説明

振動アクチュエータ、レンズユニット及び撮像装置

【課題】出力トルクを効率よく向上させることができる振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】振動アクチュエータ100は、軸部材110と、軸部材110の軸線L周りに回転自在な一対のロータ160、161と、一対のロータ160、161の間に、一対のロータ160、161のそれぞれに接して配された一対のステータ120、121と、一対のステータ120、121の間に配され、一対のステータ120、121のそれぞれに対して軸線Lの周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部130、131と、一対の電気機械変換部130、131の間に配され、ステータ120、121の両方に結合してステータ120、121のそれぞれとの間で対応する電気機械変換部130、131を保持する保持部材170とを備え、ステータ120、121と保持部材170とは、電気機械変換部130、131よりも保持部材170側で結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、レンズユニット及び撮像装置に関する。本発明は、特に、電気機械変換部によりステータに発生される振動によってロータが回転する振動アクチュエータ、当該アクチュエータを備えるレンズユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータの小型化を追求した場合には出力トルクが低下することが定説化されており、小型で出力トルクが高い振動アクチュエータが望まれている。そこで、一対のステータが積層型の圧電素子を挟んだ両側に配され、回転軸に固定された一対のロータが一対のステータを挟んだ両側に配された振動アクチュエータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この振動アクチュエータでは、圧電素子が伸縮することにより、一対のステータに回転軸の軸線周りに遷移する振動が発生して該振動により一対のロータが回転される。この振動アクチュエータによれば、ステータを共振周波数で振動させることにより高出力を得ることができる。
【特許文献1】特開2000−308375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、ステータの支持状態が変動することにより、ステータの振動数が変動して共振周波数から外れた場合には出力が低下する。特に、上記振動アクチュエータにおいて、一対のステータの振動数にずれが生じ、一方のロータに発生する回転力が他方のロータと比較して低くなった場合には、一方のロータが他方のロータの回転負荷となってしまい、より一層、出力が低下する。
そこで、本発明の目的は、小型でも出力トルクを効率よく向上させることができる振動アクチュエータ、レンズユニット及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態において、振動アクチュエータは、軸部材と、軸部材の軸線周りに回転自在な一対のロータと、軸線の方向について一対のロータの間に、一対のロータのそれぞれに接して配され、軸部材が挿通された一対のステータと、軸線の方向について一対のステータの間に配されて軸部材が挿通され、一対のステータのそれぞれに対して軸線の周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部と、軸線の方向について一対の電気機械変換部の間に配されて軸部材が挿通され、一対のステータの両方に結合して一対のステータのそれぞれとの間で対応する電気機械変換部を挟んで保持する保持部材とを備え、一対のステータのそれぞれと保持部材とは、軸線の方向について一対の電気機械変換部よりも保持部材側で結合される。
【0005】
また、本発明の第2の形態において、レンズユニットは、振動アクチュエータと、振動アクチュエータにより移動される光学部材と、振動アクチュエータと光学部材とを収容するレンズ鏡筒とを備え、振動アクチュエータは、軸部材と、軸部材の軸線周りに回転自在な一対のロータと、軸線の方向について一対のロータの間に、一対のロータのそれぞれに接して配され、軸部材が挿通された一対のステータと、軸線の方向について一対のステータの間に配されて軸部材が挿通され、一対のステータのそれぞれに対して軸線の周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部と、軸線の方向について一対の電気機械変換部の間に配されて軸部材が挿通され、一対のステータの両方に結合して一対のステータのそれぞれとの間で対応する電気機械変換部を挟んで保持する保持部材とを有し、一対のステータのそれぞれと保持部材とは、軸線の方向について一対の電気機械変換部よりも保持部材側で結合される。
