説明

押出ゴム部材の収縮応力除去装置

【課題】押出機から押し出される長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去して、経時的な形状変化の少ないゴム部材を提供する。
【解決手段】押出機11から長尺ゴム部材21を押出した直後、またはその後方(下流)にシュリンキングコンベヤー装置12,13を上下に設置する。シュリンキングコンベヤー装置12,13には複数のローラーが備わっていて、上下のシュリンキングコンベヤー装置に取り付けられた上下のローラー16が、押出機11から押し出された長尺ゴム部材21を挟みこんで適度に圧接する。上下のローラー16は個別に駆動機構19がついているので、ローラー16速度を適宜変更でき、長尺ゴム部材21の収縮度を制御できる。上側シュリンキングコンベヤー12には昇降機構22がついているので、上下のローラー16に挟まれた長尺ゴム部材21の圧接度を適宜調整でき、長尺ゴム部材の収縮度を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機より押し出される長尺ゴム部材の収縮応力を緩和または除去する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤに用いられる長尺ゴム部材(たとえばキャップトレッドやサイドトレッド)の押出しラインにおいて、押出時に大きな収縮応力が発生するために、長尺ゴム部材の形状(たとえば、長さ、幅、プロファイル)が経時的に変化する。この経時変化により、部材形状が不安定となりタイヤの品質に影響を及ぼしたり、規格外品を発生し不良品が増加するという問題がある。たとえば、押出しゴム部材を所定長さに切断して成形ドラムに巻き付けて両端部を接合して円筒状成形部品を形成するとき、押出しゴム部材が有する内部応力により、切断された押出しゴム部材が収縮して長さが短くなり両端部の接合が困難になるという問題が発生する。
【0003】
この問題を回避するためには、押出しラインにおいて、押出された長尺ゴム部材を十分に収縮させておく必要がある。たとえば、図4に示すように、長尺ゴム部材を押出した後に「シュリンキング(収縮)コンベヤー」を設置し、長尺ゴム部材の収縮内部応力を緩和する方法が行われている。図4において、押出機101から押し出されたゴム部材103はシュリンキングコンベヤー102のローラー104上に搭載され下流(後方)に移動する。長尺ゴム部材103はシュリンキングコンベヤー102上を移動するにつれ冷却され上流から押されて収縮されていく。しかし、この場合には長尺ゴム部材103はフリーの状態であるため収縮する程度は限定的であり、充分な収縮度を確保できないという問題がある。すなわち、押し出された押出物である長尺ゴム部材がシュリンキングコンベヤー上を走行する際、フリーの状態ではシュリンクできる範囲内でのシュリンク比率までしか設定できない。この結果、長尺ゴム部材の収縮内部応力を十分除去できないため、押出ライン内および切断または巻き取りして取り出し後もゴム部材の形状変化(長さ収縮等)を発生する。
【0004】
そこで、この収縮速度を速くし、押出しラインから得られた長尺ゴム部材103の収縮量をさらに大きくするために、シュリンキングコンベヤーを長尺ゴム部材の長手方向に複数個並べて、これら複数個のシュリンキングコンベヤーの各ローラーの表面の速さを下流に行くに従い遅く設定する方法がある。この方法によれば、各シュリンキングコンベヤーの乗り移り部で長尺ゴム部材が強制的に収縮される。或いは、シュリンキングコンベヤー102のローラー径を下流ほど小さくして、シュリンキングコンベヤーの各ローラーの表面の速さを下流に行くに従い遅く設定する方法もある。しかしながら、これらの方法では押出機101から押し出された長尺ゴム部材103の押出しスピードと下流側の長尺ゴム部材103の移動スピードを適合させることが困難である。このように、収縮内部応力を十分に除去するために、シュリンキングコンベヤー上を走行する際、フリーの状態ではシュリンクできる範囲以上の比率で走行させようとすると、長尺ゴム部材103が波打ったりするなど尺取り虫状態になり、長尺ゴム部材103がシュリンキングコンベヤー102上を走行(移動)することができなくなってしまうという問題が発生する。
【0005】
