説明

担体投入型生物反応装置

【課題】
担体投入活性汚泥法を適用した処理場において、雨天時や設計値以上の水量が処理場に流入した場合、担体と生物反応槽混合液を分離する担体分離板の閉塞を回避することができると共に、最初沈殿池の効率的運用を図ることが可能な担体投入型生物反応装置を得ることにある。
【解決手段】
担体Sを用いて生物処理を行う生物反応槽1と、流入口を備え、該生物反応槽1に流入水を供給する移送管3と、前記生物反応槽1に配設され、生物反応槽混合液から前記担体Sを分離する担体分離板2と、前記移送管3に配設され、前記担体分離板2の下流側で開口する下流側流入口4とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、担体投入活性汚泥法を適用した下水等の処理場において、雨天時や設計値以上の水量が処理場に流入した場合に、担体と生物反応槽混合液を分離する担体分離板の閉塞を回避することができる担体投入型生物反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の活性汚泥処理法を適用した汚水処理装置として、微生物を付着させる担体を生物反応槽内に投入して汚水処理を行う担体投入型生物反応装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、例えば既設の生物反応槽内に担体を単に投入して生物処理を行ったのでは、生物反応槽混合液とともに担体が生物反応槽から流出してしまい、その担体が汚水処理系統のポンプに吸いこまれると、該ポンプが故障する等の問題があった。
【0003】
そこで従来、担体の流出防止対策として生物反応槽内に担体分離板を設置し、この担体分離板によって担体が生物反応槽内に留まるようにした担体投入型生物反応装置も開発されている。
【0004】
図25は従来の担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。この担体投入型生物反応装置は、最初沈殿池(以後、「初沈」と表記)から固液分離後の上澄液を流入させる生物反応槽1内に担体Sを投入して生物処理を行い、生物反応槽1内に設置された担体分離板2によって混合液と担体Sとを分離し、担体分離板2を通過した分離液を最終沈殿池を介して系外に排出するようになっており、前記担体分離板2によって担体Sを生物反応槽1内に留まらせる構造となっている。
【0005】
このような担体投入型生物反応装置が設置される汚水処理場では、基本的に設計水量以上の汚水は流入させないようになっている。設計水量以上の汚水は、生物処理による有機物分解を行わずに、簡易処理である初沈での固液分離を行い、消毒処理後に河川等に放流している。初沈では設計水量以上の固液分離処理を行わなければならないため、初沈に汚泥を溜めない運転を心がけており、通常時より初沈汚泥引抜回数と引抜量を増加させて運転している。
初沈での固液分離による簡易処理でも対応できず、設計水量以上の汚水が生物反応槽に流入する場合には、
a)担体分離板2の上流側での洗浄ばっ気量を増加させる。
b)担体Sの返送量を増加させる。
c)生物反応槽1内のばっ気を停止して担体Sを沈降させる。
などで対応している。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−67395号公報(実施例および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図25に示す担体分離板2を備えた従来の担体投入型生物反応装置が有する課題を以下に列挙する。
(1)処理場流入水量が急激に増加し、設計水量以上の汚水が処理場に流入してしまう場合、生物反応槽1内の流下速度が急激に上昇するため、担体Sが担体分離板2付近に滞留し、担体分離板2が閉塞してしまうという課題があった。
(2)担体分離板が担体Sで閉塞しても対策をとらずにそのままにしておくと、生物反応槽1の水位が上昇し、生物反応槽混合液が溢れ出すという課題があった。生物反応槽混合液は、微生物が主体の汚泥と汚水が含まれているため、生物反応槽1から溢れ出ると非常に汚いばかりか、病人の排泄物に含まれる雑菌や病原性微生物が含まれている可能性も高く、衛生面での課題もあった。
(3)また、処理場流入水が増加した場合、担体分離板2の洗浄ばっ気や担体返送量を増加したり生物反応槽1内のばっ気を停止したりするなどの処置をとっていたが、処置開始のタイミングは人為的判断の場合が多く、熟練技術者でないと判断が難しく処置が遅れるなどの課題があった。通常、降雨増水時に現場作業員が直ちに排除(分配)水量を判断・決定できないため、対応が遅れて生物反応槽1での生物処理に悪影響を及ぼしてしまう課題があった。
(4)簡易処理を前提としている下水処理場においては、初沈汚泥を溜めない運転を心がけるため、初沈汚泥引抜回数と引抜量を増加させて運転する必要があった。従って、低濃度の初沈汚泥を多量に引き抜く結果となり、初沈汚泥の濃縮効率が低下し、別途汚泥処理量が大幅に増加し汚泥処分費が高くなる、作業が繁雑になるなどの課題があった。
(5)設計水量以上の汚水が一気に流入してくると、生物反応槽1の滞留時間が極端に短くなり、生物処理に必要な時間が確保できないうちに生物反応槽1から流出してしまうことがあった。滞留時間が短すぎると有機物処理が十分でなく、さらに処理に必要な担体や浮遊汚泥の生物フロックが正常に成長できずバラバラになったり、酸化不足状態になり固液分離不能になったり、その後の生物処理が悪化したりする課題があった。
(6)さらに、高度処理を適用した処理場では、初沈汚泥の汚泥滞留時間が短くなることから生物反応槽流入水のBODが低下し、高度処理に必要なBODが確保できなくなる課題があった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、担体投入活性汚泥法を適用した処理場において、雨天時や設計値以上の水量が処理場に流入した場合、担体と生物反応槽混合液を分離する担体分離板の閉塞を回避することができると共に、初沈の効率的運用を図ることが可能な担体投入型生物反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る担体投入型生物反応装置は、担体を用いて生物処理を行う生物反応槽と、流入口を備え、該生物反応槽に流入水を供給する移送管と、前記生物反応槽に配設され、生物反応槽混合液から前記担体を分離する担体分離板と、前記移送管に配設され、前記担体分離板の下流側で開口する下流側流入口とからなることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る担体投入型生物反応装置の前記移送管には、複数の流入口が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る担体投入型生物反応装置の前記生物反応槽には、複数の担体分離板が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る担体投入型生物反応装置は、前記生物反応槽へ供給される流入水および/または返送汚泥から夾雑物を除去するスクリーンが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の担体投入型生物反応装置によれば、次のような幾多の効果が得られる。
