指紋耐性ガラス基板
疎水性、疎油性、粒状または液体物質の抗粘着性または付着性、指紋に対する耐性、耐久性、および透明性(すなわち、ヘイズ<10%)を含む研究された性質を有する少なくとも1つの表面を有するガラス基板が開示されている。その表面は、接触角の減少および水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の固定を防ぐ凹部形状を共に有する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を備える。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/175909号の恩恵を主張する、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/625020号に優先権を主張する、2010年4月20日に出願された米国特許出願第12/763649号に優先権を主張するものである。本出願はまた、2009年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/175909号の恩恵を主張する、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/625020号にも優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、指紋耐性ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
タッチスクリーン用途のための表面の需要が次第に増えてきた。美的観点と技術的観点の両方から、指紋の付着または汚れに耐性であるタッチスクリーン表面が望ましい。手持ち式電子装置に関する用途について、ユーザ・インタラクティブの表面の一般要件としては、高い透過率、低いヘイズ、指紋付着に対する耐性、反復使用に対する堅牢性、および非毒性が挙げられる。指紋耐性表面は、ユーザの指で触られたときに、水と油両方の付着に対して耐性でなければならない。そのような表面の湿潤特徴は、表面が疎水性かつ疎油性(oleophobic)であるようなものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に限られないが、疎水性(すなわち、水の接触角>90°)、疎油性(すなわち、油の接触角>90°)、指紋内に見られる粒状または液体物質の抗粘着性または付着性、耐久性、および透明性(すなわち、ヘイズ<10%)を含む研究した性質を持つ表面を少なくとも1つ有するガラス基板が提供される。このガラス基板は、疎水性および疎油性を提供する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を有する。
【0005】
したがって、本開示の第1の態様は、光学的に透明であり、指紋耐性である少なくとも1つの表面を有するガラス基板を提供することである。このガラス基板は、機械的および化学的磨耗に対して耐性である。本開示の第2の態様は、疎水性および疎油性である少なくとも1つの表面を有するガラス基板を提供することである。この少なくとも1つの表面は、ある平均寸法の少なくとも一組の位相幾何学的特徴を含み、その位相幾何学的特徴は、共に、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部(re-entrant)形状を有する。
【0006】
本開示の第3の態様は、疎水性であり疎油性である少なくとも1つの表面を有するガラス基板を製造する方法を提供することである。この方法は、ガラス基板を提供し、そのガラス基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する各工程を有してなる。この少なくとも一組の位相幾何学的特徴は、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有し、ここで、位相幾何学的特徴は、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を共に有する。
【0007】
これらと他の態様、利点、および顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)粗い固体表面上の流体液滴の湿潤挙動のウェンゼル(Wenzel)モデルを表す説明図、(b)粗い固体表面上の流体液滴の湿潤挙動のカシー・バクスター(Cassie-Baxter)モデルを表す説明図
【図2】多重レベルの表面的特徴を有するガラス基板の説明図
【図3】1μm超の寸法を有する表面的特徴の原子間力顕微鏡画像
【図4】(a)エッチング前のスパッタリングされたSnO2膜の柱状構造の断面図、(b)エッチング前のスパッタリングされたSnO2膜の柱状構造の平面図、(c)5分間に亘る濃HClによるエッチング後のスパッタリングされたSnO2膜の柱状構造の平面図
【図5】(a)エッチング前のスパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図、(b)15秒間に亘る0.1MのHClによるエッチング後のスパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図、(c)15秒間に亘る0.1MのHClによるエッチング後のスパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図
【図6】(a)指紋の固定(pinning)部位として働く第2の表面的特徴間隙の説明図、(b)(a)に示された第2の表面的特徴間隙における指紋の固定を最小にするために形成されたテフロン(登録商標)カスプ(cusps)の説明図
【図7】粗さ因子の関数としての予測される固液面積比をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字は、同様のまたは対応する部品を示す。別記しない限り、「上側」、「下側」、「外方」、「内方」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語として考えるべきではないことが理解されよう。その上、ある群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらの要素のいくつを含む、から実質的になる、またはからなるものであってよいことが理解されよう。同様に、ある群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらの要素のいくつからなるものであってよいことが理解されよう。別記しない限り、値の範囲は、列記されたときに、その範囲の上限と下限の両方を含む。
【0010】
概して図面を参照すると、図示は、特定の実施の形態を説明する目的のためであり、本開示または添付の特許請求の範囲をそれに制限することを意図するものではないことが理解されよう。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、図面のある特徴および視野は、明白さと簡潔さのために、縮尺または構造図で誇張されているであろう。
【0011】
指紋を阻害するまたははじく物品の主要特徴は、その物品の表面が、そのような指紋を含む液体に対して非湿潤性(すなわち、液滴と表面との間の接触角(CA)が90°超である)でなければならないことである。ここに用いたように、「抗指紋性」、「抗指紋」および「指紋耐性」という用語は、人の指紋に見られる流体および他の物質の付着に対する表面の耐性;そのような流体および物質に対する表面の非湿潤性特徴;表面上の人の指紋の最小化、隠蔽、またぼかし;およびそれらの組合せを称する。指紋は、皮脂(例えば、分泌された皮膚の油、脂肪、および垢)、死んだ脂肪生成細胞の残骸、および水性成分の全てを含む。そのような物質の組合せおよび/または混合物はここで、「指紋物質」とも称される。したがって、抗指紋表面は、ユーザの指に触られたときに、水と油両方の付着に対して耐性でなければならない。ある実施の形態において、人の指から、ここに記載されたガラス基板の指紋耐性表面に付着する指紋物質の量は、人の指が触れる毎に0.02mg未満である。別の実施の形態において、そのような物質が、触れる毎に0.01mg未満しか付着しない。さらに別の実施の形態において、そのような物質が、触れる毎に0.005mg未満しか付着しない。触れる毎に付着する液滴により被覆される指紋耐性表面の面積は、人の指が接触したガラス基板の表面の総面積の20%未満、ある実施の形態において、10%未満である。そのような表面の湿潤特徴は、その表面が疎水性(すなわち、水とガラス基板との間の接触角(CA)が90°超である)であり、疎油性(すなわち、油とガラス基板との間の接触角(CA)が90°超である)であるようなものである。
【0012】
表面粗さ(例えば、凸部、凹部、溝、細孔、くぼみ、間隙など)の存在により、所定の流体と平らな基板との間の接触角が変わり得、それはしばしば、「蓮の葉」または「蓮」効果と称される。Quere(Ann. Rev. Mater. Res. 2008, vol. 38, pp. 71-99)により記載されているように、粗い固体表面上での液体の湿潤挙動は、ウェンゼル(低接触角)モデルまたはカシー・バクスター(高接触角)モデルのいずれかにより説明できる。図1(a)に図示されるウェンゼルモデルにおいて、粗い固体表面110上の流体液滴120は、粗い固体表面110上の、必ずしも以下に限られないが、くぼみ、穴、溝、細孔、間隙などを含み得る自由空間114に入り、ある場合には、粗い表面110に「固定(pinned)」される。ウェンゼルモデルでは、滑らかな表面(図示せず)に対する粗い固体表面110の境界面積の増加を考慮し、滑らかな表面が疎水性である場合、そのような表面を粗くすると、その疎水性がさらに増加するであろうと予測される。逆に、滑らかな表面が親水性である場合、ウェンゼルモデルでは、そのような表面を粗くすると、その親水性挙動がさらに増加すると予測される。ウェンゼルモデルとは対照的に、カシー・バクスターモデル(図1(b)に図示されている)では、粗面化は常に、滑らかな固体表面が親水性であるか疎水性であるかにかかわらず、流体液滴120の接触角θYを増加させると予測される。カシー・バクスターモデルは、ガスポケット130が粗い固体表面110の自由空間114に形成され、粗い固体表面110上の流体液滴120の下に捕捉され、それゆえ、接触角θYの減少と、粗い固体表面110上への流体液滴120の固定を防ぐ場合を説明している。流体液滴120の固定を防ぐことに加え、ガスポケット130の存在により、液滴120の接触角θYも増加する。流体液滴120に印加される、人の指により印加される圧力などの圧力により、流体液滴120が自由空間114に入り、粗い固体表面上に固定される、すなわち、流体液滴120がカシー・バクスター状態(図1(b))からウェンゼル状態(図1(a))に移行する。抗指紋表面は、所定の流体と接触したときに、蓮の葉効果を与え、ガスポケットは、粗い固体表面上の流体液滴の下に捕捉され、流体液滴の固定が防がれる、カシー・バクスター状態に液滴を維持し、接触角θYの減少および圧力が流体液滴に印加されたときの、ウェンゼル状態への移行をある程度防ぐかまたは遅らせる。
【0013】
表面の疎水性および疎油性も固体基板の表面エネルギーγSVに関連する。表面の流体液滴との接触角θYは、式:
により定義され、ここで、θYは平らな表面に関する接触角(ヤングの接触角(Young's contact angle)としても知られている)であり、γSVは固体の表面エネルギーであり、γSLは液体と固体との間の界面エネルギーであり、γLVは液体の表面張力である。θY>90°とするために、cosθYは負であり、そのため、表面エネルギーγSVをγSL未満の値に制限しなければならない。液体と固体との間の界面エネルギーγSLは一般に知られておらず、接触角θYは、固体の表面エネルギーγSVを最小にし、疎水性および/または疎油性を達成するために、90°超(すなわち、cosθY<0)に通常は増加させられる。例えば、「テフロン」(ポリテトラフルオロエタン)などのフッ化材料を含む従来の非湿潤性の粗くないまたは滑らかな表面は、18ダイン/cmほど低い表面エネルギーを有する。「テフロン」表面は、オレイン酸(γSV〜32ダイン/cm)などの通常研究される油は「テフロン」上で約80°の接触角を示すので、疎油性ではない。
【0014】
疎水性および疎油性である抗指紋表面は、低い表面エネルギーを有する粗面を作製することによって達成できる。したがって、指紋耐性表面を有し、機械的および化学的磨耗に対して耐性性である、光学的に透明なガラス物品または基板(別記しない限り、「ガラス物品」および「ガラス基板」という用語は、同等の用語であり、ここでは交換可能に使用される)が提供される。ガラス基板は、様々な態様において、以下に限られないが、疎水性および疎油性を含む研究した特性を有する少なくとも1つの表面を有する。抗指紋、粒状物質の抗粘着性または付着性、機械的および化学的耐久性、透明性(例えば、ヘイズ<10%)などを含む他の性質も、様々な実施の形態において提供される。これらの属性は、基板の少なくとも1つの表面に、水、皮脂、指紋物質の内の少なくとも1つを含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を共に有する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を与えることによって達成される。ある実施の形態において、少なくとも一組の位相幾何学的特徴は、約50nmから約1μmまでの範囲の平均寸法を有する。ある実施の形態において、先に列記された属性は、ガラス基板の表面に、以下に限られないが、隆起、凸部、凹部、くぼみ、間隙などを含む複数の異なる組またはレベルの位相幾何学的特徴を与えることによって達成される。一組またはレベルの位相幾何学的特徴における位相幾何学的特徴は、他の組またはレベルにおける位相幾何学的特徴の平均寸法とは異なる平均寸法を有する。位相幾何学的特徴の組は、共に、接触角θYの減少および水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の固定を防ぐ凹部形状を形成する。
