説明

押出し成形された固体触媒及びその製造方法

【課題】押出し成形により製造することができ、可能な限りの最高レベルの機械的安定性を可能にする、ゼオライトを含有するSCR固体触媒及びこのSCR固体触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるための押出し成形された固体触媒であって、60〜87重量%の、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表の第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライトであって、連続の流路を有する構造を有するゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2〜10重量%の無機繊維を含有する活性物質を含有してなる固体触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるための押出し成形された固体触媒に関する。本発明は、更に、この固体触媒の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンを含有する活性物質を有し、特にアンモニアのような還元剤の助けを借り、かつ酸素の存在下に、その上で、窒素酸化物を分子状の窒素及び水に転化させる触媒が、例えば過剰空気で運転される内燃機関、特にディーゼルエンジンの酸素含有排気ガス中の窒素酸化物を除去するのに適していることは、公知である。これに関する参照文献として、特許文献1を挙げておく。この選択的接触還元法(process of Selective catalytic reduction)、略してSCR法においては、還元剤、又は排気ガス中で還元剤に変換されるであろう前駆体物質、を、触媒に入る前の排気ガスに添加する。例えば尿素は、還元剤のアンモニアの前駆体物質として公知であり、好ましくは尿素水溶液の形態で排気ガスに添加される。
【0003】
従来のSCR触媒のセラミック触媒物質には、主成分としての酸化チタンと、添加物としての酸化タングステン及び/又は酸化バナジウムとが含まれている。触媒としては、コーティングされた担体触媒又は固体触媒が使用される。コーティングされた担体触媒に関して言えば、触媒物質を、担体、特にコーディエライト(斜方両錐体構造を有する、Mg2Al4Si518の組成のマグネシウムアルミノシリケート)のような、それ自体では触媒的に不活性である担体に塗布する。一方、固体触媒は、触媒的に活性な触媒物質のみからなる。それを製造するためには、通常、出発物質を加工して賦形可能な細片とし、これを押出し成形して、連続の流路(channel)を有するハネカム体を形成させる。次いで、この押出し成形されたハネカム体を焼成して、固体触媒を形成させる。
【0004】
更に、ゼオライトもSCR触媒の公知の成分である。ゼオライト、即ちアルミノシリケート骨格は、連続の流路を有する構造を部分的にとるが、その直径はガスの分子のそれに匹敵する大きさであり、高い比表面積を有しているので選択的接触還元には特に適している。
【0005】
特許文献2により、還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるためのSCR触媒は公知である。この特許文献2に記載されている触媒の活性物質には、二酸化チタンとゼオライトとが含まれている。この場合、ゼオライトは、水素イオン交換された酸性ゼオライトである。
【0006】
更に、特許文献3には、SCR法を用いて窒素酸化物を分解させるための触媒が開示されている。この特許文献に記載されている触媒の活性物質には、比表面積が小さな二酸化チタンと、イオン交換法により得られる、銅を含有するゼオライトとが、含まれている。
モルデン沸石、ZSM−5及びフェリエライトが好適なゼオライトとして記載されている。
【0007】
更に、特許文献4には、窒素酸化物を分解させるための触媒が開示されていて、その活性物質には、イオン交換させた後に銅及び/又は鉄を含ませたゼオライトが含まれる。USY(超安定化Y(Ultra−Stabilized Y)、ベータ、及びZSM−20が、好適なゼオライトとして記載されている。
【0008】
更に、特許文献5には、アナターゼ変性状態の二酸化チタンと水素型又はアンモニウム型の酸安定ゼオライトとを含有する触媒が開示されている。
【0009】
従来技術においては、前記触媒は、コーティングされた担体触媒として、更には固体触媒として製造してもよいと記載されている。
【0010】
最後に、特許文献6には、SCR法を用いて窒素酸化物を分解させるための触媒が開示されていて、その触媒の活性物質にはゼオライトが含まれている。この場合、ゼオライトには、酸化セリウム又は酸化鉄が含浸されている。記載されている触媒は、硫黄成分に対して高度の安定性を有していると言われている。ZSM−5型のゼオライトが好適なゼオライトとして記載されている。
