説明

振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】使用される環境温度による駆動性能の差を是正可能な振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明の振動アクチュエータは、電気機械変換素子(13)の励振により振動波を生じる弾性部材(12)と、前記弾性部材(12)に加圧接触されて前記振動波によって駆動され、前記弾性部材(12)に対して回転移動する相対移動部材(15)と、を備える振動アクチュエータ(10)であって、前記弾性部材(12)及び前記相対移動部材(15)の少なくとも一方の部材は、少なくとも他方に対する接触面に複数の空間(15D)が設けられ、該空間(15D)は、該接触面の摩擦係数が径方向に変化するように摩擦係数調整物質(15E)で充填されていること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、電気機械変換素子の励振により振動波を生じる弾性部材と、弾性部材に加圧接触されて振動波によって駆動され、弾性部材に対して回転移動する相対移動部材と、を備える。従来、それらの弾性部材または相対移動部材の接触面に、多孔質プラスチック材を用い、この多項質の孔が、潤滑性向上のために潤滑剤で充填されている振動アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願昭62−173227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、振動アクチュエータにおける弾性部材と相対移動部材の接触面は、環境温度によって接触箇所が異なる。すなわち、低温時においては、弾性部材が収縮するため、相対移動部材の被駆動面に対して弾性部材の内周側が離間し、外周側が接近する形に変形する。また、高温時においては、弾性体が膨張するため、相対移動部材の被駆動面に対して弾性部材の内周側が接近し、外周側が離間する形に変形する。このため、振動アクチュエータは、多項質の孔を潤滑剤で充填して潤滑性が向上しても、振動アクチュエータが使用される環境温度によって駆動性能に差を生じるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、環境温度による駆動性能の差を是正可能な振動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、電気機械変換素子(13)の励振により振動波を生じる弾性部材(12)と、前記弾性部材(12)に加圧接触されて前記振動波によって駆動され、前記弾性部材(12)に対して回転移動する相対移動部材(15)と、を備える振動アクチュエータ(10)であって、前記弾性部材(12)及び前記相対移動部材(15)の少なくとも一方の部材は、少なくとも他方に対する接触面に複数の空間(15D)が設けられ、該空間(15D)は、該接触面の摩擦係数が径方向に変化するように摩擦係数調整物質(15E)で充填されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記空間(15D)には、径方向位置によって、摩擦係数を変化させる程度が異なる摩擦係数調整物質(15E)が充填されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記空間(15D)には、径方向外側に向かうほど、摩擦係数を向上させる程度が高い摩擦係数調整物質(15E)が充填されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記空間(15D)には、径方向内側に向かうほど、摩擦係数を向上させる程度が高い摩擦係数調整物質(15E)が充填されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記空間(15D)の割合は、径方向位置によって異なっていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記空間(15D)の割合は、径方向外側に向かうほど大きいこと、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記空間(15D)の割合は、径方向内側に向かうほど大きいこと、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10)を備えるレンズ鏡筒(3)である。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10)を備えるカメラ(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用される環境温度による駆動性能の差を是正可能な振動アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態におけるカメラの概念的な構成図である。
【図2】超音波モータの縦断面図である。
【図3】移動子の斜視図である。
【図4】図3のA−A断面に相当する移動子における被駆動面の概念拡大断面図である。
【図5】超音波モータにおける振動子の温度変化に起因する変形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0011】
図1は、本実施形態におけるカメラ1の概念的な構成図である。図2は、超音波モータ10の縦断面図である。
本実施形態におけるカメラ1は、撮像素子4を備えるカメラボディ2と、レンズ31を有するレンズ鏡筒3とを備えている。
【0012】
レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒としてもよい。
レンズ鏡筒3は、レンズ31、カム筒32、アイドルギア33、超音波モータ10、及びこれらを包囲する固定外筒34等を備えている。
【0013】
本実施形態では、超音波モータ10は、カム筒32と固定外筒34の間の円環状の隙間に配置されている。超音波モータ10は、カメラ1のレンズ31を駆動する駆動源である。超音波モータ10は、その出力ギア20が噛合するアイドルギア33を介してカム筒32を回転駆動する。
