説明

押ボタンスイッチ

【課題】 クリックアクションと共にクリック音を発生させることのできる押ボタンスイッチを提供する。
【解決手段】 プランジャ2の下降時にねじりコイルバネ4の折曲部がスイッチ本体内側側面又はプランジャ2のどちらか一方に配設した長溝の端部と衝突し、クリック音を発生する。また、プランジャ2の上昇時にもねじりコイルバネ4の折曲部がスイッチ本体内側側面又はプランジャのどちらか一方に配設した長溝の端部と衝突し、クリック音を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ボタンを上下動して電路の切換えを行う押ボタンスイッチに係り、弾性部材端部に掛かる荷重を巧みに利用し、クリックアクションと共にクリック音を発生させ、操作フィーリングを高めた押ボタンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の押ボタンスイッチの断面図である。
【0003】
この図に示すように、従来の押ボタンスイッチは、スイッチ本体101の内側面(図示なし)とプランジャ102の側面に弾性部材103を配設し、その弾性部材103の両端を外方へ略直角に折曲させ、さらに回転自在に係合させ、滑らかな操作感を得るようにしていた。なお、図6において、104は押ボタン、105はカバー、106は復帰コイルバネである。
【特許文献1】特願2003−189182号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように構成されている従来の押ボタンスイッチは、クリックアクションを行っても、クリック音は発生しないため、そのクリックアクションが認識しづらいといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するため、クリックアクションと共にクリック音を発生させることのできる押ボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕押ボタンスイッチにおいて、接触機構部を配備したスイッチ本体と上下動するプランジャとこのプランジャを上方に復帰させるコイルバネから構成され、前記スイッチ本体の内側面と前記プランジャの側面間に回動自在に弾性部材の両端部を係合させ、前記スイッチ本体側を第一係合部、前記プランジャ側を第二係合部とし、前記プランジャの上昇時には前記第一係合部の上方に前記第二係合部が位置し、前記プランジャの下降時には前記第一係合部の下方に前記第二係合部が位置するように前記弾性部材を配設するとともに、この弾性部材の両端部が係合する前記第一係合部のスイッチ本体又は前記第二係合部のプランジャのどちらかの一方に長溝を形成したことを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の押ボタンスイッチにおいて、前記弾性部材は両端部が外方へ略直角に折曲された折曲部を有するねじりコイルバネとし、前記長溝をプランジャに形成し、前記プランジャの下降時に前記弾性部材の第二係合部側の一端が前記長溝を下降することにより、前記長溝の下端部と衝突し、クリック音を発生させ、さらに、前記プランジャの上昇時に前記弾性部材の第二係合部側の一端が前記長溝を上昇することにより、前記長溝の上端部と衝突し、クリック音を発生することを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔1〕記載の押ボタンスイッチにおいて、前記弾性部材は両端部が外方へ略直角に折曲された折曲部を有するねじりコイルバネとし、前記長溝をスイッチ本体に形成し、前記プランジャの下降時に前記弾性部材の第一係合部側の一端が前記長溝を上昇することにより、前記長溝の上端部と衝突し、クリック音を発生させ、さらに、前記プランジャの上昇時に前記弾性部材の第一係合部側の一端が前記長溝を下降することにより、前記長溝の下端部と衝突し、クリック音を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プランジャを押下する際に、クリックアクションを得る弾性部材の端部に掛かる荷重を巧みに利用し、弾性部材端部が長溝の下端部と衝突することによりクリックアクションと共にクリック音を発生させ、新規部品を追加することなく操作フィーリングを高めることができる。また、前記プランジャ上昇時も同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の押ボタンスイッチは、接触機構部を配備したスイッチ本体と上下動するプランジャとこのプランジャを上方に復帰させるコイルバネから構成され、前記スイッチ本体の内側面と前記プランジャの側面間に回動自在に弾性部材の両端部を係合させ、前記スイッチ本体側を第一係合部、前記プランジャ側を第二係合部とし、前記プランジャの上昇時には前記第一係合部の上方に前記第二係合部が位置し、前記プランジャの下降時には前記第一係合部の下方に前記第二係合部が位置するように前記弾性部材を配設するとともに、この弾性部材の両端部が係合する前記第一係合部のスイッチ本体又は前記第二係合部のプランジャのどちらかの一方に長溝を形成する。よって、前記プランジャの下降時に弾性部材の端部に掛かる荷重を巧みに利用し、クリックアクションと共にクリック音を発生させ、操作フィーリングを高めることができる。
