説明

押出成形品の製造方法

【課題】 溶融樹脂の押出成形時において、低分子の添加剤の飛散を低減し、廃棄物の削減と添加剤の必要量を少なくする。
【解決手段】 供給部より下流に設けた減圧ベント部に凝縮器を装備した押出機によって、樹脂添加剤を配合した樹脂組成物を溶融させて押出成形品を製造する方法において、前記溶融樹脂組成物を溶融させた際に揮発する樹脂添加剤のうち、沸点が100℃よりも高い樹脂添加剤を前記凝縮器で凝縮させてこの凝縮器の下方から押出機シリンダーに還流させ、これを溶融樹脂に再度混練することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形品の製造方法に関する。さらに詳しくは、相対的に低沸点の樹脂添加剤が配合された樹脂組成物から押出成形品を製造する際に、樹脂組成物の溶融温度で揮発または飛散し易い沸点が100℃より高い樹脂添加剤を凝縮させ、溶融樹脂に戻す押出成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、樹脂添加物を全く配合しないで使用される場合があるほか、原料樹脂に特定の性能を付与する目的で、充填剤(フィラー)、酸化防止剤(熱安定剤、光安定剤などを含む)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤などの樹脂添加剤を配合し、押出機で溶融・混練してペレット、棒、フィルム、テープ、シート、チューブなどの成形品に成形される。成形品がペレットの場合は、このペレットは、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などによって別の成形品を製造する際の原料として使用される。押出成形法により成形品を製造する際には、製品の品質、外観などを向上させる目的で、原料樹脂や樹脂添加剤に由来する空気、水分などを除去する必要がある。
【0003】
樹脂組成物に含まれる空気や水を除去する手法として、供給部(ホッパー)より下流に減圧ベント部を設け押出機を使用し、この減圧ベント部に減圧を適用して溶融樹脂組成物から強制的に除去する方法が提案され、実用化されている。しかしこの従来の除去方法によると、原料樹脂組成物に特定の性能を付与する目的で配合されている、原料樹脂の溶融温度に比較して低い沸点の樹脂添加剤も同時に除去される。添加剤が減圧ベント部から強制的に除去されると、添加剤の添加効率が低下するので、その配合量を多くする必要があるばかりでなく、除去された添加剤はそのまま大気中に飛散させると作業環境を汚染する問題があるほか、凝縮させて回収しても他の排出物と混合しているのでそのまま再使用することができず、廃棄処理するにしてもそのための費用が必要となるために、コスト高になるという欠点があった。
【0004】
このような特定の性能を付与する目的で配合されている添加剤が、押出機の減圧ベント部に減圧を適用することによって、空気や水分と同時に強制的に除去されるという問題の解決法として、蒸気圧曲線(温度と蒸気圧との関係)を勘案して減圧ベント部に適用する減圧度を調節する方法がある。この方法は、水の蒸気圧と低沸点添加剤の蒸気圧が、押出機のシリンダー温度(200℃程度またはそれ以上)近傍で大きく異なる場合に有効である。例えば、0.04MPaの減圧を適用すると、0.001MPaの減圧を適用した場合と比較して、水を同程度(正確には若干低下)に除去しつつ、添加剤の飛散を少なくすることができる。しかし、上記方法は、押出機のシリンダー設定温度近傍で、水の蒸気圧曲線と低沸点添加剤の蒸気圧曲線が接近している場合や、水と共沸混合物を形成する添加剤の場合には、効果がない。
【0005】
一般に、気体や液体の混合物から、ある成分の分離や回収を行う場合には、凝縮器を用いて分別蒸留することが多い。押出機で溶融させた樹脂(対象物)に対して、減圧ベント部に減圧を適用して揮発分を除去する技術は、例えば、特許文献1に、押出機に凝縮器を装着して揮発成分を除去する方法が記載されている。しかし、特許文献1に記載の方法では、モノマーなどの低分子物質を含む重合体から低分子物質(揮発成分)をできるだけ除く(揮発させる)ことを目的としており、揮発成分自体の除去(回収)量は減ることがなく、揮発成分を押出機に直ちに還流することもない。
【特許文献1】特開昭57−49603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、かかる状況にあって、上記従来技術の欠点を排除した技術を提供することを目的として、鋭意検討した結果本発明を完成されたものである。すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.特定の性能を付与する目的で樹脂添加剤が配合された樹脂組成物を、押出機で溶融混練する際に押出機の減圧ベント部に減圧を適用した場合でも、強制的に除去される添加剤の量が少ない押出成形品の製造方法を提供すること。
2.原料樹脂組成物に特定の性能を付与する目的で配合される樹脂添加剤の添加効率を向上させる、押出成形品の製造方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、供給部より下流に設けた減圧ベント部に凝縮器を装備した押出機によって、樹脂添加剤を配合した樹脂組成物を溶融させて押出成形品を製造する方法において、前記溶融樹脂組成物を溶融させた際に揮発する樹脂添加物のうち、沸点が100℃よりも高い物質を前記凝縮器で凝縮させ、この凝縮器下方から押出機シリンダーに還流させ、これを溶融樹脂に再度混練することを特徴とする、押出成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下詳細に説明するとおりであり、つぎのような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明方法によれば、特定の性能を付与する目的で樹脂添加剤が配合された、樹脂組成物を押出機によって溶融混練する際、押出機の減圧ベント部に減圧を適用した場合でも、強制的に除去される添加剤の量が少なく、廃棄する添加剤の量を大幅に減らすことができる。
