説明

指示テープ検出装置

【課題】印刷物されたウェブの巻取体において特定の箇所を側面から視認できるように挿入された指示テープを、高信頼性かつ非接触で自動検出するための指示テープ検出装置を提供する。
【解決手段】送給するウェブの巻取体の側面を照明する照明手段と、前記巻取体の側面を撮像し撮像画像を出力する撮像手段と、前記撮像画像における前記巻取体の外周位置と前記巻取体に挿入された指示テープの挿入位置との距離である残距離を抽出する残距離抽出手段と、前記残距離に応じた操作信号を出力する操作信号出力手段と、を具備するようにした指示テープ検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷の技術分野に属する。特に、印刷物されたウェブの巻取体において特定の箇所を側面から視認できるように挿入された指示テープを自動検出するための指示テープ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブの加工工程においてはそのウェブにおける特定位置を指示する指示テープを加工装置の巻取部において挿入することが行なわれる。指示テープは、そのウェブの巻取体の外側から指示された位置を視認可能とするために、一部が巻取体の外側に突出するように挿入される。指示テープを挿入する特定位置とは、多くの場合において、ウェブにおける製品となる正常部分と製品とならない欠陥部分とを区別するための位置であり、たとえば、正常部分と欠陥部分の境界の近くに挿入される。欠陥種類、発生状況、等を区別するために、複数種類の指示テープを選択して適用することもある。
このように、指示テープを挿入するのは、巻取体に存在する欠陥部分を後工程において除去するためである。欠陥部分がウェブの全幅において発生し、それが継続するときには、加工装置を停止して発生原因に対処するとともに、その工程で欠陥部分を除去することが行なわれる。しかし、欠陥がウェブの幅方向の一部において発生し、非継続(一過性)であるときには、後工程で欠陥部分を除去することが、全生産過程における生産性を考慮すると、有利である。
【0003】
ウェブにおける欠陥部分を除去する代表的な工程の1つとしてスリット工程を挙げることができる。スリット工程は、長尺広幅の巻取体(大巻)を縦方向(走行方向)に切断(スリット)して狭幅とするとともに、所定長単位で横方向(走行方向に対して直角方向)に切断し、短尺狭幅の巻取体(小巻)を生産する工程である。小巻においては欠陥部分を除去して混入を避けることが容易であるから、スリット工程において欠陥部分を除去することにより正常部分の歩留まりを向上させることができる。
スリット工程の作業者は、スリッターの給紙部に装着された巻取体に挿入されている指示テープの位置を目視により確認しながらスリッターを操作する。そして、巻取体から指示テープが挿入されたウェブの部分が巻き出される直前においてスリッターを停止させる。そして、ウェブの欠陥部分を判別し、ウェブの欠陥部分が小巻に混入しないように対処を行なう。対処としては、小巻に巻き取られる前に欠陥部分を除去する方法と、欠陥部分を小巻に巻き取った後に欠陥部分を除去するか、またはその小巻を廃棄することが行なわれる。このように目視によって巻取体における指示テープの位置を確認する方法においては、作業者はスリッターを操作して小巻を製造する作業と、指示テープの位置を目視確認する作業とを同時に行なわなければならない。そのために、いずれかの作業が疎かになることが避けられず、生産性の阻害、品質事故、等を誘引するという問題があった。
【0004】
そこで、指示テープの位置を自動で検出する方法、装置についての提案がある。たとえば、前工程において巻取体単位で収集した欠陥情報を後工程に伝達することにより後工程でその巻取体を使用するときに欠陥位置が判るようにする発明が提案されている(特許文献1)。しかし、この発明においては、巻取体と欠陥情報とは全く別個に取扱われるため、巻取体と個別情報との対応が完全にとれている保証がないという問題がある。たとえば、巻取体は保管中にサンプリングが行なわれることがある。また、加工装置にウェブを通すときには経路長に相当する巻取体のウェブの長さ程度の誤差が、そのときの取扱いによって生じる。
また、ウェブに添付された指示テープをウェブの巻取体において検出する装置の提案がある。たとえば、巻取体の表面までの距離と巻取体の縁部から突出しウェブに添付された指示テープまでの距離とを測定し、その2つの距離の間に存在するウェブの残留値を演算し、残留値が所定値よりも小さくなったときに信号を出力する発明が提案されている(特許文献2)。しかし、指示テープの巻取体の縁部から突出した部分の全長が短い上にバラツキがあるため、巻取体の縁部を指示テープと誤検出し易いという問題がある。