(1)汚水(流入水)を担体分離板よりも下流側の下流側流入口から流入させることにより、担体分離板を通過する水量は常に設計値以下になるため、担体分離板が閉塞する危険性がなく、このため、急激な大量の流入水が流入してきても、通常通りの安定した生物処理を維持することができる。
(2)設計水量以上の大量の流入水が流入してきても、担体分離板が閉塞することはないため、対策を取らなくても生物反応槽混合液が溢れ出たり、雑菌や病原性微生物による汚染が起こったりする心配がない。
(3)担体分離板より下流側に下流側流入口を設置し、あらかじめゲート等で水量の分配を設定しておけば、急な大量の降雨があっても、独自で判断できる熟練技術者が不在でも、人為的判断が不要のため判断や対策が遅れることなく、流入水を的確に分配することができる。処理場の管理者が降雨に気がつかなくても、さらに何も対応しなくても流入水の必要量を分配できるため、急激な降雨対応を不要にできる。
(4)担体分離板の下流側に下流側流入口から設計水量以上の流入水が流入してきても、生物反応槽上流から流入してくる流入水量は設計水量以下になるため生物処理に必要な生物反応槽での滞留時間を保持することができる。担体分離板の上流側で十分な滞留時間を保持することができるため、生物反応槽の担体および浮遊の活性汚泥の生物は良好な状態で維持することができる。担体分離板を通過した浮遊活性汚泥は良好な状態を維持しているため、下流側流入口から大量の流入水と接触しても有機物(SS・BOD)を吸着することができる。浮遊汚泥は最終沈殿池で清透な処理水と生物汚泥とに固液分離することができる。
(5)担体分離板の下流側に下流側流入口を設置し、設計値以上の過剰流入水が流入してきても、流入水全量を簡易処理以上の生物処理が可能となるため、初沈汚泥を溜めない運転等の対策を行う必要がない。引抜き汚泥量が増加することもなく、汚泥処分費が増加することもない。
(6)さらに高度処理を適用している処理場では、初沈汚泥の滞留時間を保持するよう初沈を通過せず、直接下流側流入口から流入させることも可能であるため、高度処理に必要なBODを確保することができる。そのため窒素・リン除去などの高度処理を適用している処理場では有利となる。
(7)現在の下水処理場の多くは、生物反応槽末端まで流入水路が隣接している場合が多いので、改造工事などを行わずに下流側流入口を設置するだけで改造することができる。また、現在使用されていないステップ流入ゲートがあれば移設するだけで改造することができる。
(8)緊急流入口(下流側流入口)は堰でもゲートでもよい。堰であれば、人為的判断を行う必要がなく、設計値以上の過剰流入水が流入してきた場合は自動的に堰を越流し、生物反応槽に流入させることができる。水位や水量で自動制御できるタイプの自動ゲートであっても、一度設定しておけば人為的判断を行う必要がなく常に安定した処理を行うことができる。
(9)生物反応槽流入水路(移送管)に前ゲート(流入調整具)を設置すれば、前ゲート(流入調整具)から下流側流入口までの水路(移送管)は常時汚水(流入水)を溜めておく必要がないため、腐敗した汚水が水路(移送管)に滞留することはない。
(10)生物反応槽の担体分離板下流側に撹拌設備やばっ気設備を設置すれば、汚水と活性汚泥の撹拌が促進される上、活性汚泥が担体分離板下流側で沈降堆積することない。また、担体分離板の上流側に撹拌設備やばっ気設備を設置しても担体分離板面が閉塞するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図であり、図25と同一部分には同一符号を付して説明する。
この実施の形態1の担体投入型生物反応装置は、微生物を付着させる担体Sを用いて流入水の生物処理を行う生物反応槽1と、この生物反応槽1内に配設され、生物反応槽1内の混合液から前記担体を捕捉分離する担体分離板2と、流入水を移送する移送管3と、この移送管3に設けられ、前記担体分離板2の下流側に位置して流入水を生物反応槽1に供給する下流側流入口4とからなる基本構造となっている。移送管3は生物反応槽1に流入水を移送する管、水路、溝など流入水を移送できれば管状に限らない。
【0015】
この実施の形態1において、前記生物反応槽1は、上流側に初沈から流入水が供給される流入口(図示せず)を有し、前記担体分離板2を通過した分離液を最終沈殿池に流出させる構造となっている。また、前記移送管3は、生物反応槽1の側面上部に設置され、その下流側流入口4は、生物反応槽1の基準水位よりも高い位置で開口して過剰流入水を生物反応槽1内における担体分離板2の下流側に流入させるようになっている。生物反応槽1への流入水は初沈流出水の場合が多いが、ポンプ水からの流入、流入水貯留槽からの流入、直接流入など、あるいは生物反応槽1が複数設置されている場合や前段に他の処理設備や処理方式などの反応槽が設置されている場合、初沈は設置されているが流入水量が大幅に増加したため初沈を通過せずに流入させる場合などもあり、初沈からの流入水に限らない。
【0016】
このように構成された実施の形態1の担体投入型生物反応装置によれば、雨天時や設計値以上の水量(過剰流入水)が処理場に発生した場合、その過剰流入水は、移送管3を通って担体分離板2の下流側に設けられた下流側流入口4から生物反応槽1内における担体分離板2の下流側に流入後、最終沈殿池に流入する。図1は概念的構成を示した図であるため、生物反応槽1が複数設置されている場合は、図1の生物反応槽1は担体投入型生物反応槽の最終槽を示しているが、最終槽に限ったことではなく後段に別途処理方式があっても良く、生物反応槽1からの流出先は最終沈殿池に限ったことではない。このように過剰流入水を移送管3によって生物反応槽1内の担体分離板2下流側に分配流入させることができることにより、前記担体分離板2に生物反応槽1の流入水量(設計水量)以上の水量負荷がかからないので、担体Sが担体分離板2付近の上流側に集中するようなことがなく、担体Sによる担体分離板2の閉塞を回避することができるという効果がある。