2.本発明方法によれば、溶融樹脂組成物を溶融させた際に揮発する樹脂添加物のうち、沸点が100℃よりも高い物質を凝縮器で凝縮させ、凝縮した物質を凝縮器下方から押出機シリンダーに還流させ、これを溶融樹脂に再度混練するので、樹脂添加剤の添加効率に優れた押出成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明方法で使用される押出機は、原料樹脂組成物を加熱して溶融させ、原料樹脂に配合された樹脂添加剤を樹脂に練り込み、均一に分散させる機能を果たすものをいう。押出機の基本的構造は、シリンダー内にスクリューが配置されたシリンダーの上流側に供給部(ホッパー)が設けられ、下流側先端にダイが装着されたものであり、シリンダー外壁にバンドヒーターなどの加熱手段を装備する。また、スクリューが一本の一軸(単軸)押出機、スクリューが二本の二軸押出機などがある。
【0010】
本発明方法で使用される押出機では、供給部(ホッパー)より下流に減圧ベント部が設けられている必要がある。減圧ベント部は、樹脂組成物を溶融・混練する際に、シリンダー内で発生した揮発分を除去する機能を果たす。減圧ベント部を設ける位置は、押出機シリンダーの供給部より下流であって、全長の1/2から全長の4/5の間の位置が好ましい。この減圧ベント部の開口部に凝縮器を装着し、この凝縮器の先端側に真空ポンプを接続し、減圧ベント部と凝縮器に減圧を適用可能にする。なお、減圧ベント部は通常は一個が普通であるが、二個設けることもできる。また、供給口と減圧ベント部との間に、減圧を適用しない開放ベント部を一個ないし二個設けることもできる。本発明方法によるときは、凝縮器で凝縮された添加剤は、再度、溶融樹脂と均一に混練する必要があるので、減圧ベント部以降で十分な混練ができるように、押出機のスクリュー構成を考慮する必要がある。
【0011】
減圧ベント部の開口部に装着する凝縮器は、原料樹脂組成物を溶融混練する途中で減圧ベント部に減圧を適用した際に、気化して溶融樹脂組成物から強制的に除去される揮発分(空気、水など)、揮発する樹脂添加物のうち、沸点が100℃よりも高い添加物を液状に凝縮させ、この液状物を凝縮器下方から押出機シリンダー内に還流させるように機能する。添加物を凝縮させ押出機シリンダー内に還流させることにより、溶融樹脂組成物から揮発除去される添加剤の量を少なくし、添加剤の添加効率を高めることができる。その際、還流するのに時間がかかりすぎると、添加剤の劣化や熱分解を生じる恐れがある。そのため、液状に凝縮された添加剤は凝縮器内に滞留させず、減圧ベント部に直接流下させるのが好ましいので、減圧ベント部と凝縮器との接続部分は、液状凝縮物の流下を妨げない構造とする必要がある。
【0012】
本発明方法で使用できる凝縮器の構造は、化学工業の分野で蒸留などに使用されている一般的な凝縮器の構造に準じればよい。凝縮器は外形が細長い筒状を呈し、筒状凝縮器の内部は、気化した添加剤などが通過し、通過する際に冷却・凝縮された添加剤が流下できる空間を設けた構造とする。筒の外壁には、凝縮器の内側空間の温度を調節する加熱流体を流すことができるジャッケットを設けた構造とするが、加熱用ヒーターを設けた構造とするのが好ましい。減圧ベント部と凝縮器との接続部分には、溶融樹脂が盛り上がり(ベントアップ)し、凝縮器内部へ侵入することがあるので、筒状凝縮器下部には内部観察可能な透明な覗き窓を設け、さらに筒状凝縮器自体を分解掃除し易い構造とするのが好ましい。
【0013】
筒状凝縮器の内部を、気化した添加剤などが上方に通過し、他方、通過する際に冷却・凝縮された添加剤が流下できるようにするために、次のような構造のものが挙げられる。(1)筒状の短管を複数個(例えば、5〜10個)直列に連結して構成され、各短管の連結部を複数の貫通穴を穿設した仕切り板によって仕切った構造とする。ここで、仕切り板の上側に凝縮された添加剤が流下し易いように、仕切り板に傾斜面を設け、または、傾斜面と案内溝を設けてもよい。また、傾斜面と案内溝のほかに流下穴を設けた板(案内板)を、押出機の減圧ベント部との接続部分に、別途配置することもできる。(2)筒状凝縮器を複数の短管によって構成するのは、上の(1)と同様であるが、各短管を多管式熱交換器{短管の長さ方向両端部(少し内側)を対向する板で塞ぎ、板に複数の穴を設け、上下に対向するそれぞれの穴に複数本の細管を接続し、複数本の細管に揮発分を通過させ、上下の板と複数本の管によって形成される空間部分に、筒の外側から加熱流体を通すことができるようにした構造のもの}とし、隣接する短管の間に、各短管の接続部に複数の貫通穴を穿設した仕切り板で仕切った構造とする。(3)上記(2)の多管式熱交換器に代えて、螺旋管式熱交換器{短管の長さ方向両端部(少し内側)を板で塞ぎ、上下の複数の穴に複数本の螺旋状管を繋ぎ、複数本の螺旋状管に揮発分を通過させ、上下の板と複数本の螺旋状管によって形成される空間に、筒の外側から加熱流体を流すようにできる構造のもの}を配置したもの、などである。