また、巻取体の側面を検出領域として指示テープの有無を検出する検出器と、検出領域が常に側面における外周領域となるように、巻き解きが進行中の巻取体の巻径の変化に対応して変位させながら、検出器を支持する支持体とを具備する発明が提案されている(特許文献3)。しかし、支持体は巻取体の表面に対しコロを接触させる方式であるため、ウェブに傷を付けることが避けられないという問題がある。
【特許文献1】特開平10−193576
【特許文献2】特開平8−157118
【特許文献3】特開2006−44872
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、印刷物されたウェブの巻取体において特定の箇所を側面から視認できるように挿入された指示テープを、高信頼性かつ非接触で自動検出するための指示テープ検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る指示テープ検出装置は、送給するウェブの巻取体の側面を照明する照明手段と、前記巻取体の側面を撮像し撮像画像を出力する撮像手段と、前記撮像画像における前記巻取体の外周位置と前記巻取体に挿入された指示テープの挿入位置との距離である残距離を抽出する残距離抽出手段と、前記残距離に応じた操作信号を出力する操作信号出力手段と、を具備するようにしたものである。
また本発明の請求項2に係る指示テープ検出装置は、請求項1に係る指示テープ検出装置において、前記残距離抽出手段は、前記撮像画像における前記巻取体の回転軸から外周位置に延びる直線上の画素の画素値からなるプロファイルを演算し、そのプロファイルを2値化することにより前記巻取体の外周位置と前記巻取体に挿入された指示テープの挿入位置を判別し、前記残距離を抽出するようにしたものである。
また本発明の請求項3に係る指示テープ検出装置は、請求項3に係る指示テープ検出装置において、前記プロファイルは角度の異なる複数の前記直線上の複数のプロファイルであって、その複数のプロファイルから抽出された複数の前記残距離の中の最小値として前記残距離を抽出するようにしたものである。
また本発明の請求項4に係る指示テープ検出装置は、請求項2または3のいずれかに係る指示テープ検出装置において、前記2値化は前記巻取体の側面を明部とし、前記巻取体の外側と前記指示テープを暗部とする閾値により行なわれる2値化であるようにしたものである。
また本発明の請求項5に係る指示テープ検出装置は、請求項1〜4のいずれかに係る指示テープ検出装置において、前記操作信号出力手段は前記残距離が所定値よりも小さいときに前記ウェブの送給を停止する操作信号を出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る指示テープ検出装置によれば、照明手段により送給するウェブの巻取体の側面が照明され、撮像手段により巻取体の側面が撮像されて撮像画像が出力され、残距離抽出手段により撮像画像における巻取体の外周位置と巻取体に挿入された指示テープの挿入位置との距離である残距離が抽出され、操作信号出力手段により残距離に応じた操作信号が出力される。したがって、印刷物されたウェブの巻取体において特定の箇所を側面から視認できるように挿入された指示テープを、高信頼性かつ非接触で自動検出するための指示テープ検出装置が提供される。
また本発明の請求項2に係る指示テープ検出装置によれば、請求項1に係る指示テープ検出装置において、残距離抽出手段は、撮像画像における巻取体の回転軸から外周位置に延びる直線上の画素の画素値からなるプロファイルを演算し、そのプロファイルを2値化することにより巻取体の外周位置と巻取体に挿入された指示テープの挿入位置を判別し、残距離を抽出する。すなわち、二次元の画像データはプロファイルを演算することにより一次元のデータとなり処理量を少なくすることができる。したがって、指示テープを検出する処理が高速化される。
また本発明の請求項3に係る指示テープ検出装置によれば、請求項3に係る指示テープ検出装置において、プロファイルは角度の異なる複数の直線上の複数のプロファイルであって、その複数のプロファイルから抽出された複数の残距離の中の最小値として残距離を抽出する。すなわち、1つの撮像画像に基づいて正確な残距離が演算される。したがって、指示テープを検出する処理が高速化されるとともに高精度化される。