【0015】
多数の組の表面的特徴を有するガラス基板表面の例の断面図が図2に示されている。図2に示された表面構造は、接触角θYの減少および表面間隙内の流体液滴の入り込みまたは「固定」に抵抗し、それゆえ、疎水性、疎油性、抗付着性、および抗指紋特性を与える。さらに、図2に示された表面構造は、ある尺度の蓮の葉効果を与えられるタイプの表面の非限定的例として働く。疎水性/疎油性表面200は、第1の表面的特徴210、第2の表面的特徴220、および第3の表面的特徴230を含む。
【0016】
第1の表面的特徴210は、複数の凸部212および凹部214を含む。第1の表面的特徴210は、図2に示される表面的特徴の最大の長さ規模を有し、ここで、位相幾何学的特徴(ここでは、凸部212および凹部214)が、ある実施の形態において、2μm以下の第1の平均寸法を有する。ある実施の形態において、第1の表面的特徴210の位相幾何学的特徴の平均寸法は、約50nmから約300nmまでの範囲にある。他の実施の形態において、第1の表面的特徴210の位相幾何学的特徴の平均寸法は、約1μmから約50μmまでの範囲にある。別の実施の形態において、第1の表面的特徴210の位相幾何学的特徴の平均寸法は、約1μmから約10μmまでの範囲にある。第1の表面的特徴210は、ある実施の形態において、以下に限られないが、SnO2、ZnO、セリア、Al2O3、ジルコニアなどのどのようなエッチング可能な無機酸化物を含んでも差し支えない。
【0017】
第2のまたは中間の長さ規模の表面的特徴220は、第1の表面的特徴210上に重ねられている。第2の表面的特徴220は、粗面上の流体液滴120のカシー・バクスター状態(図1(b))からウェンゼル状態(図1(a))への移行を防ぐまたは遅くする凹部形状を提供する。カシー・バクスター状態において、流体液滴120は、第1の表面的特徴210を構成する凸部212の上に載っている。第2の表面的特徴220の特徴構造は、第1の表面的特徴210から、ガラス基板200の面から角度a(「凹部角度」とも称される)で突出し、凸部212の間の凹部214により形成された自由空間中への流体液滴120の侵入をなくとも部分的に阻み、それゆえ、ガラス基板200の表面のウェンゼル状態(図1(a))への移行を防ぐかまたは遅くする。
【0018】
図2に示されるように、第2の表面的特徴220は、第1の表面的特徴210のより大きな凹部の表面上に凹部を備え得る。第2の表面的特徴220における位相幾何学的特徴の平均寸法は、第1の表面的特徴210の平均寸法よりも小さく、ある実施の形態において、約1nmから約1μmまでの範囲にある。他の実施の形態において、第2の表面的特徴220の平均寸法は、約1nmから約50nmまでの範囲にある。ある実施の形態において、第2の表面的特徴220は、金属、または以下に限られないが、SnO2、ZnO、セリア、Al2O3、ジルコニアなどの任意のエッチング可能な無機酸化物を含む。
【0019】
第3のまたは最小の長さ規模の表面的特徴230は、化学結合の規模(約0.7オングストロームから約3オングストロームまで(70〜300pm)の範囲)の位相幾何学的特徴を有する。第3の表面的特徴230は、蝋状であり、低い表面エネルギー誘導部分を有する。ある実施の形態において、第3の表面的特徴230は、第1と第2の表面的特徴210,220の表面の少なくとも一部分を被覆し、以下に限られないが、「テフロン」または以下に限られないが、Dow Corning 2604、2624、2634、DK Optool DSX、Shinetsu OPTRON、ヘプタデカフルオロシラン(Gelest)、FluoroSyl(Cytonix)などの他の市販のフルオロポリマーまたはフルオロシランなどの、低表面エネルギーポリマーまたはオリゴマーを含むコーティングである。圧力(例えば、指により印加される圧力)の印加の際に、第2の表面的特徴220内の間隙内に液滴120が固定されるのを防ぐために、凹部間隙または堀でカスプ230を形成するように第3の表面的特徴230を調整して、固定を最小にし、それゆえ、追加の効果的な凹部妨害形状を提供する。
【0020】
第1と第2の長さ規模の表面的特徴は、規則正しい、乱れた、「自己アフィン」またはフラクタル、もしくはそれらの任意の組合せであって差し支えない。位相幾何学的テキスチャーの実際の位相幾何学および/または微細構造の性質にかかわらず、物品の表面が指紋耐性、疎油性、および/または超疎油性であるためには、特定の平均形状条件を満たす必要がある。
【0021】
疎油性について、式:
【数1】
【0022】
にしたがって、基板の表面粗さ比(rf)および固液面積比(f)の間で、上の要件を満たさなければならない。
【0023】
したがって、超疎油性(接触角≧150°)について、基板の表面粗さ比(rf)および固液面積比(f)の間で、以下の要件を満たさなければならない:
【数2】
【0024】
中間レベルの疎油性−例えば、125°超の接触角について、基板の表面粗さ比(rf)および固液面積比(f)の間で、以下の要件を満たさなければならない:
【数3】
【0025】
指紋耐性表面を達成するのに必要な、固液面積比(f)と粗さ因子rfとの間の関係が、図7にプロットされている。物品が最小の指紋耐性を有するためには、テキスチャーは、座標(f,rf)が図7におけるCA=90°の曲線の下にあるべきである。表面が、超疎油性挙動および/または極めて高い指紋耐性を示すためには、基板の表面上のテキスチャーは、f対rfの座標が、図7に示されたCA=150°の曲線の下の区域に入るようなものである必要がある。ここに記載されたガラス基板の指紋耐性表面は、式(1)に表される関係により定義されるテキスチャーを有する。別の実施の形態において、テキスチャーは、式(2)により表される関係により定義され、第3の実施の形態において、テキスチャーは、式(3)により表される関係により定義される。
【0026】
光学的透明性の目的で、テキスチャーの長さ規模は、選択した範囲内に制限されるべきである。この長さ規模の制限は、指紋の液滴が、ほぼ2〜5μm程度の平均直径を有する有限サイズ分布を有するという事実のために生じる。ここに記載された抗指紋表面および基板において、テキスチャーは、1nmと2μmの間の二乗平均平方根(RMS)の振幅を有する。ある実施の形態において、テキスチャーのRMS振幅は、1nmと500nmの間にあり、別の実施の形態において、1nmと300nmの間にある。テキスチャーは、1nmと10nmの間の自己相関長さ規模を有する。ある実施の形態において、自己相関は、1nmと1μmの間にあり、別の実施の形態において、1nmと500nmの間にある。
【0027】
液体メニスカス、特に油メニスカスが、隣接する隆起部間の空間に入るのを止めるであろう負のラプラス圧力を生じるために、第2の表面的特徴のテキスチャーの少なくとも10%が、90°未満、ある実施の形態において、75°未満の配向角(図2の角度a)を有する。
【0028】
ある実施の形態において、ガラス基板は、2つの主面を有する平らなまたは三次元シートである。そのガラス基板の少なくとも1つの主面は、ここに記載したような複数の異なる組またはレベルの位相幾何学的特徴を有する。ある実施の形態において、基板の両方の主面が、複数のレベルの表面的特徴を有する。他の実施の形態において、ガラス基板の1つの主面がそのような特徴を有する。
【0029】
疎水性であり疎油性である表面を有するガラス基板を製造する方法も提供される。この方法は、表面を有するガラス基板を提供し、このガラス基板の少なくとも1つの表面に、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する各工程を有してなる。これらの位相幾何学的特徴は、共に、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を有する。ある実施の形態において、複数の組の位相幾何学的特徴が基板の表面に形成される。複数の組の各々は、他の組の位相幾何学的特徴の平均寸法とは異なる平均寸法の位相幾何学的特徴を有する。それらの組の位相幾何学的特徴は、共に、接触角θYの減少および水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の固定を防ぐ凹部形状を有する。
【0030】
様々な実施の形態において、複数の組の位相幾何学的特徴は、先に記載した、第1の表面的特徴210,第2の表面的特徴220、および第3の表面的特徴230の内の少なくとも1つを含む。
【0031】
ある実施の形態において、第1の表面的特徴210は、ガラス基板200の表面をサンドブラストすることによって形成することができる。ある非限定的例において、ガラス基板200の表面は、所望の粗さパラメータを達成するために異なる時間に亘り50μmのアルミナグリットでサンドブラストされる。次いで、サンドブラストされた表面を、ここに記載した堆積法により無機酸化物で被覆して、第1の表面的特徴210を達成する。
【0032】
別の実施の形態において、第1の表面的特徴210は、当該技術分野に公知の物理的または化学気相成長法を使用して、ガラス基板200の表面に、シャドーマスクを通じて酸化物薄膜を堆積させることによって形成される。ある実施の形態において、シャドーマスクは、ガラス基板の表面に配置される。次いで、マスクを通じてガラス基板にZnOをスパッタリングして、マスクの特徴構造を模倣した第1の表面的特徴210を得る。スパッタリングされたZnO表面の原子間力顕微鏡(AFM)画像である図3が、第1の表面的特徴210の特徴構造を示している。そのような特徴構造は、約50nmの高さaおよび約55μmのピッチまたは間隔bを有する25μmの直径の「隆起部」212を含む。
【0033】
第2の表面的特徴220は、当該技術分野に公知のそれらの物理(例えば、スパッタリング、蒸着、レーザアブレーションなど)または化学(例えば、CVD、プラズマ支援または助長CVDなど)気相成長法を使用して形成できる。ある実施の形態において、第2の表面的特徴220は、スパッタリングされた金属酸化物薄膜をエッチングすることにより、または蒸着した金属膜を陽極酸化することにより、形成される。スパッタリングパラメータ(例えば、スパッタリング圧および基板温度)は、所望の表面的特徴を製造するためにエッチング挙動に相関させることができる。その内容をここに全て引用する、L.Kluth等の改良ソーントン(Thornton)モデル(“Modified Thornton Model for Magnetron Sputtered Zinc Oxide: Film Structure and Etching Behavior,” Thin Solid Films, 2003, vol. 442, pp. 80-85)には、スパッタリングパラメータ(スパッタリング圧およびガラス基板温度)間の相関関係、構造的膜特性、およびガラス基板上のRFスパッタリングされた膜のエッチング挙動が記載されている。スパッタリング条件を適切に調節して、スパッタリングされた柱状または粒状形態(morphology)を選択し形成し、この形態は後でエッチングされる。
【0034】
図4(a)〜(c)および図5(a)〜(c)は、第2の表面的特徴220の10〜100nmの表面特徴構造がどのようにエッチングにより形成されるかの2つの例を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図4および5に示された個々の表面特徴構造は、約10および500nmの間の寸法を有する。図4(a)〜(c)は、柱状構造を有するスパッタリングされたSnO2膜上で5分間に亘り濃HClを使用した強力なエッチングの効果を示している。図4は、エッチング前のSnO2膜の柱状構造410の断面図(図4(a))および平面図(図4(b))のSEM画像を含む。エッチングして、所望のレベルの粗さを達成し、第2の表面的特徴420を製造した後のSnO2膜の平面図の顕微鏡画像が図4(c)に示されている。
【0035】
図5(a)〜(c)は、図4(a)においてSnO2膜について示されたものと類似の柱状構造を有する、スパッタリングされたZnO膜への穏やかなエッチングの効果を示している。図5(a)は、エッチング前のZnO膜の柱状構造510の平面図であり、図5(b)および5(c)は、第2の表面的特徴520を製造するために0.1MのHClにより、それぞれ、15秒間および45秒間に亘りエッチングした後の、スパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図である。ZnO膜の粗さは、エッチング時間が増加するにつれて増加した。
【0036】
第3の表面的特徴は、以下に限られないが、ここに先に記載したフルオロポリマーまたはフルオロシランなどの、低表面エネルギーポリマーまたはオリゴマーを含む。第3の表面的特徴は、第1と第2の表面的特徴の層の形成後に形成される。第3の表面的特徴を構成するオリゴマーまたはポリマーは、スパッタリング、溶射被覆、回転塗布、浸漬被覆などによって、ガラス基板200の表面に堆積される。