【0017】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態2では、前記実施の形態1における移送管3の上流側を初沈に接続し、その移送管3に初沈から流入水を生物反応槽1内の上流側に流入させる流入口5を設けると共に、前記移送管3における流入口5と下流側流入口4との間に流入調整具(ゲート)6を設けたものであり、この点が前記実施の形態1と異なる。
【0018】
この実施の形態2において、前記流入調整具6は、堰構造のゲート(図示せず)からなり、初沈からの流入水が設計値水量を超えた過剰流入水であるとき、その過剰流入水がゲートを超えて下流側流入口4へと流れ、該下流側流入口4から生物反応槽1内の担体分離板2よりも下流側に流入するように構成されている。
すなわち、この実施の形態2の担体投入型生物反応装置は、生物反応槽1の流下方向に沿って設置された移送管3に、上流側から流入口5と流入調整具6と下流側流入口4を設け、通常時は、初沈からの流入水が流入口5から生物反応槽1の上流側内部に流入し、その流入水が降雨増水等により設計値水量を超えた過剰流入水であるとき、その過剰流入水が流入調整具6のゲートを超えて下流側流入口4から生物反応槽1の下流側に流入するものである。また、前記流入調整具6は、移送管3の流入口5の下流側に設置した開閉可能なゲートであってもよく、この場合、前記ゲートは、通常時は閉じておき、過剰流入水発生時に開くようにする。
【0019】
このように構成した実施の形態2の担体投入型生物反応装置によれば、生物反応槽1の流下方向に設置した移送管3に流入口5と流入調整具6を設けたことにより、通常時は流入水が移送管3上流側の流入口5から生物反応槽1内に流入するが、過剰流入水が流入したときは、その過剰流入水が流入調整具6のゲートを超えて下流側流入口4から生物反応槽1に流入するので、前記実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
【0020】
また、前記流入調整具6として、移送管3の流入口5の下流側にゲートを開閉可能に設置した場合、通常時はゲートを閉じておくことにより、初沈からの流入水を流入口5から生物反応槽1内に流入させることができ、前記ゲートの下流側には流入水が流れないので、過剰流入水がない場合に、移送管3内のゲートより下流側に汚水が滞留するのを抑止でき、該移送管3内での汚水滞留による腐敗を防止することができるという効果がある。
【0021】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す平面図、図4(A)は図3中の流入調整具6のゲート設置部をゲート開状態で示す断面図、図4(B)は図4(A)のゲート閉状態を示す断面図、図4(C)は半開状態で示す断面図であり、図2と同一部分には同一符号を付して説明する。
この実施の形態3では、前記実施の形態2における流入調整具6として電動ゲート(自動ゲート)6Aを適用し、この電動ゲート6Aを移送管3の流入口5近傍の下流側に設置したものである。前記電動ゲート6Aは通常時には閉じておき(図4(B)参照)、降雨増水等による過剰流入水が流入してきた緊急時に開動(図4(A)または(C)参照)させるものである。
【0022】
この実施の形態3では、前記緊急時に電動ゲート6Aを開動させることにより、過剰流入水は移送管3の下流側流入口4から生物反応槽1内に流入し、生物反応槽混合液と混合・接触し、有機物は微生物に吸着され除去される。
このように実施の形態3では、流入調整具として電動ゲート6Aを設置したことにより、流入水量が急激に増加した場合に前記電動ゲート6Aを瞬時に操作対応させることが可能となり、前記電動ゲート6Aは遠隔操作も可能であることから、対策が遅れることもなく雨天時でも安全に対応可能となる。
【0023】
実施の形態4.
図5はこの発明の実施の形態4による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す横断平面図、図6(A)は図5中の手動ゲート設置部をゲート開状態で示す断面図、図6(B)は図6(A)のゲート閉状態を示す断面図である。
この実施の形態4では、流入調整具6として手動ゲート6Bを適用し、この手動ゲート6Bを移送管3の下流側流入口4に設置したものである。
従って、この実施の形態4の場合においても、通常時は手動ゲート6B(図6(B)参照)を閉じておき、緊急時に手動ゲート6B(図6(A)参照)を開くことにより、過剰流入水が混入してきても、担体分離板2が閉塞することなく、流入有機物は微生物に吸着されることで除去されるので、安定した活性汚泥処理が継続できるという効果がある。また、手動ゲート6Bをあらかじめ設定した高さ位置まで開けておく(図6(C)参照)ことで、急激に流入水が増水し設定した高さ位置を越えた場合に下流側流入口4から自動で流入させることができる。さらに流入水の水量増加が収まり流入水量が減少し、設計水量以下に収まれば移送管3の水位も低下し、自然に下流側流入口4からの流入は停止することができる。これらは自動で行われるため人為的なミスや対応の遅れなどがなく、確実に実施できる効果がある。
【0024】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態5では、移送管3の流入口5近傍の下流側において、前記移送管3の底部に流入調整具としての固定越流堰6Cを設置したものであり、その他の構造は前記実施の形態1〜4と同様である。
【0025】
この実施の形態5による担体投入型生物反応装置は、通常の運転時に流入水は流入口5から生物反応槽1内に流入するが、設計値水量以上の過剰流入水が流入した場合、その過剰流入水は固定越流堰6Cを超えて移送管3の下流側流入口4から生物反応槽1内に流入する。流入した過剰流入水は、生物反応槽1混合液と接触・混合し、流入有機物は生物反応槽混合液の生物に吸着され、最終沈殿池で固液分離処理される。従って、この実施の形態5の場合も、過剰流入水が混入してきても、担体分離板2が閉塞することなく、流入有機物は微生物に吸着されることで除去されるので、安定した活性汚泥処理が継続できるという効果がある。
固定越流堰6Cを越えた過剰流入水は、下流側に向かって緩やかに取られている移送管3の下降勾配に従って下流側に流下し、下流側流入口4から生物反応槽1に流入する。移送管3の下降勾配は処理施設では、通常下流側に生物反応槽混合液が流下するように設計されており、実施の形態5に限ったものではない。
【0026】
実施の形態6.