【0014】
カム筒32は、超音波モータ10による回転操作によって、固定外筒34内に光軸OAと平行する方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。
レンズ31は、カム筒32に保持されている。そして、超音波モータ10の駆動によるカム筒32の移動によって光軸OA方向に移動する。
なお、図示しないが、レンズ鏡筒3は、レンズ31の他に複数のレンズ群を備えている。
【0015】
図1において、レンズ鏡筒3内に設けられたレンズ31を含むレンズ群によって、撮像素子4の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子4によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0016】
つぎに、図2に縦断面図を示す超音波モータ10について説明する。
超音波モータ10は、振動子11、移動子15、出力軸18、加圧部材19等を備え、振動子11側を固定とし、移動子15を回転駆動する形態となっている。
振動子11は、弾性体12と、弾性体12に接合された圧電体13とを有する略円環形状の部材である。
【0017】
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料によって形成され、その形状は、略円環状である。この弾性体12は、櫛歯部12a、ベース部12b、フランジ部12cを有する。
櫛歯部12aは、圧電体13が接合される面とは反対側の面に、複数の溝を切って形成され、この櫛歯部12aの先端面は、移動子15に加圧接触され、移動子15を駆動する駆動面12dとなる。この駆動面には、Ni−P(ニッケル−リン)メッキ等の潤滑性の表面処理が施されている。櫛歯部12aを設ける理由は、圧電体13の伸縮により駆動面に生じる進行波の中立面をできる限り圧電体13側へ近づけ、これにより駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。
【0018】
ベース部12bは、弾性体12の周方向に連続した部分であり、ベース部12bの櫛歯部12aとは反対側の面(弾性体側接合面12e)に、圧電体13が接合されている。
フランジ部12cは、弾性体12の内径方向に突出した鍔状の部分であり、ベース部12bの厚さ方向の中央に配置されている。このフランジ部12cにより、振動子11は、固定部材16に固定されている。
【0019】
圧電体13は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である。なお、本実施形態では、圧電体13として圧電素子を用いているが、電歪素子を用いてもよい。
圧電体13は、略円環形状の部材であり、弾性体12の周方向に沿って2つの相(A相、B相)の電気信号が入力される範囲に分かれている。各相には、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられており、A相とB相との間には1/4波長分間隔があくように設けてある。
圧電体13は、半田部材を用いて弾性体12と接合されている。
【0020】
フレキシブルプリント基板14は、その配線が圧電体13の各相の電極に接続されている。フレキシブルプリント基板14には、図示しない増幅部から駆動信号が供給されるようになっている。この駆動信号によって、圧電体13が伸縮する。
振動子11には、この圧電体13の伸縮により、弾性体12の駆動面にたとえば4波の進行波が発生する。
【0021】
移動子15は、弾性体12の駆動面12dに生じる進行波によって回転駆動される部材である。移動子15は、振動子11(弾性体12の駆動面12d)と接触する被駆動面15Cを備えている。
移動子15は、たとえばアルミニウム合金等の軽金属や合成樹脂等によって形成されている。アルミニウム合金によって形成された場合、被駆動面15Cの表面には、耐磨耗性向上のためのアルマイト等の表面処理が施される。
出力軸18は、略円柱形状の部材である。出力軸18は、一方の端部がゴム部材23を介して移動子15に接しており、移動子15と一体に回転するように設けられている。
【0022】
ゴム部材23は、ゴムにより形成された略円環形状の部材である。このゴム部材23は、ゴムによる粘弾性で移動子15と出力軸18とを一体に回転可能とする機能と、移動子15からの振動を出力軸18へ伝えないように振動を吸収する機能とを有しており、ブチルゴム、シリコンゴム、プロピレンゴム等が用いられている。
【0023】
加圧部材19は、振動子11と移動子15とを加圧接触させる加圧力を発生する部材であり、出力ギア20とベアリング受け部材21との間に設けられている。本実施形態では、加圧部材19は、圧縮コイルバネを用いているが、これに限定されるものではない。
【0024】
出力ギア20は、出力軸18のDカットに嵌まるように挿入され、Eリング等のストッパ22で固定され、回転方向及び軸方向に出力軸18と一体となるように設けられている。出力ギア20は、アイドルギア33(図1参照)と噛合しており、出力軸18の回転とともに回転して回転力をアイドルギア33に伝達(出力)する。
【0025】
ベアリング受け部材21は、ベアリング17の内径側に配置され、ベアリング17は、固定部材16の内径側に配置された構造となっている。
加圧部材19は、振動子11を移動子15側へ、出力軸18の軸方向に加圧しており、この加圧力によって、移動子15は、振動子11の駆動面に加圧接触し、回転駆動される。なお、加圧部材19とベアリング受け部材21との間には、加圧力調整ワッシャーを設けて、超音波モータ10の駆動に適正な加圧力が得られるようにしてもよい。
【0026】
上記のように構成された超音波モータ10は、フレキシブルプリント基板14を介して供給される駆動信号によって圧電体13が伸縮し、この圧電体13の伸縮によって弾性体12の駆動面12dに進行波が発生する。この進行波によって、移動子15が回転駆動される。移動子15の回転は、ゴム部材23を介して出力軸18に伝達され、その結果、出力軸18に固定された出力ギア20が回転する。これにより、出力ギア20が噛合したアイドルギア33(図1参照)に回転力を出力する。