【0014】
本発明方法が適用できる熱可塑性樹脂は、従来から知られている各種熱可塑性樹脂が挙げられる。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステルゴム−スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル−EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンモノマー)−スチレン樹脂(AES)、メチル(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS)、メチル(メタ)アクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS)などのスチレン系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ポリアミド46などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。これら樹脂は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
【0015】
本発明方法によって凝縮還流できる添加剤は、酸化防止剤(熱安定剤、光安定剤)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、防カビ剤、可塑剤などの中で沸点が100℃以上の化合物である。沸点が100℃以下では、除去したい揮発成分である水を除去しつつ添加剤を還流することが困難である。なお、本発明方法によって凝縮還流できる添加剤の具体例を以下に例示するが、添加剤は以下に例示したものに限定されるものではない。
【0016】
酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−tert(以下、単に「t」と略記する)−ブチル−p−クレゾール(融点:69℃以上)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(融点:43℃以上)、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート(融点:49〜52)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点:120℃以上)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(融点:119℃以上)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点:150℃以上)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点:205℃以上)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、(融点:123〜125℃以上)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(融点:185〜188℃)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(融点:244℃)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(融点:120℃)、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル(融点:165℃)、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(融点:220℃)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(融点:38℃以上)、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート(融点:49〜54℃以上)、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(融点:59℃以上、沸点)、トリフェニルホスファイト(融点:15℃、沸点:360℃)、ジフェニルイソデシルホスファイト(融点:18℃、)、フェニルイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)(融点:45〜50℃)、トリスノニルフェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキサイド(融点:203℃)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点:185℃)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点:170℃)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点:237℃)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(融点:148℃)などが挙げられる。上記酸化防止剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。酸化防止剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、酸化防止剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0〜10.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0017】
紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート(融点:42〜43℃)、p−t−ブチルフェニルサリシレート(融点:62〜64℃、沸点)、p−オクチルフェニルサリシレート(融点:72〜74℃)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(融点:142〜143℃)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(融点:63〜64℃)、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン(融点:48〜49℃)、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン(融点:37℃)、2,2’ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(融点:68〜70℃)、2,2’ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(融点:130〜134℃)、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾキノン(融点:145℃)、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン(融点:225℃)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点:129〜130℃)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点:152〜154℃)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点:140℃)、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点:151℃)、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(融点:159℃)、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール](融点:195℃)などが挙げられる。上記紫外線吸収剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。紫外線吸収剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、紫外線吸収剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0〜10.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0018】
帯電防止剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアミン類、ポリ(オキシエチレン)アルキルアミド類、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル類、ポリ(オキシエチレン)アルキルフェノールエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、アルキルスルホネート類、アルキルベンゼンスルホネート類、アルキルサルフェート類、アルキルホスフェート類、4級アンモニウムクロライド類、4級アンモニウムサルフェート類、4級アンモニウムナイトレート類などが挙げられる。上記帯電防止剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。帯電防止剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、帯電防止剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0〜5.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0019】
難燃剤の具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ヘキサブロモベンゼン(融点:315℃以上)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイド(融点:300℃以上)、テトラデカブロモ−p−ジフェノキシベンゼン(融点:375℃)、テトラブロモシクロオクタン(融点:97〜110℃)、ジメチルフェニルホスフェート(沸点:270℃)、トリメチルホスファイト(沸点:111℃)、トリクレジルホスフェート{沸点:420℃(760mmHg)}、トリエチルホスフェート{沸点:210〜220℃(760mmHg)}、トリフェニルホスフェート{沸点:370℃(760mmHg)}、オクチルジフェニルホスフェート{沸点:375℃(760mmHg)}、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート{沸点:220〜250℃(5mmHg)}、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。上記難燃剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。難燃剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、難燃剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0〜20.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0020】