図8はこの発明の実施の形態6による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図、図9は図8の概略的な平面図である。
この実施の形態6では、生物反応槽1を図9に示すように平面ほぼコ字形状に形成することによって、生物反応槽1の上流側に設けた流入口5と下流側流入口4とが前記生物反応槽1の移送管3を挟んで対向位置に設置させると共に、移送管3の下流側流入口4に差込式の板状越流堰6Dを流入調整具として昇降開閉可能に設置したものである。
この実施形態6では生物反応槽1が敷地の関係でコ字形状に形成されているため、通常なら上流側と下流側は離れて設置されるところ移送管3を間において、流入口5と下流側流入口4が対向位置に設置されるものである。流入口5と下流側流入口4が移送管3の近い位置に設置されているため、下流側流入口4を流入口5の高さ位置より高く設置している。また、図9では生物反応槽1がコ字形状に記載されているが、共通の移送管3を使用する2槽の生物反応槽の上流側と下流側が隣接して設置されていてもよい。
【0027】
以上のような構成の実施の形態6によれば、差込式の板状越流堰6Dを昇降させて位置調整を行うことができるので、越流させたい水量に応じて板状越流堰6Dの高さを調節することができ、その高さ調節を予め行っておくことで、設計値水量以上の過剰流入水が突然流入してきた時にも担体分離板2が閉塞することなく対応できるという効果がある。さらに人手を煩わさず、何もせずに大量の過剰流入水を処理できるため、対応の遅れや人為的ミスなどが起きる心配がなく、手間もかからない上に安全を確保できる優れた効果がある。また、前記板状越流堰6Dを最底部にまで下ろすことで、通常運転時は流入口5から流入水が流入するが、流入水が過剰になった場合には移送管3内の水位が上昇して板状越流堰6Dを超えると、下流側流入口4から過剰流入水が流入してくる。なお、差込式の板状越流堰6Dは、高さ調整可能な可動堰であれば、いかなるものでもよく、この場合も同様の作用効果が期待できる。移送管3内の流入口5と下流側流入口4の間に流入調節具6を設置してもよい。
【0028】
実施の形態7.
図10はこの発明の実施の形態7による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態7では、前記実施の形態6における移送管3の下流側流入口4に落し込み式の板状越流堰6Eを設置したものである。この落し込み式の板状越流堰6Eは、高さが予め設定されるものである。従って、大量の流入水が急激に流入してきても問題なく安定運転が可能となる。また、下流側流入口4から大量の流入水が流入することで、担体分離板2より生物反応槽1に逆流したとしても、この場合、落し込み越流堰6Eや流入口5の大きさは、適宜選択決定することが可能であるため、過剰流入水が大量に流入してきても、生物反応槽1の水位は一定以上に上がることはない。また、担体分離板2は、生物反応槽1の通常水位よりも上部まで設置されるので、担体Sが担体分離板2を超えて越流することはない。一時期過剰流入水の影響で水流が生物反応槽1内を逆流しても、過剰流入水の流入が落ち着けば、生物反応槽1を下流側に流入水が流れるように設計・施工されているため、安定した汚水処理を継続できる。生物反応槽1の形状はコ字形状であってもよく形は図10に限らない。
【0029】
実施の形態8.
図11はこの発明の実施の形態8による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態8では、生物反応槽1内に複数(図11では2つ)の担体分離板2A,2Bを上流側と下流側に離して設置するともに、移送管3の流入口5と下流側流入口4との間にステップ流入口7を設け、このステップ流入口7を生物反応槽1における上流側の担体分離板2Aの上流側に開口させたものである。図11ではステップ流入口7が1箇所記載してあるが、2箇所以上複数設けてもよく、複数設ける場合はステップ流入口7の上流側に担体分離板を設置してもよい。
【0030】
この実施の形態8によれば、生物反応槽1内に複数の担体分離板2A,2Bを設置移送管3の流入口5とステップ流入口7を生物反応槽1内の担体分離板2Aの上流側に開口させたことにより、生物反応槽1内での活性汚泥処理を効率よく安定して行うことができるという効果がある。
【0031】
実施の形態9.
図12はこの発明の実施の形態9による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図であり、図11と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
この実施の形態9では、前記実施の形態8の担体投入型生物反応装置における移送管3の流入口5とステップ流入口7のそれぞれに担体分離設備8,9を設けたものである。
これらの担体分離設備8,9は、生物反応槽1の担体Sが移送管3に流出するのを防ぐことができる材料、例えばパンチングメタルタイプやスクリーンタイプでもメッシュタイプでも格子タイプでもよく、要するに前述のように担体Sの流出を防止できるものであればよい。
【0032】
この実施の形態9によれば、前記流入口5とステップ流入口7に担体分離設備8,9を設けたことにより、過剰流入水が混入した場合に、生物反応槽1の水位が上昇することで生物反応槽1の担体Sが移送管に流出するのを防止することができるという効果がある。ステップ流入口7は複数設けてもよく、ステップ流入口7に担体分離設備9が設置されているため生物反応槽1の担体Sが逆流して移送管3に流出するのを防ぐことができる。また、担体分離板2A,2Bはステップ流入口7ごとに異なる形状や部材を使用してもよい。
【0033】
実施の形態10.
