説明

指令生成装置

【課題】目標位置が変更された場合であっても、可動軸に発生する衝撃や励起する振動を可及的に抑制しながら前記変更された目標位置までの補間動作を実行すること。
【解決手段】目標位置Xと可動軸の現在位置Cとの間を補間するように速度指令計算値vrを可動軸毎に算出する指令速度演算部と、直前に出力された速度指令出力値voと速度指令計算値vrとの差分である速度変更量Δvを可動軸毎に算出する速度変更量演算部と、可動軸毎の速度変更量Δvの全てが許容速度変更量Vmを越えない値となるように速度変更量Δvを制限する1つの補正ゲインRを算出する補正ゲイン演算部と、速度変更量Δvを補正ゲインRで制限した値と直前に出力された速度指令出力値voとを加算して次に出力する速度指令出力値voを可動軸毎に算出する指令速度出力部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装機、工作機械、XYテーブル、ロボットアームなど、複数の可動軸を備えた産業機械に適用され、前記複数の可動軸の位置決め運転を行う指令生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指令生成装置は、上位装置から目標位置が指令されると、複数の可動軸が組み込まれた負荷機械を当該指令された目標位置まで動作すべく、可動軸を夫々駆動するモータに供給する速度指令を補完する。このような指令生成装置は、通常、ある目標位置まで位置決め運転を実行している最中に目標位置が変更されると、現在の指令位置から変更された目標位置まで位置決め運転を行うような指令速度を演算する。例えば、各軸の速度方向が反転するような場合、極めて急激な速度変化を伴うような指令速度を生成する。このような指令速度をそのまま負荷機械を駆動するモータに対する指令速度として出力すると、モータおよび負荷機械に大きな振動や衝撃を発生させ、結果として可動軸を損傷させてしまう場合があるという課題がある。
【0003】
この課題に対し、各可動軸における一演算周期の間に指令速度を変更できる速度変更量に制限を設けたり、モータが発生するトルクに制限に設けることにより、上述した大きな振動や衝撃の発生を防止することが可能となる。しかしながら、目標位置が変更された後の各軸の指令速度の変更量の大きさや各軸で設定される速度変更量やモータが発生するトルクに対する制限値の違いから、制限を超える可動軸や制限を超えない可動軸が混在したり、制限を超える場合でも制限値を超過する量が各軸で異なるため、目標位置が変更された後の補間動作の実現が困難となり、変更された目標位置までの位置決め運転が各軸同時に完了しないといった課題がある。
【0004】
特許文献1に開示されている技術によれば、入力された指令速度に対して演算周期毎の速度変更量に相当する加速度を各軸毎に算出し、各軸の加速度の中で最大となる加速度を求める。そして、この最大加速度が予め設定された許容最大加速度より小さい場合は入力された指令速度をそのまま出力し、この最大加速度が予め設定された許容最大加速度より大きい場合は最大加速度と許容最大加速度との比率に基づき各軸の指令速度を補正する。この技術によれば、各軸の加速度が許容最大加速度を超えないよう新たな指令速度を生成できるので可動軸に与える衝撃や励起する振動を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−134765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術によれば、入力された指令速度の変更に対し、変更された速度方向に一致するような指令速度の生成は可能であるが、補間動作を行いながら位置決め運転を実行している最中に目標位置が変更される場合は考慮されていないため、変更された目標位置までの位置決め運転の実現ができないといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、上記のような課題を解決するためになされたものであり、目標位置が変更された場合であっても、可動軸に発生する衝撃や励起する振動を可及的に抑制しながら前記変更された目標位置までの補間動作を実行することができる指令生成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の可動軸を夫々動作させる速度指令出力値を可動軸毎に出力する指令生成装置であって、外部から入力される可動軸毎の目標位置および目標速度を受け付けて、前記受け付けた目標位置および目標速度と現在の位置指令とに基づいて、夫々の可動軸が補間動作を行うよう速度指令計算値を可動軸毎に算出する指令速度演算部と、直前に出力された