説明

振り出し容器

【課題】開蓋が容易で所持形態の多様化も図ることのできる振り出し容器を提供する。
【手段】底部材3と蓋部材4とを嵌め合わせて中空に構成されたケース本体1を備えており、底部材3の上部には屈曲自在なヒンジ部6を介して椀状のキャップ2が一体に連結されている。ケース本体1の上部にはキャップ2が被さるヘッド部7が形成されており、ヘッド部7に蓋部材4が空いている。ヘッド部7は部分的に切欠かれており、切欠き部14の箇所に位置した底部材3の露出壁部3aに穴16を空け、これに紐15を通している。キャップ2を大きくできるため開蓋が容易であり、また、紐15を利用して所持形態及び陳列形態を多様化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、粒状や顆粒状の物品を包装するのに好適な振り出し容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば口中清涼剤のような錠剤類を包装するために合成樹脂製の振り出し容器が使用されている。この振り出し容器は、振り出し口を有するケース本体と、ケース本体の振り出し口を塞ぐキャップとを備えており、ケース本体の構造から分類すると、ケース本体が一体構造になっているタイプと、ケース本体が2つの部材を嵌め合わせて構成されているタイプとに分けられる。
【0003】
そして、後者のタイプとして、特許文献1には、ケース本体をトレー状の底部材と蓋部材とを結合するにおいて、一方の部材にはボス部の群を、他方の部材にはボス部に嵌まる筒部の群をそれぞれ相対向するように形成し、両部材の縁部を重ねた状態で筒部の群とボス部の群とを強制嵌合させ、更に、底部材に振り出し口を塞ぐヒンジキャップを一体成形することが記載されている。
【特許文献1】特開平9−315468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケース本体を一体成形した構造では、射出成形法で製造するに際しての型抜きの点からケース本体の形状が制限を受けるのに対して、ケース本体を蓋部材と底部材との嵌め合わせ構造にすると、ケース本体は様々の平面形状にすることができる利点や、蓋部材と底部材との色彩を変えて見栄えを良くできる利点等がある。また、振り出し口の開閉手段としてヒンジキャップを採用すると、構造が簡単になる利点がある。
【0005】
しかして、特許文献1では、ケース本体の外周部の一部に、当該外周部の一部を切欠いた状態で振り出し口を形成しており、ヒンジキャップも振り出し口の大きさに合わせているが、これではヒンジキャップが小さいため、人が指先をヒンジキャップに当てて開くに際してヒンジキャップを起こしにくいという問題があった。
【0006】
また、この種の振り出し容器を人が持ち運ぶ場合、ポケットに入れたりバッグに入れたりすることが多いが、取り出すに際して手が滑って落としてしまうこともあった。
【0007】
本願発明は、このような現状を改善することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するため請求項1の発明は、相対向するように開口したトレー状の蓋部材と底部材とをその縁部において嵌め合わせることによって中空に形成されたケース本体を備えており、このケース本体のうち両部材の重合ラインに沿って延びる外周部の一部に振り出し口が開口しており、更に、前記底部材のうち振り出し口の近傍に、前記振り出し口を塞ぐキャップが屈曲自在なヒンジ部を介して連結されている合成樹脂製の振り出し容器において、前記ヒンジ部は両部材の重合ラインと略平行に延びている一方、前記キャップは椀状又はカップ状に形成されており、ケース本体には前記キャップが被さるヘッド部を形成し、このヘッド部に前記振り出し口を形成している。
【0009】
なお、キャップの形状としての椀状又はカップ状とは、キャップがどの断面で見ても凹状に湾曲していることを意味する。キャップがこのような椀状又はカップ状であることにより、断面係数が大きくて強度に優れている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記蓋部材及び底部材は共に浅いトレー状に形成されており、このためケース本体は扁平状の形態を成しており、前記キャップには振り出し口に嵌入する中栓を一体に形成している一方、前記蓋部材には、人が開蓋するに際してキャップの先端縁に指を掛けるための凹所を形成し、底部材のうちヘッド部の近傍には紐や鎖を取付けできる穴が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によると、キャップは振り出し口が形成されているヘッド部を覆うように構成されているため、キャップの大きさを振り出し口の大きさよりも大きくでき、このため、キャップに対する指の引っ掛かりを良くして開蓋を軽快に行うことができる。
