説明

担持触媒、担持触媒の製造方法、燃料電池、および燃料電池の製造方法

【課題】本発明は、電子(e)の移動促進、触媒利用効率の向上を図ることができる担持触媒、担持触媒の製造方法、燃料電池、および燃料電池の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒と、炭素体と、を含み、前記触媒は、前記炭素体に担持されており、前記炭素体は、線状を有していること、を特徴とする担持触媒が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担持触媒、担持触媒の製造方法、燃料電池、および燃料電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の進歩に伴い、電子機器の小型化、高性能化、ポータブル化が進んでおり、これに使用される電池の小型化、高エネルギー密度化の要求が高まっている。そのような中、小型軽量でありながら高容量の燃料電池が注目されている。特に、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、水素ガスを使用する燃料電池に比べて、水素ガスの取り扱いの困難さや有機燃料を改質して水素を作り出す装置などが必要ないため、小型化に適している。
【0003】
この直接メタノール形燃料電池においては、燃料極(アノード極)、高分子固体電解質膜、空気極(カソード極)がこの順に相互に隣接して設けられ膜電極接合体を形成している。そして、燃料極側に燃料(メタノール)を供給し、高分子固体電解質膜近傍の燃料極側の触媒層において燃料(メタノール)を反応させて、プロトン(H)と電子(e)とを取り出している。一方、高分子固体電解質膜近傍の空気極側の触媒層においては、高分子固体電解質膜を透過してきたプロトン(H)と、空気極側に伝導された電子(e)、空気(酸素)とが反応して水が生成される。
【0004】
ここで、電池特性を向上させるためには、燃料極側の触媒による反応で生成されたプロトン(H)と電子(e)の取り出し、空気極側の触媒へのプロトン(H)と電子(e)の供給、すなわち、触媒層におけるプロトン(H)と電子(e)の移動促進が重要な因子となる。
そのため、プロトン(H)の伝導性を高めた触媒担持体が提案されている(特許文献1、2を参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示をされた技術においては、触媒層の界面における触媒担持体と外部の導電体との接触や、触媒担持体同士の接触に関する考慮がされておらず、電子(e)の移動促進が図れないおそれがあった。
【0006】
また、触媒担持体として粒子状の炭素材料を用いる場合、触媒層の製造工程において粒子状の炭素材料が凝集する場合がある。粒子状の炭素材料が凝集を起こすと、触媒担持体の表面積が小さくなり、また、通気性が悪化するので触媒利用効率、ひいては発電効率が低下するという問題がある。
そのため、触媒担持粒子と、繊維状物質と、電解質材料(バインダ)とを造粒することにより触媒粉末を生成する技術が提案されている(特許文献3を参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献3に開示がされた技術では、触媒が担持される部分の表面積を大きくすることができず、また、均一な隙間(空隙)の分布を得ることが困難となるおそれがあった。そのため、触媒利用効率の向上に改善の余地を残していた。また、製造工程の複雑化、高コスト化を招くおそれもあった。
【特許文献1】特表2005−527957号公報
【特許文献2】特開2005−150002号公報
【特許文献3】特開2007−250366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子(e)の移動促進、触媒利用効率の向上を図ることができる担持触媒、担持触媒の製造方法、燃料電池、および燃料電池の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、触媒と、炭素体と、を含み、前記触媒は、前記炭素体に担持されており、前記炭素体は、線状を有していること、を特徴とする担持触媒が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、触媒と、線状を有し、前記触媒を担持する第1の炭素体と、線状を有する第2の炭素体と、を含み、前記第1の炭素体は、その一端が前記第2の炭素体に電気的に接続されていること、を特徴とする担持触媒が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、触媒と、線状を有し、前記触媒を担持する第1の炭素体と、粒子状を有する第2の炭素体とを含み、前記第1の炭素体は、その一端が第2の炭素体と電気的に接続されていることを特徴とする担持触媒が提供される。
また、本発明の他の一態様によれば、触媒と、線状を有し、前記触媒を担持する第1の炭素体と、第2の炭素体とを含む層構造をなし、前記第1の炭素体は、その一端が前記第2の炭素体に電気的に接続され、前記第2の炭素体の一部が前記層構造の表面に達していること、を特徴とする担持触媒が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、導電体の表面に第1の触媒金属粒子を付着させる工程と、前記第1の触媒金属粒子の表面に線状を有する第1の炭素体を形成させる工程と、前記第1の炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、を特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、第1の炭素体の表面に第1の触媒金属粒子を付着させる工程と、前記第1の触媒金属粒子の表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程と、前記第1の炭素体と前記第2の炭素体を固体高分子電解質溶液に浸漬させる工程とを有すること、を特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、導電体の表面に第1の触媒金属層を形成させる工程と、前記第1の触媒金属層を加熱処理して粒子化させる工程と、前記粒子化した第1の触媒金属層の表面に線状を有する第1の炭素体を形成させる工程と、前記第1の炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、を特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の他の一態様によれば、導電体の表面にシリコン層を形成させる工程と、前記シリコン層の表面に触媒金属層を形成させる工程と、前記のシリコン層と前記の触媒金属層とを加熱処理して粒子化させる工程と、前記粒子化したものの表面に線状を有する炭素体を形成させる工程と、前記炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、を特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の他の一態様によれば、第1の炭素体、または、前記第1の炭素体の集合体の表面に触媒金属層を形成させる工程と、前記触媒金属層を加熱処理して粒子化させる工程と、前記粒子化した触媒金属層の表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程と、前記第1の炭素体と前記第2の炭素体を固体高分子電解質溶液に浸漬させる工程とを有すること、を特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の他の一態様によれば、 第1の炭素体、または、前記第1の炭素体の集合体の表面にシリコン層を形成させる工程と、前記シリコン層の表面に触媒金属層を形成させる工程と、前記シリコン層と前記触媒金属層とを加熱処理して粒子化させる工程と、前記粒子化したものの表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程と、前記第1の炭素体と前記第2の炭素体を固体高分子電解質溶液に浸漬させる工程とを有すること、を特徴とする担持触媒の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の他の一態様によれば、燃料が供給される燃料極と、酸化剤が供給される空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟まれるようにして設けられた高分子固体電解質膜と、を備え、前記燃料極と、前記空気極と、にそれぞれ設けられる担持触媒の少なくともいずれかは、上記の担持触媒であること、を特徴とする燃料電池が提供される。
【0019】
また、本発明の他の一態様によれば、燃料が供給される燃料極と、酸化剤が供給される空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟まれるようにして設けられた高分子固体電解質膜と、を有する燃料電池の製造方法であって、前記燃料極と、前記空気極と、にそれぞれ設けられる担持触媒の少なくともいずれかを、上記の担持触媒の製造方法により製造すること、を特徴とする燃料電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電子(e)の移動促進、触媒利用効率の向上を図ることができる担持触媒、担持触媒の製造方法、燃料電池、および燃料電池の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
尚、説明の便宜上、炭素体2の表面がプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている場合を例にとり説明をする。
図1に示すように、触媒層1には、触媒4と、極細線状を呈する炭素体2とが含まれており、触媒4は炭素体2の表面に担持されている。そして、極細線状を呈する炭素体2の一端が触媒層1の表面に達し、触媒層1の界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面に接合されている。
【0022】
尚、導電体(例えば上述の導電体5)を触媒層(例えば上述の触媒層1)の一部として構成することもできる。その場合は、導電体5を介して外部の部材(例えば、後述するガス拡散層など)と接続するようにすればよい。この場合、触媒層の一部である導電体5は、導電性材料からなるものとして、例えば、カーボンペーパなどとすることができる。また、このことは、以下に例示をする他の実施の形態の場合も同様である。
【0023】
極細線状を呈する炭素体2としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ 、グラファイトナノファイバ 、チューブ状グラファイト、先端が細く尖っているカーボンナノコーン、コーン状グラファイトなどを例示することができる。尚、図1に示す炭素体2は、カーボンナノチューブの場合を表している。また、極細線状を呈する炭素体2は、前述のものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0024】
また、炭素体2の表面はプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている。そのような表面改質としては、例えば、炭素体2の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾するようにすればよい。この場合、例えば、炭素体2の表面をスルホン化させることを例示することができる。また、例えば、炭素体2の表面に直接または有機物構造を介して、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基の群れから選ばれた少なくとも1種類以上の置換基を設けるようにすればよい。
