説明

指紋認証装置

【目的】指先を指紋センサに押圧する力が強すぎた場合においても、精度良く指紋認証を行うことが可能な指紋認証装置を提供することを目的とする。
【構成】指紋センサによって読み取られた指紋稜線を表す指紋画像における各輝度値毎の出現頻度を表すヒストグラムデータを生成し、このヒストグラムデータに基づき指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定し、指紋稜線が潰れた状態にあると判定された場合に上記指紋画像に対して輝度値の平滑化処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め登録されている指紋画像と、実際に読み取られた指紋とを比較することにより指紋認証を行う指紋認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、登録者に対してだけ入退出の許可、又は情報機器へのアクセス許可を行う為の個人認証装置として、指紋認証装置が着目されている。
【0003】
かかる指紋認証装置においては、指紋センサから得られる指紋の凹凸紋様を濃淡で表した指紋画像から求めた特徴情報と、予め登録されている各登録者毎の特徴情報の各々とを比較して一致度を求め、その一致度に基づいて個人認証を行うようにしている。
【0004】
ここで、被験者の指紋を読み取るべく、指先を載せる為の押捺面を有するプリズムと、このプリズムの他方の面側から指紋を撮影するカメラと、を有する指紋センサを搭載した指紋押捺装置が提案されている(例えば、特許文献1の図1又は図4参照)。
【0005】
しかしながら、このような指紋センサにおいては、指先を押捺面に押圧する力が強すぎると指紋の稜部が太くなり、本来、得られるべき指紋画像とは異なる指紋画像が撮影されてしまう。よって、かかる指紋画像から求められた特徴情報に関しても、予め登録されている本人の特徴情報とは異なるものとなってしまう場合があり、指紋の認証が正しく為されなくなるという問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−272953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記の如き問題を解決すべく為されたものであり、指先を指紋センサに押圧する力が強すぎた場合においても、精度良く指紋認証を行うことが可能な指紋認証装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による指紋認証装置は、指紋センサによって読み取られた指紋画像に基づいて指紋の認証を行う指紋認証装置であって、前記指紋画像中に表されている指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定する指紋稜線潰れ判定部と、前記指紋稜線潰れ判定部において前記指紋稜線が潰れた状態にあると判定された場合には前記指紋画像に対して輝度値の平滑化処理を施したものを検出指紋画像として得る一方、前記指紋稜線が潰れた状態にないと判定された場合には前記指紋画像をそのまま前記検出指紋画像とする指紋画像平滑化処理部と、前記検出指紋画像に基づく指紋特徴情報と予め登録されている指紋特徴情報とを比較することにより登録済みの指紋であるか否かを示す指紋認証結果を得る指紋照合部と、を備え、前記平滑化処理部では、前記指紋画像中の特定画素の周辺に位置する画素各々の輝度値の平均を平均輝度値として算出し、前記特定画素の輝度値を前記平均画素値に置換する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、指紋センサにて読み取られた指紋稜線を表す指紋画像に基づく指紋特徴情報と、予め登録されている指紋特徴情報とを比較することにより指紋の認証を行うにあたり、上記指紋稜線に潰れが生じている場合には、指紋画像に対して輝度値の平滑化処理を施すことにより指紋稜線の潰れを補正するようにしている。
【0010】
