説明

指紋画像撮像装置

【課題】 指紋画像撮像装置において、安定かつコントラストの向上した指紋画像を得る。
【解決手段】 この発明の指紋画像撮像装置は、撮像対象となる指紋11を有する指先部1を被検体とし、被検体にこれを透過し得る光30を照射する光源3と、指紋11の表面が非接触の状態で被検体を保持し得る被検体保持部2と、被検体を透過する光源3からの光30を撮像して指紋11の表面近傍の内部組織の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段5と、被検体を透過する光源3からの光30を撮像手段5に結像させる光学系4とを備え、光源3からの光30は指先部11の複数の領域を照射する構成とし、かつ光学系4の光軸400に直交する面に指先部1の腹側を被検体保持部2に当接させた位置を基準に、被検体の指先部1の先端側がその反対側に比して光学系4から離れるように所定の角度傾いた状態となるように、光学系4を配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋画像撮像装置に関するものであり、特に、指紋の皮膚表面の湿り気の状態に拘わらず、さらには指紋の凹凸が不明瞭な場合にも、安定した指紋画像を得ることができる指紋画像撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の指紋画像撮像装置においては、指先部の指紋部分が非接触状態で指を保持し、指先部の甲側(背側)から光を照射し、指内部を透過してきた光を検出する。指先部を透過する光の透過率は、指紋の凸部に比べて凹部において高いので、指紋の凸部に比べて凹部が明るい画像が得られる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003-85538号公報(第3−4頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の指紋画像撮像装置は、以上のように構成されており、指紋の皮膚表面の湿り気の状態に拘わらず、さらには指紋の凹凸が不明瞭な場合にも、安定した指紋画像を得ることができるが、指紋画像のコントラストの更なる向上が望まれる。また、指先部の設置位置がずれると安定した指紋画像が得られないといった問題があった。
【0005】
本発明は、コントラストの向上した指紋画像を、安定して得ることができる指紋画像撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る指紋画像撮像装置は、撮像対象となる指紋を有する指先部を被検体とし、上記被検体にこれを透過し得る光を照射する光源と、上記指紋の表面が非接触の状態で上記被検体を保持し得る被検体保持部と、上記被検体を透過する上記光源からの光を撮像して上記指紋の表面近傍の内部組織の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段と、上記被検体を透過する上記光源からの光を上記撮像手段に結像させる光学系とを備え、上記光源からの光は上記指先部の複数の領域を照射する構成とし、かつ上記光学系の光軸に直交する面に上記指先部の腹側を上記被検体保持部に当接させた位置を基準に、上記被検体の指先部先端側がその反対側に比して上記光学系から離れるように所定の角度傾いた状態となるように、上記光学系を配置したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る指紋画像撮像装置によれば、撮像対象となる指紋を有する指先部を被検体とし、上記被検体にこれを透過し得る光を照射する光源と、上記指紋の表面が非接触の状態で上記被検体を保持し得る被検体保持部と、上記被検体を透過する上記光源からの光を撮像して上記指紋の表面近傍の内部組織の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得るので、指紋の皮膚表面の湿り気の状態に拘わらず、さらには指紋の凹凸が不明瞭な場合にも、安定した指紋画像を得ることができる。
しかも、上記被検体を透過する上記光源からの光を上記撮像手段に結像させる光学系を備え、上記光源からの光は上記指先部の複数の領域を照射する構成とし、かつ上記光学系の光軸に直交する面に上記指先部の腹側を上記被検体保持部に当接させた位置を基準に、上記被検体の指先部先端側がその反対側に比して上記光学系から離れるように所定の角度傾いた状態となるように、上記光学系を配置したので、コントラストの向上した指紋画像を、安定して得ることができる。
したがって、より正確な指紋情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
本発明の発明者らは、撮像対象となる指紋を有する指先部を被検体とし、上記被検体を透過し得る光源からの光を上記被検体に照射し、光学系で上記被検体を透過する上記光源からの光を撮像手段に結像させ、撮像手段で上記被検体を透過する上記光源からの光を撮像して上記指紋の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得るのに、上記光を照射する位置が、指紋画像のシェーディングに影響を及ぼすことを発見し、先の出願(特願2004−290575号明細書)において、主に爪に照射すると爪先側は飽和し根元側は暗くなり、爪の生え際近くの略爪以外の部分に照射すると指紋画像の全体のシェーディングが緩やかになり、第1関節付近に照射すると根元側は明るくなり爪先側が暗くなることを開示した。
発明者らは、骨が第2の光源となり、骨に当たった光は広い角度に散乱して指先部分を比較的均一な強度で指紋部分まで透過できるが、指先の骨が爪の途中までしかないので、光源からの光を主に爪に当てると、骨に当たらなかった光がそのまま透過してシェーディングがきつくなるのではないかと推測している。
これにより、爪の生え際近くの略爪以外の部分に光を照射することで、シェーディングが緩和された指紋画像を撮像することができ、主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲での明度の適正化に貢献することができると考えた。
【0009】
本実施の形態1は、上記特性に着目して構成された指紋画像撮像装置に対し、光源からの光が指先部の複数の領域を照射する構成としたものである。
【0010】
なお、本発明で言う、個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲とは、例えば、指の第1関節から指先までの領域、あるいは第1関節部分も含めた領域や指の側面の指紋を含んだ領域などを指す。
【0011】
図1〜図3は本発明の実施の形態1による指紋画像撮像装置を説明するための図であり、より具体的には、図1は指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図、図2は指先部近傍を撮像手段側(腹側)から見た様子を示す下面図である。図3は指先部近傍を背側(爪側)から見た様子を示す上面図である。
【0012】
本実施の形態による指紋画像撮像装置は、撮像対象となる指紋11を有する指先部1を被検体とし、被検体1を透過し得る光30を、その照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分を、複数の照射スポットで照射する光源3と、
被検体1を透過する光源3からの光30を撮像して指紋11の凸部が暗く凹部が明るい、指紋11に対応する指紋画像を得る撮像手段5と、
被検体1を透過する光源3からの光を撮像手段5に結像させる光学系4と、
撮像手段5から出力された指紋画像を画像処理して指紋情報を得るとともに、この指紋情報に基づき個人を識別する信号処理部6とを備えている。
さらに、光の照射条件(輝度および照射領域16)および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整する手段(明度判定部66、光源駆動回路32、ゲイン調整回路55)と、
同一の上記被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を重畳または部分的に貼りあわせる手段(画像処理部62)とを備えている。
【0013】
本実施の形態では、指先部1を保持し得る被検体保持部(図1では、指先部1を撮像対象となる指紋11の表面が非接触の状態で保持し得る開口付き被検体保持部を示している。)2を備えている。開口付き被検体保持部2の開口部分は、撮像手段5で撮像する範囲である観察面100を含むように設けられている。
【0014】
被検体である指先部1は、その腹側に撮像対象となる指紋11を有しており、指紋1は凸部(山部)と凹部(谷部)からなる凹凸パターンを有している。なお、本発明では、指先部1とは、指の先端部分のみを言うのではなく、指の先端部分から第1関節、あるいは第2関節の辺りまでを言う。
【0015】
指先部1を透過し得る光30を指先部1に照射する光源3は、指先部1の指紋11と反対側である背側(爪側)から腹側(指紋側)へ光が進行するように設けられる。光源3としては、主波長が赤色光〜近赤外光領域である光、すなわち、赤色光〜近赤外光領域にある何れかの波長(単色)の投射光、赤色光〜近赤外光領域に亘る光が混合された投射光、あるいは赤色光〜近赤外光領域の光(単色の場合も混合されている場合もある。)を主波長として含む投射光を出射するものが用いられ、例えばレーザー、発光ダイオード、ランプ光源が用いられる。赤色光〜近赤外光領域の光は、被検体1である生体に対する光の透過率が高いので好ましく用いられるが、主波長が600nm〜1400nmの範囲のものがより好ましい。さらに、血管中のヘモグロビンの光吸収特性は660nm前後で最小となるので、血管が指紋画像に及ぼす影響を低減するために、主波長が630nm〜780nmの領域の光がさらに好ましい。
また、外部からの光の影響を受けないように、指先部1および光源3を遮光体によって覆ってもよい。
【0016】
光源3は1つ以上の例えばレーザー、発光ダイオード、ランプ光源から構成されており、同時に任意の数だけ点灯させることができる。指先部1を開口付き被検体保持部2で保持し、観察面100が開口付き被検体保持部2の開口内に納まる位置にある時に、例えば図3に示すように指先部の所定の領域16を照射できるように配置する。また、光源駆動回路32により、点灯させる素子を制御することで、被検体1へ照射する光30の照射条件(輝度および照射領域16)を制御することができる構成となっている。例えば、光源3が複数の発光素子で構成されている場合、それぞれの素子が、あるいは同一位置(領域)を照射できるように構成した素子の小グループが、指先1の異なる位置(領域)を照射するように設置する。さらに、照射したい位置(領域)に応じて点灯させる素子を制御する等、被検体1における照射領域16が複数の領域となるように構成する。照射領域16を制御するとは、位置の制御、領域の大きさ、領域の数を個別もしくは組み合わせて制御することをいう。領域の個数を制御する場合は、光源3を複数個数設けてもよい。
また、光源3が複数の発光素子で構成されている場合、領域の大きさを決定するために、レンズなどを用いて集光してもよい。
複数の照射スポットにより指先部を照射することにより、照度を上げることが出来ると共に、指先部の設置位置に対する尤度を上げることができる。
【0017】
また、本実施の形態による指紋画像撮像装置は、光源3からの光が被検体1を照射する位置近傍にマーカー光31を照射するマーカー光源33を備えている。
マーカー光源33は、被検体である指先部1が開口付き被検体保持部2に載置されて開口部を覆うと撮像素子52へマーカー光31が入射せず、開口付き被検体保持部2に指先部1が載置されない状態で撮像素子52へマーカー光31が入射するように設置されている。
さらに、被検体(指先部)1の照射領域16にマーカー光31が照射されるように被検体1を移動させると、光源3からの光が被検体1の照射領域16に照射されるように被検体1を配置することができる。