滑剤としては、脂肪族炭化水素系滑剤、高級脂肪族アルコール系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤などが挙げられる。脂肪族炭化水素系滑剤としては、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックスおよびこれらの部分酸化物、ポリオレフィンワックスの部分フッ化物、ポリオレフィンワックスの部分塩化物などが挙げられる。金属石鹸系滑剤としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム(融点:179〜180℃)、ステアリン酸アルミニウム(融点:103℃)、ステアリン酸マグネシウム(融点:132℃)などが挙げられる。上記滑剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。滑剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、滑剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0021】
防カビ剤の具体例としては、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド(融点:約145℃)、N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド(融点:105℃)、2−メトキシカルボニルアミノベンゾイミダゾール(融点:300℃以上)、2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾールとN−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミドとの混合物などが挙げられる。上記防カビ剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。防カビ剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、防カビ剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0022】
可塑剤の具体例としては、リン酸トリブチル{沸点:177〜178℃(27mmHg)}、リン酸トリ−2−エチルヘキシル{沸点:230℃(10mmHg)}、リン酸トリフェニル(沸点:370℃)、リン酸トリクレジル(沸点:420℃)、フタル酸ジメチル(沸点:282℃)、フタル酸ジエチル(沸点:296℃)、フタル酸ジブチル(沸点:339℃)、フタル酸ジヘプチル{沸点:235〜245℃(10mmHg)}、フタル酸ジ−n−オクチル{沸点:220〜248℃(4mmHg)}、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(沸点:386℃)、フタル酸ジイソノニル(沸点:403℃)、フタル酸オクチルデシル{沸点:235〜248℃(4mmHg)}、フタル酸ジイソデシル(沸点:420)、フタル酸ブチルベンジル(沸点:370℃)、オレイン酸ブチル{沸点:190〜230℃(6.5mmHg)}、グリセリンモノオレイン酸エステル、アジピン酸ジブチル{沸点:168〜170℃(17mmHg)}、アジピン酸−n−ヘキシル{沸点:204〜206℃(8mmHg)}、アジピン酸ジ−n−エチルヘキシル{沸点:214℃(5mmHg)}、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル{沸点:237℃(5mmHg)}、セバシン酸ジブチル{沸点:175〜180℃(3mmHg)}、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル{沸点:248℃(4mmHg)}、エチレングリコールジベンゾエート{沸点:230〜242℃(5mmHg)}、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート{沸点:206℃(5mmHg)}、アセチルリシノール酸メチル{沸点:185℃(1mmHg)}、アセチルリシノール酸ブチル{沸点:195℃(1mmHg)}、ブチルフタリルブチルグリコレート{沸点:219℃(5mmHg)}、アセチルクエン酸トリブチル{沸点:173℃(1mmHg)}などが挙げられる。上記可塑剤は、一種類でも二種類以上の混合物であってもよい。可塑剤の原料樹脂に対する配合量は、樹脂の種類、可塑剤の種類、成形品の用途などによるが、樹脂100重量部に対して0〜50.0重量部の範囲で選ぶことができる。
【0023】