【0006】
本発明の第3の形態において、撮像装置は、振動アクチュエータと、振動アクチュエータにより移動される光学部材と、光学部材を収容するレンズ鏡筒と、光学部材によって結像された画像を撮像する撮像部と、を備え、振動アクチュエータは、軸部材と、軸部材の軸線周りに回転自在な一対のロータと、軸線の方向について一対のロータの間に、一対のロータのそれぞれに接して配され、軸部材が挿通された一対のステータと、軸線の方向について一対のステータの間に配されて軸部材が挿通され、一対のステータのそれぞれに対して軸線の周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部と、軸線の方向について一対の電気機械変換部の間に配されて軸部材が挿通され、一対のステータの両方に結合して一対のステータのそれぞれとの間で対応する電気機械変換部を挟んで保持する保持部材とを有し、一対のステータのそれぞれと保持部材とは、軸線の方向について一対の電気機械変換部よりも保持部材側で結合される。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、一実施形態に係る振動アクチュエータ100の斜視図である。また、図2は、振動アクチュエータ100の側断面図である。なお、軸部材110の軸方向における駆動出力側を出力側、その反対側を非出力側として説明する。また、軸部材110の軸方向から振動アクチュエータ100を見た場合を平面視、出力軸の径方向から振動アクチュエータ100を見た場合を側面視として説明する。
【0010】
これらの図に示すように、振動アクチュエータ100は、軸部材110、一対のロータ160、161、一対のステータ120、121、一対の電気機械変換部130、131、一対の配線板140、141、保持部材170、付勢部材150、保持部材170と協働して付勢部材150を挟む挟部材としての歯車180、フランジ部190を備える。軸部材110は、円柱状に形成されており、軸線Lの方向(以下、軸方向という)における出力側にはネジ部117が形成され、非出力側にはネジ部118が形成される。
【0011】
一対のロータ160、161は、軸心に貫通孔が形成された円盤状、所謂ドーナツ状に形成される。ロータ160は軸部材110の軸方向の出力側に配されるとともに、ロータ161は非出力側に配されており、これらの軸心には軸部材110が挿通される。ロータ160は、ネジ部117に螺合しており、さらに、接着される。一方、ロータ161は、軸部材110におけるネジ部118より出力側に嵌合する。
【0012】
図示の例では、軸部材110には、キーが形成され、ロータ161の内周部には、キー溝が形成されており、これらが嵌合している。これにより、ロータ161が、軸部材110と、軸線Lの周りに回転不能、且つ、軸方向へ変位可能に結合する。
【0013】
また、一対のステータ120、121は、一対のロータ160、161の間に、出力側から非出力側にこの記載順で配されており、これらの軸心には軸部材110が挿通される。ステータ120、121のそれぞれは、ドーナツ状に形成されて、対応するロータ160、161に接したステータ本体125、126、および、当該ステータ本体125、126よりも小径であって、ステータ本体125、126から軸線Lの方向に延伸した延伸部210、211を有する。
【0014】
一対の電気機械変換部130、131も、ドーナツ状に形成される。これら電気機械変換部130、131は、一対のステータ120、121の間に、出力側から非出力側にこの記載順で配されており、これらの軸心には軸部材110が挿通される。
【0015】
また、一対の配線板140、141はそれぞれ、ドーナツ状の電極部142と電極部142から外径方向へ延伸した配線部144とを備える。これら配線板140、141の一例は、フレキシブルプリント配線板である。これら配線板140、141は、出力側から非出力側にこの記載順で配される。配線板140、141の電極部142の軸心には軸部材110が挿通される。
【0016】