なお、マーカー光源33は光源3との共用でもよいが、マーカー光31として、例えば、矢印や爪皮に沿うような曲線やその他、人間が判読でき指をかざす位置を理解するのを助けるような意味のあるパターンを1ないし数カ所に別光源から投影してもよい。
また、マーカー光31の波長は赤色光〜近赤外光領域だけではなく、使用者が目視できる可視光であればよい。
また、マーカー光31は指先部1が開口部を覆うと撮像素子52へ入射しないため、被検体の位置決め用だけではなく、被検体が光の照射位置に存在するか否かを判定する指存在判定用としても使用することができる。
また、被検体の位置決めは別の手段を用い、マーカー光31を指存在判定用のみとしても使用することができる。この場合は可視光である必要はない。
【0018】
光学系4は、指先部1の指紋11の凸部を透過する光源3からの光と指紋11の凹部を透過する光源3からの光とを撮像素子52に結像する。本実施の形態では、光学系4は指先部1からの透過光が始めに通過する位置にレンズ41を、レンズ41の次に透過光が通過し尚且つ物体側(被検体1側)にテレセントリックになるような位置に絞り42を備えている。
なお、より明確な指紋画像を得るために、レンズ41に主にテレセントリックの効果を持たせ、さらに光が絞り42を通過した後に通る位置に主に結像に寄与するレンズを設置し、さらには像の歪みを取る効果を持つレンズを設置し、複数のレンズからなる光学系を構成してもよい。
【0019】
指先部1の腹側、すなわち撮像対象となる指紋11の表面は曲面で構成されており、指紋11と撮像素子52との距離が観察面100内の場所により異なるので、場所によってピンボケや倍率の違いによる画像の歪みが生じる場合がある。そこで、観察面100の全面に焦点があうように被写界深度を深くし、物体側にテレセントリックな光学系を採用することで、ピンボケや倍率変動による影響を受けることなく、よりコントラストが向上された指紋画像を得ることができる。
【0020】
撮像手段5(以下撮像系5と言うこともある。)では指先部1の内部組織を透過した強度分布を持った光を光学系4で結像させた画像を撮像して指紋に対応する指紋画像を得る。撮像手段5は、波長選択手段としての波長選択素子51と、撮像素子52と、撮像素子52からの電気信号を画像電気信号に変換する画像出力回路53とを備えている。
【0021】
波長選択素子51(波長選択手段)は、光源3と同程度の波長を持った光(赤色光〜近赤外光領域の光)だけを選択的に透過させるものであり、波長選択素子51としては、例えば干渉フィルター、フィルターガラス、プラスティックフィルターが用いられる。波長選択素子51からの出力光信号は、撮像素子52で結像される。
なお、図1は、絞り42と撮像素子52との間に波長選択手段51を設けるものであるが、波長選択手段51は、レンズ41と指先部1との間、レンズ41が複数枚で構成されている場合のレンズとレンズの間、レンズ41と絞り42との間などの何れの位置に設けてもよい。また、波長選択機能を有するレンズ41や撮像素子52を用いることもできる。
【0022】
撮像素子52は、例えば、CCD(電荷結像素子)、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサなどの2次元固体撮像素子や撮像管などである。撮像素子52は指先部1を通過して指先部1の内部組織を透過した光に感度を有するもの、即ち、赤色光〜近赤外光領域の光に感度を有するものが用いられる。撮像手段5は指先部1からの光以外を受光しないよう遮光される。また、撮像素子52のゲインを調整するゲイン調整回路55が設けられている。
【0023】
信号処理部6は、画像出力回路53からの信号を受け取る画像取り込み部61と、画像取り込み部61からの信号を処理し2値化や細線化などを行う画像処理部62と、画像処理部62からの信号を受け取り、登録画像として保存する指紋データ保存部63と、画像処理部62からの画像を指紋データ保存部63からの画像と照合して個人識別を行う個人識別部64とを備えており、画像出力回路53から出力される指紋画像を画像処理して指紋情報を得るとともに、この指紋情報に基づき個人を識別する。
さらに、信号処理部6は、画像取り込み部61からの信号を処理し、その信号が予め定められた閾値の範囲内か否かを判定して指が存在するかどうかを判定し、光源駆動回路32に信号を送ることができる指存在判定部65を備えている。
また、画像取り込み部61は取り込まれた指紋画像を一時的に蓄積する機能を備えている。
【0024】
またさらに、信号処理部6は、画像取り込み部61で取り込まれた指紋画像の明度が予め定められた閾値の範囲内か否かを判定し、判定結果に基づいて光源駆動回路32およびゲイン調整回路55の少なくとも一方へ信号を送り、指先部1を照射する光源3からの光30の照射条件(強度、照射領域16)および撮像素子52のゲインの少なくとも一方を調整する明度判定部66とを備えている。すなわち、明度判定部66では、指紋画像の画像全域、または、個人識別に必要な指紋情報を得ることができる範囲全体、または上記領域の一部を抽出した領域や、分割した領域の画像明度を判定することができる。
また、同一の被検体について照射条件および撮像手段のゲインの少なくとも一方を違えて複数枚撮像する場合は、一回撮像するごとに明度判定回路66で画像の明度を判定しなおしてもよいが、例えば一度の判定で複数領域の明度を判定してその結果を保存し、2回目以降は判定したそれぞれの領域が適正になるように、明度判定を再度行わずに保存した結果から画像の明度を調整することもできる。
【0025】
また、画像処理部62は、上述の2値化や細線化などの処理に加えて、被検体1への光30の照射条件および撮像手段(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を違えて撮像した複数の指紋画像を重畳または部分的に貼り合わせる機能も有している。
【0026】
なお、信号処理部6に備えられている各部分は、それらの全てが信号処理部6に備えられている必要は無く、例えば、画像出力回路53をパソコンに接続してその中に一部分を備えたり、また、例えば指紋データを保存するが個人識別は行わない場合などは、個人識別部64を省略することも可能である。
【0027】
次に、図4〜図8を基に、光源3からの光30の照射領域(位置)と得られた指紋画像の明度との関係について説明する。ただし、ここでは、光源3からの光は1つのスポットで照射される場合について説明する。
図4〜6は、図8の各点A〜Dに光(レーザー光)30をスポット的に照射したときのCCDにより撮像した指紋画像を示す図であり、図4は図8の点Aに、図5は図8の点Bに、図6は図8の点Cに、図7は図8の点Dに、それぞれレーザー光30を照射したときの指紋画像を示す。図4〜図7において、図に向かって右側が爪先側(指先部1の先端側)である。図8は指先部1の背側への光30の照射点A〜Dを示す図である。
図4は指紋画像全面で明るさがほぼ均等であるが、図5は照射領域16(点B)に近い爪先側(指先部の先端側)が飽和しており、図6は照射領域16(点C)から遠い爪先側が暗くなっている。また、指先部1の幅方向に関して言えば、図7により照射領域16(点D)に近い部分が飽和しており反対側が暗くなっていることが分かる。
【0028】
これらの結果より、個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲のほぼ全面にわたって明るさがほぼ均等な指紋画像を得るためには、図8のA点、すなわち照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分を照射するのが好ましいことがわかる。
【0029】
より具体的な照射領域16としては、例えば、図8のA点(スポット領域)、図9に示す第1の照射領域161、第2の照射領域162、第3の照射領域163などが挙げられる。
第1の照射領域161は、長手方向が爪際の点Pから根元方向へは第1関節までで、幅は指先部1の幅を超えないような領域であり、爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/2程度の位置に長手方向の中心がある。
第2の照射領域162は、長手方向は根元側端部が爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ3/4程度の位置に先端側端部が爪際の点Pよりも多少先端の位置にあり、幅が指幅のほぼ1/3の領域であり、爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/3程度の位置に長手方向の中心がある。
第3の照射領域162は、長手方向は根元側端部が爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/5程度の位置に先端側端部が爪際の点Pよりも多少先端の位置にあり、幅が指幅のほぼ1/5の領域であり、爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/10程度の位置に長手方向の中心がある。
なお、長手方向の先端側端部は、爪際の点Pと一致するのが好ましいが、多少爪12にかかってもよい。爪際の点Pから指先部1の先端部までの長さをLとすると、長手方向の先端側端部は、爪際の点Pから長さLのほぼ1/3程度までが好ましく、より好ましくはほぼ1/4程度まで、さらに好ましくは上爪皮(爪の甘皮に相当する部分)にかかる程度が良い。
【0030】
さらに、照射領域16の形状は、上記領域に内接する楕円形、矩形状などが挙げられる。
なお、各照射領域161〜163は、全域をカバーできるような複数の照射スポットから成り立っていても同様の結果が得られる。
【0031】
また、生体の血液において近赤外光は透過率が低いので撮像手段5から出力される指紋画像には指先部1内部の血管のパターンが指紋11の凹凸パターンと重畳されて明度が低下し、コントラスト低下の原因になっている場合がある。極端に他より暗くなる部分が見られた場合は、その部分を明るくするために、シェーディングをきつくさせて撮像することもできる。例えば、指先部1の爪先側の部分の画像明度が低い場合は、光源3からの光30をわざと爪12かかるように照射し、必要に応じて輝度や撮像素子のゲインも調整して、指先部1の爪先側の画像の明度が低い部分の明度が適正になるようにして撮像すると、上記明度の低い部分のコントラストを向上させることができる。このように、指先部1への光30の照射領域(位置)を移動させることでシェーディングをコントロールし、部分的なコントラストの向上を図ることができる。
【0032】
次に動作について説明する。
まず、マーカー光31を目視し易い光量で点灯させておき、撮像素子52で、予め定めた間隔で撮像する。
マーカー光31が所定の位置に照射されるように指先部1を動かし、指先部1がマーカー光31を遮ると、撮像素子52で撮像できていたマーカー光31が遮られるので、撮像素子52で得られた画像はある範囲が一定の明度以下になる。撮像素子52で得られた画像は、信号処理部6の画像取り込み部61により、画像出力回路53から信号処理部6へと取り込まれる。さらに、画像取り込み部61より指存在判定部65へ送られ、マーカー光31が指先部1によって遮られてできた撮像素子52(撮像素子52で得られた画像)上のあらかじめ定められた範囲の明度が、予め定められた閾値の範囲であれば、指先部1が撮像素子52の撮像範囲に存在すると判定する。
【0033】
また、同時に、マーカー光31が指先部1の最適な位置に当たるように使用者が目視で確認しながら指先部1を移動させるので、指先部1への光源3の光30の照射位置最適化によるシェーディングの最適化、画像輝度に対する照射光量の高効率化も実現できる。
【0034】