原料の熱可塑性樹脂には、上記添加剤のほかに、充填剤、着色剤、難燃助剤、発泡剤、発泡用核剤、結晶化核剤などを配合することができる。原料樹脂に上記添加剤を配合するには、各成分を所定量秤量し、あらかじめブレンダー、ミキサー、ニーダーなどで混合し、得られた混合物を、図1に概念図として示した装置の供給部(ホッパー)に供給して、目的とする押出成形品を製造する。
【0024】
以下本発明方法を実施する際に使用される装置、これに装着される凝縮器について説明する。図1は、本発明方法に従って押出成形品を製造する際に使用される装置の一例の概念図である。図1において、1は押出機シリンダー、2はスクリュー、3は供給部、4は開放ベント部、5は減圧ベント部、6はダイ、7は凝縮器、8は温度調節用ヒーターまたはジャケット、9は温度調節装置、10はベント液貯蔵槽、11は電磁弁、12は圧力調節装置、13は真空ポンプ、14は導管をそれぞれ意味する。
【0025】
図2は、押出機シリンダーに設けられた減圧ベント部に装着される凝縮器の一例の縦断側面略図であり、固定ボルト、バンドヒーター、凝縮物を下方に案内する案内板も省略した。図3は短管の一例の斜視図、図4は仕切り板の一例の平面図、図5は案内板の一例の斜視図である。図において、15は減圧ベント部、16は短管、17は導管との接続部、18は仕切り板、20は空間部、21はフランジ、22はボルト用穴、23は貫通穴、24はボルト穴、25は傾斜部、26は凝集物流下用穴、27、28はボルト用穴である。図2に例示した凝縮器7は、図3に例示した五個の短管16が連接されて構成されている。短管同士の接続部には、図4に例示した仕切り板18が配置され、ボルトによって固定される。短管16の胴部には、温度調節するために、流体が循環可能なジャッケット設置することができるし、バンドヒーターを巻きつけることもできる。仕切り板18は、減圧を適用することによって強制的に揮発させた気体を、温度調節された短管内に誘導するもので、隣接する短管のフランジの間に挟みこむ。流下穴を設けた板(案内板)19は、短管内で凝縮された凝縮物を傾斜部25で穴26から下方に流下させるもので、最下段の短管の下側に接触させて配置される。
【0026】
図1に示した装置によって樹脂組成物を溶融・混練する手順を説明する。シリンダーを設定温度に昇温し、凝縮器温度を所定の温度に設定した押出機の供給口(ホッパー)3に原料樹脂組成物を供給し、スクリューを回転させて樹脂組成物を加熱溶融・混練しつつ、押出機下流側に移動させ、押出機先端に装着したダイから成形品を押し出す。押出作業を安定的に遂行できるようになったら、真空ポンプを稼動させ、減圧度を最適圧力に調節しながら押出作業を継続する。
【0027】
本発明方法によって成形品を製造する際の凝縮器内部温度と、凝縮器に適用する減圧度は、事前の小規模の実験で確認して設定することができる。本発明者らの実験によれば、凝縮器内部の温度(飛散物が接触する壁面などの温度)と減圧度は、対象となる添加剤の蒸気圧曲線を用いて設定するのが好ましいことが分かった。すなわち、凝縮器を通過する揮発物に含まれる水を液化させず、添加剤のみを液化させることが必要であり、その条件を満たす温度と減圧度との関係を把握すればよいことが分かった。揮発物に含まれる水を液化させず、添加剤のみを液化させるには、水自体の蒸気圧が低くなりすぎないようにし、かつ、水の蒸気圧曲線(温度を横軸、圧力を縦軸とした曲線)の下側になる条件を選択すればよい。さらに、水の沸点よりも高い沸点を有し、水よりも気化し難い添加剤を凝縮器で凝縮させ、押出機シリンダーに還流させるには、添加剤の種類、特にその沸点によって異なるが、凝縮器内部の温度を50〜200℃の範囲で選び、蒸気圧を0.001〜0.09MPaの範囲で選ぶのが好ましい。
【0028】
図6は、本発明者らの実験に用いた温度−圧力曲線である。図6において、横軸は温度(℃)、縦軸は蒸気圧(MPa)であり、29は水の蒸気圧曲線であり、30は添加物の一種であるリン酸トリフェニル{沸点:370℃(760mmHg)}の蒸気圧曲線である。水よりも気化し難い添加剤を凝縮器で凝縮させ、押出機シリンダーに還流させるには、図6の水の蒸気圧曲線29と波線31とで囲まれた領域内で、温度−蒸気圧を選べばよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明方法を、実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の記載例によって限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
押出機(東芝機械社製、型式:TEM−37BS、スクリュー径37mm、同長さ1550mm、12ゾーンよりなり、第1ゾーンに供給部、第4ゾーンに開放ベント部が設けられ、第10ゾーンに減圧ベント部が設けられている)の減圧ベント部に、次のような構造の凝縮器を接続し、図1に概念図で示したような装置を装備し、押出機先端にはペレット製造用ダイを接続した。凝縮器は図2に示したような段数は5段構造とし、一個の短管の長さが100mm、中央空間部の直径が40mmのものである。仕切り板の厚さは2mm、直径が4mmの貫通穴を8個、円周状に設け、最下段の短管の下には、図4に斜視図として示した流下穴が設けられた厚さが10mmの案内板を配置した。下から2段目の短管の表面温度を測定して1段目〜3段目を温度調節可能とし、下から4段目の短管の表面温度を測定して4段目と5段目を温度調節可能とした。5段目の短管には、径縮小用の部品を接続し、導管で冷却トラップ(図1におけるベント液貯蔵槽の代わりに使用)を介して真空ポンプに接続した。
【0031】
