的な図が示されている。おそらくは少量の貴金属(Pt,Au,Pd)と混合された、コバルト酸ランタンストロンチウム(LSC)などの高導電度(1000S/cm)酸化物の連続ストリップ層を形成する代りに、一様厚構造のAg/Pt/Pd合金電流コレクタを有する高コストストリップセルより低コストで非一様分布を有するように、導電電流コレクタ層226にテーパを付けるかまたはプロファイルを形成することができる。
【0047】
特にパラメータ“α”より大きな電極離隔10のための、離散バイアコンタクト5の使用は、ASRを劇的に、またバイア114自体の特性とは独立に、高め得る。電流コレクタ222または226のプロファイル形成により、より広い電極構造の使用を可能にし、より広いバイアコンタクト間隔12も可能にするための手法が得られる。
【0048】
非一様抵抗変化正極は以下のようにして表される。離散バイア5を有する、電極コレクタ下の正極の電極幅が0.7cm,電極とのバイアパッドコンタクトの長さが1mm,バイアコンタクト5の中心間隔12が4mmの、一般的なストリップセル構成についての平電流コレクタ寸法から出発する。平電流コレクタ厚は初め0.45μmに設定し、10,000S/cmの導電度を選んだ。電流コレクタ厚プロファイルの最適化において定体積電流コレクタ材料を用いた。一様な平電流コレクタ及び非一様の最適化された電流コレクタについて材料特性を同じ、RSC=0.16Ω-cm、t=15μm,σ=15S/cm,t=15μm,σ=10S/cmとした。そのような平電流コレクタについてのASRは0.587Ω-cmであり、下の正極212を露出させるために取り除かれた領域を有する、最適化された電流コレクタ厚プロファイルについては37%小さくなって0.367Ω-cmである。電流コレクタ層厚を変化させると、最大電力出力は0.427W/cmから0.681W/cmに増加する。言い換えると、電流コレクタにプロファイルを形成するだけで、ほぼ50%の電力増加が得られる。この解析について、正極電流コレクタの特性はほとんど金と一致している。しかし、別の厚さの別の貴金属電流コレクタの使用も可能である。
【0049】
再び図6を参照すれば、正極上に重畳された電流コレクタの上面図が示されている。図5の透視図における、高さ(y次元)及び長さ(x次元)の2次元で、電流コレクタ層の抵抗を変化させる代りに、バイアコンタクト5に関して対称に、1次元だけで、電流コレクタを変化させることができる。最も細い線はフィラメント601と称され、1〜2μmのように、現行のスクリーン印刷プロセスで可能な限り細くすることができる。しかし、プロセスが向上するかまたは製作技術が進歩すれば、線をより細くすることで材料コストを低減することができる。パターンがフィラメントを有する場合、フィラメントは、拡散が電流コレクタ構造をそれほど変えることはない程度で、十分な大きさにつくられることが好ましい。
【0050】
SOFCについての、電極構造、電流収集構造及びバイア構造の作成に利用できる製作方法には、スクリーン印刷、テープキャスティング、スプレーコーティング、ブラシペインティング、マイクロペン、インクジェット形式、リソグラフィ等があり、これらは全てこれらの構造を作成するために個々にまたは様々に組み合せて用いることができよう。この製作技法リストは完全ではなく、他にもこれらの構造を作成するために用いることができる技法がある。
【0051】
電流コレクタ層222及び226に係わるその他のいくつかの重要な態様は、
・バイアパッド構造205a及び205bを有する電流コレクタ層222及び226は、バイアパッド構造205a及び205bが、バイア充填材料203のように、酸化状態及び還元状態のいずれとも直に接することはないから、改善された特性または向上した経済性を有する広範な代替材料でつくることができる;
・電気導体204は広範な材料の使用を可能にする構造を提供する。例えば、従来の銀合金電気導体を、ごく少量の高価な白金合金をバイア充填材料203として提供し、次いでバイアパッド構造205a及び205bを銀−パラジウムのようなそれほど高価ではない合金でつくることにより、白金を含有する貴金属合金で経済的に置き換えることができる;
・負極210側及び正極212側のバイアパッド構造205a及び205bには、様々な、形状寸法(例えば鐘形)、構造及び材料を選択することができる。例えば、可能な限り薄くしたバイアパッド構造205a及び205bは、望ましくない熱量蓄積を最小限に抑えるに役立ち得る;
ことである。
【0052】
燃料電池200の作成に用いることができる例示的な材料のリストは:
・バイア充填材料203:貴金属合金、サーメット。例えば、Au-Pt-Pdまたは少量のMgまたはSrドープLaCrOを含むAu-Pt-Pd;