【0037】
「テフロン」は、アルミノケイ酸アルカリガラスの表面に、それらの表面がイオン交換されているか否かにかかわらず、よく付着し、スパッタリングが容易である。「テフロン」堆積速度は、アルゴンスパッタリング(50W、1〜5ミリトルの条件)について、約7nm/分ほど速い。スパッタリングされた「テフロン」は、O2プラズマ(5〜15分、200W)で処理したときに、疎水性の変化をほとんど示さない。水の接触角は、約100°を超えなかった。しかしながら、スパッタリングされた「テフロン」のO2プラズマ処理により、疎油性の閾値が20°から60°に増加する。
【0038】
スパッタリングされた「テフロン」の低表面エネルギーの表面を含む第3の表面的特徴の非限定的例が、図6(a)および(b)に示されている。図6(a)および(b)は、指紋成分の固定が凹部妨害形状によりどのように緩和されるかを示している。指紋の吸着成分が、指の圧が印加される際に、第2の表面的特徴における間隙610(図6(a))中に分散し、固定されるのを防ぐために、「テフロン」をスパッタリングするための堆積条件が、凹部間隙(堀)壁710にカスプ620(図6(b))を形成してこの間隙内または堀の壁への固定を最小にするように調整され、それゆえ、安価で効果的な凹部妨害形状を提供する。これは、その下で堆積中の平均自由通路が小さくなる、当該技術分野に公知のスパッタリング条件を使用することによって行われる。その上、ガラス基板の表面は、表面移動を減少させるように冷却される。
【0039】
ある実施の形態において、ここに記載されたガラス基板は透明であり、その基板および抗指紋表面を通る、70%超の透過率を有する。ある実施の形態において、基板および抗指紋表面を通る透過率は、80%超、他の実施の形態において、90%超である。
【0040】
ここに用いたように、「ヘイズ」および「透過ヘイズ」という用語は、その内容をここに全て引用する、ASTM手法D1003にしたがう±4.0°の尖った円錐の外側に散乱される透過光のパーセントを称する。光学的に滑らかな表面について、透過ヘイズは一般にゼロに近い。記載されたガラス基板の抗指紋表面は、約80%未満のヘイズを有する。第2の実施の形態において、防眩表面は、50%未満のヘイズを有し、第3の実施の形態において、抗指紋表面の透過ヘイズは10%未満である。
【0041】
ここに用いたように、「光沢」という用語は、その内容をここに全て引用する、ASTM手法D523にしたがう基準(例えば、認定黒色ガラス基準などの)に校正された鏡面反射率の測定を称する。ここに記載されたガラス基板の抗指紋表面は、60%超の光沢(すなわち、基準に対してサンプルから鏡面反射した光の量が60)を有する。
【0042】
ここに記載された異なる表面的特徴の組合せは、ある実施の形態において、ガラス基板の表面に、布地または例えば、人の指などの他の手段により擦られたときに、もしくは酸または塩基による攻撃などの化学的磨耗に曝露されたときに向上した耐久性を与える。被覆耐久性(クロック耐性(Crock Resistance)とも呼ばれる)は、被覆されたガラスサンプルの、生地による繰り返しの擦りに耐える能力を称する。クロック耐性試験は、衣服や布地とタッチスクリーン装置との間の物理的接触を模倣し、そのような処理後の被覆の耐久性を決定することを意味する。
【0043】
クロックメータ(Crockmeter)は、そのような擦りに曝された表面のクロック耐性を決定するために使用される標準機器である。クロックメータは、ガラススライドを、加重アームの端部に取り付けられた擦り端または指との直接接触に曝す。クロックメータに備えられた標準的指は、15mmの直径の中実アクリルロッドである。標準的なクロッキング生地の綺麗な小片をこのアクリル指に取り付ける。次いで、指を900gの圧力でサンプル上に載せ、耐久性/クロック耐性における変化を観察するために、サンプルに渡ってアームを前後に繰り返し動かす。ここに記載された試験に使用されるクロックメータは、60rpmの均一なストローク速度を提供する電動式モデルである。クロックメータ試験は、“Standard Test Method for Determination of Abrasion and Smudge Resistance of Images Produced from Business Copy Products.”と題するASTM試験手法F1319−94に記載されている。
【0044】
ここに記載された被覆および表面のクロック耐性または耐久性は、1つの拭き動作が擦り端または指の2ストロークまたは1サイクルと定義される、ASTM試験手法F1319−94により定義された特定の数の拭き動作後の光学的(例えば、ヘイズまたは透過率)または化学的(例えば、水および/または油の接触角)測定により決定される。ある実施の形態において、基板のここに記載された指紋耐性表面上の油の接触角は、50拭き動作後に初期値の20%以内である。ある実施の形態において、指紋耐性表面上の油の接触角は、1000拭き動作後に初期値の20%以内であり、ある実施の形態において、指紋耐性表面上の油の接触角は、5000拭き動作後に初期値の20%以内である。同様に、基板の表面上の水の接触角は、50拭き動作後に初期値の20%以内のままである。他の実施の形態において、基板の表面上の水の接触角は、1000拭き動作後に初期値の20%以内のままであり、他の実施の形態において、基板の表面上の水の接触角は、5000拭き動作後に初期値の20%以内のままである。ここに記載された抗指紋表面は、そのような反復の拭き動作後に低レベルのヘイズのままでもある。ある実施の形態において、ガラス基板は、ASTM試験手法F1319−94により定義されるように、少なくとも100の拭き動作後に10%未満のヘイズを有する。
【0045】
ここに先に記載した接触角(θY)はしばしば、抗指紋の疎油性および疎水性を評価するための測定基準として使用される。先に論じたように、接触角は、親水性および/または親油性指紋成分と、ガラス基板の研究した表面との間の湿潤程度の尺度である。湿潤性が低いほど(すなわち、接触角が大きいほど)、表面への付着性が弱くなる。抗指紋および抗付着性について、接触角は、ある実施の形態において、親油性物質および親水性物質の両方について90°超である。
【0046】
ある非限定的例において、水の(親水性)およびオレイン酸の(親油性)接触角を、ここに記載された表面的特徴を持つ表面を有するアルミノケイ酸アルカリガラスのサンプル上で測定した。各ガラス表面を、ZnOスパッタリングのために、最初に各ガラス表面に5分間に亘り200ワットでO2プラズマによるプラズマ処理を施すことによって調製した。次いで、1ミリトルのアルゴンチャンバ内で50ワットのRF出力を使用して、60分間に亘りZnO標的をスパッタリングすることによって、ZnOをガラス表面上に堆積させた。このサンプルを0.05MのHCl中で15、30、45または90秒間に亘りエッチングし、次いで、水およびオレイン酸についての接触角を測定した。次いで、サンプルをEZ−Clean(商標)(Dow Corning DC2604)を含むフルオロシラン溶液中で浸漬被覆し、次いで、別の接触角の測定を行った。各サンプルについての水とオレイン酸の接触角が表1に列記されている。表1に示されるように、テキスチャー付きサンプルをEZ−Cleanで被覆する前に測定した親水性接触角(表1の「EZ−cleanなし」)は、約15°(サンプルD)からわずかに30°未満(サンプルI)までに及び、低い。EZ−clean中の浸漬被覆後(表1の「EZ−cleanあり」)に、各サンプルの親水性接触角は、疎水性に関する90°の閾値より大きい値まで相当増加し、約131°から139°までの範囲にあった。同様に、各サンプルについて測定したオレイン酸の接触角は、疎油性挙動に関する閾値を超え、約93°から約96°に及んだ。ここに記載された多重の表面的特徴(EZ−cleanにより提供された第3の表面的特徴を含む)を有する表面が設けられたガラス表面は、表1に示された接触角測定の結果により証拠付けられるように、疎水性および疎油性の両方の挙動を示す。
【表1】
【0047】
ある実施の形態において、ガラス物品は、ソーダ石灰ガラスを含む、から実質的になる、またはからなる。別の実施の形態において、ガラス物品は、以下に限られないが、アルミノケイ酸アルカリガラスなどの、ダウンドローできる任意のガラスを含む、から実質的になる、またはからなる。ある実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、60〜72モル%のSiO2、9〜16モル%のAl2O3、5〜12モル%のB2O3、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、
【0048】
アルカリ金属改質剤はアルカリ金属酸化物である。別の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl2O3、0〜12モル%のB2O3、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaOを含む、から実質的になる、またはからなる。さらに別の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl2O3、0〜15モル%のB2O3、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、および50ppm未満のSb2O3を含み、から実質的になり、またはからなり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%。さらに別の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、64〜68モル%のSiO2、12〜16モル%のNa2O、8〜12モル%のAl2O3、0〜3モル%のB2O3、2〜5モル%のK2O、4〜6モル%のMgO、および0〜5モル%のCaOを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)−Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O−Al2O3≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)−Al2O3≦10モル%。第3の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、50〜80質量%のSiO2、2〜20質量%のAl2O3、0〜15質量%のB2O3、1〜20質量%のNa2O、0〜10質量%のLi2O、0〜10質量%のK2O、および0〜5質量%の(MgO+CaO+SrO+BaO)、0〜3質量%の(SrO+BaO)、および0〜5質量%の(ZrO2+TiO2)を含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、0≦(Li2O+K2O)/Na2O≦0.5。
【0049】
ある特別な実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、組成:66.7モル%のSiO2、10.5モル%のAl2O3、0.64モル%のB2O3、13.8モル%のNa2O、2.06モル%のK2O、5.50モル%のMgO、0.46モル%のCaO、0.01モル%のZrO2、0.34モル%のAs2O3、および0.007モル%のFe2O3を有する。別の特別な実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、組成:66.4モル%のSiO2、10.3モル%のAl2O3、0.60モル%のB2O3、4.0モル%のNa2O、2.10モル%のK2O、5.76モル%のMgO、0.58モル%のCaO、0.01モル%のZrO2、0.21モル%のSnO2、および0.007モル%のFe2O3を有する。
【0050】
アルミノケイ酸アルカリガラスは、ある実施の形態において、リチウムを実質的に含まないのに対し、他の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、ヒ素、アンチモン、およびバリウムの内の少なくとも1つを実質的に含まない。ある実施の形態において、ガラス物品は、以下に限られないが、フュージョンドロー、スロットドロー、リドローなどの当該技術分野に公知の方法を使用して、ダウンドローされる。
【0051】
