説明

指静脈認証装置

【課題】 登録又は認証のために撮影を行うとき、装置外からの不要な光を検出し、登録や認証に支障がある場合は、そのことを使用者や管理者に通知する。
【解決手段】 指静脈画像の登録時または認証時に、撮影対象の指に対して近赤外線を照射した状態で指静脈画像を撮影し、その撮影画像を指の軸方向と直交する方向に走査する処理を軸方向に所定距離繰り返すことにより指の輪郭画像を抽出し、その輪郭画像の周囲に閾値以上の照度を有する領域が存在するかを判定し、閾値以上の照度を有する領域が存在する場合は近赤外線以外の撮影に不要な光が入射しているものと判定する判定手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指静脈認証装置において、カメラによる撮影時に、装置外から入射している不要な光を検出し、それを使用者や管理者に通知するようにした指静脈認証装置に関するものである。
【0002】
近年では、様々な個人認証技術が普及しているが、そのひとつとして、指静脈を用いた個人認証装置、すなわち、指に近赤外線(近赤外光)を照射し、その透過光または反射光を撮影し、その画像データから指の静脈パターンを抽出し、個人認証に利用するための装置がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−133623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指静脈認証において重要なことは、認証における信頼性について言えば、本人拒否や他人受入による誤認証を防止することである。指静脈認証における誤認証の原因の一つとして挙げるならば、登録又は認証時において、カメラにより撮影時に、不要な光が入射した状態で撮影されてしまうことにある。
例えば、登録時に不要な光が入射したまま撮影画像を登録した場合、認証時にその不要な光が入射したテンプレート登録画像との比較になる為、誤認証の原因になる恐れがある。また、不要な光により形成されるパターンが支配的になる為、認証時に不要な光が入射した状態で認証をしようとした場合、認証時における正しい判定ができないことにより、誤認証の原因になる恐れがある。
指静脈認証装置の使用者は、これらの誤認証を気づかずに使用したり、また、誤認証の原因が不要な光の入射によるものであることを知ることができないという問題点が発生する。
【0005】
本発明の目的は、登録又は認証のために撮影を行うとき、装置外からの不要な光を検出し、登録や認証に支障がある場合は、そのことを使用者や管理者に通知することができる指静脈認証装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る指静脈認証装置は、指静脈画像の登録時または認証時に、撮影対象の指に対して近赤外線を照射した状態で指静脈画像を撮影し、その撮影画像を指の軸方向と直交する方向に走査する処理を軸方向に所定距離繰り返すことにより指の輪郭画像を抽出し、その輪郭画像の周囲に閾値以上の照度を有する領域が存在するかを判定し、閾値以上の照度を有する領域が存在する場合は近赤外線以外の撮影に不要な光が入射しているものと判定する判定手段を備えることを特徴とする。
また、前記判定手段の判定結果により、不要な光が入射していることが判明した場合には利用者および管理者にメール等で通知すると共に、指静脈画像の登録または認証のための撮影を中止させる手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果がある。
(1)カメラによる撮影時に、装置外からの不要な光を検出することができるようになる為、不要な光により形成されるパターンが支配的になることで発生する可能性のある誤認証を事前に防止することができる。
(2)上記の検出手段により不要な光が検出されていた場合に、登録又は認証を中止し、不要な光が差し込んでいることを使用者や管理者に通知することで、不要な光により認証が失敗すること、あるいは使用環境が適切でないことを使用者や管理者が知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の不要光検出方法を用いた指静脈認証装置の実施の形態を示すブロック構成図である。
【図2】カメラにより撮影する対象となる撮影画面の例を示す説明図である。
【図3】カメラにより撮影する対象となる撮影画面に不要な光が入射されていた場合の例を示す説明図である。
【図4】登録又は認証前で指が置かれていない状態において、撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表した説明図である。
【図5】登録又は認証前で指が置かれていない状態において、不要な光が照射されていた場合の撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表した説明図である。
【図6】登録又は認証時で指が置かれている状態において、撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表した説明図である。
