説明

指環リング

【課題】理美容師等が散髪を行う際の身体的負担を軽減し、腱鞘炎や肩こりなどの職業病をわずらうことを予防することができる指環リングを提供する。
【解決手段】鋏の指環6,8と使用者の指とのサイズ調整に用いる指環リング50である。指環リング50は、指環6,8に内接するとともに、指環リング50の外周面及び/又は内周面に粘弾性体が密着されており、且つ粘弾性体が指環6,8及び/又は指と密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋏の指環と使用者の指とのサイズ調整に用いる指環リングに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の人口動態は、少子高齢化に進んでおり、近未来、4人に1人が老人という社会になりつつある。平成16年現在、日本にいる理美容師も例外でなく、理美容師は高齢化に向かっており、長年に渡って散髪をしてきた結果、多くの理美容師が、例えば、図8に示す鋏の開閉による振動が主因と思われる腱鞘炎をわずらい、離職してしまうことも深刻な問題となってきている。
【0003】
これは、一度、腱鞘炎をわずらうと、鋏で髪を切る時、わずかな開閉時の振動でも手に激痛が走るからである。また、腱鞘炎をわずらわなくとも、散髪中、理美容師は不自然な姿勢を強いられるため、鋏の重量が手首にかかることによって、肩や手首に大きな負担がかかり、肩こりや手首の慢性疲労及び関節炎を引き起こす原因となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、理美容師等が散髪を行う際の身体的負担を軽減し、腱鞘炎や肩こりなどの職業病をわずらうことを予防することができる指環リングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の指環リングを提供するものである。
【0006】
[1] 鋏の指環と使用者の指とのサイズ調整に用いる指環リングであって、前記指環リングが、前記指環に内接するとともに、前記指環リングの外周面及び/又は内周面に粘弾性体が密着されており、且つ前記粘弾性体が前記指環及び/又は前記指と密着する指環リング。
【0007】
[2] 指環リングが、粘弾性体から形成されたものであり、粘弾性体の表面、少なくとも粘弾性体の表面側面部に硬化樹脂層をコーティングした[1]に記載の指環リング。
【0008】
[3] 鋏の指環と使用者の指とのサイズ調整に用いる指環リングであって、前記指環リングが、粘弾性体から形成されたものであり、鋏の指柄部から指環にかけて、少なくとも指環を包囲するように装着し、且つ前記鋏からの脱着が自在である指環リング。
【発明の効果】
【0009】
本発明の指環リングは、理美容師等が散髪を行う際の身体的負担を軽減し、腱鞘炎や肩こりなどの職業病をわずらうことを予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の指環リングについて詳細に説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0011】
図1〜5は、本発明の指環リングの各例を示すものであり、図10は、鋏の典型例を示す正面図である。
【0012】
尚、典型的な鋏は、例えば、図10に示すように、動刃1と静刃2の二枚の刃が、ねじ3で連結されて一体をなす刃物であり、ねじ3を支点として開閉する構造を有するものであり、動刃1及び静刃2が、刃身14と、刃身14と一体化され、ねじ孔が形成された触面5と、指環6,8が形成された柄部7,9を有する掌体16から形成されたものである。
【0013】
本発明に係る指環リングは、例えば、図6に示すように、鋏の指環6,8と使用者の指とのサイズ調整に用いるものである。
【0014】
本発明の指環リングの一例は、例えば、図2(a)(b)に示すものがあり、図6に示すように、指環6,8にそれぞれ内接するとともに、指環リング50の外周面に粘弾性体60が密着されており、且つ粘弾性体60が指環6,8とそれぞれ密着するものである。
【0015】
このとき、図2(a)(b)に示す指環リング50は、図7(a)(b)に示すように、鋏の指環8と内接するように指環リング50を装着すると、指環8と指環リング50との間に粘弾性体60が挟み込まれた状態となる。
【0016】
また、上記指環リングは、図2(a)に示すように、指環リング50の外周面、即ち、溝52に粘弾性体60を密着させたもの、又は、図2(b)に示すように、溝52からフランジ54にかけて粘弾性体60を密着させたものであることが好ましい。
【0017】
更に、上記指環リングは、溝52(図2(a)参照)、又は、溝52及びフランジ54(図2(b)参照)に、粘弾性体60が密着している状態にある。その密着状態は、溝52又は溝52及びフランジ54に粘弾性体60が密着後、(例えば、接着剤等で)固定されていてもよいが、粘弾性体60が劣化した場合、取り替えられるように、例えば、溝52又は溝52及びフランジ54と相補形状を有するリング状の粘弾性体(図示せず)を着脱自在に密着させておくことがより好ましい。
【0018】
