説明

抵抗率測定方法

【課題】測定対象に応じて適切な測定条件で抵抗率測定を行うこと。
【解決手段】4探針抵抗率測定装置により試料の電気抵抗を測定する抵抗率測定方法であって、前記試料における複数の測定ポイント毎に印加電流を供給して電圧値を測定し、前記測定した電圧値が前回の測定ポイントの電圧値の所定範囲を超えると判定した場合に、前記印加電流の電流値を再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、4探針抵抗率測定により試料の抵抗率を測定する抵抗率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの抵抗率測定装置は、ウェーハの抵抗率、ウェーハ表面に形成したエピタキシャル成長膜の抵抗率、及び表面から不純物を拡散又は注入した場合の拡散層又は注入層のシート抵抗及び表面に生成した金属膜のシート抵抗などを測定するものである。抵抗率測定装置により測定された結果は、各半導体製造装置のプロセス条件へフィードバックされ、半導体デバイスの品質を均一に保つための重要な指標として用いられる。
【0003】
特許文献1には、4探針抵抗率測定装置において試料の測定に使用する電流値の決定方法についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−38699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、抵抗率測定装置の測定対象にしている半導体ウェーハには、各種の表面材質のものがある。例えば、半導体ウェーハの面内抵抗分布が不均一で急激に抵抗値が変化するような場合には、測定中に電圧レンジエラーと判定され抵抗値が表示されないという問題がある。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、測定対象に応じて適切な測定条件で抵抗率測定を行う抵抗率測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様は、4探針抵抗率測定装置により試料の電気抵抗を測定する抵抗率測定方法であって、前記試料における複数の測定ポイント毎に印加電流を供給して電圧値を測定し、前記測定した電圧値が前回の測定ポイントの電圧値の所定範囲を超えると判定した場合に、前記印加電流の電流値を再設定するものである。
【発明の効果】
【0008】
すなわちこの発明によれば、測定対象に応じて適切な測定条件で抵抗率を測定できる抵抗率測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る4探針抵抗率測定装置の構成例を示す図。
【図2】抵抗率測定回路の概略図。
【図3】不均一な面内抵抗の試料を想定した場合の測定例を示す図。
【図4】本実施形態に係る電流決定処理を示すフローチャート。
【図5】測定開始時の電流決定処理を示すフローチャート。
【図6】条件設定画面の例を示す図。
【図7】電流再設定時の電流決定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係る実施形態について説明する。
(構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る4探針抵抗率測定装置の構成例を示す図である。4探針抵抗率測定装置10は、各部に接続され全体の動作を制御する制御部11と、半導体ウェーハ等の試料Wを載置するステージ15と、試料Wを測定するために試料に測定電流を供給して試料の電圧を測定する4探針プローブ14を有している。さらに4探針抵抗率測定装置10は、制御部11に接続され4探針プローブ14に定電流を供給する定電流印加回路12と、制御部11に接続され4探針プローブ14から測定電圧を受ける電圧測定回路13と、ユーザの操作に応じて操作信号を制御部11に供給する操作部17と、制御部11が測定した測定結果や操作情報を画面に表示する表示部16を有している。
【0011】
このような構成をもつ4探針抵抗率測定装置10の測定対象にしている半導体ウェーハには各種の表面材質のものがある。これらの半導体ウェーハの抵抗率を測定するには、JIS H 0602「シリコン単結晶及びシリコンウェーハの4探針法による抵抗率測定方法」の規格において、「0.075Ω・cm以下の低抵抗率試料の場合は、発熱を避けるため印加電流の上限を100mAとし、また2000Ω・cm以上の高抵抗率の場合は、中探針の電位差が10mV以下になるような電流を使用することが望ましい。」と推奨されている。つまり、第1に10mV以下になる電流を使用すること、第2に印加電流は最大100mAを上限とすることの2点の条件で抵抗率を測定する必要がある。