以下の化学式1は、炭素体2の表面に直接スルホ基を設けるようにした場合であり、化学式2は、炭素体2の表面に有機物構造を介してスルホ基を設けるようにした場合である。

【化1】


【化2】


また、触媒層1が燃料極側の触媒層である場合には、触媒4は有機燃料を酸化できるものであればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との固溶体を含むものとすることができる。
【0025】
また、触媒層1が空気極側の触媒層である場合には、触媒4は還元反応を生じさせるものであればよく、例えば、白金族元素を含むものとすることができる。そのようなものとしては、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム等の単体金属、白金族元素を含有する固溶体などを含んだものとすることができる。そして、白金族元素を含有する固溶体としては、例えば、白金−ニッケル固溶体などを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0026】
ここで、発電効率を向上させるためには、触媒層の界面における炭素体と導電体との接触確率を高め、電子(e)の移動促進を図るようにすればよい。
本発明者は検討の結果、極細線状を呈する炭素体2の一端が触媒層の表面に達し、導電体5の表面に接合するようにすれば、この部分における確実な電子(e)の移動を図ることができるので発電効率を向上させることができるとの知見を得た。
【0027】
また、極細線状を呈する炭素体2は軸方向長さを長くすることができるので、触媒層1の端面間を連接するようにして設けることができる。そのため、触媒層1内と端面との間における電子(e)の移動をより確実に行うことができる。
【0028】
また、一部の炭素体2の端面と触媒層1の端面とが接触していなくても、その外面(表面)のいずれかの部分において他の炭素体2と互いに接触するので、他の炭素体2を介して触媒層1の端面と間接的に接触させることができる。すなわち、炭素体2は軸方向長さが長いので相互に絡まるようにして設けられ、ネットワーク的に電子(e)の移動を行うことが可能となる。また、触媒層1の中で孤立する炭素体2の数を非常に少なくすることができる。
【0029】
そして、このような電子(e)の確実な移動を行い得る炭素体2の表面に触媒4を担持させるようにしているので、触媒4の近傍部分における電子(e)の授受をより確実に行うことができる。そのため、電子(e)の授受ができずに無駄となる触媒4の量を低減させることができ、触媒4の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
【0030】
また、相互に絡まることはあっても、粒子状の炭素材料のような凝集を抑制することができる。そのため、隙間を確保することができるので酸素や有機燃料の供給が阻害されることを抑制することができる。その結果、触媒の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
【0031】
また、本発明者の得た知見によれば、炭素体2の中心直径を1マイクロメートル以上、10マイクロメートル以下とすれば、より好ましい発電効率を得ることができる。
【0032】
また、各炭素体間をバインダで連結するようにすることもできる。各炭素体間をバインダで連結するようにすれば、触媒層1の機械的強度を向上させることができる。そして、バインダとしてプロトン伝導性材料を主成分として含むものを用いるものとすれば、プロトン伝導性をさらに向上させることができる。プロトン伝導性材料を主成分として含むものとしては、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(例えば、パーフルオロスルホン酸重合体など)、スルホン酸基を有するハイドロカーボン系樹脂などの高分子固体電解質材料を例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、触媒4に対する電子(e)の伝導経路をより確実に形成させることができる。
また、炭素体同士が凝集することを抑制することができるので、酸素や有機燃料の供給を確実に行うことができる。また、触媒4を担持する部分の表面積を大きくすることができる。
また、炭素体2の表面改質を行うことで、プロトン(H)の伝導経路を効果的に形成させることができる。
そのため、触媒4の利用効率を向上させることができ、高出力で安定した発電をさせることが可能となる。
【0034】
また、炭素体2の表面改質を行うことでプロトン(H)の伝導経路を形成させるようにしているので、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0035】
尚、説明の便宜上、炭素体2の表面が改質されている場合を例示したが、表面改質がされていない炭素体とすることもできる。その場合であっても、炭素体同士の凝集を抑制することができるので隙間を確保することができ、酸素や有機燃料の供給を確実に行うことができる。また、触媒4を担持する部分の表面積を大きくすることができる。また、この場合においても炭素体2の一端が触媒層1の表面に達し、触媒層1の界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面と接合されているので、電子(e)の移動促進を図ることができる。そのため、触媒の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
ただし、プロトン(H)を伝導させることができるように表面改質を行えば、前述したようにプロトン(H)の伝導経路を効果的に形成することができる。また、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0036】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
尚、図2(a)は触媒層の模式断面図であり、図2(b)は、図2(a)におけるA部の模式部分拡大図である。また、図1において説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
また、説明の便宜上、炭素体の表面がプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている場合を例にとり説明をする。
【0037】
図2(a)、(b)に示すように、触媒層1aには、触媒4と、極細線状を呈する炭素体2と、炭素体2よりも小さい(太さが細く長さも短い)極細線状を呈する炭素体3と、が含まれている。そして、炭素体3は炭素体2の表面に接合され(ここでは、少なくとも、炭素体2と炭素体3の両者間は電気的に接続されている。)、炭素体3の表面には触媒4が担持されている。また、炭素体2の一端が、触媒層1aの表面に達し、界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面に接合されている。
【0038】
極細線状を呈する炭素体3は、炭素体2と同様に、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ 、グラファイトナノファイバ 、チューブ状グラファイト、先端が細く尖っているカーボンナノコーン、コーン状グラファイトなどとすることができる。尚、図2に示す炭素体3は、カーボンナノチューブの場合を表している。また、極細線状を呈する炭素体3は、前述のものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0039】
ここで、発電効率を向上させるためには、触媒層に含まれる触媒の量を増加させるようにすればよい。そして、触媒の量を増加させるためには触媒が担持される炭素体(担持体)の表面積を増加させればよく、そのためには炭素体の大きさをなるべく小さくすればよい。
【0040】
しかしながら、炭素体の大きさを小さくして小さな炭素体のみで触媒層を構成させれば、他の炭素体と接触することができずに触媒層の中で孤立する炭素体の数が増加するようになる。この場合、孤立した炭素体は電子(e)の授受をすることができないので、孤立した炭素体に担持させた触媒はその機能を果たすことができず無駄になってしまう。
【0041】
本発明者は検討の結果、大きさの大きい(太さが太く長さも長い)炭素体2と、その表面に接合される小さな(太さが細く長さも短い)炭素体3とを備える(ここでは、少なくとも、炭素体2と炭素体3の両者間は電気的に接続されている。)ようにすれば、触媒層1aの中で孤立する小さな炭素体3の数を低減させることができるとの知見を得た。そして、触媒層1aの中で孤立する小さな炭素体3の数を低減させることができれば、それに担持されている触媒4の近傍部分においても電子(e)の授受を行うことができるようになるので触媒4の利用効率、ひいては発電量や発電効率を向上させることができるとの知見を得た。
【0042】
本実施の形態においては、触媒層1aには、大きさの大きい炭素体2と、炭素体2の表面に接合される小さな炭素体3とが含まれている(ここでは、少なくとも、炭素体2と炭素体3の両者間は電気的に接続されている。)。前述したように、炭素体2は軸方向長さが長いので相互に絡まるようにして設けられ、触媒層1aの中で孤立する炭素体2の数を非常に少なくすることができる。そのため、炭素体2の表面に接合される小さな炭素体3についても、触媒層1aの中で孤立するものの数を非常に少なくすることができる。また、炭素体2の一端が、触媒層1aの表面に達し、界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面に接合されている。
【0043】
そのため、炭素体2と炭素体3とを介して触媒4の近傍部分における電子(e)の授受を確実に行うことができる。また、無駄になる触媒4の量を低減させることができるので、触媒4の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
また、小さな炭素体3を設けることで、触媒4が担持される面積(表面積)を広くすることができ、その分、触媒4の量を増加させることができる。
【0044】
また、相互に絡まることはあっても、粒子状の炭素材料のような凝集を抑制することができる。この場合、大きさの大きい炭素体2の表面に小さな炭素体3が接合されているため、凝集をさらに抑制することができる。そのため、隙間をさらに確実に確保することができるので酸素や有機燃料の供給をさらに円滑に行うことができる。その結果、触媒の利用効率、ひいては発電効率をさらに向上させることができる。
【0045】
また、本発明者の得た知見によれば、炭素体2の中心直径を1マイクロメートル以上、10マイクロメートル以下、炭素体3の中心直径を100ナノメートル以下とすれば、より好ましい発電効率を得ることができる。
【0046】
また、前述したように、炭素体2の表面はプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている。そのような表面改質としては、前述したように例えば、炭素体2の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾するようにすればよい。
【0047】
そして、炭素体3の表面をも改質することでプロトン(H)を伝導させることができるようにすれば、触媒4の近傍のプロトン伝導をより確実に行わせることができる。
