押釦スイッチ
【課題】押釦により押圧されて座屈変形することで可動接点の舌状部を押し動かす弾性部材が、その舌状部の縁部に擦り付けられることにより損傷するのを防止できる押釦スイッチを提供すること。
【解決手段】可動接点5は、固定接点4を包囲して位置する環状の基部65と、この基部65から内側に片持ち梁状に延びた舌状部7とを有し、舌状部7の弾性変形により固定接点4に接触する。弾性部材10は押釦3から固定接点4に向かう方向において末広がり状を成し舌状部7を押釦3側から覆って位置する。弾性部材10は押釦3により押圧されて座屈変形することにより可動接点5を押し動かして固定接点4に接触させる。この際、弾性部材10は逃げ部11によって可動接点5の基部65と舌状部7との頚部7bとの間にめり込まずに済み、この結果、舌状部7の頚部7bの縁部7b1に擦り付けられずに済む。
【解決手段】可動接点5は、固定接点4を包囲して位置する環状の基部65と、この基部65から内側に片持ち梁状に延びた舌状部7とを有し、舌状部7の弾性変形により固定接点4に接触する。弾性部材10は押釦3から固定接点4に向かう方向において末広がり状を成し舌状部7を押釦3側から覆って位置する。弾性部材10は押釦3により押圧されて座屈変形することにより可動接点5を押し動かして固定接点4に接触させる。この際、弾性部材10は逃げ部11によって可動接点5の基部65と舌状部7との頚部7bとの間にめり込まずに済み、この結果、舌状部7の頚部7bの縁部7b1に擦り付けられずに済む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦で錘状の弾性部材を押圧して座屈変形させることにより、可動接点をその弾性部材越しに押し動かして固定接点に接触させる押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の押釦スイッチは、ハウジングと、このハウジングに押圧操作可能に設けられた押釦とを有する。固定接点はハウジング内部において押釦と対向して位置する。可動接点は押釦と固定接点の間に位置する。
【0003】
可動接点は金属板から成形されたものであり、固定接点を包囲して位置した環状の基部と、この基部から内側に片持ち梁状に延びた舌状部とを有する。舌状部は、この舌状部の固定端(基部側の端部)よりも自由端が離れて位置する傾斜姿勢を成し、これにより、固定接点の方向に弾性変形可能になっている。
【0004】
弾性部材は円錐状で中空に形成された部材であり、固定接点の方向に末広がり状を成した姿勢で、押釦と固定接点の間に、可動接点の舌状部を覆って位置する。
【0005】
このように構成された従来の押釦スイッチにおいては、押釦が押圧操作されると、この押釦が弾性部材を押圧して座屈変形させる。これに伴い、弾性部材の内側部分が可動接点の舌状部を押し動かして固定接点に接触させ、押釦スイッチはオンする。押釦に対する押圧操作力が取り除かれると、弾性部材は押釦を押し戻しながら座屈状態から復元する。これに伴い、可動接点が固定接点から離れ、押釦スイッチはオフする。
【0006】
ここで説明した従来の押釦スイッチについては特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4105460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、弾性部材は可動接点の舌状部を押し動かすとき、可動接点の基部の内側にめり込み、座屈状態から復元するときに基部の内側から脱する。このように基部の内側に対してめり込んだり脱したりするとき、弾性部材は可動接点の舌状部の縁部に擦り付けられる。そして、繰り返し舌状部の縁部に擦り付けられることによって損傷する。
【0009】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、押釦により押圧されて座屈変形することで可動接点の舌状部を押し動かす弾性部材が、その舌状部の縁部に擦り付けられることにより損傷するのを防止できる押釦スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
【0011】
〔1〕 本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに押圧操作可能に設けられた押釦と、前記ハウジングの内側において前記押釦と対向して位置する固定接点と、前記押釦と前記固定接点の間に位置し弾性変形して前記固定接点に接触可能な可動接点と、前記押釦と前記可動接点の間に位置する弾性部材とを備え、前記可動接点は、基部と、この基部から片持ち梁状に延びた舌状部とを有し、前記舌状部が弾性変形させられて前記固定接点に接触するものであり、前記弾性部材は前記押釦から前記固定接点の方向において末広がり状を成して前記舌状部を前記押釦側から覆って位置するとともに、前記押釦により押圧されて座屈変形することにより前記可動接点を押し動かして前記固定接点に接触させる押釦スイッチであって、前記弾性部材には、この弾性部材の座屈時における前記舌状部の縁部との接触を避ける逃げ部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この「〔1〕」に記載の発明において、弾性部材は座屈変形したとき、および座屈状態から復元するとき、可動接点の舌状部の縁部に擦り付けられることを逃げ部により避ける。これによって、弾性部材は可動接点の舌状部の縁部に擦り付けられずに済み、したがって弾性部材の損傷を防止できる。
