説明

担体

本発明は、後眼部に作用物質を送達するための担体であって、ビタミンE誘導体、特にトコフェロールを含有する担体に関する。担体はまた、アネキシンのような細胞死マーカーも含有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤又は他の作用物質の網膜への送達のため、特に局所的に送達される場合の担体としての、ビタミンE誘導体、例えばトコフェロール、その誘導体及び関連分子の使用に関する。
【0002】
局所投与からの後眼部への分子の送達は多くの眼薬理学者が掲げる目標であった。加齢性黄斑変性及び糖尿病性網膜症のための抗VEGF療法の出現と共に、それはますます一般的になってきた。
【0003】
典型的には、局所的眼薬剤投与は点眼薬によって実施されるが、それらは眼表面で短い接触時間しか有さない。点眼投与後、前眼房における薬剤のピーク濃度は一般に20〜30分後に達成され、典型的には適用された濃度よりも2桁低い。眼房水から薬剤は虹彩、毛様体、水晶体及び網膜に容易に到達できる。局所投与された薬剤の一部は、眼球結膜を越えて強膜に吸収され、さらにブドウ膜及び後眼部に吸収され得る。薬剤の角膜通過は、薬剤が後眼部へと通過することを可能にするための非侵襲的な方法である。送達の角膜経路は、治療のためだけでなく診断法にも有用である。
【0004】
変性疾患、例えば緑内障に関連する細胞死を観測するために細胞死マーカーを眼の後方領域、特に網膜に送達できることは特に興味深い。これまでは、細胞死マーカー、例えばアネキシンを硝子体内又は静脈内経路で送達する必要があった。
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、ビタミンE誘導体、特にトコフェロールが、局所適用後にアネキシンのような薬剤の眼後方領域への送達を高めるための担体として使用し得ることを発見した。
【0006】
本発明によれば、ビタミンE誘導体と細胞死マーカーを含有する医薬組成物が提供される。
【0007】
また、作用物質を後眼部に送達するための担体としてのビタミンE誘導体の使用も提供される。
【0008】
さらに、作用物質をビタミンE誘導体と組み合わせて眼に局所的に投与することを含む、作用物質の後眼部への送達の方法が提供される。
【0009】
ビタミンE誘導体という用語は、本明細書では、α−トコフェロールと類似の生物活性を有するトコール又はトコトリエノール誘導体を指すために使用される。特に、この用語はトコフェロール類及びトコトリエノール類を指す。8つのビタミンE異性体分子が存在する。4つのトコフェロールは4’,8’,12’−トリメチルトリデシルフィトール側鎖を有し、4つのトコトリエノールは、側鎖の3’、7’及び11’位の二重結合の存在によって異なる。この用語はまた、わずかに異なる構造を有するが、類似の機能性を備える、トコフェロール類及びトコトリエノール類の誘導体である分子、又はそれらの分子の変異体である分子を包含する。
【0010】
ビタミンEは、「トコフェロール」及び「トコトリエノール」と称される、トコクロマノールの2つの同族列から成る。特に、トコフェロールは、ビタミンE活性を有することができる、モノメチルトコール、ジメチルトコール又はトリメチルトコールである。この用語は当分野において周知である。また、トコフェロールの誘導体、特に機能性誘導体、すなわち親分子の担体機能を保持する誘導体も、本明細書で意図されるトコフェロールの定義に包含される。トコフェロール誘導体の一例はTPGS(ポリエチレングリコール1000にエステル結合したD−α−トコフェリルスクシナート)である。トコトリエノールは、側鎖に3つの二重結合を有する、すなわちフィチル鎖に3つの付加的な二重結合を有するトコールであり、従って6−(3’,7’,11’,15’−テトラメチル−2’,6’,10’,14’−ヘキサデカテトラエニル)−1,4−ヒドロキノン又は2−メチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエニル)クロマン−6−オールである。天然生成物は、クロマノールの5、7及び8位の1又はそれ以上にメチルを担持し、それ故、フィチル様側鎖における不飽和を除き、トコフェロールと同一である。また、クロマノール誘導体を形成する環化及びトコトリエノールキノン(又はクロメノール)を形成する酸化も同様である。トコトリエノールという用語は、トコール及びトコエノール(ビタミンE様)との関係を指示するために使用され、クロマノールという用語は、ビタミンK及び補酵素Q系のイソプレノイド化合物との関係を指示するために使用される。
【0011】