・電解質シート208:イットリアドープジルコニア(YSZ),酸化ガドリニウムドープ酸化セリウム(GDC),ドープトガリウム酸ランタン{(MgOドープ)LaGaO},希土類ドープジルコニウム,希土類及びイットリアドープ酸化ビスマス,ドープトアルミン酸ランタン{(MgOドープ)LaAlO},及びチタン酸パイロクロア;
・負極バイアパッド構造205a:Ni/YSZサーメット,Ag合金,40体積%YSZを含む90%Ag-10%PdのようなAg合金サーメット;
・正極バイアパッド構造205b:SrドープLaMnO(LSM),LSM/YSZ,SrドープLaCoO(LSC),銀合金,銀サーメット,必要に応じて1層のLSMバリア層を有する貴金属合金及びサーメット;
である。
【0053】
40体積%3YSZを含む90%Ag-10%Pdサーメット電流コレクタ222及び226を隣接する電極210及び212の上面上に印刷した。次いで、電流コレクタ222及び226並びにバイアパッド構造205a及び205bを900℃で1時間共焼成した。得られた構造は、化学的に耐久性があり、耐熱性の、複合電解質/バイア薄板204及び208上に複数のセル202をもつ機能性固体酸化物燃料電池200を提供する。
【0054】
図1Bの電気導体104を分割して図2Bの離散領域にすることができるのと同じように、図3の電流コレクタ層222及び226もさらに分割して2次元的に相互接続された単セルのアレイとすることができる。
【0055】
図7A〜7Bを参照すれば、連続バイアコンタクトをもつ正方セル配置のような、様々な相互接続パターンを有する、相互接続された単セルの2次元アレイが示されている。しかし、本発明はいかなる特定の部類の電極、電流コレクタまたはセル相互配線材料にも限定されない。すなわち、白金、白金合金、銀またはその他の貴金属、ニッケルまたはニッケル合金のワイアまたはメッシュで一般に形成されるような構造を用いることができ、これらの材料あるいはストロンチウムドープクロム酸ランタンまたは耐熱金属サーメットのような材料の被膜またはパターン付層で形成されるような構造も用いることができる。これらの導電構造は電極層の、上面上に、下に、または側縁に沿って、設けられる電流コレクタとしてはたらくことができ、あるいは層間接続としてはたらくことができる。
【0056】
これらの燃料電池パケットに含めることができるその他の構成要素の例には、アレイ配列された負極及び/または正極と電気的に接触して設けられた低抵抗電流収集グリッドまたはその他の導電構造を含めることができる。これは、これがなければセルの内部抵抗を高めるであろう、電極内の電流分配損失を低減することによって内部抵抗を下げるためにはたらくことができる。
【0057】
広いイットリア−ジルコニア電解質シート708上に5つの5セル対角形に配列された5つの副セルをもつ、複セルパケットモジュールが図7Aに示されている。それぞれのセルの負極710はニッケルジルコニアサーメットで形成され、正極712はマンガン酸ランタンストロンチウムで形成される。それぞれの電極には、図7Bに見られ、図1Bの断面図の縦方向交差部で図解されるように、それぞれのモジュール上のセルを直列に接続する銀−パラジウム充填単バイアにその収集点で接続された単バイア(または必要に応じて複数バイアをもつ電気導体704')を有する電流収集銀−パラジウム合金グリッドすなわち電気導体704が重畳されている。
【0058】
例として図示されているような正方セル、またはさらに一般的には2次元的に相互接続された単セルは電極に、より高い効率で電流を収集し、分配する。等間隔バイアコンタクトの場合、電極の単位面積あたりのバイアコンタクト数が多く、電極上の任意の点からバイアコンタクトまでの平均距離が図1Aのストリップセルの場合より短い。連続バイアコンタクトをもつ正方セル構成のASRは、電極幅を含む他の設計パラメータが等しいストリップセルのASRより必ず小さい。あるいは、正方セル手法により、電極間隔をより広くしてもスプリットセル手法と同じASRが得られる。例えば、10cmの電極幅10に対して、RSC=0.15Ω-cm,t=t=10μm及びσ=σ=10,000S/cmの設計パラメータ及び材料特性を用いれば、ストリップセルの面積比抵抗は約5.6Ω-cmであるが、正方セルでは約2.3Ω-cmに下がる。したがって、本発明の教示により、正方セル構造について、従来の一様抵抗ストリップセルに対して許容できる電極幅より2倍大きな電極幅が、他は同じ、構造、材料及び単セル特性に対して可能になっている。
【0059】
あるいは、同じ電極幅に対して、一辺あたり1つのバイアコンタクトだけであっても、正方セルはより高い性能を有するであろう。したがって、ストリップセルを上回る正方セルの性能向上は有意義である。
【0060】