これにより、指紋を読み取るべく、指先を指紋センサに強めに押圧してしまったが故に指紋稜線に潰れが生じても、精度良く指紋認証を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による指紋認証装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】指紋センサ1によって読み取られた指紋画像の一例を示す図である。
【図3】スペクトラルデータを生成する為に指紋画像内において区分けされる複数の矩形領域の形態例を示す図である。
【図4】登録された指紋画像、及び指紋認証時に潰れた状態で読み取られた指紋流線を表す指紋画像の一例を表す図である。
【図5】登録された指紋画像、及び指紋認証時に読み取られた指紋画像各々の1表示ライン上における各画素毎の輝度値の系列の一例を示す図である。
【図6】指紋画像検出部3の内部構成を示すブロック図である。
【図7】ヒストグラムデータ生成部31によって生成されたヒストグラムデータHDの一例を示す図である。
【図8】平滑化処理における単位ブロックとしての画素ブロックの一例を示す図である。
【図9】指紋画像平滑化処理部33の動作を説明する為の図である。
【図10】平滑化処理前の各画素の輝度値、及び平滑化処理後の各画素の輝度値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る指紋認証装置は、指紋センサによって読み取られた指紋稜線を表す指紋画像における各輝度値毎の出現頻度を表すヒストグラムデータを生成し、このヒストグラムデータに基づき指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定し、指紋稜線が潰れた状態にあると判定された場合に上記指紋画像に対して輝度値の平滑化処理を施す。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明による指紋認証装置の全体構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、かかる指紋認証装置は、指紋センサ1、指紋画像メモリ2、指紋画像検出部3、スペクトラルデータ生成部4、指紋照合部5、及び指紋特徴データメモリ6からなる。
【0015】
指紋センサ1は、光学式、電界式、又は半導体式の指紋読み取りセンサであり、被験者の指先が指紋読み取りエリア1aに押圧された際に、その指先の指紋の凹凸形状を読み取り、凸部(又は凹部)による軌跡を指紋稜線として検出する。そして、指紋センサ1は、例えば図2に示す如き指紋稜線STを含む指紋画像を表す1フレーム分の指紋画像信号Fを指紋画像メモリ2に供給する。
【0016】
指紋画像メモリ2は、指紋センサ1から供給された指紋画像信号Fによって表される1フレーム分の指紋画像を、図2に示すように、夫々がN個の画素からなる第1〜第M表示ライン(N、Mは自然数)の各々に対応づけして記憶する。また、指紋画像メモリ2は、記憶されている1フレーム分の指紋画像を読み出し、これを指紋画像信号FMとして指紋画像検出部3に供給する。
【0017】
指紋画像検出部3は、かかる指紋画像信号FMに対して、その指紋画像中に表されている指紋流線に潰れが生じている場合には指紋画像補正処理(後述する)を施して得られたものを検出指紋画像信号FMQとしてスペクトラルデータ生成部4に供給する。一方、かかる指紋画像中に表されている指紋流線に潰れが生じていない場合には、指紋画像検出部3は、指紋画像信号FMをそのまま上記検出指紋画像信号FMQとしてスペクトラルデータ生成部4に供給する。尚、指紋画像検出部3には、かかる指紋画像補正処理において、1表示ライン分の各画素の輝度値を一時的に保存する為の2つのラインバッファ3a及び3bが含まれている。
【0018】