「細胞死マーカー」という用語は、生細胞を死にかけている又は死滅した細胞から識別することを可能にするマーカーを指す。例えば、細胞死マーカーは、生細胞に特異的に結合するが死細胞若しくは死にかけている細胞には結合しない、又は死細胞若しくは死にかけている細胞に特異的に結合するが生細胞には結合しない化合物又は分子であることができる。細胞死マーカーは、例えばアネキシンファミリーのタンパク質を含む。アネキシンは、陽イオンの存在下で細胞膜に可逆的に結合するタンパク質である。本発明において有用なアネキシンは、天然又は組換えであることができる。前記タンパク質は、全タンパク質でもよく又は機能性フラグメント、すなわち全タンパク質と同じ分子に特異的に結合するアネキシンのフラグメント若しくは領域であることができる。また、そのようなタンパク質の機能性誘導体も含まれる。特に、この用語は、個々のアネキシン内及びまたファミリーの成員間の両方で保存されている約70アミノ酸のドメインである、「アネキシンリピート」を含む分子を包含することが企図されている。様々なアネキシンが使用可能であり、例えば米国特許出願公開第2006/0134001A号に記載されているものが挙げられる。好ましいアネキシンは、当分野において周知のアネキシンVである。他のアネキシンとしては、アネキシン2、6及び11が含まれる。細胞死、特にアポトーシスの他のマーカーは当分野において公知であり、例えばシナプトタグミンのC2Aドメイン(Jung et al., Bioconjing Chem. 2004 Sep-Oct; 15(5):983-7)及びヨウ化プロピジウムが含まれる。
【0012】
細胞死マーカーは、蛍光標識又は他の可視若しくは同定可能な標識で標識され得る。例えば、細胞死マーカーは、赤外又は近赤外標識、特に赤外染料で標識されることができる。細胞死マーカーは標準的な手法を用いて標識されることができる。
【0013】
後眼部という用語は、例えば水晶体、小柱網、ブドウ膜(毛様体を含む)、硝子体及び網膜を含む、眼の後部の構造を指す。特に、本発明は網膜への改善された送達を可能にする。
【0014】
トコフェロールはまた、他の活性物質及び薬剤、例えば神経保護薬(例えばメマンチン)、増殖因子及び増殖因子アンタゴニスト(抗血管新生分子を含む)、抗体(例えばルセンティス及びアバスチン)、アプタマー(例えばマクゲン)、ステロイド類(例えばトリアムシノロン)、分子薬剤の投与においても使用されることができる。
【0015】
本発明の組成物はまた、ホスファチジルセリン(又は類似の分子、例えばホスファチジルエタノールアミン)及びコレステロール又はその誘導体、例えばオキシステロールの少なくとも1つを含有することができる。
【0016】
本発明の組成物は、他の分子、作用物質又は組成物を後眼部に送達するために使用されることができる。従って、組成物は、送達すべき1つ又はそれ以上の作用物質を付加的に含有することができる。そのような作用物質は、例えば治療的又は生物学的活性物質を含むことができる。
【0017】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤される。投与を達成するための方法は当業者に公知である。例えば、投与は、静脈内、腹腔内、筋肉内、硝子体内、腔内、皮下又は局所投与であることができる。
【0018】
皮内又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は、典型的には以下の成分の少なくとも1つを含有する。滅菌希釈剤、例えば水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒。抗菌薬、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン。抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム。キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)。緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩。及び等張化剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは酸又は塩基で調整することができる。そのような製剤は、アンプル、使い捨て注射器又は多回投与バイアルに封入されることができる。
【0019】
静脈内又は硝子体内投与のために使用される溶液又は懸濁液は、担体、例えば生理食塩水、静菌水、CremophorEL””(BASF,Parsippany,NJ)、エタノール又はポリオールを含有することができる。すべての場合に、組成物は無菌でなければならず、また容易に注射可能な流体でなければならない。適切な流動性は、しばしばレシチン又は界面活性剤を使用して得ることができる。組成物はまた、製造及び保存の条件下で安定でなければならない。微生物の予防は、抗菌薬及び抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等で達成されることができる。多くの場合、等張剤(糖)、多価アルコール類(マンニトール及びソルビトール)又は塩化ナトリウムが組成物に含有されることができる。組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを添加することによって達成され得る。