図4のストリップセルの場合におけるように、ASRを下げるため、高導電度を有する高価な貴金属のような電流収集材料の厚さにプロファイルを形成することができる。
【0061】
正方セル構成の性能上の利点の内のいくつかは連続バイアコンタクトの代りに離散バイアコンタクトを用いることで失われ得る。バイア−電極コンタクト長の短縮により分配または収集中に電流が流れなければならない平均長が長くなる。例えば、RSC=0.16Ω-cm及びRSC=0.5Ω-cmの単セルについて、他のパラメータは同じ場合に、それぞれのコンタクト長が1mmのバイアコンタクトを電極辺あたりに1つもつ10cmの電極幅に関し、連続バイアに比較してASRを計算すると、連続バイアコンタクトについてはそれぞれ約5Ω-cm及び約85Ω-cmのASRが得られ、離散バイアコンタクトについてはそれぞれ約6Ω-cm及び約100Ω-cmのASRが得られるであろう。計算に用いた他の特性は、t=15μm,σ=15S/cm,t=15μm,σ=10S/cmであり、正極電流コレクタの厚さを0.45μm,導電度を10,000S/cmとした。言い換えれば、ASRはバイアコンタクト間隔に依存する。グラフにすれば、ASRは電極幅が小さくなるほど下がることがわかり、単セルについては、ASRが小さくなるほど、単セル挙動から電流収集/分配効果によって支配される挙動への遷移が早くおこる。離散バイア−電極コンタクトについては、電極間隔が大きくなるにつれてASRが急速に大きくなる。スタックレベルでの性能へのバイアコンタクト間隔の効果は顕著である。
【0062】
電極辺あたりのバイアコンタクトが1つで、正極及び負極の輸送特性及び寸法が同じである状況については、図7に示されるように、バイアコンタクトの中点が電極辺の中点と合せられるべきである。しかし、正極の輸送特性は負極の輸送特性と異なるであろうし、図5のバイアコンタクト5に見られるように、最小ASRは中心を外れた位置で生じる。好ましくは、本発明の教示にしたがえば、電極幅に沿う最適なバイアコンタクトの位置は、RSCが約0.16Ω-cmと0.5のΩ-cm間の単セルについては約0.4cmより小さくすべきである。すなわち、ASRを下げるためにバイアコンタクトを不規則または非対称に配置でき、電極辺あたりのバイアの数を低減できることも、本発明による教示である。
【0063】
離散バイアで増大する抵抗をさらに補償するため、図6のストリップセルの場合におけるように、導電度が高い高価な貴金属のような電流収集材料の厚さにプロファイルを形成してASRを下げることができる。2つの離散バイアをもつ本例の正方セルにおいて、複数の層では複雑になるため図示されていない、任意の数の層を厚さプロファイルを最適化するために正方セル/離散バイア電流コレクタに対して用いた。正極及び負極の面内で、また電解質にわたって、電位が変化するから、正極上の金のような高導電度電流コレクタの0.45μmの一様な厚さ分布を任意の数の厚さが異なる層により厚さプロファイルが最適化された等量の電流コレクタ材料と対比するために、正極構造の性能のコンピュータシミュレーションモデル化を行った。関連する寸法及び輸送特性は、単セルASR=0.16Ω-cm,電極幅=5mm,負極厚=15μm,負極導電度=10,000S/cm,正極厚=15μm,正極導電度=10S/cm及び正極電流コレクタ導電度=10,000S/cmとした。電流コレクタにプロファイルを形成することにより、他の特性は同等のままでASRが有効に下がり、ある条件の下で電力密度が劇的に増大することがわかった。電流分配及び収集を考慮した、そのような平構造のASRは0.311Ω-cmであり、〜0.8W/cmの最大電力に相当した。プロファイルが形成された構造のASRは24%下がって0.235Ω-cmであり、最大電力は33%上がって1.06W/cmであった。そのような多重層は、より少数の層で累積厚さを提供することで製造をより容易にするために、より少数の層で近似することができる。
【0064】
図8を参照すれば、71×71電流収集グリッドに用いることができる正極構造を形成するために正極を覆って配置された、電流コレクタのための離散バイアをもつ7mm×7mm正方セルの厚さプロファイルの2段階最適化が示されている。体積一定の束縛条件の下での電流コレクタの形状についての第1の最適化により、図5に見られるような、連続的に変化する厚さが得られる。厚さが連続的に変化する電流コレクタは可能な最小の抵抗を与えることができるが、多重層で作成することは極めて困難である。被膜を施すための手法では厚さは一般に一様になる。これを考慮して、それぞれが固定された厚さをもつ任意の数の層を組み合せて連続的に変化するプロファイルの形状を近似することによって最適化を行えるように、最適化を調整した。図8において、層501及び層502はいずれもそれぞれが同じ厚さの電流コレクタ材料である。第2の電流収集層502は必ず第1の電流収集層501上に配置され、よって総電流コレクタ厚はどの場所でも被覆された第1の層501の厚さ及び第2の層502の厚さの和である。整形された電流コレクタの利点のほとんどは1つの層だけで得られることがわかる。単層は、バイアコンタクト5から放射状に広がる、ひび割れ、珊瑚、火炎の形状またはその他の突出し形状の、突出部を有する。
