説明

拡張現実表示装置、拡張現実表示方法、ならびに、プログラム

【課題】現実世界の映像と仮想物体の映像を調和させるために、仮想物体の色調を補正するのに好適な拡張現実表示装置等を提供する。
【解決手段】拡張現実表示装置201において、マーカ202は、所定の模様が描かれ、現実世界に配置される。撮影部203は、マーカ202が配置された現実世界の様子を撮影する。推定部204は、撮影部203により撮影された画像内におけるマーカ202の位置を推定し、計算部205は、マーカ202に描かれた模様の色彩から、撮影部203により撮影された画像内におけるマーカ202の模様の色彩への変換パラメータを計算する。変換部206は、マーカ202に対応づけられるオブジェクトの色彩を、計算された変換パラメータにより変換する。描画部207は、撮影部203により撮影された画像内の推定された位置に、色彩を変換されたオブジェクトを描画する。表示部208は、オブジェクトが描画された画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想物体を現実世界の映像の中に重畳させる技術において、仮想物体の色を現実世界の映像に合わせて補正するのに好適な拡張現実表示装置、拡張現実表示方法、ならびにこれらをコンピュータにて実現するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影された現実世界の映像上に仮想物体を重畳させる拡張現実表示技術が開発され、ゲームやコミュニケーションツールとしての実用化が進められている。この様な技術は、一般にカメラ、モニタ、及び仮想物体を表示する位置を示すマーカ等を備えるシステムによって実現される。
【0003】
非特許文献1には、拡張現実表示技術において、マーカの位置検出方法が開示されている。マーカの2次元空間の頂点情報を3次元空間座標系に変換し、その座標をさらにモニタ上の座標系に変換することによって、仮想物体を現実世界の適切な位置に表示させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】加藤博一、Mark Billinghurst、浅野浩一、橘啓八郎、マーカ追跡に基づく拡張現実感システムとそのキャリブレーション、日本バーチャルリアリティ学会論文誌、Vol.4、No.4、1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現実世界の映像と仮想物体とを重畳する際に、現実世界の映像の色調が考慮されていないため、仮想物体が背景に比べて明るすぎたり又は暗すぎたりして見えるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、現実世界の映像と仮想物体の映像を調和させるために、仮想物体の色調を補正するのに好適な拡張現実表示装置、拡張現実表示方法、ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る拡張現実表示装置は、撮影部、推定部、計算部、変換部、描画部、表示部を備え、以下のように構成する。
【0008】
撮影部は、マーカが配置された現実世界の様子を撮影する。
【0009】
ここでマーカには、所定の模様が描かれており、現実世界に配置されるものであり、例えばシールやステッカーのように壁や床に貼り付けたり、コースターの用にテーブルの上に置いたりできる。
【0010】
マーカに描かれる模様は、例えば向きを判別するために非対称な模様とすることが好ましい。ユーザは、非対称な任意の模様とその模様に対応付けるオブジェクトを予め登録しておき、仮想物体を重畳したい場所にマーカを配置する。
【0011】
現実世界にマーカが配置され、そのマーカをユーザが見ている向きで撮影する。撮影部はユーザの視点を撮影するため、例えばユーザが装着するHMD(Head Mounted Display)等に備え付けられる。
【0012】
推定部は、撮影部により撮影された画像内におけるマーカの位置を推定する。
【0013】
例えば、マーカの形状を正方形とした場合、撮影された画像から正方形部分を検索し、一致した部分の頂点の座標情報を求める。さらに、マーカに描かれた模様と、予め登録されたマーカの模様とのマッチングを行い、模様の識別を行う。
【0014】
計算部は、マーカに描かれた模様の色彩から、撮影部により撮影された画像内におけるマーカの模様の色彩への変換パラメータを計算する。
【0015】
予め登録されているマーカの模様の色彩情報と、現実世界に配置することによって色が変化したマーカの模様の色彩情報を比較し、例えば両者の値の比をとることによって変換パラメータを計算する。
【0016】
変換部は、マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩を、計算された変換パラメータにより変換する。
【0017】
マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩情報は予め登録されており、識別された模様に基づいてオブジェクトの色彩情報を読み込む。読み込んだ色に対して、変換パラメータを用いて変換する。
【0018】