速度指令出力値と前記速度指令計算値との差分である速度変更量を可動軸毎に算出する速度変更量演算部と、外部から入力される許容速度変更量を受け付けて、前記可動軸毎の速度変更量の全てが前記受け付けた許容速度変更量を越えない値となるように前記速度変更量を制限する1つの補正ゲインを算出する補正ゲイン演算部と、前記速度変更量に前記補正ゲインを乗じ、前記補正ゲインを乗じた速度変更量と前記直前に出力された速度指令出力値とを加算して次に出力する速度指令出力値を可動軸毎に算出する指令速度出力部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目標位置と可動軸の現在位置との間を補間するように速度指令計算値を可動軸毎に算出し、可動軸毎の速度変更量の全てが許容速度変更量を越えない値となるように速度変更量を制限し、制限された速度変更量と直前に出力された速度指令出力値とを加算して次に出力する速度指令出力値を生成するので、目標位置が変更された場合であっても、可動軸に発生する衝撃や励起する振動を可及的に抑制しながら前記変更された目標位置までの補間動作を実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施の形態1の指令生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1の補正ゲイン演算部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、位置決め動作の概要を説明する図である。
【図4】図4は、実施の形態1の指令生成装置における演算周期毎の動作を説明する図である。
【図5】図5は、実施の形態2の指令生成装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、実施の形態2の補正ゲイン演算部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる指令生成装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1にかかる指令生成装置の構成を示すブロック図である。ここでは説明を容易にするために、指令生成装置の制御対象とする負荷機械が有する可動軸(以下、単に軸と記述)の数は2つとし、この2つの軸に対する補間動作を行いながら負荷機械の目標位置までの位置決め動作をする場合について説明する。なお、以降の説明において、添え字i(i=1、2)は軸番号を意味するものとする。
【0013】
図示するように、指令生成装置100は、各軸が位置決め運転を行うための目標位置X1、X2と、各軸による補間動作の移動方向に対する目標速度Vと、各軸に対して夫々予め設定される一演算周期で変更可能な最大の速度変更量である許容速度変更量Vm1、Vm2とが外部(例えばプログラマブルコントローラ)から入力され、各軸に対する速度指令出力値vo1、vo2を出力する。出力された速度指令出力値vo1、vo2は、その後、例えばサーボアンプにD/Aコンバータを通して入力され、当該サーボアンプは、可動軸を動作させるモータの速度が速度指令出力値vo1、vo2に一致するよう電流を夫々生成して、生成した電流を夫々対応するモータに供給する。
【0014】
指令生成装置100は、指令速度演算部110、補正ゲイン演算部120、速度変更量演算部131、速度変更量演算部132、指令速度出力部141、指令速度出力部142、指令位置更新部151、および指令位置更新部152を備えている。
【0015】
指令速度演算部110は、目標位置X1、X2と目標速度Vと指令生成装置100内部で演算される各軸の現在の指令位置xo1、xo2とを入力とし、各軸を補間動作させて目標位置X1、X2に到達させるための各軸に対する速度指令計算値vr1、vr2を演算する。言い換えると、指令速度演算部110は、目標位置X1、X2および目標速度Vと現在の位置指令xo1、xo2とに基づいて、夫々の可動軸が補間動作を行うよう速度指令計算値vr1、vr2を可動軸毎に算出する。
【0016】
速度変更量演算部131は、指令速度演算部110にて演算された軸1に対する速度指令計算値vr1と、指令速度出力部141から軸1に出力された速度指令出力値vo1とを入力とし、速度指令計算値vr1の速度指令出力値vo1に対する差分である軸1に対する速度変更量Δv1を演算する。
【0017】
指令速度出力部141は、速度変更量Δv1と、補正ゲイン演算部120が出力した補正ゲインRとを入力とし、速度変更量Δv1が許容速度変更量Vm1を超えないような軸1に対する速度指令出力値vo1を生成して、当該生成した速度指令出力値vo1を軸1に対して出力する。