【0065】
正極上の金のような高導電度電流コレクタ材料の一様分布を、電流コレクタ材料を等量にして、厚さを変えた複数の層による最適厚さプロファイルと、特性を同じ:RSC=0.6Ω-cm,t=10μm,σ=10,000S/cm,t=20μm,σ=20S/cm,tcc=0.4μm,σcc=30,000S/cmにして、比較した。そのような平構造のASRは0.761Ω-cmであった。それぞれの層の最適化された厚さは0.63μmであり、電極面の50%だけが電流コレクタ材料で覆われることになった。電流コレクタにプロファイルを形成することにより、他の特性は同じにしてASRを有効に下げられることがわかった。プロファイル化構造のASRは8%下がって0.700Ω-cmになった。
【0066】
図9を参照すれば、図7Aの正方セルパターンの代りに、弓形セルグリッドアレイパターンが示されている。別の見方をすれば、円形、卵形または楕円形のセルは、円形または楕円形による6セル構成からの六角形の無限線列置換である。六角セルは、電極辺間の角度が60°であり、六角形を形成するために電極材料がいくらか除去されたダイアモンド形セルである。ダイアモンド形セルは、正方セルに電極辺間の角度を90°から異ならせる改変を施すことから得られる。電極辺間の角度が90°に等しい場合、正方形セルに電極辺長をもはや等しくないように改変を施すことで矩形セルが得られる。
【0067】
電流収集構造の最適化のためのモデル化作業及び手法並びに本発明の教示は、離散バイアコンタクト及び連続バイアコンタクトのいずれとも組み合せられた、そのようなセルパターン及びその他の2次元アレイの全てに対して同等に適用できる。
【0068】
電気導体104は、電流収集の最大化のために基板の、この場合は電解質の、露出部分に二次電流コレクタのそれぞれを接続するための、一次電流収集/分配構造から発する複数の電流収集メッシュまたは電流分配メッシュを形成する。
【0069】
それぞれの燃料電池パケット内で、2つまたはそれより多くの複数セルシートデバイスを直列に接続するために、ワイア、リボン、フェルトまたはメッシュの形態のNi金属を用いることができる。それぞれのシートデバイスからの1つより多くの電力引出し点を、それぞれの引出しを通る電流を低減し、電流がセルからリード接続まで流れなければならない距離を短縮するために、用い得ることも利点である。低電流においては、材料費及び熱応力を制限するために引出し及びリードの断面積を小さくすることができる。パケット端にではなくパケットの縁に沿って電力引出しを配置することもチャンバの吸入開口及び排気開口におけるガス流途絶の回避に役立つが、電極の形状寸法に依存して、この配置ではセル電極の長軸を燃料流に平行にすることができる。パケット封止に続いて、(ガス供給管に隣接する)前端正極に、また後端負極に接続されたバイアに、銀メッシュ電極リードが複数の点において取り付けられる。
【0070】
本発明の教示は、貴金属のような材料のコストを低減するため及び性能を最大化するための、電流コレクタの厚さプロファイルの最適化を説明した。本発明の上述した実施形態は1枚の電解質シート上に電極アレイを有するSOFC構造における改善されたバイア相互接続に関しているが、本発明と同じバイア充填合金及び同様の構造を他のSOFC構造にも有益に適用できることは当然である。例えば、双極性相互接続プレートを有するプレーナ型燃料電池に、上述した電気導体の実施形態のいずれか1つを用いることができる。特に、プレーナ型燃料電池は、セパレータプレートにバイアホールを設け、バイアホールを頑丈なPt合金バイア充填材料のような導電性金属またはサーメットによって埋めることで容易になった相互接続及び本明細書に開示されるコンタクト構造を有することができる。本発明の電気導体を用いることによって性能を高めることができるようなプレーナ型燃料電池プレートの例は、本明細書に参照として含まれる、国際公開第03/007403号パンフレットに説明されている。
【0071】