図13はこの発明の実施の形態10による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態10では、前記実施の形態1による担体投入型生物反応装置の生物反応槽1内に担体返送ポンプ10を設置したものである。
この担体返送ポンプ10は、生物反応槽1内の担体Sを生物反応槽1の下流側から上流側に返送する担体返送管11と、この担体返送管11内に下流側から圧縮空気を供給する空気供給管(圧縮空気供給手段)12とからなっている。前記担体返送管11は、生物反応槽1内における担体分離板2の上流側近傍で汚水中に垂下する吸引管部11aと、この吸引管部11aの上端に連続して生物反応槽1内の水面よりも上方で生物反応槽1内の上流側に延出する吐出管部11bとからなっており、前記空気供給管12からの圧縮空気が前記吸引管部11aの下部から供給されるようになっている。なお、前記空気供給管12は圧縮空気供給源に接続されている。
【0034】
このように構成された担体返送ポンプ10は、空気供給管12を介して担体返送管11の吸引管部11aに圧縮空気を供給することにより、担体返送管11内部の混合液中に気泡を生じさせる。これによって、担体返送管11内部の混合液は、外部の生物反応槽混合液(生物反応槽1内部の混合液)よりも見かけ比重が小さくなり、この比重差相当分だけ生物反応槽混合液と担体Sが担体返送管11内に吸引される。担体返送管11内部に吸引された混合液と担体Sは担体返送管11内部で気泡との混合流体となって吸引管部11a内部で押し上げられた後、吐出管部11bを流れて該吐出管部11bの先端出口から生物反応槽1の上流側に吐出返送される。
【0035】
以上説明した実施の形態10によれば、生物反応槽1内において、設計値以上の過剰流入水が流入してきた場合に下流側流入口4から過剰流入水を生物反応槽1に流入させるが、担体分離板2の上流側の生物反応槽1には設計水量以下の流入水しか流入していないため、担体Sの流下には影響がない。担体分離板2の上流側の生物反応槽1内において、下流側の担体分離板2付近まで流下してきた担体Sを担体返送ポンプ10によって生物反応槽1の上流側に返送することができるので、生物反応槽1内部での担体密度を均一化することができると共に、生物反応槽1内部の流入水が増加した場合には、前述の担体返送量を増加させることで担体分離板2の閉塞を防止することができる。また、前記担体返送ポンプ10において、担体返送管11の吐出管部11bは生物反応槽1の水面よりも上方に保持されているので、生物反応槽1が複数槽に分かれていても使用することができる。
【0036】
実施の形態11.
図14はこの発明の実施の形態11による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図であり、図13と同一および相当部分には同一符合を付して重複説明を省略する。
この実施の形態11では、前記実施の形態10による担体返送ポンプ10の担体返送管11全体を生物反応槽1内部の混合液中に設置したものである。この場合、担体返送管11は、吐出管部11bを上向きにして吸引管部11aを生物反応槽1の底部に沿わせた状態に設置され、前記吐出管部11bに空気供給管12を接続した構造としている。
【0037】
このように構成された担体返送ポンプ10は、空気供給管12を介して吐出管部11bに圧縮空気を供給することにより、前記実施の形態10の場合と同様に、担体分離板2付近まで流下してきた担体Sを担体返送ポンプ10によって生物反応槽1の上流側に返送することができるので、生物反応槽1内部での担体密度を均一化することができると共に、生物反応槽1内部の流入水が増加した場合には、前述の担体返送量を増加させることで担体分離板2の閉塞を防止することができるという前記実施の形態10と同様の作用効果が得られる。
また、前記担体返送ポンプ10は全体を生物反応槽1内部の混合液中に設置したので、担体Sを含んだ生物反応槽混合液を移送するための必要とするエネルギーが少なくて済むという効果がある。
なお、前記担体返送ポンプ10の担体返送管11は、担体を含んだ生物混合液を返送できる形状であればよく、その形状は特定されるものではない。また、実施の形態10と同様に設計値以上の過剰流入水が流入してきた場合に下流側流入口4から過剰流入水を生物反応槽1に流入させるが、担体分離板2の上流側の生物反応槽1には設計水量以下の流入水しか流入していないため、担体Sの流下には影響がない。
【0038】
実施の形態12.