【0018】
指令位置更新部151は、軸1に出力された速度指令出力値vo1を入力とし、軸1の指令位置xo1を更新する。
【0019】
速度変更量演算部132は、上記指令速度演算部110で演算された軸2に対する速度指令計算値vr2と指令速度出力部142から軸2に出力された速度指令出力値vo2とを入力とし、速度指令計算値vr2の速度指令出力値vo2に対する差分である軸2に対する速度変更量Δv2を演算する。
【0020】
指令速度出力部142は、速度変更量Δv2と補正ゲイン演算部120が出力した補正ゲインRとを入力とし、速度変更量Δv2が許容速度変更量Vm2を超えないような速度指令出力値vo2を軸2に対して出力する。
【0021】
指令位置更新部152は、軸2に出力された速度指令出力値vo2を入力とし、軸2の指令位置xo2を更新する。
【0022】
補正ゲイン演算部120は、速度変更量演算部131、132で演算される軸1、軸2の速度変更量Δv1およびΔv2と、各軸に対して予め設定される許容速度変更量Vm1、Vm2とを入力とし、各軸の速度変更量Δv1、Δv2が、各軸に対して設定される許容速度変更量Vm1、Vm2より大きくならないように各軸の速度変更量Δv1、Δv2を補正する補正ゲインRを出力する。
【0023】
図2は、補正ゲイン演算部120の構成を示すブロック図である。図示するように、補正ゲイン演算部120は、第1の比率演算部161、第2の比率演算部162、比率選択部170およびクランプ部180を備えている。
【0024】
第1の比率演算部161は、速度変更量Δv1の大きさと許容速度変更量Vm1との比率(第1の比率)を演算する。第2の比率演算部162は、速度変更量Δv2の大きさと許容速度変更量Vm2との比率(第2の比率)を演算する。
【0025】
比率選択部170は、比率演算部161、162で演算された第1の比率および第2の比率を入力とし、これらの比率のうち最小となる比率を選択する。クランプ部180は、選択された比率の値を0から1までの範囲でクランプして、前記クランプした比率を補正ゲインRとして出力する。
【0026】
次に、図3および図4を参照して、軸1および軸2を位置決め運転している最中に目標位置が変更された場合における指令生成装置100の演算周期毎の動作を説明する。なお、以降の説明において、演算周期毎に1ずつ増加するサンプリング数の概念を導入し、サンプリング数がkとなっている時点を「現在」として説明する。
【0027】
図3は、軸1および軸2により形成される平面上の位置決め運転時の動作概要を示す図である。点S、点Zは、予め設定される位置決め運転の開始位置と各軸の目標位置で表される位置決め完了位置である。位置決め開始点Sから位置決め完了点Zまでの位置決め動作を行う際には、軸1および軸2は、同時に動作が開始され、同時に位置決めを完了することが必要とされる。
【0028】
ここで、軸1および軸2が開始点Sから位置決め完了点Zまで補間動作を行いながら位置決め運転を行っている最中のある点C[k]において、目標位置が予め設定された点Zから別の位置決め完了点Xに変更された場合を考える。図4は、点C[k]において目標位置がZからXに変更された瞬間の指令生成装置の動作を表す図である。
【0029】
voi[k−1]は、前回演算周期において指令速度出力部141、142から出力された速度指令出力値であり、C[k](xo1[k],xo2[k])はこの速度指令出力値voi[k−1]によって指令位置更新部151、152で更新された現在の指令位置である。目標位置変更がなく、速度指令出力値voi[k]が前回演算周期の速度指令出力値voi[k]と同じであった場合の指令位置はA[k]となる。
【0030】
vri[k]は、次式(1)に示すように、変更された目標位置X(=(X1,X2))と現在の指令位置(前回の演算周期における指令位置)C[k−1]と目標速度Vとを用いて演算される。なお、B[k]は、指令速度演算部110で演算された速度指令計算値vri[k]がそのまま各軸に出力されたと仮定した場合の指令位置である。
【数1】

【0031】
現在各軸に出力されている速度指令出力値voi[k]に対する式(1)で演算される速度指令計算値vri[k]の差分が演算周期の間に変更される速度変更量Δvi[k]となるため、速度変更量Δvi[k]は、
【数2】

となる。
【0032】
(2)式で演算される速度変更量Δvi[k]が、各軸に対して予め設定される許容速度変更量Vmiよりも小さければ、(1)式で演算される速度指令計算値vri[k]をそのまま各軸に出力しても可動軸に大きな振動や衝撃を与えることなく、補間動作を行いつつ、変更された目標位置への位置決め動作が可能となる。しかしながら、図4に示すように、(2)式で演算される速度変更量Δvi[k]が許容速度変更量できまる速度変更可能な範囲を超える場合は、補間動作を行いつつ、変更された目標位置への位置決め動作が困難となる。