電気的観点からは、電解質シートと接続する電極、電流コレクタまたはセル相互配線の材料になされるいかなることも、これらのサブパーツのいずれにも等価になされ得る。例えば、活性表面を大きくするかまたは電流長を短縮するために電解質シートの表面を非一様または多孔性に(ダイアモンド形または小胞形のくぼみが付けられたグリッドに)されるかあるいはバイアが変更されるならば、抵抗路長を最短化して電流密度を最大化するために電極厚も小さくされるべきである。本発明のいくつかの実施形態を添付図面に示し、上記の詳細な説明に述べたが、本発明が開示された実施形態に限定されず、添付される特許請求の範囲に述べられ、定められるような本発明の精神を逸脱することなく、数多くの再構成、改変及び置換ができることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1A】本発明の教示にしたがう抵抗変化導電部材によって相互に接続された電気化学セル列を有する抵抗変化燃料電池の上面図を示す
【図1B】本発明の教示にしたがう抵抗変化導電部材によって相互に接続された電気化学セル列を有する抵抗変化燃料電池の側断面図を示す
【図2A】本発明にしたがう厚さが変わる抵抗変化導電部材によって相互に接続された電気化学セル列を有する燃料電池の上面図を示す
【図2B】本発明にしたがう厚さが変わる抵抗変化導電部材によって相互に接続された電気化学セル列を有する燃料電池の側断面図を示す
【図3】図2A及び2Bに示される燃料電池内に組み込むことができるいくつかの追補コンポーネント層を詳細に示す側断面図である
【図4A】本発明の教示にしたがう、様々な電極幅(cm)に対する、バイアコンタクトからの距離(cm)の関数として変化する正極厚プロファイル(μm)のグラフである
【図4B】本発明の教示にしたがう、様々な電極幅(cm)に対する、バイアコンタクトからの距離(cm)の関数として変化する正極厚プロファイル(μm)のグラフである
【図5】本発明の教示にしたがう、正極構造の透視図である
【図6】本発明の教示にしたがう、電極構造の上面図である
【図7A】本発明の教示にしたがう、抵抗変化導電部材によって相互に接続されて2次元アレイにされた電気化学セル列を有する抵抗変化燃料電池の上面図を示す
【図7B】本発明の教示にしたがう、抵抗変化導電部材によって相互に接続されて2次元アレイにされた電気化学セル列を有する抵抗変化燃料電池の側断面図を示す
【図8】本発明の教示にしたがう、形状寸法及び組成を強化した抵抗変化電流コレクタによって相互に接続された電気化学セル列を有する燃料電池の上面図を示す
【図9】本発明の教示にしたがう、形状寸法及び組成を強化した抵抗変化導電部材によって相互に接続されて直交バイアアレイにされた電気化学セル列を有する燃料電池の上面図を示す
【図10】本発明の教示にしたがう、抵抗比較のグラフを示す
【符号の説明】
【0073】
5 バイアコンタクト
100 燃料電池
104 電気導体
108 電解質シート
112,212,612,712 電荷転送部材
222,226 電流コレクタ
605 導電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置の電極構造において、前記電極構造が、
電荷転送部材(112,212,612,712)、及び
前記電荷転送部材上に配置された導電部材(605)であって、前記電荷転送部材上に配置された電流コレクタ(222,226)を含む、導電部材、
を有し、
前記電流コレクタが、電流結合を最適化するために、前記電荷転送部材を露出させる非一様切取りパターンの形態に構成される、
ことを特徴とする電極構造。
【請求項2】
前記導電部材が第1のセルの前記電流コレクタを第2のセルに相互接続するためのバイアコンタクト(5)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
前記電流コレクタの厚さが一様ではないことを特徴とする請求項1または2に記載の電極構造。
【請求項4】
前記電荷転送部材がストロンチウムドープマンガン酸ランタンを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電極構造。
【請求項5】
前記電流コレクタが、白金、銀、パラジウム、金、ロジウム、ニッケル、銅及びイリジウムからなる群から選ばれる組成を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電極構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−509530(P2008−509530A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525002(P2007−525002)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/027785
【国際公開番号】WO2006/017677
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】