炭素体3の表面改質としては、例えば、炭素体3の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾するようにすればよい。この場合、例えば、炭素体3の表面をスルホン化させることを例示することができる。また、例えば、炭素体3の表面に直接または有機物構造を介して、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基の群から選ばれた少なくとも1種類以上の置換基を設けるようにすればよい。
例えば、前述の化学式1は表面に直接スルホ基を設けるようにした場合であり、化学式2は表面に有機物構造を介してスルホ基を設けるようにした場合である。
【0048】
また、各炭素体間をバインダで連結するようにすることもできる。各炭素体間をバインダで連結するようにすれば、触媒層1aの機械的強度を向上させることができる。そして、バインダとしてプロトン伝導性材料を主成分として含むものを用いるものとすれば、プロトン伝導性をさらに向上させることができる。プロトン伝導性材料を主成分として含むものとしては、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(例えば、パーフルオロスルホン酸重合体など)、スルホン酸基を有するハイドロカーボン系樹脂などの高分子固体電解質材料を例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、触媒4に対する電子(e)の伝導経路をより確実に形成させることができる。
また、炭素体同士の凝集をさらに抑制することができるので、酸素や有機燃料の供給をさらに確実に行うことができる。
また、炭素体2の表面改質を行うことで、プロトン(H)の伝導経路を効果的に形成させることができる。また、大きさの小さい炭素体3を設けることで、触媒4が担持される面積(表面積)を広くすることができ、その分、触媒4の量を増加させることができる。また、炭素体3の表面改質を行うことで、触媒4の近傍のプロトン伝導をより確実に行わせることができる。そのため、触媒4の利用効率を向上させることができ、高出力で安定した発電をさせることが可能となる。
【0049】
また、炭素体の表面改質を行うことでプロトン(H)の伝導経路を形成させるようにしているので、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0050】
尚、説明の便宜上、炭素体の表面が改質されている場合を例示したが、表面改質がされていない炭素体とすることもできる。本実施の形態においては、大きさの小さい炭素体3を設けるようにしているので、炭素体同士の凝集をさらに抑制することができる。また、触媒4を担持する部分の表面積をさらに大きくすることができる。
また、この場合においても炭素体2の一端が触媒層1aの表面に達し、触媒層1aの界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面と接合されているので、電子(e)の移動促進を図ることができる。そのため、触媒の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
ただし、プロトン(H)を伝導させることができるように表面改質を行えば、前述したようにプロトン(H)の伝導経路を効果的に形成することができる。また、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0051】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
尚、図3(a)は触媒層の模式断面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるB部の模式部分拡大図である。また、図1、図2において説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
また、説明の便宜上、炭素体の表面がプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている場合を例にとり説明をする。
【0052】
図3(a)、(b)に示すように、触媒層1bには、触媒4と、粒子状を呈する炭素体6と、炭素体6よりも大きさが小さく極細線状を呈する炭素体3と、が含まれている。そして、炭素体3は炭素体6の表面に接合され(ここでは、少なくとも、炭素体3と炭素体6の両者間は電気的に接続されている。)、炭素体3の表面には触媒4が担持されている。また、触媒層1bの界面近傍に設けられる炭素体6のうちの少なくとも一部のものの外面が触媒層1bの界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面と接触するようにされている。
【0053】
炭素体6は、粒子状の炭素系材料からなるものとすることができ、例えば、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック(工業的に品質制御して製造された炭素の微粒子)を例示することができる。尚、カーボンブラックは、前述のものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0054】
前述したように、触媒を担持する炭素体(担持体)の表面積を広くするために、炭素体の大きさを小さくして小さな炭素体のみで触媒層を構成させるようにすれば、他の炭素体と接触することができずに触媒層の中で孤立する炭素体の数が増加するようになる。この場合、孤立した炭素体は電子(e)の授受をすることができないので、孤立した炭素体に担持させた触媒はその機能を果たすことができず無駄になってしまう。
【0055】
本実施の形態においては、触媒層1bには大粒径の炭素体6が含まれている。この場合、炭素体6は大きさが大きいため相互に近接して設けられることになり、少なくとも一部の炭素体6同士がその外面(表面)のいずれかの部分において互いに接触することになる。尚、通常は、大部分の炭素体6同士がその外面(表面)のいずれかの部分において互いに接触することになる。そのため、触媒層1bの中で孤立するものを非常に少なくすることができる。
【0056】
また、触媒4を担持した炭素体3を炭素体6の表面に接合させている(ここでは、少なくとも、炭素体3と炭素体6の両者間は電気的に接続されている)ので、炭素体6と炭素体3とを介して触媒4の近傍部分における電子(e)の授受を行うことができる。
【0057】
そのため、無駄になる触媒4の量を低減させることができるので、触媒4の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。また、大きさの小さい炭素体3を設けることで、触媒4が担持される面積(表面積)を広くすることができ、その分、触媒4の量を増加させることができる。
【0058】
また、本実施の形態においては、粒子状の炭素体6の表面に極細線状を呈する炭素体3を設けるようにしているので、炭素体6が過度に凝集することを抑制することができる。そのため、適度な隙間を確保することができるので、酸素や有機燃料の供給を円滑に行うことができる。その結果、触媒の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
【0059】
また、本発明者の得た知見によれば、炭素体6の中心粒径を1マイクロメートル以上、10マイクロメートル以下、炭素体3の中心直径を100ナノメートル以下とすれば、より好ましい発電効率を得ることができる。
また、炭素体6の表面はプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている。そのような表面改質としては、例えば、炭素体6の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾するようにすればよい。この場合、例えば、炭素体6の表面をスルホン化させることを例示することができる。また、例えば、炭素体6の表面に直接または有機物構造を介して、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基の群から選ばれた少なくとも1種類以上の置換基を設けるようにすればよい。
例えば、前述の化学式1は表面に直接スルホ基を設けるようにした場合であり、化学式2は表面に有機物構造を介してスルホ基を設けるようにした場合である。
【0060】
そして、炭素体3の表面をも改質することでプロトン(H)を伝導させることができるようにすれば、触媒4の近傍のプロトン伝導をより確実に行わせることができる。
炭素体3の表面改質としては、例えば、炭素体3の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾するようにすればよい。この場合、例えば、炭素体3の表面をスルホン化させることを例示することができる。また、例えば、炭素体3の表面に直接または有機物構造を介して、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基の群から選ばれた少なくとも1種類以上の置換基を設けるようにすればよい。
例えば、前述の化学式1は表面に直接スルホ基を設けるようにした場合であり、化学式2は表面に有機物構造を介してスルホ基を設けるようにした場合である。
【0061】
また、各炭素体間をバインダで連結するようにすることもできる。各炭素体間をバインダで連結するようにすれば、触媒層1bの機械的強度を向上させることができる。そして、バインダとしてプロトン伝導性材料を主成分として含むものを用いるものとすれば、プロトン伝導性をさらに向上させることができる。プロトン伝導性材料を主成分として含むものとしては、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(例えば、パーフルオロスルホン酸重合体など)、スルホン酸基を有するハイドロカーボン系樹脂などの高分子固体電解質材料を例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態によれば、触媒4に対する電子(e)の伝導経路を確実に形成させることができる。
また、炭素体同士の過度な凝集を抑制することができるので、酸素や有機燃料の供給を確実に行うことができる。
また、炭素体6の表面改質を行うことで、プロトン(H)の伝導経路を効果的に形成させることができる。また、大きさの小さい炭素体3を設けることで、触媒4が担持される面積(表面積)を広くすることができ、その分、触媒4の量を増加させることができる。また、炭素体3の表面改質を行うことで、触媒4の近傍のプロトン伝導をより確実に行わせることができる。そのため、触媒4の利用効率を向上させることができ、高出力で安定した発電をさせることが可能となる。
【0063】
また、炭素体の表面改質を行うことでプロトン(H)の伝導経路を形成させるようにしているので、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0064】
尚、説明の便宜上、炭素体の表面が改質されている場合を例示したが、表面改質がされていない炭素体とすることもできる。本実施の形態においては、粒子状の炭素体6の表面に極細線状を呈する炭素体3を設けるようにしているので、炭素体6が過度に凝集することを抑制することができる。また、触媒4を担持する部分の表面積をさらに大きくすることができる。
また、この場合においても炭素体6のうちの少なくとも一部のものの外面が触媒層1bの界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面と接触しているので、電子(e)の移動促進を図ることができる。そのため、触媒の利用効率、ひいては発電効率を向上させることができる。
