説明

押ボタンスイッチ

【課題】組み立てが容易でプランジャーの折れにくい押ボタンスイッチを提供する。
【解決手段】中心軸が同一である挿通孔1d、1eが形成されたボディ1と、ボディ1の挿通孔1d、1eを挿通して摺動し、挿通孔1dと挿通孔1eとの間で周方向へ鍔状の突部7bが形成されるプランジャー7と、プランジャー7に挿通されてボディ1の挿通孔1eの周縁とプランジャー7の突部7bとの間に配設され、プランジャー7を上方向へ弾性付勢するコイルばね5と、ボディ内部に配設される固定接点10と、プランジャー7の摺動によって固定接点10と接離する可動接点9とを備え、コイルばね5は上方から下方へ向けて拡径となる円錐台状に形成され、コイルばね5の最小径が、突部7bの最大径よりも小さく、コイルばね5の最大径が、突部7bの最大径と略同径または、前記突部7bの最大径以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押ボタンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられているこの種の押ボタンスイッチは、機械設備等の開口部を開閉する安全カバーのような可動部材に設けられた吸着板を吸着し、可動部材の開閉を検知するスイッチ部が内蔵されたものがあり、例えば図4〜6に示すように、ボディ21内部に磁石22と、ヨーク23と、スイッチ部24と、復帰ばね25と、固定端子板26とを備えたものが提供されている。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
以下、図5における上下左右を基準とし、上下左右の面と垂直な方向を前後方向とする。
【0004】
ボディ21は、樹脂等の絶縁材料から形成されて前面を開口した基体21A、及び基体21Aの前面を覆設するカバー21Bとから構成され、上側に凹部21aと下側に収納部21fとが形成されている。また、凹部21aの開口を2分する仕切り部21b及び凹部21aの底面21cには中心軸が同一である挿通孔21d、21eがそれぞれ設けられる。さらに、凹部21aには、左右方向に並設された一対の磁石22が一対のヨーク23に狭持された状態で収納されている。
【0005】
磁石22は、フェライト等の永久磁石材料から略直方体状に形成され、N極及びS極の磁極を有して保持力を発生し、ボディ21の仕切り部21bを挟んで凹部21aの長手方向両端に収納される。
【0006】
ヨーク23は、軟鉄等の磁性材料により長尺板状に形成され、一対の磁石22の前面側と後面側とにそれぞれ1つのヨーク23が配設され、ヨーク23の長手方向両端の側面において一対の磁石22を前後方向からそれぞれ狭持する。
【0007】
スイッチ部24は、プランジャー27と、可動接点板28と可動接点29とから構成されている。
【0008】
まず、絶縁性の樹脂により棒状に形成されたプランジャー27は、ボディ21の挿通孔21d、21eを挿通して摺動し、上端がボディ21の上面から突出し、突部27cを形成している。また、プランジャー27には、ボディ21の挿通孔21dと挿通孔21eとの間で上端部及び下端部よりも径の細い小径部27aが形成されており、小径部27aの上端には図示しない溝部が形成されてEリング30が嵌合されている。さらに、プランジャー27の小径部27aの下端には周方向に鍔部27bが設けられており、ボディ21の挿通孔21eの下面側周縁に当接することで抜け止めがなされる。
【0009】
復帰ばね25は、金属線からコイル状に形成され、下端がボディ21の挿通孔21e上面側周縁に形成された凹部21hに嵌合され、上端が前記Eリング30の下面に当接して固定される。ここで、Eリング30は、復帰ばね25がプランジャー27に与える上方向への付勢力を支持する。
【0010】
可動接点板28は、弾性を有する金属により波板状に形成され、両端部に可動接点29がそれぞれ設けられ、プランジャー27の下端に配設される。
【0011】
固定端子板26は、銅等の金属材料が2段に折曲形成され、一端部に固定接点31が配設され、他端部には外部端子が接続される端子部26aが設けられている。そして、端子部26aの前後端には、突部26bがそれぞれ形成され、収納部21fの底面21gの左右両端に形成した開口から端子部26aを下方に露出した状態で、固定端子板26はそれぞれ配設され、ボディ21の図示しない凹部に突部26bが挿入された状態で固定される。
【0012】
