説明

抽気エゼクターおよび放射性物質取扱い施設

【課題】抽気エゼクター内部に固形分の付着を抑制し、付着した固形分を除去し、抽気性能を維持できるようにした抽気エゼクターを提供する。
【解決手段】駆動水3を噴射させるエゼクターノズル2と、吸入室2と、駆動水3とともに気体が流れる円筒状のディフューザ2とから構成された抽気エゼクター2において、ディフューザ2の流路入口端面2aに対向した位置に洗浄水ノズル6aが臨むように洗浄水配管6を設け、抽気エゼクターの運転中に洗浄水3a(7)を洗浄水ノズル6aからディフューザの流路入口端面2aに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駆動源に水を使用した抽気エゼクターおよびこの抽気エゼクターを使用する放射性物質取扱い施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所等の放射性物質取扱い施設で発生する放射性廃液の処理法としてセメント固化方法が知られている。このセメント固化方法とは、廃液を濃縮したあと乾燥させ、残った固形分にセメントを加えて固化する方法である。このセメント固化方法では、図4のシステム系統図で示すように、濃縮された廃液を乾燥機1で乾燥させる過程で生じた蒸気を抽気エゼクター2で引いている。
【0003】
この抽気エゼクター2の一般的な構成は図5の模式図で示すように、エゼクターノズル2、吸入室2および円筒状のディフューザ(またはテール、ベンチュリー、スロートと呼ばれることもある)2から構成されている。そして、図4の循環水槽4に付帯されている図示しないポンプによって供給された高圧の駆動水3をエゼクターノズル2からディフューザ2に向けて高速度で噴射することにより、負圧になった吸入室2に空気やガスを吸引し、その空気やガスを駆動水3によって循環水槽4に排出するように機能する。
【0004】
ところで、運転中の乾燥機1の内部には廃液から蒸発した蒸気の他に風に舞う細かな粉状の固形分が充満しているため、抽気エゼクター2に駆動水3を流してエゼクターノズル2周囲の吸入室2を負圧にすると、本来除去すべき蒸気以外に、粉状の固形分も一緒に吸入室2内に引いてしまう。吸入室2内に混入した粉状の固形分5は一緒に引かれた蒸気によって湿った状態になり、ディフューザ2の流路入口部に付着し次第に大きくなって図5のように積もった状態になる。固形分5が図5のように積もると、ディフューザ2の流路入口部を狭め、抽気エゼクター2の負圧にする性能すなわち抽気性能を低下させる。この結果、乾燥機1から吸込される空気吸入流量が減少する不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−355411号公報
【特許文献2】特開2000−257996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示す従来の抽気エゼクター2には、抽気性能を維持するために抽気エゼクター内部に固形分の付着を抑制する対策や、付着した固形分を洗浄するような対策は講じられていない。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、湿った空気(蒸気)とともに吸引される粉状の固形分が抽気エゼクター内部に付着するのを抑制し、所望の抽気性能を維持できるようにした抽気エゼクターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る抽気エゼクターは、駆動水を噴射するエゼクターノズルと、気体を吸引する吸入室と、吸引した気体を駆動水により排出側に導く円筒状のディフューザとから構成された抽気エゼクターにおいて、前記ディフューザの流路入口端面に洗浄水を噴射する洗浄水ノズルを有する洗浄水配管を設け、抽気エゼクターの運転中に洗浄水を前記洗浄水ノズルから前記ディフューザの流路入口端面に向けて噴射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乾燥機から蒸気とともに吸込まれた粉状の固形分が抽気エゼクターのディフューザの流路入口に付着することがなくなり、固形分の付着による抽気エゼクターの抽気性能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る抽気エゼクターを示す図であり、(a)は主要部の概念構成図、(b)はB−B断面を矢視方向に見た断面図。
【図2】模擬固形分を付着させた場合と付着させなかった場合の吸入空気量の違いを示す図。
【図3】本発明の実施形態2に係る抽気エゼクターの主要部の構成図。
【図4】従来技術の抽気エゼクターを使用した放射性物質取扱い施設のシステム構成図。
【図5】流路に模擬固形分を付着させたときの抽気エゼクターの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
なお、各図を通して共通する部品には同一符号を付けて、重複する説明は適宜省略するものとする。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係る抽気エゼクターを示す図であり、(a)は主要部の概念構成図、(b)は(a)のB−B断面の矢視図である。
【0013】
本実施形態1に係る抽気エゼクター2Aは、駆動水3を噴射させるエゼクターノズル2と、乾燥機1で発生した蒸気や粉状固形分を吸入する吸入室2と、吸入室2内の蒸気や粉状固形分を駆動水3によって導き循環水槽4に排出する円筒状のディフューザ2とから構成されている点は従来の抽気エゼクター2と同じであるが、以下の点で従来の抽気エゼクター2とは異なる。
【0014】
すなわち、本実施形態1に係る抽気エゼクター2Aは、円筒状のディフューザ2の流路入口側端面2aの断面形状を、外周縁部2bから内周縁部2cにかけて駆動水5が流下する方向に傾斜する形状の「すり鉢状」に加工し、さらに、ディフューザ2の流路入口側端面2aの外周縁部2bと接近した位置に洗浄水ノズル6aを対向させた洗浄水配管6を配置し、かつ、この洗浄水配管6に流れる洗浄水3aを駆動水3から分流して供給するように構成されている。