スペクトラルデータ生成部4は、検出指紋画像信号FMQによって表される指紋画像を図3に示す如く複数の矩形領域に分割し、各矩形領域毎に、その矩形領域内における指紋稜線パターンの特徴を複数のスペクトラルパラメータによって多角的に表すデータ(以降、スペクトラルデータと称する)を、指紋特徴情報として生成する。例えば、スペクトラルパラメータとしては、矩形領域内での指紋稜線の伸張方向、或いは、互いに隣接する指紋稜線同士の間隔等が挙げられる。この際、スペクトラルデータ生成部4は、例えば図3に示す如き破線にて区切られている各矩形領域毎に、指紋稜線が伸張する方向の平均方向を算出し、この平均方向を表す方向データDDを生成する。また、スペクトラルデータ生成部4は、図3に示す如き各矩形領域毎に、その矩形領域内において互いに隣接する指紋稜線同士の間隔の平均を算出し、この平均値を表す周波数データFDを生成する。スペクトラルデータ生成部4は、上記した如く算出した方向データDD及び周波数データFDを、図3に示す如き各矩形領域の夫々の位置に対応づけして行列化したスペクトラルデータSDを指紋照合部5に供給する。
【0019】
指紋特徴データメモリ6には、複数の登録者各々の指紋特徴情報としてのスペクトラルデータQDが予め記憶されている。
【0020】
以下、指紋特徴データメモリ6へのスペクトラルデータQDの登録方法について説明する。
【0021】
先ず、上記した指紋センサ1によって、指紋の登録希望者の指紋を読み取ることにより、図3に示す如き指紋画像を取得する。この際、読み取られた指紋画像に表されている指紋稜線が潰れている場合、つまり指紋稜線の太さが所定範囲内の幅を超えた場合、登録希望者は、その太さが所定範囲内に収まるまで、指紋センサ1による指紋読み取りを繰り返し行う。一方、読み取られた指紋画像に表されている指紋稜線の太さが所定範囲内に収まる場合、指紋センサ1は、その読み取った指紋画像を表す指紋画像信号を生成し、これをスペクトラルデータ生成部4に供給する。スペクトラルデータ生成部4は、この指紋画像信号に対して前述した如き処理を施すことによりスペクトラルデータを生成する。そして、かかるスペクトラルデータを登録希望者の識別IDと対応づけしたものを、スペクトラルデータQDとして指紋特徴データメモリ6に書き込む。
【0022】
指紋照合部5は、スペクトラルデータ生成部4から供給されたスペクトラルデータSDと、指紋特徴データメモリ6に記憶されている登録者毎のスペクトラルデータQD各々とを比較し両者の類似度を求める。例えば、指紋照合部5は、スペクトラルデータSD及びQD各々における方向データDD同士の差分値、並びに周波数データFD同士の差分値を図3に示す如き各矩形領域毎に求め、夫々の差分値の累算値を類似度として得る。指紋照合部5は、かかる類似度を、指紋特徴データメモリ6に記憶されている全てのスペクトラルデータQD各々毎に求め、その中で最も小なる類似度が所定類似度よりも大なる場合には、指紋登録者に該当してないことを示す認証結果信号を出力する。一方、最も小なる類似度が所定類似度よりも小なる場合には、指紋登録者であることを示す認証結果信号を出力する。
【0023】
このように、図1に示される指紋認証装置においては、予め登録者各々の指紋画像の特徴情報として、スペクトラルデータQDを指紋特徴データメモリ6に登録しておく。その後、指紋の認証を行うべく自身の指を指紋センサ1の指紋読み取りエリア1aに押圧させると、この指紋センサ1によって読み取られた指紋画像における特徴情報として、スペクトラルデータSDが生成される。そして、かかるスペクトラルデータSDを、指紋特徴データメモリ6に登録されている各登録者毎のスペクトラルデータQDとの類似度を求めることにより、読み取られた指紋が登録済みのものであるか否かを判定するようにしている。
【0024】
ところで、自身の指紋の特徴情報(スペクトラルデータQD)を登録済みの登録者が、指紋の認証を行うべく、指先を指紋センサ1の指紋読み取りエリア1aに押圧させる場合、その押圧力を毎回一定にすることは困難である。この際、押圧力が強い場合には指紋稜線が潰れてしまう場合がある。これにより、登録時に読み取られた図4(a)に示す如き指紋画像によって表される指紋稜線に比して、図4(b)に示す如く稜線の幅が大なる指紋稜線を表す指紋画像が得られてしまう。ここで、図4(a)に示されるラインL上での各画素毎の輝度値の系列の一例を図5(a)、図4(b)に示されるラインL上での各画素毎の輝度値の系列の一例を図5(b)として、このラインL上での輝度値の系列に基づき上記した周波数データFDの算出を行うことを考える。