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第24 58 888A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第198 54 502A1号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2 193 655A号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 393 917A2号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 219 854A2号明細書
【特許文献6】米国特許第5,271,913A号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
コーティングされた担体触媒に比較して、固体触媒は一般に、触媒活性に関して、より高度の長期間安定性を示す。SCR触媒における触媒活性を改良するためには、ゼオライトを使用するのが有利である。しかしながら、従来技術が示しているように、その活性物質中にゼオライトを含有するSCR固体触媒は、機械的安定性が不十分である。更に、ゼオライトを含有する活性物質を押出し成形してハニカム形状にしようとすると、自由流動性の不足と固さのために、問題が多い。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の目的は、押出し成形により製造することができ、可能な限りの最高レベルの機械的安定性を可能にする、ゼオライトを含有するSCR固体触媒を提供することである。更に、前記SCR固体触媒の製造方法を記述することも、また、本発明の目的である。
【0014】
その第一の目的に関しては、本発明によれば、還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるための押出し成形された、連続流路を有する固体触媒であって、60〜87重量%の、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表の第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2〜10重量%の無機繊維を含有する活性物質を含有してなる固体触媒が提供される。
【0015】
本発明は、ゼオライトを含有する従来公知のSCR固体触媒の機械的安定性が不十分であるのはゼオライト粒子の結合が不十分であることに起因するとの考察に、基づいている。精力的に検討した結果、ゼオライト粒子の結合は、実際には無機バインダーとして機能する酸化アルミニウムにより、促進され得るということが判った。別の言い方をすれば、前記固体触媒においては、個々のゼオライト粒子が酸化アルミニウムの上で強固に結合されている。前記固体触媒の活性物質が、60〜87重量%の、イオン交換されたゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2〜10重量%の無機繊維を含んでいる場合には、充分なSCR活性で、固体触媒は、長期の適用のために充分に高度な機械的安定性を示す。
【0016】
ゼオライト、酸化アルミニウム及び無機繊維の重量百分率が上述の範囲内であれば、その固体触媒は、出発物質の懸濁液の押出し成形により製造することができる。製造のためのプロセスに係る本発明の第二の目的は、それぞれ粉末の形態にある、ゼオライトと、酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムの前駆体物質と、からなる出発物質を無機繊維と混合し、もし適切であれば有機補助剤を添加して、酸性又はアルカリ性水溶液中で、混合及び/又は混練して可塑性の配合物(コンパウンド)とし、この配合物を押出し成形して触媒体とし、この触媒体を乾燥し、この触媒体を550〜650℃の間の温度で焼成して、連続流路を有する固体触媒を形成させることにより達成されるが、ここで、この固体触媒が、60〜87重量%の、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2〜10重量%の無機繊維を含有するように、出発物質の量的な割合を選択する。
【0017】
ゼオライトは、天然ゼオライトであっても合成ゼオライトであってもよい。ここで、「ゼオライト」という用語は、アルミニウム原子とケイ素原子との合計に対する、酸素原子の比率が2:1である骨格アルミノシリケートを意味すると理解されたい。IV価の酸化状態にあるケイ素原子のいくつかが、III価の酸化状態にあるアルミニウム原子で置換された結果、その骨格又は骨格構造が全体として、負の電荷を得る。この負の電荷が、骨格構造中に存在する、交換可能なカチオンとして知られているカチオンと打ち消し合う。
【0018】
ゼオライトは、更に、その骨格構造が、特徴的な細孔幅を有する細孔を有するという事実によっても特徴づけられる。ゼオライトは、酸化ケイ素の酸化アルミニウムに対するモル比、又はその比に起因する特徴的な骨格構造に従って分類される。
【0019】
天然ゼオライトの例は、モルデン沸石又は菱沸石である。合成ゼオライトの例は、A−、X及びYゼオライトであって、それらは、モルデン沸石の合成形態、ZSM−5ゼオライト(モービル・オイル・カンパニー・リミテッド(Mobil Oil Comapany,Ltd.)により製造される合成ゼオライトの商標)、USYゼオライト(超安定化Y(Ultra−Stabilized Y))又はベータゼオライトを表している。