ただし、プロトン(H)を伝導させることができるように表面改質を行えば、前述したようにプロトン(H)の伝導経路を効果的に形成することができる。また、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0065】
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
尚、図4(a)は触媒層の模式断面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるC部の模式部分拡大図である。また、図1、図2において説明をしたものと同様の部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
また、説明の便宜上、炭素体の表面がプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている場合を例にとり説明をする。
【0066】
図4(a)、(b)に示すように、触媒層1cには、触媒4と、極細線状を呈する炭素体7と、炭素体7よりも大きさが小さく極細線状を呈する炭素体3と、が含まれている。そして、炭素体3の一端は炭素体7の表面と接合されており(ここでは、少なくとも、炭素体3と炭素体7の両者間は電気的に接続されている。)、炭素体3の表面には触媒4が担持されている。また、触媒層1cの界面近傍に設けられる炭素体7のうちの少なくとも一部のものの外面が触媒層1cの界面に設けられる導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面と接触するようにされている。また、炭素体7の表面はプロトン(H)を伝導させることができるように改質されている。また、炭素体3の表面をプロトン(H)が伝導することができるように改質することもできるし、各炭素体間をバインダで連結するようにすることもできる。
【0067】
極細線状を呈する炭素体7としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ 、グラファイトナノファイバ 、チューブ状グラファイト、先端が細く尖っているカーボンナノコーン、コーン状グラファイトなどを例示することができる。尚、図4に示す炭素体7は、カーボンナノチューブの場合を表している。また、極細線状を呈する炭素体7は、前述のものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0068】
図4に示す触媒層1cは、図3において説明をした触媒層1bの粒子状を呈する炭素体6を、極細線状を呈する炭素体7としたものである。この場合、炭素体7は大きさが大きいため相互に近接して設けられることになり、少なくとも一部の炭素体7同士がその外面(表面)のいずれかの部分において互いに絡み合うようにして接触することになる。尚、通常は、大部分の炭素体7同士がその外面(表面)のいずれかの部分において互いに接触することになる。そのため、図3において説明をした炭素体6の場合と同様に、触媒層1cの中で孤立するものを非常に少なくすることができる。
【0069】
尚、その他の作用効果については、図3において説明をした触媒層1bの場合と同様のため、その説明は省略する。
また、炭素体の表面改質がされていない場合も図3において説明をした場合と同様のため、その説明は省略する。
【0070】
次に、本発明の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をする。
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
尚、説明の便宜上、炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾する場合として、炭素体の表面をスルホン化する場合を例にとり説明をする。また、図1に例示をしたものの場合を例示する。
【0071】
まず、導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面に触媒金属粒子(例えば、コバルト、ニッケル、鉄、または、少なくともこれらの何れか一つを用いた合金など)を粒子状に形成させる(ステップS1)。
触媒金属粒子は、例えば、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて付着させることができる。
尚、後述するように、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて触媒金属層8(図8を参照)を形成し、加熱処理することにより金属粒子化させてもよい。
【0072】
そして、例えば、プラズマCVD法( Chemical Vapor Deposition)を用いて、触媒金属の表面に極細線状の炭素体2(例えば、カーボンナノチューブなど)を成長させる(ステップS2)。
この場合、プラズマCVD法を用い、例えば、ソースガスをテトラエトキシシランとし、水素還元雰囲気中でプラズマを発生させて触媒金属の表面に極細線状の炭素体2を成長させるようにすることができる。
【0073】
このように、導電体5の表面に付着させた触媒金属粒子の表面上に炭素体2を成長させるようにしているので、触媒金属粒子を介して炭素体2の一端を触媒層の表面に達するようにし、導電体5の表面に接合させることができる。
【0074】
次に、炭素体2の表面をスルホン化する(ステップS3)。
炭素体2の表面は、例えば、以下の方法によりスルホン化することができる。
第1に、発煙硫酸を用いて炭素体2の表面を直接スルホン化する方法としては、まず、所定の中心粒径を有するカーボンブラックを窒素雰囲気下で120℃の油浴に浸漬、攪拌させる。そして、30%発煙硫酸を滴下し、6時間程度反応を続けた後、室温まで放冷する。この反応液を精製水中に投入して沈殿物を濾過する。そして、PH5〜6程度になるまで精製水で洗浄し、60℃の雰囲気下で真空乾燥させることで表面がスルホン化された炭素体2を得ることができる。尚、油浴の温度を140℃、30%発煙硫酸との反応時間を48時間程度とすることもできる。
【0075】
第2に、亜硫酸ナトリウムを用いて炭素体2の表面を直接スルホン化する方法としては、まず、所定の中心粒径を有するカーボンブラック、亜硫酸ナトリウム、ジメチルアセトアミドを窒素雰囲気下で120℃の油浴に浸漬、攪拌し、72時間程度反応を続ける。そして、この反応液をジエチルエーテル中に投入し、沈殿させる。得られた沈殿物をエタノールで洗浄し、60℃の雰囲気下で真空乾燥させることで表面がスルホン化された炭素体2を得ることができる。
【0076】
第3に、スルホン化モノマー(スルホン化4,4’−ジフルオロベンゾフェノン)を用いて炭素体2の表面を有機物を介してスルホン化する方法としては、まず、所定の中心粒径を有するカーボンブラック、スルホン化4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、炭酸カリウム、溶媒(ジメチルアセトアミド、トルエン)を窒素雰囲気下、室温で1時間程度攪拌する。そして、150℃の油浴に浸漬、攪拌し、3時間程度反応を続ける。その後、室温に戻し、18−クラウン−6を添加する。そして、再び160℃の油浴に浸漬し、72時間程度反応を続ける。この反応物をアセトンに再沈殿させ、精製水で洗浄の後、80℃の雰囲気下で真空乾燥させることで表面が有機物を介してスルホン化された炭素体2を得ることができる。
【0077】
ここで、スルホン化4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの生成方法を例示すると、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを窒素雰囲気下で160℃の油浴に浸漬してモノマーを融解させた後、油浴の温度を120℃に下げ攪拌する。そして、30%発煙硫酸を30分程度かけて滴下し、6時間程度反応を続ける。その後、室温まで放冷し、この反応液を飽和食塩水中に投入し、塩析、濾過することで沈殿物を得る。そして、この沈殿物を水に溶解し、PHが約8となるよう調整した後、再び飽和食塩水に加えて塩析させる。このようにして得られた粗スルホン化物を2−プロパノール/水=70/30(重量%)の溶液中で再結晶させる。この再結晶を3回繰り返した後、60℃の雰囲気下で真空乾燥させることでスルホン化4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得ることができる。
【0078】
尚、スルホン化の方法は前述したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
また、表面改質が不要の場合には、ステップS3は不要となる。
【0079】
次に、導電体5の炭素体2が接合している側の表面を触媒4の微粒子が分散された溶液中に浸漬させることで、炭素体2の表面に触媒4を担持させる(ステップ4)。
そして、これを常温乾燥させることで所望の触媒層1を得ることができる。
【0080】
尚、固体高分子電解質溶液(例えば、ナフィオン(Nafion(登録商標):デュポン社)の溶液など)に、触媒4が担持された炭素体2を浸漬させることで、炭素体間を前述したバインダで連結することができる。この場合、溶液中の固体高分子電解質(例えば、ナフィオン(Nafion(登録商標):デュポン社)が前述したバインダとなる。
【0081】
また、図2に例示をしたものの場合、すなわち、炭素体2の表面に極細線状を呈する炭素体3がさらに接合している(ここでは、少なくとも、炭素体2と炭素体3の両者間は電気的に接続されている。)ものの場合には、前述の炭素体2の成長(スッテプS2)の後に、炭素体2の表面に触媒金属粒子を粒子状に付着させ、その触媒金属の表面に極細線状の炭素体3を成長させればよい。また、この場合、炭素体3を成長させる前にスルホン化を行えば炭素体2の表面のみをスルホン化することができるし、炭素体3を成長させた後にスルホン化を行えば炭素体2と炭素体3の表面をスルホン化することができる。
【0082】
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
図6に例示をするものは、図3、図4に例示をした触媒層1b、1cを製造する場合である。すなわち、粒子状を呈する炭素体6の表面に極細線状を呈する炭素体3が接合しているもの(ここでは、少なくとも、炭素体3と炭素体6の両者間は電気的に接続されている。)を含む触媒層1bを製造する場合、極細線状を呈する炭素体7の表面に極細線状を呈する炭素体3が接合しているもの(ここでは、少なくとも、炭素体3と炭素体7の両者間は電気的に接続されている)を含む触媒層1cを製造する場合である。
尚、これらの場合も、炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾する場合として、炭素体の表面をスルホン化する場合を例にとり説明をする。
【0083】
まず、炭素体6または炭素体7の表面に触媒金属粒子(例えば、コバルト、ニッケル、鉄、または、少なくともこれらの何れか一つを含む合金など)を粒子状に付着させる(ステップS10)。
触媒金属粒子は、例えば、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて付着させることができる。尚、炭素体6自体は市販のカーボンブラックなどを用いることができ、炭素体7自体は市販の極細線状の炭素体(例えば、カーボンナノチューブなど)を用いることができる。
【0084】
そして、例えば、プラズマCVD法( Chemical Vapor Deposition)を用いて、触媒金属の表面に極細線状の炭素体3(例えば、カーボンナノチューブなど)を成長させる(ステップS11)。