そのようなアルミノケイ酸アルカリガラスの非限定的例が、2007年7月31日に出願された、“Down-Drawable, Chemically Strengthened Glass for Cover Plate,”と題するAdam J. Ellison等による米国特許出願第11/888213号、これは、2007年5月22日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許出願第60/930808号からの優先権を主張する;2008年11月25日に出願された、“Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance,”と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/277573号、これは、2007年11月29日に出願された、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/004677号からの優先権を主張する;2009年2月25日に出願された、“Fining Agents for Silicate Glasses,”と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/392577号、これは、2008年2月26日に出願された、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/067130号からの優先権を主張する;2009年2月26日に出願された、“Ion-Exchanged, Fast Cooled Glasses,”と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/393241号、これは、2008年2月29日に出願された、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/067732号からの優先権を主張する;2009年8月7日に出願された、“Strengthened Glass Articles and Methods of Making,”と題する、Kristen L. Barefoot等による米国特許出願第12/537393号、これは、2008年8月8日に出願された、“Chemically Tempered Cover Glass,”と題する米国仮特許出願第61/087324号からの優先権を主張する;2009年8月21日に出願された、“Crack and Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom,”と題する、Kristen L. Barefoot等による米国仮特許出願第61/235767号;2009年8月21日に出願された、“Zircon Compatible Glasses for Down Draw,”と題するMatthew J. Dejneka等による米国仮特許出願第61/235762号に記載されており、これらの内容を全てここに引用する。
【0052】
ガラス物品または基板は、ここに記載された粗いガラス基板表面を形成する前に、化学的または熱的に強化されている。ある実施の形態において、ガラス物品は、ガラスの「親板」から切断または分割される前か後のいずれかに強化される。強化されたガラス物品は、第1の表面と第2の表面から、各表面下にある深さの層まで延在する強化表面層を有する。その強化表面層は圧縮圧力下にあるのに対し、ガラス物品の中央領域は、ガラス内の力を釣り合わせるように、張力下、または引張応力下にある。熱的強化(ここでは、「熱的焼き戻し(thermal tempering)」とも称される)において、ガラス物品は、ガラスの歪み点より高いが、ガラスの軟化点より低い温度に加熱され、歪み点より低い温度まで急冷されて、ガラスの表面に強化層が形成される。別の実施の形態において、ガラス物品は、イオン交換として知られているプロセスによって化学的に強化できる。このプロセスにおいて、ガラスの表面層中のイオンは、同じ原子価または酸化状態を有するより大きいイオンにより置き換えられる、すなわち交換される。ガラス物品がアルミノケイ酸アルカリガラスを含む、から実質的になる、またはからなる、それらの実施の形態において、ガラスの表面層中のイオンおよびより大きいイオンは、Li+(ガラス中に存在する場合)、Na+、K+、Rb+およびCs+などの一価のアルカリ金属陽イオンである。あるいは、表面層中の一価の陽イオンは、Ag+などの、アルカリ金属陽イオン以外の一価の陽イオンにより置き換えられてもよい。
【0053】
イオン交換プロセスは、一般に、ガラス物品を、ガラス中のより小さいイオンと交換すべきより大きいイオンを含有する溶融塩浴中に浸漬する工程を有してなる。以下に限られないが、浴の組成と温度、浸漬時間、塩浴(または複数の浴)中のガラスの浸漬の回数、多数の塩浴の使用、アニールや洗浄などの追加の工程を含むイオン交換プロセスに関するパラメータは、一般に、ガラスの組成および強化操作により達成すべきガラスの圧縮応力と層の所望の深さにより決定されることが当業者には認識されるであろう。一例として、アルカリ金属含有ガラスのイオン交換は、以下に限られないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融塩浴中の浸漬により行われるであろう。溶融塩浴の温度は、一般に、約380℃から約450℃の範囲にあるのに対し、浸漬時間は、約15分間から約16時間までに及ぶ。しかしながら、ここに記載されたものと異なる温度および浸漬時間を使用してもよい。そのようなイオン交換処理により、一般に、約200MPaから約800MPaに及ぶ圧縮応力および約100MPa未満の中央張力を有する、約10μmから少なくとも50μmに及ぶ層の深さを有する強化されたアルミノケイ酸アルカリガラスが得られる。
【0054】
イオン交換プロセスの非限定的例が、先に挙げた米国特許出願および仮特許出願に与えられている。ガラスが多数のイオン交換浴中に浸漬され、浸漬の間に洗浄および/またはアニール工程が行われる、イオン交換プロセスの追加の非限定的例例が、ガラスが、多数の連続したイオン交換処理において、異なる濃度の塩浴中の浸漬により強化される、2009年7月10日に出願され、“Glass with Compressive Surface for Consumer Applications,”と題する、Douglas C. Allan等による米国特許出願第12/500650号、これは、2008年7月11日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/079995号からの優先権を主張する;およびガラスが、流出イオンにより希釈された第1の浴中のイオン交換により強化され、その後、第1の浴とは異なるより低い流出イオン濃度を有する第2の浴に浸漬される、2009年7月28日に出願された、“Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass,”と題する、Christopher M. Lee等による米国特許出願第12/510599号、これは、2008年7月29日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許第61/084398号からの優先権を主張する;に記載されている。米国特許出願第12/500650号および同第12/510599号の内容を全てここに引用する。
【0055】
記載されたガラス基板は、以下に限られないが、電話、音楽プレーヤ、ビデオプレーヤなどの手持ち式通信およびエンターテイメント装置のような、ディスプレイおよびタッチ用途のための保護カバーとして、また情報関連端末(IT)(例えば、ポータブルまたはラップトップコンピュータ)装置のためのディスプレイスクリーンとして、並びに他の用途において、使用することができる。
【0056】
説明の目的で典型的な実施の形態を述べてきたが、先の説明は、本開示の範囲または添付の特許請求の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、本開示の精神および範囲または特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および変更が当業者に考えられるであろう。
【符号の説明】
【0057】
110 粗い固体表面
114 自由空間
120 流体液滴
130 ガスポケット
200 疎水性/疎油性表面
210 第1の表面的特徴
212 凸部
214 凹部
220,420,520 第2の表面的特徴
230 第3の表面的特徴
410,510 柱状構造
【図1(a)】
【図1(b)】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/175909号の恩恵を主張する、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/625020号に優先権を主張する、2010年4月20日に出願された米国特許出願第12/763649号に優先権を主張するものである。本出願はまた、2009年5月6日に出願された米国仮特許出願第61/175909号の恩恵を主張する、2009年11月24日に出願された米国特許出願第12/625020号にも優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、指紋耐性ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
タッチスクリーン用途のための表面の需要が次第に増えてきた。美的観点と技術的観点の両方から、指紋の付着または汚れに耐性であるタッチスクリーン表面が望ましい。手持ち式電子装置に関する用途について、ユーザ・インタラクティブの表面の一般要件としては、高い透過率、低いヘイズ、指紋付着に対する耐性、反復使用に対する堅牢性、および非毒性が挙げられる。指紋耐性表面は、ユーザの指で触られたときに、水と油両方の付着に対して耐性でなければならない。そのような表面の湿潤特徴は、表面が疎水性かつ疎油性(oleophobic)であるようなものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に限られないが、疎水性(すなわち、水の接触角>90°)、疎油性(すなわち、油の接触角>90°)、指紋内に見られる粒状または液体物質の抗粘着性または付着性、耐久性、および透明性(すなわち、ヘイズ<10%)を含む研究した性質を持つ表面を少なくとも1つ有するガラス基板が提供される。このガラス基板は、疎水性および疎油性を提供する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を有する。
【0005】
したがって、本開示の第1の態様は、光学的に透明であり、指紋耐性である少なくとも1つの表面を有するガラス基板を提供することである。このガラス基板は、機械的および化学的磨耗に対して耐性である。本開示の第2の態様は、疎水性および疎油性である少なくとも1つの表面を有するガラス基板を提供することである。この少なくとも1つの表面は、ある平均寸法の少なくとも一組の位相幾何学的特徴を含み、その位相幾何学的特徴は、共に、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部(re-entrant)形状を有する。
【0006】
本開示の第3の態様は、疎水性であり疎油性である少なくとも1つの表面を有するガラス基板を製造する方法を提供することである。この方法は、ガラス基板を提供し、そのガラス基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する各工程を有してなる。この少なくとも一組の位相幾何学的特徴は、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有し、ここで、位相幾何学的特徴は、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を共に有する。
【0007】
これらと他の態様、利点、および顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)粗い固体表面上の流体液滴の湿潤挙動のウェンゼル(Wenzel)モデルを表す説明図、(b)粗い固体表面上の流体液滴の湿潤挙動のカシー・バクスター(Cassie-Baxter)モデルを表す説明図
【図2】多重レベルの表面的特徴を有するガラス基板の説明図
【図3】1μm超の寸法を有する表面的特徴の原子間力顕微鏡画像
【図4】(a)エッチング前のスパッタリングされたSnO2膜の柱状構造の断面図、(b)エッチング前のスパッタリングされたSnO2膜の柱状構造の平面図、(c)5分間に亘る濃HClによるエッチング後のスパッタリングされたSnO2膜の柱状構造の平面図
【図5】(a)エッチング前のスパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図、(b)15秒間に亘る0.1MのHClによるエッチング後のスパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図、(c)15秒間に亘る0.1MのHClによるエッチング後のスパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図
【図6】(a)指紋の固定(pinning)部位として働く第2の表面的特徴間隙の説明図、(b)(a)に示された第2の表面的特徴間隙における指紋の固定を最小にするために形成されたテフロン(登録商標)カスプ(cusps)の説明図
【図7】粗さ因子の関数としての予測される固液面積比をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字は、同様のまたは対応する部品を示す。別記しない限り、「上側」、「下側」、「外方」、「内方」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語として考えるべきではないことが理解されよう。その上、ある群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらの要素のいくつを含む、から実質的になる、またはからなるものであってよいことが理解されよう。同様に、ある群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらの要素のいくつからなるものであってよいことが理解されよう。別記しない限り、値の範囲は、列記されたときに、その範囲の上限と下限の両方を含む。