保持部材170は、一対の配線板140、141の間に配される。保持部材170は、円筒状の基部172と、当該基部172と一体的に形成され、基部172の軸方向中央部から外径方向に延出したドーナツ状のフランジ部174とを有する。フランジ部174の外周縁部には、90度間隔でU字状の締結用穴176が形成されており、この締結用穴176に挿通されるネジ等の締結具により、フランジ部174が、振動アクチュエータ100を駆動源とする装置に固定される。また、基部172の軸心にはネジ穴178が形成される。図示の例では、締結用穴176がU字状である例を示したが、これに代えて、締結用穴176を円形をなした穴で構成することができる。また、周面にネジ溝が形成されたネジ穴で締結用穴176を構成することができる。
【0017】
上記ステータ120の延伸部210は、ステータ120の軸心から保持部材170に向けて延伸しており、その内部には軸部材110が挿通される。また、ステータ120の延伸部211は、ステータ121の軸心から保持部材170に向けて延伸しており、その内部には軸部材110が挿通される。
【0018】
ここで、延伸部210における保持部材170側の端部にはネジ部212が形成されており、このネジ部212と保持部材170の基部172の軸心に存するネジ穴178とが螺合する。また、延伸部211における保持部材170側の端部にはネジ部214が形成されており、このネジ部214とネジ穴178とが螺合している。これにより、ステータ120は、軸線Lの方向について電気機械変換部130より保持部材170側において保持部材170と結合され、ステータ121は、軸線Lの方向について電気機械変換部131より保持部材170側において保持部材170と結合される。
【0019】
電気機械変換部130と配線板140の電極部142とは、ステータ120と保持部材170とに挟まれて、軸部材110の軸方向に締め付けられる。同様に、電気機械変換部131と配線板141の電極部142とは、ステータ121と保持部材170とに挟まれて、軸部材110の軸方向に締め付けられる。
【0020】
また、ステータ120、121の軸心には軸受122が埋設されており、この軸受122により軸部材110が回転自在に支持される。また、延伸部210のネジ部212及び延伸部211のネジ部214の軸長の合計は、保持部材170のネジ穴178の軸長より短い。即ち、延伸部210と延伸部211とは軸部材110の軸方向に互いに離間する。
【0021】
また、歯車180は、ロータ160より出力側においてネジ部117に螺合しており、さらに接着されている。また、フランジ部190は、ネジ部118に螺合している。フランジ部190とロータ161との間には、付勢部材150が配される。付勢部材150は、の一例は、図示された圧縮コイルバネであって、コイル内には軸部材110が挿通され、軸部材110の軸方向に伸縮可能となっており、フランジ部190とロータ161とにより弾性収縮されている。図示の例では、付勢部材150として圧縮コイルバネを用いた例を示したが、圧縮コイルバネに代えて他の弾性体を付勢部材を用いてもよい。また、弾性体の弾性反力を利用してロータ161をステータ121に向けて付勢することに代えて、付勢部材150は、磁力を利用してロータ161をステータ121に向けて付勢させてもよい。
【0022】
また、ロータ160の非出力側およびロータ161の出力側には、それぞれ円環状の接触子162が外周に沿って形成される。ロータ160に形成された接触子162は、ロータ160から非出力側へ突出している。また、ロータ161に形成された接触子162は、ロータ161から出力側へ突出している。
【0023】
ここで、付勢部材150が軸部材110の軸方向に弾性収縮していることにより、フランジ部190には、非出力側への付勢力が作用する一方、ロータ161には、出力側への付勢力が作用している。これにより、軸部材110が非出力側へ付勢されることによって、ロータ160に形成された接触子162が、ステータ120に、ロータ161に形成された接触子162が、ステータ121に、互いに等しい力で圧接される。
【0024】
図2に示された形態において、保持部材170より出力側に配されたロータ160、ステータ120、及び電気機械変換部130と、保持部材170より非出力側に配されたロータ161、ステータ121、及び電気機械変換部131とは、保持部材170に対して対称な位置に配されている。さらに、一対のロータ160、161は、保持部材170に対して対称な形状に形成され、一対のステータ120、121は、保持部材170に対して対称な形状に形成され、さらに、一対の電気機械変換部130、131は、保持部材170に対して対称な形状に形成されている。
【0025】