【0027】
つぎに、前述した図2に加えて図3〜図5を参照し、本発明の実施形態を適用した移動子15について説明する。図3は、移動子15の斜視図である。図4は超音波モータにおける振動子の温度変化に起因する変形を説明する図である。図5は、移動子15における被駆動面の概念拡大断面図であって図3のA−A断面に相当する。
【0028】
移動子15は、所定径の円盤部15Aの中央に、出力軸18が挿通されるボス15Bを備えている。
円盤部15Aの、弾性体12における駆動面12dと対向する側の面には、周縁に沿って所定幅の被駆動面15Cが形成されている。被駆動面15Cは、前述したように、振動子11における弾性体12の駆動面12dと接触し、駆動面12dによって移動駆動される。
【0029】
移動子15の被駆動面15Cは、図4に示すように、無数の空孔15Dを有する多孔質に形成されている。なお、空孔15Dは、焼結合金等その形成上必然的に形成されるものであっても、通常であっては形成されないが軽量化等を目的として故意に形成したものであっても何れでも良い。
たとえば、アルミニウム素材の表面をアルマイト処理した場合、アルマイト被膜の表面には、多数の微細孔が形成される。
【0030】
ここで、超音波モータ10における振動子11は、前述したように、アルミニウム合金によって形成された弾性体12に、セラミックスによって形成された圧電体13が一体に接合されて構成されている。アルミニウム合金の線膨張係数はセラミックスより大きく、このため、温度変化によって振動子11には変形を生じる。つまり、線膨張係数の大きな弾性体12の変形をその片面において圧電体13が制限する状況となるため、弾性体12が斜めに変形して移動子15における被駆動面と平行であるべき駆動面12dに傾きを生ずる。
【0031】
図5(a)は、低温化した場合を二点鎖線で示してある。この場合、弾性体12は収縮するため、移動子15における被駆動面15Cに対して内周側が離間し、外周側が接近する形に変形する。図5(b)は、高温化した場合を二点鎖線で示してある。この場合、弾性体12は膨張しようとするため、移動子15における被駆動面15Cに対して内周側が接近し、外周側が離間する形に変形する。その結果、弾性体12の駆動面12dと移動子15における被駆動面15Cの接触状態が変化してしまう。
【0032】
つまり、超音波モータ10では、低温化すると弾性体12と移動子15の外周側が過接触状態となり、高温化すると弾性体12と移動子15の内周側が過接触状態となる。このような過接触が生ずると、駆動抵抗の増大によって円滑な駆動が阻害され、駆動力の低下を招来する。特に、超音波モータ10では、低温時にはこの影響が大きい。
【0033】
本実施形態では、被駆動面15Cには、図4(a),(b)に示すように、その表面に開口する空孔15Dに充填材15E,15Ea,15Ebが含浸されている。すなわち、被駆動面15Cは所定精度で形成された後、充填材15E,15Ea,15Ebを含浸する処理が施され、被駆動面15Cに開口する空孔15Dが充填されている。
図4(a)は、充填材15Eとして、移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域のみに、摩擦係数が低く潤滑性の高い充填材15Eを含浸させた例である。これは、たとえば、内周側の領域にマスキングを施して充填材15Eの含浸工程を行うことで可能となる。
また、図4(b)は、移動子15の被駆動面15Cの内周側と外周側とで、摩擦係数の異なる充填材15Ea,15Ebを含浸させた例である。たとえば、被駆動面15Cの内周側には摩擦係数の高い充填材15Eaを含浸させると共に、被駆動面15Cの外周側の所定範囲には摩擦係数が低く潤滑性の高い充填材15Ebを含浸させる。
上述の2つの例においては、被駆動面15Cの内周側の摩擦係数が高く、外周側の摩擦係数が低くなる。これにより、通常時および高温時における高負荷時のトルクを向上させることができると共に、低温時における起動性を向上させることができる。
【0034】
摩擦係数が大きく潤滑性の低い充填材15Eaとしては、アクリルビーズ、シリカ、マイカ等が用いられる。また、摩擦係数が小さく潤滑性の高い充填材15E,15Eaとしては、たとえば、4フッ化樹脂、2硫化モリブデン等が用いられる。
【0035】
なお、部位によって摩擦係数が異なる被駆動面15Cは、被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合を変化させ、この空孔15Dに均一に充填材15Eを含浸させることによっても形成することができる。たとえば、移動子15の被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合を、内周側より外周側で大きく形成する。そして、その空孔15Dに、摩擦係数の小さい充填材15Eを含浸させることで、移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域の摩擦係数を内周側より小さく構成できる。また、これとは逆に、移動子15の被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合を、外周側より内周側で大きく形成する。そして、その空孔15Dに、摩擦係数の大きい充填材15Eを含浸させることで、移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域の摩擦係数を内周側より小さく構成できる。
【0036】
このように、被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合が異なった移動子15の形成は、前述したように、樹脂材料で射出成形する場合には、成形条件(温度、射出圧力、射出速度等)の調整によって可能である。