尚、ラインL上での輝度値の系列中において、極小値となる画素位置が指紋稜線の存在位置を示す。先ず、指紋登録時には、図5(a)に示す如き輝度値の系列中において白丸にて示される極小値の隣接するもの同士の間隔WTが検出され、この間隔WTを示す周波数データFDが生成され、この周波数データFDを含むスペクトラルデータSDが指紋特徴データメモリ6に書き込まれる。一方、指紋認証時には、スペクトラルデータ生成部4は、図5(b)に示す如き輝度値の系列に基づいて周波数データFDを生成することになる。ところが、指紋稜線の潰れに伴い、図5(b)にて破線で囲まれた区間、つまり極小値が輝度値「0」一定となる区間が生じる。よって、指紋登録時と同様な輝度値系列の変化が生じていないことから、指紋登録された図4(a)に示す如き指紋画像に基づき生成された周波数データFDとは異なる値を有する周波数データが生成されてしまう。従って、指紋登録済みの登録者の指紋から読み取られた指紋画像であるにも拘わらず、指紋照合部5は、指紋登録者に該当してないことを示す誤った認証結果を出力してしまう可能性が生じる。
【0025】
そこで、このような不具合を回避すべく、図1に示される指紋認証装置には、上記した如き指紋画像検出部3が設けられている。
【0026】
図6は、指紋画像検出部3の構成を示すブロック図である。
【0027】
図6に示すように、指紋画像検出部3は、ヒストグラムメモリ30、ヒストグラムデータ生成部31、指紋稜線潰れ判定部32、及び指紋画像平滑化処理部33から構成される。
【0028】
ヒストグラムメモリ30には、上記指紋画像信号FMにおいて表現可能な輝度範囲、例えば最低の輝度値「0」〜最大の輝度値「63」の各輝度値に対応した64個の番地が割り当てられている。
【0029】
ヒストグラムデータ生成部31は、1フレーム分の指紋画像を表す上記指紋画像信号FMに基づき、各画素毎にその画素に対応した輝度値を検出し、この輝度値に該当するヒストグラムメモリ30の番地の記憶内容に1を加算する。かかる処理により、例えば図7に示す如く、最低の輝度値「0」〜最大の輝度値「63」なる範囲内の各輝度値毎に、その輝度値を有する画素の総数、つまり各輝度値毎の出現頻度を表すヒストグラムデータHDが生成され、これがヒストグラムメモリ30に記憶される。ヒストグラムデータ生成部31は、ヒストグラムメモリ30からヒストグラムデータHDを読み出し、このヒストグラムデータHDにおける中央値(本明細書においては統計学上のメディアンのことを言う)を算出する。すなわち、ヒストグラムデータ生成部31は、例えば図7に示す如きヒストグラムデータHDに対して、最低輝度値側から最高輝度値側に向けて順次、その輝度値に対応した頻度を積算して行き、その積算値が頻度の総和(指紋画像中の全画素数)の半分に達した際に加算対象となった輝度値を中央値MEとし、これを指紋稜線潰れ判定部32に供給する。
【0030】
指紋稜線潰れ判定部32は、中央値MEが所定閾値よりも小であるか否かを判定する。この際、中央値MEが所定閾値よりも小である場合、つまり指紋画像が全体的に黒い画像である場合には、指紋稜線潰れ判定部32は、指紋稜線の幅が所定幅よりも大である、つまり指紋稜線が潰れた状態にあると判定し、その旨を示す潰れ判定結果信号TSを指紋画像平滑化処理部33に供給する。一方、上記中央値MEが所定閾値よりも大である場合、つまり指紋画像が全体的に明るい画像である場合には、指紋稜線潰れ判定部32は、指紋稜線の幅が所定幅よりも小である、つまり指紋稜線が潰れていないと判定し、その旨を示す潰れ判定結果信号TSを指紋画像平滑化処理部33に供給する。尚、指紋稜線潰れ判定部32において指紋稜線が潰れているか否かを判定する為の所定閾値は、上記した指紋センサ1における検出特性を考慮して予め設定された値である。
【0031】
指紋画像平滑化処理部33は、指紋稜線の潰れが生じていないことを示す潰れ判定結果信号TSが供給された場合には、指紋画像メモリ2から読み出された指紋画像信号FMをそのまま検出指紋画像信号FMQとして上記スペクトラルデータ生成部4に供給する。
【0032】