図3は、電気機械変換部130、131の分解斜視図である。この図に示すように、電気機械変換部130、131は、軸部材110の軸方向に積層された複数の電気機械変換素子層138を備えている。電気機械変換素子層138の各々は、圧電材料板136と、圧電材料板136の表面に形成された複数の電極132、133、134、135とを備えている。
【0026】
電極132、133、134、135は、略セクタ状の同形状とされており、軸線Lの周りに等間隔で配置される。また、同符号が付された電極の全体同士が軸方向に重なり合うように、電気機械変換素子層138が積層されており、各電極は、電気機械変換部130、131の側面に形成された導線により、配線板140、141の電極に導通される。また、圧電材料板136の電極形成面の裏側にはグランド電極が形成されており、各層のグランド電極は、電気機械変換部130、131の側面に形成された導線により、配線板140、141のグランド電極に導通される。なお、一対の電気機械変換部130、131は、同符号が付された電極の全体同士が軸方向に重なり合うように重ねられる。
【0027】
圧電材料板136は、駆動電圧を印加された場合に伸張する圧電材料を含んでいる。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電材料を含んでいる。なお、多くの圧電材料は脆いので、りん青銅等の高弾性金属材料で補強することが好ましい。また、上記電極は、ニッケル、金等の電極材料を用いて、鍍金、スパッタ、蒸着、厚膜印刷等の方法で、圧電材料の表面に直接に形成すればよい。
【0028】
次に、本実施形態における作用について説明する。図4A〜図4Dは、ステータ120及び電気機械変換部130の動作を誇張して示した斜視図である。図4A、図4B、図4C及び図4Dの相互の間に記入された矢印は、一対のステータ120及び一対の電気機械変換部130の状態が遷移することを示すと共に、状態の遷移が循環して一対のステータ120及び一対の電気機械変換部130が周期的に動作することを示す。なお、ここでは、ステータ120及び電気機械変換部130の動作について説明するが、ステータ121及び電気機械変換部131は、ステータ120及び電気機械変換部130と保持部材170に対して対称な動作をする。
【0029】
電極132、133、134、135のいずれかに対して駆動電圧が印加された場合、電気機械変換部130の軸方向の長さは、駆動電圧が印加された電極132、133、134、135に対応する部位で増加する。一方、駆動電圧が印加されていない電極132、133、134、135に対応する部位では、電気機械変換部130の軸方向の長さは変化しない。ステータ120は、電気機械変換部130の軸方向の長さが増加した部位において持ち上げられる。これにより、ステータ120は傾斜する。
【0030】
電極132、133、134、135に対して順次駆動電圧が印加されると、電極132、133、134、135に対応する部位で、電気機械変換部130の軸方向の長さが順次増加する。例えば、電極132、133、134、135に対して、1/4πずつ位相が異なる交流電圧が印加される。これにより、一対のステータ120の傾斜方向が、軸心周りの一方向へと遷移していくと共に、当該方向へ遷移する振動が発生する。ここで、ステータ120、121には、共振周波数の振動を発生させる。
【0031】
ロータ160は、付勢部材150によって付勢されて、ステータ120に対して定常的に当接している。また、ロータ161は、付勢部材150によって付勢されて、ステータ121に対して定常的に当接している。このため、ロータ160は、傾斜方向を周回させつつ揺動する出力側のステータ120から摩擦駆動力及び軸周りに遷移する共振を受けて回転する。また、同様に、ロータ161は、ステータ121から摩擦駆動力及び軸周りに遷移する共振を受けて回転する。
【0032】
これにより、軸部材110が、一対のロータ160、161と一体で回転することから、軸部材110に回転不能に結合された歯車180が回転する。よって、モータ駆動力が出力される。
【0033】
本実施形態では、ステータ120のステータ本体125と一体で形成された延伸部210を保持部材170に螺合させることにより、ステータ120が、軸線Lの方向における電気機械変換部130より保持部材170側において保持部材170に結合している。同様に、ステータ121のステータ本体126と一体で形成された延伸部211を保持部材170に螺合させることにより、ステータ121が、軸線Lの方向における電気機械変換部131より保持部材170側において保持部材170に結合している。
【0034】