図15はこの発明の実施の形態12による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態12では、移送管3の流入口5と下流側流入口4のそれぞれに、流入水に含まれた夾雑物を除去するための夾雑物除去設備(スクリーン)13,14を設けると共に、生物反応槽1の上流側に接続された汚泥返送管15にも返送汚泥に含まれた夾雑物を除去するための夾雑物除去設備(スクリーン)16を設けたものである。
【0039】
このように、移送管3の流入口5と下流側流入口4および汚泥返送管15のそれぞれに夾雑物除去設備13,14,16を設けたことで、担体分離板2の開口率が低く、流入水や返送汚泥に含まれている夾雑物が生物反応槽1に入ると担体分離板2が閉塞する可能性が高い場合に、有効である。
【0040】
開口率が低い担体分離板2にはスクリーンタイプがある。小さい担体Sを採用する場合には、小さい担体Sを捕捉するために担体分離板2の目開きも小さくする必要があるので、スクリーンタイプを採用する場合がある。担体Sが小さいため担体2を捕捉するためのスクリーンタイプの担体分離板2の目開きは小さく、流入水に含まれる夾雑物や上空から落下する落ち葉やゴミなどが生物反応槽1に含まれると、スクリーンタイプの担体分離板2をすぐに閉塞させてしまう。その場合は、スクリーンタイプの担体分離板2が閉塞するのを防止するために、流入水や返送汚泥に含まれる夾雑物を除去する必要がある。また、スクリーンタイプの担体分離板2は閉塞し易いため、生物反応槽1内に設置する場合も担体分離板2の上流側に整流板(図示せず)を設置したり、担体分離板2を生物反応槽1の水位に潜るように設置したりする。パンチングメタルタイプの担体分離板2を設置している生物反応槽1の流入口5や下流側流入口4に夾雑物除去設備のスクリーン13,14を設置しても問題ないが、パンチングメタルタイプの担体分離板2は閉塞し難いためスクリーンは不要である。
【0041】
パンチングメタルタイプの担体分離板2は以下の特徴を有する。
(1)担体分離板2は、担体を通過させずに生物反応槽1の混合液を通過させる担体−混合液の分離機能を有する。その形状は、例えばパンチングメタルタイプやスクリーンタイプ、斜め格子タイプなどがあるが、担体と混合液を分離できるものであれば、これらに特定されるものではない。
(2)担体分離板2がパンチングメタルタイプである場合、その設置方向は、図16に示すように生物反応槽1の上流側に打ち抜き表面(=滑らか面)が向き、下流側に打ち抜き裏面(=粗い面)が向くようにする。
(3)粗い面を上流側に向けると、担体が摩耗・劣化するため担体が消費され交換頻度が早まり、生物処理に支障を来すばかりか、ランニングコストの上昇を招く。
(4)パンチングメタルタイプの担体分離板2の設置角度は、図17に示すように90度以下(底面から垂直に立設するか下流側に傾斜させる。)がよかった。
(5)パンチングメタルタイプの担体分離板2は開口率が30〜65%のものを適用するとよい。
(6)担体形状が12mm×12mm×15mmの場合は、開口直径が2〜15mmφのパンチングメタルタイプの担体分離板2がよかった。担体形状がφ3.0mm×5.0mmの小さい担体の場合は、1.0〜5.0mm間隔のスクリーンタイプの担体分離板2を適用するとよかった。
(7)パンチングメタルタイプの担体分離板2の穴は2mmφでも担体と生物反応槽混合液の分離性が得られ、担体によって担体分離性が閉塞することもなかったが、やや担体が担体分離板近くに集まった。15mmφの穴でも良かったが、8mmφの穴が最も担体と生物反応槽混合液の分離がスムーズで良好であった。
(8)図18に示すように、担体分離板2の上流側や下流側にも、汚泥沈殿(堆積)防止用や担体分離板の閉塞解消用の散気設備や撹拌設備が設けられていて、ばっ気を行っているため、水位差の解消(流速の均等化)に寄与する。
【0042】
スクリーンタイプの担体分離板は以下の特徴を有する。
(1)スクリーンタイプの担体分離板は傾斜させて設置する。なお、スクリーンタイプの担体分離板の上流面には整流板を設ける必要がある。
(2)スクリーンタイプの担体分離板は、水没するように設置してもよい。スクリーンタイプの担体分離板の目開き幅が小さいため生物反応槽混合液が担体分離板を通過する際に抵抗がかかり、担体分離板を水没させないと、図19に示すように担体分離板の前後において、防止板(整流板)の抵抗により水位差(上流側が高く、下流側が低い)が生じる。そのため、担体分離板の前後で水頭差ができ、担体分離板の開孔での通過速度や担体分離板の下流側での流速が速くなり、さらに抵抗が大きくなり閉塞し易くなる。
【0043】
実施の形態13.
図20はこの発明の実施の形態13による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示すブロック図である。
この実施の形態13では、複数(図20では二つ)の生物反応槽1A,1Bを並列に配置している。
この実施の形態13では、パンチングメタルタイプの担体分離板21が垂直に設置された第1の生物反応槽1Aと、スクリーンタイプの担体分離板22が所定の傾斜角度で設置された第2の生物反応槽1Bを並列に設置している。これらの生物反応槽1A,1Bにおいてもそれぞれに下流側流入口が設けられており、それらの下流側流入口から過剰流入水が流入するようになっている。また、最初沈殿池(初沈)23からの流入水を生物反応槽1A,1Bに流入させる移送管3は、生物反応槽1A系統の分岐管3aと生物反応槽1B系統の分岐管3bとに分岐されている。これと同様に汚泥返送管15も前記両系統に分岐されている。
【0044】
スクリーンタイプの担体分離板22の場合、流入水の夾雑物が生物反応槽混合液に混入すると、担体分離板22が閉塞するため、移送管3における生物反応槽1B系統の分岐管3bには夾雑物除去用のスクリーン25を設置している。パンチングメタルタイプの担体分離板21が設置された生物反応槽1Aの場合、夾雑物が流入してきても担体分離板21が閉塞する懸念がないため、夾雑物除去用のスクリーンは設置していない。そのためスクリーンタイプの担体分離板22が設置された生物反応槽1Bに最終沈殿池から返送される汚泥には生物反応槽1Aに流入した夾雑物が混入しており、この系統の汚泥返送管15から生物反応槽1Bへ返送する分岐管にも夾雑物除去用のスクリーン26を設置している。夾雑物除去用のスクリーン25,26を設けたことにより、前記両生物反応槽1A,1B内の混合液に夾雑物が混入しないようにできる。
【0045】
前記夾雑物除去用のスクリーン25,26は以下の特徴を有する。
(1)夾雑物除去用のスクリーンは、流入水あるいは返送汚泥に含まれる夾雑物やし渣類を除去する。
(2)夾雑物除去用のスクリーンを設置しないと、流入水や返送汚泥に含まれる夾雑物が生物反応槽に混入し、スクリーンタイプの担体分離板を閉塞してしまい、混合液が溢れ、最悪の場合は活性汚泥処理ができなくなる。
(3)夾雑物除去用のスクリーンは、微細目スクリーン、あるいは0.5〜5.0mm間隔のものを適用するが、夾雑物を捕捉除去できるものであれば、これに限らない。担体投入型の生物反応槽と担体投入型以外の生物反応槽を並列設置して使用する場合は、担体投入型以外の生物反応槽には夾雑物除去用のスクリーンは必要ないが、並列している担体投入型生物反応槽には夾雑物除去用のスクリーンがないと担体分離板が目詰まりを起こし、活性汚泥処理ができなくなるため、流入水および/または返送汚泥の夾雑物除去用スクリーンが必要となる。
(4)処理施設が屋外にある場合、スクリーンを担体分離板に使用するとゴミ(木の葉や紙類など)の混入によるスクリーンの閉塞が生じる恐れがある。そのため、生物反応槽は覆蓋仕様とする必要がある。これに対して、パンチングメタルタイプの担体分離板は混入するゴミ等で閉塞することはないため、特段覆蓋仕様にする必要はない。
【0046】
このように、パンチングメタルタイプの担体分離板21が設置された生物反応槽1Aと、スクリーンタイプの担体分離板22が設置された生物反応槽1Bとを並列に設置して処理を行う場合であっても、担体の大きさや形状および担体分離板の目開きの大きさや、形状が異なった場合であっても、それらの方式が混在していても、担体分離板の下流側に下流側流入口を設置することで、設計値以上の過剰流入水が突然流入してきても、安定した処理が確保できる効果がある。すなわち夾雑物が混入すると閉塞する程の目開きの小さい担体分離板を設置した場合でも、夾雑物が混入しても閉塞しない開口率の担体分離板を設置した場合でも、それらの方式が混在していても、複数設置されていても、下流側に下流側流入口を設置することで、設計値以上の過剰流入水が突然流入することによる担体分離板の閉塞を防ぐことが可能となり、担体分離板や担体の大きさに効果は影響されず、担体を利用し、担体分離板などの部材を利用した方式であれば効果を得ることが可能となる効果がある。
【0047】
実施の形態14.