【0020】
本発明による医薬組成物は、好ましくは局所投与のため、すなわち、好ましくは点眼薬の形態又は他の局所形態での眼球の表面への適用のためである。従って、医薬組成物は、他の担体、ビヒクル又は賦形剤、例えば塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、無水リン酸二ナトリウム及び注射用蒸留水を付加的に含有することができる。
【0021】
また、少なくとも1つの作用物質の後眼部への送達のための担体としてのビタミンE誘導体の使用も提供される。ビタミンE誘導体は細胞死マーカーと共に使用されることができ、例えば前記で論じた医薬組成物は担体として使用され得る。担体は、治療用、診断用又は他の作用物質を網膜及び周囲領域に送達するために使用されることができる。そのような作用物質を送達するための方法も提供される。
【0022】
本発明は、ここで、単なる例示として、次のような図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】硝子体内スタウロスポリン(SSP)での処置によるアポトーシスの誘導後、局所的アネキシンVによる処置の30分後に撮影したラット網膜のDARC画像である。画像は、赤外アネキシンVが網膜において検出でき、SSPによって誘導された網膜神経節細胞のアポトーシスを標識することを明らかに示す。
【図2】図2aは、硝子体内スタウロスポリン(SSP)での処置によるアポトーシスの誘導後、局所的アネキシンVによる処置の2時間後に撮影したラット網膜のDARC画像である。画像は、赤外アネキシンVが網膜において検出でき、SSPによって誘導された網膜神経節細胞のアポトーシスを標識することを明らかに示す。図2bは関連する組織学画像である。
【図3】局所投与の1時間後の、担体としての種々のビタミンE誘導体と蛍光標識アネキシン5(Anx−F)の組合せの例を示す。
【図4】眼に適用したα−トコフェロールAnx−Fを使用して、通過の時間系列を示す眼の画像を含み、画像は、局所投与後に指示されている時点で撮影された。
【図5】アネキシンファミリーのすべての成員についての基本型である、アネキシン5の結晶構造(左側に示されている)を示す。このタンパク質の高度のαへリックスコアはカルシウム結合部位を含み、進化を通じてアネキシンにおいて保存されている。
【図6】アネキシン5、2、6及び11の直線状の略図を示す。N末端が左側、C末端が右側である。各々のタンパク質のコアは陰影をつけた灰色の箱で示されており、その各々1つずつが、個々のアネキシン内及びまたファミリーの成員間の両方で保存されている約70アミノ酸のドメインである、周知の「アネキシンリピート」に対応する。
【図7】局所投与の2時間後に同じ眼のα−トコフェロールと蛍光標識アネキシン11を使用して得られたインビボ画像を示す。
【図8】ビタミンE誘導体と細胞死マーカーの組合せを試験したアッセイの結果を示す。
【図9】後眼部へのカーゴの送達を試験したアッセイの結果を示す。
【図10】網膜の前方の面に焦点を合わせた基線時(左側)及び投与の1時間後(右側)の同じ眼におけるα−トコフェロールと蛍光標識アネキシンを示す。
【0024】
実施例
図1及び2は、トコフェロールがアネキシンVを眼に送達するために使用されることができることを明らかにする。
【0025】
トコフェロールと混合した蛍光標識アネキシンVを、アポトーシスを誘導するための硝子体内スタウロスポリン(SSP)による処置の2時間後に眼に局所的に投与した。眼における細胞死を、DARC画像化を使用して測定した。
【実施例1】
【0026】
DARC(アポトーシスを起こしている網膜細胞の検出)画像化のための眼への赤外標識アネキシンVの送達
網膜神経節細胞(RGC)のアポトーシスを誘導するためにスタウロスポリン(SSP)をラット眼に硝子体内投与した。2時間後に、トコフェロールと混合した赤外標識アネキシンVを局所的に投与した。790nmの改変cSLO(共焦点走査型レーザー検眼鏡)(Heidelberg Retina Angiograph 2,Heidelberg Engineering,Dossenheim,Germany)によりDARC(アポトーシスを起こしている網膜細胞の検出)手法を使用して眼を撮像した1、2、3。標準レンズ(15°×15°〜30°×30°)と広視野レンズ(55°−すべての度数値はヒト眼に合わせて検定した)を使用した。種々の焦点設定で反射率と対応する蛍光画像をラット網膜で撮影した。シグナル対ノイズ比を改善し、画像コントラストを強調するために、一連の単回画像(100まで)の平均画像出力を眼運動の補正後に算定した。
【0027】