【0010】
概して図面を参照すると、図示は、特定の実施の形態を説明する目的のためであり、本開示または添付の特許請求の範囲をそれに制限することを意図するものではないことが理解されよう。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、図面のある特徴および視野は、明白さと簡潔さのために、縮尺または構造図で誇張されているであろう。
【0011】
指紋を阻害するまたははじく物品の主要特徴は、その物品の表面が、そのような指紋を含む液体に対して非湿潤性(すなわち、液滴と表面との間の接触角(CA)が90°超である)でなければならないことである。ここに用いたように、「抗指紋性」、「抗指紋」および「指紋耐性」という用語は、人の指紋に見られる流体および他の物質の付着に対する表面の耐性;そのような流体および物質に対する表面の非湿潤性特徴;表面上の人の指紋の最小化、隠蔽、またぼかし;およびそれらの組合せを称する。指紋は、皮脂(例えば、分泌された皮膚の油、脂肪、および垢)、死んだ脂肪生成細胞の残骸、および水性成分の全てを含む。そのような物質の組合せおよび/または混合物はここで、「指紋物質」とも称される。したがって、抗指紋表面は、ユーザの指に触られたときに、水と油両方の付着に対して耐性でなければならない。ある実施の形態において、人の指から、ここに記載されたガラス基板の指紋耐性表面に付着する指紋物質の量は、人の指が触れる毎に0.02mg未満である。別の実施の形態において、そのような物質が、触れる毎に0.01mg未満しか付着しない。さらに別の実施の形態において、そのような物質が、触れる毎に0.005mg未満しか付着しない。触れる毎に付着する液滴により被覆される指紋耐性表面の面積は、人の指が接触したガラス基板の表面の総面積の20%未満、ある実施の形態において、10%未満である。そのような表面の湿潤特徴は、その表面が疎水性(すなわち、水とガラス基板との間の接触角(CA)が90°超である)であり、疎油性(すなわち、油とガラス基板との間の接触角(CA)が90°超である)であるようなものである。
【0012】
表面粗さ(例えば、凸部、凹部、溝、細孔、くぼみ、間隙など)の存在により、所定の流体と平らな基板との間の接触角が変わり得、それはしばしば、「蓮の葉」または「蓮」効果と称される。Quere(Ann. Rev. Mater. Res. 2008, vol. 38, pp. 71-99)により記載されているように、粗い固体表面上での液体の湿潤挙動は、ウェンゼル(低接触角)モデルまたはカシー・バクスター(高接触角)モデルのいずれかにより説明できる。図1(a)に図示されるウェンゼルモデルにおいて、粗い固体表面110上の流体液滴120は、粗い固体表面110上の、必ずしも以下に限られないが、くぼみ、穴、溝、細孔、間隙などを含み得る自由空間114に入り、ある場合には、粗い表面110に「固定(pinned)」される。ウェンゼルモデルでは、滑らかな表面(図示せず)に対する粗い固体表面110の境界面積の増加を考慮し、滑らかな表面が疎水性である場合、そのような表面を粗くすると、その疎水性がさらに増加するであろうと予測される。逆に、滑らかな表面が親水性である場合、ウェンゼルモデルでは、そのような表面を粗くすると、その親水性挙動がさらに増加すると予測される。ウェンゼルモデルとは対照的に、カシー・バクスターモデル(図1(b)に図示されている)では、粗面化は常に、滑らかな固体表面が親水性であるか疎水性であるかにかかわらず、流体液滴120の接触角θYを増加させると予測される。カシー・バクスターモデルは、ガスポケット130が粗い固体表面110の自由空間114に形成され、粗い固体表面110上の流体液滴120の下に捕捉され、それゆえ、接触角θYの減少と、粗い固体表面110上への流体液滴120の固定を防ぐ場合を説明している。流体液滴120の固定を防ぐことに加え、ガスポケット130の存在により、液滴120の接触角θYも増加する。流体液滴120に印加される、人の指により印加される圧力などの圧力により、流体液滴120が自由空間114に入り、粗い固体表面上に固定される、すなわち、流体液滴120がカシー・バクスター状態(図1(b))からウェンゼル状態(図1(a))に移行する。抗指紋表面は、所定の流体と接触したときに、蓮の葉効果を与え、ガスポケットは、粗い固体表面上の流体液滴の下に捕捉され、流体液滴の固定が防がれる、カシー・バクスター状態に液滴を維持し、接触角θYの減少および圧力が流体液滴に印加されたときの、ウェンゼル状態への移行をある程度防ぐかまたは遅らせる。
【0013】
表面の疎水性および疎油性も固体基板の表面エネルギーγSVに関連する。表面の流体液滴との接触角θYは、式:
により定義され、ここで、θYは平らな表面に関する接触角(ヤングの接触角(Young's contact angle)としても知られている)であり、γSVは固体の表面エネルギーであり、γSLは液体と固体との間の界面エネルギーであり、γLVは液体の表面張力である。θY>90°とするために、cosθYは負であり、そのため、表面エネルギーγSVをγSL未満の値に制限しなければならない。液体と固体との間の界面エネルギーγSLは一般に知られておらず、接触角θYは、固体の表面エネルギーγSVを最小にし、疎水性および/または疎油性を達成するために、90°超(すなわち、cosθY<0)に通常は増加させられる。例えば、「テフロン」(ポリテトラフルオロエタン)などのフッ化材料を含む従来の非湿潤性の粗くないまたは滑らかな表面は、18ダイン/cmほど低い表面エネルギーを有する。「テフロン」表面は、オレイン酸(γSV〜32ダイン/cm)などの通常研究される油は「テフロン」上で約80°の接触角を示すので、疎油性ではない。
【0014】
疎水性および疎油性である抗指紋表面は、低い表面エネルギーを有する粗面を作製することによって達成できる。したがって、指紋耐性表面を有し、機械的および化学的磨耗に対して耐性性である、光学的に透明なガラス物品または基板(別記しない限り、「ガラス物品」および「ガラス基板」という用語は、同等の用語であり、ここでは交換可能に使用される)が提供される。ガラス基板は、様々な態様において、以下に限られないが、疎水性および疎油性を含む研究した特性を有する少なくとも1つの表面を有する。抗指紋、粒状物質の抗粘着性または付着性、機械的および化学的耐久性、透明性(例えば、ヘイズ<10%)などを含む他の性質も、様々な実施の形態において提供される。これらの属性は、基板の少なくとも1つの表面に、水、皮脂、指紋物質の内の少なくとも1つを含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を共に有する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を与えることによって達成される。ある実施の形態において、少なくとも一組の位相幾何学的特徴は、約50nmから約1μmまでの範囲の平均寸法を有する。ある実施の形態において、先に列記された属性は、ガラス基板の表面に、以下に限られないが、隆起、凸部、凹部、くぼみ、間隙などを含む複数の異なる組またはレベルの位相幾何学的特徴を与えることによって達成される。一組またはレベルの位相幾何学的特徴における位相幾何学的特徴は、他の組またはレベルにおける位相幾何学的特徴の平均寸法とは異なる平均寸法を有する。位相幾何学的特徴の組は、共に、接触角θYの減少および水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の固定を防ぐ凹部形状を形成する。
【0015】
多数の組の表面的特徴を有するガラス基板表面の例の断面図が図2に示されている。図2に示された表面構造は、接触角θYの減少および表面間隙内の流体液滴の入り込みまたは「固定」に抵抗し、それゆえ、疎水性、疎油性、抗付着性、および抗指紋特性を与える。さらに、図2に示された表面構造は、ある尺度の蓮の葉効果を与えられるタイプの表面の非限定的例として働く。疎水性/疎油性表面200は、第1の表面的特徴210、第2の表面的特徴220、および第3の表面的特徴230を含む。
【0016】
第1の表面的特徴210は、複数の凸部212および凹部214を含む。第1の表面的特徴210は、図2に示される表面的特徴の最大の長さ規模を有し、ここで、位相幾何学的特徴(ここでは、凸部212および凹部214)が、ある実施の形態において、2μm以下の第1の平均寸法を有する。ある実施の形態において、第1の表面的特徴210の位相幾何学的特徴の平均寸法は、約50nmから約300nmまでの範囲にある。他の実施の形態において、第1の表面的特徴210の位相幾何学的特徴の平均寸法は、約1μmから約50μmまでの範囲にある。別の実施の形態において、第1の表面的特徴210の位相幾何学的特徴の平均寸法は、約1μmから約10μmまでの範囲にある。第1の表面的特徴210は、ある実施の形態において、以下に限られないが、SnO2、ZnO、セリア、Al2O3、ジルコニアなどのどのようなエッチング可能な無機酸化物を含んでも差し支えない。
【0017】
第2のまたは中間の長さ規模の表面的特徴220は、第1の表面的特徴210上に重ねられている。第2の表面的特徴220は、粗面上の流体液滴120のカシー・バクスター状態(図1(b))からウェンゼル状態(図1(a))への移行を防ぐまたは遅くする凹部形状を提供する。カシー・バクスター状態において、流体液滴120は、第1の表面的特徴210を構成する凸部212の上に載っている。第2の表面的特徴220の特徴構造は、第1の表面的特徴210から、ガラス基板200の面から角度a(「凹部角度」とも称される)で突出し、凸部212の間の凹部214により形成された自由空間中への流体液滴120の侵入をなくとも部分的に阻み、それゆえ、ガラス基板200の表面のウェンゼル状態(図1(a))への移行を防ぐかまたは遅くする。
【0018】
図2に示されるように、第2の表面的特徴220は、第1の表面的特徴210のより大きな凹部の表面上に凹部を備え得る。第2の表面的特徴220における位相幾何学的特徴の平均寸法は、第1の表面的特徴210の平均寸法よりも小さく、ある実施の形態において、約1nmから約1μmまでの範囲にある。他の実施の形態において、第2の表面的特徴220の平均寸法は、約1nmから約50nmまでの範囲にある。ある実施の形態において、第2の表面的特徴220は、金属、または以下に限られないが、SnO2、ZnO、セリア、Al2O3、ジルコニアなどの任意のエッチング可能な無機酸化物を含む。
【0019】
第3のまたは最小の長さ規模の表面的特徴230は、化学結合の規模(約0.7オングストロームから約3オングストロームまで(70〜300pm)の範囲)の位相幾何学的特徴を有する。第3の表面的特徴230は、蝋状であり、低い表面エネルギー誘導部分を有する。ある実施の形態において、第3の表面的特徴230は、第1と第2の表面的特徴210,220の表面の少なくとも一部分を被覆し、以下に限られないが、「テフロン」または以下に限られないが、Dow Corning 2604、2624、2634、DK Optool DSX、Shinetsu OPTRON、ヘプタデカフルオロシラン(Gelest)、FluoroSyl(Cytonix)などの他の市販のフルオロポリマーまたはフルオロシランなどの、低表面エネルギーポリマーまたはオリゴマーを含むコーティングである。圧力(例えば、指により印加される圧力)の印加の際に、第2の表面的特徴220内の間隙内に液滴120が固定されるのを防ぐために、凹部間隙または堀でカスプ230を形成するように第3の表面的特徴230を調整して、固定を最小にし、それゆえ、追加の効果的な凹部妨害形状を提供する。
【0020】
第1と第2の長さ規模の表面的特徴は、規則正しい、乱れた、「自己アフィン」またはフラクタル、もしくはそれらの任意の組合せであって差し支えない。位相幾何学的テキスチャーの実際の位相幾何学および/または微細構造の性質にかかわらず、物品の表面が指紋耐性、疎油性、および/または超疎油性であるためには、特定の平均形状条件を満たす必要がある。
【0021】
疎油性について、式:
【数1】
【0022】
にしたがって、基板の表面粗さ比(rf)および固液面積比(f)の間で、上の要件を満たさなければならない。
【0023】
したがって、超疎油性(接触角≧150°)について、基板の表面粗さ比(rf)および固液面積比(f)の間で、以下の要件を満たさなければならない:
【数2】
【0024】
中間レベルの疎油性−例えば、125°超の接触角について、基板の表面粗さ比(rf)および固液面積比(f)の間で、以下の要件を満たさなければならない:
【数3】
【0025】
指紋耐性表面を達成するのに必要な、固液面積比(f)と粗さ因子rfとの間の関係が、図7にプロットされている。物品が最小の指紋耐性を有するためには、テキスチャーは、座標(f,rf)が図7におけるCA=90°の曲線の下にあるべきである。表面が、超疎油性挙動および/または極めて高い指紋耐性を示すためには、基板の表面上のテキスチャーは、f対rfの座標が、図7に示されたCA=150°の曲線の下の区域に入るようなものである必要がある。ここに記載されたガラス基板の指紋耐性表面は、式(1)に表される関係により定義されるテキスチャーを有する。別の実施の形態において、テキスチャーは、式(2)により表される関係により定義され、第3の実施の形態において、テキスチャーは、式(3)により表される関係により定義される。