この場合、プラズマCVD法を用い、例えば、ソースガスをテトラエトキシシランとし、水素還元雰囲気中でプラズマを発生させて触媒金属の表面に極細線状の炭素体3を成長させるようにすることができる。
【0085】
このように、炭素体6または炭素体7の表面に付着させた触媒金属粒子の表面に炭素体3を成長させるようにしているので、触媒金属粒子を介して炭素体3の一端を炭素体6または炭素体7の表面に接合させる(ここでは、少なくとも、炭素体3と炭素体6、及び炭素体3と炭素体7において、各々の両者間は電気的に接続されている。)ことができる。
【0086】
次に、炭素体3と炭素体6、または、炭素体3と炭素体7の表面をスルホン化する(ステップS12)。
尚、スルホン化の方法は、前述したものと同様のため、その説明は省略する。
また、表面改質が不要の場合には、ステップS12は不要となる。
【0087】
次に、炭素体3が接合した炭素体6または炭素体7を触媒4の微粒子が分散した溶液中に浸漬させることで、炭素体3の表面に触媒4を担持させる(ステップ13)。
尚、この場合は、炭素体6または炭素体7の表面にも触媒4が担持されることになる。
次に、固体高分子電解質溶液(例えば、ナフィオン(Nafion(登録商標):デュポン社)の溶液など)に、触媒4が担持された炭素体3・炭素体6、または、炭素体3・炭素体7を加え、これをホモジナイザで混合してスラリを作製する。このスラリを常温乾燥させたものが触媒層1bまたは触媒層1cとなる(ステップS14)。
【0088】
この場合、スラリ中の固体高分子電解質(例えば、ナフィオン(Nafion(登録商標):デュポン社)が前述したバインダとなる。また、このスラリを導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)に塗布し、これを常温乾燥させるようにすることもできる。
【0089】
図7は、本発明の第7の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
図8は、触媒金属層が成膜された導電体を例示するための層構造の模式断面図である。 図9は、極細線状の炭素体を成長させることができるプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
【0090】
まず、プラズマ処理装置100について説明をする。
図9に示すように、プラズマ処理装置100は、その内部を減圧環境に保持可能な容器101と、容器101内に原料ガスGを供給するガス供給手段102と、容器101内を排気Eするための排気手段103と、容器101に向けてマイクロ波Mを発振するマイクロ波発生手段104と、スロット105aが設けられマイクロ波Mを透過させる誘電体窓105と、被処理物Wを載置、保持する載置台106と、容器101と排気手段103との間に設けられ容器101内の圧力を制御する制御バルブ107と、を備えている。また、載置台106には、被処理物Wの温度を調整するための図示しない温度調整手段12が内蔵されている。図示しない温度調整手段は、例えば、被処理物Wを加熱するためのヒータとすることができる。また、制御バルブ107の容器101側、排気手段103側には圧力モニタ109a、109bがそれぞれ設けられている。制御バルブ107は、この圧力モニタ109a、109bからの出力に基づいて制御される。
【0091】
また、プラズマ処理装置100は、プラズマCVD( Chemical Vapor Deposition)処理を行うことができ、処理条件としての、圧力、ガスの切換、ガス流量、RFパワー、ヒータ温度、処理時間等を制御可能な図示しない制御手段を備えている。
尚、プラズマ処理装置100が備える各要素およびその作用については既知の技術を適用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0092】
次に、図7に戻って触媒層の製造方法について例示をする。
本実施の形態は、図5において例示をしたものと同様に、触媒層1、1aの製造方法を例示するものである。そのため、図5と同様の要素の説明は適宜省略する。
【0093】
まず、導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面に触媒金属(例えば、コバルト、ニッケル、鉄、または、これらの元素のうち少なくとも1つを含む合金など)からなる触媒金属層8を形成する(ステップS30)。
触媒金属層8は、例えば、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて形成させることができる。尚、図8は、触媒金属層8が形成された様子を模式的に表したものである。
【0094】
次に、形成された触媒金属層8を加熱処理することにより粒子化する(ステップS31)。
尚、前述したようにスパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて、導電体5の表面に触媒金属粒子を直接付着させるようにしてもよい。
ここで、触媒金属層8の加熱処理を例示するものとすれば、例えば、H(水素)や H(水素)を含む混合ガスを容器101内に導入し、導電体5を加熱するようなものを例示することができる。このような加熱処理の処理条件としては、例えば、導電体5の温度を300℃以上、600℃以下とし、容器101内の圧力を800Pa程度、H(水素)の流量を80sccm程度、処理時間を10分程度とすることができる。
尚、このような処理を行えば、粒子化とともに触媒金属の自然酸化膜を還元することができる。
次に、このような加熱処理(粒子化する処理)の後、連続して、CH(メタン)を導入し、CH(メタン)とH(水素)との混合ガスを容器101内で形成し、マイクロ波Mを導入することで発生させたプラズマPによりこの混合ガスを分解して、粒子化した触媒金属層8の表面に極細線状の炭素体2(例えば、カーボンナノチューブなど)を成長させる(ステップS32)。
炭素体2は、例えば、プラズマCVD法( Chemical Vapor Deposition)を用いて成長させることができる。プラズマCVD法においては、前述したプラズマ処理装置100を用いることができる。
【0095】
以下、図9に例示をしたプラズマ処理装置100を用いて炭素体2を成長させる場合を例示する。尚、前述したように、炭素体2の成長は加熱処理(粒子化する処理)に引き続いて同一容器101内で行うこともできるが、ここでは予め金属粒子が形成された導電体5に炭素体2を成長させる場合を例示する。
表面に金属粒子(例えば、触媒金属層8を粒子化させたもの)が形成された導電体5をプラズマ処理装置100内に搬入し、載置台106上に載置、保持させる。この際、金属粒子が形成された表面側をプラズマPの発生領域に向けて載置する。尚、表面に金属粒子が形成された導電体5が前述した被処理物Wとなる。
【0096】
そして、CH(メタン)とH(水素)との混合ガスを容器101内に導入し、マイクロ波Mを導入することで発生させたプラズマPにより混合ガスを分解して、金属粒子の表面に極細線状の炭素体2を成長させる。
この際の処理条件を例示するものとすれば、金属粒子が形成された導電体5の温度を300℃以上、600℃以下、容器101内の圧力を800Pa程度、CHのガス流量を10sccm程度、Hのガス流量を80sccm程度、RFパワーを400W程度、処理時間を30分程度とすることができる。尚、プラズマPの種類はマイクロ波励起型である。
【0097】
例示をした処理条件の下、プラズマCVD処理を行えば、粒子化された触媒金属層8(例えば、粒子化されたニッケルの層)の表面に極細線状の炭素体2(例えば、カーボンナノチューブなど)が成長する。この炭素体2は、その内部に触媒金属からなる核を有する。
【0098】
図1において例示をした触媒層1の場合には、この後、図5において例示をしたスルホン化(ステップS3)、触媒の担持(ステップS4)を行えばよい(ステップS33)。
また、図2において例示をした触媒層1aの場合には、この後、さらに極細線状の炭素体3を成長させればよい。
尚、前述したように、表面改質であるスルホン化(ステップS3)は行わなくてもよい。ただし、プロトン(H)を伝導させることができるようにスルホン化(表面改質)を行えば、前述したようにプロトン(H)の伝導経路を効果的に形成することができる。また、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0099】
次に、炭素体3を成長させる場合について例示をする。
図10は、表面に触媒金属粒子が形成された炭素体2を例示するための模式図である。また、図10(a)は、炭素体2の表面に形成された触媒金属粒子を例示するための模式図であり、図10(b)は、触媒金属粒子からさらなる炭素体が成長する様子を例示するための模式図である。尚、図10に例示をしたものは「中実」の炭素体であるが、「チューブ状」の炭素体の場合も同様である。
【0100】
前述のようにして成長させた炭素体2からさらに炭素体3を成長させるためには、まず、炭素体2の表面に触媒金属粒子8aを形成させる必要がある。触媒金属粒子8aは、前述したものと同様に、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて触媒金属層を形成しこれを加熱処理して粒子化させることで形成させることができる。またここでは、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて炭素体2の表面に触媒金属粒子8aを直接付着させることで形成させることもできる。
尚、加熱処理(粒子化する処理)の方法や、処理条件、及びそれらより得られる効果等は前述したものと同様とすることができるので、その説明は省略する。
【0101】
そして、この触媒金属粒子8aから炭素体3をさらに成長させ、例えば、図5において例示をしたステップS3、ステップS4を行えば図2において例示をした触媒層1aを得ることができる。尚、炭素体3を成長させる場合も同様に、プラズマCVD法を用いて行うことができるのでその詳細は省略する。
【0102】
また、前述したプラズマ処理の条件を調整することで、炭素体2や炭素体3の形態を変化させることができる。
【0103】
ここで、本発明者の得た知見によれば、極細線状の炭素体を成長させる際には、触媒金属粒子が形成された面が直接プラズマに晒されないようにすることが好ましい。そのようにすれば、炭素体を迅速かつ確実に成長させることができる。この原因は必ずしも明らかではないが、プラズマPから放出されるイオンなどに晒されると、炭素体の成長が阻害されることが考えられる。
触媒金属粒子が形成された面が直接プラズマに晒されないようにするためには、例えば、触媒金属粒子が形成された面に対向するように遮蔽体を配設すればよい。
【0104】
図11は、遮蔽体を備えたプラズマ処理装置を例示するための模式図である。尚、図9において例示をしたものと同様の要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図11に示すように、プラズマ処理装置100aには、載置台106の載置面に対向するようにして遮蔽体108が設けられている。また、遮蔽体108の周縁部には遮蔽体108を支えるための支持部108aが設けられている。尚、支持部108aに遮蔽体108を昇降させための図示しない昇降手段を設けるようにすることもできる。
【0105】
また、遮蔽体108は、載置台106に載置された被処理物Wの主面を覆うような位置に配設されている。この場合、遮蔽体108の主面と被処理物Wの主面(触媒金属粒子が形成された面)とが当接するようにしてもよいし、両主面間に隙間が設けられるようにしてもよい。
尚、主面同士を当接させる場合には、支持部108aは必ずしも必要ではなく、例えば、板状の遮蔽体を被処理物Wの主面(触媒金属粒子が形成された面)に載置するようにすることもできる。
