説明

押出成形発泡体及びその製造方法

【課題】容器包装リサイクル材の新規用途として、成形性や発泡性に優れた押出成形発泡体を提供する。
【解決手段】ポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂を主体とする容器包装リサイクル材と、有機過酸化物と、発泡剤を含む原料を押出成形機に供給し、押出成形を行うことで前記課題を解決する。前記原料に、ポリエチレン成分が全樹脂成分の50質量%以上となるように、ポリエチレンを付加すれば、さらに優れた押出成形発泡体を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に容器包装リサイクル法に基づき分別収集されたプラスチック製容器包装材料(以下単に「容器包装リサイクル材」という)から、成形性に優れ、発泡性能も良好な押出成形発泡体を製造する方法、及びこの方法で製造した押出成形発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
容器包装リサイクル法の施行により、自治体が分別収集した容器包装プラスチックごみは、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミドのような熱可塑性樹脂と無機物(金属類)を含む混合物であり、容器包装リサイクル事業者により、選別・粉砕・比重分離・洗浄の工程を経て、概ねポリオレフィン系樹脂とポリスチレンを主体とする容器包装リサイクル材が主にペレットに加工され、再生資源として提供されている。
【0003】
しかし、このような容器包装リサイクル材は通常、不均質かつ組成比のばらつきもあり、現状は、押し込み成形や射出成形などに用途が限定されており、新規用途開発が望まれている。
【0004】
一方、近年木材の代替として各種の発泡プラスチック異形押出成形品が建材分野、輸出用梱包資材等として徐々に伸長している。
【0005】
容器包装リサイクル材を押出発泡成形する試みは近年活発になされているが、もともと不均質な樹脂混合組成物であることから、均質な溶融粘度と高溶融張力が重要視される押出発泡成形には不向きで、他のプラスチック原料をマトリックス相とし、これに対し分散相として増量材的に添加され使用されているケースが大半である。また、成形品の発泡倍率も概ね1.3〜1.6倍以下と低く、且つ、発泡セルは不均一で連続セルも存在し、良好な発泡体とは言いがたいものであった。さらに、一般的に高発泡ポリエチレンフォームに利用されている有機過酸化物架橋やシラン架橋ならびに電子線架橋については、元来、容器包装リサイクル材が架橋に有効なポリエチレンのみの単体物でないため検討されることさえ考えづらかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の要望に応じて鋭意開発されたもので、容器包装リサイクル材の新規用途として、容器包装リサイクル材を主体とした原料を押出成形機に供給し、成形性や発泡性に優れた押出成形発泡体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1〕
本発明は、ポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂を主体とする容器包装リサイクル材と、有機過酸化物と、発泡剤を含む原料を押出成形機に供給し、押出成形を行うことを特徴とする押出成形発泡体の製造方法である。
【0008】
〔請求項2〕
また本発明は、前記原料に、ポリエチレン成分が全樹脂成分の50質量%以上となるように、ポリエチレンを付加する請求項1に記載の押出成形発泡体の製造方法である。
【0009】
〔請求項3〕
また本発明は、前記有機過酸化物の量が原料中の全樹脂成分の0.02質量%〜0.40質量%である請求項1又は2に記載の押出成形発泡体の製造方法。
【0010】
〔請求項4〕
また本発明は、前記有機過酸化物が、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類およびハイドロパーオキサイド類から選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法である。
【0011】
〔請求項5〕
また本発明は、前記有機過酸化物の1分間半減期温度が160℃〜200℃である請求項1〜4のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法である。
【0012】
〔請求項6〕
また本発明は、前記発泡剤が化学発泡剤であり、その分解開始温度が前記有機過酸化物の1分間半減期温度以上である請求項5に記載の押出成形発泡体の製造方法である。
【0013】
〔請求項7〕
また本発明は、前記原料に、有機過酸化物によるポリエチレン成分の架橋促進およびポリプロピレン成分の分子量低下を抑えるため、多官能基を有する架橋助剤を添加する請求項1〜6のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法である。
【0014】
〔請求項8〕
また本発明は、前記原料に、複合高分子材料の脆性ならびに耐衝撃性の改善のため、スチレン系エラストマー及び/又はオレフィン系エラストマーを添加する請求項1〜7のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法である。
【0015】
〔請求項9〕
また本発明は、前記請求項1〜8のいずれかの製法方法で製造したことを特徴とする押出成形発泡体である。
【0016】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意研究開発を重ねた結果、容器包装リサイクル材のマトリックス相がポリエチレンとなるよう組成を調整し、これに有機過酸化物と発泡剤とを加えて押出成形機のシリンダー内部で架橋、逐次発泡成長させることにより、微細な均一セルを有する1.7〜2.3倍程度の良好な押出発泡成形品を得るに至った。
【0017】
容器包装リサイクル材は、ポリエチレンとポリプロピレンを主成分とし、その殆どのものがポリエチレン及びポリプロピレンが45質量%以上、ポリスチレンなどのその他の成分が10質量%以下であるが、その組成比にはバラツキがある。