上記構成を備えた押ボタンスイッチにおいて、図示しない金属材料からなる吸着板が、磁石22に吸引されて、磁石22の上面よりも突出した一対のヨーク23の突部23aに当接すると、ボディ21の上面から突出したプランジャー27の突部27cは押圧されてプランジャー27が下方へ摺動し、プランジャー27の下端に配設された可動接点板28が上下方向に反転して可動接点29が固定接点31に当接する。このようにして、前記一対の固定端子板26は可動接点板28を介して導通してスイッチ部24はオンされる。
【0013】
また、吸着板がヨーク23の突部23aから開離すると、復帰ばね25の弾性付勢によってプランジャー27は上方へ摺動し、可動端子板28は上下方向に反転して可動接点29が固定接点31から開離することで、前記一対の固定端子板26の間は遮断されてスイッチ部24はオフされる。
【特許文献1】特開2001−35300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来例における押ボタンスイッチでは、復帰ばね25がプランジャー27に与える上方への付勢力をプランジャー27の溝部に嵌合されたEリング30が受けている。そのため、プランジャー27の中心軸から外れた位置に押圧力が加わると、当該押圧力がEリング30が嵌合されている溝部に加わり、プランジャー27の他部よりも局部的に細くなっている溝部でプランジャー27が折れてしまう恐れがある。
【0015】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、組み立てが容易でプランジャーの折れにくい押ボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、中心軸が同一である第一の挿通孔と第二の挿通孔とが形成されたボディと、ボディの第一、第二の挿通孔を挿通して摺動し、ボディの第一の挿通孔と第二の挿通孔との間で周方向へ突出した鍔状の突部が形成されるプランジャーと、プランジャーに挿通されてボディの第二の挿通孔の周縁とプランジャーの突部との間に配設され、プランジャーをボディの第二の挿通孔から第一の挿通孔に向かう方向へ弾性付勢するコイルばねと、ボディ内部に配設される固定接点と、プランジャーの摺動によって前記固定接点と接離する可動接点とを備え、前記コイルばねは、第一の挿通孔から第二の挿通孔に向かう方向へ拡径となる円錐台型に形成され、コイルばねの最小径が、プランジャーに形成された突部の最大径よりも小さく、コイルばねの最大径が、プランジャーに形成された突部の最大径と略同径または、前記突部の最大径以上であることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、コイルばねをプランジャーに組み付ける際に、コイルばねを周方向に回転させながらプランジャーの突部に当接させることで、コイルばねは、巻き線間にプランジャーの突部が嵌り込んだ状態で摺動し、コイルばねをプランジャーに組み付けることができる。さらに、コイルばねの最小径が、プランジャーの突部の最大径よりも小さいため、プランジャーの突部によってコイルばねの抜け止めがなされ、従来のようにEリングを設ける必要がなく組み立てが容易である。また、プランジャーにEリングを嵌め込むための溝部を設ける必要がないので、プランジャーの中心軸から外れた位置に力が加わった際にも、プランジャーが折れ難い押ボタンスイッチを提供することができる。
【0018】
請求項2の発明は、前記プランジャーの突部は、円盤状に形成されることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、コイルばねをプランジャーに組み付ける際に、プランジャーに設けられた突部が、コイルばねの巻き線間にスムーズに嵌め込まれ、容易にコイルばねをプランジャーに組み付けることができる。
【0020】
請求項3の発明は、前記プランジャーの突部は、第一の挿通孔から第二の挿通孔に向かう方向へ拡径となる円錐台状に形成されることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、コイルばねをプランジャーに組み付ける際に、コイルばねをプランジャーのテーパー面に沿わせた状態でコイルばねを周方向に回転させることで、スムーズにコイルばねの最大径側をプランジャーに設けられた突部の小径側から大径側へ摺動させることができ、コイルばねを容易にプランジャーに組み付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明では、組み立てが容易でプランジャーの折れにくい押ボタンスイッチを提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