以上のことから、図2(a)(b)に示す指環リング50を装着した鋏は、指環6と指環8との接触部で発生する衝撃を粘弾性体60で緩和させるとともに、実使用中における指への違和感を軽減することができる(図6参照)。即ち、本発明の指環リングは、例えば、図10に示すような通常の鋏であっても、指環6及び/又は指環8に装着するだけで、上記に示す効果を容易に付与することができる。
【0019】
また、本発明の指環リングの他の例は、例えば、図3に示すものがあり、図6に示すように、指環6,8にそれぞれ内接するとともに、指環リング50の内周面に粘弾性体60が密着されており、且つ粘弾性体60が指と密着するものであってもよい。
【0020】
このとき、図3に示す指環リング50は、図7(c)に示すように、鋏の指環8と内接するように指環リング50を装着すると、指環リング50と指との間に粘弾性体60が挟み込まれた状態となる。
【0021】
また、図3に示す指環リングは、例えば、粘弾性体60を溝56の両端に配設されたストッパー57にはめ込んで固定したり、また、ストッパー57を用いることなく、粘弾性体60を溝56に接着してもよい(図示せず)が、粘弾性体60が劣化した場合、取り替えられるように、例えば、溝56と相補形状を有するリング状の粘弾性体(図示せず)を着脱自在に密着させておくことがより好ましい。更に、図4に示すように、溝56にガイドレール58を配設し、粘弾性体60にガイドレール58と相補形状のガイド溝59を配設することにより、実使用時における指環リングからの粘弾性体60の剥離を大幅に軽減することができる。
【0022】
以上のことから、図3に示す指環リングは、指環と指環との接触部で発生する衝撃を粘弾性体で緩和させるとともに、実使用中における指への違和感を軽減することができる。即ち、本発明の指環リングは、例えば、図10に示すような通常の鋏であっても、指環6及び/又は指環8に装着するだけで、上記に示す効果を容易に付与することができる。尚、図3に示す指環リングは、特に、粘弾性体60が指(図示せず)と直接密着するため、グリップ感を向上する効果も期待できる。
【0023】
更に、本発明の指環リングは、指環に内接するとともに、指環リングの内周面及び外周面に粘弾性体が密着されており、且つ粘弾性体が指環及び指と密着するもの、即ち、図5に示す構成であってもよい。
【0024】
尚、図1〜5に示す指環リングの基本骨格51は、例えば、リング状に薄く形成され、且つほぼ一定厚みを有するものであり、その断面形状は、指環とほぼ相補形状であり(図6参照)、具体的には、ほぼコ字形であり、その外周に溝52が現れるように形成されているとともに、溝52の両側には、指環に装着するためのフランジ54が配置されている(図1参照)。
【0025】
上記基本骨格51の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリアセタール、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネートやABS等のエンジニアリングプラスチック、超高分子量ポリエチレンやその他の超高分子量プラスチック等のポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることが好ましい(図1参照)。
【0026】
これにより、本発明の指環リングは、図1に示す円型のみならず、楕円型や卵形の指環であっても適度に密接させて装着することができるため、指環リングがガタつくことなく、且つ指環リングを介して指が指環に対して適度に挙動するため、指への負担を軽減することができる。
【0027】
更に、本発明に係る指環リングは、図1に示すように、基本骨格51と、粘弾性体60とを組み合わせたものであってもよいが、粘弾性体又は硬化樹脂で一体的に製造された指環リングであってもよい。これにより、本発明の指環リングは、実使用時における装着感や耐久性が向上するため好ましい。具体的には、図8(a)に示す形状の粘弾性体71を作製し、鋏の指環に内接・密着する状態を維持できるように、粘弾性体71の弾性率を調整したり、図8(b)に示すように、フランジ72の外表面に硬化樹脂層74をコーティングすることで、粘弾性体を主とした指環リングを得ることができる。
【0028】
次に、本発明に係る指環リングは、粘弾性体から形成されており、鋏の指柄部から指環にかけて、少なくとも指環を包囲するように装着され、且つ前記鋏からの脱着が自在であるものであってもよい。
【0029】
上記指環リングの実施態様の一例としては、図9に示すように、拇指柄7から拇指環6にかけて、拇指環6及び拇指柄7を包囲する指環リング80a、環指柄9から環指環8にかけて、環指柄9及び環指環8を包囲する指環リング80bを挙げることができる。指環リング80a及び指環リング80bは、鋏からの着脱を容易にするため、切欠部82と切欠部84が配設されている。
【0030】
上記指環リングは、鋏の指柄部から指環にかけて、少なくとも指環を包囲するように装着されているため、指環と指環との接触部で発生する衝撃をより緩和させることができるとともに、実使用中における指への違和感をより軽減することができる。更に、上記指環リングは、従来から使用されている様々な鋏に応じてオーダーメイドで容易に作製することができる。