また、長尺ゴム部材103がシュリンキングコンベヤー上を走行中に散水装置を設けたり長尺ゴム部材103を水中を通過させたりすることにより、長尺ゴム部材103を強制的に冷却して収縮させる方法も提案されている。さらに、押出しされた長尺ゴム部材103に所定温度内で振動を付与することにより長尺ゴム部材103の収縮を促進することも提案されている。しかしながら、これらの方法によっても、押出機101からの長尺ゴム部材103の押出しスピードと下流側の長尺ゴム部材103の移動スピードを適合させることが困難であるため、長尺ゴム部材103が波打ったりするなど尺取り虫状態になり、長尺ゴム部材103がシュリンキングコンベヤー102上を走行(移動)することができなくなってしまうという問題が発生する。さらに、散水装置や水の入った恒温槽や振動付与装置などかなり大掛かりな装置が必要であり、全体のスペースや費用も大きくなってしまうという問題もある。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−305792
【特許文献2】特開H08−244090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記説明したように、押出機から押し出された長尺ゴム部材を搭載して搬送するシュリンキングコンベヤーを用いた従来の方法では充分な収縮度が得られず収縮内部応力を除去できないため、長尺ゴム部材を切断したゴム部材は経時的に長さが短くなるなどして形状変形が生じるという問題がある。また、冷却したり振動を与えたりして強制的に長尺ゴム部材を収縮する方法においても、長尺ゴム部材が尺取り虫状態になるなどしてコンベヤー上を搬送することが困難である問題もある。さらに、押出しされた長尺ゴム部材をそのままの状態か或いは巻き取った後で、長時間放置して残留応力を小さくする方法もあるが、長尺ゴム部材の長期保管等でかなりの費用がかかるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、押出機から押し出された長尺ゴム部材を効果的に収縮させ、長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去し、それにより長尺ゴム部材から切断されたゴム部材の形状変化を最小限に抑えることである。そのために、本発明は、押出機から長尺ゴム部材を押出した直後、またはその後方(下流)にシュリンキングコンベヤー装置を上下に設置する。すなわち、上下一対のシュリンキングコンベヤー装置である。シュリンキングコンベヤー装置には複数のローラーが備わっていて、上下のシュリンキングコンベヤー装置に取り付けられた上下のローラーが、押出機から押し出された長尺ゴム部材を挟みこんで適度に圧接する。ローラーは回転自在に取り付けられているので、押出機からの押出し圧力により長尺ゴム部材は上下のローラー間を走行して後方(下流)に移動していく。或いは、シュリンキングコンベヤーのローラーの各々に取り付けられた駆動機構により、ローラーの速度を制御して長尺ゴム部材は上下のローラー間を走行して後方(下流)に移動していく。或いは、上下のシュリンキングコンベヤーが複数組設置されているとともに、個々のシュリンキングコンベヤーの速度が制御されていて、長尺ゴム部材はこれらのシュリンキングコンベヤーの上下ローラー間を走行して後方(下流)に移動していく。
尚以下において、本発明の上下のシュリンキングコンベヤーがそれぞれローラーを有しているときには、シュリンキングローラーコンベヤーと称する場合がある。
【0009】
シュリンキングローラーコンベヤーの前方には前方コンベヤーが取り付けられても良いし、および/またはシュリンキングローラーコンベヤーの後方には後方コンベヤーが取り付けられても良い。これらの前方コンベヤーや後方コンベヤーは個別に駆動機構を持っていて、シュリンキングローラーコンベヤーの搬送スピードと適合して長尺ゴム部材の移動速度を最適化できるようになっている。たとえば、シュリンキングローラーコンベヤーの入口速度は前方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度と同じくなるように調整される。また、後方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度はシュリンキングローラーコンベヤーの出口速度と同じくなるように調整される。
【0010】
