説明

振動ジャイロスコープ

【課題】 ヨーレートが検出可能な、薄型でかつ生産性が高く精度のよいセンサ振動体を備えた振動ジャイロスコープを提供すること。
【解決手段】 弾性材料より成る平板の素材を多数枚積層接着してブロック状とし、該ブロック状体に対してセンサ振動体の矩形状の輪郭と、一端で基部により連結された平行に同じ向きに伸びる3本の真直脚を形成する為のスリットを機械的に加工し、その後接着を解くことによって多数個同時に形成されたセンサ振動体のうちの少なくとも1個と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部の面内回転によって前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の面内振動を検出する検出手段を備えたこと。またこのセンサ振動体と他の板状センサ振動体を平行に配置し多機能ジャイロスコープとしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサ用の振動体の構成に特徴を有する振動ジャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動の検出器である振動ジャイロスコープは、センサとして小型の振動体を使用するため小型に構成することができ消費電力も比較的少なく、携帯用電子機器や乗物の運動検出に多く用いられている。振動ジャイロスコープに用いられるセンサ振動体は従来種々の形態のものが提案されているが、平板状の素材から適宜な形状に切り出されたものが多い。
【0003】
このような平板状の振動体の基本形としては、音叉型(2脚)、3叉型、H型(4脚)等がよく知られているが、これらのセンサが検出する角速度の回転軸の方向は、ほとんどが振動脚に平行な方向である。すなわちこれらセンサ振動体は検出し得る回転軸に対して立てた方向に、すなわち長手方向が平行になるように配置しなければならない。これは、ある平面内の回転を検出しようとする、いわゆるヨーレート・センサにおいて、回転軸方向のセンサの寸法、すなわち厚さを十分に薄くできないことを意味する。
【0004】
しかし、ヨーレート・センサにおいて薄型化できる振動ジャイロスコープも既に下記文献のように提案されている。
【非特許文献1】日本音響学会講演論文集1999年3月 825〜826頁、1−9−12、白鳥典彦、富川義朗(山形大工)、大西一正(アルプス電気)「水平横置き・水晶三脚音さ振動子を用いた振動ジャイロ・センサ」

にそのようなジャイロスコープの例が示されている。以下図11〜13を用いて従来例である上記文献のセンサ振動体について、若干の補足を加えつつ説明する。
【0005】
図11は従来のセンサ振動体の概略形状を示す平面図である。センサ振動体1は水晶のZ’カット板を素材として形成される。基部1aより板面内のX方向に並んだ3本の脚1b、1c、1dが板面内のY’方向に平行に突出する。なおX、Y、Z軸は水晶の結晶軸で、方向Y’、Z’はZ板をX軸の回りに数度回転した、素材板に固有の軸方向であるが、動作の定性的な説明においては方向Y、Zとほぼ同等に扱われる。
【0006】
両外脚1b、1cの先端には外向きに突起部1g、1hが形成されている。これらは脚の長軸から外れた位置に重心を持つ付加質量として作用する。中脚1dは真直である。また各脚はそれぞれ片持ち棒として板面内の(板面に平行な方向の)振動に関する固有振動数を持つが、これらはほぼ等しくなるように設計されている。しかし中脚と両外脚の固有振動数の間には所定の離調度を設定することがある。なお素材板の厚さは突起部を除く各脚の幅と同程度である。
【0007】
外脚1b、1cの周囲(表裏面と両側面)には駆動電極1eが、中脚1dの周囲には検出電極1fが金属蒸着膜などで形成される。対向する膜同士を連結する導電膜や外部回路との連結を行う引出線も必要であるが、これらの図示は省略してある。図12はこのセンサ振動体の脚部の断面図および電極の結線図である。両外脚1b、1cの周囲に設けられた駆動電極1eは発振器4に接続されて自励振動を行う。
【0008】
発振器4から印加される電圧により、各脚の内部には矢付き曲線で示すような電界が振動の半周期毎に交互に向きを変えて生じ、両外脚1b、1cはそれらの内側同士、外側同士が共に伸縮して、センサ振動体1の対称軸(中脚1dの中心軸)に関して左右対称に開閉する対称振動モード(HS−MODE)の曲げ振動を行う。中脚1dには通常は駆動力が働かず、実質的に静止している。
【0009】