指存在判定部65では、指先部1が撮像素子52の撮像範囲に存在すると判定すると、指先部1を透過し得る光30を投射するために、光源駆動回路32へ信号を送り、光源3からの光30が予め定められた明るさになるように、点灯させる素子の個数と1素子あたりの明るさを調整して光源3を点灯させる。なお、光源3点灯時にマーカー光源33は消灯してもよいし、そのまま点灯していてもよい。
指先部1の背面(指紋11と反対側の面)に照射された光30は、指内部を透過し指紋11に到達する。指先部1腹側の表面近くの内部組織は表面の指紋11の凹凸に対応した透過率分布を持っており、指紋の凸部に対応する内部組織の光透過率は低く、凹部に対応する内部組織の光透過率は高いので、前者に比べ後者を透過してきた光の輝度が高くなる。
【0035】
指先部1を透過した、指紋11に応じた強度分布を持った光が、物体(被検体である指先部1)側にテレセントリックになるように光学設計された光学系4のレンズ41と絞り42により、撮像素子52上で結像される。絞り42と撮像素子52の間には、波長選択素子51が配置されており、光源3と同程度の波長の光(赤色光〜近赤外光領域の光)だけが選択される。画像出力回路53では撮像素子52からの電気信号が入力され、指紋の山部(凸部)に比べて谷部(凹部)が明るい指紋画像が、画像電気信号として出力される。
【0036】
撮像手段5においてこのようにして得られた指紋画像は、信号処理部6に備えられた画像取り込み部61により取り込まれ、画像処理部62へ送られる。画像処理部62では、指紋画像に、例えば特開平10−334237号公報記載のように、二値化、細線化などの画像処理を施し、指紋の特徴情報(指紋情報)を抽出する。抽出されたデータは、必要に応じて指紋データ保存部63で保存される。個人識別部64では、画像処理部62から出力されるデータを指紋データ保存部63で保存されているデータと照合し、個人を識別する。
【0037】
次に、指紋画像の明度の調整、および同一の被検体について撮像した明度の異なる複数の指紋画像を重畳または部分的に貼り合わせることについて説明する。
本実施の形態では、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲において適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像を得るために、光源3からの光30を、前述したような、その照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分(上述した第1〜第3の照射領域161〜163などの照射領域16)に照射する。
【0038】
しかし、それでも、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲に、輝度が飽和することや、輝度が低すぎることで指紋の山と谷とが判別できない部分が存在し、個人識別に必要な情報が抽出できない指紋画像になることがある。
そこで、本実施の形態では、例えば画像処理部62で上記の指紋の特徴情報を抽出する前に、明度判定部66で指紋画像の明度の過不足を判定し、明度の過不足があった場合には、最適な明度の画像を採取するように照射条件(光源3の輝度や照射領域)および撮像素子52のゲインの少なくとも一方を調整し、再び撮像を行い、適正な明度の画像を得るようにしている。
【0039】
なお、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲で適正な明度にするために、一度のみの調整ではなく、複数回調整をおこない複数枚の画像を撮像することもある。また、一度の調整で上記指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲が適正な明度を満たしている場合でも、さらに画質を上げ、ひいてはコントラストの向上を図るために、調整および撮像を複数回くり返すこともある。
【0040】
以下、複数枚の画像を採取する場合を例に挙げて説明する。予め定められた輝度と照射領域16で光源3から光30を照射し、予め定められた撮像素子52のゲインで1度目の撮像を行う。その画像を画像取り込み部61から明度判定部66へ送り、そこで指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲の全体的な明度を判定し、適正でなければ適正となるように光源駆動回路32による光源3の輝度、照射領域の調整、およびゲイン調整回路55によるゲインの調整のうちの少なくとも1つの調整を行い、再び撮像を行う。
なお、ここで、全体的な明度とは、例えばヒストグラムなど画素ごとの位置情報を含まない全体的な明度、あるいは特定部位の明度や少数のプロファイルなど狭い範囲の明度から画像全体の明度を判断する場合を指しており、部分的に明るすぎる、あるいは暗すぎる個所が含まれている場合もある。
【0041】
指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲を含む領域の全体的な明度が適正となった画像を明度判定部66で複数の部分領域に区切って各部分領域の画像明度を判定する。複数の部分領域とは、例えば先端側と根元側など全領域を2つに分割したそれぞれの領域や、全領域から少なくとも指紋の山と谷とを1ペア以上含む領域を複数箇所抜き出す等、様々な領域が考えられる。
このようにして得られた複数の部分領域全てが予め定められた閾値の範囲内である適正な明度を満たしている場合はその画像の画像情報を画像処理部62へ送り、個人識別もしくは指紋データ保存用として、指紋情報を抽出する。
【0042】
また、各部分領域において、画像の明度が予め定められた閾値の範囲外である個所が少なくとも1箇所あった場合は、その部分領域の全体が適正な明度になるように、光源駆動回路32により光源3の輝度、照射領域の調整、およびゲイン調整回路55によるゲインの調整のうちの少なくとも1つの調整を行ってから再度撮像を行い、画像取り込み部61から画像を取り込み、一時的に保存する。上記動作を、画像の明度が予め定められた閾値の範囲外である個所が少なくとも1箇所あった全ての部分領域にわたって行い、得られた画像を画像取り込み部61へ一時的に保存する。
【0043】
次に、一時的に保存された画像を画像取り込み部61から画像処理部64へ送り、複数枚の画像を重畳もしくは予め定められた閾値の範囲内である適正な明度を満たしている部分領域を切り出してこれらを張り合わせる等の処理を行い、個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲の全面にわたって適正な明度となった画像を得る。
【0044】
なお、上述の例では、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲を含む領域の全体的な明度あるいは予め定めた特定部位の明度が適正となった画像について、複数の部分領域に区切って各部分領域の画像明度を判定し、複数枚画像を撮像するか否かを決定しているが、各部分領域の画像明度を判定することなく、最初から照射条件および撮像素子52のゲインの少なくとも一方を違えた明度の異なる複数枚の画像を撮像するようにしてもよい。
【0045】
この場合、例えば、1度目の撮像を行った後の1度目の明度判定時における明度の閾値を2種類以上決めておき、それぞれの閾値に対応した画像明度にするために光源3の輝度や照射位置、照射面積、撮像素子42のゲインの値を決定して複数枚撮像する方法がある。すなわち、個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲のほぼ全面が適正な明度になるような閾値と、適正な明度よりも明るくなる代わりに暗すぎる部分が無くなるような閾値や、適正な明度よりも暗くなる代わりに飽和部分が無くなるような閾値などが考えられる。このようにして得られた複数枚の画像について、前述のように重畳や貼り合わせなどを行い、1枚の画像にする。
【0046】
また、上述のいずれの例においても、1度目の撮像の場合は、個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲のほぼ全面にわたって明るさがほぼ均等な指紋画像を得ることを目的とし、光源3からの光30を、前述したような、その照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分(上述した第1〜第3の照射領域161〜163などの照射領域16)に照射することが好ましい。
【0047】
なお、画像処理部62で重畳もしくは張り合わせる画像は、2値化などの処理前の画像でも、処理後の画像でもどちらでもよい。
【0048】
また、上記のように同一の被検体について撮像した明度の異なる複数枚の画像を重畳もしくは張り合わせる場合は、指先部1の位置ズレを防ぐために撮像間隔を出来るだけ短くすることが重要である。
【0049】
なお、上記では同一の被検体について撮像した明度の異なる複数枚の画像を重畳もしくは張り合わせる場合について説明したが、光源3からの光30を、上記のような第1〜第3の照射領域161〜163などの照射領域16に照射して得られた、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲の全体的な明度が適正であると判断された場合、得られた指紋画像をそのまま用いて個人識別を行ってもよい。
【0050】
また、上記実施の形態1において、光の照射条件(輝度、照射領域16)および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整した結果、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲においてより適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像が得られた場合、同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を重畳または部分的に貼りあわせる必要は無い。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、撮像対象となる指紋11を有する指先部1を被検体とし、被検体にこれを透過し得る光30を照射する光源3と、被検体を透過する光源3からの光を撮像して指紋11の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段5と、被検体を透過する光源3からの光を撮像素子52に結像させる光学系4とを備え、光源3からの光は指先部1の複数の領域を照射する構成とし、かつ上記複数の領域のうちの少なくとも1つは、光源3からの光30の照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分を照射するので、指紋11の皮膚表面の湿り気の状態に拘わらず、さらには指紋11の凹凸が不明瞭な場合にも、安定した指紋画像を得ることができ、しかも、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲において適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像を得ることができ、明度が原因による指紋画像の劣化を防止して正確な指紋情報を得ることができる。また、光源からの光は指先部の複数の領域を照射するので、指先部の設置位置が多少ずれても、最適照射位置近傍に絶えず光源からの光が照射されるため、コントラストのよい指紋画像を安定して得ることができる。
【0052】
また、光の照射条件および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整する手段(明度判定部66、光源駆動回路32、ゲイン調整回路55)と、同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を重畳または部分的に貼りあわせる手段(画像処理部62)とを備えたので、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲においてより適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像を得ることができ、明度が原因による指紋画像の劣化をより確実に防止してより正確な指紋情報を得ることができる。