上下のシュリンキングローラーコンベヤーの上側シュリンキングローラーコンベヤーには昇降機能が備わっており上下に移動可能である。押出機より押し出された長尺ゴム部材は前方コンベヤーに乗り移動する。前方コンベヤーの隣に設置されたシュリンキングローラーコンベヤーの上側シュリンキングローラーコンベヤーは上方に上がっていて、移動してきた長尺ゴム部材の先端部が下側シュリンキングローラーコンベヤーのローラーの上を移動して最後部のローラーに入ったときに上側シュリンキングローラーコンベヤーが下降して、長尺ゴム部材を挟みこみ適度に圧接する。圧接された長尺ゴム部材は、シュリンキングローラーコンベヤーの後方に隣接して設置された後方コンベヤーに入り下流側に走行していく。その後は、長尺ゴム部材は上下のシュリンキングローラーコンベヤーの各ローラーに挟まれ適度に圧接されながら下流に移動していく。
【発明の効果】
【0011】
走行する長尺ゴム部材が上下のシュリンキングローラーコンベヤーによって挟みこまれて適度に圧接されているので、長尺ゴム部材がフリーの状態で収縮できる範囲以上の比率で収縮することができる。この収縮比率も圧接力を調節することにより自由に設定できるので、長尺ゴム部材の特性に合わせることが可能である。この結果、押出された長尺ゴム部材の収縮度を十分に大きくすることができ、収縮内部応力を除去または小さくすることができるので、押出しライン内においても、或いは切断又は巻き取りして取り出した後も、部材の寸法収縮など形状変形を少なくすることができる。さらに、シュリンキングローラーコンベヤーのローラー個々に駆動装置を取り付けていて、ローラーの回転速度を自由に設定できるので、押し出し直後の長尺ゴム部材の引き取り速度に対して、シュリンキングローラーコンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度を下流にいくに従い漸減でき、これによる収縮度調整も可能である。
以上のように、本発明は、シュリンキングコンベヤー装置を上下に配置し、走行する長尺ゴム部材押出物を上部および下部のローラーコンベヤーによって挟みこんで適度に圧接することにより、長尺ゴム部材が尺取り虫状態になることなく、長尺ゴム部材をフリーの状態でシュリンク(収縮)できる範囲以上の比率で走行可能とした上下一対のシュリンキングコンベヤー装置である。この上下一対のシュリンキングコンベヤー装置は、長尺ゴム部材を強制的に挟んで圧接して収縮させ収縮内部応力を緩和または除去しているということから、強制シュリンキング(ローラー)コンベヤー装置と呼んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の強制シュリンキングコンベヤーを備えた長尺ゴム部材押出時の収縮応力除去装置を示す図である。
【図2】図2は、本発明の収縮応力除去装置の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の収縮応力除去装置の斜視図である。
【図4】図4は、従来の長尺ゴム部材の処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の強制シュリンキングローラーコンベヤーを備えた長尺ゴム部材押出時の収縮応力除去装置を示す図である。本発明の収縮応力除去装置は、押出機11、前方コンベヤー17、上下の(強制)シュリンキングコンベヤー12(上下から強制的に長尺ゴム部材を挟んで圧接し収縮しているので、これを強制シュリンキング(ローラー)コンベヤーとも呼ぶ)、後方コンベヤー18を含む。強制シュリンキングコンベヤー12は、下側シュリンキングローラーコンベヤー13および上側シュリンキングローラーコンベヤー15から構成される。下側シュリンキングローラーコンベヤー13には複数のローラー14が取り付けられていて、このローラー14上に長尺ゴム部材が乗り搬送される。下側シュリンキングローラーコンベヤー13には高さ調節機構がついていて、下側シュリンキングローラーコンベヤー13と前方コンベヤー17および後方コンベヤー18との高さを調整することが可能で、前方コンベヤー17および後方コンベヤー18と長尺ゴム部材21の受け渡しがスムーズにできるようになっている。
【0014】