この駆動されている状態を図13(a)に線画で示した。外脚先端部の速度Vxの最大値は、振動変位のニュートラル位置で生じる。センサ振動体の基部1aが台座(図示せず)と共に板面に平行に角速度ωz(ベクトルはZ方向)で回転した場合、図13(b)に示すように突起部1g、1hに対して速度、角速度の両ベクトルに直交する方向(Y’方向)にコリオリ力Fcyが交番的に生じる。この力により非対称共振モード(HA−MODE)が励起され、中脚1dは曲線Bのように変形し、検出用共振モードとなる。中脚1dの板面内振動出力はその周囲電極1fにより図12のΔV端子から取り出される。論文には検出信号の処理回路が示され、有効な検出特性が得られたことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来例は特性の良好な薄型のヨーレートセンサ(振動体の板面に平行な回転の角速度を検出するセンサで、水平横置き型センサとも言われることがある)が得られる点で非常に優れている。しかしセンサ振動体の形状が比較的複雑なので、その外形を作るためには遊離砥粒を用いたり研削したりする機械的な加工法を用いることはできず、平板状の素材に湿式エッチング法を適用するしかなかった。もしワイヤソーやブレードソーなどを用いた機械的加工法が採用可能であれば、現在普及している、径2mm長さ6mmの外缶に封入された32768Hz音叉型水晶振動子において実施されている如く、多数枚の平板素材を同時加工して一挙に大量の個数のセンサ振動体を製造することができる。また湿式エッチングが不可能かあるいはエッチングレートが極めて遅い他の素材の利用ができない現状を打開することができる。
【0011】
そこで本願では機械加工が適用可能なセンサ振動体の形状を求め、提案することにした。それは三脚型振動体であるが、外脚に側方に張出す突起部のない形状を持ち、有効な検出作用があることをシミュレーションあるいは実験的に確認した。なお張出部のない三脚型振動体については下記の2例の文献に開示が存在するが、基部はくびれた形状で、加工に関する記述はない。
【特許文献1】特開2002−78697号公報・図4。
【特許文献2】特開2003−42768号公報・図2。
【0012】
本発明の第1の目的は、生産性の高い加工法を適用したセンサ振動体を用い得るヨーレートが検出可能で十分な精度を有する振動ジャイロスコープを提供することにある。また第2の目的は、湿式エッチングが困難または不可能である素材を用いたセンサ振動体を実用化し、それによって振動ジャイロスコープの特性を改善することである。また第3の目的は、薄型のヨーレートセンサ振動体と他の方向のセンサ振動体を組合わせて薄型にした多機能ジャイロスコープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の振動ジャイロスコープは以下(1)乃至(14)の特徴のいずれかを有する。
(1)弾性材料より成る平板の素材を多数枚積層接着してブロック状とし、該ブロック状体に対してセンサ振動体の矩形状の輪郭と、一端で基部により連結され平行に同じ向きに伸びる真直状の3本の脚を形成する為のスリットを機械的に加工し、その後接着を解くことによって多数個同時に形成されたセンサ振動体のうちの少なくとも1個と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部に板面に平行な回転が与えられたとき前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の板面内振動を検出する検出手段を備えたこと。
【0014】
(2)(1)の振動ジャイロスコープにおいて、前記センサ振動体の前記3本の脚の長さを実質的に等しくしたこと。
【0015】
(3)弾性材料より成る平板の素材より、一端で基部により連結された平行に同じ向きに伸びる真直状の3本の脚を形成する為のスリットを加工して形成されたセンサ振動体と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部に板面内回転が与えられたとき前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の板面内振動を検出する検出手段を備え、前記駆動および検出手段は、前記弾性材料を圧電性の材料とした前記センサ振動体の前記平板の表裏面に対向して設けられた、前記各脚の両縁に沿って平行に配置した各々2本づつの電極膜であること。
【0016】
(4)弾性材料より成る平板の素材より、一端で基部により連結された平行に同じ向きに伸びる真直状の3本の脚を形成する為のスリットを加工して形成され、前記平板の素材の厚さが前記センサ振動体の脚の幅の0.7倍以下であるセンサ振動体と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部に板面内回転が与えられたとき前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の板面内振動を検出する検出手段を備えたこと。
【0017】
(5)(4)の振動ジャイロスコープにおいて、前記平板の素材の厚さが前記センサ振動体の脚の幅の0.5倍以下であること。
【0018】
(6)(1)ないし(5)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記センサ振動体の前記スリットの幅は200μm以内であること。