【0012】
特に、請求項2のように構成すると、蓋部材に形成した凹所の箇所でキャップの先端縁に指先を当ててキャップを起こすことができるため、出っ張りのないすっきりしたデザインでありながらキャップを容易に起こすことができて、特に好適である。
【0013】
また、請求項2のように構成すると、ケース本体に取付けた紐を人が手で持つことにより、容器を落としてしまうことを防止できる。また、例えば紐をループ状に形成して人が首に掛けたり、紐を手首に巻いたり、或いは紐をバッグのベルト等に引っ掛けたりといったことも可能であり、振り出し容器の所持形態の多様化を図ることができる。更に、商店で陳列するにおいて紐を陳列用フックに引っ掛けるといったことも可能で、陳列態様の豊富化にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(1).第1実施形態(図1〜図4)
図1〜図4では第1実施形態を示している。図1(A)は開蓋状態の斜視図、図2のちう(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は平面図、(D)は底面図、(E )は左側面図、(F)は右側面図、図3のうち(A)は開蓋状態の正面図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)は(A)のD−D視断面図である。
【0016】
振り出し容器は全体として扁平に近くて空豆状の正面形態を成しており、ケース本体1とキャップ2とを備えている。ケース本体1は、相対向するように開口した浅いトレー状の底部材3と蓋部材4とを嵌め合わせることによって中空に形成されており、このためケース本体1には両部材3,4の合わせ面を構成する重合ライン5が全周にわたって延びている。
【0017】
両部材3,4は例えばポリプロピレンのような合成樹脂を素材とした射出成形法によって製造されており、底部材3の上端部には、略椀状のキャップ2が屈曲自在なヒンジ部6を介して一体に連結されている。また、ケース本体1の上部には、キャップ2で被われるヘッド部7を形成しており、このヘッド部7に上向きに開口した振り出し口8を形成している。ヒンジ部6は、平面視で両部材3,4の重合ライン5と平行(又は略平行)に延びている。
【0018】
本実施形態では、振り出し口8は両部材3,4の縁部を切欠いた状態に形成されているが、片方の部材のみを切欠いた態様でも良い。また、複数の振り出し口を設けることも可能である。また、本願発明では振り出し口8はヘッド部7の端部にずらした状態で形成しているが、ヘッド部7の左右中間部に配置することも可能である。
【0019】
なお本明細書では容器の構成を特定するために便宜的に「上」「下」の用語を使用するが、振り出し口を設けている部分が上である。
【0020】
キャップ2は、閉じた状態でその外面がケース本体1の外面と滑らかに連続するように設定しており、このため、ケース本体1のうちヘッド部7とその連設部との間にはキャップ2と略同じ厚さ寸法の段差9が形成されている。或いは、段差9を設けることによってヘッド部7が形成されているといっても良い。また、蓋部材4には、指でキャップ2を起こすための凹所10を形成している。このため凹所10の箇所では段差9は消えている。
【0021】
キャップ2を閉じ状態に保持する係止手段の一例として、キャップ2の先端部(自由端部)に内向き突起11を設ける一方、蓋部材4には外向きに開口した係合溝12を形成している。また、キャップ2には、振り出し口8にきっちり嵌合する中栓13を一体に設けている。
【0022】
ヘッド部7は振り出し口8と反対側の部分において部分的に切欠かれた形状になっており、切欠き部14の箇所で底部材3の上部を露出壁部3aと成し、この露出壁部3aに紐15を通すための2つの穴16が空けられている。キャップ2の端面は底部材3の露出壁部3aの端面に重なるようになっており、このため、露出壁部3aの端面は段差9と連続している。図2(E)(F)に示すように、露出壁部3aと段差9とは、側面視で両部材3,4の重合ライン5を斜めに横切る方向に延びている。従って、切欠き部14はキャップ2で覆われている。