複数のローラー14(14−1〜nのn個のローラー)の各々には個別に駆動装置19(19−1〜n)がついていて、ローラーを個々に任意の速度で回転できるようになっている。さらにこれらのn個の駆動装置19は制御装置20につながり、制御装置20から個々のn個の駆動装置19をコントロールすることができる。従って、n個のローラーの速度をそろえることもできるし、下流側にいくに従い漸次ローラーの速度を遅くすることもできる。たとえば、最初のローラーの速度をvとして、0.1v/(n−1)ずつ、遅くして最後のn番目ローラーの速度を0.9vにすることも可能である。(すなわち、強制シュリンキングコンベヤーにおける長尺ゴム部材の入り側の速度に対して強制シュリンキングコンベヤーにおける長尺ゴム部材の出側の速度を10%減速する。)ローラーの高さも個別に自動または手動で調整できるが、通常は、長尺ゴム部材がまっすぐに進むように、前方コンベヤー17や後方コンベヤー18とローラー14の高さはそろえている。
【0015】
上側シュリンキングローラーコンベヤー15には昇降機構がついていて、22の矢印で示すように上側シュリンキングローラーコンベヤー15を上下に昇降できるようになっている。この昇降は、強制シュリンキングローラーコンベヤー12が停止中だけでなく稼働中も可能である。上側シュリンキングローラーコンベヤー15にも複数のローラー16がついている。上側シュリンキングローラーコンベヤー15のローラー16の数は、下側シュリンキングローラーコンベヤー13のローラー14の数と一致する。(16−1〜n)長尺ゴム部材21は上下の同じ位置でローラー14とローラー16に挟まれる。
【0016】
さらに、上側シュリンキングローラーコンベヤー15は昇降圧力を精密にコントロールできるので、長尺ゴム部材21を挟んだ後もローラー16を介して長尺ゴム部材21を圧接できる。すなわち、本発明の強制シュリンキングローラーコンベヤー12は長尺ゴム部材21を挟んでいるだけでなく圧接もしながら、長尺ゴム部材21を搬送することができる。個々のローラー16の高さは個別に自動または手動で調整可能であり、長尺ゴム部材21の各部における厚みに合わせて高さ調整できる。たとえば、下流(後方)側ほど厚みを薄くして徐々に収縮比率を増すようにローラー16の高さ調節をすることもできる。或いは、途中のローラー同士(ローラー14および16)の挟みこみで一気に収縮比率を高めるということも可能である。以上のように、長尺ゴム部材21は昇降機構によるプレス圧力やローラー16の高さ調節により適度な圧接力が加えられ、強制的にシュリンク(収縮)され、最適の収縮度を得ることができる。本発明の上下のシュリンキングコンベヤーはそれら上下のローラーの間に長尺ゴム部材を挟んで圧接し、強制的に長尺ゴム部材を収縮しているので、この上下のシュリンキングコンベヤーを強制シュリンキング(ローラー)コンベヤーと呼んでも良い。
【0017】
ローラー16はフリーローラーであっても良いし、或いはローラー15と同じように個々のローラー16(16−1〜n)に個別に駆動装置をつけた駆動ローラーであっても良い。さらには、これらを組み合わせたものでも良い。ローラー16がフリーローラーの場合は、ローラー16は自由に回転できるので、下側シュリンキングローラーコンベヤー13のローラー14の速度に合わせてローラー16も回転し、長尺ゴム部材21をスムーズに圧接しながら走行させることができる。ローラー16が駆動ローラーの場合、ローラー16の回転速度を任意に調整できるので、ローラー16の回転速度をローラー14の回転速度と合わせることもできるし、異なった速度にすることもできる。ローラー14の回転速度に対してローラー16の回転速度を変化させることにより、長尺ゴム部材21の収縮比率も変化させることができるので、切断後の長尺ゴム部材21の変形が少ない最適な状態を作り出すことができる。たとえば、上下のシュリンキングローラーコンベヤー(強制シュリンキングローラーコンベヤー)における長尺ゴム部材の引き取り速度に対して表面速度を漸減できるように上下のローラーコンベヤーの速度を調整し、これにより長尺ゴム部材の収縮度を制御することもできる。このように、本発明は、表面速度を漸減することによるシュリンク比率を有したシュリンキングコンベヤー装置を上下に配置し、走行する長尺ゴム部材押出物を上下のローラーコンベヤーによって挟みこんで適度に圧接することにより、フリーの状態でシュリンクできる範囲以上の比率で走行可能となる強制シュリンキングコンベヤー装置である。
【0018】