赤外アネキシンVは網膜において明瞭に認められ、アポトーシス細胞を示した。図2は、2時間後にさらなる画像を撮影することによって作製した。
【実施例2】
【0028】
担体のために使用した種々のビタミンE誘導体
ビタミンEは、最初に特徴づけられた分子である(1)、α−トコフェロールと類似の生物活性を有する、すべてのトコール及びトコトリエノール誘導体についての一般名として使用される。8つのビタミンE異性体分子が存在する。4つのトコフェロールは4’,8’,12’−トリメチルトリデシルフィトール側鎖を有し、4つのトコトリエノールは、側鎖の3’,7’及び11’位の二重結合の存在によって異なる。
【化1】

【0029】
本発明者らは上記のすべてを評価した。図3の画像は、局所投与の1時間後の、担体としての種々のビタミンE誘導体と蛍光標識アネキシン5(Anx−F)の組合せの例を示す。画像中の白色スポット(細胞のアネキシン5陽性標識)は、前記組合せの角膜、硝子体、そして網膜への通過を確認することに留意されたい。
【0030】
図3dのグラフは、アネキシンのレベルに対応する蛍光によって示される各々のトコフェロールの活性を示す。1%又は10%トコフェロールを含むPC:PS:Chol:Toc膜。
【0031】
本発明者らはまた、眼に適用したα−トコフェロールAnx−Fを使用して、局所投与後に指示されている時点で撮影した画像により、図4に示すように、通過の時間系列を確立した。
【0032】
本発明者らは、2時間半後の画像が明瞭であった理由は、この時点で硝子体内の蛍光が清澄になった又は定着したためであると考える。しかし重要な点として、網膜における活性は局所投与後30分の時点で早くも明らかである。
【実施例3】
【0033】
担体のために使用した種々のアネキシン
アネキシン5とトコフェロール/トコトリエノールの組合せは網膜へのアネキシンの経強膜送達を媒介するので、この作用がアネキシン5に特異的であるのか又は一般的なアネキシン特性であるのかという疑問が生じる。本発明者らは、他のアネキシン、例えばアネキシン2、6及び11を使用してこれを試験し、すべてが担体組成物中で使用し得ることを認めた(下記参照)。アネキシン5の構造を三次元で図5に示し(Huber, R., Berendes, R., Burger, A., Schneider, M., Karshikov, A., Luecke, H. Romisch, J., Paques, E. (1992) Crystal and molecular structure of human annexin V after refinement. Implications for structure, membrane binding and ion channel formation of the annexin family of proteins. J. Mol. Biol. 223:683-704より)、下方にアネキシン2、6及び11の構造と共に二次元で示している(図6)。
【0034】
これらのアネキシンは、それぞれ、わずかに長いN末端、四つ組リピートの重複、及びはるかに長いN末端によってアネキシン5と異なる。試験したすべてのアネキシンが担体組成物中で使用し得るので、本発明者らは、この一般的特性が保存された「アネキシンリピート」に帰せられると考える。これは、4つのタンパク質すべてに共通する唯一の分子決定基である。
【0035】
図7のインビボ画像は、局所投与の2時間後に同じ眼でα−トコフェロールと蛍光標識アネキシン11を使用して得られた。白色のスポットは、アネキシン11がインビボでアポトーシスを検出するために担体組成物中で使用し得ることを明らかに示す。
【実施例4】
【0036】
ビタミンEとアネキシンの組合せは最適化担体を構成する
本発明者らは、眼への点眼薬としての適用後に角膜を越えて輸送されるのは、ビタミンE分子/誘導体とアネキシンの組合せだけであることを示した。例えば、アネキシン5又はアネキシン11は、局所的に送達された場合独力では眼に入らない。また、さらなる例として、オバアルブミンとα−トコフェロール又はデキストランとα−トコフェロールも眼に入り込まない。同様にδ−トコフェロール及びγ−トコフェロールも、図8に見られるように、アネキシンとの複合体として投与されない限り眼に入らない。
【0037】
本発明者らの所見はまた、ビタミンE誘導体とアネキシンの組合せがホスファチジルセリン及びコレステロールによって増強及び/又は調節され得ることを示唆する。これら4つの分子の各々の濃度を変化させることは経強膜及び経核膜送達の効果に大きな影響を及ぼす。
【実施例5】
【0038】
後眼部へのカーゴの送達
図9に示すように、他の作用物質又はカーゴを後眼部に送達するために本発明の組成物を使用することができる。両方の例は、投与後のバックグラウンド蛍光のレベルの上昇を例示し、眼の後部へのカーゴの通過を確認する。
【実施例6】
【0039】
眼の他の部分への送達