関連の文献としては、カーク・オスマー(Kirk−Othmer)「エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジー(Encyclopedia of Chemical Technology)」第3版(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John
Wiley & Sons)、ニューヨーク(New York)、1981年)、第15卷、第640〜669ページを参照されたい。ゼオライトを分類するためには、R.M.バラー(R.M.Barrer)、ピュアー・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)第51卷(1979)、第1091〜1100ページ、「ケミカル・ノメンクレーチャー・アンド・フォーミュレーション・オブ・コンポジションズ・オブ・シンセティック・アンド・ナチュラル・ゼオライツ(Chemical Nomenclature and Formulation of Compositions of Synthetic and Natural Zeolites)」を参照されたい。ゼオライトの構造に関する情報については、Ch.バエロチャー(Ch.Baerlocher)、W.M.マイヤー(W.M.Meier)及びD.H.オルソン(D.H.Olson)「ゼオリス=アトラス;アトラス・オブ・ゼオライト・フレームワーク・タイプス(Zeolith−Atlas:Atlas of Zeolite Framework Types)」(アムステルダム(Amsterdam)、エルセビア(Elsevier)、2001)を参照されたい。
【0020】
好ましい実施態様においては、ゼオライトは、Fe、Cu、Ce、Hf、La、Pt、Au、In、V、Ir、Ru及びOsからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する。ゼオライト中に含まれるこれらの金属は、充分な温度範囲において、高い触媒活性を与えることができる。
【0021】
固体触媒を製造するためには、連続の流路を有する、押出し成形された触媒体を、20℃〜100℃の間の温度で乾燥してもよいが、マイクロ波又は凍結乾燥によって乾燥してもよい。
【0022】
無機繊維としては、セラミック繊維及びガラス繊維のいずれを用いてもよい。経済的な理由から、ガラス繊維を使用するのが有利である。
【0023】
有機補助剤としては、セラミック産業において公知の慣用されているバインダー、充填剤、滑剤及び可塑剤を使用することが可能であるが、これらは焼成の間に「焼失(burnt out)」する。セルロースは、バインダー及び充填剤として特に好適である。水溶性樹脂は、有機可塑剤としての添加に特に適している。セルロースは、最初は水性懸濁液の中で膨潤しているが、焼成プロセスの間に完全に溶解するので、セルロースの混合物は、固体触媒の触媒活性のために有利な多孔度を増加させる。有機可塑剤は、水性懸濁液の押出し成形性を改良する目的で使用する。例えば、ポリエチレンオキシド又はポリエチレングリコールポリマーが、水溶性樹脂として好適である。
【0024】
酸性又はアルカリ性水溶液中での出発物質の混合は、個々の粒子を結合させるのに有利であることが判明した。これは、出発配合物を押出し成形するのに望ましい自由流動性を得るために、特に有利である。3〜4の間のpH値を有する酢酸溶液中、又は、8〜9の間のpH値を有するアンモニア溶液中で出発物質を処理すると、出発配合物の押出し成形性が特に改良される。
【0025】
無機バインダーとして作用する酸化アルミニウムがγ−Al23である場合に、押出し成形される固体触媒体に、特に有利な結合効果をもたらすことができる。γ−Al23とは、面心立方結晶の酸化アルミニウムであると理解されたい。
【0026】
ゼオライト粒子を結合させるために必要な酸化アルミニウムは、第一に、出発物質中に前駆体物質を使用することにより得ることができる。この前駆体物質は、製造プロセスの間に、ゼオライト粒子を結合するために必要とされる酸化アルミニウムへと転化又は変化する。前駆体物質は、例えば、水酸化アルミニウム、即ち、ベーマイト、ギブザイト、又はバイヤライトであってよい。酸化アルミニウムの前駆体物質としては、ベーマイトを使用するのが特に有利であるが、その基本構造がゼオライト粒子の構造に極めて良好に適合するからである。ベーマイトとは、アルミニウムメタヒドロキシド、AlO(OH)の、斜方晶系構造であると理解されたい。ベーマイトは、固体触媒を製造する際の通常の条件下で、γ−Al23に転化する。
【0027】
ゼオライトの割合を最大になるようにするのが、固体触媒の触媒活性には有利である。
しかしながら、そうすると、必然的に、機械的安定性に寄与する酸化アルミニウムがそれに比例して低下することになる。満足のいく機械的安定性を保ちながら、高度の触媒活性を得るためには、固体触媒の活性物質が70〜85重量%のゼオライトと12〜25重量%の酸化アルミニウムとを含んでいることが有利である。