【図7】登録又は認証時で指が置かれている状態において、不要な光が照射されていた場合の撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した指静脈認証装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る指静脈認証装置の構成を示す機能ブロック図であり、撮影前に不要な光を検出する場合においては、赤外線照明装置2による近赤外線を照射することなしに、制御部101からの指示を受けたカメラ103が指置き台の画像を撮影する。撮影時に不要な光を検出する場合においては、赤外線照明装置102が撮影対象である指に対して近赤外線を照射し、その状態で制御部101からの指示を受けたカメラ103が指置き台の画像に置かれた指の静脈像を撮影する。いずれの場合でも、画像データを記憶装置105に出力し、さらに制御部101からの指示を受けた不要光検出装置104が記憶装置105に格納された画像データを読み出し、画像処理を行うことで、装置外からの不要な光が入射されているかを検出するものである。
【0010】
図2は、カメラ103により撮影する対象となる撮影画面の例である。
図2(a)は登録又は認証前で指が置かれていない状態、つまり赤外線照明装置102により近赤外線を照射することなくカメラ103が撮影する状態での指置き台の画像の例である。
図2(b)は登録又は認証時で指が置かれている状態、つまり赤外線照明装置102により近赤外線を照射することでカメラ103が指を撮影している状態での撮影画像の例を示すものである。
図2(c)の断面図は、撮影画像210に対する指の置く方向を示し、指212が撮影画像210の指211に相当する。
【0011】
図3は、カメラ103の撮影視野内に指静脈画像の撮影に不要な光が入射されていた場合の例を示す図である。
図3(a)は登録又は認証前で指が置かれていない状態において、撮影画像301に対して不要な光が入射された状態での撮影画像を示しており、上端又は下端の撮影画像上において不要な光302が入射されている。
図3(b)は登録又は認証時で指が置かれている状態において、撮影画像310に対して不要な光が入射された状態での撮影画面を示しており、上端または下端の撮影画面上において不要な光312が入射されている。311は指の画像である。
【0012】
以上のように、撮影視野内に不要な光が入射されていた場合に、これを検出するためには、カメラ103により撮影した撮影画像データに対して以下のように処理を行い、不要な光を検出する。
図4は、図2(a)の登録又は認証前で指が置かれていない状態の撮影画像について、その撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表したものである。
図4(a)は、図2(a)の登録又は認証前で指が置かれていない状態の撮影画像に対して、その撮影画像データをスキャンする過程について表したものである。撮影画像データをスキャンする手順としては、撮影画像データ401に対して、例えば座標(xa,y0)からスタートした場合、座標(xa,y1)までy方向へスキャンすることで、その間の透過光の照度を測定する。これをx0からx1のすべてに対して、繰り返しスキャンすることで、撮影画像データ401すべての透過光の照度を測定する。
図4(b)は、図4(a)の座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンしたときの透過光の照度をヒストグラムに表したものである。対象となる撮影画像データは、登録又は認証前で指が置かれていない状態の為、近赤外線は照射しておらず、図4(b)のようにy0からy1において透過光の照度は低く、ほとんど変化が見られない。
【0013】
図5は、図3(a)の登録又は認証前で指が置かれていない状態の撮影画面に対して、不要な光が入射されていた場合に、その撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表したものである。
図5(a)は、図3(a)の登録又は認証前で指が置かれていない状態の撮影画面に対して、不要な光が入射されていた場合に、その撮影画像データをスキャンする過程について表したものである。撮影画像データ501に対して、座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンした場合、外部からの光502に接触する。外部からの光502に接触する始点のyの値をyt1、接触する終点のyの値をyt2とする。
図5(b)は、図5(a)の座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンしたときの透過光の照度をヒストグラムに表したものである。対象となる撮影画像データは、登録又は認証前で指が置かれていない状態の為、近赤外線は照射しておらず、図5(b)のようにy0からyt1、yt2からy1の間では透過光の照度にほとんど変化はない。しかし、yt1からyt2の間、つまり外部からの光502に接触している部分においては、透過光の照度が大きく変化する。
【0014】
登録又は認証前で指が置かれていない状態においては、通常は図4(b)のように透過光の照度に変化は見られないが、外部からの光が入射している部分においては、図5(b)のように透過光の照度が大きく変化する。したがって、図5(b)のように透過光の照度に大きく変化が見られた部分においては、不要な光が入射していると判定し、登録又は認証を中止する。