描画部は、撮影部により撮影された画像内の推定された位置に、色彩が変換されたオブジェクトを描画する。
【0019】
マーカの模様に基づいてオブジェクトの形状情報等を読み込み、推定部から受け取ったマーカの座標の位置に、変換部で変換された色彩でオブジェクトを描画する。
【0020】
表示部は、オブジェクトが描画された画像を表示する。
【0021】
描画部で描画されたオブジェクト画像は現実世界の映像に重畳され、モニタ等に表示される。
【0022】
本発明によれば、現実世界に配置されることによる仮想物体の色の変化を、実物体であるマーカの色の変化を計測することによって推定することができ、これにより現実世界と調和した仮想物体を表示することができる。
【0023】
また本発明の拡張現実表示装置において、上記マーカをさらに備えるように構成することもできる。
【0024】
また本発明の拡張現実表示装置において、マーカに描かれた模様の色彩は、マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩の平均もしくは最頻値とするように構成することができる。
【0025】
すなわち、オブジェクトの平均の色もしくは最も広範囲を占める色が、現実世界でどのような色に変化するかを知ることができる。
【0026】
本発明は、上記発明の好適実施形態に係るものであり、描画に使用する色がどのような色に変化するかを知ることができるので、より現実世界の映像に調和する色変換が可能となる。
【0027】
本発明のその他の観点に係る拡張現実表示方法は、撮影部、推定部、計算部、変換部、描画部、表示部を備え、以下のように構成する。
【0028】
撮影工程では、撮影部が、所定の模様が描かれたマーカが配置された現実世界の様子を撮影する。
【0029】
推定工程では、推定部が、撮影部により撮影された画像内におけるマーカの位置を推定する。
【0030】
計算工程では、計算部が、マーカに描かれた模様の色彩から、撮影部により撮影された画像内におけるマーカの模様の色彩への変換パラメータを計算する。
【0031】
変換工程では、変換部が、マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩を、計算された変換パラメータにより変換する。
【0032】
描画工程では、描画部が、撮影部により撮影された画像内の推定された位置に、色彩が変換されたオブジェクトを描画する。
【0033】
表示工程では、表示部が、オブジェクトが描画された画像を表示する。
【0034】
本発明のその他の観点に係るプログラムは、コンピュータを上記拡張現実表示装置として機能させ、コンピュータに上記拡張現実表示方法を実行させるように構成する。
【0035】
また、本発明のプログラムは、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、半導体メモリ等のコンピュータ読取可能な情報記憶媒体に記録することができる。
【0036】
上記プログラムは、プログラムが実行されるコンピュータとは独立して、コンピュータ通信網を介して配布・販売することができる。また、上記情報記憶媒体は、コンピュータとは独立して配布・販売することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、現実世界の映像と仮想物体の映像を調和させるために、仮想物体色調を補正するのに好適な拡張現実表示装置、拡張現実表示方法、ならびにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】プログラムを実行することにより、本発明の拡張現実表示装置の機能を果たす典型的な情報処理装置の概要構成を示す模式図である。
【図2】実施形態の拡張現実表示装置の概要構成を示す説明図である。
【図3】実施形態にて用いられるマーカの模様とオブジェクトの対応関係の例を示す図である。
【図4】(a)、(b)ともに実施形態にて用いられるマーカの例を示す図である。
【図5】実施形態の拡張現実表示装置の各部が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】撮影部によって撮影された現実世界の映像を示す図である。
【図7】図6で撮影されたマーカに対応づけられたオブジェクトを重畳した画像を示す図である。
【図8】図6で撮影されたマーカの色に合わせて色を変換したオブジェクトを示す図である。
【図9】照明が落とされた場合の現実世界の映像を示す図である。
【図10】図9で撮影されたマーカに対応づけられたオブジェクトを重畳した画像を示す図である。
【図11】図9で撮影されたマーカの色に合わせて色を変換したオブジェクトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下では、理解を容易にするため、ゲーム用の情報処理装置を利用して本発明が実現される実施形態を説明するが、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0040】
(実施形態)
図1はプログラムを実行することにより、本発明の実施形態に係る拡張現実表示装置の機能を果たす典型的な情報処理装置の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0041】