また本発明の請求項4に係る指示テープ検出装置によれば、請求項2または3に係る指示テープ検出装置において、2値化は巻取体の側面を明部とし、巻取体の外側と指示テープを暗部とする閾値により行なわれる2値化である。すなわち、乱反射面である巻取体の側面は容易に明部とすることができる。したがって、照明手段と撮像手段との配置の自由度が大きく、かつ2値化という簡明な処理で指示テープを検出することができる。
また本発明の請求項5に係る指示テープ検出装置によれば、請求項1〜4のいずれかに係る指示テープ検出装置において、操作信号出力手段は残距離が所定値よりも小さいときにウェブの送給を停止する操作信号を出力するようにしたものである。したがって、ウェブの送給を自動停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明の指示テープ検出装置における構成の一例を図1、図2に示す。図1、図2において、1はカメラ、2はライト、3はデータ処理装置、4は入出力装置、31はカメラインタフェース、32は記憶部、33は演算部、34は信号入出力部、100はスリッター、200は巻取体、300は指示テープである。
スリッター100は長尺広幅のウェブの巻取体200から複数の短尺狭幅のウェブの小巻を製造する装置である。スリッター100の給紙部(図示せず)にはウェブの巻取体200が装着されている。給紙部において巻取体100から巻き解かれたウェブはスリッター100のスリット部(図示せず)に送給される。そのスリット部において、走行する広幅のウェブはスリット刃を通過することによりスリット(走行方向の切断)され複数の狭幅のウェブとなる。それら複数の狭幅のウェブの各々はスリッター100の巻取部において各々の巻取体(小巻)を形成する。
【0009】
巻取体200には、スリット工程の前工程においてウェブの特定の位置を指示するための指示テープ300が挿入されている。指示テープ300は、その一部が巻取体200の外側に突出するように挿入される。したがって、そのウェブの巻取体200の外側から指示された位置を視認可能である。本発明においては、巻取体200の側面の撮像画像において指示テープ300を明瞭に撮像可能とするため、図2に示すように、指示テープ300を巻取体200の巻芯方向へ折り曲げておくと好適である。本発明の指示テープ検出装置は巻取体200の側面を撮像し、その撮像画像に基づいて巻取体200における指示テープ300の位置を検出し続ける。そして、指示テープ300が巻取体200から巻き出される直前にそのことを通知する信号を出力する。この信号を入力してスリッター100は警報を発生する、ウェブの送給を停止する、等の処理を行なうことができる。したがって、スリッター100の作業者は指示テープの位置を目視確認する作業から開放され、スリッターを操作して小巻を製造する作業に集中することができる。
【0010】
カメラ1はスリッター100の給紙部において送給されるウェブの巻取体200の側面を撮像し撮像画像を出力する撮像手段である。カメラ1としては、CCD(charge coupled device)、MOS(metal oxide semiconductor)等のイメージセンサ、および、その駆動回路、増幅器、結像光学系、等から構成されるカメラを使用することができる。
カメラ1における撮像領域は、巻取体200の側面における全面とする必要性はない。撮像領域は、図1、図2に一例を示すように、ウェブが巻き取られている巻取体200の巻芯位置から巻取体200の外周位置を含んでいれば良い。すなわち、巻取体200は回転するから、複数の撮像画像を総合した結果としてウェブの巻取体200の側面の全体が撮像されるように撮像領域を設定すればよい。
【0011】
ライト2は巻取体200の側面を照明する照明手段である。ライト2としては、LED(light emitting diode)、ハロゲンランプ、蛍光灯、等を光源とするライトを使用することができる。ライト2は撮像の周期において輝度が変化しないように、直流点灯、高周波点灯、等を行なうことのできる電源により点灯すると好適である。
ライト2における照明領域は、カメラ1における撮像領域と一致させるか、または撮像領域を包含するより広い範囲とする。ライト2による照明は、撮像画像において、巻取体200の側面を明部とし、巻取体200の外側と指示テープ300を暗部とするように照明する。巻取体200の側面はウェブのエッジを重ねた部分であって乱反射する面となっている。したがって、巻取体200の側面は、ライト2の広範囲の照射角度において明部となる。また、巻取体200の外側は空間であるから、近くに光を発するものや反射するものを存在させなければ必然的に暗部となる。また、指示テープ300は巻取体200の側面ほどではないにしても、一般的には紙が使用され乱反射する面となっている。巻取体200の側面に対して指示テープ300を暗部とするように、ライト2の照明位置、照明角度の調節が行なわれる。なお、指示テープ300を巻取体200の巻芯方向へ折り曲げておく(図2参照)、指示テープ300の材料を光吸収性の着色された材料とする、等を併用することができる。