【0106】
本発明者の得た知見によれば、遮蔽体108を絶縁物からなるものとすれば炭素体をより迅速かつ確実に成長させることができる。この場合、絶縁物としては、例えば、石英、ガラス、アルミナなどのセラミックスなどとすることができる。尚、生産性などを考慮すれば、絶縁物の中でも耐プラズマ性の高いものを選択することが好ましい。
【0107】
本実施の形態によれば、炭素体を迅速かつ確実に成長させることができる。特に、遮蔽体108などを用いてプラズマPに直接晒されないようにすれば、より迅速かつ確実な成長をさせることができる。
【0108】
尚、前述した実施形態そのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変更することができる。
例えば、ソースガスとして、CH(メタン)とH(水素)との混合ガスを例示したが、炭素体を成長させることができるものに適宜変更することができる。そのようなものとしては、例えば、CH(メタン)、C(エチレン)、C(アセチレン)などの炭素系ガス、テトラエトキシシラン、前記炭素系ガスと水素ガスとの混合ガスなどを例示することができる。また、メタノール、エタノール、アセトン、トルエンなどを気化したガス、や前記気化したガスと水素ガスとの混合ガスなどとすることもできる。
また、前述した処理条件はプラズマ処理装置や使用するガスなどに応じて適宜変更することができる。
【0109】
図12は、本発明の第8の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
図13は、シリコン層と触媒金属層とが成膜された導電体を例示するための層構造の模式断面図である。
本実施の形態は、図7において例示をしたものと同様に、触媒層1、1aの製造方法を例示するものである。そのため、図7と同様の要素の説明は適宜省略する。
【0110】
ここで、触媒金属粒子の表面に極細線状の炭素体を成長させて炭素体の表面を改質(スルホン化)する際に、成長させた炭素体が導電体5から脱離することがある。
本発明者は検討の結果、触媒金属層の下地にシリコン層を設け、これに加熱処理を施すことで粒子化を行えば改質時に炭素体が脱離することを抑制することができるとの知見を得た。
【0111】
そこで、本実施の形態においては、まず、図13に示すように、導電体5(例えば、後述するガス拡散層であるカーボンペーパなど)の表面にシリコンからなるシリコン層9を形成し、シリコン層9の表面に触媒金属(例えば、コバルト、ニッケル、鉄、または、これらの元素のうち少なくとも1つを含む合金など)からなる触媒金属層8を形成するようにしている(ステップS40)。
シリコン層9は、例えば、スパッタリング法などを用いて形成させることができる。また、触媒金属層8は、例えば、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて形成させることができる。
【0112】
次に、前述したものと同様に加熱処理をすることにより粒子化する(ステップS41)。
この際、触媒金属層8がシリサイド化、またはシリコンとの混合層を形成する。
また、必ずしも明らかではないが、下地(炭素体2、6、7または導電体5)とシリコン層9との界面でも下地材料とシリコンの混合層が形成される可能性がある。
このような処理を行えば密着力を増加させることができるので、改質時に炭素体が脱離することを抑制することができる。
尚、加熱処理(粒子化する処理)の方法や、処理条件、及びそれらより得られる効果等は前述したものと同様とすることができるので、その説明は省略する。
ここで、密着力の増加がどの部分で生じているのかは必ずしも明らかではないが、触媒金属層(または触媒金属粒子)とシリコン層との界面(シリサイド化またはシリコンとの混合層が形成された部分)、下地(炭素体2、6、7または導電体5)とシリコン層との界面、のいずれか、または、それらの双方で生じるものと考えられる。
【0113】
次に、その表面に極細線状の炭素体2(例えば、カーボンナノチューブなど)を成長させる(ステップS42)。
炭素体2は、例えば、プラズマCVD法( Chemical Vapor Deposition)を用いて成長させることができる。プラズマCVD法においては、前述したプラズマ処理装置100やプラズマ処理装置100aを用いることができる。また、処理条件についても図7について例示をしたものと同様とすることができる。
【0114】
ここで、図1において例示をした触媒層1の場合には、この後、図5において例示をしたスルホン化(ステップS3)、触媒の担持(ステップS4)を行えばよい(ステップS43)。
また、図2において例示をした触媒層1aの場合には、この後、前述したものと同様に炭素体2の表面に触媒金属粒子を形成し、この触媒金属粒子からさらに極細線状の炭素体3を成長させればよい。尚、炭素体3を成長させる場合についても図10について例示をしたものと同様とすることができるので、その詳細は省略する。尚、炭素体3を成長させる場合においても、触媒金属層の下地にシリコン層を設け、これに加熱処理を施すことで粒子化を行えば密着力を増加させることができる。
【0115】
また、前述したように、ここでは、表面改質であるスルホン化(ステップS3)は行わなくてもよい。ただし、プロトン(H)を伝導させることができるようにスルホン化(表面改質)を行えば、前述したようにプロトン(H)の伝導経路を効果的に形成することができる。また、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0116】
また、前述したプラズマ処理の条件を調整することで、炭素体2や炭素体3の形態を変化させることができる。
また、本実施の形態によれば、表面改質時(スルホン化時)における炭素体2や炭素体3の脱離を抑制することができる。
【0117】
図14は、本発明の第9の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
図15は、炭素体の成長を例示するための模式図である。
本実施の形態は、図6において例示をしたものと同様に、触媒層1b、1cの製造方法を例示するものである。そのため、図6と同様の要素の説明は適宜省略する。また、説明の便宜上、粒子状の炭素体6の表面に極細線状の炭素体が設けられたもの(図3に例示をした触媒層1b)を製造する場合を例示するが、粒子状の炭素体6を線状の炭素体7に置き換えたもの(図4に例示をした触媒層1c)の製造についても適用させることができる。
【0118】
まず、粒子状の炭素体6、または、炭素体6の集合体の表面に触媒金属(例えば、コバルト、ニッケル、鉄、または、これらの元素のうち少なくとも1つを含む合金など)からなる触媒金属層18を形成させる(ステップS50)。
触媒金属層18は、例えば、スパッタリング法、無電解メッキ法などを用いて形成させることができる。
尚、図15(a)は炭素体6の集合体を表し、図15(b)は表面に触媒金属層18が形成された炭素体6の集合体を表している。
【0119】
次に、図7において例示をしたものと同様にして、触媒金属層18を加熱処理することで粒子化(触媒金属粒子18a)させる(ステップS51)。
尚、加熱処理(粒子化する処理)の方法や、処理条件、及びそれらより得られる効果等は前述したものと同様とすることができるので、その説明は省略する。
【0120】
次に、この触媒金属粒子18aの表面に極細線状の炭素体3(例えば、カーボンナノチューブなど)を成長させる(ステップS52)。
炭素体3は、例えば、プラズマCVD法( Chemical Vapor Deposition)を用いて成長させることができる。プラズマCVD法においては、前述したプラズマ処理装置100、プラズマ処理装置100aを用いることができる。
尚、図15(c)は炭素体3を成長させた様子を表している。
【0121】
ソースガスとしては、図7について例示をしたものと同様にCH(メタン)とH(水素)との混合ガスとすることができる。また、処理条件についても図7について例示をしたものと同様とすることもできる。
【0122】
このようなプラズマCVD処理を行えば、触媒金属粒子18aの表面に極細線状の炭素体3(例えば、カーボンナノチューブなど)を成長させることができる。この炭素体3は、前述したものと同様に、その内部に触媒金属からなる核を有する。
【0123】
この後、図6において例示をしたスルホン化(ステップS12)、触媒の担持(ステップS13)、触媒層の形成(ステップS14)を行う(ステップS53)。
また、前述したように、表面改質であるスルホン化(ステップS12)は行わなくてもよい。ただし、プロトン(H)を伝導させることができるようにスルホン化(表面改質)を行えば、前述したようにプロトン(H)の伝導経路を効果的に形成することができる。また、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
また、前述したように、触媒金属層の下地にシリコン層を設けるようにすれば改質時に炭素体が脱離することを抑制することができる。
また、炭素体3を成長させる際に直接プラズマに晒されないようにすれば、炭素体3を迅速かつ確実に成長させることができる。
【0124】
次に、本実施の形態に係る触媒層を備える燃料電池について例示をする。
図16は、本発明の第10の実施の形態に係る燃料電池について例示をするための模式図である。
尚、説明の便宜上、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)の場合を例にとって説明をする。
【0125】
図16に示すように、燃料電池20は、本実施の形態に係る触媒層10bとガス拡散層27とからなる燃料極と、本実施の形態に係る触媒層10aとガス拡散層21とからなる空気極と、燃料極の触媒層10bと空気極の触媒層10aとの間に挟持された高分子固体電解質膜25と、を有する膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly )35を起電部として備えている。
【0126】
ここで、触媒層10a、触媒層10bには、例えば、前述した触媒層1、触媒層1a、触媒層1b、触媒層1cを用いることができる。また、燃料極の触媒層、空気極の触媒層のうち、少なくとも一方を本実施の形態に係る触媒層とすることもできる。ただし、双方を本実施の形態に係る触媒層とすれば、電池特性をより向上させることができる。
また、触媒層10bの触媒4としては、有機燃料を酸化できるものであればよく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウムおよび金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との固溶体からなる微粒子などを含むものとすることができる。
また、触媒層10aの触媒4としては、還元反応を生じさせるものであればよく、例えば、白金族元素を含むものとすることができる。そのようなものとしては、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム等の単体金属、白金族元素を含有する固溶体などを含んだものとすることができる。白金族元素を含有する固溶体としては、例えば、白金−ニッケル固溶体などを例示することができる。
ただし、これらに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0127】
高分子固体電解質膜25としては、プロトン伝導性材料を主成分として含むものを例示することができ、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(例えば、パーフルオロスルホン酸重合体)、スルホン酸基を有するハイドロカーボン系樹脂などの高分子固体電解質材料を例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