すなわち、ステータ120、121と保持部材170とは、ステータ本体125、126と電気機械変換部130、131とが当接している領域から軸線Lの方向に離れた位置で結合している。よって、本実施形態によれば、ステータ120、121が電気機械変換部130、131から駆動されて変形する影響が、ネジ部212、214とネジ穴178との締結力に及ぶことを防ぐことができ、延伸部210、211と保持部材170との締結の緩みを最大限抑制できる。
【0035】
また、本実施形態では、一対の延伸部210、211を、軸部材110の軸方向について互いに離間するように構成した。これにより、ステータ120、121と保持部材170とが電気機械変換部130、131を確実に挟んで固定することができる。これにより、電気機械変換部130、131のそれぞれを対応するステータ本体125、126に確実に当接させて、駆動力を効率よく伝達することができる。
【0036】
また、本実施形態では、保持部材170より出力側に配されたロータ160、ステータ120、及び電気機械変換部130と、保持部材170より非出力側に配されたロータ161、ステータ121、及び電気機械変換部131とを、保持部材170に対して対称な位置に配している。これにより、一対のステータ120、121に生じる振動特性の対称性を向上でき、一対のロータ160、161の回転特性の対称性を向上できる。
【0037】
また、本実施形態では、一対のロータ160、161、一対のステータ120、121、一対の電気機械変換部130、131を、それぞれ保持部材170に対して対称な形状に形成している。これにより、一対のステータ120、121に生じる振動特性の対称性をより一層向上でき、一対のロータ160、161の回転特性の対称性をより一層向上できる。
【0038】
また、本実施形態では、ロータ160及びステータ120に対応する電気機械変換部130と、ロータ161及びステータ121に対応する電気機械変換部131とを設けた。これにより、ステータ120、121の振動特性を個別に調整できるので、各部の寸法精度、組付け精度に起因して、一対のステータ120、121の振動特性にずれが生じた場合でも、当該ずれを減少できる。従って、一対のロータ160、161の回転特性の対称性を確保でき、効率よく出力を向上できる。
【0039】
次に、他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0040】
図5は、他の実施形態に係る振動アクチュエータ200の斜視図である。また、図6は、振動アクチュエータ200の側断面図である。これらの図に示すように、振動アクチュエータ200では、ロータ160、161の軸心に円柱状のナット230が回転可能に嵌合する。このナット230は、軸部材110のネジ部117、118に螺合しており、ロータ160、161は、ナット230を介して軸部材110に回転可能に支持される。
【0041】
また、歯車180には、軸線Lと直交する方向にネジ穴182が形成されており、ネジ穴182には固定ネジ184が螺合する。この固定ネジ184の先端部は、軸部材110のネジ部117に圧接する。よって、軸部材110が回転したときに、ネジ部117と固定ネジ184との先端部に摩擦力が生じ、当該摩擦力により歯車180が軸部材110に追従して回転する。
【0042】
また、振動アクチュエータ200では、ロータ160と歯車180との間と、ロータ161とフランジ部190との間とに、それぞれドーナツ状の弾性板220、221が配されている。弾性板220、221は、ゴムで形成された厚み方向に弾性変形可能な板材であって、それぞれ、ロータ160と歯車180、及びロータ161とフランジ部190により加圧され、弾性的に圧縮されている。
【0043】
このため、ステータ120の振動によりロータ160が回転されたときには、ロータ160と弾性板220との間、及び弾性板220と歯車180との間に回転方向への摩擦力が生じ、当該摩擦力により、ロータ160に追従して弾性板220が回転し、弾性板220に追従して歯車180が回転する。よって、ロータ160、弾性板220、歯車180、及び歯車180と螺合した軸部材110が一体となって回転する。
【0044】
同様に、ステータ120の振動によりロータ161が回転されたときには、ロータ161と弾性板221との間、及び弾性板220とフランジ部190との間に回転方向への摩擦力が生じる。よって、ロータ161、弾性板221、フランジ部190及びフランジ部190と螺合した軸部材110が一体となって回転する。以上により、歯車180とフランジ部190については軸部材110に螺合させるものの、これらの間に存するロータ160、161については、軸部材110との螺合もしくは接着又はキー結合を要しない。よって、組立性を向上できると共に、軸部材110とロータ160との結合構造を簡素化できる。