【0023】
なお、紐15を通すための穴16は1つでも良く、また、紐や鎖の取付け手段は穴には限らず、例えば図1(B)に変形例として示すようにフック方式とすることも可能である(この図1(B)の場合、紐15は予めループ状に結んでおいて、フック17には弾性変形を利用して嵌め込めば良い)。
【0024】
図3(B)では、キャップ2を底部材3の広巾面に対して約60°程度開いており、底部材3はこの状態に成形される。また、底部材3を成形する金型は一点鎖線で示す矢印Aの方向に相対動(型締め・型開き)するものであり、ヒンジ部6を成形を可能とするため、キャップ2を開いた状態で、当該キャップ2の付け根部と底部材3の上端部との間には側面視で外向きに開口した空間18が空いている。
【0025】
見方を変えて述べると、空間18を空けた状態で成形することにより、キャップ2を椀状に形成しつつヒンジ部6を形成することが可能ならしめられているのである。そして、図2(E)(F)に示すように、キャップ2を閉じた状態では ヒンジ部6を挟んだ上下の部分は側面視で鈍角に広がっている。
【0026】
本実施形態の振り出し容器は、扁平状でなおかつ丸みを帯びた形態をデザインのコンセプトとしており、このため正面形状を空豆状となし、かつ、蓋部材4の表面は全体にわたって緩く湾曲させている。他方、底部材3は、その外周寄りの部分は湾曲した断面形状とししつ、中央部側のある程度の範囲は平坦部と成している(平坦部の範囲を図3(B)(D)において符号3bで示している)。このため、振り出し容器は底部材3を下にした状態でテーブル等の平坦面に安定した状態に置くことができる)。
【0027】
図4のうち(A)は底部材3の正面図、(B)(C)は(A)のB−B線、C−C線の箇所でケース本体1を切断した断面図であり、この図4から容易に理解できるように、底部材3のうち周縁部3cのやや内側には、蓋部材4の内部に向けて突出する内壁19が、ヘッド部7及び切欠き部14を除いて全周にわたって延びるように形成されている一方、蓋部材4には、底部材3の周縁部3cと内壁19との間の溝状部20に嵌まる凸条21を突設している。
【0028】
そして、底部材3と蓋部材4と分離不能に保持する係合手段の一例として、底部材3の内壁19には外向き開口の係合溝22を周方向に沿って飛び飛びの状態で複数箇所設ける一方、蓋部材4の凸条21には、弾性に抗しての変形によって係合溝22に嵌合する係合突起23を形成している。蓋部材4の凸条21が底部材3の周縁部3cと内壁19との間にきっちり嵌入しているため、ケース本体1は高いシール性を確保できる。
【0029】
ところで、ケース本体1に振り出し容器に内容物を充填する方法としては、ケース本体1を組み立てた状態で振り出し口8から充填する方法と、寝かせた姿勢の底部材3に内容物を充填してから蓋部材4を嵌め込む方法との2つの方法がある。
【0030】
そして、後者の方法は作業能率に優れている利点を有するが、底部材3と蓋部材4との深さが同じ程度であると、内容物が零れ出るのを防止するためには充填量がケース本体1の全体の容量よりも相当に少なくなり、充填効率が悪いという問題がある。この点については、底部材3の深さを深くして蓋部材4の深さを浅くすれば良いと考えられるが、これでは重合ライン5の位置が蓋部材4の表面側に偏るため美感に劣るという問題や、ヘッド部7を形成し難くなるという問題がある。
【0031】
この点について、本実施形態のように、底部材3にその周縁部3cからはみ出る高さの内壁19を設けると、両部材3,4の重合ライン5はケース本体1の約半分程度の厚さ位置に保持しつつ底部材3の容量を大きくできるため、図3(D)に一点鎖線Bで示すように多くの両の内容物を底部材3に充填した状態で蓋部材4を嵌着することができる。このため、美感を保持しつつ充填効率を向上できる利点がある。
【0032】
また、底部材3に内容物を充填する作業では、底部材3は上向き開口した状態でテーブル等の平坦面に載せることになるが、既述のとおり底部材3に広い面積の平坦部3bがあるため、底部材3を安定良く保持して充填作業を支障無く行える利点がある。なお、内壁19と凸状21とはケース本体1の全周にわたって延びていても良いし、断続的であっても良い。
【0033】