本発明者らの試験は、これまでのところ、アネキシンがビタミンE誘導体と組み合わせて局所的に投与された場合、蛍光標識アネキシン(又は他の蛍光分子)が網膜において検出できることを明らかにした。
【0040】
担体Anx−Fが眼の外側から網膜に到達するためには、角膜を通過して、前眼房及び後眼房の房水に入り(そこで虹彩、毛様体、小柱網(TM)及び水晶体と接触する)、次に硝子体に戻って、そこから網膜へと通過しなければならない。
【0041】
図10のインビボ画像は、網膜の前方の面に焦点を合わせた、基線時(左側)及び投与の1時間後(右側)の同じ眼におけるα−トコフェロールと蛍光標識アネキシンを示す。硝子体内の蛍光によって明るい蛍光シグナルが得られる。
【0042】
適切な診断用又は治療用カーゴと組み合わせた担体は、それ故、前記で示した組織のいずれを標的するためにも使用でき、従って疾患、例えば緑内障、白内障、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症(DR)、網膜剥離(RD)及びAMD(加齢性黄斑変性)に適用できる。本発明者らは、本発明者らの担体の組合せが、治療、例えば現在抗VEGF療法が硝子体内注射として投与されている、AMD及びDRのための治療に適用されると考える。
【0043】
参考文献
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンE誘導体と細胞死マーカーを含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記細胞死マーカーがアネキシンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アネキシンがアネキシンVである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ビタミンE誘導体がトコフェロール又はその誘導体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記トコフェロールが、ポリエチレングリコール1000にエステル結合したD−α−トコフェリルスクシナートである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの作用物質の後眼部への送達を高めるための担体としてのビタミンE誘導体の使用。
【請求項7】
前記作用物質が細胞死マーカーを含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ビタミンE誘導体がトコフェロール、特にポリエチレングリコール1000にエステル結合したD−α−トコフェリルスクシナートである、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
前記ビタミンE誘導体が局所送達用に製剤される、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記担体が、網膜への送達を高めるためである、請求項6から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
作用物質をビタミンE誘導体と組み合わせて眼に送達することを含む、少なくとも1つの作用物質の後眼部への送達の方法。
【請求項12】
前記作用物質とビタミンE誘導体が局所的に送達される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ビタミンE誘導体がトコフェロール、特にポリエチレングリコール1000にエステル結合したD−α−トコフェリルスクシナートである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、作用物質を網膜に送達するためである、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記作用物質が細胞死マーカーである、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第2の作用物質を送達することを含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−507820(P2011−507820A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538906(P2010−538906)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004233
【国際公開番号】WO2009/077769
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505367464)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (20)
【Fターム(参考)】