情報処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM 102と、RAM(Random Access Memory)103と、インターフェイス104と、コントローラ105と、外部メモリ106と、画像処理部107と、DVD−ROM(Digital Versatile Disc ROM)ドライブ108と、NIC(Network Interface Card)109と、音声処理部110と、モニタ111と、カメラ112と、を備える。
【0042】
ゲーム用のプログラム及びデータを記憶したDVD−ROMをDVD−ROMドライブ108に装着して、情報処理装置100の電源を投入することにより、当該プログラムが実行され、本実施形態に係る拡張現実表示装置が実現される。
【0043】
CPU 101は、情報処理装置100全体の動作を制御し、各構成要素と接続され制御信号やデータをやりとりする。また、CPU 101は、レジスタ(図示せず)という高速アクセスが可能な記憶域に対してALU(Arithmetic Logic Unit)(図示せず)を用いて加減乗除等の算術演算や、論理和、論理積、論理否定等の論理演算、ビット和、ビット積、ビット反転、ビットシフト、ビット回転等のビット演算などを行うことができる。さらに、マルチメディア処理対応のための加減乗除等の飽和演算や、三角関数等、ベクトル演算などを高速に行えるように、CPU 101自身が構成されているものや、コプロセッサを備えて実現するものがある。
【0044】
ROM 102には、電源投入直後に実行されるIPL(Initial Program Loader)が記録され、これが実行されることにより、DVD−ROMに記録されたプログラムをRAM 103に読み出してCPU 101による実行が開始される。また、ROM 102には、情報処理装置100全体の動作制御に必要なオペレーティングシステムのプログラムや各種のデータが記録される。
【0045】
RAM 103は、データやプログラムを一時的に記憶するためのもので、DVD−ROMから読み出したプログラムやデータ、その他ゲームの進行やチャット通信に必要なデータが保持される。また、CPU 101は、RAM 103に変数領域を設け、当該変数に格納された値に対して直接ALUを作用させて演算を行ったり、RAM 103に格納された値を一旦レジスタに格納してからレジスタに対して演算を行い、演算結果をメモリに書き戻す、などの処理を行う。
【0046】
インターフェイス104を介して接続されたコントローラ105は、ユーザがゲーム実行の際に行う操作入力を受け付ける。
【0047】
インターフェイス104を介して着脱自在に接続された外部メモリ106には、ゲーム等のプレイ状況(過去の成績等)を示すデータ、ゲームの進行状態を示すデータ、ネットワーク対戦の場合のチャット通信のログ(記録)のデータなどが書き換え可能に記憶される。ユーザは、コントローラ105を介して指示入力を行うことにより、これらのデータを適宜外部メモリ106に記録することができる。
【0048】
DVD−ROMドライブ108に装着されるDVD−ROMには、ゲームを実現するためのプログラムとゲームに付随する画像データや音声データが記録される。CPU 101の制御によって、DVD−ROMドライブ108は、これに装着されたDVD−ROMに対する読み出し処理を行って、必要なプログラムやデータを読み出し、これらはRAM 103等に一時的に記憶される。
【0049】
画像処理部107は、DVD−ROMから読み出されたデータをCPU 101や画像処理部107が備える画像演算プロセッサ(図示せず)によって加工処理した後、これを画像処理部107が備えるフレームメモリ(図示せず)に記録する。フレームメモリに記録された画像情報は、所定の同期タイミングでビデオ信号に変換され画像処理部107に接続されるモニタ111へ出力される。これにより、各種の画像表示が可能となる。
【0050】
画像演算プロセッサは、2次元の画像の重ね合わせ演算やαブレンディング等の透過演算、各種の飽和演算を高速に実行できる。
【0051】
また、仮想空間が3次元にて構成される場合には、当該3次元空間内に配置され、各種のテクスチャ情報が付加されたポリゴン情報を、Zバッファ法によりレンダリングして、所定の視点位置から仮想空間に配置されたポリゴンを所定の視線の方向へ俯瞰したレンダリング画像を得る演算の高速実行も可能である。
【0052】
さらに、CPU 101と画像演算プロセッサが協調動作することにより、文字の形状を定義するフォント情報にしたがって、文字列を2次元画像としてフレームメモリへ描画したり、各ポリゴン表面へ描画したりすることが可能である。
【0053】