【0013】
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記逃げ部は、前記固定接点から離れる方向に凹んで形成された切欠きであり、前記舌状部は前記弾性部材に対し、前記逃げ部を通じて前記弾性部材の外側から内側に向う方向に延びて位置することを特徴とする。
【0014】
この「〔2〕」に記載の本発明によれば、逃げ部を設けることが容易である。
【0015】
〔3〕 本発明は「〔2〕」に記載の発明において、前記弾性部材は、円錐状に形成された中空の弾性材料の周側部を削ぐことにより、前記切欠きである前記逃げ部を含むよう形成されたことを特徴とする。
【0016】
前述したように、従来は弾性部材が円錐状で中空に形成されたものである。「〔3〕」に記載の本発明においては、円錐状で中空の弾性材料を削いで逃げ部を設けることにより、従来の円錐状の弾性部材を材料として容易に弾性部材を作製できるとともに、小型化に貢献できる。
【0017】
〔4〕 本発明は「〔3〕」に記載の発明において、前記弾性材料の周側部のうち前記円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより前記弾性部材が形成され、前記2個所のうち一方に形成された切欠きが前記逃げ部として機能することを特徴とする。
【0018】
この「〔4〕」に記載の本発明によれば、弾性部材の中心線を挟んで対向する位置に同寸法、同形状の切断面および切欠きを形成することができ、すなわち、押圧操作方向(中心線方向)に直交する方向に広がる平面において弾性部材を点対称に成形することができ、これにより、弾性部材の座屈動作時の姿勢を安定させやすい。さらに、弾性部材は円錐状の弾性材料から形成されるものであるから、円錐状の弾性部材の操作感触に似た感触を操作者に与えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、前述のように、押釦により押圧されて座屈変形することで可動接点の舌状部を押し動かす弾性部材が、その舌状部の縁部に擦り付けられることにより損傷するのを防止できる。この結果、押釦スイッチの長寿化および信頼性の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る押釦スイッチの側面図である。
【図2】図1に示した押釦スイッチの上面図である。
【図3】図1に示した押釦スイッチの分解斜視図である。
【図4】図2に示した押釦スイッチから押釦を取り除いた状態を示す上面図である。
【図5】図4に示した押釦スイッチからさらに弾性部材を取り除いた状態を示す上面図である。
【図6】図5に示した押釦スイッチからさらに可動接点を取り除いた状態を示す上面図である。
【図7】図5に示した可動接点単体の上面図である。
【図8】図4に示した弾性部材単体の下面図である。
【図9】可動接点と弾性部材の位置関係を示す側面図である。
【図10】図8に示した弾性部材が座屈変形して可動接点を押し動かしたときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図1〜図9を用いて説明する。
【0022】
図1,図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ1は、合成樹脂製のハウジング2と、このハウジング2に押圧操作可能に設けられた押釦3とを有する。ハウジング2は上面視形状が長方形状に形成されていて、全体として四角柱状を成している。図3に示すように、ハウジング2は中空であり、一端側が開口していて、他端側が底板部2bで塞がれている。押釦3はハウジング2に挿入されて、一端側の開口部2aから突出して位置する。この押釦3はハウジング2に対し、このハウジング2の開口方向(図1の上下方向)に摺動自在である。
【0023】
図6に示すように、ハウジング2の内側において、ハウジング2の底板部2bには、押釦3と対向して位置する固定接点4が設けられている。この固定接点4は、底板部2bの内部において、ハウジング2の側部から突出した外部端子8と導通している。この外部端子8は電子機器等に実装される際に半田付けされることになる。
【0024】