【0053】
また、撮像手段5から出力された指紋画像を画像処理して指紋情報を得るとともに、この指紋情報に基づき個人を識別する信号処理部6を備えたので、正確な指紋情報をもとに、性能の向上した個人識別を行うことができる。
【0054】
また、被検体の位置決め用のマーカー光31を被検体に照射するマーカー光源33を備えたので、被検体の装置本体への位置決めを容易に行うことができるという効果が得られる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、マーカー光31により指先部1が最適照射位置にくるようにしたが、本実施の形態の指紋画像撮像装置は、光源3からの光が指先部の複数の領域を照射するように構成されているので、指先部の設置位置が多少ずれても、最適照射位置近傍に絶えず光源からの光が照射されるため、マーカー光31による位置決めが無くても、コントラストのよい指紋画像を安定して得ることができる。
【0056】
また、上記実施の形態では、結像手段としてレンズ41を用いた場合について説明したが、結像レンズ以外にも、結像機能を有するピンホールなどを用いてもよい。
また、結像手段としてレンズ41を用いた場合でも、光学系4は必ずしもテレセントリックである必要はない。
【0057】
また、上記実施の形態において、生体の血液において近赤外光は透過率が低いので撮像手段5から出力される指紋画像には指先部1内部の血管のパターンが指紋の凹凸パターンと重畳されている。そこで、以下のようにして、撮像手段5から出力される指紋画像から血管のパターンを取り除いてもよい。
すなわち、まず、撮像手段5から出力される指紋画像を原画像とし、原画像に対して平滑化処理を行なって平滑化画像を得る。指紋の凹凸パターンは血管パターンに比べて線幅が細いので、平滑化画像では指紋の凹凸パターンが除去され血管パターンが残る。そして、原画像と平滑化画像の差分演算を行なうと、指紋の凹凸パターンのみが残った指紋画像が得られ、この指紋画像から指紋の特徴情報の抽出を行なう。
【0058】
また、上記説明では、撮像手段5で得られた指紋画像を信号処理部6で処理して個人を識別する場合について説明したが、個人識別をせずに単に指紋画像を得るのみであってもよいのは言うまでもない。
【0059】
また、装置全体の小型化を図るために、図10に示すように、反射手段として平面鏡8を、指先1を透過した光を偏向させるように設置し、光学系4、波長選択素子51、撮像素子52は偏向された光に対向するように設置してもよい。なお、図10では、信号処理部6は省略している。
なお、反射手段は平面鏡8に限るものではなく、例えば曲面鏡を用いることで像の歪み及び収差を軽減させることができる。
また、反射手段を複数設けてさらに小型化を図ってもよい。
また、平面鏡8は必ずしもレンズ42と指先部1の間にある必要はなく、例えばレンズ41と絞り42の間など、撮像素子42と指先部1の間にあればよい。
以下の各実施の形態でも、特に明記はしないが図10と同様に、指先部1を透過した光を偏向させるように反射手段を備えることにより、装置全体の小型化を図ることができる。
【0060】
なお、撮像対象となる指紋の表面が非接触の状態で保持し得る被検体保持部2としては、図1および図2で示した額縁形状のものに限らず、例えば、図11に示すように、指先部1の観察面100より外側の第1関節付近で指先部1を支持するように配置された棒状のものや、図12に示すように、観察面100の外側に観察面100を挟んで対向して配置された少なくとも一対の棒状のもの等をとして用いることができる。
【0061】
実施の形態2.
図13は本発明の実施の形態2による指紋画像撮像装置を説明するための図であり、より具体的には、指紋画像撮像装置の全体の構成を示す側面図である。以下では主に、実施の形態1との相違点について説明する。
【0062】
本実施の形態では、被検体保持部2として、実施の形態1で示した指先部1を撮像対象となる指紋11の表面が非接触の状態で保持し得る開口付き被検体保持部2ではなく、指先部1を撮像対象となる指紋11の表面が接触した状態で保持し得る開口の無い透明の被検体保持部(以下、透明状被検体保持部と言う。)2を用いている点が実施の形態1と異なり、その他の構成は実施の形態1と同様である。
動作についても、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同等の効果が得られる。
【0063】
ただし、指紋11の凸部を透過する光源3からの光と指紋11の凹部を透過する光源3からの光とを撮像して指紋11の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得るためには、被検体保持部2の指紋接触面において、指紋の凹部と透明状被検体保持部2間の気体の屈折率と、透明状被検体保持部2の屈折率とで決まる全反射の臨界角以下の方向に透明状被検体保持部2に入射する光を検出する必要がある。
【0064】
実施の形態3.
上記各実施の形態では、指先部1を保持し得る被検体保持部2を備えた場合について説明したが、被検体保持部2は必ずしも備えなくてもよい。
本実施の形態では、被検体保持部2を備えておらず、被検体に相当する指先部は構造体に非接触の状態である点が実施の形態1と異なり、その他の構成は実施の形態1と同様である。
このように構成されたものにおいても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0065】
実施の形態4.
図14および図15は本発明の実施の形態4による指紋画像撮像装置を説明するための図であり、より具体的には、図14は指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図、図15は指先部近傍を撮像系側(腹側)から見た様子を示す下面図である。
【0066】
以下では主に、実施の形態1との相違点について説明する。
本実施の形態では実施の形態1と異なり、開口付き被検体保持部2が存在せず、代わりに指先部1(指先部1の腹側)の撮像素子53からの距離を計測するために、スリット光70を照射するスリット光用光源71およびスリット光用光源駆動回路72を設置し、信号処理部6内に指位置計測部67を設けた。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0067】
スリット光用光源駆動回路72は、指先部1が撮像素子52の撮像範囲に存在するという信号を指存在判定部65から受け取ると、スリット光用光源71を点灯させ、スリット光70を指先部1の腹側(指紋11の表面)に照射する。なお、スリット光用光源71は、スリット光70が光学系4と撮像系5の焦点が合う範囲を通るように設置される。
指先部1の腹側(指紋11の表面)へ照射されたスリット光70の反射光は撮像素子52へ入射され、画像出力回路53で画像電気信号へ変換され、信号処理部6の画像取り込み部61へ送られる。
スリット光70を投射するスリット光用光源71は、例えば指向性の高い発光ダイオードとスリットや半導体レーザーとスリット等で構成されており、スリットの場合は1つ以上のスリット光を投射できる。なお、スリット光用光源71の形状はスリット状の連続な直線に限定されなくてもよく、点、直線上にならぶ点列、格子形状やランダムパターンその他、三角測量の原理で物面との距離計測に使えるような様々なパターンを用いることができる。
【0068】
指位置計測部67は画像取り込み部61からの信号を受け取り、指先部1の腹側(観察面100)が光学系4の被写体深度内に存在していれば光源駆動回路32へ信号を出力し、光源3を点灯させる。
【0069】
次に動作について説明する。
実施の形態1では、指先部1を開口付き被検体保持部2に保持することで位置決めを行ったが、本実施の形態ではスリット光70を照射し、位置計測を行うことにより、位置決めを行う。
【0070】
指存在判定部65で指先部1が光学系4、撮像系5の撮像範囲に入り、撮像ができる状態になったことを判定するまでは実施の形態1と同様である。次に、前述の状態になると、指存在判定部65からスリット光用光源駆動回路72へ信号が送られ、スリット光用光源71からスリット光70が照射される。
スリット光70として、例えば図15に示すようにスリット光を2本点灯させるとすると、それぞれのスリットに対して信号処理部6での画像処理により撮像素子52上に反射光が入射した位置が求まり、指位置計測部67で三角測量の手法で観察面100上のスリット光70が照射された位置と撮像素子52との距離が求まる。
なお、距離値としては、各スリット光において例えば最も短い距離、平均距離、最小自乗距離、などを計算量と精度のトレードオフに応じて用いる。
なお、スリット光に準じる点列光等でも同様に観察面100上のスリット光70が照射された位置と撮像素子52との距離が求まる。
【0071】
指位置計測部67により計測された結果が、光学系4と撮像系5の被写体深度内であれば、指位置計測部67はスリット光用光源駆動回路72へ信号を送り、スリット光用光源71を消灯させ、指位置計測部67から光源駆動回路32へ信号を送り、指先部1を透過しうる所定の光量で光源3を点灯させ、透過光による指紋画像を撮像する。
なお、光源3点灯時にスリット光用光源71は消灯してもよいし、そのまま点灯していてもよい。
【0072】
このように、本実施の形態によれば、撮像対象となる指紋11の表面が構造体に非接触の状態である被検体1の撮像対象となる指紋11の表面に、位置計測用の光(スリット光70)を照射するスリット光用光源71を備え、指紋11の表面に照射されたスリット光70の反射光を撮像手段5で撮影し、指紋11の表面の、光学系4に対する距離を検出するようにしたので、指先部1の指紋11の表面に接触することなく指紋11の表面の位置を検出して、最適の位置にある状態で画像を撮像することができる。
【0073】
なお、図14では、指先部1は構造物には全く接触していない完全非接触である場合について示したが、指先部1の指紋11部分よりも根元側に、例えば棒状の被検体保持部を設置してもよく、上記効果に加えて、被検体の位置をある程度決定することができるなどの効果が得られる。
【0074】
実施の形態5.
図16は本実施の形態5による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。実施の形態4では被検体保持部2を設けない代わりに、スリット光70を位置計測用として使用したが、本実施の形態では、さらにスリット光70を指静止判定用としても使用する。この場合は、スリット光70は1本以上あれば良い。指位置計測部67により、指先1の位置を計測するところまでは同様だが、指位置計測部67により計測された結果が、光学系4と撮像系5の被写体深度内であれば、指位置計測部67から指静止判定部68へ信号が送られる。指静止判定部68では所定の時間間隔で取り込まれた所定枚数のスリット光70の反射光の画像上で、スリット光70の位置のズレを比較し、ズレが所定範囲内になるまで所定の時間間隔で画像取り込み部61へ信号を送り、画像を取り込み判定を続ける。ズレが所定の範囲内であれば被検体1は静止していると判定する。被検体1が静止していると判定されると、指先部1を透過し得る光30を投射するために、光源駆動回路32へ信号を送り、光源3からの光30が予め定められた明るさになるように、点灯させる素子の個数と1素子あたりの明るさを調整して光源3を点灯させる。これ以降の動作は実施の形態4と同様である。
本実施の形態では、指が静止していることを判定してから撮像するので、指のブレなどを抑える事ができる。
【0075】
実施の形態6.