バラツキがある容器包装リサイクル材のポリエチレン成分とポリプロピレン成分について、有機過酸化物は押出成形機シリンダー内の溶融混練工程において、熱分解してパーオキサイドラジカルを発生する。このパーオキサイドラジカルは活性が高いために、ポリエチレンに対してポリマー中の2級炭素から水素ラジカルを引き抜く、2級炭素に発生したラジカルでは主に架橋反応が起こり、分子は見かけ上巨大化して溶融粘度ならびに溶融張力の増大をもたらす。一方、3級炭素が多いポリプロピレンに対してはポリマー側鎖のメチル基の引き抜きと同時にポリマー主鎖の切断が起こるため低分子化して溶融粘度ならびに溶融張力の低下をもたらすという相反的な現象が起こる。そこで、架橋反応が支配的になるよう、原料内のポリエチレン成分が原料の全樹脂成分に対して50質量%以上であることが望ましい。容器包装リサイクル材のポリエチレンの割合が50%に満たない場合は、原料にポリエチレンを付加することが望ましく、通常、容器包装リサイクル材に対して10%程度付加すれば50%を超えるものとなる。
これにより、マトリックス相をポリエチレン側に固定し、相対的に容器包装リサイクル材の溶融粘度および溶融張力の増大を達成することができ、押出発泡成形性を向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の実施において重要な要因となるのが架橋密度である。添加する有機過酸化物の量が多すぎると架橋密度が高くなりすぎてゲルが多発、発泡セルの成長を阻害し、押出発泡成形性を低下させると共に成形品の外観も悪くなる。また、逆に有機過酸化物の添加量が少なすぎると架橋反応が不十分となり、溶融粘度と溶融張力を増大させる所望の効果が得られない。そこで、添加する有機過酸化物の量は、原料中の全樹脂成分の0.02〜0.40質量%が好ましく、さらには0.05〜0.30質量%が好ましい。
有機過酸化物の量が0.02質量%に満たないと、発泡剤により生成された気体が逸散して発泡が不十分になり、また泡の大きさも安定せず連続気泡となって不均質な押出成形発泡体となるおそれがある。
有機過酸化物の量が0.4質量%を越えると、押出成形機内で架橋反応が進みすぎ、必要以上に固化して押出成形ができなくなる可能性がある。
【0019】
本発明にかかる有機過酸化物としては、高分子の水素引き抜き能の高いものが好適である。そこで、具体的な有機過酸化物の例としては、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2、2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4、4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4、4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレートなどのパーオキシケタール類
【0020】
ジ−t−ブチルパーオクサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2、5−ジメチル−2、5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2、5−ジメチル−2、5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド類
【0021】
t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2、5−ジメチル−2、5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテートなどのパーオキシエステル類、ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2、5−ジメチルヘキサン−2、5−ジハイドロパーオキサイドおよび1、1、3、3−テトラメチルブチルパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。これらの有機過酸化物は複数のものを併用してもかまわない。
【0022】
本発明における有機過酸化物は、1分間半減期温度が160℃〜200℃のものが好ましい。
1分間半減期温度が160℃以下の有機過酸化物では、容器包装リサイクル材を主原料とする当該樹脂成分が完全に溶融する温度領域である165〜170℃に満たないため、当該有機過酸化物が溶融樹脂成分中に均一に混練されるまえに大半が分解してしまうため部分的に過剰な架橋が起こりゲル化を多発してしまい均質架橋の点から適切ではない。また、1分間半減期温度が200℃以上の有機過酸化物では、当該樹脂の成形適正温度域である165〜200℃の範囲を高温側に逸脱する必要が生じるため、加熱・冷却にかかるエネルギー効率上、不経済である。
1分間半減期温度が160℃〜200℃であるものの例としては、n−ブチル−4、4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2、5−ジメチル−2、5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2、5−ジメチル−2、5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどが代表的に挙げられる。
【0023】
さらに、本発明にかかる有機過酸化物に対しては、架橋助剤が併用されることがある。架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミドなど、分子中に多官能基を有する化合物が挙げられる。これら架橋助剤は、ポリエチレンの架橋反応を促進して架橋密度を高めると共に、ポリプロピレンの分子量低下を抑える。さらには、ポリエチレンとポリプロピレンのグラフトポリマーの生成を促す働きがあり、得られる押出成形発泡体の耐熱性や機械的強度の向上を図る場合、好適に使用される。また、ポリエチレン成分とポリプロピレン成分の組成比が近接している場合の動的架橋において、ポリエチレンをマトリックス相、ポリプロピレンを分散層とする系の相間反転を防止する効果を有する。
【0024】
また、本発明にかかる押出成形発泡体の性能の中でも特に耐衝撃性・脆性の改善を目的として、ポリオレフィン成分とポリスチレン成分の界面補強効果を有するスチレン−オレフィン系共重合体や、グラフトポリマー生成においてソフトセグメント部となるオレフィン系−ジエン共重合体及びスチレン−ジエン共重合体を添加することができる。これらスチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーの具体的な共重合体の例としては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体(SEPS)、ポリ(エチレン/プロピレン)−ジエンブロック共重合体(EPM/EPDM)、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック−ポリスチレン共重合体(SBS)などが挙げられる。