【0012】
図2に、4探針抵抗率測定装置10の抵抗率測定回路の概略図を示す。定電流印加回路12は、4探針プローブ14を介して試料Wに与える定電流の電流レンジを1μA,10μA,100μA,1mA,10mA,100mAに切り替え可能な電流レンジ切替部121を有する。電圧測定回路13は、4探針プローブ14を介して試料Wに与える電圧の電圧レンジを2mV,20mV,200mV,2Vに切り替え可能な電圧レンジ切替部131を有する。4探針抵抗率測定装置10は、制御部11により定電流印加回路12及び電圧測定回路13を制御し、例えば、Auto3mV,Auto10mV,Auto30mVの電圧レンジを使用して抵抗率を測定する。Auto3mV,Auto10mV,Auto30mVによる測定の場合は、測定を始める前に定電流印加回路12の電流決定処理が必要である。
【0013】
この電流決定処理は、最適電流を決めるために電流値を何回か変更して印加する。例えば、Auto10mVの電流追従モードでは、測定電圧が10mVになるように、1μAの電流から印加していき、10mVに達するように電流を調整して、オームの法則から適切な電流値を決定する。そして、測定実行前に決定した電流を印加しオームの法則V=I*R及び各種補正係数から抵抗率を求める。
【0014】
ここで、測定対象の試料Wは、図3(a)に示すように面内抵抗分布が不均一なものを想定する。そして、面1(400Ω/sqを想定)、面2(1000Ω/sqを想定)、面3(400Ω/sqを想定)にわたる複数の測定ポイントについて抵抗率を測定するものとする。
【0015】
このような試料Wを測定する場合に、例えば、測定中に電圧レンジをシフトする方法が考えられる。電圧レンジ判定処理では、選択した電圧測定回路の電圧レンジで測定可能領域を予め設定し、測定した電圧値がその範囲内であることを判定基準とする。電圧レンジ20mVを選択するときは、アンダーレンジ領域1.3mV以下、オーバーレンジ領域23mV以上であり、電圧レンジ200mVを選択するときは、アンダーレンジ領域23mV以下、オーバーレンジ領域230mV以上であるものとする。印加電流は、0.000113Aとする。
【0016】
例えば、電圧レンジ20mVを選択して測定した場合において、面1の測定値が0.01V、面2の測定値が0.025Vとなった場合、オーバーレンジと判定され、電圧レンジを200mVに変更して再測定する。再測定結果が0.025Vとなり、電圧レンジ範囲内であり、面2の測定は可能である。面3の測定値は、0.01Vになり、電圧レンジ200mVのアンダーレンジと判定し、電圧レンジエラーと判定される。つまり、測定中に電圧レンジをシフトする方法では、面内抵抗が均一な状態であれば電圧レンジエラーになることはないが、面内抵抗が不均一で急激に抵抗値が変化するような場合は、電圧レンジエラーと判定され抵抗値が表示されない。
【0017】
この問題を解決するために、本実施形態では、測定した電圧値が1つ前の測定ポイントの電圧値の所定範囲を超えた場合に、印加電流を再設定して測定することで電圧レンジエラーを回避するようにする。以下、本実施形態に係る電流決定処理の詳細について説明する。
【0018】
図4は、本実施形態に係る電流決定処理を示すフローチャートである。
[ステップS1a:測定開始時の電流決定処理]
制御部11は、測定開始時に定電流印加回路12の印加電流の初期電流値を決定する(ステップS1a)。ここでは、Auto10mVの電流決定シーケンスを実施するものとする。図5は、測定開始時の電流決定処理を示すフローチャートである。
【0019】
制御部11は、電圧測定回路13の電圧レンジ切替部131において電圧レンジ20mVを選択し(ステップS1b)、定電流印加回路12の1回目の印加電流を1μAに決定する(ステップS2b)。印加電流は、試料Wにダメージを与えないように最小電流1μAから上げていくように調整する。制御部11は、定電流印加回路12の電流レンジ切替部121において電流レンジを選択する(ステップS3b)。印加電流1μAの場合は、電流レンジ10μAが選択される。上記測定条件の下で、制御部11は、定電流印加回路12から4探針プローブ14に印加電流を供給して、試料Wの電圧値の測定を開始する(ステップS4b)。
【0020】