前方コンベヤー17は押出機11から押し出された長尺ゴム部材21を引き取るが、ベルト搬送でも良いし、シュリンキングローラーコンベヤーと同じくローラーコンベヤーでも良いし、或いは、長尺ゴム部材をスムーズに搬送して次の強制シュリンキングローラーコンベヤー12に受け渡しができれば他の手段でも良い。前方コンベヤーにも駆動機構が備わっていて、長尺ゴム部材の搬送速度を自由に変えることができる。従って、強制シュリンキングローラーコンベヤーにおける長尺ゴム部材の搬送速度と連動して前方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度を調整できる。たとえば、前方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度と強制シュリンキングコンベヤーにおける長尺ゴム部材の入り側速度を連動制御させることもできる。
【0019】
また、後方コンベヤー18は強制シュリンキングローラーコンベヤー12から搬送される長尺ゴム部材21を引き取るが、ベルト搬送でも良いし、シュリンキングローラーコンベヤーと同じくローラーコンベヤーでも良いし、或いは強制シュリンキングローラーコンベヤー12から長尺ゴム部材21をスムーズに引き取りができて、その後で長尺ゴム部材21をスムーズに搬送することができれば他の手段でも良い。後方コンベヤーにも駆動機構が備わっていて、長尺ゴム部材の搬送速度を自由に変えることができる。従って、強制シュリンキングローラーコンベヤーにおける長尺ゴム部材の搬送速度と連動して後方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度を調整できる。たとえば、強制シュリンキングコンベヤーからの長尺ゴム部材の出側速度と後方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度を連動制御させることもできる。
【0020】
次に本発明の強制シュリンキングローラーコンベヤーを用いて長尺ゴム部材を製造する方法について説明する。図2は、図1に示す本発明の上下の(強制)シュリンキングローラーコンベヤー(上下から強制的に長尺ゴム部材を挟んで圧接し収縮しているので、これを強制シュリンキング(ローラー)コンベヤーとも呼ぶ)を備えた長尺ゴム部材押出時の収縮応力除去装置を立体的に見た斜視図である。図2に示す押出機31は多層型押出機であり、A、B、Cの入り口側から3種類のベルトゴム部材を供給し、押出機31から3層に接合して押し出す。押出機31から押し出された長尺ゴム部材32は前方コンベヤー33に引き取られて搬送される。前方コンベヤー33の後方には強制シュリンキングローラーコンベヤー40が配置されている。長尺ゴム部材32は前方コンベヤー33から強制シュリンキングローラーコンベヤー40へ渡される。長尺ゴム部材32が強制シュリンキングローラーコンベヤー40へ入るまでは、強制シュリンキングローラーコンベヤー40の上側シュリンキングローラーコンベヤー36は上方へ上がっている。従って、長尺ゴム部材32の先端は下側シュリンキングローラーコンベヤー34に引き取られ、長尺ゴム部材32は下側シュリンキングローラーコンベヤー34のローラー35に乗って走行する。さらに、下側シュリンキングローラーコンベヤー34の個々のローラー35も回転しているので、そのローラー35の回転により長尺ゴム部材32は下側シュリンキングローラーコンベヤー34の下流(後方)側に進んでいく。
【0021】
次に図3に示すように、長尺ゴム部材32の先端が下側シュリンキングローラーコンベヤー34の適当な位置に来たときに、昇降機構38で示すように、上側シュリンキングローラーコンベヤー36が下降して来て、上側シュリンキングローラーコンベヤー36のローラー37が長尺ゴム部材32の上面に接触し、さらに、長尺ゴム部材32を下側シュリンキングローラーコンベヤー34のローラー35および上側シュリンキングローラーコンベヤー36のローラー37によって挟みながらかつ適度に圧接する。長尺ゴム部材32は圧接されながら、長尺ゴム部材32の先端が強制シュリンキングローラーコンベヤー40から出ていき、強制シュリンキングローラーコンベヤー40の後方に隣接して配置された後方コンベヤー39に入る。長尺ゴム部材32の先端は後方コンベヤー39に引き取られた後、後方コンベヤー39により搬送される。搬送後の長尺ゴム部材は、たとえば、適当な長さに切断されたり、巻き取られたりする。
【0022】
