説明

押出機の押出材温度制御方法および装置

【課題】バッチ間或いは同一バッチで押出材の引取り速度を変更する場合があっても、常に、精度よく目標温度の押出材を得られるようにする押出機の押出材温度制御方法および装置を提供する。
【解決手段】押出材Rが押出機8から押出された時点から温度センサ2により押出材Rの温度を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、この検知前時間と押出材Rの引取り速度とに基づいて、制御装置7により温度センサ2が押出材Rの温度を検知する検知位置を算出するとともに、サーボモータ4を制御してボールネジ3により温度センサ2を算出した検知位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機の押出材温度制御方法および装置に関し、さらに詳しくは、ゴムシート材等の押出機において、バッチ間或いは同一バッチで押出材の引取り速度を変更する場合があっても、常に、精度よく目標温度の押出材を得られるようにした押出機の押出材温度制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムシート材等の押出材は、タイヤやその他のゴム製品等の材料として使用されている。このような押出材の品質のばらつきを小さくするためには、熱履歴量を適正に管理する必要があり、そのために、例えば、押出機から押出された押出材の温度を検知する必要がある。
【0003】
ところで、押出機から押出された押出材は、経時的に収縮することにより寸法が変化するので、従来から、幅寸法については定位置に固定したセンサにより押出材の幅寸法を検知し、この検知寸法と目標寸法との比較に基づいて、押出機から押出された押出材の引取り速度を制御して目標寸法の押出材を得るようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、押出機の供給量は後工程が要求する量や速度に応じて変化するために、バッチ間や同一バッチにおいても引取り速度を変更する場合がある。そのため、従来の幅寸法の検知方法と同様に定位置に固定した温度センサにより押出材の温度を検知すると、引取り速度の変更により押出材が押出機から押出された時点から押出材の温度を検知する時点までの検知前時間が変動する。この検知前時間に違いが生じると、温度を検知する時点における押出材の温度にも経時変化による差が生じるため、引取り速度が異なる場合に検知した温度どうしの間に経時変化によるばらつきが生じる。そのため検知温度と目標温度との比較においても、このばらつきが影響し、適正な温調手段の制御が困難になり、目標温度の押出材を精度よく得ることができないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−246817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、バッチ間或いは同一バッチで押出材の引取り速度を変更する場合があっても、常に、精度よく目標温度の押出材を得られるようにする押出機の押出材温度制御方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の押出機の押出材温度制御方法は、押出機から押出された押出材の温度を前記押出機と引取り手段との間に設置した温度センサにより検知し、該検知温度と予め設定した目標温度との温度差に基づいて前記押出材の温調手段を該押出材の温度を目標温度にするように制御する押出機の押出材温度制御方法であって、前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記温度センサが押出材の温度を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記温度センサの検知位置を変化させることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の押出機の押出材温度制御装置は、押出機から押出された押出材の温度を検知する温度センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該温度センサによる検知温度と予め設定した目標温度との温度差に基づいて前記押出材の温度を目標温度にするように該押出材の温調手段を制御する制御装置を設けた押出機の押出材温度制御装置であって、前記温度センサを前記押出材の押出し方向に進退移動可能に設け、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から押出材の温度を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記温度センサの検知位置に移動するように構成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、別の本発明の押出機の押出材温度制御装置は、押出機から押出された押出材の温度を検知する温度センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該温度センサによる検知温度と予め設定した目標温度との温度差に基づいて前記押出材の温度を目標温度にするように該押出材の温調手段を制御する制御装置を設けた押出機の押出材温度制御装置であって、前記温度センサを前記押出材の押出し方向に所定間隔に複数配設し、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から押出材の温度を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り時間とに基づいて、前記複数の温度センサの中から検知位置に該当する温度センサを選択するように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押出材が押出機から押出された時点から温度センサにより押出材の温度を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、この検知前時間と押出材の引取り速度とに基づいて、温度センサが押出材の温度を検知する検知位置を変化させるようにしたので、バッチ間或いは同一バッチにおいて引取り速度を変更した場合であっても、常に同一の経時変化条件下で押出材の温度を検知することができる。