図21はこの発明の実施の形態14による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示すブロック図である。
前記実施の形態13では、スクリーンタイプの担体分離板22が設置された生物反応槽1Bに返送汚泥の夾雑物が混入しないように、その系統の汚泥返送管15から生物反応槽1B内に返送する分岐管にのみ夾雑物除去用のスクリーン26を設置したが、この実施の形態14では、返送汚泥中の夾雑物を前記両方の生物反応槽1A,1Bのいずれにも混入させない汚泥返送管15の位置に夾雑物除去用のスクリーン26を設置したものである。
【0048】
実施の形態15.
図22(A)はこの発明の実施の形態16による担体投入型生物反応装置を示す概要構成説明図、図22(B)は図22(A)中の下流側流入口を示す説明図である。
この実施の形態15では、生物反応槽1に並列に設置されている移送管3が流入水路からなり、その移送管3に管状の流入水路が形成されているものである。そして、前記移送管3には、流入口5の下流側近傍に越流堰27を設けた構造となっている。
【0049】
この実施の形態15では、下流側流入口4には流入量を制御するゲートや弁、越流堰等も設置されていないため、移送管3を通過してくる過剰流入水は生物反応槽1にそのまま流入する。流入水量の調整は、移送管3に設置され図7、図8、図10に記載した越流堰や、図3に記載した自動ゲート、図4に記載した手動ゲートなどによって設計水量以下の通水量の場合は、下流側流入口4から流入水が流入するように制御している。
【0050】
また、前記実施の形態15での移送管3は、前述のように断面管状となって水路が密閉されているため、臭気が外に漏れず、また、外部から落ち葉やゴミなどが入り込む心配がない。さらに、物や人が落ちる事故も避けることができる。流入水路形状に施工するよりも安全設備等が不要もしくは簡易で済むため、安価である。
【0051】
実施の形態16.
図23はこの発明の実施の形態16による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態16による担体投入型生物反応装置は、生物反応槽1内における担体分離板2の上流側に洗浄ばっ気設備30を設置したものである。この洗浄ばっ気設備30は、担体分離板2に担体Sが密着しないように、ばっ気による担体分離板2の洗浄を行うものである。図23には担体分離板2の上流側に洗浄ばっ気設備30が記載されているが、担体分離板2を洗浄できれば下流側や横側正面などに設置してもよく、これに限ったことではない。流入水が増加した場合に、ばっ気風量を増加させることで、下流側流入口4から過剰流入水を流入させ担体分離板2の閉塞を防止する効果をさらに強める効果を得ることができる。また、洗浄ばっ気設備30を設置することで流入水が流入してきた場合に、担体Sを分離した後の生物反応槽混合液と下流側流入口4から流入してきた流入水とを効率よく混合させることができるため、有機物がフロックに吸着し易くなり、活性汚泥処理効率が上がるなどの効果がある。
【0052】
前記洗浄ばっ気設備30を設置する場合、該洗浄ばっ気設備30として、担体分離板2の上流側下部に、流入側方向へ延在する散気装置を設置する。担体分離板2は平板状であることを基本とするが、これに限らず、コ字形状やL字形状などであってもよく、図22の撹拌設備をばっ気設備に変更する配列でもよく、流入水の流下流速で担体分離板2の形状は適宜決定されるものである。
【0053】
実施の形態17
図24はこの発明の実施の形態17による担体投入型生物反応装置の概念的構成を示す斜視図である。
この実施の形態17では、生物反応槽1内における担体分離板2の下流側に撹拌設備31を設置したものである。この撹拌設備31は、担体分離板2の下流側の生物反応槽混合液が低速になり、沈降し、槽下部に溜まるのを防ぐため、さらに担体分離板2に担体Sが密着しないように、担体分離板2を洗浄するものである。生物反応槽1の流入水が増加した場合に、撹拌設備31の撹拌動力を上げることで担体分離板2の閉塞を防止することができる。また、過剰流入水が下流側流入口から流入してきた場合には、担体Sを分離した後の生物反応槽混合液と下流側流入口4から流入してきた流入水とを効率よく混合できるため、有機物がフロックに吸着し易くなり、処理効率が上がるなどの効果がある。過剰流入水と活性汚泥の接触を促進させ、また汚泥の沈降も防止できる効果がある。
この実施の形態17では、撹拌設備31のみを図示したが、前記実施の形態16の洗浄ばっ気設備30と共用してよく、図18などのよう洗浄ばっ気設備や撹拌設備を設置してもよく、洗浄ばっ気設備30と撹拌設備31の両方を設置することで、担体分離板2の洗浄効率および処理効率がさらに上昇するという効果がある。
【0054】
実施例1.