上側シュリンキングローラーコンベヤーを下降させて長尺ゴム部材32を上下のシュリンキングローラーコンベヤー34および36の各ローラー35および37で挟んで圧接する位置として、長尺ゴム部材32の先端部から行っても良いが、この場合にはスムーズに入るように最初の圧接度を調整する必要がある。この場合には長尺ゴム部材32は先端部から適切な圧接度を得られるので、捨てる部材の量を最小限にすることができる。また、長尺ゴム部材32の先端部が下側シュリンキングローラー34の途中まで運ばれたときに上側シュリンキングローラーコンベヤー36を下降させて長尺ゴム部材32を圧接することもできる。この場合は、長尺ゴム部材32の先端部側は最適の収縮度にならない場合もあるので、検査などを行い確認する必要もある。或いは、長尺ゴム部材32の先端部が下側シュリンキングローラー34から出た後で上側シュリンキングローラーコンベヤー36を下降させて長尺ゴム部材32を圧接することもできる。この場合には、長尺ゴム部材32の先端部は十分に圧接されないので、適切な収縮度にはなっていない。
【0023】
長尺ゴム部材32の先端が強制シュリンキングローラーコンベヤー40を出た後は、上側シュリンキングローラーは降りているので、その後の長尺ゴム部材32は、図3に示すように、上下のローラー35および37に常に圧接される。すなわち、長尺ゴム部材32は、押出機31から押し出され、次に前方コンベヤー33で運ばれ、さらに、強制シュリンキングローラーコンベヤー40の下側シュリンキングローラーコンベヤー34および上側シュリンキングローラーコンベヤー36の各ローラー35および37に挟まれかつ圧接されながら搬送される。さらに、強制シュリンキングローラーコンベヤー40から出た長尺ゴム部材32は後方コンベヤーで運ばれていく。
【0024】
押出機31から押し出されてくる長尺ゴム部材32は、押出機から出た直後から冷却され徐々に収縮(シュリンク)していくが、本発明では、上下のシュリンキングローラーコンベヤー34および36の各ローラー35および37に挟まれかつ圧接されて強制的に収縮できる。しかも上下のローラー速度を収縮度に合わせて調節できるし、上側シュリンキングローラーコンベヤー36の下方への圧力を調節することにより圧接度を変化させて収縮度を調節できる。従って、強制シュリンキングローラーコンベヤー40を出たときには、長尺ゴム部材32の収縮度を最適化でき、その後のゴム部材の形状変形を最小化できる。
【0025】
また、長尺ゴム部材32は、下側シュリンキングローラーコンベヤー34および上側シュリンキングローラーコンベヤー37のローラー35および37に直接接触しているので、長尺ゴム部材32の熱がこれらのローラーから逃げていき長尺ゴム部材32の温度も早く下げることができる。この冷却効果も収縮度を高めることができる。この冷却効果を高めるためにローラー35および37に熱伝導度の大きな材料を用いることもできる。たとえば、ローラー35および37を金属材料、特に熱伝導性の良い銅やアルミニウムの単体金属やこれらの金属の合金を使用できる。或いは、熱伝導性の良いカーボンナノチューブを含有する高分子材料でも良い。さらに、ローラー内に冷却水を流してローラーを冷やしたり、ローラーに散水する方法も有効である。ローラーは直接長尺ゴム部材に接触するので、ローラー材質が金属部材や硬い高分子材料では長尺ゴム部材にダメージを及ぼすおそれがある場合は、やわらかい高分子材料やゴム材料でローラーを被覆しても良い。
【0026】
以上説明したように、本発明は自動車のタイヤの製造に使用される長尺ゴム部材を押出機から出た後に、上下のシュリンキングローラーコンベヤーの各ローラー間に長尺ゴム部材を挟んで適度に圧接して強制的に収縮する。得られた長尺ゴム部材は適切な収縮度を実現できるので、ゴム部材の収縮内部応力を除去または最小化でき、長尺ゴム部材或いは長尺ゴム部材の切断後の部材、或いは長尺ゴム部材の巻き取り後におけるゴム部材の形状変化を最小化することができる。
【0027】
上記においては、強制シュリンキングローラーコンベヤーは1台として説明してきただが、強制シュリンキングローラーコンベヤーを複数台連ねて長尺ゴム部材を搬送することもできる。この場合、複数台の強制シュリンキングローラーコンベヤーの速度や圧接度を調整して、長尺ゴム部材を段階的に圧接してシュリンクしても良い。本発明の強制シュリンキングコンベヤーは、上下のシュリンキングコンベヤーで長尺ゴム部材を強制的に圧接しているので、長尺ゴム部材が尺取り虫状態にならずにスムーズに走行させることができる。或いは、下側シュリンキングコンベヤーおよび/または上側シュリンキングコンベヤーのローラー径を下流(後方)ほど小さくして、シュリンキングコンベヤーの速さを下流に行くに従い遅く設定しても、本発明の強制シュリンキングコンベヤーは、上下のシュリンキングコンベヤーで長尺ゴム部材を強制的に圧接しているので、長尺ゴム部材が尺取り虫状態にならずにスムーズに走行させることができる。