本発明における押ボタンスイッチは図1〜3に示すようにボディ1内部に磁石2と、ヨーク3と、スイッチ部4と、復帰ばね5と、固定端子板6とが収納されている。
【0025】
以下、図1における上下左右を基準とし、上下左右の面と垂直な方向を前後方向とする。
【0026】
ボディ1は、樹脂等の絶縁材料から形成されて前面を開口した基体1A、及び基体1Aの前面を覆設するカバー1Bとから構成され、上側に凹部1aと下側に収納部1fとが形成されている。また、凹部1aの開口を2分する仕切り部1b及び凹部1aの底面1cには中心軸が同一である挿通孔1d(第一の挿通孔)、1e(第二の挿通孔)がそれぞれ設けられる。さらに、凹部1aには、左右方向に並設された一対の磁石2が一対のヨーク3に狭持された状態で収納されている。
【0027】
磁石2は、フェライト等の永久磁石材料から略直方体状に形成され、N極及びS極の磁極を有して保持力を発生し、ボディ1の仕切り部1bを挟んで凹部1aの長手方向両端に収納される。
【0028】
ヨーク3は、軟鉄等の磁性材料により長尺板状に形成され、一対の磁石2の前面側と後面側とにそれぞれ1つのヨーク3が配設され、ヨーク3の長手方向両端の側面において一対の磁石22を前後側方向からそれぞれ狭持する。また、ヨーク3の上端には磁石2の上端よりも突出した突部3aが形成されている。
【0029】
スイッチ部4は、プランジャー7と、可動接点板8と可動接点9とから構成されている。
【0030】
まず、絶縁性の樹脂により棒状に形成されたプランジャー7は、ボディ1の挿通孔1d、1eを挿通して摺動し、上端がボディ1の上面から突出して突部7cを形成し、下端部近傍には、周方向に凹部7eが形成されている。また、プランジャー7には、ボディ1の挿通孔1dと挿通孔1eとの間で下方へ向けて拡径となるテーパー面7aを有した円錐台型の突部7bが形成され、プランジャー7の突部7b下方には所定の間隔を空けて周方向に鍔部7dが設けられ、ボディ1の挿通孔1eの下面側周縁に鍔部7dが当接することで抜け止めがなされる。なお、プランジャー7の突部7bと鍔部7dとの間は断面矩形状に形成され、ボディ1の挿通孔1eも矩形状に形成されていることから、プランジャー7は周方向に対する回転が規制されている。
【0031】
復帰ばね5は、下方へ向けて拡径となる上端が最小径、下端が最大径の円錐台状に形成されたコイルばねで、上端がプランジャー7の突部7bの下面に当接し、下端がボディ1の挿通孔1eの上面側周縁に形成された凹部1hに嵌合されて固定される。
【0032】
可動接点板8は、弾性を有する金属により波板状に形成され、両端部に可動接点9がそれぞれ設けられ、略中央部には挿通孔8aが形成されてプランジャー7の下端に挿通され、プランジャー7の下端部近傍に形成された凹部7eに係止される。
【0033】
固定端子板6は、銅等の金属材料が2段に折曲形成され、一端部に固定接点10が配設され、他端部には外部端子が接続されるねじ孔6cが穿設された端子部6aが設けられている。そして、端子部6aの前後端には、突部6bがそれぞれ形成され、収納部1fの底面1gの左右両端に形成した開口から端子部6aを下方に露出した状態で、固定端子板6はそれぞれ配設され、ボディ1の図示しない凹部に突部6bが挿入された状態で固定される。
【0034】
上記構成を備えた押ボタンスイッチにおいて、図示しない金属材料からなる吸着板が、磁石2に吸引されて、磁石2の上面よりも突出した一対のヨーク3の突部3aに当接すると、ボディ1の上面から突出したプランジャー7の突部7cは押圧されてプランジャー7が下方へ摺動し、プランジャー7の凹部7eに係止された可動接点板8がスナップアクションにより上下方向に反転して可動接点9が固定接点10に当接する。よって、前記一対の固定端子板6が可動接点板8を介して導通されてスイッチ部4はオンされる。
【0035】
また、吸着板がヨーク3の突部3aから開離すると、復帰ばね5の弾性付勢によってプランジャー7は上方へ摺動し、可動接点板8はスナップアクションにより上下方向に再度反転して可動接点9が固定接点1から開離する。よって、前記一対の固定端子板6の間は遮断されてスイッチ部4はオフされる。
【0036】
このような本実施形態における押ボタンスイッチでは、プランジャー7にEリングを組み付けるための局部的に細くなった溝部がないため、プランジャー7の突部7cが押圧された際に、プランジャー7の中心軸から外れた位置に力が加わった場合でも折れ難い。