【0012】
データ処理装置3は撮像画像を入力し、その撮像画像に基づいて残距離を抽出する演算を行い、その残距離に応じた操作信号を出力する、等のデータ処理を行なう装置である。データ処理装置3としては、PLC(programable logic controler)、パーソナルコンピュータ、画像入力処理装置(カメラと処理部がセットの装置)、等のデータ処理装置を使用することができる。
入出力装置4はデータ処理装置3の入出力装置であり、たとえば、ディスプレイ、キーボード、マウス、操作パネル、等である。
【0013】
データ処理装置3は、図1に示すように、さらに詳細な構成を有する。
カメラインターフェース部31は、データ処理装置3においてカメラ1が出力する信号としての撮像画像を入力し、メモリ(記憶部32、等)に書き込む処理を行なう。また、カメラ1を制御する信号の出力、カメラ1の状態を示す信号の入力、等のカメラ1とデータ処理装置3との撮像画像以外のデータの入出力処理を行なう。
記憶部32は、データ処理装置3においてデータを記憶する部分である。記憶部32は、たとえば、主メモリ、ハードディスク、等である。記憶部32には、指示テープ検出装置の動作を決定する設定値(走査線、閾値、等)、撮像画像とそれを処理した画像、画像演算によりプロファイル、巻取体200の外周位置と指示テープ300の挿入位置との距離、その距離の最小値である最小距離(残距離)、等のデータが記憶される。
演算部33は、データ処理装置3においてデータを演算する部分である。演算部33は、たとえば、撮像画像に対するシェーディング補正等の前処理、プロファイル演算の対称となる走査線選択、巻取体200の側面と指示テープを判別する等の特徴抽出、残距離である最小距離抽出、残距離に基づく操作出力を行なうための対応処理、等の演算が行なわれる。
信号入出力部34は、データ処理装置3において、対応出力等の信号出力を行なう。また、スリッター100等の外部装置からの信号入力を行なう部分である。
【0014】
以上、構成について説明した。次に、本発明の指示テープ検出装置における動作について説明する。本発明の指示テープ検出装置における動作についての説明図を図3に示す。巻取体200の側面の撮像画像においては、図3に示すように、巻取体200の外側の部分、巻取体の側面の部分、指示テープの部分の3つの部分が存在する。データ処理装置3は、その撮像画像に基づいてそれらの部分を判別することによって、図3において矢印Aで示す距離、すなわち残距離を演算する。この残距離が0(ゼロ)に近くなったときは、「もう直ぐ指示テープが巻き出される」のであるから、本発明の指示テープ検出装置は、この残距離に対応する信号出力、たとえば巻取体200からのウェブの供給を停止する信号出力を行なう。
【0015】
本発明の指示テープ検出装置における処理の過程の概略を図4に示す。
スリッター100の供給部において、指示テープが挿入された巻取体200からウェブが供給されている状態であるものとする。
まず、図4のステップS1において、カメラ1は一定周期で撮像を行っており撮像画像を出力する。カメラインターフェース31はその撮像画像を入力する処理を行ない記憶部32に記憶する。演算部33は撮像画像に基づいて距離A(残距離)を演算する。
次に、ステップS2において、データ処理装置3は距離A(残距離)を設定した閾値と比較する。距離A(残距離)が閾値よりも大きいときにはステップS1に戻って以降の過程を繰返す。距離A(残距離)が閾値以下のときにはステップS3に進む。
次に、ステップS3において、演算部33は巻取体200からのウェブの供給を停止する操作信号を信号出力部34を介して出力する。
スリッター100はその停止する操作信号を入力して、供給部におけるウェブの供給を停止する。
【0016】
本発明の指示テープ検出装置における処理の過程の詳細を図5に示す。
まず、図5のステップS101(撮像)において、カメラ1により一定周期で撮像が行なわれる。カメラ1が信号として出力する撮像画像はカメラインターフェース31によってデータ処理装置3に取り込まれデジタルデータとして記憶部32に記憶される。