図3〜図6を見比べて分かるように、ハウジング2の内側において、押釦3と固定接点4の間には可動接点5が位置する。可動接点5は金属板から成形されたものであり、図7に示すように環状の基部6と、この基部6からハウジング2の内方に向けて片持ち梁状に延びた舌状部7とを有する。図5に示すように、環状の基部6は固定接点4を包囲して位置する。舌状部7は、上面視において固定接点4と重なって位置する円形の頭部7aと、この頭部7aと基部6とを結合する頚部7bとを有する。舌状部は、この舌状部の頚部7bと基部6の結合部よりも頭部7aが離れて位置する傾斜姿勢を成し、これにより、固定接点4の方向に弾性変形可能になっている。舌状部7は固定接点4の方向に弾性変形させられることにより、すなわち撓ませられることにより、頭部7aにおいて固定接点4に接触する。
【0025】
可動接点5の基部6は、前出の外部端子8とはハウジング2を挟んで位置する別の外部端子9と導通している。この外部端子9も、電子機器等に実装される際に半田付けされることになる。
【0026】
ハウジング2の内側において押釦3と可動接点5の基部6との間には弾性部材10が位置する。図9に示すように、この弾性部材10は錘状の部材であり、押釦3から固定接点4に向かう方向において末広がり状を成し、舌状部7を押釦3側から覆って位置する。この弾性部材10は、その本体であるスカート部10aと、このスカート部10aの頂部に形成され、スカート部10aよりも弾性変形しにくい円柱状の被操作部10bとを有する。この被操作部10bは押釦3に常時接触している。弾性部材10の内側には、円柱状の突起10cが可動接点5の舌状部7の頭部7aの方向に突出して形成されている(図10参照)。弾性部材10は、押釦3により押圧されて座屈変形することによって、可動接点5の舌状部7を押し動かして固定接点4に接触させる(図10参照)。
【0027】
図9に示すように、弾性部材10には、この弾性部材10の座屈時における舌状部7の頚部7bの縁部7b1との接触を避ける逃げ部11が形成されている。この逃げ部11は、固定接点4から離れる方向に凹んで形成された切欠きである。可動接点5の舌状部7は弾性部材10に対し、逃げ部11を通じて弾性部材10の外側から内側に向う方向に延びて位置する。舌状部7の頚部7bは逃げ部11に挿通された状態にある。舌状部7の頭部7aはスカート部10a内に、このスカート部10aの内面に接触しない状態で位置する。
【0028】
弾性部材10は、円錐状の弾性材料の周側部のうち、その円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより形成されたものである。削がれた2個所のうち一方に形成された切欠きが前出の逃げ部11として機能する。
【0029】
弾性部材10の周囲には、4つの規制壁12A〜12Dが位置している。規制壁12Aと規制壁12Cは弾性部材10を挟んで対向して位置する。規制壁12Bと規制壁12Dも弾性部材10を挟んで対向して位置する。
【0030】
このように構成された押釦スイッチ1は次のように動作する。
【0031】
押釦3が弾性部材10の弾性力に抗して押圧され、弾性部材10は、このスカート部10aの固定接点4側の端部が外側に膨らむのを、規制壁12A〜12Dにより阻止された状態で、座屈変形する。これに伴い、可動接点5の舌状部7は弾性部材10の内側の突起10cで押し動かされて固定接点4に接触し、外部端子8と外部端子9とが可動接点5により導通されて押釦スイッチ1はオンする。このとき、弾性部材10は逃げ部11が形成されていることにより、図10に示すように基部6と舌状部7の頚部7bとの間にめり込まずに済み、可動接点5の舌状部7の頚部7bの縁部7b1にスカート部10aが擦り付けられることが避けられる。
【0032】
なお、舌状部7の頭部7aの縁部7a1は、弾性部材10の座屈前にスカート部10aの内面に接触していない状態であり、座屈時にはスカート部10aが外側に膨らむので、弾性部材10が座屈状態であるかないかに関係なく、弾性部材10のスカート部10aの内面に接触しない。
【0033】
押釦スイッチ1のオン状態において、押釦3に対する押圧操作力が取り除かれると、弾性部材10の座屈から復元する。これに伴い可動接点5の舌状部7も復元して固定接点4から離れ、押釦スイッチ1はオフする。
【0034】
本実施形態に係る押釦スイッチ1によれば次の効果を得られる。
【0035】
押釦スイッチ1において、弾性部材10は座屈変形したとき、および座屈状態から復元するとき、可動接点5の舌状部7の頚部7bの縁部7b1に擦り付けられることを逃げ部11により避ける。これによって、弾性部材10が可動接点5の舌状部7の頚部7bの縁部7b1に擦り付けられずに済み、したがって弾性部材10の損傷を防止できる。この結果、押釦スイッチ1の長寿化および信頼性の向上に貢献できる。
【0036】
従来は弾性部材が円錐状で中空に形成されたものである。押釦スイッチ1においては、円錐状で中空の弾性材料を削いで逃げ部11を設けることにより、従来の円錐状の弾性部材を材料として容易に弾性部材10を作製できるとともに、小型化に貢献できる。
【0037】