閉蓋状態ではキャップ2がヘッド部7で抱持されているため、両部材3,4はヘッド部7の箇所において互いに嵌合し勝手に保持されており、このため嵌合強度が優れている利点がある。キャップ2を空け易くする手段としては、蓋部材4に凹所10を形成することに代えて(又はこれに加えて)、キャップ2の先端部の外面に凹所や突起、ローレット部等の起こし補助手段を形成することも可能である。
【0034】
ケース本体1に紐を取付ける必要がない場合は底部材3に露出壁部3aを設ける必要はない。この場合は、ヘッド部7は左右対称状に形成し、段差9がヒンジ部6と凹所10とを除いたヘッド部7の全周にわたって延びるように形成したら良い。
【0035】
(2).他の実施形態(図5)
図5では他の実施形態を示している。このうち(A)(B)に示すのは第2実施形態であり、(A)は正面図、(B)は右側面図である。この実施形態では振り出し容器を全体として卵形に形成している。詳細は省略するが、キャップ2は椀状に形成されており、ケース本体1の上部にはヘッド部7を形成している。
【0036】
図5(C)(D)に示すのは第3実施形態であり、(C)は正面図、(D)は平面図である。この実施形態ではケース本体1は全体として四角形に形成されており、その1つのコーナー部にヘッド部7とキャップ2とを設けている。また、他の1つのコーナー部に紐を通すための穴16を空けている。
【0037】
(3). その他
本願発明の具体例は上記の実施形態に限定されるものではなく、更に様々の態様に具体化できる。例えば容器の形状(正面形状)は、円形や三角形、扇形、台形、六角形(多角形)等の任意の形状を選択できる。
【0038】
また、容器は必ずしも扁平状である必要はない。また、底部材と蓋部材とを例えばキャップと反対側の部分においてヒンジ部を介して一体に連結した構造とすること(すなわち、底部材と蓋部材とを一体成形すること)も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(A)は第1実施形態の開蓋状態での斜視図、(B)は紐の取付け手段の別例断面図である。
【図2】正面図、背面図、平面図、底面図、左右側面図である。
【図3】(A)は開蓋状態の正面図、(B)〜(D)は(A)のB−B視、C−C視、D−D視断面図である。
【図4】A)は底部材の正面図、(B)(C)は(A)のB−B線、C−C線の箇所でケース本体を切断した断面図である。
【図5】第2実施形態及び第3実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ケース本体
2 キャップ
3 底部材
4 蓋部材
5 重合ライン
6 ヒンジ部
7 ヘッド部
8 蓋部材
9 ヘッド部を画定する段差
13 中栓
15 紐
16 紐を取付けるための穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向するように開口したトレー状の蓋部材と底部材とをその縁部において嵌め合わせることによって中空に形成されたケース本体を備えており、このケース本体のうち両部材の重合ラインに沿って延びる外周部の一部に振り出し口が開口しており、更に、前記底部材のうち振り出し口の近傍に、前記振り出し口を塞ぐキャップが屈曲自在なヒンジ部を介して連結されている合成樹脂製の振り出し容器であって、
前記ヒンジ部は両部材の重合ラインと略平行に延びている一方、前記キャップは椀状又はカップ状に形成されており、ケース本体には前記キャップが被さるヘッド部を形成し、このヘッド部に前記振り出し口を形成している、
振り出し容器。
【請求項2】
前記蓋部材及び底部材は共に浅いトレー状に形成されており、このためケース本体は扁平状の形態を成しており、前記キャップには振り出し口に嵌入する中栓を一体に形成している一方、前記蓋部材には、人が開蓋するに際してキャップの先端縁に指を掛けるための凹所を形成し、底部材のうちヘッド部の近傍には紐や鎖を取付けできる穴が形成されている、
請求項1に記載した振り出し容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−8165(P2006−8165A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186607(P2004−186607)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(501004095)ジュテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】