この場合、高分子固体電解質膜25は、多孔質材料からなる膜の貫通孔や無機材料からなる膜に設けられた開孔などに高分子固体電解質材料を充填させたものとすることもできるし、高分子固体電解質材料からなる膜とすることもできる。
【0128】
燃料極の触媒層10bの表面に設けられたガス拡散層27は、触媒層10bに燃料を均一に供給する役割を果たす。
また、空気極の触媒層10aの表面に設けられたガス拡散層21は、触媒層10aに酸素を均一に供給する役割を果たすとともに、触媒層10aにおいて生成された水の透過の程度を調整する役割(排水性、保湿性)をも果たす。
【0129】
そして、燃料極のガス拡散層27には、導電層28が積層されるようにして設けられ、空気極のガス拡散層21には、導電層22が積層されるようにして設けられている。導電層28および導電層22は、例えば、金などの導電金属材料からなるメッシュなどの多孔質層や複数の開孔を有する金箔などで構成することができる。そして、導電層22と導電層28とが、図示しない負荷を介して電気的に接続されている。
【0130】
燃料極側の導電層28は、気液分離膜29を介して、燃料供給部として機能する液体燃料タンク30と接続されている。気液分離膜29は、液体燃料の気化成分のみを透過し液体燃料を透過させない気相燃料透過膜として機能する。
【0131】
この気液分離膜29は、液体燃料タンク30内の液体燃料の気化成分を導出するために設けられた図示しない開口を塞ぐように配設されている。気液分離膜29は、燃料の気化成分と、液体燃料とを分離し、さらに液体燃料を気化させるもので、例えば、シリコーンゴムなどの材料で構成されたものを例示することができる。
【0132】
また、この気液分離膜29のさらに液体燃料タンク30側に、気液分離膜29と同様の気液分離機能を有し、燃料の気化成分の透過量を調整する図示しない透過量調整膜を設けてもよい。この透過量調整膜による気化成分の透過量の調整は、透過量調整膜の開口率を変更することで行われる。この透過量調整膜は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの材料で構成させることができる。この透過量調整膜を設けることで、燃料の気液分離を可能とするとともに、燃料極の触媒層10b側に供給される燃料の気化成分の供給量を調整することができる。
【0133】
ここで、液体燃料タンク30に貯留される液体燃料は、濃度が50モル%を超えるメタノール水溶液、または純メタノールとすることができる。この場合、純メタノールの純度は、95重量%以上、100重量%以下とすることができる。また、液体燃料の気化成分とは、例えば、液体燃料として純メタノールを使用した場合には、気化したメタノールを意味し、液体燃料としてメタノール水溶液を使用した場合には、メタノールの気化成分と水の気化成分からなる混合気を意味する。
【0134】
一方、空気極の導電層22には、カバー31が積層されるようにして設けられている。カバー31には、酸化剤である空気(酸素)を取り入れるための図示しない空気導入口が複数個設けられている。カバー31は、膜電極接合体35を加圧して、その密着性を高める役割をも果たしているため、例えば、SUS304のような金属により形成させることができる。
【0135】
次に、本実施の形態に係る燃料電池20の作用について例示をする。
液体燃料タンク30内のメタノール水溶液(液体燃料)が気化し、それにより発生した気化したメタノールと水蒸気との混合気が、気液分離膜29を透過する。そして、混合気は、さらに導電層28を通過し、ガス拡散層27で拡散されて触媒層10bに供給される。触媒層10bに供給された混合気は、次の式(1)に示す酸化反応を生じる。

CHOH+HO → CO+6H+6e …(1)

尚、液体燃料として、純メタノールを使用した場合には、液体燃料タンク30からの水蒸気の供給がないため、後述する空気極の触媒層10aで生成された水や高分子固体電解質膜25中の水などとメタノールとで前述の式(1)の酸化反応を生じることになる。
【0136】
前述の式(1)の酸化反応で生成されたプロトン(H)は、高分子固体電解質膜25を伝導し、空気極の触媒層10aに到達する。また、前述の式(1)の酸化反応で生成された電子(e)は、導電層28から図示しない負荷に供給され、図示しない負荷において仕事をした後、導電層22、ガス拡散層21を介して触媒層10aに到達する。
【0137】
一方、カバー31の図示しない空気導入口から取り入れられた空気(酸素)は、導電層22を透過し、ガス拡散層21で拡散されて、触媒層10aに供給される。触媒層10aに供給された空気中の酸素と、触媒層10aに到達したプロトン(H)と電子(e)とが、次の式(2)に示す反応を生じて、水が生成される。

(3/2)O+6H+6e → 3HO …(2)

この反応によって空気極の触媒層10a中で生成された水の一部は、ガス拡散層21に透過して、ガス拡散層21の内部で気液平衡の状態となる。そして、気体となった水はカバー31の図示しない空気導入口から蒸散される。また、液体としての水は、空気極の触媒層10a中に貯蔵される。
【0138】
式(2)の反応が進行すると、生成される水の量が増し、空気極の触媒層10a中の水分貯蔵量が増加する。そして、式(2)の反応の進行にともなって、空気極の触媒層10a中の水分貯蔵量が、燃料極の触媒層10b中の水分貯蔵量よりも多い状態となる。
その結果、浸透圧現象によって、空気極の触媒層10aで生成された水が、高分子固体電解質膜25を通過して燃料極の触媒層10bに移動する。そのため、燃料極の触媒層10bへの水分の供給を液体燃料タンク30から気化した水蒸気のみに頼る場合に比べて、水分の供給が促され、前述した式(1)の反応を促進させることができる。これによって、出力密度を高くすることができるとともに、その高い出力密度を長期間に亘り維持することが可能となる。
【0139】
すなわち、液体燃料として、メタノールの濃度が50モル%を超えるメタノール水溶液、または純メタノールを使用する場合でも、空気極の触媒層10aから燃料極の触媒層10bに移動してきた水を前述した式(1)の反応に使用することができることになる。また、前述した式(1)の反応の反応抵抗をさらに低下させることができ、長期出力特性と負荷電流特性をより向上させることができる。さらに、液体燃料タンク30の小型化を図ることも可能となる。また、高分子固体電解質膜25を湿潤させることができるので、高いプロトン(H)の導電性を得ることもできる。
【0140】
本実施の形態によれば、触媒4に対する電子(e)の伝導経路をより確実に形成させることができる。また、炭素体2の表面改質を行うことで、プロトン(H)の伝導経路を効果的に形成させることができる。また、大きさの小さい炭素体3を設けるようにすれば、触媒4が担持される面積(表面積)を広くすることができ、その分、触媒4の量を増加させることができる。また、炭素体3の表面改質を行うことで、触媒4の近傍のプロトン伝導をより確実に行わせることができる。そのため、触媒4の利用効率を向上させることができ、前述の式(1)、(2)の反応を効率よく、また、安定して行うことができる。
【0141】
また、炭素体の表面改質を行うことでプロトン(H)の伝導経路を形成させるようにしているので、温度などの外部環境の変化にともなう収縮膨張の影響を受けにくく、経時変化の少ない安定した発電をさせることが可能となる。
【0142】
また、この燃料電池20の液体燃料タンク30に純メタノール(95重量%以上)、5ミリリットルを注入し、温度25℃、相対湿度50%の環境で、電流値と電圧値とから出力の最大値を測定した。また、燃料電池の表面に取り付けた熱電対によって、表面温度の最大値を測定した。尚、触媒層は、図1に例示をした触媒層1としている。
【0143】
この測定の結果、出力の最大値は、24.2mW/cmであり、燃料電池の表面温度の最大値は、33.4℃であった。
また、所定の平均粒径を有する粒子状の炭素体のみで構成された触媒層を備えた燃料電池についても同様の測定を行った。その場合の出力の最大値は20.1mW/cmであり、本実施の形態に係る触媒層を備えるものとすれば、最大出力を20%程度増加できることが確認された。
【0144】
また、500時間の耐久試験をも行った。その結果、本実施の形態に係る触媒層を備えた燃料電池では出力変動は10%以内であったが、所定の平均粒径を有する炭素体のみで構成された触媒層を備えた燃料電池では出力変動は23%であり、耐久性においても優位性が確認できた。
【0145】
尚、図2〜図4に例示をした触媒層1a〜1cについても同様の測定を行ったところ、同様の測定結果を確認することができた。
【0146】
次に、本実施の形態に係る燃料電池20の製造方法について例示をする。
図17は、本発明の第11の実施の形態に係る燃料電池の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【0147】
まず、相分離法、発泡法、ゾルゲル法などの化学的、物理的方法を用いて多孔質材料膜を作製する。尚、多孔質材料膜は、市販の多孔質材料を適宜用いるようにしてもよい。例えば、厚さ25μm、開孔率45%のポリイミド多孔膜(宇部興産製ユーピレックスPT)などを用いることができる。
そして、この多孔質材料膜に高分子固体電解質を充填させて、高分子固体電解質膜25を作製する(ステップS20)。
高分子固体電解質を充填させる方法としては、多孔質材料膜を高分子固体電解質溶液中に浸漬させ、これを引き上げて乾燥させ、溶媒を除去する方法を例示することができる。高分子固体電解質溶液としてはナフィオン(登録商標、デュポン社製)溶液を例示することができる。尚、高分子固体電解質膜25を高分子電解質材料からなる膜としてもよい。その場合は、多孔質材料膜の作製や高分子固体電解質の充填は不要となる。
【0148】
次に、前述した本実施の形態に係る触媒層の製造方法に基づいて、空気極側のガス拡散層21の表面に触媒層10aを形成させることで空気極を作製する(ステップS21)。
【0149】
一方、前述した本実施の形態に係る触媒層の製造方法に基づいて、燃料極側のガス拡散層27の表面に触媒層10bを形成させることで燃料極を作製する(ステップS22)。
【0150】
この場合、燃料極の触媒層、空気極の触媒層のうち、少なくとも一方を本実施の形態に係る触媒層とすることもできる。ただし、双方を本実施の形態に係る触媒層とすれば、電池特性をより向上させることができる。
次に、高分子固体電解質膜25と、空気極(触媒層10a、ガス拡散層21)と、燃料極(触媒層10b、ガス拡散層27)とで膜電極接合体35を形成させ、これを挟み込むようにして、気化したメタノールまたは空気を取り入れるための複数の開孔を有する金箔などからなる導電層28、導電層22を設ける(ステップS23)。
【0151】
次に、導電層28に、気液分離膜29を介して、液体燃料タンク30を取り付ける(ステップS24)。
気液分離膜29には、例えば、シリコーンシートを用いることができる。
【0152】
次に、導電層22に、カバー31を取り付ける(ステップS25)。
カバー31は、例えば、空気取り入れのための図示しない空気導入口が形成されたステンレス板(SUS304)とすることができる。
最後に、これを適宜ケースに収納するなどして燃料電池20を形成させる(ステップS26)。
【0153】