押釦スイッチ1において、弾性部材10は、円錐状の弾性材料の周側部のうちその円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより形成されるものである。これにより、弾性部材10の中心線を挟んで対向する位置に同寸法、同形状の切断面および切欠きを形成することができ、すなわち、押圧操作方向(中心線方向)に対し直交する方向に広がる平面において(上面視において)弾性部材10を点対称に成形することができるので、弾性部材10の座屈動作時の姿勢を安定させやすい。さらに、弾性部材10は円錐状の弾性材料から形成されるものであるから、円錐状の弾性部材の操作感触に似た感触を操作者に与えることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 押釦スイッチ
2 ハウジング
2a 開口部
2b 底板部
3 押釦
4 固定接点
5 可動接点
6 基部
7 舌状部
7a 頭部
7b 頚部
8,9 外部端子
10 弾性部材
10a スカート部
10b 被操作部
10c 突起
11 逃げ部
12A〜12D 規制壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦で錘状の弾性部材を押圧して座屈変形させることにより、可動接点をその弾性部材越しに押し動かして固定接点に接触させる押釦スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の押釦スイッチは、ハウジングと、このハウジングに押圧操作可能に設けられた押釦とを有する。固定接点はハウジング内部において押釦と対向して位置する。可動接点は押釦と固定接点の間に位置する。
【0003】
可動接点は金属板から成形されたものであり、固定接点を包囲して位置した環状の基部と、この基部から内側に片持ち梁状に延びた舌状部とを有する。舌状部は、この舌状部の固定端(基部側の端部)よりも自由端が離れて位置する傾斜姿勢を成し、これにより、固定接点の方向に弾性変形可能になっている。
【0004】
弾性部材は円錐状で中空に形成された部材であり、固定接点の方向に末広がり状を成した姿勢で、押釦と固定接点の間に、可動接点の舌状部を覆って位置する。
【0005】
このように構成された従来の押釦スイッチにおいては、押釦が押圧操作されると、この押釦が弾性部材を押圧して座屈変形させる。これに伴い、弾性部材の内側部分が可動接点の舌状部を押し動かして固定接点に接触させ、押釦スイッチはオンする。押釦に対する押圧操作力が取り除かれると、弾性部材は押釦を押し戻しながら座屈状態から復元する。これに伴い、可動接点が固定接点から離れ、押釦スイッチはオフする。
【0006】
ここで説明した従来の押釦スイッチについては特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4105460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、弾性部材は可動接点の舌状部を押し動かすとき、可動接点の基部の内側にめり込み、座屈状態から復元するときに基部の内側から脱する。このように基部の内側に対してめり込んだり脱したりするとき、弾性部材は可動接点の舌状部の縁部に擦り付けられる。そして、繰り返し舌状部の縁部に擦り付けられることによって損傷する。
【0009】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、押釦により押圧されて座屈変形することで可動接点の舌状部を押し動かす弾性部材が、その舌状部の縁部に擦り付けられることにより損傷するのを防止できる押釦スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
【0011】
〔1〕 本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに押圧操作可能に設けられた押釦と、前記ハウジングの内側において前記押釦と対向して位置する固定接点と、前記押釦と前記固定接点の間に位置し弾性変形して前記固定接点に接触可能な可動接点と、前記押釦と前記可動接点の間に位置する弾性部材とを備え、前記可動接点は、基部と、この基部から片持ち梁状に延びた舌状部とを有し、前記舌状部が弾性変形させられて前記固定接点に接触するものであり、前記弾性部材は前記押釦から前記固定接点の方向において末広がり状を成して前記舌状部を前記押釦側から覆って位置するとともに、前記押釦により押圧されて座屈変形することにより前記可動接点を押し動かして前記固定接点に接触させる押釦スイッチであって、前記弾性部材には、この弾性部材の座屈時における前記舌状部の縁部との接触を避ける逃げ部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この「〔1〕」に記載の発明において、弾性部材は座屈変形したとき、および座屈状態から復元するとき、可動接点の舌状部の縁部に擦り付けられることを逃げ部により避ける。これによって、弾性部材は可動接点の舌状部の縁部に擦り付けられずに済み、したがって弾性部材の損傷を防止できる。