図17は本実施の形態6による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。実施の形態4では被検体保持部2を設けない代わりに、スリット光70により位置計測を行ったが、本実施の形態では被検体保持部2が存在する場合にもスリット光70により、実施の形態4と同様に位置計測を行った。
これにより、被検体保持部2への指先1の置き方が安定しない場合でも、より精密に位置決めを行う事が出来る。
【0076】
図18は本実施の形態6による他の指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。図18に示す指紋画像撮像装置では、被検体保持部2が存在する場合にも、スリット光70により位置計測を行い、さらにスリット光70を指静止判定用としても使用する。
これにより、被検体保持部2への指先1の置き方が安定しない場合でも、より精密に位置決めを行う事が出来るうえに、指が静止していることを判定してから、撮像するので指のブレなどを抑える事ができる。
【0077】
図19は本実施の形態6によるさらに他の指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。図18に示す指紋画像撮像装置ではスリット光70により、指位置判定と指静止判定を行っていたが、被検体保持部2が備えられているために、指先1の位置および角度が決定しやすい。そこで、図19に示す指紋画像撮像装置ではスリット光により指静止判定のみを行っている。
これにより、指が静止していることを判定してから、撮像するので指のブレなどを抑える事ができる。
【0078】
なお、図17〜図19では被検体保持部として、額縁形状を有している開口付き被検体保持部2を示したが、指先部1の位置を決められ、尚且つ指紋11の表面が非接触の状態で指先部1を保持できるものであればよく、例えば、図11に示すように、指先部1の腹側先端部と腹側根元部とを保持すべく、観察面100の外側に観察面100を挟んで対向して配置された少なくとも一対の棒状被検体保持部2等を用いることもできる。
【0079】
実施の形態7.
次に、実施の形態1〜6とは異なる構成の指紋画像撮像装置に対し、本発明を適用した実施の形態を示す。
本発明の発明者らは、先の出願(特願2004−290574号明細書)において、撮像対象となる指紋を有する指先部を被検体とし、上記被検体にこれを透過し得る光を照射する光源と、上記指紋の凸部を透過する上記光源からの光と上記指紋の凹部を透過する上記光源からの光とを撮像して上記指紋の凸部が暗く凹部が明るい、上記指紋に対応する指紋画像を得る撮像手段と、上記被検体を透過する上記光源からの光を上記撮像手段に結像させる光学系とを備えた指紋画像撮像装置において、上記光学系の光軸に直交する面に上記指先部の背側または腹側を当接させた位置を基準に、上記被検体の指先部先端側をその反対側に比して上記光学系から離れるように所定の角度(約10°〜30°)傾けることで、上記光学系の光軸に直交する面に指先部の背側または腹側を当接させた場合よりもさらに指紋画像のコントラストを向上させることができることを開示した。
これは、指紋表面および指紋表面近傍の内部組織の透過率特性に角度依存性があり、特定の角度に光が透過し易いためではないかと考えられる。
【0080】
本実施の形態7は、上記特性に着目して構成された指紋画像撮像装置に対し、光源からの光が指先部の複数の領域を照射する構成としたものである。
【0081】
図20〜図23は本発明の実施の形態7による指紋画像撮像装置を説明するための図であり、より具体的には、図20は指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図、図21は指先部近傍を撮像手段側(腹側)から見た様子を示す下面図、図22、および図23は指先部近傍を背側(爪側)から見た様子を示す上面図である。
【0082】
本実施の形態による指紋画像撮像装置は、撮像対象となる指紋11を有する指先部1を被検体とし、被検体1にこれを透過し得る光30を、複数の照射スポットで照射する光源3と、
被検体1を透過する光源3からの光を撮像して指紋11の凸部が暗く凹部が明るい、指紋11に対応する指紋画像を得る撮像手段5と、
被検体1を透過する光源3からの光を撮像手段5に結像させる光学系4と、
撮像手段5から出力された指紋画像を画像処理して指紋情報を得るとともに、この指紋情報に基づき個人を識別する信号処理部6とを備え、
かつ、光学系4の光軸400に直交する面402に指先部の背側を当接させた位置を基準に、被検体1をその指先部先端側がその反対側に比して光学系4から離れるように所定の角度傾けた状態となるように、光学系4を配置した。
【0083】
本実施の形態7では、被検体1の光学系4に対する位置および角度が、所定の位置および所定の角度となるように、光学系に対し傾いた状態で被検体保持部(以下、開口付き被検体保持部21と言う。)2が設置されている。開口付き被検体保持部21の開口部分は、撮像手段5で撮像する範囲である観察面100を含むように設けられている。
また、光源3は1つ以上の例えばレーザー、発光ダイオード、ランプ光源から構成されており、同時に任意の数だけ点灯させることができる。指先部1を開口付き被検体保持部21で保持し、観察面100が開口付き被検体保持部21の開口内に納まる位置にある時に、例えば図23に示すように指先部の所定の領域16を照射できるように配置する。また、光源駆動回路32により、点灯させる素子を制御することで、被検体1へ照射する光30の照射条件(輝度および照射領域16)を制御することができる構成となっている。例えば、光源3が複数の発光素子で構成されている場合、それぞれの素子が、あるいは同一位置(領域)を照射できるように構成した素子の小グループが、指先1の異なる位置(領域)を照射するように設置する。さらに、照射したい位置(領域)に応じて点灯させる素子を制御する等、被検体1における照射領域16が複数の領域となるように構成する。照射領域16を制御するとは、位置の制御、領域の大きさ、領域の数を個別もしくは組み合わせて制御することをいう。領域の個数を制御する場合は、光源3を複数個数設けてもよい。
なお、本実施の形態7において、その他の各部の構成は実施の形態1と同様の構成であり、説明を省略する。
【0084】
なお、実施の形態1で述べたように、個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲のほぼ全面にわたって明るさがほぼ均等な指紋画像を得るためには、図8のA点、すなわち照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分を照射するのが好ましい。本実施の形態7のように、指先部11腹側の観察面が、光学系4の光軸400に直交する面402に対して所定の角度で傾斜する場合にも、照射点と指紋画像の明暗との関係は上記結果と同様である。
より具体的な照射領域16としては、実施の形態1と同様、例えば、図8のA点(スポット領域)、図9に示す第1の照射領域161、第2の照射領域162、第3の照射領域163などが挙げられる。
第1の照射領域161は、長手方向が爪際の点Pから根元方向へは第1関節までで、幅は指先部1の幅を超えないような領域であり、爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/2程度の位置に長手方向の中心がある。
第2の照射領域162は、長手方向は根元側端部が爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ3/4程度の位置に先端側端部が爪際の点Pよりも多少先端の位置にあり、幅が指幅のほぼ1/3の領域であり、爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/3程度の位置に長手方向の中心がある。
第3の照射領域162は、長手方向は根元側端部が爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/5程度の位置に先端側端部が爪際の点Pよりも多少先端の位置にあり、幅が指幅のほぼ1/5の領域であり、爪際の点Pから第1関節までの長さのほぼ1/10程度の位置に長手方向の中心がある。
なお、長手方向の先端側端部は、爪際の点Pと一致するのが好ましいが、多少爪12にかかってもよい。爪際の点Pから指先部1の先端部までの長さをLとすると、長手方向の先端側端部は、爪際の点Pから長さLのほぼ1/3程度までが好ましく、より好ましくはほぼ1/4程度まで、さらに好ましくは上爪皮(爪の甘皮に相当する部分)にかかる程度が良い。
【0085】
さらに、照射領域16の形状は、上記領域に内接する楕円形、矩形状などが挙げられる。
なお、各照射領域161〜163は、全域をカバーできるような複数の照射スポットから成り立っていても同様の結果が得られる。
【0086】
次に、指紋画像のコントラスト向上のために指先部1を所定の角度傾ける構成について述べる。ただし、ここでは、光源3からの光は1つのスポットで照射される場合について説明する。
図20および図22に示すように、指先部1の爪側(背側)の指幅方向の中心付近を通って指先部1の背側に接する直線を、指先部の背側を代表する直線15とする。開口付き被検体保持部21は、指先部1を保持した時に、光学系4によって決定される光軸400に直交する面402に指先部1の背側を当接させた位置を基準に、被検体1の指先部先端側がその反対側に比して光学系4(レンズ41)から離れるように所定の角度(θ)傾いた状態となるように設置されている。すなわち、光学系4の光軸400に直交する面402と指先部1の背側を代表する直線15とのなす角度が所定の角度(θ)となるように、光学系4および開口付き被検体保持部21が配置されている。
【0087】
図24に、指先部の背側を代表する直線15と光軸300を垂線に持つ平面402との成す角度(θ)と、指紋画像のコントラストとの関係を示す。