【0033】
そこで、まず、補正ゲイン演算部120は、比率演算部161(および比率演算部162)が、次の式にしたがって、各軸の速度変更量Δvi[k]に対する予め設定される各軸の許容速度変更量Vmiの比率ri[k]を演算する。
【数3】

【0034】
そして、比率選択部170は、次の式に示すように、(3)式で演算された各軸の比率のうち最小となる比率を選択する。そして、クランプ部180は、0から1までの範囲でクランプしたものを補正ゲインRとする。言い換えると、クランプ部180は、出力するRの上限値を1に制限する。
【数4】

【0035】
(3)式で演算される比率は、(2)式で演算される各軸の速度変更量Δvi[k]が各軸の許容速度変更量Vmiよりも大きい場合は1よりも小さな値となり、逆に速度変更量Δvi[k]が各軸の許容速度変更量Vmiよりも小さい場合は1よりも大きな値となる。すなわち、補正ゲイン演算部120の動作により、すべての軸の速度変更量が許容速度変更量以下の範囲であれば、出力される補正ゲインRは1となる。一方、速度変更量が許容速度変更量よりも大きくなる軸が一つでもあれば、補正ゲインRは1よりも小さな値となる。速度変更量が許容速度変更量よりも大きくなる軸が複数ある場合は、(4)式に示すように最小となる比率を選択することにより、各軸の速度変更量が許容速度変更量の範囲内で各軸速度変更量が最も大きくなるよう補正ゲインRを演算することができる。
【0036】
指令速度出力部141(および指令速度出力部142)では、次の式の演算により、各軸に出力する速度指令出力値voi[k]を演算する。
【数5】

【0037】
指令位置更新部151(および指令位置更新部152)では、次の式の演算により、各軸に出力する速度指令出力値voi[k]に応じて指令位置C[k](=(xo1[k],xo2[k]))を更新する。
【数6】

【0038】
なお、指令生成装置100が備える夫々の構成要素(指令速度演算部110、補正ゲイン演算部120、速度変更量演算部131、速度変更量演算部132、指令速度出力部141、指令速度出力部142、指令位置更新部151、指令位置更新部152、第1の比率演算部161、第2の比率演算部162、比率選択部170およびクランプ部180)をハードウェア回路を用いて実現するようにしてもよい。また、指令生成装置100に演算装置と記憶装置とを備えるコンピュータを具備させ、当該コンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより指令生成装置100が備える一部または全部の構成要素を実現するようにしてもよい。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、目標位置Xと可動軸の現在位置Cとの間を補間するように速度指令計算値vrを可動軸毎に算出する指令速度演算部110と、直前に出力された速度指令出力値voと速度指令計算値vrとの差分である速度変更量Δvを可動軸毎に算出する速度変更量演算部131、132と、可動軸毎の速度変更量Δvの全てが許容速度変更量Vmを越えない値となるように速度変更量Δvを制限する1つの補正ゲインRを算出する補正ゲイン演算部120と、速度変更量Δvを補正ゲインRで制限した値と直前に出力された速度指令出力値voとを加算して次に出力する速度指令出力値voを可動軸毎に算出する指令速度出力部141、142を備えるように構成したので、目標位置の変更に伴う速度変更量が許容速度変更量Vmの範囲内に収まるような速度指令出力値voを補間動作を停止することなく出力することができるので、目標位置が変更された場合であっても、可動軸に発生する衝撃や励起する振動を可及的に抑制しながら前記変更された目標位置までの補間動作を実行することができる。
【0040】
また、指令速度出力部141、142が算出した速度指令出力値voを可動軸毎に積算して、指令速度演算部110が使用する現在位置Cを算出するようにした。また、目標速度Vを受け付けて、可動軸毎の速度指令計算値vrを合成した値の大きさが目標速度Vに等しくなるように可動軸毎の速度指令計算値vrを算出するようにした。
【0041】
また、補正ゲイン演算部120は、速度変更量Δvの大きさに対する許容速度変更量Vmの比率rを可動軸毎に演算する比率演算部161、162と、可動軸毎の比率rのうち最小の比率を選択する比率選択部170と、選択した比率rの最大値を1でクランプし、得られた値を補正ゲインRとするクランプ部180と、を備えるように構成した。