【0037】
さらに、復帰ばね5の下端の径(最大径)が、プランジャー7の突部7bの最大径と略同径または、突部7bの最大径よりも大きく形成されているため、復帰ばね5をプランジャー7に組み付ける際には、復帰ばね5の最大径側である下端をプランジャー7の突部7bの上端へ向け、復帰ばね5を突部7bのテーパー面7aに当接した状態で回転させることで、復帰ばね5は、巻き線間に突部7bが嵌り込んだ状態で摺動し、復帰ばね5が下方へ摺動して突部7bを越えて、プランジャー7の突部7bと鍔部7dとの間に容易に組み込まれる。加えて、復帰ばね5の上端の径(最小径)は、プランジャー7の突部7bの最大径よりも小さく形成されているため、復帰ばね5は突部7bによって上方向への抜け止めがなされる。よって、復帰ばね5の抜け止めのためにEリングを用意する必要がなく容易に復帰ばね5をプランジャー7に組み込むことができ、さらに、プランジャー7に溝部を加工する必要がないため、プランジャーの折れにくい押ボタンスイッチとすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、プランジャー7の突部7bは円錐台状に形成されているが、円盤状や多角柱状等の鍔状の突部7bが形成されていてもよく、この場合も復帰ばね5をプランジャー7に組み付ける際には、復帰ばね5の最大径側である下端をプランジャー7の突部7bの上端へ向け、回転させながら押し下げることで、突部7bの周縁を復帰ばね5の巻き線間に嵌め込むことができ、復帰ばね5が下方へ摺動して突部7bを越えて、プランジャー7の突部7bと鍔部7dとの間に復帰ばね5を組み込むことができる。
【0039】
なお、本実施形態では、プランジャー7が下方へ押圧されることでスイッチ部4がオンされる常開型であるが、プランジャー7が下方へ押圧されることでスイッチ部4がオフされる常閉型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の押ボタンスイッチの断面図を示す。
【図2】同上における押ボタンスイッチの分解斜視図を示す。
【図3】同上における押ボタンスイッチの斜視図を示す。
【図4】従来例の押ボタンスイッチの斜視図を示す。
【図5】同上における押ボタンスイッチの断面図を示す。
【図6】同上における押ボタンスイッチの分解斜視図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 ボディ
1d 挿通孔(第一の挿通孔)
1e 挿通孔(第二の挿通孔)
2 磁石
3 ヨーク
5 復帰ばね
7 プランジャー
7b 突部
9 可動接点
10 固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が同一である第一の挿通孔と第二の挿通孔とが形成されたボディと、
ボディの第一、第二の挿通孔を挿通して摺動し、ボディの第一の挿通孔と第二の挿通孔との間で周方向へ突出した鍔状の突部が形成されるプランジャーと、
プランジャーに挿通されてボディの第二の挿通孔の周縁とプランジャーの突部との間に配設され、プランジャーをボディの第二の挿通孔から第一の挿通孔に向かう方向へ弾性付勢するコイルばねと、
ボディ内部に配設される固定接点と、
プランジャーの摺動によって前記固定接点と接離する可動接点とを備え、
前記コイルばねは、第一の挿通孔から第二の挿通孔に向かう方向へ拡径となる円錐台状に形成され、コイルばねの最小径が、プランジャーに形成された突部の最大径よりも小さく、コイルばねの最大径が、プランジャーに形成された突部の最大径と略同径または、前記突部の最大径以上であることを特徴とする押ボタンスイッチ。
【請求項2】
前記プランジャーの突部は、円盤状に形成されることを特徴とする請求項1記載の押ボタンスイッチ。
【請求項3】
前記プランジャーの突部は、第一の挿通孔から第二の挿通孔に向かう方向へ拡径となる円錐台状に形成されることを特徴とする請求項2記載の押ボタンスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−266486(P2009−266486A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112948(P2008−112948)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(592070649)パナソニック電工竜野株式会社 (61)
【Fターム(参考)】