樹脂組成物として、ポリフェニレンエーテル(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、銘柄名:PX−100L)重量55%、ポリスチレン(A&Mポリスチレン社製、銘柄名:HT−478)重量35%、リン酸トリフェニル{沸点:370℃(760mmHg)}(TPP、リン系難燃剤、大八化学社製)10重量%をそれぞれ秤量し、ブレンダーによって混合して混合物とした。得られた混合物を、上記押出機の供給部に供給し、シリンダー温度を280℃に設定し、ペレットの製造を開始した。この際、凝縮器の温度を110℃、圧力を強制的に0.04MPaに制御しつつ、溶融樹脂組成物から揮発分を脱気し、さらに凝縮器で凝縮・還流されずに凝縮器の外部に出された成分を冷却トラップで捕捉して、捕捉物(水が多い)に含まれる飛散したTPPを定量した。冷却トラップで捕捉されたTPPの原料樹脂組成物に対する比率は、0.012重量%であった。
【0032】
[比較例1]
実施例1に記載の例において、同例におけると同様に、圧力を強制的に0.04MPaとしたが、減圧ベント部に装備した凝縮器を使用せず(縮した凝縮物ができるだけ押出機に戻らないようにした堤形状の箇所を含む)に、ペレットを製造した。ベント液貯蔵槽に回収されたTPPに量を定量したところ、全原料組成物に対するTPPの比率は0.26%であり、実施例1の約22倍も多かった。また、ベント接続用配管の付近でわずかに凝縮成分が滞留し、焼けていた。
【0033】
[比較例2]
比較例1に記載の例において、圧力を0.001MPaと変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレットを製造した。ベント液貯蔵槽に回収されたTPPに量を定量したところ、全原料組成物に対するTPPの比率は1.53%であり、実施例1の約130倍、比較例1の5.9倍と多かった。また、ベント接続用配管の付近でわずかに凝縮成分が滞留し、焼けていた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る押出成形品の製造方法では、相対的に低沸点の樹脂添加物が配合された樹脂組成物から押出成形品を製造する際に、樹脂組成物の溶融温度で揮発または飛散し易い沸点が100℃より高い樹脂添加剤を凝縮させ溶融樹脂に戻すことができるので、強制的に除去される添加剤の量が少なく、廃棄する添加剤の量を大幅に減らすことができ、樹脂添加剤の添加効率を高めることができる。本発明に係る方法で製造できる押出成形品としては、ペレット、棒、フィルム、テープ、シート、チューブなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明方法に従って押出成形品を製造する際に使用される装置の一例の概念図である。
【図2】凝縮器の一例の縦断側面図である。
【図3】短管の一例の斜視図である。
【図4】仕切り板の一例の平面図である。
【図5】流下穴を設けた板(案内板)の一例の斜視図である。
【図6】本発明者らの実験に用いた温度−圧力曲線である。
【符号の説明】
【0036】
1:押出機シリンダー
2:スクリュー
3:供給口
4:開放ベント部
5:減圧ベント部
6:ダイ
7:凝縮器
8:温度調節用ヒーターまたはジャケット
9:温度調節装置
10:ベント液貯蔵槽
11:電磁弁
12:圧力調節装置
13:真空ポンプ
14:接続部
15:減圧ベント部
16:短管
17:導管との接続部
18:仕切り板
19:案内板
20:空間部
21:フランジ
22、24、27、28:ボルト用穴
23:貫通穴
25:傾斜部
26:凝集物流下用穴
29:水の蒸気圧曲線
30:リン酸トリフェニルの蒸気圧曲線
31:使用する温度−蒸気圧の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給部より下流に設けた減圧ベント部に凝縮器を装備した押出機によって、樹脂添加剤を配合した樹脂組成物を溶融させて押出成形品を製造する方法において、前記溶融樹脂組成物を溶融させた際に揮発する樹脂添加剤のうち、沸点が100℃よりも高い樹脂添加剤を前記凝縮器で凝縮させてこの凝縮器の下方から押出機シリンダーに還流させ、これを溶融樹脂に再度混練することを特徴とする、押出成形品の製造方法。
【請求項2】
凝縮器の設定温度を50〜200℃の範囲とし、凝縮機に適用する減圧度を0.001〜0.09MPaの範囲とする、請求項1に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項3】
押出機の減圧ベント部との接続部分が、凝縮した低分子が滞留しない内部形状を有する案内板である、請求項1に記載の押出成形品の製造方法。
【請求項4】
凝縮器が、筒状の短管が複数個直列に連結して構成され、各短管の連結部を複数の貫通穴を穿設した仕切り板によって仕切り、最下段の短管の下に配置した案内板の上側に、凝縮された添加剤が流下し易い傾斜が付けられた構造である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の押出成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−36959(P2008−36959A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214129(P2006−214129)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】