一方、指紋稜線の潰れが生じていることを示す潰れ判定結果信号TSが供給された場合、指紋画像平滑化処理部33は、指紋画像メモリ2から読み出された指紋画像信号FMに対して、以下の如き平滑化処理を施すことにより指紋稜線の潰れを補正した画像信号を生成し、これを検出指紋画像信号FMQとしてスペクトラルデータ生成部4に供給する。
【0033】
すなわち、指紋画像平滑化処理部33は、かかる平滑化処理において、先ず、指紋画像信号FMによって表される1フレーム分の指紋画像に対して、例えば図8に示す如き3行×3列分の画素G1〜G9からなる画素ブロック毎に、中央の画素G5及びこの画素G5の上下左右に隣接する画素G2、G4、G6及びG8各々での輝度値の平均を補正輝度値として算出する。尚、かかる画素ブロック内において、輝度値の平均を算出する際の対象とすべき画素の組み合わせは、上記した5つの画素(G2、G4、G5、G6、G8)に限定されない。例えば、中央の画素G5を省いた4つの画素(G2、G4、G6、G8)だけでも良く、或いは9つの画素全てを輝度値の平均を算出する際の対象としても良い。次に、指紋画像平滑化処理部33は、指紋画像信号FMに基づく中央の画素G5の輝度値を、上記した補正輝度値に置き換えたものを検出指紋画像信号FMQとして生成する。
【0034】
指紋画像平滑化処理部33は、上記した如き平滑化処理を表示ライン毎に実行する。すなわち、指紋画像平滑化処理部33は、指紋画像メモリ2に記憶されている図2に示す如き1フレーム分の指紋画像中から、先ず、第1表示ラインに対応した画素各々の輝度値を読み出し、隣接する3つの画素各々毎にその輝度平均値を求めてラインバッファ3aに書き込んで行く。例えば、図9(a)に示す如く、第1表示ライン中において連続配置されている5つの画素各々に対応した輝度値P〜Pが指紋画像メモリ2に記憶されている場合には、輝度値P〜Pの平均値が輝度平均値A、輝度値P〜Pの平均値が輝度平均値A、輝度値P〜Pの平均値が輝度平均値Aとしてラインバッファ3aに書き込まれる。次に、指紋画像平滑化処理部33は、図2に示す如き1フレーム分の指紋画像中から、第2表示ラインに対応した画素各々の輝度値を読み出し、隣接する3つの画素各々毎にその輝度平均値を求めてラインバッファ3bに書き込んで行く。例えば、図9(a)に示す如く、第2表示ライン中において連続配置されている5つの画素各々に対応した輝度値Y〜Yが指紋画像メモリ2に記憶されている場合には、輝度値Y〜Yの平均値が輝度平均値B、輝度値Y〜Yの平均値が輝度平均値B、輝度値Y〜Yの平均値が輝度平均値Bとしてラインバッファ3bに書き込まれる。次に、指紋画像平滑化処理部33は、指紋画像メモリ2に記憶されている第1表示ライン中の各画素毎の輝度値を、ラインバッファ3aに書き込まれている内容に書き換える。これにより、図9(a)に示す如く指紋画像メモリ2に記憶されていた第1表示ライン中の5つの画素各々に対応した輝度値P〜Pが図9(b)に示すように、輝度平均値A〜Aに書き換えられる。次に、指紋画像平滑化処理部33は、図2に示す如き1フレーム分の指紋画像中から、第3表示ラインに対応した画素各々の輝度値を読み出し、隣接する3つの画素各々毎にその輝度平均値を求めてラインバッファ3aに上書きする。例えば、図9(b)に示す如く、第3表示ライン中において連続配置されている5つの画素各々に対応した輝度値X〜Xが指紋画像メモリ2に記憶されている場合には、輝度値X〜Xの平均値が輝度平均値C、輝度値X〜Xの平均値が輝度平均値C、輝度値X〜Xの平均値が輝度平均値Cとしてラインバッファ3aに上書きされる。
【0035】