【0025】
本発明に使用される発泡剤としては、公知の有機系ならびに無機系の化学発泡剤がその汎用性の高さから好適に使用される。具体的な化学発泡剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド等の有機系発泡剤、炭酸水素ナトリウム等の無機系発泡剤が挙げられる。また、これらの発泡剤は複数のものを併用してもかまわない。
【0026】
また、上記の化学発泡剤の選択としては、本発明において使用する有機過酸化物の1分間半減期温度より高い温度域に分解ピーク温度域を持つものが好適に使用される。
化学発泡剤の分解ピーク温度域が有機過酸化物の1分間半減期温度より低いと押出成形機のシリンダー内で架橋反応が進行するまえに化学発泡剤が発泡ガスを出し切ってしまい原料が充分にガスを包括できずに連続気泡となったり、発泡ガスが原料投入側であるホッパー口へとバックアウトしたりして独立気泡と発泡倍率の両面で所望の効果が得られない可能性がある。
【0027】
化学発泡剤の添加量としては、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部であり、さらに好ましくは0.1〜5.0重量部である。化学発泡剤の添加量が少ないと所望の発泡倍率を得ることができず、逆に添加量が多すぎると不経済であるほか、発泡セルの破泡や成形品の表層からのガス抜けが起こり好ましくない。
【0028】
また、本発明にかかる押出成形発泡体は、化学発泡剤のみに限定されるものではなく、炭酸ガス、フロンガス、炭化水素ガスなどを用いた公知のガス発泡方式であっても構わない。
【0029】
さらに、本発明にかかる実施の形態においては既存の樹脂添加剤を併用することができる。樹脂添加剤の具体的な例としては、有機・無機顔料、発泡核剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤などが挙げられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、容器包装リサイクル材を主原料とするにもかかわらず、成形性に優れ、また均一で独立の気泡を有する良好な押出成形発泡体を得ることができるので、容器包装のリサイクルに貢献すると共に、製造した押出成形発泡体を各種用途に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0032】
まず、一般的な容器包装リサイクル材を用いて、射出成形によりダンベル試験片を作製し、当該試験片の表面を赤外反射スペクトル分析により、主要成分がポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンであることを確認した。また、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンの標準試料から同様に各々試験片を作製し、これらとの吸収スペクトル強度比から当該容器包装リサイクル材の各成分の含有量を算出したところ、ポリエチレン45質量%:ポリプロピレン50質量%:ポリスチレン5質量%であった。
【0033】
〔実施例1〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、再生LDPE(MFR=4)を10重量部ドライブレンドしたものに、さらに有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドの純体であるパークミルD(日油社製)を0.25重量部、及び化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0034】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、有機過酸化物をα、α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンの純体であるパーブチルP(日油社製)に換え、これを0.25重量部、及び化学発泡剤として無機系発泡剤であるセルマイク494(三協化成社製)を1.0重量部添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0035】
〔実施例3〕
実施例1と同様に、化学発泡剤として有機系発泡剤であるアゾジカルボンアミド(ADCA)−セルマイク523(三協化成社製)に換え、これを0.5重量部添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0036】
〔実施例4〕
実施例2と同様に、化学発泡剤として有機系発泡剤であるアゾジカルボンアミド(ADCA)−セルマイク523(三協化成社製)に換え、これを0.5重量部添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0037】
上記実施例1〜4の成形加工性、発泡性の評価を表1に示す。
表1において、◎は極めて良好、○は良好、△は良好といえないまでも許容範囲内、×は不良である(以下の表においても同じ)。
実施例1〜4は、原料に10重量部(包装容器リサイクル材に対して10質量%)のポリエチレンを加え、ポリエチレンの割合を50質量%以上としているため、成形加工性、発泡性の評価がいずれも極めて良好になっている。
【表1】

【0038】
〔実施例5〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドの純体であるパークミルD(日油社製)を0.25重量部、及び化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0039】
〔実施例6〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドの純体であるパークミルD(日油社製)を0.25重量部と架橋助剤として、トリアリルイソシアヌレート−TAIC(日本化成社製)1.0重量部、及び化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0040】