NIC 109は、情報処理装置100をインターネット等のコンピュータ通信網(図示せず)に接続するためのものであり、LAN(Local Area Network)を構成する際に用いられる10BASE−T/100BASE−T規格にしたがうものや、電話回線を用いてインターネットに接続するためのアナログモデム、ISDN(Integrated Services Digital Network)モデム、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)モデム、ケーブルテレビジョン回線を用いてインターネットに接続するためのケーブルモデム等と、これらとCPU 101との仲立ちを行うインターフェイス(図示せず)により構成される。
【0054】
音声処理部110は、DVD−ROMから読み出した音声データをアナログ音声信号に変換し、これに接続されたスピーカ(図示せず)から出力させる。また、CPU 101の制御の下、ゲームの進行の中で発生させるべき効果音や楽曲データを生成し、これに対応した音声をスピーカから出力させる。
【0055】
音声処理部110では、DVD−ROMに記録された音声データがMIDIデータである場合には、これが有する音源データを参照して、MIDIデータをPCMデータに変換する。また、ADPCM形式やOgg Vorbis形式等の圧縮済音声データである場合には、これを展開してPCMデータに変換する。PCMデータは、そのサンプリング周波数に応じたタイミングでD/A(Digital/Analog)変換を行って、スピーカに出力することにより、音声出力が可能となる。
【0056】
モニタ111は、画像処理部107に接続され、CPU 101と画像演算プロセッサが協調動作することにより、画像情報を表示する。モニタ111は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(organic Electro-Luminescence display)等により構成され、一般的な置き型ディスプレイの形式又は装着型のHMDの形式で用いられる。
【0057】
カメラ112は、インターフェイス104を介して接続され、現実世界を撮影し、撮影した映像を電気信号に変換する。CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complimentary MOS)センサ等から構成される。カメラ112は、ユーザの視点から撮影するためにユーザが装着してもよく、又ユーザを映し出すために置き型ディスプレイ等に備え付けてもよい。
【0058】
このほか、情報処理装置100は、ハードディスク等の大容量外部記憶装置を用いて、ROM 102、RAM 103、外部メモリ106、DVD−ROMドライブ108に装着されるDVD−ROM等と同じ機能を果たすように構成してもよい。
【0059】
以上で説明した情報処理装置100は、いわゆる「コンシューマ向けテレビゲーム装置」に相当するものであるが、仮想空間を表示するような画像処理を行うものであれば本発明を実現することができる。したがって、携帯電話、携帯ゲーム機器、カラオケ装置、一般的なビジネス用コンピュータなど、種々の計算機上で本発明を実現することが可能である。
【0060】
たとえば、一般的なコンピュータは、上記情報処理装置100と同様に、CPU、RAM、ROM、DVD−ROMドライブ、及び、NICを備え、情報処理装置100よりも簡易な機能を備えた画像処理部を備え、外部記憶装置としてハードディスクを有する他、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等が利用できるようになっている。また、コントローラ105ではなく、キーボードやマウスなどを入力装置として利用する。
【0061】
図2は、本発明の実施形態の一つに係る拡張現実表示装置であって、上記情報処理装置100上に実現される拡張現実表示装置の概要構成を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0062】
本実施形態の拡張現実表示装置201は、撮影部203、推定部204、計算部205、変換部206、描画部207、表示部208、記憶部209、を備える。また、典型的には拡張現実表示装置201は、マーカ202と共に提供又は販売等される。
【0063】
マーカ202は、所定の模様が描かれ、ユーザにより、映像上で仮想物体を表示させる場所に配置される。マーカ202に描かれている模様及び模様に対応づけられるオブジェクトは、記憶部209に予め登録される。マーカ202の模様とオブジェクトの対応関係を表にした例を図3に示す。模様は描画するオブジェクトの向きを判別するため非対称とする。オブジェクトは3次元構造を有するとする。また、記憶部209には、マーカ202に使用される色彩及びマーカ202に対応づけられたオブジェクトの色彩情報等が保存されている。
【0064】
図4にマーカの例を示す。図4(a)に示す例では、マーカにはL字型の模様が描かれ、白と黒の2色のみが使用されている。この模様により、対応づけられているオブジェクトが判別され、模様の向きにより、オブジェクトを描画させる向きが決まる。マーカの模様の色彩に、オブジェクトの色彩の平均の色又は最頻値の色を使用しても良い。さらに、図4(b)に示すように、数種類の色を用いてもよい。また、マーカには色彩情報以外にも、表示されるオブジェクトの情報(キャラクター等)を記してもよい。
【0065】