【0031】
本発明で用いる粘弾性体は、弾性と粘性とを有するものであり、短い観測時間に対しては弾性的固体のように、長い観測時間に対しては粘性流体のようにふるまうものである。このため、本発明に粘弾性体を用いた場合、防振・緩衝に必要なたわみ量を十分に確保することができるとともに、一部分(本発明では、特に手首への負担)に衝撃エネルギー等の負荷が集中することを防ぐことができる。また、粘弾性体は、通常、衝撃エネルギー吸収や、防振、制振、消音、防音、圧力分散に優れた特性を有する。
【0032】
また、本発明で用いる粘弾性体は、特に限定されないが、例えば、エラストマー(特に、スチレン系エラストマー)、エポキシ樹脂、軟質ウレタン、シリコンゴム、更に詳細には、ポリウレタン樹脂を主成分とし、マシュマロのような特異な柔らかさを持ったゲル状物質(例えば、商品名:EXPER−U[イイダ産業株式会社製])、シリコンを主原料とする非常に柔らかいゲル状素材(例えば、商品名:アルファゲル[株式会社ジェルテック製])、分子構造の設計段階で特別の工夫が施されたポリオールとMDIからなるエーテル系ポリウレタン(例えば、商品名:ソルボ[三進興産株式会社製])を好適に用いることができる。
【0033】
尚、本発明で用いる粘弾性体の肉厚tは、特に限定されないが、好ましくは5〜10mm、より好ましくは0.15〜5mm、更に好ましくは0.05〜2.5mmである(図7(a)〜(c)参照)。
【0034】
また、本発明で用いる粘弾性体は、針入度(1/10mm)が55〜150、圧縮永久歪みが少なくとも20%以下であることが好ましい。これは、上記の肉厚tで、指環6と指環8との接触部で発生する衝撃を十分に緩和させるために必要であるからである。尚、針入度は、JIS K2207の規格に準拠された試験により評価されたものであり、また、圧縮永久歪みは、JIS K6262の規格に準拠された試験により評価されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の指環リングは、特に、理美容師の散髪に使用する鋏において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の指環リングの一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す指環リングの要部断面図の一例を示すものであり、(a)は溝に粘弾性体を密着させた場合、(b)は溝及びフランジに粘弾性体を密着させた場合である。
【図3】図1に示す指環リングの他の例を示す要部断面図である。
【図4】図3に示す指環リングのA部拡大断面図である。
【図5】図1に示す指環リングの更に他の例を示す要部断面図である。
【図6】本発明の指環リングの実施態様の一例を示す要部正面図である。
【図7】(a)は図2(a)の指環リング装着時における図6のA−A断面図であり、(b)は図2(b)の指環リング装着時における図6のA−A断面図、(c)は図3の指環リング装着時における図6のA−A断面図である。
【図8】本発明の指環リングの更に他の例を示すものであり、(a)は概略斜視図、(b)は(a)のフランジの外表面に硬化樹脂層をコーティングした状態を示す要部断面図である。
【図9】本発明の指環リングの実施態様の一例を示す要部正面透視図である。
【図10】鋏の典型例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…動刃、2…静刃、3…ネジ、5…触面、6…指環(拇指環)、7…柄部(拇指柄)、8…指環(環指環)、9…柄部(環指柄)、12…上点、14…刃身、16…掌部、50…指環リング、51…基本骨格、52…溝、54…フランジ、56…溝、57…ストッパー、58…ガイドライン、59…ガイド溝、60…粘弾性体、70…指環リング、71…溝、72…フランジ、74…硬化樹脂層、80a,80b…指環リング、82,84…切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋏の指環と使用者の指とのサイズ調整に用いる指環リングであって、前記指環リングが、前記指環に内接するとともに、前記指環リングの外周面及び/又は内周面に粘弾性体が密着されており、且つ前記粘弾性体が前記指環及び/又は前記指と密着する指環リング。
【請求項2】
前記指環リングが、前記粘弾性体から形成されたものであり、前記粘弾性体の表面、少なくとも前記粘弾性体の表面側面部に硬化樹脂層をコーティングした請求項1に記載の指環リング。
【請求項3】
鋏の指環と使用者の指とのサイズ調整に用いる指環リングであって、前記指環リングが、粘弾性体から形成されたものであり、鋏の指柄部から指環にかけて、少なくとも指環を包囲するように装着し、且つ前記鋏からの脱着が自在である指環リング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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