以上、本発明の実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、前述した触媒層1、触媒層1a、触媒層1b、触媒層1c、燃料電池20、プラズマ処理装置100、プラズマ処理装置100aが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、燃料についてもメタノール水溶液を例示したが、これに限定されるものではない。他の燃料としては、メタノールの他にも、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、ジメチルエーテルなどのエーテル類、シクロヘキサンなどのシクロパラフィン類、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基などの親水基を有するシクロパラフィン類などを例示することができる。尚、このような燃料は、通常5〜90重量%程度の水溶液として用いられる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る担持触媒について例示をするための層構造の模式図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【図8】触媒金属層が成膜された導電体を例示するための層構造の模式断面図である。
【図9】極細線状の炭素体を成長させることができるプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
【図10】触媒金属からなる核を有する炭素体を例示するための模式図である。
【図11】遮蔽体を備えたプラズマ処理装置を例示するための模式図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【図13】シリコン層と触媒金属層とが成膜された導電体を例示するための層構造の模式断面図である。
【図14】本発明の第9の実施の形態に係る担持触媒の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【図15】炭素体の成長を例示するための模式図である。
【図16】本発明の第10の実施の形態に係る燃料電池について例示をするための模式図である。
【図17】本発明の第11の実施の形態に係る燃料電池の製造方法について例示をするためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0155】
1 触媒層、1a 触媒層、1b 触媒層、1c 触媒層、2 炭素体、3 炭素体、4 触媒、5 導電体、6 炭素体、7 炭素体、8 触媒金属層、8a 核、9 シリコン層、10a 触媒層、10b 触媒層、18 触媒金属層、20 燃料電池、21 ガス拡散層、22 導電層、25 高分子固体電解質膜、27 ガス拡散層、28 導電層、29 気液分離膜、30 液体燃料タンク、31 カバー、35 膜電極接合体、100 プラズマ処理装置、100a プラズマ処理装置、108 遮蔽体、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒と、
炭素体と、
を含み、
前記触媒は、前記炭素体に担持されており、
前記炭素体は、線状を有していること、を特徴とする担持触媒。
【請求項2】
触媒と、
線状を有し、前記触媒を担持する第1の炭素体と、
線状を有する第2の炭素体と、
を含み、
前記第1の炭素体は、その一端が前記第2の炭素体に電気的に接続されていること、を特徴とする担持触媒。
【請求項3】
触媒と、
線状を有し、前記触媒を担持する第1の炭素体と、
粒子状を有する第2の炭素体とを含み、
前記第1の炭素体は、その一端が第2の炭素体と電気的に接続されていることを特徴とする担持触媒。
【請求項4】
触媒と、
線状を有し、前記触媒を担持する第1の炭素体と、
第2の炭素体とを含む層構造をなし、
前記第1の炭素体は、その一端が前記第2の炭素体に電気的に接続され、
前記第2の炭素体の一部が前記層構造の表面に達していること、を特徴とする担持触媒。
【請求項5】
前記炭素体の表面がプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾されていること、を特徴とする請求項1記載の担持触媒。
【請求項6】
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体の表面において、少なくとも前記第2炭素体の表面がプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾されていること、を特徴とする請求項2または3記載の担持触媒。
【請求項7】
前記第2の炭素体の表面がプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾されていること、を特徴とする請求項4記載の担持触媒。
【請求項8】
前記置換基による修飾で、スルホン化されること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の担持触媒。
【請求項9】
前記置換基は、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基の群より選ばれた少なくとも1種類以上であること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の担持触媒。
【請求項10】
導電体の表面に第1の触媒金属粒子を付着させる工程と、
前記第1の触媒金属粒子の表面に線状を有する第1の炭素体を形成させる工程と、
前記第1の炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、
を特徴とする担持触媒の製造方法。
【請求項11】
前記第1の炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項9記載の担持触媒の製造方法。
【請求項12】
前記第1の炭素体の表面に第2の触媒金属粒子を付着させる工程と、
前記第2の触媒金属粒子の表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、
前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、
を特徴とする請求項10または11に記載の担持触媒の製造方法。
【請求項13】
前記第2の炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項12記載の担持触媒の製造方法。
【請求項14】
第1の炭素体の表面に第1の触媒金属粒子を付着させる工程と、
前記第1の触媒金属粒子の表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、
前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程と、
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体を固体高分子電解質溶液に浸漬させる工程とを有すること、
を特徴とする担持触媒の製造方法。
【請求項15】
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項14記載の担持触媒の製造方法。
【請求項16】
導電体の表面に第1の触媒金属層を形成させる工程と、
前記第1の触媒金属層を加熱処理して粒子化させる工程と、
前記粒子化した第1の触媒金属層の表面に線状を有する第1の炭素体を形成させる工程と、
前記第1の炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、
を特徴とする担持触媒の製造方法。
【請求項17】
前記第1の炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項16記載の担持触媒の製造方法。
【請求項18】
導電体の表面にシリコン層を形成させる工程と、
前記シリコン層の表面に触媒金属層を形成させる工程と、
前記のシリコン層と前記の触媒金属層とを加熱処理して粒子化させる工程と、
前記粒子化したものの表面に線状を有する炭素体を形成させる工程と、
前記炭素体に触媒を担持させる工程とを有すること、
を特徴とする担持触媒の製造方法。
【請求項19】
前記炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項18記載の担持触媒の製造方法。
【請求項20】
第1の炭素体、または、前記第1の炭素体の集合体の表面に触媒金属層を形成させる工程と、
前記触媒金属層を加熱処理して粒子化させる工程と、
前記粒子化した触媒金属層の表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、
前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程と、
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体を固体高分子電解質溶液に浸漬させる工程とを有すること、
を特徴とする担持触媒の製造方法。
【請求項21】
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項20記載の担持触媒の製造方法。
【請求項22】
第1の炭素体、または、前記第1の炭素体の集合体の表面にシリコン層を形成させる工程と、
前記シリコン層の表面に触媒金属層を形成させる工程と、
前記シリコン層と前記触媒金属層とを加熱処理して粒子化させる工程と、
前記粒子化したものの表面に、線状を有する第2の炭素体を形成させる工程と、
前記第2の炭素体に触媒を担持させる工程と、
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体を固体高分子電解質溶液に浸漬させる工程とを有すること、
を特徴とする担持触媒の製造方法。
【請求項23】
前記第1の炭素体と前記第2の炭素体の表面をプロトンを乖離して供給することができる置換基で修飾すること、を特徴とする請求項22記載の担持触媒の製造方法。
【請求項24】
前記置換基による修飾で、スルホン化されること、を特徴とする請求項10〜23のいずれか1つに記載の担持触媒の製造方法。
【請求項25】
前記置換基は、カルボキシル基、スルホニル基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基の群より選ばれた少なくとも1種類以上であること、を特徴とする請求項10〜24のいずれか1つに記載の担持触媒の製造方法。
【請求項26】
燃料が供給される燃料極と、
酸化剤が供給される空気極と、
前記燃料極と前記空気極とに挟まれるようにして設けられた高分子固体電解質膜と、
を備え、
前記燃料極と、前記空気極と、にそれぞれ設けられる担持触媒の少なくともいずれかは、請求項1〜10のいずれか1つに記載の担持触媒であること、を特徴とする燃料電池。
【請求項27】
燃料が供給される燃料極と、酸化剤が供給される空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟まれるようにして設けられた高分子固体電解質膜と、を有する燃料電池の製造方法であって、
前記燃料極と、前記空気極と、にそれぞれ設けられる担持触媒の少なくともいずれかを、請求項10〜25のいずれか1つに記載の担持触媒の製造方法により製造すること、を特徴とする燃料電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−99517(P2009−99517A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27076(P2008−27076)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】