【0045】
図7には、振動アクチュエータ100を備える撮像装置700の概略構成を側断面図にて示している。この図に示すように、撮像装置700は、光学部材420と、レンズ鏡筒430と、振動アクチュエータ100と、撮像部500と、制御部550と、を備える。レンズ鏡筒430は光学部材420を収容する。
【0046】
振動アクチュエータ100は、光学部材420を移動させる。撮像部500は、光学部材420によって結像された画像を撮像する。制御部550は、振動アクチュエータ100および撮像部500を制御する。
【0047】
また、撮像装置700は、光学部材420、レンズ鏡筒430、及び振動アクチュエータ100を備えるレンズユニット410と、ボディ460を含む。レンズユニット410は、マウント450を介して、ボディ460に対して着脱自在に装着される。
【0048】
光学部材420は、図中で左側にあたる入射端から順次配列された、フロントレンズ422、コンペンセータレンズ424、フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428を含む。フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428の間には、アイリスユニット440が配置される。
【0049】
振動アクチュエータ100は、光軸方向についてレンズ鏡筒430の中程にあって相対的に小径なフォーカシングレンズ426の下方に配置される。これにより、レンズ鏡筒430の径を拡大することなく、振動アクチュエータ100はレンズ鏡筒430内に収容される。振動アクチュエータ100は、例えばギア列を介してフォーカシングレンズ426を光軸方向に前進または後退させる。
【0050】
ボディ460は、メインミラー540、ペンタプリズム470、接眼系490を含む光学部材を収容する。メインミラー540は、レンズユニット410を介して入射した入射光の光路上に傾斜して配置される待機位置と、入射光を避けて上昇する撮影位置(図中に点線で示す)との間を移動する。
【0051】
待機位置にあるメインミラー540は、入射光の大半を、上方に配置されたペンタプリズム470に導く。ペンタプリズム470は、入射光の鏡映を接眼系490に向かって出射するので、フォーカシングスクリーンの映像を接眼系490から正像として見ることができる。入射光の残りは、ペンタプリズム470により測光ユニット480に導かれる。測光ユニット480は、入射光の強度およびその分布等を測定する。
【0052】
なお、ペンタプリズム470および接眼系490の間には、ファインダ液晶494に形成された表示画像を、フォーカシングスクリーンの映像に重ねるハーフミラー492が配置される。表示画像は、ペンタプリズム470から投影された画像に重ねて表示される。
【0053】
また、メインミラー540は、入射光の入射面に対する裏面にサブミラー542を有する。サブミラー542は、メインミラー540を透過した入射光の一部を、下方に配置された測距ユニット530に導く。これにより、メインミラー540が待機位置にある場合は、測距ユニット530が被写体までの距離を測定する。なお、メインミラー540が撮影位置に移動した場合は、サブミラー542も入射光の光路から退避する。
【0054】
更に、入射光に対してメインミラー540の後方には、シャッタ520、光学フィルタ510および撮像部500が順次配置される。シャッタ520が開放される場合、その直前にメインミラー540が撮影位置に移動するので、入射光は直進して撮像部500に入射される。これにより、入射光の形成する画像が電気信号に変換される。これにより、撮像部500は、レンズユニット410によって結像された画像を撮像する。
【0055】
撮像装置700において、レンズユニット410とボディ460とは電気的にも結合されている。従って、例えば、ボディ460側の測距ユニット530が検出した被写体までの距離の情報に応じて振動アクチュエータ100の回転を制御することにより、オートフォーカス機構を形成できる。また、測距ユニット530が振動アクチュエータ100の動作量を参照することにより、フォーカスエイド機構を形成することもできる。振動アクチュエータ100および撮像部500は、制御部550により上記の通り制御される。
【0056】
ここで、上述したように、振動アクチュエータ100のモータ出力を効率よく高めることができる。よって、オートフォーカス機構の駆動力を効率よく高めることができるので、省電力化すると共に、高駆動力でオートフォーカス機構を駆動することが可能となる。