【0037】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域の摩擦係数が低く潤滑性が高い。これにより、低温時において過接触となる移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域の摩擦が減少し、超音波モータ10の低温時における起動性を向上させることができる。また、高温時に過接触となる移動子15の被駆動面15Cの内周側の領域の摩擦が大きくなり、超音波モータ10の高温時におけるトルク性を向上させることができる。
【0038】
(2)超音波モータ10は、移動子15の被駆動面15Cが、無数の空孔15Dを有する多孔質に形成され、その表面に開口する空孔15Dに充填材15Eを含浸させて構成されている。これにより、充填材15Eによって被駆動面15Cの摩擦係数を任意に設定することが可能となる。
【0039】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
【0040】
(1)本実施形態は、被駆動面15Cの内周側の摩擦係数が大きく、外周側の摩擦係数が小さい例について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、内周側の摩擦係数を小さく、外周側の摩擦係数を大きくしてもよい。
そのためには、充填材15Eとして、移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域のみに、摩擦係数が高く潤滑性の低い充填材15Eを含浸させてもよい。
また、充填材15Eとして、移動子15の被駆動面15Cの内周側の領域のみに、摩擦係数が低く潤滑性の高い充填材15Eを含浸させてもよい。
さらに、たとえば、被駆動面15Cの内周側には摩擦係数の低い充填材15Eaを含浸させると共に、被駆動面15Cの外周側の所定範囲には摩擦係数が高く潤滑性の低い充填材15Ebを含浸させてもよい。
また、上述の実施形態と同様に、被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合を変化させ、この空孔15Dに均一に充填材15Eを含浸させることによっても形成することができる。たとえば、移動子15の被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合を、外周側より内周側で大きく形成する。そして、その空孔15Dに、摩擦係数の小さい充填材15Eを含浸させることで、移動子15の被駆動面15Cの内周側の領域の摩擦係数を外周側より小さく構成できる。
また、これとは逆に、移動子15の被駆動面15Cにおける空孔15Dの開口割合を、内周側より外周側で大きく形成する。そして、その空孔15Dに、摩擦係数の大きい充填材15Eを含浸させることで、移動子15の被駆動面15Cの外周側の領域の摩擦係数を内周側より大きく構成できる。
【0041】
(2)本実施形態では、移動子15の被駆動面15Cを多項質で製造し、その多項質の空孔15Dに充填材15Eを含浸させて径方向に摩擦係数を変化させる例について説明した。しかし本実施形態はこれに限定されず、弾性体12の接触面の摩擦係数を径方向に変化させてもよい。
【0042】
(3)本実施形態では、超音波領域の振動を用いる超音波モータを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、超音波領域以外の振動を用いる振動アクチュエータに適用してもよい。
【0043】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0044】
1:カメラ、3:レンズ鏡筒、4:撮像素子、10:超音波モータ、11:振動子、12:弾性体、12d:駆動面、13:圧電体、15:移動子、15C:被駆動面、15D:空孔、15E(15Ea,15Eb):充填材、31:レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械変換素子の励振により振動波を生じる弾性部材と、
前記弾性部材に加圧接触されて前記振動波によって駆動され、前記弾性部材に対して回転移動する相対移動部材と、
を備える振動アクチュエータであって、
前記弾性部材及び前記相対移動部材の少なくとも一方の部材は、少なくとも他方に対する接触面に複数の空間が設けられ、該空間は、該接触面の摩擦係数が径方向に変化するように摩擦係数調整物質で充填されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記空間には、径方向位置によって、摩擦係数を変化させる程度が異なる摩擦係数調整物質が充填されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動アクチュエータであって、
前記空間には、径方向外側に向かうほど、摩擦係数を向上させる程度が高い摩擦係数調整物質が充填されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項2に記載の振動アクチュエータであって、
前記空間には、径方向内側に向かうほど、摩擦係数を向上させる程度が高い摩擦係数調整物質が充填されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記空間の割合は、径方向位置によって異なっていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の振動アクチュエータであって、
前記空間の割合は、径方向外側に向かうほど大きいこと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記空間の割合は、径方向内側に向かうほど大きいこと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−9448(P2013−9448A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138368(P2011−138368)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】