【0042】
なお、モータによって駆動される可動軸を複数備え、前記可動軸が補間動作を行いつつ所定の位置に位置決め動作を行うための指令速度を生成する方法として、位置決め開始位置から目標位置までの目標移動距離から各可動軸の合成移動量を差し引いた残距離に基づいて各軸に対する指令速度を演算する方法(パルス分配方式)がある。通常は、パルス分配方式によって指令速度vrを演算するようにし、(3)式で演算される比率ri[k]、または(4)式で演算される補正ゲインRが1より小さい場合に、本実施の形態1で示す指令生成装置100を用いるよう切り替えて使用しても良い。
【0043】
また、目標位置がZからXへ変更されたときから、(3)式で演算される比率ri[k]、または(4)式で演算される補正ゲインRが1になるまで、本実施の形態1で示す指令生成装置100を用いるよう切り替えて使用しても良い。
【0044】
また、本実施の形態1では、速度指令出力値を出力するよう構成した指令生成装置について説明したが、速度指令出力値ではなく速度指令出力値を累積加算した指令位置を出力するように構成しても良い。また、速度指令出力値を演算周期毎に差分した加速度に相当する指令加速度を出力するようにしても良い。
【0045】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2にかかる指令生成装置の構成を示すブロック図である。なお、ここでは、実施の形態1と同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、実施の形態2の指令生成装置200は、指令速度演算部110、補正ゲイン演算部220、速度変更量演算部131、速度変更量演算部132、指令速度出力部141、指令速度出力部142、指令位置更新部151、および指令位置更新部152を備えている。指令生成装置200は、許容速度変更量Vm1、Vm2の替わりに、各軸の許容速度変更量Vmiを合成した値に相当する、一演算周期で変更可能な最大の速度変更量である合成許容速度変更量Vmが入力される。合成許容速度変更量Vmは、軸1および軸2が直交している場合、例えば許容速度変更量Vm1、Vm2の2乗和の平方根に対応する。
【0047】
補正ゲイン演算部220は、速度変更量演算部131、132で演算された各軸の速度変更量Δvi[k]と合成許容速度変更量Vmとを入力として、補正ゲインRを出力する。
【0048】
図6は、補正ゲイン演算部220の構成を示すブロック図である。図示するように、補正ゲイン演算部220は、比率演算部260およびクランプ部280を備えている。
【0049】
比率演算部260は、各軸の速度変更量Δvi[k](i=1,2)と合成許容速度変更量Vmとを入力として、次式に示すような演算を施し、各軸の速度変更量の合成量に対する合成許容速度変更量Vmの比率r[k]を演算する。
【数7】

【0050】
(7)式で演算される比率r[k]は、各軸の速度変更量Δvi[k]の合成量が合成許容速度変更量Vmよりも大きい場合は1よりも小さな値となる。一方、各軸の速度変更量Δvi[k]の合成量が各軸の合成許容速度変更量Vmよりも小さい場合は1よりも大きな値となる。
【0051】
クランプ部280は、次式に示すように(7)式で演算される比率r[k]の値を0から1までの範囲でクランプする。クランプ部280からの出力が補正ゲインRとなる。
【数8】

【0052】
指令生成装置200内部の指令速度出力部141(142)では、実施の形態1で述べたのと同様、(5)式の演算により、各軸に出力する速度指令出力値voi[k]を演算する。また、指令位置更新部151(152)では、(6)式の演算により、各軸に出力する速度指令出力値voi[k]に応じて指令位置C[k]=(xo1[k], xo2[k])を更新する。
【0053】
このように、本発明の実施の形態2によれば、補正ゲイン演算部220は、可動軸毎の速度変更量Δvを合成して合成速度変更量を算出し、算出した合成速度変更量と許容速度変更量Vmの比率rを算出する比率演算部260と、算出した比率rの最大値を1でクランプし、得られた値を補正ゲインRとするクランプ部280と、を備えるように構成したので、実施の形態1と同様に、目標位置が変更された場合であっても、可動軸に発生する衝撃や励起する振動を可及的に抑制しながら前記変更された目標位置までの補間動作を実行することができる。
【0054】
なお、以上の説明においては、合成許容速度変更量Vmを軸毎の許容速度変更量を合成したものに相当するとして説明したが、各軸の許容速度変更量Vmi(i=1,2)のうちの最小値を合成許容速度変更量Vmとして採用するように構成しても構わない。