そのため、引取り速度が異なる時に検知する検知温度どうしの間で、経時変化による影響が生じないように押出材の温度を検知でき、これに伴い、検知温度と目標温度とを比較する際にも押出材の経時変化の影響が排除される。したがって、押出材の温調手段を制御する際にも適正な制御を行なうことができ、目標温度の押出材を精度よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の押出機の押出材温度制御方法および装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1、図2に例示するように、第1実施形態の押出材温度制御装置1は、押出機8と引取りコンベヤ9と間に配置されている。押出機8は、図示しない電動モータで回転するスクリュー軸を内設し、押出口8aには押出材Rの断面形状に形成した口金が取付けられている。また、押出機8の内部或いは外部には押出材Rの温度を調整する温調手段10が備わっている。この温調手段10は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒータや冷却水の循環ラインにより構成される。引取りコンベヤ9は、押出機8から押出された押出材Rを搬送面に載せ、後工程に搬送する。
【0012】
この押出材温度制御装置1は、押出材Rの押出し方向に延設されたスライドガイドフレーム5の一端部をゴム押出機8の押出口8aの下部に固定している。スライドガイドフレーム5の上面には押出材Rの温度を検知する温度センサ2が配置され、この温度センサ2は、一端部をサーボモータ4に接続したボールネジ3に取付けられている。温度センサ2は、サーボモータ4の駆動でボールネジ3を回転させることにより、スライドガイドフレーム5にガイドされ、押出材Rの押出し方向と平行なボールネジ3の軸方向に進退し、押出材Rの下方位置で、押出し方向の任意の位置に配置できるように構成されている。
【0013】
温度センサ2の検知信号は制御装置7に入力され、この制御装置7から温調手段10に対して押出材Rの温度を制御する制御信号が入力される。また、引取りコンベヤ9の引取り速度データは制御装置7に入力され、制御装置7からはサーボモータ4に対して回転を制御する制御信号が入力される。
【0014】
また、押出材Rが押出機8から押出された時点から温度センサ2により押出材Rの温度を検知する時点までの検知前時間が、予め一定時間として設定され、この検知前時間が制御装置7に入力されている。また、押出材Rの温度を検知する時点での押出材Rの目標温度が予め設定され、この目標温度が制御装置7に入力されている。
【0015】
以下、この押出材温度制御装置1による押出材温度制御方法について説明する。押出機8の電動モータを作動させスクリュー軸を回転させることにより、押出機8の内部のゴム材が押出材Rとなって押出口8aから連続的にシート状に押出される。この押出材Rは、引取りコンベヤ9の搬送面に載置され、ロール状に巻き取られ、或いは直接、後工程に搬送される。押出口8aから押出された直後の押出材Rの温度は、例えば、70℃〜100℃程度であり時間が経過するに連れて低下する。
【0016】
ここで、制御装置7は、入力された一定時間の検知前時間となるように、検知前時間を引取り速度で除することにより、温度センサ2が押出材Rの温度を検知する検知位置(押出口8aからの温度センサ2の位置)を算出する。次いで、この検知位置となるように、制御装置7からサーボモータ4に制御信号が入力され、これに応じてサーボモータ4が回転して温度センサ2を検知位置に移動させる。
【0017】
検知位置に配置された温度センサ2は、例えば、0.1〜2.0秒間隔の所定のタイムサイクルで押出機8から押出される押出材Rの温度を検知し、その検知信号が制御装置7に入力され検知温度が算出される。この検知温度と予め入力されている目標温度とが比較される。
【0018】
次いで、制御装置7は、検知温度と目標温度の温度差を小さくして一致させるように、温調手段10に制御信号を入力し、この制御信号により温調手段10の加熱または冷却具合が制御され、調節温度が適正な温度に制御される。
【0019】
例えば、検知温度が目標温度よりも大きい場合は、温調手段10のヒータ温度を低下させる或いは冷却水の循環量を多くするように制御して押出材Rの温度を低くする。検知温度が目標温度よりも小さい場合は、上記の反対の制御を行なう。このようにして、目標温度の押出材Rを得ることができる。
【0020】
この押出工程では、バッチ間或いは同一バッチにおいても後工程の要求等により、引取り速度を変更して押出材Rの供給することがある。例えば、短時間に多量の押出材Rが必要となる場合は、これに対応するように引取り速度を速くして押出材Rを供給する。
【0021】
引取り速度を変更した場合には、制御装置7は、設定した一定時間の検知前時間となるように、検知前時間を変更後の引取り速度で除することにより、新たな検知位置を算出する。次いで、新たな検知位置となるように、制御装置7からサーボモータ4に制御信号が入力され、これに応じてサーボモータ4が回転して温度センサ2を新たな検知位置に移動させる。例えば、引取り速度を2倍に変更した場合には、押出口8aと温度センサ2との間の距離が2倍となるように温度センサ2を移動させ、検知位置を変化させる。
【0022】
このように、引取り速度を変更した場合でも、常に、検知前時間が一定に保たれるので、押出材Rの温度の経時変化に対し、常に同一条件下で温度を検知することができる。したがって、引取り速度が異なる時に検知する温度どうしの間で、経時変化による影響を受けることなく押出材Rの温度を検知でき、これに伴い、検知温度と目標温度とを比較する際にも押出材Rの経時変化の影響を排除することができる。
【0023】
したがって、押出材Rの温調手段10の加熱と冷却、温度調整量を誤ることなく、適正な制御を行なうことができ、目標温度の押出材Rを精度よく得ることが可能となる。このように、押出材Rが目標温度に制御されるため、熱履歴量のばらつきが小さくなり均一な所定品質を維持することが可能になる。押出工程での熱履歴量が適切に管理できるので、押出工程以降で押出材Rに熱入れする場合には、この熱履歴量に基づいて付与すべき適切な熱量を容易に算出すること可能になる。
【0024】