【0026】
光学的透明性の目的で、テキスチャーの長さ規模は、選択した範囲内に制限されるべきである。この長さ規模の制限は、指紋の液滴が、ほぼ2〜5μm程度の平均直径を有する有限サイズ分布を有するという事実のために生じる。ここに記載された抗指紋表面および基板において、テキスチャーは、1nmと2μmの間の二乗平均平方根(RMS)の振幅を有する。ある実施の形態において、テキスチャーのRMS振幅は、1nmと500nmの間にあり、別の実施の形態において、1nmと300nmの間にある。テキスチャーは、1nmと10nmの間の自己相関長さ規模を有する。ある実施の形態において、自己相関は、1nmと1μmの間にあり、別の実施の形態において、1nmと500nmの間にある。
【0027】
液体メニスカス、特に油メニスカスが、隣接する隆起部間の空間に入るのを止めるであろう負のラプラス圧力を生じるために、第2の表面的特徴のテキスチャーの少なくとも10%が、90°未満、ある実施の形態において、75°未満の配向角(図2の角度a)を有する。
【0028】
ある実施の形態において、ガラス基板は、2つの主面を有する平らなまたは三次元シートである。そのガラス基板の少なくとも1つの主面は、ここに記載したような複数の異なる組またはレベルの位相幾何学的特徴を有する。ある実施の形態において、基板の両方の主面が、複数のレベルの表面的特徴を有する。他の実施の形態において、ガラス基板の1つの主面がそのような特徴を有する。
【0029】
疎水性であり疎油性である表面を有するガラス基板を製造する方法も提供される。この方法は、表面を有するガラス基板を提供し、このガラス基板の少なくとも1つの表面に、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有する少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する各工程を有してなる。これらの位相幾何学的特徴は、共に、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を有する。ある実施の形態において、複数の組の位相幾何学的特徴が基板の表面に形成される。複数の組の各々は、他の組の位相幾何学的特徴の平均寸法とは異なる平均寸法の位相幾何学的特徴を有する。それらの組の位相幾何学的特徴は、共に、接触角θYの減少および水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の固定を防ぐ凹部形状を有する。
【0030】
様々な実施の形態において、複数の組の位相幾何学的特徴は、先に記載した、第1の表面的特徴210,第2の表面的特徴220、および第3の表面的特徴230の内の少なくとも1つを含む。
【0031】
ある実施の形態において、第1の表面的特徴210は、ガラス基板200の表面をサンドブラストすることによって形成することができる。ある非限定的例において、ガラス基板200の表面は、所望の粗さパラメータを達成するために異なる時間に亘り50μmのアルミナグリットでサンドブラストされる。次いで、サンドブラストされた表面を、ここに記載した堆積法により無機酸化物で被覆して、第1の表面的特徴210を達成する。
【0032】
別の実施の形態において、第1の表面的特徴210は、当該技術分野に公知の物理的または化学気相成長法を使用して、ガラス基板200の表面に、シャドーマスクを通じて酸化物薄膜を堆積させることによって形成される。ある実施の形態において、シャドーマスクは、ガラス基板の表面に配置される。次いで、マスクを通じてガラス基板にZnOをスパッタリングして、マスクの特徴構造を模倣した第1の表面的特徴210を得る。スパッタリングされたZnO表面の原子間力顕微鏡(AFM)画像である図3が、第1の表面的特徴210の特徴構造を示している。そのような特徴構造は、約50nmの高さaおよび約55μmのピッチまたは間隔bを有する25μmの直径の「隆起部」212を含む。
【0033】
第2の表面的特徴220は、当該技術分野に公知のそれらの物理(例えば、スパッタリング、蒸着、レーザアブレーションなど)または化学(例えば、CVD、プラズマ支援または助長CVDなど)気相成長法を使用して形成できる。ある実施の形態において、第2の表面的特徴220は、スパッタリングされた金属酸化物薄膜をエッチングすることにより、または蒸着した金属膜を陽極酸化することにより、形成される。スパッタリングパラメータ(例えば、スパッタリング圧および基板温度)は、所望の表面的特徴を製造するためにエッチング挙動に相関させることができる。その内容をここに全て引用する、L.Kluth等の改良ソーントン(Thornton)モデル(“Modified Thornton Model for Magnetron Sputtered Zinc Oxide: Film Structure and Etching Behavior,” Thin Solid Films, 2003, vol. 442, pp. 80-85)には、スパッタリングパラメータ(スパッタリング圧およびガラス基板温度)間の相関関係、構造的膜特性、およびガラス基板上のRFスパッタリングされた膜のエッチング挙動が記載されている。スパッタリング条件を適切に調節して、スパッタリングされた柱状または粒状形態(morphology)を選択し形成し、この形態は後でエッチングされる。
【0034】
図4(a)〜(c)および図5(a)〜(c)は、第2の表面的特徴220の10〜100nmの表面特徴構造がどのようにエッチングにより形成されるかの2つの例を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図4および5に示された個々の表面特徴構造は、約10および500nmの間の寸法を有する。図4(a)〜(c)は、柱状構造を有するスパッタリングされたSnO2膜上で5分間に亘り濃HClを使用した強力なエッチングの効果を示している。図4は、エッチング前のSnO2膜の柱状構造410の断面図(図4(a))および平面図(図4(b))のSEM画像を含む。エッチングして、所望のレベルの粗さを達成し、第2の表面的特徴420を製造した後のSnO2膜の平面図の顕微鏡画像が図4(c)に示されている。
【0035】
図5(a)〜(c)は、図4(a)においてSnO2膜について示されたものと類似の柱状構造を有する、スパッタリングされたZnO膜への穏やかなエッチングの効果を示している。図5(a)は、エッチング前のZnO膜の柱状構造510の平面図であり、図5(b)および5(c)は、第2の表面的特徴520を製造するために0.1MのHClにより、それぞれ、15秒間および45秒間に亘りエッチングした後の、スパッタリングされたZnO膜の柱状構造の平面図である。ZnO膜の粗さは、エッチング時間が増加するにつれて増加した。
【0036】
第3の表面的特徴は、以下に限られないが、ここに先に記載したフルオロポリマーまたはフルオロシランなどの、低表面エネルギーポリマーまたはオリゴマーを含む。第3の表面的特徴は、第1と第2の表面的特徴の層の形成後に形成される。第3の表面的特徴を構成するオリゴマーまたはポリマーは、スパッタリング、溶射被覆、回転塗布、浸漬被覆などによって、ガラス基板200の表面に堆積される。
【0037】
「テフロン」は、アルミノケイ酸アルカリガラスの表面に、それらの表面がイオン交換されているか否かにかかわらず、よく付着し、スパッタリングが容易である。「テフロン」堆積速度は、アルゴンスパッタリング(50W、1〜5ミリトルの条件)について、約7nm/分ほど速い。スパッタリングされた「テフロン」は、O2プラズマ(5〜15分、200W)で処理したときに、疎水性の変化をほとんど示さない。水の接触角は、約100°を超えなかった。しかしながら、スパッタリングされた「テフロン」のO2プラズマ処理により、疎油性の閾値が20°から60°に増加する。
【0038】
スパッタリングされた「テフロン」の低表面エネルギーの表面を含む第3の表面的特徴の非限定的例が、図6(a)および(b)に示されている。図6(a)および(b)は、指紋成分の固定が凹部妨害形状によりどのように緩和されるかを示している。指紋の吸着成分が、指の圧が印加される際に、第2の表面的特徴における間隙610(図6(a))中に分散し、固定されるのを防ぐために、「テフロン」をスパッタリングするための堆積条件が、凹部間隙(堀)壁710にカスプ620(図6(b))を形成してこの間隙内または堀の壁への固定を最小にするように調整され、それゆえ、安価で効果的な凹部妨害形状を提供する。これは、その下で堆積中の平均自由通路が小さくなる、当該技術分野に公知のスパッタリング条件を使用することによって行われる。その上、ガラス基板の表面は、表面移動を減少させるように冷却される。
【0039】
ある実施の形態において、ここに記載されたガラス基板は透明であり、その基板および抗指紋表面を通る、70%超の透過率を有する。ある実施の形態において、基板および抗指紋表面を通る透過率は、80%超、他の実施の形態において、90%超である。
【0040】
ここに用いたように、「ヘイズ」および「透過ヘイズ」という用語は、その内容をここに全て引用する、ASTM手法D1003にしたがう±4.0°の尖った円錐の外側に散乱される透過光のパーセントを称する。光学的に滑らかな表面について、透過ヘイズは一般にゼロに近い。記載されたガラス基板の抗指紋表面は、約80%未満のヘイズを有する。第2の実施の形態において、防眩表面は、50%未満のヘイズを有し、第3の実施の形態において、抗指紋表面の透過ヘイズは10%未満である。
【0041】
ここに用いたように、「光沢」という用語は、その内容をここに全て引用する、ASTM手法D523にしたがう基準(例えば、認定黒色ガラス基準などの)に校正された鏡面反射率の測定を称する。ここに記載されたガラス基板の抗指紋表面は、60%超の光沢(すなわち、基準に対してサンプルから鏡面反射した光の量が60)を有する。
【0042】
ここに記載された異なる表面的特徴の組合せは、ある実施の形態において、ガラス基板の表面に、布地または例えば、人の指などの他の手段により擦られたときに、もしくは酸または塩基による攻撃などの化学的磨耗に曝露されたときに向上した耐久性を与える。被覆耐久性(クロック耐性(Crock Resistance)とも呼ばれる)は、被覆されたガラスサンプルの、生地による繰り返しの擦りに耐える能力を称する。クロック耐性試験は、衣服や布地とタッチスクリーン装置との間の物理的接触を模倣し、そのような処理後の被覆の耐久性を決定することを意味する。
【0043】
クロックメータ(Crockmeter)は、そのような擦りに曝された表面のクロック耐性を決定するために使用される標準機器である。クロックメータは、ガラススライドを、加重アームの端部に取り付けられた擦り端または指との直接接触に曝す。クロックメータに備えられた標準的指は、15mmの直径の中実アクリルロッドである。標準的なクロッキング生地の綺麗な小片をこのアクリル指に取り付ける。次いで、指を900gの圧力でサンプル上に載せ、耐久性/クロック耐性における変化を観察するために、サンプルに渡ってアームを前後に繰り返し動かす。ここに記載された試験に使用されるクロックメータは、60rpmの均一なストローク速度を提供する電動式モデルである。クロックメータ試験は、“Standard Test Method for Determination of Abrasion and Smudge Resistance of Images Produced from Business Copy Products.”と題するASTM試験手法F1319−94に記載されている。
【0044】
ここに記載された被覆および表面のクロック耐性または耐久性は、1つの拭き動作が擦り端または指の2ストロークまたは1サイクルと定義される、ASTM試験手法F1319−94により定義された特定の数の拭き動作後の光学的(例えば、ヘイズまたは透過率)または化学的(例えば、水および/または油の接触角)測定により決定される。ある実施の形態において、基板のここに記載された指紋耐性表面上の油の接触角は、50拭き動作後に初期値の20%以内である。ある実施の形態において、指紋耐性表面上の油の接触角は、1000拭き動作後に初期値の20%以内であり、ある実施の形態において、指紋耐性表面上の油の接触角は、5000拭き動作後に初期値の20%以内である。同様に、基板の表面上の水の接触角は、50拭き動作後に初期値の20%以内のままである。他の実施の形態において、基板の表面上の水の接触角は、1000拭き動作後に初期値の20%以内のままであり、他の実施の形態において、基板の表面上の水の接触角は、5000拭き動作後に初期値の20%以内のままである。ここに記載された抗指紋表面は、そのような反復の拭き動作後に低レベルのヘイズのままでもある。ある実施の形態において、ガラス基板は、ASTM試験手法F1319−94により定義されるように、少なくとも100の拭き動作後に10%未満のヘイズを有する。
【0045】
ここに先に記載した接触角(θY)はしばしば、抗指紋の疎油性および疎水性を評価するための測定基準として使用される。先に論じたように、接触角は、親水性および/または親油性指紋成分と、ガラス基板の研究した表面との間の湿潤程度の尺度である。湿潤性が低いほど(すなわち、接触角が大きいほど)、表面への付着性が弱くなる。抗指紋および抗付着性について、接触角は、ある実施の形態において、親油性物質および親水性物質の両方について90°超である。