次に、ステップS102(前処理)において、記憶部32に記憶された撮像画像に対して、演算部33はシェーディング補正、ノイズ除去、等の前処理を行い、その前処理を行なった撮像画像を記憶部32に記憶する。撮像画像には、照明ムラ、入射光線の角度によるレンズの透過ムラ、センサの受光素子の感度ムラ、等が影響するシェーディングと呼ばれる不均一な背景画像が含まれている。シェーディング補正は、その背景画像を除去する処理である。ノイズ除去は撮像画像に含まれているノイズ成分を除去する処理であり、多くの場合において平滑化フィルターを適用する処理である。なお、この前処理は、撮像画像に含まれる背景画像、ノイズ成分、等が少ないときには省略することができる。
【0017】
次に、ステップS103(走査線選択)において、記憶部32に記憶された前処理済の撮像画像に対して、演算部33は走査線を選択する処理を行なう。走査線は演算部33がプロファイルを演算する撮像画像の範囲を示す直線である。本発明の指示テープ検出装置において撮像画像から距離A(残距離)を演算する過程の説明図を図6に示す。図6(A)には、撮像画像と走査線との位置関係が示されている。走査線は、図6に示す一例においては、走査線1〜5まで5つが存在する(設定されている)。各走査線は、巻取体200の回転軸からほぼ放射状に延長された直線となっている。図6(A)に示す撮像画像においては、走査線1は指示テープ300上には掛かっていない。走査線2は指示テープ300の左側に僅かに掛かっている。走査線3は指示テープ300のほぼ中央に掛かっている。走査線4は指示テープ300右側に僅かに掛かっている。走査線5は指示テープ300上には掛かっていない。カメラ1の撮像周期は巻取体200の回転周期に対して1桁程度短く非同期である。したがって、指示テープ300のほぼ中央に掛かる走査線は走査線3とは限らず、撮像画像によって異なる。
【0018】
次に、ステップS104(プロファイル演算)において、演算部33は撮像画像における選択された走査線上の画素の画素値を要素とするプロファイルを演算する。二次元(x、y)に配列する画素とその画素値(z)からなる三次元(x,y,z)の曲面として画像(撮像画像)をみなすことができる。その曲面と、z軸に対して平行な平面との交点(交線)は曲線となる。プロファイルとはその曲線のことであり、走査線はxy平面とその平面との交点(交線)のことである。デジタルデータであるから、その曲線は離散的な走査線上の離散的な画素値の集合となる。実際には、撮像画像における画素の位置は、走査線と一致しないことがほとんどである。したがって、走査線上に設定した画素の近傍に位置する撮像画像の画素の画素値を用いて周知の補完法を適用し、走査線上の画素の画素値を演算する。図6(B)にはプロファイルの一例(走査線3のプロファイル)が示されている。プロファイルにおいて巻取体200の外側は暗部(画素値が小)となり、巻取体200の側面は明部(画素値が大)となり、指示テープ300は暗部(画素値が小)となっている。
【0019】
次に、ステップS105(外周抽出)において、演算部33はプロファイルを所定の閾値によって2値化する。図6(B)に一例を示すプロファイルは2値化により図6(C)に一例を示す2値化プロファイルとなる。2値化プロファイルにおいては、図6(B)に示すように、暗部と明部の境界が明確となる。すなわち、演算部33は、巻取体200の外側の領域の「0(low )」と、巻取体200の側面の領域の「1(high)」との境界として巻取体200の外周を抽出する。
次に、ステップS106(テープ抽出)において、演算部33は、巻取体200の側面の領域の「1(high)」と、指示テープ300の領域の「0(low )」と、の境界として指示テープ300の挿入位置を抽出する。図2に示すように、指示テープ300を巻取体200の巻芯方向へ折り曲げておいたときには、挿入位置は指示テープ300の領域における巻取体200の外周側の境界である。なお、選択した走査線が指示テープ300に掛かる走査線でないときには指示テープ300の挿入位置が抽出されることがない。そのときには、演算部33は、外周位置から離れており正常な挿入位置として抽出されない位置、たとえば巻芯の位置等を挿入位置として設定する。
【0020】
次に、ステップS107(距離演算)において、演算部33は、外周位置と挿入位置との差として距離A、すなわち残距離を演算する。
次に、ステップS108(距離記憶)において、演算部33は、選択した走査線と対応付を行なって残距離を記憶部32に記憶する。
次に、ステップS109(全走査線終了?)において、演算部33は、設定されている走査線のすべてについて残距離を演算したか否かを判定する。このとき、記憶部32に記憶されている選択した走査線と対応付を行なった残距離が参照される。すべての走査線に対応する残距離が演算されていないときにはステップS101に戻って前述した以降のステップを繰返す。すべての走査線に対応する残距離が演算されているときにはステップS110に進む。