また、図25に、同様の構成で図24とは異なるサンプル(被検体1)を用いて指先部1先端側がその反対側に比して光学系4に近づくように(θが負になるように)傾けた場合の、θとコントラストとの関係を示す。
図24および図25より、傾け角度θが、10°〜30°、より好ましくは15°〜25°、さらに好ましくは20°前後である場合に、指紋画像のコントラストが向上することがわかる。
【0088】
なお、指先部1の腹側が曲面で構成されていることに加え、指先部1を光学系4の光軸400に対して傾けているために、観察面100は光軸400に対して角度を持ち、観察面100の全面に渉って焦点を合わせることが困難になる。そこで、観察面100の全面に焦点を合わせるように、光学系4の被写体深度を深くし、図20に示すように撮像素子52を光軸400に対して傾けた構成としている。
このように、光学系4の被写体深度を深くし、撮像素子52を光軸400に対して傾けた構成とすることにより、指先部1の観察面100の全域を光学系4の被写体深度内に収め、コントラストの良い画像を得ることができる。
【0089】
次に動作について説明する。
まず、マーカー光31を目視し易い光量で点灯させておき、撮像素子52で、予め定めた間隔で撮像する。
マーカー光31を遮るように指先部1が配置されると、光源31が遮られるので、撮像素子52で得られた画像はある範囲が一定の輝度以下になる。撮像素子52で得られた画像は、信号処理部6の画像取り込み部61により、画像出力回路53から信号処理部6へと取り込まれる。さらに、画像取り込み部61より指存在判定部65へ送られ、マーカー光31が指先部1によって遮られてできた撮像素子52(撮像素子52で得られた画像)上のあらかじめ定められた範囲の輝度が、予め定められた閾値の範囲であれば、指先部1が撮像素子52の撮像範囲に存在すると判定する。
【0090】
また、同時に、マーカー光31が指先部1の最適な位置に当たるように使用者が目視で確認しながら指先部1を移動させると、指紋画像全面で明るさがほぼ均等になる条件である、指先1の照射領域16へ光源3からの光30が投射される配置になるので、指先部1への光源3の照射位置最適化によるシェーディングの最適化、画像輝度に対する照射光量の高効率化も実現できる。
【0091】
指存在判定部65では、指先部1が撮像素子52の撮像範囲に存在すると判定すると、指先部1を透過し得る光を投射するために、光源駆動回路32へ信号を送り、光源3からの光30が予め定められた明るさになるように、点灯させる素子の個数と1素子あたりの明るさを調整して光源3を点灯させる。なお、光源3点灯時にマーカー光源33は消灯してもよいし、そのまま点灯していてもよい。
指先部1の背面(指紋11と反対側の面)に照射された光30は、指内部を透過し指紋11に到達する。指先部1腹側の表面近くの内部組織は表面の指紋11の凹凸に対応した透過率分布を持っており、指紋の凸部に対応する内部組織の光透過率は低く、凹部に対応する内部組織の光透過率は高いので、前者に比べ後者を透過してきた光の輝度が高くなる。
【0092】
指先部1を透過した、指紋11に応じた強度分布を持った光の中でも、指先部1の背側を代表する直線15と平面402とのなす角(θ)が10°〜30°、より好ましく15°〜25°、さらに好ましくは20°前後傾いた光のみが、物体(被検体である指先部1)側にテレセントリックになるように光学設計された光学系4のレンズ41と絞り42により、撮像素子52上で結像される。絞り42と撮像素子52の間には、波長選択素子51が配置されており、光源3と同程度の波長の光(赤色光〜近赤外光領域の光)だけが選択される。画像出力回路53では撮像素子52からの電気信号が入力され、指紋の山部(凸部)に比べて谷部(凹部)が明るい指紋画像が画像電気信号として出力される。
【0093】
撮像手段5においてこのようにして得られた指紋画像は、信号処理部6に備えられた画像取り込み部61により取り込まれ、画像処理部62へ送られる。画像処理部62では、指紋画像に、例えば特開平10−334237号公報記載のように、二値化、細線化などの画像処理を施し、指紋の特徴情報(指紋情報)を抽出する。抽出されたデータは、必要に応じて指紋データ保存部63で保存される。個人識別部64では、画像処理部62から出力されるデータを指紋データ保存部63で保存されているデータと照合し、個人を識別する。
【0094】
また、本実施の形態では、信号処理部6に明度判定部66を備えており、例えば画像処理部62で上記の指紋の特徴情報を抽出する前に、明度判定部66で指紋画像の明度の過不足を判定し、最適な明度の画像を採取するように照射条件(光源3の輝度や照射領域16)および撮像素子52のゲインの少なくとも一方を調整し、再び撮像を行う。
そのためには、明度判定部66で、画像取り込み部61より出力された指紋画像の明度が予め定められた閾値の範囲内かどうかを判定し、予め定められた閾値の範囲内となるように光源駆動回路32とゲイン調整回路55のどちらか一方、もしくは両方を制御し、再び撮像素子52での撮像を行う。すなわち、指紋画像の明度が予め定められた閾値の範囲より低い場合は、例えば光源駆動回路32に電気信号を送り、明度が飽和しない範囲で可能な限り輝度の高い投射光30を出射するように光源3を駆動させ、指紋画像の明度が予め定められた閾値の範囲より高い場合は、逆に輝度の低い投射光30を出射するように光源3を駆動させる。
このように、指紋画像の明度の閾値を適正な値に設定することにより、明度が原因による指紋画像および識別性能の劣化を防止することができる。
【0095】
以上のように、本実施の形態によれば、撮像対象となる指紋11を有する指先部1を被検体とし、被検体にこれを透過し得る光30を照射する光源3と、被検体を透過する光源3からの光を撮像して指紋11の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段5と、被検体を透過する光源3からの光を撮像手段5に結像させる光学系4とを備え、光源3からの光は上記指先部1の複数の領域を照射する構成とし、かつ、光学系3の光軸400に直交する面402に指先部1の背側を当接させた位置を基準に、被検体の指先部先端側がその反対側に比して光学系3から離れるように所定の角度傾いた状態となるように、光学系3を配置したので、指紋11の皮膚表面の湿り気の状態に拘わらず、さらには指紋11の凹凸が不明瞭な場合にも、コントラストのより向上した指紋画像を得ることができるという効果が得られる。また、光源からの光は指先部の複数の領域を照射するので、指先部の設置位置が多少ずれても、最適照射位置近傍に絶えず光源からの光が照射されるため、コントラストのよい指紋画像を安定して得ることができる。
【0096】
さらに、上記構成に加えて、撮像手段5から出力された指紋画像を画像処理して指紋情報を得るとともに、この指紋情報に基づき個人を識別する信号処理部6を備えたので、個人識別の精度が向上するという効果が得られる。
【0097】
また、所定の角度が10°〜30°、好ましくは15°〜25°、より好ましくは20°前後である場合に、コントラストのより向上した指紋画像を得ることができる。
【0098】
また、光源3からの光30を、その照射中心が指先部1の爪12の存在している面における幅方向の略中心線上でかつ爪12の生え際に対して爪12部とは反対側にあり、略爪12以外の部分に照射するので、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲において適正な明度の指紋画像を得ることができ、明度が原因による指紋画像の劣化を防止して正確な指紋情報を得ることができる。
【0099】
また、被検体を、撮像対象となる指紋の表面が非接触の状態で保持し得る被検体保持部21を備えたので、被検体の光学系3に対する位置および角度を容易に合わせることができるという効果が得られる。
【0100】
また、被検体の位置決め用のマーカー光31を被検体に照射するマーカー光源33を備えたので、被検体の装置本体への位置決めを容易に行うことができるという効果が得られる。
【0101】
なお、上記実施の形態では、マーカー光31により指先部1が最適照射位置にくるようにしたが、本実施の形態の指紋画像撮像装置は、光源3からの光が指先部の複数の領域を照射するように構成されているので、指先部の設置位置が多少ずれても、最適照射位置近傍に絶えず光源からの光が照射されるため、マーカー光31による位置決めが無くても、コントラストのよい指紋画像を安定して得ることができる。
【0102】
なお、上記説明では、撮像手段5で得られた指紋画像を信号処理部6で処理して個人を識別する場合について説明したが、個人識別をせずに単に指紋画像を得る場合にも用いることができることは言うまでもない。
【0103】
また、図20および図21では、撮像対象となる指紋の表面が非接触の状態で保持し得る被検体保持部として、額縁形状を有している開口付き被検体保持部21を示したが、指先部1の角度と位置を決められ、尚且つ指紋11の表面が非接触の状態で指先部1を保持できるものであればよく、例えば、図26に示すように、指先部1の腹側先端部と腹側根元部とを保持すべく、観察面100の外側に観察面100を挟んで対向して配置された少なくとも一対の棒状被検体保持部22等を用いることもできる。
【0104】
また、装置全体の小型化を図るために、図27に示すように、指先部1を透過した光を偏向させるように、反射手段として平面鏡8を設置し、光学系4、波長選択素子51、撮像素子52は偏向された光に対向するように設置してもよい。なお、図27では、信号処理部6は省略している。
なお、反射手段は平面鏡8に限るものではなく、例えば曲面鏡を用いることで像の歪みおよび収差を軽減させることができる。
また、反射手段を複数設けてさらに小型化を図ってもよい。
また、平面鏡8は必ずしもレンズ42と指先部1の間にある必要はなく、例えばレンズ41と絞り42の間など、撮像素子42と指先部1の間にあればよい。
以下の各実施の形態でも、特に明記はしないが図27と同様に、指先部1を透過した光を偏向させるように反射手段を備えることにより、装置全体の小型化を図ることができる。
【0105】
実施の形態8.