【0055】
また、指令生成装置200が備える夫々の構成要素(指令速度演算部110、補正ゲイン演算部220、速度変更量演算部131、速度変更量演算部132、指令速度出力部141、指令速度出力部142、指令位置更新部151、指令位置更新部152、比率演算部260およびクランプ部280)をハードウェア回路を用いて実現するようにしてもよい。また、指令生成装置200に演算装置と記憶装置とを備えるコンピュータを具備させ、当該コンピュータ上で所定のプログラムを実行することにより指令生成装置200が備える一部または全部の構成要素を実現するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施の形態2では、速度指令出力値を出力するよう構成した指令生成装置について説明したが、速度指令出力値ではなく速度指令出力値を累積加算した指令位置を出力するように構成しても良い。また、速度指令出力値を演算周期毎に差分した加速度に相当する指令加速度を出力するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる指令生成装置は、複数の可動軸の位置決め運転を行う指令生成装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0058】
100、200 指令生成装置
110 指令速度演算部
120、220 補正ゲイン演算部
131、132 速度変更量演算部
141、142 指令速度出力部
151、152 指令位置更新部
161、162、260 比率演算部
170 比率選択部
180、280 クランプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可動軸を夫々動作させる速度指令出力値を可動軸毎に出力する指令生成装置であって、
外部から入力される可動軸毎の目標位置および目標速度を受け付けて、前記受け付けた目標位置および目標速度と現在の指令位置とに基づいて、夫々の可動軸が補間動作を行うよう速度指令計算値を可動軸毎に算出する指令速度演算部と、
直前に出力された速度指令出力値と前記速度指令計算値との差分である速度変更量を可動軸毎に算出する速度変更量演算部と、
外部から入力される許容速度変更量を受け付けて、前記可動軸毎の速度変更量の全てが前記受け付けた許容速度変更量を越えない値となるように前記速度変更量を制限する1つの補正ゲインを算出する補正ゲイン演算部と、
前記速度変更量に前記補正ゲインを乗じ、前記補正ゲインを乗じた速度変更量と前記直前に出力された速度指令出力値とを加算して次に出力する速度指令出力値を可動軸毎に算出する指令速度出力部と、
を備えることを特徴とする指令生成装置。
【請求項2】
前記指令速度出力部が算出した速度指令出力値を現在の指令位置に加算して、前記指令速度演算部に供給する可動軸毎の指令位置を算出(更新)する指令位置更新部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の指令生成装置。
【請求項3】
前記指令速度演算部は、外部から入力される目標速度を受け付けて、可動軸毎の速度指令計算値を合成した値の大きさが前記受け付けた目標速度に等しくなるように速度指令計算値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の指令生成装置。
【請求項4】
前記補正ゲイン演算部は、
前記速度変更量の大きさに対する前記受け付けた許容速度変更量の比率を可動軸毎に演算する比率演算部と、
前記可動軸毎の比率のうち最小の比率を選択する比率選択部と、
前記選択した比率の最大値を1でクランプし、得られた値を前記補正ゲインとするクランプ部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のうちの何れか一項に記載の指令生成装置。
【請求項5】
前記補正ゲイン演算部は、
前記可動軸毎の速度変更量を合成して合成速度変更量を算出し、前記算出した合成速度変更量と前記受け付けた許容速度変更量の比率を算出する比率演算部と、
前記算出した比率の最大値を1でクランプし、得られた値を前記補正ゲインとするクランプ部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のうちの何れか一項に記載の指令生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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