【0021】
次に、ステップS110(最小残距離抽出)において、演算部33は、記憶部32に記憶されている残距離の中から最小値を有する残距離である最小残距離を抽出する。この最小残距離が真の残距離となる。その他の残距離は演算過程における暫定的な残距離である。
次に、ステップS111(最小残距離対応出力)において、演算部33は、残距離に対応して操作信号を出力する。たとえば、閾値A<閾値Bである閾値Aと閾値Bが設定されているときに、閾値B<残距離のときには操作信号を出力しない。閾値A<残距離<閾値Bのときには1回だけ警報を鳴らす操作信号を出力する。残距離<閾値Aのときには、警報を繰返し所定時間後にスリッターの給紙部におけるウェブの供給を停止する操作信号を出力する。
次に、ステップS112(検出終了)において、指示テープ検出の処理を継続するか否かを判定する。操作パネルより終了の指示入力が行われている等により継続しないときには終了とする。継続するときには、演算部33は、残距離、撮像画像、等の今回の指示テープ検出処理で生成し記憶部32に記憶されているデータを消去する処理を行なう。そして、ステップS101(撮像)に戻って、前述した以降のステップを繰返す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の指示テープ検出装置における構成の一例を示す図(その1)である。
【図2】本発明の指示テープ検出装置における構成の一例を示す図(その2)である。
【図3】本発明の指示テープ検出装置における動作についての説明図である。
【図4】本発明の指示テープ検出装置における処理の過程の概略を示す図である。
【図5】本発明の指示テープ検出装置における処理の過程の詳細を示す図である。
【図6】本発明の指示テープ検出装置において撮像画像から距離A(残距離)を演算する過程の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 カメラ
2 ライ
3 データ処理装置
4 入出力装置
31 カメラインタフェース
32 記憶部
33 演算部
34 信号入出力部
100 スリッター
200 巻取体
300 指示テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送給するウェブの巻取体の側面を照明する照明手段と、
前記巻取体の側面を撮像し撮像画像を出力する撮像手段と、
前記撮像画像における前記巻取体の外周位置と前記巻取体に挿入された指示テープの挿入位置との距離である残距離を抽出する残距離抽出手段と、
前記残距離に応じた操作信号を出力する操作信号出力手段と、
を具備することを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の指示テープ検出装置において、前記残距離抽出手段は、前記撮像画像における前記巻取体の回転軸から外周位置に延びる直線上の画素の画素値からなるプロファイルを演算し、そのプロファイルを2値化することにより前記巻取体の外周位置と前記巻取体に挿入された指示テープの挿入位置を判別し、前記残距離を抽出することを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の指示テープ検出装置において、前記プロファイルは角度の異なる複数の前記直線上の複数のプロファイルであって、その複数のプロファイルから抽出された複数の前記残距離の中の最小値として前記残距離を抽出することを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の指示テープ検出装置において、前記2値化は前記巻取体の側面を明部とし、前記巻取体の外側と前記指示テープを暗部とする閾値により行なわれる2値化であることを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の指示テープ検出装置において、前記操作信号出力手段は前記残距離が所定値よりも小さいときに前記ウェブの送給を停止する操作信号を出力することを特徴とする指示テープ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−222434(P2008−222434A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67908(P2007−67908)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】