【0028】
公知のように、ゼオライトの安定性は、酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が高くなるほど向上する。押出し成形された固体触媒体の機械的安定性には、使用されるゼオライトが、酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が10〜50であるようなゼオライトであることが有利である。
【0029】
前記の元素を含有する、イオン交換されたゼオライトは、充分に高度のSCR活性を示す。ゼオライトが鉄、銅及び/又はセリウムを含有している場合には、その固体触媒は、特に高度のSCR活性を示す。イオン交換されたゼオライトが鉄を含有するゼオライトであり、そのゼオライト物質が1〜9重量%の鉄を含有していることが有利である。これに関連していうと、約1重量%の鉄がイオン交換によってゼオライトに結合されているが、鉄の残りの部分は、ゼオライトの開口した細孔構造によってゼオライトに付着している。
この、ある意味では遊離の鉄が、好ましいことには、ゼオライトの機械的安定性を向上し、その結果、その固体触媒の機械的安定性を向上させ、また、その耐酸性をも改良する。
従って、前記ゼオライトを含有する固体触媒は、特に硫黄含有排気ガス中の窒素酸化物を分解させるために適している。ゼオライト中の鉄含量を高くすることは、例えば硝酸鉄溶液を用いて鉄を添加する際の圧力設定によって可能である。更に、硫酸鉄を使用した、固相挿入又は固相イオン交換も可能である。例えば、独国特許出願公開第198 20 515A1号に記載されているように、鉄含量が高いと、高い排気ガス温度におけるSCR活性が更に改良されることも判明した。
【0030】
ガス分子の直径と同程度の直径を有する連続の流路を有しているので、フォージャサイト、フェリエライト、Y−、ベータ、ZSM−5、ZSM−20、又はMCM−41ゼオライトは、押出し成形される固体触媒のためのゼオライトとして特に好適である。そのゼオライトがZSM−5又はベータタイプのゼオライトであることが有利である。これらのゼオライトは、SCR反応に好適な構造と表面特性とを示す。酸化アルミニウムの前駆体物質としてベーマイトを使用したときには、特に、このタイプのゼオライト粒子は良好な結合性を示す。
【0031】
別の実施態様においては、触媒の活性物質は、更に、酸化アルミニウムに結合された、Cu、Hf、La、Au、V、Mn、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を、5重量%までの量で含有する。特に、これらの元素は、Fe、Cu、Au、V、Mn、Hf、La、Ir、Ru、Os及びInからなる群から選択する。追加の元素は、無機バインダーが触媒活性の追加機能を獲得するように、無機バインダーに結合させる。このことが更に、固体触媒の触媒活性を改良する。原理的には、これらの元素を酸化アルミニウムに結合させ又は酸化アルミニウムに付着させることは、出発物質の混合物を調製する際に、前記金属の水溶性塩の溶液を混合することによって達成することができる。例えば、鉄を添加するためには、硝酸鉄を使用すればよい。
【0032】
これらの金属と酸化アルミニウムとの結合を担保するためには、他の出発物質を添加するより前に、水溶性金属塩の水溶液を、酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムの前駆体物質に、添加するのが有利である。
【実施例】
【0033】
本発明の二つの例を、以下の二つの実施例で詳細に示す:
【0034】
(実施例1)
活性物質として5重量%の鉄を含有する、イオン交換された、合成ZSM−5ゼオライトを、ゼオライトとして選択する。粉末化したZSM−5ゼオライトを、ガラス繊維及び同様に粉末化した合成ベーマイトと混合し、pH値3.5の酢酸水溶液中、セルロース、可塑剤のズソプラスト(Zusoplast)(ツィンマー・アンド・シュバルツ・GmbH・アンド・カンパニー・KG(Zshimmer & Schwarz GmbH & Co KG)の商品名)及び有機補助剤のポリオックス(Polyox)(ダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals)の商品名)と混合することにより処理して、賦形可能な流動性のある配合物とした。最終生成物の固体触媒における活性物質が、71重量%のゼオライト、24重量%のγ−Al23及び5重量%のガラス繊維を含有するように、出発物質の量的な割合を選択する。この賦形可能な配合物を押出し成形して、連続の流路を有し、300cpsi(セル/平方インチ)のセル密度を有する断面円形のハニカム触媒体とした。次いで、この触媒体を90℃で乾燥し、600℃で焼成して固体触媒を形成させる。仕上がった固体触媒は、直径約14cmの流入面積及び約19cmの流通長さを有する。
【0035】