【0013】
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記逃げ部は、前記固定接点から離れる方向に凹んで形成された切欠きであり、前記舌状部は前記弾性部材に対し、前記逃げ部を通じて前記弾性部材の外側から内側に向う方向に延びて位置することを特徴とする。
【0014】
この「〔2〕」に記載の本発明によれば、逃げ部を設けることが容易である。
【0015】
〔3〕 本発明は「〔2〕」に記載の発明において、前記弾性部材は、円錐状に形成された中空の弾性材料の周側部を削ぐことにより、前記切欠きである前記逃げ部を含むよう形成されたことを特徴とする。
【0016】
前述したように、従来は弾性部材が円錐状で中空に形成されたものである。「〔3〕」に記載の本発明においては、円錐状で中空の弾性材料を削いで逃げ部を設けることにより、従来の円錐状の弾性部材を材料として容易に弾性部材を作製できるとともに、小型化に貢献できる。
【0017】
〔4〕 本発明は「〔3〕」に記載の発明において、前記弾性材料の周側部のうち前記円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより前記弾性部材が形成され、前記2個所のうち一方に形成された切欠きが前記逃げ部として機能することを特徴とする。
【0018】
この「〔4〕」に記載の本発明によれば、弾性部材の中心線を挟んで対向する位置に同寸法、同形状の切断面および切欠きを形成することができ、すなわち、押圧操作方向(中心線方向)に直交する方向に広がる平面において弾性部材を点対称に成形することができ、これにより、弾性部材の座屈動作時の姿勢を安定させやすい。さらに、弾性部材は円錐状の弾性材料から形成されるものであるから、円錐状の弾性部材の操作感触に似た感触を操作者に与えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、前述のように、押釦により押圧されて座屈変形することで可動接点の舌状部を押し動かす弾性部材が、その舌状部の縁部に擦り付けられることにより損傷するのを防止できる。この結果、押釦スイッチの長寿化および信頼性の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る押釦スイッチの側面図である。
【図2】図1に示した押釦スイッチの上面図である。
【図3】図1に示した押釦スイッチの分解斜視図である。
【図4】図2に示した押釦スイッチから押釦を取り除いた状態を示す上面図である。
【図5】図4に示した押釦スイッチからさらに弾性部材を取り除いた状態を示す上面図である。
【図6】図5に示した押釦スイッチからさらに可動接点を取り除いた状態を示す上面図である。
【図7】図5に示した可動接点単体の上面図である。
【図8】図4に示した弾性部材単体の下面図である。
【図9】可動接点と弾性部材の位置関係を示す側面図である。
【図10】図8に示した弾性部材が座屈変形して可動接点を押し動かしたときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図1〜図9を用いて説明する。
【0022】
図1,図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る押釦スイッチ1は、合成樹脂製のハウジング2と、このハウジング2に押圧操作可能に設けられた押釦3とを有する。ハウジング2は上面視形状が長方形状に形成されていて、全体として四角柱状を成している。図3に示すように、ハウジング2は中空であり、一端側が開口していて、他端側が底板部2bで塞がれている。押釦3はハウジング2に挿入されて、一端側の開口部2aから突出して位置する。この押釦3はハウジング2に対し、このハウジング2の開口方向(図1の上下方向)に摺動自在である。
【0023】
図6に示すように、ハウジング2の内側において、ハウジング2の底板部2bには、押釦3と対向して位置する固定接点4が設けられている。この固定接点4は、底板部2bの内部において、ハウジング2の側部から突出した外部端子8と導通している。この外部端子8は電子機器等に実装される際に半田付けされることになる。
【0024】
図3〜図6を見比べて分かるように、ハウジング2の内側において、押釦3と固定接点4の間には可動接点5が位置する。可動接点5は金属板から成形されたものであり、図7に示すように環状の基部6と、この基部6からハウジング2の内方に向けて片持ち梁状に延びた舌状部7とを有する。図5に示すように、環状の基部6は固定接点4を包囲して位置する。舌状部7は、上面視において固定接点4と重なって位置する円形の頭部7aと、この頭部7aと基部6とを結合する頚部7bとを有する。舌状部は、この舌状部の頚部7bと基部6の結合部よりも頭部7aが離れて位置する傾斜姿勢を成し、これにより、固定接点4の方向に弾性変形可能になっている。舌状部7は固定接点4の方向に弾性変形させられることにより、すなわち撓ませられることにより、頭部7aにおいて固定接点4に接触する。