【0011】
また、前記プランジャ上昇時も同様のクリック音が発生する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の第一実施例を表す押ボタンスイッチの要部断面図、図2はその押ボタンスイッチの分解斜視図、図3は本発明の押ボタンスイッチの操作を示す側面断面図であり、図3(a)はその押ボタンスイッチの押下前を、図3(b)はその押ボタンスイッチの押下途中を、図3(c)はその押ボタンスイッチの押下後を、図3(d)はその押ボタンスイッチの押下後から復帰途中を、図3(e)はその押ボタンスイッチの復帰状態を示している。図4は操作部に加えるたわみ量と荷重特性を示すグラフである。図4において、■はねじりコイルバネにかかる力、×は復帰コイルバネにかかる力、●は押ボタンスイッチにかかる合力をそれぞれ示しており、ねじりコイルバネが反転する位置で荷重は急激に低減して、クリックアクションと共にクリック音を発生させることになる。
【0014】
図1及び図2において、ケース(スイッチ本体とカバーを含む)6の略中央部には、上下方向に貫通孔6aを形成した支柱6bを設けて、この支柱6bの下方にはコの字状に形成した内壁面6eを設け、この内壁面6eに接触機構部5を密接させて立設配置する。
【0015】
接触機構部5は縦方向に配置した可動バネ5aと可動バネ5aから植設した舌片部5b、さらに可動接点5cと固定接点5d及びそれぞれの接点と接続する端子5eを絶縁部材5fに組入れて構成したものである。
【0016】
操作部であるボタン1の内側面に形成された凹部1aに、プランジャ2の上方に形成した凸部2bを嵌着して一体となし、プランジャ2の略中央部に上下方向に貫通孔2fを形成して、前記ケース6の支柱6bを貫入させる。
【0017】
一方、プランジャ2の横側には段部2cを形成し、この段部2cの縦方向に溝部2eを形成して、ケース6の内壁面6eに設けた、上下に連なる突起6dと摺動させる。これにより、プランジャ2のガタつきを防ぎ、極めて滑らかな上下動作が可能となる。
【0018】
また、プランジャ2の下方に向けてボス2dを設けて復帰コイルバネ7を配設し、プランジャ2の側面には凹部2hを設け、この凹部2hの内壁面2iに弾性部材であるねじりコイルバネ4の腕部4dの先端に形成した折曲部4eを回動自在に組み合わせるための第二係合部2aとして長溝2jを配設する。
【0019】
スイッチを構成するカバー3の上面には突起部3aを設け、その略中心部には上下方向に貫通孔3bを設けて、上下動するプランジャ2を、この貫通孔3bでも案内してプランジャ2の横方向のガタつきを極力少なくし、滑らかな上下動作を可能とする。さらには、カバー3の下方に植設された舌下部3cと、この舌下部3cに角穴3dを穿設するとともに、この舌下部3cの内側面に第一係合部としての孔を配設する。なお、この第一係合部については、図5において詳述する。
【0020】
弾性部材としてのねじりコイルバネ4を構成する腕部4a、4dの先端には、カバー3とプランジャ2の係合部との安定した座を維持するため、ねじりコイルバネ4の巻き部4cの中心軸に沿って外方へ略直角状に折曲された折曲部4b,4eが形成されている。つまり、一方の折曲部4eは第二係合部2aとしてのプランジャ2の長溝2jに係合しており、一方の折曲部4bはケース6の内側面に形成される係合孔(図示なし)に係合されている。
【0021】
ケース6に接触機構部5と復帰コイルバネ7を組み入れた後、プランジャ2をカバー3に挿入し、カバー3の舌下部3cに設けた第一係合部3eにねじりコイルバネ4の一方の折曲部4bを組み合わせ、他方の折曲部4eをプランジャ2の第二係合部2aに回動自在に組み合わせ、カバー3の舌下部3cに設けた角穴3dをケース6の凸部6cに掛止して本発明の押ボタンスイッチが完成する。
【0022】
このように構成された、本発明の押ボタンスイッチは、図3に示すように操作される。すなわち、図3(a)に示す押ボタンスイッチの押下前の状態から、ボタン1が徐々に押下され、図3(b)に示す状態を経て、図3(c)に示すように最下部まで押下される。その操作における弾性部材としてのねじりコイルバネ4の動作を詳細に見ると、図3(a)では、ねじりコイルバネ4の一方の折曲部4eは第二係合部2aとしての長溝2jの上端部2j−1に係合しており、一方の折曲部4bはケース6の内側面に形成される係合孔(図示なし)に係合している。そこで、ボタン1が徐々に押下され、図3(b)を経て、ねじりコイルバネ4が反転すると、図3(c)に示すように、第二係合部2aとしての長溝2jの上端部2j−1に係合していた折曲部4eは急速に長溝2jを下降し、長溝2jの下端部2j−2に衝突し、クリックアクションと共にクリック音を発生する。さらに、復帰コイルバネ7の弾性復元力によりプランジャ2が上昇し、ねじりコイルバネ4の向きが再度反転する時に、図3(d)に示すように、ねじりコイルバネ4が上昇することにより、そのねじりコイルバネ4の折曲部4eが長溝2jの上端部2j−1と衝突し、クリックアクションと共にクリック音を発生する。最後に、図3(e)に示すように、押ボタンスイッチは原状に復帰する。
【0023】