前記の方法で製造した3個の固体触媒を、排気ターボスーパーチャージングを有する営業用自動車のディーゼルエンジンの排気ガス流れの中に平行に配置する。このディーゼルエンジンは、最高300kWの出力時に、12Lの排気量を有している。運転条件に依存するが、このディーゼルエンジンの排気ガスは、3〜15%の間の酸素含量、4〜12%の間の水含量、及び4〜12%の間の二酸化炭素含量を示す。ディーゼルエンジンの各種典型的な運転条件下で、様々な温度で、アンモニアの添加量を変化させながら、配置された固体触媒の上での窒素酸化物の転化率を、触媒の上流側と下流側とにおける酸化窒素濃度の比率として、測定する。
【0036】
それらの結果については、表1を参照されたい。
【0037】
【表1】

【0038】
酸化窒素含量に対する化学量論量を超えるアンモニアを添加したときの転化率1の測定においては、固体触媒の下流側における排気ガス中に、なお10ppmの残存アンモニアが存在した。転化率2では、残存アンモニア含量が50ppmとなるような、化学量論量を超えるアンモニアを添加して測定した。ディーゼルエンジンのそれぞれの運転条件に対応する、排気ガス中のNOx濃度は右側の列に示されている。
【0039】
排気ガスの温度が約200℃〜400℃の範囲では、窒素酸化物の高い転化率が認められる。高温においてさえも、アンモニアを化学量論量より過剰に添加すると、低過剰の場合及び高過剰の場合、それぞれ、約50%及び約70%の窒素酸化物の減少が達成される。
【0040】
実施例1による固体触媒は、高度の機械的安定性を示す。ゼオライトの割合が高いにも拘らず、その出発物質の賦形可能な配合物は、容易に押出し成形して触媒体とすることができるが、この押出し成形された触媒体は、更なる加工をするために必要とされる安定性を有している。
【0041】
(実施例2)
実施例1にならって、更に別の固体触媒を製造する。但し、ゼオライトとしては、イオン交換されたZSM−5ゼオライトに代えて、イオン交換されたベータゼオライトを使用する。そのベータゼオライトには5重量%の鉄が含まれている。これらの出発物質を実施例1にならって、最終生成物の固体触媒が、60重量%のベータゼオライト、5重量%のガラス繊維、及び35重量%の酸化アルミニウムを含有するように混合する。
【0042】
所定の組成を有するモデル排気ガスを、焼成した固体触媒の上に通す。内燃機関の典型的な運転条件に従った排気ガス条件をシミュレートする。窒素に加えて、高い排気ガス温度では、そのモデル排気ガスには900ppmのNOが含まれており、これを触媒上、高容積流量で通過させる。より低い排気ガス温度では、600ppmのNOを添加し、排気ガスを固体触媒上、低容積流量で通過させる。これらのモデル排気ガスには、残りの成分として、10容積%の酸素及び7容積%の水が更に含まれており、これらの比率は変化しない。モデルガスには、更にアンモニアが、NO対NH3が0.9となる比率で含まれている。このモデルガスを、合わせて6種の異なった温度で、固体触媒の上を通過させる。固体触媒による転化率を、その固体触媒の上流側と下流側における、排気ガス中のNOの濃度比として測定する。それらの結果については、表2を参照されたい。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から判るように、実施例2による固体触媒は、300℃を超える温度範囲において高い転化率を示す。排気ガスの温度が極端に低いと、触媒活性が低下する。しかしながら、200℃においてさえも、含まれているNOの20%を超えるものが転化されている。
モデル排気ガスにNO2を添加することによって、固体触媒の活性がかなり向上するという事実には、特に注意を払うべきである。測定された活性は、NOの転化に関しては最低の活性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤の存在下に窒素酸化物を分解させるための押出し成形された、連続流路を有する固体触媒であって、60〜87重量%の、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2〜10重量%の無機繊維を含有する活性物質を含有してなる固体触媒。
【請求項2】
ゼオライトが、Fe、Cu、Ce、Hf、La、Pt、Au、In、V、Ir、Ru及びOsからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有するものである、請求項1に記載の固体触媒。
【請求項3】
酸化アルミニウムがγ−Al23である、請求項1又は2に記載の固体触媒。
【請求項4】
酸化アルミニウムが、水酸化アルミニウムと出発物質とを混合することにより形成されるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項5】
70〜85重量%のゼオライト及び12〜25重量%の酸化アルミニウムを含有する活性物質を含有してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項6】
ゼオライトが10〜50の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比を有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項7】
ゼオライトがFeを含有するイオン交換されたゼオライトであり、ゼオライトが1〜9重量%の間の鉄(Fe)を含有するものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項8】