制御部11は、電圧測定回路13により4探針プローブ14から受ける電圧値を測定し(ステップS5b)、測定結果が目標電圧値である10mVと判定できない場合は、オームの法則V=I*Rから抵抗Rを算出し、目標電圧値10mVになるように印加電流の電流値I=0.01/Rを算出する。制御部11は、測定結果が目標電圧値10mVと判定できるまでステップS3b〜S5bの処理を繰り返し、電流値を決定する。なお、ステップS5bで所定の回数測定を行っても10mVと判定できない場合は、ステップS9bに移行して電圧レンジ決定エラーと判定する。
【0021】
ステップS5bで電流値が決定すると、制御部11は、決定した電流値で定電流印加回路12から4探針プローブ14に印加電流を供給して、試料Wの電圧値の測定を開始する(ステップS6b)。制御部11は、電圧測定回路13により4探針プローブ14から受ける電圧値を測定し(ステップS7b)、測定結果が10mVと判定した回数がn回連続するまで繰り返す。所定回数、測定結果が10mVと判定できた場合は、Auto10mVの印加電流の初期電流値を決定する(ステップS8b)。ステップS7bにおいて電流決定終了と判断するのは、例えば、測定電圧が7mV〜13mV(70%〜130%)の範囲に入った回数が4回以上続き、かつ、最後は9.8mV〜10.2mV(98%〜102%)の範囲に入った時とする。
【0022】
[ステップS2a:電圧値を測定]
制御部11は、試料Wの各測定ポイントについて、上記ステップS1aで決定した初期電流値の印加電流を定電流印加回路12から4探針プローブ14に供給して、電圧測定回路13により試料Wの電圧値を測定する(ステップS2a)。
【0023】
[ステップS3a:電流再設定判定]
制御部11は、ステップS2aで測定した電圧値が前回の測定ポイントの測定値の所定範囲(±XX%)内であるか否かを判定する(ステップS3a)。測定した電圧値が所定範囲内である場合には、ステップS4aに移行し、測定した電圧値が所定範囲を超える場合には、ステップS5aに移行し、測定中の電流再決定処理を行う。電流再設定判定処理により、測定した電圧値が1つ前の測定ポイントの電圧値の一定範囲を超えた時に印加電流を再決定し、再決定後の印加電流で測定を継続するか、第1点目の測定ポイントに戻って再測定するかを選択できるようにすれば測定中の電圧レンジエラーは回避することができる。
【0024】
図6に条件設定画面の例を示す。電流再設定判定基準及び再決定後の印加電流で測定を継続するか、第1点目の測定ポイントに戻って測定するかを、予め測定パラメータとして登録しておき自由に変更できるようにしておく。「電流自動変更」で“有り”が選択された場合に、「電流再決定変動幅」及び「再測定動作」を設定することが可能となる。「電流再決定変動幅」は、測定結果の電圧値の変動幅が±XX%を超えたら、その測定ポイントで再度電流決定シーケンス処理を行い、印加電流を決定する。「再測定動作」では、新たに決定された電流で測定を継続するか(継続測定)、第1点目の測定ポイントに戻り測定を継続するか(第1点目から測定)を設定する。測定結果ファイルには、各測定ポイントの印加電流と測定した電圧値が出力される。
【0025】
[ステップS4a:抵抗率算出、測定値表示]
上記ステップS3aで測定した電圧値が前回の測定ポイントの測定値の所定範囲内と判定された場合には、制御部11は、測定結果からオームの法則V=I*R及び各種補正係数に基づいて抵抗率Rを算出し、抵抗率を表示部16に測定値を表示する(ステップS4a)。
【0026】
[ステップS5a:測定中の電流再決定処理]
一方、上記ステップS3aで測定した電圧値が前回の測定ポイントの測定値の所定範囲を超えると判定された場合には、制御部11は、測定中の電流再決定処理のシーケンスを実施する。図7は、電流再設定時の電流決定処理を示すフローチャートである。ここでは図6(b)の条件設定画面において、「電流自動変更」で“有り”が選択され、「電流再決定変動幅」として“90%”、「再測定動作」として“継続測定”が予め設定されているものとする。
【0027】
制御部11は、電圧測定回路13の電圧レンジ切替部131において電圧レンジ20mVを選択し(ステップS1c)、電流再設定と判断した時の電圧値から抵抗値を推測し、1回目の印加電流の電流値を決定する(ステップS2c)。測定した電圧値をV1、測定開始時の電流決定値をI1とすると、抵抗値R1は、R1=V1/I1から求められる。1回目の印加電流の電流値Iは、I=0.01/R1から算出することができる。
【0028】
制御部11は、定電流印加回路12の電流レンジ切替部121において電流レンジを選択する(ステップS3c)。上記測定条件の下で、制御部11は、定電流印加回路12から4探針プローブ14に印加電流を供給して、試料Wの電圧値の測定を開始する(ステップS4c)。