【0025】
可動接点5の基部6は、前出の外部端子8とはハウジング2を挟んで位置する別の外部端子9と導通している。この外部端子9も、電子機器等に実装される際に半田付けされることになる。
【0026】
ハウジング2の内側において押釦3と可動接点5の基部6との間には弾性部材10が位置する。図9に示すように、この弾性部材10は錘状の部材であり、押釦3から固定接点4に向かう方向において末広がり状を成し、舌状部7を押釦3側から覆って位置する。この弾性部材10は、その本体であるスカート部10aと、このスカート部10aの頂部に形成され、スカート部10aよりも弾性変形しにくい円柱状の被操作部10bとを有する。この被操作部10bは押釦3に常時接触している。弾性部材10の内側には、円柱状の突起10cが可動接点5の舌状部7の頭部7aの方向に突出して形成されている(図10参照)。弾性部材10は、押釦3により押圧されて座屈変形することによって、可動接点5の舌状部7を押し動かして固定接点4に接触させる(図10参照)。
【0027】
図9に示すように、弾性部材10には、この弾性部材10の座屈時における舌状部7の頚部7bの縁部7b1との接触を避ける逃げ部11が形成されている。この逃げ部11は、固定接点4から離れる方向に凹んで形成された切欠きである。可動接点5の舌状部7は弾性部材10に対し、逃げ部11を通じて弾性部材10の外側から内側に向う方向に延びて位置する。舌状部7の頚部7bは逃げ部11に挿通された状態にある。舌状部7の頭部7aはスカート部10a内に、このスカート部10aの内面に接触しない状態で位置する。
【0028】
弾性部材10は、円錐状の弾性材料の周側部のうち、その円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより形成されたものである。削がれた2個所のうち一方に形成された切欠きが前出の逃げ部11として機能する。
【0029】
弾性部材10の周囲には、4つの規制壁12A〜12Dが位置している。規制壁12Aと規制壁12Cは弾性部材10を挟んで対向して位置する。規制壁12Bと規制壁12Dも弾性部材10を挟んで対向して位置する。
【0030】
このように構成された押釦スイッチ1は次のように動作する。
【0031】
押釦3が弾性部材10の弾性力に抗して押圧され、弾性部材10は、このスカート部10aの固定接点4側の端部が外側に膨らむのを、規制壁12A〜12Dにより阻止された状態で、座屈変形する。これに伴い、可動接点5の舌状部7は弾性部材10の内側の突起10cで押し動かされて固定接点4に接触し、外部端子8と外部端子9とが可動接点5により導通されて押釦スイッチ1はオンする。このとき、弾性部材10は逃げ部11が形成されていることにより、図10に示すように基部6と舌状部7の頚部7bとの間にめり込まずに済み、可動接点5の舌状部7の頚部7bの縁部7b1にスカート部10aが擦り付けられることが避けられる。
【0032】
なお、舌状部7の頭部7aの縁部7a1は、弾性部材10の座屈前にスカート部10aの内面に接触していない状態であり、座屈時にはスカート部10aが外側に膨らむので、弾性部材10が座屈状態であるかないかに関係なく、弾性部材10のスカート部10aの内面に接触しない。
【0033】
押釦スイッチ1のオン状態において、押釦3に対する押圧操作力が取り除かれると、弾性部材10の座屈から復元する。これに伴い可動接点5の舌状部7も復元して固定接点4から離れ、押釦スイッチ1はオフする。
【0034】
本実施形態に係る押釦スイッチ1によれば次の効果を得られる。
【0035】
押釦スイッチ1において、弾性部材10は座屈変形したとき、および座屈状態から復元するとき、可動接点5の舌状部7の頚部7bの縁部7b1に擦り付けられることを逃げ部11により避ける。これによって、弾性部材10が可動接点5の舌状部7の頚部7bの縁部7b1に擦り付けられずに済み、したがって弾性部材10の損傷を防止できる。この結果、押釦スイッチ1の長寿化および信頼性の向上に貢献できる。
【0036】
従来は弾性部材が円錐状で中空に形成されたものである。押釦スイッチ1においては、円錐状で中空の弾性材料を削いで逃げ部11を設けることにより、従来の円錐状の弾性部材を材料として容易に弾性部材10を作製できるとともに、小型化に貢献できる。
【0037】
押釦スイッチ1において、弾性部材10は、円錐状の弾性材料の周側部のうちその円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより形成されるものである。これにより、弾性部材10の中心線を挟んで対向する位置に同寸法、同形状の切断面および切欠きを形成することができ、すなわち、押圧操作方向(中心線方向)に対し直交する方向に広がる平面において(上面視において)弾性部材10を点対称に成形することができるので、弾性部材10の座屈動作時の姿勢を安定させやすい。さらに、弾性部材10は円錐状の弾性材料から形成されるものであるから、円錐状の弾性部材の操作感触に似た感触を操作者に与えることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 押釦スイッチ