このような一連の処理により、図9(b)に示すように、指紋画像メモリ2の第1表示ラインに対応した記憶領域には、第1表示ライン中の5つの画素各々に対応した輝度値P〜Pに基づく輝度平均値A〜Aが書き込まれる。また、ラインバッファ3bには、第2表示ライン中の5つの画素各々に対応した輝度値Y〜Yに基づく輝度平均値B〜Bが書き込まれる。そして、ラインバッファ3aには、第3表示ライン中の5つの画素各々に対応した輝度値X〜Xに基づく輝度平均値C〜Cが書き込まれる。よって、指紋画像メモリ2の第1表示ラインに対応した記憶領域には図8に示す如き画素G1〜G3の輝度平均値が書き込まれる。又、ラインバッファ3bには図8に示す如き画素G4〜G6の輝度平均値が書き込まれ、ラインバッファ3aには図8に示す如き画素G7〜G9の輝度平均値が書き込まれる。従って、これらラインバッファ3a、3b及び指紋画像メモリ2の第1表示ラインの記憶領域に記憶されている各輝度平均値の平均を算出することにより、図8に示す中央の画素G5に対応した補正輝度値が求まる。指紋画像平滑化処理部33は、上記した如き一連の処理を第4表示ライン以降も同様に繰り返すことにより1フレーム分の指紋画像全体の平滑化を行う。
【0036】
上記した平滑化処理によれば、指先を指紋センサ1の指紋読み取りエリア1aに押圧する押圧力が強かったが故に図4(b)に示す如く指紋稜線が潰れてその幅が太くなってしまった指紋画像が読み取られても、この指紋稜線の幅を狭くすべき補正が施された検出指紋画像信号FMQがスペクトラルデータ生成部4に供給されるようになる。
【0037】
例えば、図4(b)に示される指紋稜線上の画素ブロックFB内での各画素毎の輝度値が図10(a)に示す如き値を有する場合、指紋稜線の潰れ部分は輝度値「0」で表され、潰れた分の指紋稜線の幅WKは2画素分となる。この際、3行×3列の画素ブロック毎にその画素ブロック内の全画素の輝度値の平均によって中央画素に対する補正輝度値を算出すると、図10(a)の破線にて囲まれた領域内の9個の画素各々に対する補正輝度値は、図10(b)に示す如きものとなる。かかる平滑化処理により、図10(a)の破線にて囲まれた領域内の9つの画素各々の輝度値は全て、図10(b)に示す如く輝度値「0」よりも大なる輝度値に補正される。要するに、所定よりも強い押圧力で指先を指紋センサ1の指紋読み取りエリア1aに押圧したが故に潰れた状態で読み取られてしまった指紋稜線に対して、潰れが生じていない指紋稜線の形態に近づけるべき補正が為されるのである。この平滑化処理の施された検出指紋画像信号FMQによれば、指紋センサ1での指紋読み取り時の押圧力が強い場合であっても、登録時に取得した周波数データと略一致した周波数データをスペクトラルデータ生成部4において生成することが可能となる。
【0038】
よって、指紋画像検出部3によれば、指紋センサ1での指紋読み取り時の押圧力が強い場合であっても、高精度に指紋認証を行うことができるようになるのである。
【0039】
尚、上記実施例において、ヒストグラムデータ生成部31及び指紋稜線潰れ判定部32では、指紋稜線が潰れているか否かを判定する為に1フレーム分の指紋画像から求めたヒストグラムデータHDを用いるようにしているが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、1フレームの指紋画像を複数の画像領域に分割(例えば4分割)した各分割画像領域毎にヒストグラムデータHDを生成することにより、指紋稜線が潰れているか否かを分割画像領域毎に個別に判定し、指紋稜線が潰れていると判定された分割画像領域に対してのみ前述した平滑化処理を施すようにしても良い。すなわち、指先を指紋センサ1の指紋読み取りエリア1aに押圧する際に、指先の一部の領域に偏って強い押圧力が掛かる場合には、この領域が属する分割画像領域に対してのみ平滑化処理を施すことにより、処理時間の短縮を図ることができる。
【0040】
また、指紋画像平滑化処理部33では、指紋画像信号FMによって表される指紋画像に対して3行×3列分の画素からなる画素ブロック毎に、中央の画素の輝度値をその画素ブロック内の各画素における平均輝度値に置換することにより、輝度値「0」で表される指紋稜線の潰れ箇所を排除するようにしている。しかしながら、かかる処理によると、画素ブロック内の全画素の輝度値が「0」である場合にはその平均値も「0」となる為、指紋稜線の潰れ箇所を排除することができなくなる。そこで、画素ブロック内の全画素の輝度値が「0」となる場合、輝度値の平均を算出する対象とすべき画素ブロックの大きさを広げるようにしても良い。例えば、指紋画像平滑化処理部33は、3行×3列分の画素からなる画素ブロック内の全画素の輝度値が「0」となっている場合には、その画素ブロックを、上方向(又は下方向)に1行分、左方向(又は右方向)に1列分だけ拡張した4行×4列分の拡張画素ブロック内の画素の平均値を補正輝度値とする。そして、上記した3行×3列の画素ブロック内の中央画素の輝度値を、この補正輝度値に置き換えるのである。この際、拡張画素ブロックの大きさは4行×4列に限定されず、5行×5列或いはそれ以上の大きさのブロックであっても良い。