さらに、押出機からの引き取りをスムーズにできるようにすれば、前方コンベヤーをなくして押出機から直接に強制シュリンキングローラーコンベヤーに長尺ゴム部材を受け渡しても良い。或いは、強制シュリンキングローラーコンベヤーからスムーズに巻き取り機や切断機に受け渡しができるようにすれば後方コンベヤーもなくすこともできる。
【0028】
尚、上述の強制シュリンキングローラーコンベヤーでは、上側シュリンキングコンベヤーにローラーを用いているが、上側シュリンキングコンベヤーにベルトコンベヤーを用いても長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去または縮小できる。上側シュリンキングコンベヤーにベルトコンベヤーを用いたときには、長尺ゴム部材を挟みこんで適度に圧接できるように、下側シュリンキングローラーコンベヤーのローラーによって上側のベルトが変形しないようにする必要がある。上側シュリンキングコンベヤーのベルトに駆動機構を持たせて、前記ベルトの回転速度と下側シュリンキングコンベヤーのローラーの回転速度とを調整することにより、前記長尺ゴム部材の収縮度を調整することもできる。下側シュリンキングコンベヤーの各ローラーの表面速度を上流(前方)から下流(後方)へ漸減させる場合には、上側シュリンキングコンベヤーのベルトの表面を滑りやすい材質にすることにより、長尺ゴム部材をスムーズに走行させることができる。
【0029】
また、本発明は自動車用タイヤに用いられるゴム部材だけでなく、一般に押出機により押し出して製造されるシート状ゴム部材やシート状高分子材料にも適用できる。尚、上述の説明において、1つの実施例または実施形態において記載した内容であって他の実施例または実施形態において記載しなかった内容であっても、お互いに矛盾なく適用できるものに関しても、当該実施例または実施形態において適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、押出機により押し出される長尺ゴム部材の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
11 押出機、12 (強制)シュリンキングローラーコンベヤー、
13 下側シュリンキングローラーコンベヤー、14 ローラー、
15 上側シュリンキングローラーコンベヤー、16 ローラー、17 前方コンベヤー、
18 後方コンベヤー、19 駆動装置、20 制御装置、21 長尺ゴム部材、
22 昇降機構、31 押出機、32 長尺ゴム部材、33 前方コンベヤー、
34 下側シュリンキングローラーコンベヤー、35 ローラー、
36 上側シュリンキングローラーコンベヤー、37 ローラー、38 昇降機構、
39 後方コンベヤー、40 強制シュリンキングローラーコンベヤー、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺ゴム部材の押出しラインに用いられる長尺ゴム部材の収縮応力除去装置であって、前記長尺ゴム部材を挟みかつ圧接しながら搬送するための複数のローラーを有する下側シュリンキングコンベヤーおよび複数のローラーまたはベルトを有する上側シュリンキングコンベヤーを含む収縮応力除去装置。
【請求項2】
上側シュリンキングコンベヤーは昇降可能であり、前記長尺ゴム部材の圧接度を調節することにより、前記長尺ゴム部材の収縮度を調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の収縮応力除去装置。
【請求項3】
下側シュリンキングコンベヤーの複数のローラーは個別に駆動可能であり、前記下側シュリンキングコンベヤーの複数のローラー速度を個別に制御することにより、前記長尺ゴム部材の収縮度を調整することを特徴とする、請求項1または2に記載の収縮応力除去装置。
【請求項4】
上側シュリンキングコンベヤーの複数のローラーは個別に駆動可能であり、下側シュリンキングコンベヤーの対応するローラーとの回転速度を調整することにより、前記長尺ゴム部材の収縮度を調整することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の収縮応力除去装置。
【請求項5】