【0057】
なお、振動アクチュエータ100によりフォーカシングレンズ426を移動させる場合について例示したが、アイリスユニット440の開閉、ズームレンズのバリエータレンズの移動等を振動アクチュエータ100で駆動できることはいうまでもない。この場合も、電気信号を介して測光ユニット480、ファインダ液晶494等と情報を参照し合うことにより、振動アクチュエータ100は、露出の自動化、シーンモードの実行、ブラケット撮影の実行等に寄与する。また、本実施形態では、振動アクチュエータ100を備える撮像装置700を例に取って説明したが、振動アクチュエータ100に替えて、振動アクチュエータ200を備えてもよい。
【0058】
以上のように、振動アクチュエータ100、200は、撮影機、双眼鏡等の光学系において、合焦機構、ズーム機構、手振れ補正機構等の駆動に好適に使用できる。さらに、精密ステージ、より具体的には電子ビーム描画装置、検査装置用各種ステージ、バイオテクノロジ用セルインジェクタの移動機構、核磁気共鳴装置の移動ベッド等の動力源に使用されうるが、用途がこれらに限られないことはいうまでもない。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動アクチュエータ100を斜視図にて示す。
【図2】本発明の一実施形態に係る振動アクチュエータ100を側断面図にて示す。
【図3】電気機械変換部130を分解斜視図にて示す。
【図4A】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図を示す。
【図4B】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図を示す。
【図4C】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図を示す。
【図4D】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図を示す。
【図5】本発明の他の実施形態に係る振動アクチュエータ200を斜視図にて示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る振動アクチュエータ200を側断面図にて示す。
【図7】撮像装置700の概略構成を側断面図にて示す。
【符号の説明】
【0061】
100 振動アクチュエータ、110 軸部材、117 ネジ部、118 ネジ部、120 ステータ、121 ステータ、122 軸受、125 ステータ本体、 126 ステータ本体、130 電気機械変換部、131 電気機械変換部、132 電極、133 電極、134 電極、135 電極、136 圧電材料板、138 電気機械変換素子層、140 配線板、141 配線板、142 電極部、144 配線部、150 付勢部材、160 ロータ、161 ロータ、162 接触子、170 保持部材、172 基部、174 フランジ部、176 締結用穴、178 ネジ穴、180 歯車、182 ネジ穴、184 固定ネジ、190 フランジ部、200 振動アクチュエータ、210 延伸部、211 延伸部、212 ネジ部、214 ネジ部、220 弾性板、221 弾性板、230 ナット、410 レンズユニット、420 光学部材、422 フロントレンズ、424 コンペンセータレンズ、426 フォーカシングレンズ、428 メインレンズ、430 鏡筒、440 アイリスユニット、450 マウント、460 ボディ、470 ペンタプリズム、480 測光ユニット、490 接眼系、492 ハーフミラー、494 ファインダ液晶、500 撮像部、510 光学フィルタ、520 シャッタ、530 測距ユニット、540 メインミラー、542 サブミラー、550 制御部、700 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
前記軸部材の軸線周りに回転自在な一対のロータと、
前記軸線の方向について一対の前記ロータの間に、一対の前記ロータのそれぞれに接して配され、前記軸部材が挿通された一対のステータと、
前記軸線の方向について前記一対のステータの間に配されて前記軸部材が挿通され、前記一対のステータのそれぞれに対して前記軸線の周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部と、
前記軸線の方向について前記一対の電気機械変換部の間に配されて前記軸部材が挿通され、前記一対のステータの両方に結合して前記一対のステータのそれぞれとの間で対応する前記電気機械変換部を挟んで保持する保持部材と