撮影部203は、マーカ202が配置された現実世界の様子を撮影し、画像信号を推定部204及び計算部205に送る。例えば、撮影部203はユーザが装着するHMDに備え付けられ、ユーザが見ている向きの現実世界を撮影する。したがって、CPU 101は、カメラ112と協働して撮影部203として機能する。
【0066】
推定部204は、撮影部203により撮影された画像信号を受け取り、画像上のマーカ202の位置の推定及びマーカ202に描かれた模様の識別を行う。推定部204は、まず撮影部203により撮影された映像からマーカ202を検索し、マーカ画像を抽出する。抽出されたマーカ画像からマーカ202の座標情報を求める。次に、抽出されたマーカ画像の模様と記憶部209に登録されている模様とのマッチングを行い、マーカ202に描かれた模様を識別し、模様の向きを求める。推定部204は、推定されたマーカ202の位置、識別された模様及びその向きの情報を、計算部205及び描画部207に送る。例えば、図2の現実世界210を撮影した場合、テーブルの上の花瓶の横にあるマーカ画像が抽出され、マーカ202の四つの頂点の2次元座標が求められる。次に、抽出されたマーカ202は図4(a)の模様を有するマーカと判定され、マーカ202の模様は正面を向いていると推定される。したがって、CPU 101はRAM 103と協働し、推定部204として機能する。
【0067】
計算部205は、撮影部203からの画像信号と、推定部204からマーカ202の位置、模様及びその向きの情報と、を受け取り、記憶部209に保存されているマーカ202の色彩情報を参照して変換パラメータを計算する。例えば、計算部205は、画像信号、マーカ202の位置、模様及び向きの情報から、マーカ202の模様及び模様以外のRGB値を取得し、記憶部209に保存されているマーカ202の模様及び模様以外のRGB値との比を求めることにより、変換パラメータを得る。なお、RGB値の代わりに、色相、彩度、明度により色を表現するHSB値を用いてもよい。計算部205は、求めた変換パラメータ及びマーカ202の模様情報を変換部206に送る。したがって、CPU 101は計算部205として機能する。
【0068】
例えば、図4(a)のマーカが現実世界210に配置され、模様以外の白色部分が照明等によりオレンジがかったとする。画像信号とマーカ202の位置及び向きの情報を基づいて、マーカ202の模様以外の部分のRGB値を検出する(例えば、R値=r、G値=g、B値=b、とする)。一方、記憶部209に保存されているマーカ202の色彩情報を取得する。マーカ202の模様以外の部分は、元は白色なので、R値=255、G値=255、B値=255、となる。両者のRGB値の比を求め(R:r/255、G:g/255、B:b/255)、その値をRGB値の変換パラメータとする。また、図4(b)のマーカを用いて変換パラメータを計算する場合は、各色の変換パラメータを求め、オブジェクトの色彩を変換する際に、最も適した変換パラメータを選択するようにしてもよい。
【0069】
変換部206は、計算部205より求められた変換パラメータ及び模様情報を受け取り、変換パラメータに基づいてオブジェクトの色を変換する。変換部206は、受け取った模様情報に対応づけられているオブジェクトの色彩情報を記憶部209から読み込み、オブジェクトの色に対して変換パラメータを用いて変換を行う。変換後の色彩情報を描画部207に送る。したがって、CPU 101は画像処理部107と協働し、変換部206として機能する。
【0070】
例えば、変換パラメータを、R:r/255、G:g/255、B:b/255、とし、オブジェクトの元の色のRGB値を、R値=r'、G値=g'、B値=b'とすると、変換後のオブジェクトのRGB値は、R値=(r/255)r'、G値=(g/255)g'、B値=(b/255)b'、と求められる。また、図4(b)のマーカから変換パラメータを求め、変換する元の色が青色に近い色の場合は、青色の模様部分のRGB値を用いて求めた変換パラメータで変換するようにしてもよい。
【0071】
描画部207は、推定部204からマーカの位置、及び識別されたマーカ202の模様及びその向きの情報を、変換部206から変換後のオブジェクトの色彩情報を受け取る。描画部207は、マーカ202の模様からオブジェクトの形状情報を読み込み、マーカ202の座標の位置に、変換部206で変換された色彩でオブジェクトを描画する。さらに、マーカ202の模様の向きに対応するように、オブジェクトの向きを合わせる。描画部207は、描画されたオブジェクトの画像情報を表示部208に送る。したがって、CPU 101は画像処理部107と協働し、描画部207として機能する。
【0072】
表示部208は、描画部207からのオブジェクト画像情報を受け取り、現実世界210の映像上に重畳した画像をモニタ111に表示する。したがって、CPU 101は画像処理部107及びモニタ111と協働し、表示部208として機能する。
【0073】
記憶部209は、例えば図3のマーカとオブジェクトの対応関係を示すリストや、マーカ及びオブジェクトの色彩情報を記憶する。記憶部209が記憶した情報は、推定部204、計算部205、変換部206、及び描画部207によって参照される。したがって、CPU 101はRAM103と協働し、記憶部209として機能する。