【0046】
ある非限定的例において、水の(親水性)およびオレイン酸の(親油性)接触角を、ここに記載された表面的特徴を持つ表面を有するアルミノケイ酸アルカリガラスのサンプル上で測定した。各ガラス表面を、ZnOスパッタリングのために、最初に各ガラス表面に5分間に亘り200ワットでO2プラズマによるプラズマ処理を施すことによって調製した。次いで、1ミリトルのアルゴンチャンバ内で50ワットのRF出力を使用して、60分間に亘りZnO標的をスパッタリングすることによって、ZnOをガラス表面上に堆積させた。このサンプルを0.05MのHCl中で15、30、45または90秒間に亘りエッチングし、次いで、水およびオレイン酸についての接触角を測定した。次いで、サンプルをEZ−Clean(商標)(Dow Corning DC2604)を含むフルオロシラン溶液中で浸漬被覆し、次いで、別の接触角の測定を行った。各サンプルについての水とオレイン酸の接触角が表1に列記されている。表1に示されるように、テキスチャー付きサンプルをEZ−Cleanで被覆する前に測定した親水性接触角(表1の「EZ−cleanなし」)は、約15°(サンプルD)からわずかに30°未満(サンプルI)までに及び、低い。EZ−clean中の浸漬被覆後(表1の「EZ−cleanあり」)に、各サンプルの親水性接触角は、疎水性に関する90°の閾値より大きい値まで相当増加し、約131°から139°までの範囲にあった。同様に、各サンプルについて測定したオレイン酸の接触角は、疎油性挙動に関する閾値を超え、約93°から約96°に及んだ。ここに記載された多重の表面的特徴(EZ−cleanにより提供された第3の表面的特徴を含む)を有する表面が設けられたガラス表面は、表1に示された接触角測定の結果により証拠付けられるように、疎水性および疎油性の両方の挙動を示す。
【表1】
【0047】
ある実施の形態において、ガラス物品は、ソーダ石灰ガラスを含む、から実質的になる、またはからなる。別の実施の形態において、ガラス物品は、以下に限られないが、アルミノケイ酸アルカリガラスなどの、ダウンドローできる任意のガラスを含む、から実質的になる、またはからなる。ある実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、60〜72モル%のSiO2、9〜16モル%のAl2O3、5〜12モル%のB2O3、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、
【0048】
アルカリ金属改質剤はアルカリ金属酸化物である。別の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl2O3、0〜12モル%のB2O3、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaOを含む、から実質的になる、またはからなる。さらに別の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl2O3、0〜15モル%のB2O3、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、および50ppm未満のSb2O3を含み、から実質的になり、またはからなり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%。さらに別の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、64〜68モル%のSiO2、12〜16モル%のNa2O、8〜12モル%のAl2O3、0〜3モル%のB2O3、2〜5モル%のK2O、4〜6モル%のMgO、および0〜5モル%のCaOを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)−Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O−Al2O3≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)−Al2O3≦10モル%。第3の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、50〜80質量%のSiO2、2〜20質量%のAl2O3、0〜15質量%のB2O3、1〜20質量%のNa2O、0〜10質量%のLi2O、0〜10質量%のK2O、および0〜5質量%の(MgO+CaO+SrO+BaO)、0〜3質量%の(SrO+BaO)、および0〜5質量%の(ZrO2+TiO2)を含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、0≦(Li2O+K2O)/Na2O≦0.5。
【0049】
ある特別な実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、組成:66.7モル%のSiO2、10.5モル%のAl2O3、0.64モル%のB2O3、13.8モル%のNa2O、2.06モル%のK2O、5.50モル%のMgO、0.46モル%のCaO、0.01モル%のZrO2、0.34モル%のAs2O3、および0.007モル%のFe2O3を有する。別の特別な実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、組成:66.4モル%のSiO2、10.3モル%のAl2O3、0.60モル%のB2O3、4.0モル%のNa2O、2.10モル%のK2O、5.76モル%のMgO、0.58モル%のCaO、0.01モル%のZrO2、0.21モル%のSnO2、および0.007モル%のFe2O3を有する。
【0050】
アルミノケイ酸アルカリガラスは、ある実施の形態において、リチウムを実質的に含まないのに対し、他の実施の形態において、アルミノケイ酸アルカリガラスは、ヒ素、アンチモン、およびバリウムの内の少なくとも1つを実質的に含まない。ある実施の形態において、ガラス物品は、以下に限られないが、フュージョンドロー、スロットドロー、リドローなどの当該技術分野に公知の方法を使用して、ダウンドローされる。
【0051】
そのようなアルミノケイ酸アルカリガラスの非限定的例が、2007年7月31日に出願された、“Down-Drawable, Chemically Strengthened Glass for Cover Plate,”と題するAdam J. Ellison等による米国特許出願第11/888213号、これは、2007年5月22日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許出願第60/930808号からの優先権を主張する;2008年11月25日に出願された、“Glasses Having Improved Toughness and Scratch Resistance,”と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/277573号、これは、2007年11月29日に出願された、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/004677号からの優先権を主張する;2009年2月25日に出願された、“Fining Agents for Silicate Glasses,”と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/392577号、これは、2008年2月26日に出願された、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/067130号からの優先権を主張する;2009年2月26日に出願された、“Ion-Exchanged, Fast Cooled Glasses,”と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願第12/393241号、これは、2008年2月29日に出願された、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/067732号からの優先権を主張する;2009年8月7日に出願された、“Strengthened Glass Articles and Methods of Making,”と題する、Kristen L. Barefoot等による米国特許出願第12/537393号、これは、2008年8月8日に出願された、“Chemically Tempered Cover Glass,”と題する米国仮特許出願第61/087324号からの優先権を主張する;2009年8月21日に出願された、“Crack and Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom,”と題する、Kristen L. Barefoot等による米国仮特許出願第61/235767号;2009年8月21日に出願された、“Zircon Compatible Glasses for Down Draw,”と題するMatthew J. Dejneka等による米国仮特許出願第61/235762号に記載されており、これらの内容を全てここに引用する。
【0052】
ガラス物品または基板は、ここに記載された粗いガラス基板表面を形成する前に、化学的または熱的に強化されている。ある実施の形態において、ガラス物品は、ガラスの「親板」から切断または分割される前か後のいずれかに強化される。強化されたガラス物品は、第1の表面と第2の表面から、各表面下にある深さの層まで延在する強化表面層を有する。その強化表面層は圧縮圧力下にあるのに対し、ガラス物品の中央領域は、ガラス内の力を釣り合わせるように、張力下、または引張応力下にある。熱的強化(ここでは、「熱的焼き戻し(thermal tempering)」とも称される)において、ガラス物品は、ガラスの歪み点より高いが、ガラスの軟化点より低い温度に加熱され、歪み点より低い温度まで急冷されて、ガラスの表面に強化層が形成される。別の実施の形態において、ガラス物品は、イオン交換として知られているプロセスによって化学的に強化できる。このプロセスにおいて、ガラスの表面層中のイオンは、同じ原子価または酸化状態を有するより大きいイオンにより置き換えられる、すなわち交換される。ガラス物品がアルミノケイ酸アルカリガラスを含む、から実質的になる、またはからなる、それらの実施の形態において、ガラスの表面層中のイオンおよびより大きいイオンは、Li+(ガラス中に存在する場合)、Na+、K+、Rb+およびCs+などの一価のアルカリ金属陽イオンである。あるいは、表面層中の一価の陽イオンは、Ag+などの、アルカリ金属陽イオン以外の一価の陽イオンにより置き換えられてもよい。
【0053】
イオン交換プロセスは、一般に、ガラス物品を、ガラス中のより小さいイオンと交換すべきより大きいイオンを含有する溶融塩浴中に浸漬する工程を有してなる。以下に限られないが、浴の組成と温度、浸漬時間、塩浴(または複数の浴)中のガラスの浸漬の回数、多数の塩浴の使用、アニールや洗浄などの追加の工程を含むイオン交換プロセスに関するパラメータは、一般に、ガラスの組成および強化操作により達成すべきガラスの圧縮応力と層の所望の深さにより決定されることが当業者には認識されるであろう。一例として、アルカリ金属含有ガラスのイオン交換は、以下に限られないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融塩浴中の浸漬により行われるであろう。溶融塩浴の温度は、一般に、約380℃から約450℃の範囲にあるのに対し、浸漬時間は、約15分間から約16時間までに及ぶ。しかしながら、ここに記載されたものと異なる温度および浸漬時間を使用してもよい。そのようなイオン交換処理により、一般に、約200MPaから約800MPaに及ぶ圧縮応力および約100MPa未満の中央張力を有する、約10μmから少なくとも50μmに及ぶ層の深さを有する強化されたアルミノケイ酸アルカリガラスが得られる。
【0054】
イオン交換プロセスの非限定的例が、先に挙げた米国特許出願および仮特許出願に与えられている。ガラスが多数のイオン交換浴中に浸漬され、浸漬の間に洗浄および/またはアニール工程が行われる、イオン交換プロセスの追加の非限定的例例が、ガラスが、多数の連続したイオン交換処理において、異なる濃度の塩浴中の浸漬により強化される、2009年7月10日に出願され、“Glass with Compressive Surface for Consumer Applications,”と題する、Douglas C. Allan等による米国特許出願第12/500650号、これは、2008年7月11日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許出願第61/079995号からの優先権を主張する;およびガラスが、流出イオンにより希釈された第1の浴中のイオン交換により強化され、その後、第1の浴とは異なるより低い流出イオン濃度を有する第2の浴に浸漬される、2009年7月28日に出願された、“Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass,”と題する、Christopher M. Lee等による米国特許出願第12/510599号、これは、2008年7月29日に出願され、同じ題名を有する米国仮特許第61/084398号からの優先権を主張する;に記載されている。米国特許出願第12/500650号および同第12/510599号の内容を全てここに引用する。