【0041】
尚、上記指紋画像平滑化処理部33では、特定画素としての中央の画素に隣接する各画素の平均輝度値を、この中央の画素に対する補正輝度値としているが、平均輝度を求める画素対象としては、中央の画素に隣接していない画素を含ませるようにしても良い。要するに、中央の画素に隣接する画素を少なくとも1つ含んだ周辺画素各々の平均輝度値を補正輝度値とすれば良いのである。
【0042】
又、上記実施例では、指紋の特徴情報としてスペクトラルデータを用いて指紋照合を行うようにしているが、スペクトルデータ以外の指紋特徴情報を用いて指紋照合を行うようにしても良い。
【0043】
又、上記指紋稜線潰れ判定部32では、指紋画像が全体的に黒い画像であるか否かにより、指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定するようにしているが、その他の方法で指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 指紋センサ
2 指紋画像メモリ
3 指紋画像検出部
4 スペクトラルデータ生成部
5 指紋照合部
6 指紋特徴データメモリ
31 ヒストグラムデータ生成部
32 指紋稜線潰れ判定部
33 指紋画像平滑化処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋センサによって読み取られた指紋画像に基づいて指紋の認証を行う指紋認証装置であって、
前記指紋画像中に表されている指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定する指紋稜線潰れ判定部と、
前記指紋稜線潰れ判定部において前記指紋稜線が潰れた状態にあると判定された場合には前記指紋画像に対して輝度値の平滑化処理を施したものを検出指紋画像として得る一方、前記指紋稜線が潰れた状態にないと判定された場合には前記指紋画像をそのまま前記検出指紋画像とする指紋画像平滑化処理部と、
前記検出指紋画像に基づく指紋特徴情報と予め登録されている指紋特徴情報とを比較することにより登録済みの指紋であるか否かを示す指紋認証結果を得る指紋照合部と、
を備え、
前記平滑化処理部では、前記指紋画像中の特定画素の周辺に位置する画素各々の輝度値の平均を平均輝度値として算出し、前記特定画素の輝度値を前記平均画素値に置換することを特徴とする指紋認証装置。
【請求項2】
前記指紋稜線潰れ判定部は、前記指紋画像における各輝度値毎の出現頻度を表すヒストグラムデータに基づき前記指紋画像中に表されている指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の指紋認証装置。
【請求項3】
前記指紋稜線潰れ判定部は、前記ヒストグラムデータによって示される輝度値の中央値が所定の閾値よりも大であるか否かにより、前記指紋稜線が潰れた状態にあるか否かを判定することを特徴とする請求項2記載の指紋認証装置。
【請求項4】
前記平均輝度値がゼロとなる場合には、前記1の画素の輝度値を、当該画素ブロックの周辺の画素各々をも含めた拡張画素ブロック内の各画素の輝度値の平均を前記平均輝度値とすることを特徴とする請求項1記載の指紋認証装置。
【請求項5】
前記指紋特徴情報は、前記指紋画像中に表される前記指紋稜線の隣接するもの同士の間隔の平均値を示す情報を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の指紋認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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