【0074】
図5は、本拡張現実表示装置201にて実行される拡張現実表示の流れを示すフローチャートである。以下、本図を参照して説明する。
【0075】
ユーザによる撮影開始の指示等によって、撮影部203による撮影が開始される(ステップS501)。ここで、記憶部209に登録されている図4(a)のマーカが照明によってオレンジ色に映し出された例を図6に示す。
【0076】
推定部204は撮影部203からの画像信号を受け付け、現実世界の画像610上のマーカ202の位置座標を推定する(ステップS502)。次に、推定部204は、マーカ202に描かれているL字型の模様を検出し、記憶部209に登録されている模様とのマッチングを行う。これによりマーカ202に描かれた模様を識別し、さらに登録されているマーカの向きと比較して、L字型の模様の向きを求める(ステップS503)。記憶部209に登録されている図4(a)のマーカより、現実世界の画像610のマーカ202は正面を向いていると推定される。
【0077】
計算部205は、マーカ202の色彩を判別し、予め登録されているマーカの色彩情報を記憶部209から読み込む。現実世界の画像610の場合、模様以外に使用されている色は“オレンジ色”と判別される。また、マーカ202の模様から予め登録されているマーカの模様以外の色は“白色”であると判別される。次に、登録されているマーカの色と、登録されているマーカの色から変化した部分の色の、RGB値の比を求め、変換パラメータを計算する(ステップS504)。
【0078】
変換部206は、マーカ202に対応付けられている元のオブジェクトの色(ここでは“白色”とする)を、計算部205で求められた変換パラメータを用いて変更する(ステップS505)。マーカ202に対応づけるオブジェクトの色は“オレンジ色”と変更される。
【0079】
描画部207は、推定部204で求められたマーカ202の位置座標及び模様の向きから、オブジェクトを画像上の所定の位置及び向きに配置する。マーカ202の場合は、図7のオブジェクト711のように、マーカ202の位置に正面を向いて配置される。さらに、変換部206で求められたオブジェクトの色彩情報に基づいて、オブジェクト画像を描画する(ステップS506)。マーカ202の場合は、図8のオブジェクト811のように“オレンジ色”に描画される。
【0080】
表示部208は、描画部207で描画されたオブジェクト画像を現実世界の画像610に重畳し、図8の画像をモニタ111に表示させる(ステップS507)。
【0081】
また、図4(a)のマーカが向きを変えて配置され、暗い照明の元で灰色に映し出された例を図9に示す。
【0082】
この場合、推定部204は、現実世界の画像910のマーカ902と登録されているマーカの向きと比較して、マーカ902は左45度の方向に向いていると推定する(ステップS503)。次に、計算部205は、現実世界の画像910のマーカは“灰色”と判別し、判別された色と登録されているマーカの色から変換パラメータを計算する(ステップS504)。変換部206は、計算部205で求められた変換パラメータを用いて、マーカ902に対応づけるオブジェクトの色を“灰色”に変更する(ステップS505)。描画部207は、図10のオブジェクト1011のように、マーカ902の位置に左45度を向いて配置し、変換部206で求められたオブジェクトの色彩情報に基づいて、図11のオブジェクト1111のように“灰色”に描画する(ステップS506)。表示部208は、描画部207で描画されたオブジェクト画像を現実世界の画像910に重畳し、図11の画像をモニタ111に表示させる(ステップS507)。
【0083】
本実施形態では、現実世界に配置されたマーカの色彩情報に基づいて、映像上で現実世界に重畳する仮想物体の色を変換するので、色における違和感を減少させることができる。また、本実施形態では、マーカの模様の色彩をマーカに対応づけられるオブジェクトの色彩の平均又は最頻値することにより、オブジェクトに使用される色が現実世界で配置された際に変化した色を計測することができるので、色変換精度を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明によれば、現実世界の映像と仮想物体の映像を調和させるために、仮想物体色調を補正するのに好適な拡張現実表示装置、拡張現実表示方法、ならびにプログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 インターフェイス
105 コントローラ
106 外部メモリ
107 画像処理部
108 DVD−ROMドライブ
109 NIC
110 音声処理部
111 モニタ
112 カメラ
201 拡張現実表示装置
202,902 マーカ
203 撮影部
204 推定部
205 計算部
206 変換部
207 描画部
208 表示部
209 記憶部
210 現実世界
610 マーカ202が配置された現実世界の画像
710 マーカ202に対応づけられた、色変換前のオブジェクトを表示した画像
711 マーカ202に対応づけられた色変換前のオブジェクト
810 マーカ202に対応づけられた、色変換後のオブジェクトを表示した画像