尚、本発明において押出材Rは、ゴムのみで構成されるものだけでなく、ゴムとスチールコードや有機繊維等とから構成されるものを含むものである。
【0025】
センサ移動手段は、温度センサ2を押出材Rの押出し方向に進退移動させることができればよく、上記に例示したものに限定されない。また、上記の実施形態では押出材Rの引取り手段として引取りコンベヤ9を例示したが、押出材Rを引き取ることができればよく、例えば、巻取りローラ等が用いられる。
【0026】
図3に押出材温度制御装置1の第2実施形態を示す。第2実施形態では、第1実施形態と異なり、定位置に固定した複数の温度センサ2a〜2dを有している。これらの温度センサ2a〜2dは、一端部を押出口8aの下部に固定し、押出機8と引取りコンベヤ9との間に配置された固定フレーム6に固定され、押出材Rの押出し方向に所定間隔を開けて配置されている。これら複数の温度センサ2a〜2dによる検知信号は制御装置7に入力されるようになっている。
【0027】
この温度制御装置1では、制御装置7が、設定した検知前時間と引取りコンベヤ9の引取り速度とに基づいて検知位置を算出するとともに、複数の温度センサ2a〜2dの中から、算出した検知位置に該当する(最も近い位置にある)温度センサ2を一つ選択し、その選択した温度センサ2の検知信号を用いて押出材Rの検知温度が算出される。次いで、この検知温度と予め入力されている目標温度とが比較され、以後、第1実施形態と同様の制御を行なって目標温度の押出材Rを得るようにしている。
【0028】
このように、引取り速度の変更に伴い、制御装置7が、複数の固定した温度センサ2a〜2dの中から検知位置に該当する温度センサ2を一つ選択して検知位置を変化させるようにしているので、温度センサ2を移動させる機構が不要となり、構成を簡素化することができる。
【0029】
配置する温度センサ2の数は特に限定されず、多い程、精度よく目標温度の押出材Rを得ることができるが、コストや配置スペース等を考慮して、例えば、2〜5個程度とする。
【0030】
この実施形態では、制御装置7が算出した検知位置と選択した温度センサ2の位置との間に多少の誤差が生じる。この場合、算出した検知位置を挟んで最も隣接する2つの温度センサ2、2の検知温度を用い、比例計算等により検知位置における押出材Rの温度を推定し、これを検知温度として用いることもできる。これにより、検知温度の精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の押出材温度制御装置の第1実施形態を例示する平面図である。
【図2】図1の一部を拡大側面図である。
【図3】押出材温度制御装置の第2実施形態を例示する平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 押出材温度制御装置
2、2a〜2d 温度センサ
3 ボールネジ
4 サーボモータ
5 スライドガイドフレーム
6 固定フレーム
7 制御装置
8 押出機 8a 押出口
9 引取りコンベヤ
10 温調手段
R 押出材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押出された押出材の温度を前記押出機と引取り手段との間に設置した温度センサにより検知し、該検知温度と予め設定した目標温度との温度差に基づいて前記押出材の温調手段を該押出材の温度を目標温度にするように制御する押出機の押出材温度制御方法であって、前記押出材が前記押出機から押出された時点から前記温度センサが押出材の温度を検知する時点までの検知前時間を予め一定時間として設定し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記温度センサの検知位置を変化させる押出機の押出材温度制御方法。
【請求項2】
前記検知位置の変化を、前記温度センサの移動により行なう請求項1に記載の押出機の押出材温度制御方法。
【請求項3】
前記検知位置の変化を、前記温度センサを前記押出材の押出し方向に所定間隔に複数配設し、該複数の温度センサの中から選択することで行なう請求項1に記載の押出機の押出材温度制御方法。
【請求項4】
押出機から押出された押出材の温度を検知する温度センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該温度センサによる検知温度と予め設定した目標温度との温度差に基づいて前記押出材の温度を目標温度にするように該押出材の温調手段を制御する制御装置を設けた押出機の押出材温度制御装置であって、前記温度センサを前記押出材の押出し方向に進退移動可能に設け、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から押出材の温度を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り速度とに基づいて、前記温度センサの検知位置に移動するように構成した押出機の押出材温度制御装置。
【請求項5】
前記温度センサの移動手段が、サーボモータと、該サーボモータに駆動されるボールネジとから構成される請求項4に記載の押出機の押出材温度制御装置。
【請求項6】
押出機から押出された押出材の温度を検知する温度センサを前記押出機と引取り手段との間に設け、該温度センサによる検知温度と予め設定した目標温度との温度差に基づいて前記押出材の温度を目標温度にするように該押出材の温調手段を制御する制御装置を設けた押出機の押出材温度制御装置であって、前記温度センサを前記押出材の押出し方向に所定間隔に複数配設し、前記制御装置に前記押出材が前記押出機から押出された時点から押出材の温度を検知するまでの検知前時間を予め一定時間として設定するとともに、前記引取り速度を入力し、該検知前時間と前記引取り時間とに基づいて、前記複数の温度センサの中から検知位置に該当する温度センサを選択するように構成した押出機の押出材温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−313797(P2007−313797A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147233(P2006−147233)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】