図28および図29は本発明の実施の形態8による指紋画像撮像装置を説明するための図であり、より具体的には、図28は指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図、図29は指先部近傍を撮像系側(腹側)から見た様子を示す下面図である。
【0106】
以下では主に、実施の形態7との相違点について説明する。
本実施の形態では実施の形態7と異なり、開口付き被検体保持部21が存在せず、代わりに指先部1(指先部1の腹側)の撮像素子53からの距離と、観察面100(指先1の腹側)と平面402(光学系4の光軸400に直交する面)のなす角度とを計測するために、スリット光70を照射するスリット光用光源71およびスリット光用光源駆動回路72を設置し、信号処理部6内に指位置計測部67を設けた。その他の構成は実施の形態7と同様である。
【0107】
スリット光用光源駆動回路72は、指先部1が撮像素子52の撮像範囲に存在するという信号を指存在判定部65から受け取ると、スリット光用光源71を点灯させ、スリット光70を指先部1の腹側(指紋11の表面)に照射する。なお、スリット光用光源71は、スリット光70が光学系4と撮像系5の焦点が合う範囲を通るように設置される。
指先部1の腹側(指紋11の表面)へ照射されたスリット光70の反射光は撮像素子52へ入射され、画像出力回路53で画像電気信号へ変換され、信号処理部6の画像取り込み部61へ送られる。
スリット光70を投射するスリット光用光源71は、例えば指向性の高い発光ダイオードとスリットや半導体レーザーとスリット等で構成されており、スリットの場合は1つ以上のスリット光を投射できる。なお、スリット光用光源71の形状はスリット状の連続な直線に限定されなくてもよく、点、直線上にならぶ点列、格子形状やランダムパターンその他、三角測量の原理で物面との距離計測に使えるような様々なパターンを用いることができる。
【0108】
指位置計測部67は画像取り込み部61からの信号を受け取り、指先部1の腹側(観察面100)が光学系4の被写体深度内に存在し、かつ、観察面100と平面402とのなす角度が10°〜30°、より好ましく15°〜25°、さらに好ましくは20°前後傾いているかどうかを計測する。条件を満たしていれば光源駆動回路32へ信号を出力し、光源3を点灯させる。
【0109】
次に動作について説明する。
実施の形態7では、指先部1を開口付き被検体保持部21に保持することで位置決めを行ったが、本実施の形態ではスリット光70を照射し、位置計測を行うことにより、位置決めを行う。
【0110】
指存在判定部65で指先部1が光学系4、撮像系5の撮像範囲に入り、撮像ができる状態になったことを判定するまでは実施の形態7と同様である。次に、前述の状態になると、指存在判定部65からスリット光用光源駆動回路72へ信号が送られ、スリット光用光源71からスリット光70が照射される。
スリット光70として、例えば図29に示すようにスリット光を2本点灯させるとすると、それぞれのスリットに対して信号処理部6での画像処理により撮像素子52上に反射光が入射した位置が求まり、指位置計測部67で三角測量の手法で観察面100上のスリット光70が照射された位置と撮像素子52との距離が求まる。さらに2本以上のスリット光があるので、スリット光同士の距離と、スリット光と撮像素子52との距離の関係より、観察面100(より正確には、各スリット光70の指先部1腹側への照射部70aと70bを通る平面17であり、以下、この平面17を指先部1の腹側(観察面)を代表する平面17と言う。)と平面402とのなす角度が求まる。
なお、距離値としては、各スリット光において例えば最も短い距離、平均距離、最小自乗距離、などを計算量と精度のトレードオフに応じて用いる。
なお、スリット光に準じる点列光等でも同様に観察面100上のスリット光70が照射された位置と撮像素子52との距離および観察面100と平面402とのなす角度が求まる。
【0111】
指位置計測部67により計測された結果が、光学系4と撮像系5の被写体深度内であり、尚且つ観察面100と平面402との成す角度が10°〜30°、より好ましくは15°〜25°、さらに好ましくは20°前後であれば、指位置計測部67はスリット光用光源駆動回路72へ信号を送り、スリット光用光源71を消灯させ、指位置計測部67から光源駆動回路32へ信号を送り、指先部1を透過しうる所定の光量で光源3を点灯させ、透過光による指紋画像を撮像する。
なお、光源3点灯時にスリット光用光源71は消灯してもよいし、そのまま点灯していてもよい。
【0112】
なお、実施の形態7では、光学系4の光軸400に直交する面402に指先部1の背側を当接させた位置を基準に、被検体の指先部先端側がその反対側に比して光学系4から離れるように所定の角度傾いた状態とすることにより、すなわち指先部1の背側を代表する直線15と平面402との成す角度(θ)を所定の角度とすることにより、指紋画像のコントラストが向上すると説明した。
これに対して、本実施の形態では、光学系4の光軸400に直交する面402に指先部1の腹側を当接させた位置を基準に、被検体の指先部先端側がその反対側に比して光学系4から離れるように所定の角度傾いた状態とすることにより、すなわち指先部1の腹側(観察面)を代表する平面17と平面402との成す角度(θ’)を所定の角度(10°〜30°、好ましくは15°〜25°、より好ましくは25°前後)とすることにより、指紋画像のコントラストが向上すると説明している。
【0113】
指先部1の腹側(観察面)を代表する平面17と指先部1の背側を代表する直線15とは平行ではなく若干角度を持っており、またその角度には個人差もある。しかし、実施の形態7で述べた指先部1の背側を代表する直線15と光学系4の光軸400に直交する面402とのなす角度(θ)の範囲内(10°〜30°、好ましくは15°〜25°)には、指先部1の腹側(観察面)を代表する平面17と指先部1の背側を代表する直線15との成す角度およびその個人差を含んでおり、本実施の形態のように指先部1の腹側(観察面)を代表する平面17と平面402との成す角度(θ’)を上記範囲内(10°〜30°、好ましくは15°〜25°)とすることで、開口付き被検体保持部21あるいは棒状被検体保持部22で指先部1を保持する実施の形態7と同様に、コントラストの向上した指紋画像を得ることができる。
【0114】
なお、上記と同様の理由により、実施の形態7においても、開口付き被検体保持部21あるいは棒状被検体保持部22の、指先部1が当接する側の面で囲まれた開口面(指先部1の腹側(観察面)を代表する平面)が、光学系4の光軸400に直交する面402に対して、所定の角度(10°〜30°、好ましくは15°〜25°)傾いた状態で配置されていてもよい。
【0115】
このように、本実施の形態によれば、撮像対象となる指紋11の表面が構造体に非接触の状態である被検体1の撮像対象となる指紋11の表面に、位置計測用の光(スリット光70)を照射するスリット光用光源71を備え、指紋11の表面に照射されたスリット光70の反射光を撮像手段5で撮影し、指紋11の表面の、光学系4に対する距離および光学系4の光軸400に直交する面402からの傾斜角を検出するようにしたので、指先部1の指紋11の表面に接触することなく指紋11の表面の位置、形状(傾斜角)を検出して、指先部1が光学系4の光軸400に対して最適の角度にある状態で画像を撮像することができ、コントラストの向上した指紋画像を得ることができる。
【0116】
なお、図28では、指先部1は構造物には全く接触していない完全非接触である場合について示したが、指先部1の指紋11部分よりも根元側に、例えば棒状の被検体保持部を設置してもよく、上記効果に加えて、被検体の位置をある程度決定することができるなどの効果が得られる。
【0117】
実施の形態9.
図30および図31は本発明の実施の形態9による指紋画像撮像装置を説明するための図であり、より具体的には、図30は指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図、図31は透明状被検体保持部と被検体との接触部を拡大して模式的に示す図である。
【0118】
以下では主に、実施の形態7との相違点について説明する。
実施の形態7では指先部1を撮像対象となる指紋11の表面が非接触の状態で保持し得る被検体保持部(開口付き被検体保持部21や棒状被検体保持部22)を備えていたが、本実施の形態では、指紋を有する被検体を撮像対象となる指紋の表面が接触した状態で保持し得る透明な被検体保持部(以下、透明状被検体保持部という。)23を備えている。その他の構成は実施の形態7と同様である。
【0119】
透明状被検体保持部23は実施の形態7の開口付き被検体保持部21と開口の有無を除き、設置位置および機能は同等である。すなわちθおよびθ’が10°〜30°、好ましくは15°〜25°、より好ましくは20°前後となるように設置されている。
動作についても、実施の形態7と同様であり、実施の形態7と同等の効果が得られる。
【0120】
ただし、指紋11の凸部を透過する光源3からの光と指紋11の凹部を透過する光源3からの光とを撮像して指紋11の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得るために、図31に示すように、透明状被検体保持部23の指紋接触面において、指紋の凹部11aと透明状被検体保持部23間の気体の屈折率と、透明状被検体保持部23の屈折率とで決まる全反射の臨界角θ以下の方向に透明状被検体保持部23に入射する光を検出する必要がある。
【0121】
例えば、指紋の凹部11aと透明状被検体保持部23間の気体が空気、透明状被検体保持部23がガラスであり、空気の屈折率n0を1.0、ガラスの屈折率ngを1.5とすると、臨界角φはφ=arcsin(n0/ng)=41(度)となり、指紋の凹部11aを通過した光は41度以内の角度で透明状被検体保持部23に入射する。
一方、生体の屈折率を例えば1.45とすると、arcsin(1.45/1.5)=75(度)となり、指紋の凸部11bを通過した光は75度以内の角度で透明状被検体保持部23に入射する。
したがって、41度以内の角度で透明状被検体保持部23に入射する光を検出することにより、指紋の凸部11bを透過した光と凹部11aを透過した光の両方を検出できることになる。
【0122】
実施の形態10.
実施の形態7では、光源3からの光が指先部1の複数の領域を照射する構成とし、かつ、光学系3の光軸400に直交する面402に指先部1の背側を当接させた位置を基準に、被検体の指先部先端側がその反対側に比して光学系3から離れるように所定の角度傾いた状態となるように、光学系3を配置することにより、コントラストのよい指紋画像を安定して得ることができる。
しかし、それでも、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲に、輝度が飽和することや、輝度が低すぎることで指紋の山と谷とが判別できない部分が存在し、個人識別に必要な情報が抽出できない指紋画像になることがある。
【0123】
そこで、本実施の形態では、実施の形態1で述べたと同様、光の照射条件(輝度、照射領域16)および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整し、同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を撮像し、これら複数の指紋画像を重畳または部分的に貼り合せることにより、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲においてより適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像を得、明度が原因による指紋画像の劣化をより確実に防止してより正確な指紋情報を得るようにしている。画像の明度の調整、撮像された複数の指紋画像の重畳または部分的に貼り合せる動作は実施の形態1で述べた動作と同じである。
【0124】
実施の形態8や実施の形態9の指紋画像撮像装置においても、光の照射条件(輝度、照射領域16)および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整し、同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を撮像し、これら複数の指紋画像を重畳または部分的に貼り合せてもよく、同様の効果が得られる。
【0125】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光の照射条件および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整する手段(明度判定部66、光源駆動回路32、ゲイン調整回路55)と、同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を重畳または部分的に貼りあわせる手段(画像処理部62)とを備えたので、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲においてより適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像を得ることができ、明度が原因による指紋画像の劣化をより確実に防止してより正確な指紋情報を得ることができる。
【0126】
なお、実施の形態7〜9の指紋画像撮像装置において、光の照射条件(輝度、照射領域16)および撮像手段5(撮像素子52)のゲインの少なくとも一方を調整することで画像の明度を調整した結果、指紋画像の主要部である個人識別に必要な指紋情報が含まれる範囲においてより適正な明度で明暗のコントラストが分かる指紋画像が得られた場合、同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を重畳または部分的に貼りあわせる必要は無い。
【0127】
実施の形態11.