811 マーカ202に対応づけられた色変換後のオブジェクト
910 マーカ902が配置された現実世界の画像
1010 マーカ902に対応づけられた、色変換前のオブジェクトを表示した画像
1011 マーカ902に対応づけられた色変換前のオブジェクト
1110 マーカ902に対応づけられた、色変換後のオブジェクトを表示した画像
1111 マーカ902に対応づけられた色変換後のオブジェクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカが配置された現実世界の様子を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの位置を推定する推定部と、
前記マーカに描かれた模様の色彩から、前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの模様の色彩への変換パラメータを計算する計算部と、
前記マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩を、前記計算された変換パラメータにより変換する変換部と、
前記撮影部により撮影された画像内の前記推定された位置に、前記色彩が変換されたオブジェクトを描画する描画部と、
前記オブジェクトが描画された画像を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする拡張現実表示装置。
【請求項2】
所定の模様が描かれ、現実世界に配置されるマーカと、
前記マーカが配置された現実世界の様子を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの位置を推定する推定部と、
前記マーカに描かれた模様の色彩から、前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの模様の色彩への変換パラメータを計算する計算部と、
前記マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩を、前記計算された変換パラメータにより変換する変換部と、
前記撮影部により撮影された画像内の前記推定された位置に、前記色彩が変換されたオブジェクトを描画する描画部と、
前記オブジェクトが描画された画像を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする拡張現実表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の拡張現実表示装置であって、
前記マーカに描かれた模様の色彩は、前記マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩の平均もしくは最頻値である、
ことを特徴とする拡張現実表示装置。
【請求項4】
撮影部、推定部、計算部、変換部、描画部、表示部を有する拡張現実表示装置にて実行される拡張現実表示方法であって、
前記撮影部が、所定の模様が描かれたマーカが配置された現実世界の様子を撮影する撮影工程と、
前記推定部が、前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの位置を推定する推定工程と、
前記計算部が、前記マーカに描かれた模様の色彩から、前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの模様の色彩への変換パラメータを計算する計算工程と、
前記変換部が、前記マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩を、前記計算された変換パラメータにより変換する変換工程と、
前記描画部が、前記撮影部により撮影された画像内の前記推定された位置に、前記色彩が変換されたオブジェクトを描画する描画工程と、
前記表示部が、前記オブジェクトが描画された画像を表示する表示工程と、
を備えることを特徴とする拡張現実表示方法。
【請求項5】
コンピュータを、
所定の模様が描かれたマーカが配置された現実世界の様子を撮影する撮影部、
前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの位置を推定する推定部、
前記マーカに描かれた模様の色彩から、前記撮影部により撮影された画像内におけるマーカの模様の色彩への変換パラメータを計算する計算部、
前記マーカに対応づけられるオブジェクトの色彩を、前記計算された変換パラメータにより変換する変換部、
前記撮影部により撮影された画像内の前記推定された位置に、前記色彩が変換されたオブジェクトを描画する描画部、
前記オブジェクトが描画された画像を表示する表示部、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−170316(P2010−170316A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11982(P2009−11982)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】