〔実施例7〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、マトリックス相をポリエチレンからポリプロピレン相に完全に相間反転させるために、ポリプロピレン樹脂を10重量部添加し、実施例5と同様に有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドの純体であるパークミルD(日油社製)を0.25重量部、及び化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0041】
〔実施例8〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、再生LDPEに代えてSEBSを20重量部ドライブレンドしたものに、さらに有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドの純体であるパークミルD(日油社製)を0.25重量部、及び化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0042】
上記実施例5〜8の成形加工性、発泡性の評価を表2に示す。
実施例5,6は、原料にポリエチレンを加えず、ポリエチレンの割合が50質量%以下となっているが、成形加工性、発泡性の評価がいずれも良好になっている。
実施例7は、原料にポリプロピレンを加え、ポリエチレンの割合が減っているので、成形加工性、発泡性の評価が許容範囲内となっている。
実施例8は、スチレン系エラストマーであるSEBSを加えることにより、発泡性の評価が極めて良好となっている。これは、SEBSが分子鎖中に2重結合を有しており、この2重結合部が開裂して架橋点となり易いことからポリエチレンを付加したのと同様の効果を有することが分かる。
【表2】

【0043】
〔比較例1〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0044】
〔比較例2〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、再生LDPE(MFR=4)を10重量部ドライブレンドしたものに化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0045】
〔比較例3〕
当該容器包装リサイクル材100重量部に対し、マトリックス相をポリエチレンからポリプロピレン相に完全に相間反転させるために、ポリプロピレン樹脂を10重量部添加し、これに化学発泡剤として無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム−セルマイク494(三協化成社製)1.0重量部を添加してドライブレンダーにて均質攪拌した。この原料をIKG社製65mm単軸押出成形機(L/D=28)に供給し、押出発泡成形を行なった。
【0046】
上記比較例1〜3の成形加工性、発泡性の評価を表1に示す。
これら比較例は、原料に有機過酸化物を添加しないため、いずれも発泡性の評価が不良となっている。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明における押出成形発泡体は、微細な均一発泡構造により、木材と同様に釘打ち、ノコギリによる切断、プレスによる抜き加工、およびドリルによる穴あけ加工が可能で、合成木材として屋根瓦の桟木、外壁の胴縁材、壁・床の芯材などの建築資材用途、また、緩衝性に優れることから鉄パレット緩衝材、トラック荷台の根太材などの緩衝材用途など種々の用途に好適に使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂を主体とする容器包装リサイクル材と、有機過酸化物と、発泡剤を含む原料を押出成形機に供給し、押出成形を行うことを特徴とする押出成形発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記原料に、ポリエチレン成分が全樹脂成分の50質量%以上となるように、ポリエチレンを付加する請求項1に記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記有機過酸化物の量が原料中の全樹脂成分の0.02質量%〜0.40質量%である請求項1又は2に記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記有機過酸化物が、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類およびハイドロパーオキサイド類から選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記有機過酸化物の1分間半減期温度が160℃〜200℃である請求項1〜4のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡剤が化学発泡剤であり、その分解開始温度が前記有機過酸化物の1分間半減期温度以上である請求項5に記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記原料に、有機過酸化物によるポリエチレン成分の架橋促進およびポリプロピレン成分の分子量低下を抑えるため、多官能基を有する架橋助剤を添加する請求項1〜6のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項8】
前記原料に、複合高分子材料の脆性ならびに耐衝撃性の改善のため、スチレン系エラストマー及び/又はオレフィン系エラストマーを添加する請求項1〜7のいずれかに記載の押出成形発泡体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの製法方法で製造したことを特徴とする押出成形発泡体。

【公開番号】特開2010−70624(P2010−70624A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238990(P2008−238990)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(390028082)株式会社未来樹脂 (12)
【出願人】(503195920)有限会社エルケム (3)
【Fターム(参考)】