図32は本実施の形態11による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。実施の形態8では被検体保持部21を設けない代わりに、スリット光70を位置計測用として使用したが、本実施の形態では、さらにスリット光70を指静止判定用としても使用する。この場合は、スリット光70は1本以上あれば良い。指位置計測部67により、指先1の位置と角度を計測するところまでは同様だが、指位置計測部67により計測された結果が、光学系4と撮像系5の被写体深度内であり、尚且つ観察面100と平面402との成す角度が10°〜30°、より好ましくは15°〜25°、さらに好ましくは20°前後であれば、指位置計測部67から指静止判定部68へ信号が送られる。指静止判定部68では所定の時間間隔で取り込まれた所定枚数のスリット光70の反射光の画像上で、スリット光70の位置のズレを比較し、ズレが所定範囲内になるまで所定の時間間隔で画像取り込み部61へ信号を送り、画像を取り込み判定を続ける。ズレが所定の範囲内であれば被検体1は静止していると判定する。被検体1が静止していると判定されると、指先部1を透過し得る光30を投射するために、光源駆動回路32へ信号を送り、光源3からの光30が予め定められた明るさになるように、点灯させる素子の個数と1素子あたりの明るさを調整して光源3を点灯させる。これ以降の動作は実施の形態8と同様である。
本実施の形態では、指が静止していることを判定してから撮像するので、指のブレなどを抑える事ができる。
【0128】
実施の形態12.
図33は本実施の形態12による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。実施の形態8では被検体保持部21を設けない代わりに、スリット光70により位置計測を行ったが、本実施の形態では被検体保持部21が存在する場合にもスリット光70により、実施の形態8と同様に位置計測を行った。
これにより、被検体保持部21への指先1の置き方が安定しない場合でも、より精密に位置決めを行う事が出来る。
【0129】
図34は本実施の形態12による他の指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。図34に示す指紋画像撮像装置では、被検体保持部21が存在する場合にも、スリット光70により位置計測を行い、さらにスリット光70を指静止判定用としても使用する。
これにより、被検体保持部21への指先1の置き方が安定しない場合でも、より精密に位置決めを行う事が出来るうえに、指が静止していることを判定してから、撮像するので指のブレなどを抑える事ができる。
【0130】
図35は本実施の形態12によるさらに他の指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。図34に示す指紋画像撮像装置ではスリット光70により、指位置判定と指静止判定を行っていたが、被検体保持部21が備えられているために、指先1の位置および角度が決定しやすい。そこで、図35に示す指紋画像撮像装置ではスリット光により指静止判定のみを行っている。
これにより、指が静止していることを判定してから、撮像するので指のブレなどを抑える事ができる。
【0131】
なお、図33〜図35では被検体保持部として、額縁形状を有している開口付き被検体保持部21を示したが、指先部1の角度と位置を決められ、尚且つ指紋11の表面が非接触の状態で指先部1を保持できるものであればよく、例えば、図26に示すように、指先部1の腹側先端部と腹側根元部とを保持すべく、観察面100の外側に観察面100を挟んで対向して配置された少なくとも一対の棒状被検体保持部22等を用いることもできる。
【0132】
上記各実施の形態1〜12では、指先部の設置位置の尤度を上げるように、光源3からの光が指先部の複数の領域を照射できる構成のものに対し、マーカー光源やスリット光源を設けて、指の位置や状態を確認することが可能となるものを示したが、マーカー光源あるいはスリット光源(第2の光源)を有するものにおいては、上記マーカー光源あるいはスリット光源を用いて、指先部の設置位置を検出し、指先部の位置ズレが少なくできるようにすることができるため、必ずしも指先部に複数の照射スポットを当てなくてもよく、照射領域が1つであっても良い。
【0133】
また、上記各実施の形態1〜12では、光源と、被検体を透過する上記光源からの光を撮像して指紋の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段と、上記被検体を透過する上記光源からの光を上記撮像手段に結像させる光学系とを備えた装置に対し、さらに指先部への光の照射位置を、爪の生え際に対して爪部とは反対側にあり、略爪以外の部分を照射するようにして撮像する装置や、あるいは指先部が光学系の光軸に対し所定の角度傾いた状態となるようにして撮像する装置に対して、マーカー光源あるいはスリット光源(第2の光源)を有するものを示したが、上記のような構成の指紋画像撮像装置に限らず、光源と、被検体を透過する上記光源からの光を撮像して指紋の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段と、上記被検体を透過する上記光源からの光を上記撮像手段に結像させる光学系とを備えた装置に対し、マーカー光源、あるいは被検体の指紋の表面に少なくとも1つ以上の所定の形状の光を照射する第2の光源(スリット光源)を備えることにより、コントラストの良い指紋画像が安定して得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施の形態1による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係り、指先部近傍を腹側から見た様子を示す下面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係り、指先部近傍を背側から見た様子を示す上面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係り、CCDにより撮像した指紋画像を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係り、CCDにより撮像した指紋画像を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係り、CCDにより撮像した指紋画像を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係り、CCDにより撮像した指紋画像を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係り、指先部の背側への光の照射点A〜Dを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係り、照射領域を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態1による指紋画像撮像装置の別の全体構成を示す側面図である。
【図11】本発明の実施の形態1による指紋画像撮像装置の要部の別の構成を示す側面図である。
【図12】本発明の実施の形態1による指紋画像撮像装置の要部のさらに別の構成を示す側面図である。
【図13】本発明の実施の形態2による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図14】本発明の実施の形態4による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図15】本発明の実施の形態4に係り、指先部近傍を腹側から見た様子を示す下面図である。
【図16】本発明の実施の形態5による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図17】本発明の実施の形態6による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図18】本発明の実施の形態6による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図19】本発明の実施の形態6による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図20】本発明の実施の形態7による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図21】本発明の実施の形態7に係り、指先部近傍を腹側から見た様子を示す下面図である。
【図22】本発明の実施の形態7に係り、指先部近傍を背側から見た様子を示す上面図である。
【図23】本発明の実施の形態7に係り、指先部近傍を背側から見た様子を示す上面図である。
【図24】本発明の実施の形態7に係り、指先部の背側を代表する直線15と光軸300に直交する平面402との成す角度(θ)と、指紋画像のコントラストとの関係を示すグラフである。
【図25】本発明の実施の形態7に係り、指先部の背側を代表する直線15と光軸300に直交する平面402との成す角度(θ)と、指紋画像のコントラストとの関係を示すグラフである。
【図26】本発明の実施の形態7による指紋画像撮像装置の要部の別の構成を示す側面図である。
【図27】本発明の実施の形態7による指紋画像撮像装置の別の全体構成を示す側面図である。
【図28】本発明の実施の形態8による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図29】本発明の実施の形態8に係り、指先部近傍を腹側から見た様子を示す下面図である。
【図30】本発明の実施の形態9による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図31】本発明の実施の形態9に係り、透明状被検体保持部と被検体との接触部を拡大して模式的に示す図である。
【図32】本発明の実施の形態11による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図33】本発明の実施の形態12による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図34】本発明の実施の形態12による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【図35】本発明の実施の形態12による指紋画像撮像装置の全体構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0135】
1 指先部、11 指紋、12 爪、16 照射領域、2 被検体保持部、21 開口付き被検体保持部、22 棒状被検体保持部、23 透明状被検体保持部、3 光源、30 光、31 マーカー光、32 光源駆動回路、33 マーカー光源、4 光学系、41 レンズ、42 絞り、400 光軸、5 撮像手段、51 波長選択素子、52 撮像素子、53 画像出力回路、55 ゲイン調整回路、6 信号処理部、61 画像取り込み部、62 画像処理部、63 指紋データ保存部、64 個人識別部、65 指存在判定部、66 明度判定部、67 指位置計測部、68 指静止判定部、70 スリット光、71 スリット光用光源、72スリット光用光源駆動回路、8 平面鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象となる指紋を有する指先部を被検体とし、上記被検体にこれを透過し得る光を照射する光源と、
上記指紋の表面が非接触の状態で上記被検体を保持し得る被検体保持部と、
上記被検体を透過する上記光源からの光を撮像して上記指紋の表面近傍の内部組織の凸部が暗く凹部が明るい指紋画像を得る撮像手段と、
上記被検体を透過する上記光源からの光を上記撮像手段に結像させる光学系とを備え、 上記光源からの光は上記指先部の複数の領域を照射する構成とし、
かつ上記光学系の光軸に直交する面に上記指先部の腹側を上記被検体保持部に当接させた位置を基準に、上記被検体の指先部先端側がその反対側に比して上記光学系から離れるように所定の角度傾いた状態となるように、上記光学系を配置した
ことを特徴とする指紋画像撮像装置。
【請求項2】
光の照射条件および撮像手段のゲインの少なくとも一方を調整することにより指紋画像の明度を調整する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の指紋画像撮像装置。
【請求項3】
同一の被検体についての明度の異なる複数の指紋画像を得、上記複数の指紋画像を重畳または部分的に貼り合せる手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の指紋画像撮像装置。
【請求項4】
撮像手段から出力された指紋画像を画像処理して指紋情報を得るとともに、この指紋情報に基づき個人を識別する信号処理部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の指紋画像撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2010−182328(P2010−182328A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68392(P2010−68392)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2005−286575(P2005−286575)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】