【0055】
記載されたガラス基板は、以下に限られないが、電話、音楽プレーヤ、ビデオプレーヤなどの手持ち式通信およびエンターテイメント装置のような、ディスプレイおよびタッチ用途のための保護カバーとして、また情報関連端末(IT)(例えば、ポータブルまたはラップトップコンピュータ)装置のためのディスプレイスクリーンとして、並びに他の用途において、使用することができる。
【0056】
説明の目的で典型的な実施の形態を述べてきたが、先の説明は、本開示の範囲または添付の特許請求の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、本開示の精神および範囲または特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および変更が当業者に考えられるであろう。
【符号の説明】
【0057】
110 粗い固体表面
114 自由空間
120 流体液滴
130 ガスポケット
200 疎水性/疎油性表面
210 第1の表面的特徴
212 凸部
214 凹部
220,420,520 第2の表面的特徴
230 第3の表面的特徴
410,510 柱状構造
【図1(a)】
【図1(b)】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋耐性である表面を有するガラス基板において、光学的に透明であり、機械的および化学的磨耗に耐性であることを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
70%超の透過率、80未満のヘイズ、および60%超の60°の角度で測定した光沢の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1記載のガラス基板。
【請求項3】
前記表面が少なくとも一組の位相幾何学的特徴を含み、該少なくとも一組が、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有し、該位相幾何学的特徴が、共に、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を有し、前記表面が固液界面比fを有し、前記位相幾何学的特徴が粗さ比rfを有し、
【数1】
であることを特徴とする請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項4】
前記位相幾何学的特徴の少なくとも一部分が、前記表面により形成された面に対して80°未満の角度で整合されており、該位相幾何学的特徴の二乗平均平方根が1nmと2μmの間にあることを特徴とする請求項3記載のガラス基板。
【請求項5】
前記位相幾何学的特徴が複数の組の位相幾何学的特徴を含み、該組の各々が、他の組における位相幾何学的特徴の平均寸法と異なる平均寸法の位相幾何学的特徴を有することを特徴とする請求項3または4記載のガラス基板。
【請求項6】
前記複数の組の位相幾何学的特徴が、
a. 第1のレベルの位相幾何学的特徴であって、該第1のレベルにおける位相幾何学的特徴が、2μmまでの平均寸法を有し、前記表面のサンドブラストされた部分および該表面に堆積されたパターンの形成された膜の内の少なくとも一方を含み、前記パターンの形成された膜が、酸化スズ、酸化亜鉛、セリア、アルミナ、ジルコニア、およびそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むものである第1のレベルの位相幾何学的特徴、
b. 第2のレベルの位相幾何学的特徴であって、該第2のレベルにおける位相幾何学的特徴が、約1nmから約1μmまでの範囲の平均寸法を有し、エッチングされた膜を含み、該エッチングされた膜が、酸化スズ、酸化亜鉛、セリア、アルミナ、ジルコニア、およびそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むものである第2のレベルの位相幾何学的特徴、および
c. 第3のレベルの位相幾何学的特徴であって、該第3のレベルにおける位相幾何学的特徴が、約70pmから約300pmまでの範囲の平均寸法を有し、フルオロポリマーおよびフルオロシランの内の少なくとも一方を含む第3のレベルの位相幾何学的特徴、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5記載のガラス基板。
【請求項7】
アルミノケイ酸アルカリガラスおよびソーダ石灰ガラスの内の一方を含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のガラス基板。
【請求項8】
前記アルミノケイ酸アルカリガラスが、
a. 60〜72モル%のSiO2、9〜16モル%のAl2O3、5〜12モル%のB2O3、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2O、ここで、
アルカリ金属改質剤はアルカリ金属酸化物である;
b. 61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl2O3、0〜12モル%のB2O3、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaO;および
c. 60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl2O3、0〜15モル%のB2O3、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、および50ppm未満のSb2O3、ここで、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%;
の内の1つを含むことを特徴とする請求項7記載のガラス基板。
【請求項9】
指紋耐性であり、疎水性かつ疎油性である表面を有するガラス基板を製造する方法において、
a. 透明ガラス基板を提供する工程、および
b. 前記ガラス基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する工程であって、該少なくとも一組は、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有し、該位相幾何学的特徴は、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を共に有するものである工程、
を有してなる方法。
【請求項10】
前記ガラス基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する工程が、該少なくとも1つの表面上の複数の組の位相幾何学的特徴を形成する工程を含み、前記複数の組の各々が、他の組における位相幾何学的特徴の平均寸法と異なる平均寸法の位相幾何学的特徴を有することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項1】
指紋耐性である表面を有するガラス基板において、光学的に透明であり、機械的および化学的磨耗に耐性であることを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
70%超の透過率、80未満のヘイズ、および60%超の60°の角度で測定した光沢の内の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1記載のガラス基板。
【請求項3】
前記表面が少なくとも一組の位相幾何学的特徴を含み、該少なくとも一組が、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有し、該位相幾何学的特徴が、共に、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を有し、前記表面が固液界面比fを有し、前記位相幾何学的特徴が粗さ比rfを有し、
【数1】
であることを特徴とする請求項1または2記載のガラス基板。
【請求項4】
前記位相幾何学的特徴の少なくとも一部分が、前記表面により形成された面に対して80°未満の角度で整合されており、該位相幾何学的特徴の二乗平均平方根が1nmと2μmの間にあることを特徴とする請求項3記載のガラス基板。
【請求項5】
前記位相幾何学的特徴が複数の組の位相幾何学的特徴を含み、該組の各々が、他の組における位相幾何学的特徴の平均寸法と異なる平均寸法の位相幾何学的特徴を有することを特徴とする請求項3または4記載のガラス基板。
【請求項6】
前記複数の組の位相幾何学的特徴が、
a. 第1のレベルの位相幾何学的特徴であって、該第1のレベルにおける位相幾何学的特徴が、2μmまでの平均寸法を有し、前記表面のサンドブラストされた部分および該表面に堆積されたパターンの形成された膜の内の少なくとも一方を含み、前記パターンの形成された膜が、酸化スズ、酸化亜鉛、セリア、アルミナ、ジルコニア、およびそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むものである第1のレベルの位相幾何学的特徴、
b. 第2のレベルの位相幾何学的特徴であって、該第2のレベルにおける位相幾何学的特徴が、約1nmから約1μmまでの範囲の平均寸法を有し、エッチングされた膜を含み、該エッチングされた膜が、酸化スズ、酸化亜鉛、セリア、アルミナ、ジルコニア、およびそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むものである第2のレベルの位相幾何学的特徴、および
c. 第3のレベルの位相幾何学的特徴であって、該第3のレベルにおける位相幾何学的特徴が、約70pmから約300pmまでの範囲の平均寸法を有し、フルオロポリマーおよびフルオロシランの内の少なくとも一方を含む第3のレベルの位相幾何学的特徴、
の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5記載のガラス基板。
【請求項7】
アルミノケイ酸アルカリガラスおよびソーダ石灰ガラスの内の一方を含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のガラス基板。
【請求項8】
前記アルミノケイ酸アルカリガラスが、
a. 60〜72モル%のSiO2、9〜16モル%のAl2O3、5〜12モル%のB2O3、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2O、ここで、
アルカリ金属改質剤はアルカリ金属酸化物である;
b. 61〜75モル%のSiO2、7〜15モル%のAl2O3、0〜12モル%のB2O3、9〜21モル%のNa2O、0〜4モル%のK2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaO;および
c. 60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl2O3、0〜15モル%のB2O3、0〜15モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、0〜1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、および50ppm未満のSb2O3、ここで、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%;
の内の1つを含むことを特徴とする請求項7記載のガラス基板。
【請求項9】
指紋耐性であり、疎水性かつ疎油性である表面を有するガラス基板を製造する方法において、
a. 透明ガラス基板を提供する工程、および
b. 前記ガラス基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する工程であって、該少なくとも一組は、ある平均寸法の位相幾何学的特徴を有し、該位相幾何学的特徴は、水と皮脂の内の少なくとも一方を含む液滴の接触角の減少を防ぐ凹部形状を共に有するものである工程、
を有してなる方法。
【請求項10】
前記ガラス基板の少なくとも1つの表面上に少なくとも一組の位相幾何学的特徴を形成する工程が、該少なくとも1つの表面上の複数の組の位相幾何学的特徴を形成する工程を含み、前記複数の組の各々が、他の組における位相幾何学的特徴の平均寸法と異なる平均寸法の位相幾何学的特徴を有することを特徴とする請求項9記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7】
【公表番号】特表2012−526039(P2012−526039A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509933(P2012−509933)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033643
【国際公開番号】WO2010/129624
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033643
【国際公開番号】WO2010/129624
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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