図5は本発明の第二実施例を示すケースに長溝を有する押ボタンスイッチの操作を示す要部構成図であり、図5(a)はその押ボタンスイッチの押下前を、図5(b)はその押ボタンスイッチの押下途中を、図5(c)はその押ボタンスイッチの押下後を、図5(d)はその押ボタンスイッチの押下後から復帰途中を、図5(e)はその押ボタンスイッチの復帰状態を示している。
【0024】
これらの図において、6−1はケース6の内側面であり、このケース6の内側面6−1には長溝6fが形成されており、ねじりコイルバネ4の他方の折曲部4bは図5(a)に示すように、押ボタンスイッチの操作前には、その長溝6fの下端部6f−2に係合しており、押ボタンスイッチが徐々に押し下げられて、図5(b)を経て、ねじりコイルバネ4が反転すると、図5(c)に示すように、長溝6fの下端部6f−2に係合していた折曲部4bは急速に長溝6fを上昇し、長溝6fの上端部6f−1に衝突し、クリックアクションと共にクリック音を発生する。
【0025】
このように、本実施例では図1〜図3に示したプランジャ側にクリック音を発生させる長溝を形成するのに代えて、スイッチ本体側にクリック音を発生させる長溝を形成している。
【0026】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の押ボタンスイッチは、クリックアクションと共にクリック音を発生させ、操作フィーリングを高めることができる押ボタンスイッチに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施例を表す押ボタンスイッチの要部断面図である。
【図2】本発明の第一実施例を表す押ボタンスイッチの分解斜視図である。
【図3】本発明の第一実施例を表す押ボタンスイッチの操作を示す側面断面図である。
【図4】本発明の実施例を示す押ボタンスイッチのねじりコイルバネの復帰コイルバネのたわみに対する合計の荷重特性を表すグラフである。
【図5】本発明の第二実施例を示すケースに長溝を有する押ボタンスイッチの操作を示す要部構成図である。
【図6】従来の押ボタンスイッチの断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ボタン
1a,2h 凹部
2 プランジャ
2a 第二係合部
2b,6c 凸部
2c 段部
2d ボス
2e 溝部
2f,3b,6a 貫通孔
2i,6e 内壁面
2j,6f 長溝
2j−1,6f−1 長溝の上端部
2j−2,6f−2 長溝の下端部
3 カバー
3a 突起部
3c 舌下部
3d 角穴
3e 第一係合部
4 ねじりコイルバネ
4a,4d 腕部
4b,4e 折曲部
4c 巻き部
5 接触機構部
5a 可動バネ
5b 舌片部
5c 可動接点
5d 固定接点
5e 端子
5f 絶縁部材
6 ケース(スイッチ本体とカバーを含む)
6−1 ケースの内面
6b 支柱
6d 突起
7 復帰コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触機構部を配備したスイッチ本体と上下動するプランジャと該プランジャを上方に復帰させるコイルバネから構成され、前記スイッチ本体の内側面と前記プランジャの側面間に回動自在に弾性部材の両端部を係合させ、前記スイッチ本体側を第一係合部、前記プランジャ側を第二係合部とし、前記プランジャの上昇時には前記第一係合部の上方に前記第二係合部が位置し、前記プランジャの下降時には前記第一係合部の下方に前記第二係合部が位置するように前記弾性部材を配設するとともに、該弾性部材の両端部が係合する前記第一係合部のスイッチ本体又は前記第二係合部のプランジャのどちらかの一方に長溝を形成することを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の押ボタンスイッチにおいて、前記弾性部材は両端部が外方へ略直角に折曲された折曲部を有するねじりコイルバネとし、前記長溝をプランジャに形成し、前記プランジャの下降時に前記弾性部材の第二係合部側の一端が前記長溝を下降することにより、前記長溝の下端部と衝突し、クリック音を発生させ、さらに、前記プランジャの上昇時に前記弾性部材の第二係合部側の一端が前記長溝を上昇することにより、前記長溝の上端部と衝突し、クリック音を発生することを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項1記載の押ボタンスイッチにおいて、前記弾性部材は両端部が外方へ略直角に折曲された折曲部を有するねじりコイルバネとし、前記長溝をスイッチ本体に形成し、前記プランジャの下降時に前記弾性部材の第一係合部側の一端が前記長溝を上昇することにより、前記長溝の上端部と衝突し、クリック音を発生させ、さらに、前記プランジャの上昇時に前記弾性部材の第一係合部側の一端が前記長溝を下降することにより、前記長溝の下端部と衝突し、クリック音を発生することを特徴とする押ボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−49178(P2006−49178A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230520(P2004−230520)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000230722)日本開閉器工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】