【0015】
図6は、図2(b)の登録又は認証時で指が置かれている状態の撮影画面に対して、その撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表したものである。
図6(a)は、図2(b)の登録又は認証時で指が置かれている状態の撮影画面に対して、その撮影画像データをスキャンする過程について表したものである。撮影画像データ601に対して、座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンした場合について考える。ya2とya3は指602の輪郭と接した部分を表している。また、指602とそれ以外を区別するために、ya1とya2、ya3とya4の間を設けている。
図6(b)は、図6(a)の座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンしたときの透過光の照度をヒストグラムに表したものである。対象となる撮影画像データは、登録又は認証時で指が置かれている状態の為、近赤外線を照射しており、図6(b)のように指602とそれ以外を区別するためのya1とya2、ya3とya4の間での透過光の照度は最大となっている。それに対して、y0とya1、ya4とy1の間での透過光の照度は低く、ほとんど変化はない。
【0016】
図7は、図3(b)の登録又は認証時で指が置かれている状態の撮影画面に対して、不要な光が入射されていた場合に、その撮影画像データを元に透過光の照度をヒストグラムに表したものである。
図7(a)は、図3(b)の登録又は認証時で指が置かれている状態の撮影画面に対して、不要な光が入射されていた場合に、その撮影画像データをスキャンする過程について表したものである。撮影画像データ701に対して、座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンした場合、外部からの光703に接触する。外部からの光703に接触する始点のyの値をyt1、接触する終点のyの値をyt2とする。
図7(b)は、図7(a)の座標(xa,y0)から座標(xa,y1)までy方向へスキャンしたときの透過光の照度をヒストグラムに表したものである。対象となる撮影画像データは、登録又は認証時で指が置かれている状態の為、近赤外線を照射しており、図7(b)のように指602とそれ以外を区別するためのya1とya2、ya3とya4の間での透過光の照度は最大となる。それに対して、y0とya1、ya4とy1の間での透過光の照度は低く、ほとんど変化はない。しかし、yt1からyt2の間、つまり外部からの光703に接触している部分においては、透過光の照度が大きく変化する。
【0017】
登録又は認証時で指が置かれている状態においては、通常は図6(b)のようにy0とya1、ya4とy1の間の透過光の照度に変化は見られないが、外部からの光が入射している部分においては、図7(b)のようにya4とy1の間の透過光の照度が大きく変化する。したがって、図7(b)のようにy0とya1、ya4とy1の間、つまり透過光の照度が最も低く変化しない領域に対して、透過光の照度に大きく変化が見られた部分においては、不要な光が入射していると判定し、登録又は認証を中止する。
以上のように本実施形態では、指静脈画像の登録時または認証時に、撮影対象の指に対して近赤外線を照射した状態で指静脈画像を撮影し、その撮影画像を指の軸方向と直交する方向に走査する処理を軸方向に所定距離繰り返すことにより指の輪郭画像を抽出し、その輪郭画像の周囲に閾値以上の照度を有する領域が存在するかを判定し、閾値以上の照度を有する領域が存在する場合は近赤外線以外の撮影に不要な光が入射しているものと判定する。そして、不要な光が入射していることが判明した場合には利用者および管理者にメール等で通知すると共に指静脈画像の登録または認証のための撮影を中止する。
これによって、不適切な環境に置かれた指静脈認証装置による誤認証が起こることが未然に防止される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指静脈画像の登録時または認証時に、撮影対象の指に対して近赤外線を照射した状態で指静脈画像を撮影し、その撮影画像を指の軸方向と直交する方向に走査する処理を軸方向に所定距離繰り返すことにより指の輪郭画像を抽出し、その輪郭画像の周囲に閾値以上の照度を有する領域が存在するかを判定し、閾値以上の照度を有する領域が存在する場合は近赤外線以外の撮影に不要な光が入射しているものと判定する判定手段を備えることを特徴とする指静脈認証装置。
【請求項2】
前記判定手段の判定結果により、不要な光が入射していることが判明した場合には利用者および管理者にメール等で通知すると共に、指静脈画像の登録または認証のための撮影を中止させる手段をさらに備えることを特徴とする指静脈認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−212386(P2012−212386A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78483(P2011−78483)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】