【0029】
制御部11は、電圧測定回路13により4探針プローブ14から受ける電圧値を測定し(ステップS5c)、測定結果が目標電圧値である10mVと判定できない場合は、オームの法則V=I*Rから抵抗Rを算出し、目標電圧値10mVになるように印加電流の電流値I=0.01/Rを算出する。制御部11は、測定結果が目標電圧値10mVと判定できるまでステップS3c〜S5cの処理を繰り返し、電流値を決定する。なお、ステップS5cで所定の回数測定を行っても10mVと判定できない場合は、ステップS9cに移行して電圧レンジエラーと判定する。
【0030】
ステップS5cで電流値が決定すると、制御部11は、決定した電流値で定電流印加回路12から4探針プローブ14に印加電流を供給して、試料Wの電圧値の測定を開始する(ステップS6c)。制御部11は、電圧測定回路13により4探針プローブ14から受ける電圧値を測定し(ステップS7c)、測定結果が10mVと判定した回数がn回連続するまで繰り返す。所定回数、測定結果が10mVと判定できた場合は、Auto10mVの印加電流の初期電流値を決定する(ステップS8c)。ステップS7cにおいて電流決定終了と判断するのは、例えば、測定電圧が7mV〜13mV(70%〜130%)の範囲に入った回数が4回以上続き、かつ、最後は9.8mV〜10.2mV(98%〜102%)の範囲に入った時とする。
【0031】
このステップS5aの測定中の電流再決定処理は、ステップS1aの測定開始時の電流決定処理に示す第1点目に最小電流1μAを流す方式と比較して、再設定と判断した時の1回目に印加する電流値は、電圧測定回路13の能力的に測定可能領域の電流再設定と判断した電圧から抵抗値を推測するため、推測した抵抗値は概ね真値に近い値であり、測定開始時の電流決定処理より早く電流値を決定することができる。
【0032】
図3(b)に、測定中に印加電流を再設定する方法を適用した例を示す。電流再決定変動幅は、測定した電圧値が1つ前の測定ポイントの電圧値に対して90%以上変化した時に印加電流を再設定する。測定開始時の印加電流を0.000113Aとし、電圧レンジは20mVを選択する。
【0033】
面1の測定値は0.01Vになり、面2の測定値は0.025Vになると、前回の測定ポイントの電圧値(0.01V)から250%変化しており電流再決定処理を行う。再設定後の印加電流を0.000045Aに変更することにより面2の測定値は0.01Vとなり、面2の測定は可能になる。さらに面3を測定すると0.004Vになり前回の測定ポイントの電圧値(0.01V)から250%変化しており電流再決定処理を行う。再設定後の印加電流は、0.000113Aに変更することにより面3の測定値は0.01Vとなり、面3内の測定は可能になる。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、半導体ウェーハの不均一な膜の抵抗率の測定、今後ウェーハの大口径化(450mm)が進むことに伴うまだら模様の膜の抵抗率の測定、及び1枚のウェーハに各種の条件で成膜した抵抗率の測定等を一度で測定可能になり、ウェーハの有効利用とスループットの向上を実現することができる。
【0035】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…4探針抵抗率測定装置、11…制御部、12…定電流印加回路、13…電圧測定回路、14…4探針プローブ、15…ステージ、16…表示部、17…操作部、W…ウェーハ、121…電流レンジ切替部、131…電圧レンジ切替部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4探針抵抗率測定装置により試料の電気抵抗を測定する抵抗率測定方法であって、
前記試料における複数の測定ポイント毎に印加電流を供給して電圧値を測定し、
前記測定した電圧値が前回の測定ポイントの電圧値の所定範囲を超えると判定した場合に、前記印加電流の電流値を再設定することを特徴とする抵抗率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253147(P2012−253147A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123613(P2011−123613)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000166650)株式会社日立国際電気エンジニアリング (100)
【Fターム(参考)】