ゼオライトがZSM−5又はベータ型ゼオライトである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項9】
酸化アルミニウムに結合された、Cu、Hf、La、Au、V、Mn、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の元素を、5重量%までの量で更に含有する活性物質を含有してなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体触媒。
【請求項10】
それぞれ粉末の形態にある、ゼオライトと酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムの前駆体物質と、からなる出発物質を無機繊維と混合し、酸性又はアルカリ性水溶液中で混合及び/又は混練により処理して可塑性の配合物とし、この配合物を押出し成形して触媒体とし、この触媒体を乾燥し、550〜650℃の間の温度で焼成して固体触媒を形成させることからなる、連続流路を有する固体触媒の製造方法であって、固体触媒が、60〜87重量%の、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライト、10を超え37重量%までの酸化アルミニウム、及び2〜10重量%の無機繊維を含有するように、出発物質の量的な割合を選択する、固体触媒の製造方法。
【請求項11】
固体触媒が、60〜87重量%の、Fe、Cu、Ce、Hf、La、Pt、Au、In、V、Ir、Ru及びOsからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を含有する、イオン交換されたゼオライトを含有するように、出発物質の量的な割合を選択する、請求項10に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項12】
前駆体物質として、水酸化アルミニウムを添加する、請求項10又は11に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項13】
固体触媒が70〜85重量%のゼオライト及び12〜25重量%の酸化アルミニウムを含有するように、出発物質の量的な割合を選択する、請求項10〜12のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項14】
ゼオライトにおける酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比が10〜50である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項15】
ゼオライトがFeを含有するイオン交換されたゼオライトであり、ゼオライト物質が1〜9重量%の間の鉄(Fe)を含有するものである、請求項10〜14のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項16】
ゼオライトがZSM−5又はベータ型ゼオライトである、請求項10〜15のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項17】
Cu、Hf、La、Au、V、Mn、ランタノイド及び周期表第VIII族の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の、それらの塩の形態での、溶液と出発物質とを混合して、固体触媒が5重量%までのこれらの元素を含有するようにする、請求項10〜16のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項18】
まず酸化アルミニウムを溶液と混合し、次いで、ゼオライト及び無機繊維を混合する、請求項17に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項19】
有機補助剤として、セルロース及び/又は有機可塑剤を混合する、請求項10〜18のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。
【請求項20】
出発物質を、3〜4の間のpH値を有する酢酸溶液中、又は8〜9の間のpH値を有するアンモニア溶液中で処理する、請求項10〜19のいずれか1項に記載の固体触媒の製造方法。

【公開番号】特開2012−183541(P2012−183541A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139795(P2012−139795)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2007−118357(P2007−118357)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(504109285)ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
【Fターム(参考)】