2 ハウジング
2a 開口部
2b 底板部
3 押釦
4 固定接点
5 可動接点
6 基部
7 舌状部
7a 頭部
7b 頚部
8,9 外部端子
10 弾性部材
10a スカート部
10b 被操作部
10c 突起
11 逃げ部
12A〜12D 規制壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに押圧操作可能に設けられた押釦と、前記ハウジングの内側において前記押釦と対向して位置する固定接点と、前記押釦と前記固定接点の間に位置し弾性変形して前記固定接点に接触可能な可動接点と、前記押釦と前記可動接点の間に位置する弾性部材とを備え、
前記可動接点は、基部と、この基部から片持ち梁状に延びた舌状部とを有し、前記舌状部が弾性変形させられて前記固定接点に接触するものであり、
前記弾性部材は前記押釦から前記固定接点の方向において末広がり状を成して前記舌状部を前記押釦側から覆って位置するとともに、前記押釦により押圧されて座屈変形することにより前記可動接点を押し動かして前記固定接点に接触させる押釦スイッチであって、
前記弾性部材には、この弾性部材の座屈時における前記舌状部の縁部との接触を避ける逃げ部が形成されている
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記逃げ部は、前記固定接点から離れる方向に凹んで形成された切欠きであり、
前記舌状部は前記弾性部材に対し、前記逃げ部を通じて前記弾性部材の外側から内側に向う方向に延びて位置する
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、
前記弾性部材は、円錐状に形成された中空の弾性材料の周側部を削ぐことにより、前記切欠きである前記逃げ部を含むよう形成された
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、
前記弾性材料の周側部のうち前記円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより前記弾性部材が形成され、
前記2個所のうち一方に形成された切欠きが前記逃げ部として機能する
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに押圧操作可能に設けられた押釦と、前記ハウジングの内側において前記押釦と対向して位置する固定接点と、前記押釦と前記固定接点の間に位置し弾性変形して前記固定接点に接触可能な可動接点と、前記押釦と前記可動接点の間に位置する弾性部材とを備え、
前記可動接点は、基部と、この基部から片持ち梁状に延びた舌状部とを有し、前記舌状部が弾性変形させられて前記固定接点に接触するものであり、
前記弾性部材は前記押釦から前記固定接点の方向において末広がり状を成して前記舌状部を前記押釦側から覆って位置するとともに、前記押釦により押圧されて座屈変形することにより前記可動接点を押し動かして前記固定接点に接触させる押釦スイッチであって、
前記弾性部材には、この弾性部材の座屈時における前記舌状部の縁部との接触を避ける逃げ部が形成されている
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記逃げ部は、前記固定接点から離れる方向に凹んで形成された切欠きであり、
前記舌状部は前記弾性部材に対し、前記逃げ部を通じて前記弾性部材の外側から内側に向う方向に延びて位置する
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、
前記弾性部材は、円錐状に形成された中空の弾性材料の周側部を削ぐことにより、前記切欠きである前記逃げ部を含むよう形成された
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、
前記弾性材料の周側部のうち前記円錐の中心線を挟んで位置する2個所が削がれることにより前記弾性部材が形成され、
前記2個所のうち一方に形成された切欠きが前記逃げ部として機能する
ことを特徴とする押釦スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−244897(P2010−244897A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93303(P2009−93303)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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