を備え、
前記一対のステータのそれぞれと前記保持部材とは、前記軸線の方向について前記一対の電気機械変換部よりも前記保持部材側で結合される振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記一対のステータのそれぞれは、対応する前記ロータと接するステータ本体、および、前記ステータ本体から前記保持部材へ延伸し、対応する前記電気機械変換部を貫通すると共に前記軸部材が挿通され、且つ、前記保持部材と螺合する延伸部を有する請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
一対の前記延伸部を前記軸線の方向について互いに離間させた請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記一対のロータ、前記一対のステータ、及び前記一対の電気機械変換部は、前記保持部材に対して対称に配される請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記一対のロータ、前記一対のステータ、前記一対の電気機械変換部は、それぞれ、前記保持部材に対して互いに対称な形状である請求項4に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記軸部材は前記ステータに相対回転自在に支持されており、
前記一対のロータのそれぞれにおいて、前記軸線に沿って、対応する前記ステータの反対側に配され、前記軸部材に固定された一対の挟部材と、
一対の前記ロータの一方と当該一方のロータに対応する前記挟部材との間、及び一対の前記ロータの他方と当該他方のロータに対応する前記挟部材との間にそれぞれ、加圧された状態で挟み込まれた一対の弾性板と、
を備える請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
振動アクチュエータと、
前記振動アクチュエータにより移動される光学部材と、
前記振動アクチュエータと前記光学部材とを収容するレンズ鏡筒と
を備え、
前記振動アクチュエータは、
軸部材と、
前記軸部材の軸線周りに回転自在な一対のロータと、
前記軸線の方向について一対の前記ロータの間に、一対の前記ロータのそれぞれに接して配され、前記軸部材が挿通された一対のステータと、
前記軸線の方向について前記一対のステータの間に配されて前記軸部材が挿通され、前記一対のステータのそれぞれに対して前記軸線の周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部と、
前記軸線の方向について前記一対の電気機械変換部の間に配されて前記軸部材が挿通され、前記一対のステータの両方に結合して前記一対のステータのそれぞれとの間で対応する前記電気機械変換部を挟んで保持する保持部材と
を有し、
前記一対のステータのそれぞれと前記保持部材とは、前記軸線の方向について前記一対の電気機械変換部よりも前記保持部材側で結合されるレンズユニット。
【請求項8】
振動アクチュエータと、
前記振動アクチュエータにより移動される光学部材と、
前記光学部材を収容するレンズ鏡筒と、
前記光学部材によって結像された画像を撮像する撮像部と、
を備え、
前記振動アクチュエータは、
軸部材と、
前記軸部材の軸線周りに回転自在な一対のロータと、
前記軸線の方向について一対の前記ロータの間に、一対の前記ロータのそれぞれに接して配され、前記軸部材が挿通された一対のステータと、
前記軸線の方向について前記一対のステータの間に配されて前記軸部材が挿通され、前記一対のステータのそれぞれに対して前記軸線の周りに遷移する振動を付与する一対の電気機械変換部と、
前記軸線の方向について前記一対の電気機械変換部の間に配されて前記軸部材が挿通され、前記一対のステータの両方に結合して前記一対のステータのそれぞれとの間で対応する前記電気機械変換部を挟んで保持する保持部材と
を有し、
前記一対のステータのそれぞれと前記保持部材とは、前記軸線の方向について前記一対の電気機械変換部よりも前記保持部材側で結合される撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−17038(P2010−17038A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176276(P2008−176276)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】