図1に示す実施の形態1における生物反応槽1において、設計処理水量7,500m3/日に対し、運転時に15,000m3/日以上の流入水量まで増加してきたため、流入調整具(自動ゲート)を開とし、担体分離板の下流側流入口に流入させた。
その結果、生物反応槽1の流入水量は設計値以下に維持可能であったため、担体分離板付近での担体の滞留や閉塞もなく、通常の運転が維持可能であった。
流入水BOD濃度は通常時200mg/Lであったのに対し、流入水量ピーク時には120mg/Lまで低下した。緊急用流入口が設置される前までは、消毒処理前の簡易処理後にはBOD濃度が80mg/Lで放流していた。緊急用流入口を設置してからは流入水の120mg/LのBODは、担体分離板の下流側で生物反応槽混合液に吸着されることで、7mg/Lまで低減できた。
また、流入水量が設計値相当まで低下してきた時点で、流入調整具(自動ゲート)を閉とし、通常運転に復帰させた。
【0055】
実施例2.
図3に示す実施の形態2における生物反応槽1において、設計処理水量10,000m3/日に対し、下水道管渠が埋設されている道路近隣の水道管等の事故により30,000m3/日以上の流入水量まで増加した。事故の連絡を受けた時点で、雨天時越流堰(流入調整具)から越流し、過剰流入水が担体分離板の下流側流入口から流入した。このとき、生物反応槽1の流入水量は設計値以下で維持されていたため、担体分離板付近での担体の滞留も閉塞もなく、通常の運転が維持可能であった。流入水BODは、増量した水の大半が水道水であったためにBOD80mg/L程度であった。
【0056】
実施例3.
図7に示す実施の形態4における生物反応槽1において、設計処理水量2,000m3/日に対し、気象災害による大量の不明水が流入し、10,000m3/日以上の流入水量まで増加した。固定越流堰(流入調整具)から越流し、過剰流入水が担体分離板の下流側流入口から流入した。生物反応槽1の流入水量は、設計値以下で維持していたため、担体分離板付近での担体の滞留や閉塞もなく、通常の運転が維持可能であった。
また、流入水量が設計値相当まで低下した時点で、固定越流堰(流入調整具)からの越流はなくなり、通常運転に戻った。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態1による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態2による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態3による担体投入型生物反応装置を示す概略的な横断平面図である。
【図4】図4(A)は図3中のゲート設置部をゲート開状態で示す断面図、図4(B)は図4(A)のゲート閉状態を示す断面図、図4(C)は図3中のゲート設置部を半開状態で示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4による担体投入型生物反応装置を示す概略的な横断平面図である。
【図6】図6(A)は図5中の手動ゲート設置部をゲート開状態で示す断面図、図6(B)は図6(A)のゲート閉状態を示す断面図、図6(C)は図6(A)のゲート開状態と閉状態の変化を示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態5による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態6による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態7による担体投入型生物反応装置を示す概略的な平面図である。
【図10】この発明の実施の形態8による担体投入型生物反応装置の概略的な斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態9による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態10による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態11による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図14】この発明の実施の形態12による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図15】この発明の実施の形態13による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図16】担体分離板の概略断面図である。
【図17】担体分離板の設置例を洗浄ばっ気設備との関連で示す概略図である。
【図18】担体分離板と洗浄ばっ気設備と撹拌設備との関連を示す配置図である。
【図19】担体分離板の設置例を示す概略図である。
【図20】この発明の実施の形態14による担体投入型生物反応装置を示すブロック図である。
【図21】この発明の実施の形態15による担体投入型生物反応装置を示すブロック図である。
【図22】図22(A)はこの発明の実施の形態16による担体投入型生物反応装置を示す概要構成説明図、図22(B)は図22(A)中の下流側流入口を示す説明図である。
【図23】この発明の実施の形態17による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図24】この発明の実施の形態18による担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【図25】従来の担体投入型生物反応装置を示す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B 生物反応槽
2,2A,2B 担体分離板
3 移送管
3a,3b 分岐管
4 下流側流入口
5 流入口
6 流入調整具
6A 電動ゲート
6B 手動ゲート
6C 固定越流堰
6D 差込式板状越流堰
6E 落し込み式板状越流堰
7 ステップ流入口
8,9 担体分離設備
10 担体返送ポンプ
11 担体返送管
11a 吸引管部
11b 吐出管部
12 空気供給管
13,14 夾雑物除去設備(スクリーン)
15 汚泥返送管
16 夾雑物除去設備(スクリーン)
21,22担体分離板
23 最初沈殿池
24 最終沈殿池
25,26 スクリーン
27 越流堰
30 洗浄ばっ気設備
31 撹拌設備
61A 開口
61B 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を用いて生物処理を行う生物反応槽と、
流入口を備え、該生物反応槽に流入水を供給する移送管と、
前記生物反応槽に配設され、生物反応槽混合液から前記担体を分離する担体分離板と、
前記移送管に配設され、前記担体分離板の下流側で開口する下流側流入口と
からなることを特徴とする担体投入型生物反応装置。
【請求項2】
前記移送管には、複数の流入口が設けられていることを特徴とする請求項1記載の担体投入型生物反応装置。
【請求項3】
前記生物反応槽には、複数の担体分離板が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の担体投入型生物反応装置。
【請求項4】
前記生物反応槽へ供給される流入水および/または返送汚泥から夾雑物を除去するスクリーンが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の担体投入型生物反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−155184(P2010−155184A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333807(P2008−333807)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000147408)株式会社西原環境テクノロジー (44)
【Fターム(参考)】