【0015】
しかも、この洗浄水ノズル6aの出口の向きは、洗浄水3aが外周縁部2bから内周縁部2cに向かって渦巻状に流れるように円周方向に向くように調整し、かつ、洗浄水ノズル6aの出口の形状はなるべく幅広い水流となるように調整しておく。このため、洗浄水3aは「すり鉢状」のディフューザ2の流路入口側端面2aに対して、均一に流れるようになる。
【0016】
図1に示した装置で試験したところ、洗浄水ノズル6aから「すり鉢状」の流路入口側端面2aに噴射する洗浄水3aの水量は、エゼクターノズル2から噴射される駆動水3の水量が3.7[m/h]のとき、その駆動水3の少なくとも1%の水量(0.037[m/h])を供給すれば、粉状の固形分がディフューザ2に付着しないことが確認できた。
【0017】
図2は、駆動水3の水量を3.7[m/h]に定めた状態で、ディフューザ2の流路入口に模擬固形分5を付着させたときの空気吸込流量と、付着させていないときの空気吸込流量との比較例図である。
【0018】
図2からわかるように、模擬固形分5を付着させていない場合、空気吸込量は約9[m/h]であるのに対して、模擬固形分5を付着させている場合の空気吸込量は約5[m/h]となり、模擬固形分5を付着させている場合の空気吸込量の低下が顕著であることがわかる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態1の抽気エゼクター2Aによれば、ディフューザ2の流路入口側端面2aを「すり鉢状」に形成してここに洗浄水ノズル6aから洗浄水3aを均一に流すようにしたので、乾燥機1から蒸気とともに吸込まれた粉状の固形分が抽気エゼクター2Aのディフューザ2の流路入口に付着することがなくなり、固形分5の付着による抽気エゼクターの抽気性能の低下を防ぐことができる。
【0020】
(実施形態2)
図3は、本実施形態2に係る抽気エゼクターの主要構成図である。
前述した実施形態1と本実施形態2とは、洗浄水の供給方法が相違するだけである。すなわち、実施形態1では洗浄ノズル6aに供給する洗浄水3aとして駆動水3の一部を分流するように構成したのに対して、本実施形態2では駆動水3とは別系統の市水(水道水)等の水を洗浄水7として供給するように構成した点で異なるが、その他の構成や、作用および効果は実施形態1の場合と同じなので説明は省略する。
【0021】
なお、本実施形態2の場合も、市水による洗浄水7の水量は駆動水3の水量の1%程度で粉状の固形分が抽気エゼクター2Aのディフューザ2に付着することはなく、固形分付着による抽気エゼクターの抽気性能の低下を防ぐことができる。
【0022】
(他の実施形態)
実施形態1および2では、抽気エゼクター2Aのディフューザ2の流路入口側端面2aの形状を「すり鉢状」にしたが、洗浄水が流路入口側端面2a上をほぼ均一に流れるのであれば「すり鉢状」に形成する必要はなく、平板状に形成してもよい。
また、使用する洗浄水は、ギ酸水溶液などのように固形分を溶解させる水溶液でもよい。さらに、洗浄ノズル6aは1個だけでなく、円周方向に複数個配置してもよい。
【0023】
さらに、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の発明を構成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…乾燥機、2A…抽気エゼクター、2…エゼクターノズル、2…吸入室、2…ディフューザ、2a…ディフューザの流路入口側端面、2b…ディフューザの外周縁部、2c…ディフューザの内周縁部、3…駆動水、3a…洗浄水、4…循環水槽、5…模擬固形分、6…洗浄水配管、6a…洗浄水ノズル、7…洗浄水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動水を噴射するエゼクターノズルと、気体を吸引する吸入室と、吸引した気体を駆動水により排出側に導く円筒状のディフューザとから構成された抽気エゼクターにおいて、
前記ディフューザの流路入口端面に洗浄水を噴射する洗浄水ノズルを有する洗浄水配管を設け、抽気エゼクターの運転中に洗浄水を前記洗浄水ノズルから前記ディフューザの流路入口端面に向けて噴射することを特徴とする抽気エゼクター。
【請求項2】
前記洗浄水ノズルは、出口の向きを前記ディフューザの流路入口端面の円周方向に向けて設置されていることを特徴とする請求項1記載の抽気エゼクター。
【請求項3】
前記ディフューザは、前記流路入口端面が外周縁部から内周縁部に向けてすり鉢状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の抽気エゼクター。
【請求項4】
抽気エゼクターの洗浄水ノズルより供給する洗浄水は、駆動水から分流して用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の抽気エゼクター。
【請求項5】
抽気エゼクターの洗浄水ノズルより供給する洗浄水は、ギ酸水溶液等固形分を溶解する水溶液であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の抽気エゼクター。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の抽気エゼクターを放射性物質取扱い施設に使用される乾燥機の内部で発生する気体および粉体を循環水槽に排出させる排出装置に使用することを特徴とする放射性物質取扱い施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−50049(P2013−50049A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187467(P2011−187467)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】