上側シュリンキングコンベヤーのベルトは駆動機構を有しており、前記ベルトの回転速度と下側シュリンキングコンベヤーのローラーの回転速度とを調整することにより、前記長尺ゴム部材の収縮度を調整することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の収縮応力除去装置。
【請求項6】
上側シュリンキングコンベヤーの複数のローラーはフリーローラーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項に記載の収縮応力除去装置。
【請求項7】
押出機および上下のシュリンキングコンベヤーの間に前方コンベヤーをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の収縮応力除去装置。
【請求項8】
前方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度は可変自在であり、前記上下のシュリンキングコンベヤーにおける長尺ゴム部材の搬送速度と連動して前方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度を調整できることを特徴とする、請求項7に記載の収縮応力除去装置。
【請求項9】
上下のシュリンキングコンベヤーの後方には後方コンベヤーをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかの項に記載の搬送装置。
【請求項10】
後方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度は可変自在であり、前記上下のシュリンキングコンベヤーにおける長尺ゴム部材の搬送速度と連動して後方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度を調整できることを特徴とする、請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
長尺ゴム部材を押出機より押出す工程および、
上下のシュリンキングコンベヤーを用いて、押出された長尺ゴム部材を前記上下のシュリンキングコンベヤーの各ローラーにより圧接しながら搬送する工程を含む、長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去する方法。
【請求項12】
下側シュリンキングコンベヤーおよび/または上側シュリンキングコンベヤーにおける複数のローラーの速度を変化させることにより、長尺ゴム部材の収縮度を調節することを特徴とする、請求項11に記載の長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去する方法。
【請求項13】
前方コンベヤーを用いて、押出機器より押し出された長尺ゴム部材を引き取り、前記上下のシュリンキングコンベヤーに送り出す工程をさらに含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去する方法。
【請求項14】
前記前方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度と前記上下のシュリンキングコンベヤーにおける長尺ゴム部材の入り側速度は連動制御されていることを特徴とする、請求項13に記載の長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去する方法。
【請求項15】
後方コンベヤーを用いて、前記上下のシュリンキングコンベヤーから送り出された長尺ゴム部材を引き取る工程をさらに含むことを特徴とする、請求項11〜14のいずれかの項に記載の長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去する方法。
【請求項16】
前記上下のシュリンキングコンベヤーからの長尺ゴム部材の出側速度と後方コンベヤーの長尺ゴム部材の搬送速度は連動制御されていることを特徴とする、請求項15に記載の長尺ゴム部材の収縮内部応力を除去する方法。



【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−235616(P2011−235616A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111462(P2010−111462)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】