【0019】
(7)(1)ないし(6)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記面内の前記基部の回転が加わらないときの前記中脚の振動を最小化するために、前記両外脚の幅にあらかじめ約5%以内の差を設けるか、前記両外脚にそれに相当する周波数差を与える加工を行ったこと。
【0020】
(8)(1)ないし(7)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記センサ振動体の前記面内対称振動モードの固有振動数と、前記面体非対称振動モードの固有振動数との離調度を1000ppm以内に設定したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかのの振動ジャイロスコープ。
【0021】
(9)(1)ないし(8)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記センサ振動体の、前記各脚の長さに対する前記スリットの底端から前記基部の固定部までの長さとの比を、2以内の範囲で、他軸感度が小さくなるように設定したこと。
【0022】
(10)(1)ないし(8)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記弾性材料は、圧電性の材料である水晶、ランガサイト、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ホウ酸リチウム、圧電性磁器のいずれかか、あるいは非圧電性材料より成ること。
【0023】
(11)(1)ないし(10)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記平板の素材は、水晶のX板であること。
【0024】
(12)(1)ないし(10)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記平板の素材は、ランガサイトのX板であること。
【0025】
(13)(1)ないし(10)のいずれかの振動ジャイロスコープにおいて、前記センサ振動体の前記平板は非圧電性材料より成ると共に、前記駆動手段および検出手段として、同じ構造の静電駆動検出手段を用いたこと。
【0026】
(14)(1)ないし(13)のいずれかの振動ジャイロスコープに用いられたセンサ振動体と、やはり平板の素材から形成され該平板面に平行な少なくとも1つの回転軸に関する角速度、任意の方向の加速度あるいは角加速度を検出する他のセンサ振動体とを、共通の支持体上あるいは容器内に並列にもしくは重ねて支持したことによって構成したこと。
【発明の効果】
【0027】
本発明のセンサ振動体は性能が良くしかも生産性を高めることができるので、ヨーレート検出可能な振動ジャイロスコープを廉価に提供し得る。また湿式エッチング加工が不可能または困難な素材をセンサ振動体に用いて高度な特性の振動ジャイロスコープを得ることができる。またスリットが狭い機械加工法の特徴は本発明のセンサ振動体の特性を助長発揮させるように働く。また他の方向の運動を検出できるセンサ振動体と共に用いることにより薄型の多機能振動ジャイロスコープを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
多数の素材板に2本のスリットと両サイドの輪郭を機械加工で切込むことにより真直脚より成る三脚型振動体を多数同時に形成し、これに対称型励振を行わせる駆動手段と、中脚の面内振動を検出する検出手段を設けて個々のセンサ振動体とし、その一つづつを用いてヨーレート検出型振動ジャイロスコープを構成する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明の振動ジャイロスコープに用いられるセンサ振動体の第1の実施例の平面図、図2はその脚部の電極形成部分の断面図および回路図、図3(a)、(b)は本発明におけるセンサ振動体の検出原理を示す模式図である。センサ振動体1の材質として用いられる弾性材料としては、弾性率が比較的高く(例えばヤング率にして少なくとも30GPa、好ましくは100GPa以上)、それを用いてセンサ振動体を形成したときに共振の先鋭度を表す機械的品質係数Qm値が数千以上(例えば3000以上、好ましくは10000以上)得られることが望ましい。本例では弾性材料として水晶の光軸に垂直またはほぼ垂直なZカット(Z’カット)の平板状の素材を用いる。
【0030】
センサ振動体1は水晶のZ板(又はZ’板)から成り(あるいは同種の圧電的な性質を持つ素材板を用いてもよい)外形はほぼ矩形状をなす。すなわち3本の脚を分割形成するための2本のスリットを除いては脚部に張出部などがなく、基部にはくびれなどがない輪郭形状を持っている。2本のスリットをY(又はY’)方向に切り込んで両外脚の外側と等しい幅を持つ基部1aを残し、真直でほぼ等幅・等長でX方向に並ぶ3本の脚部、外脚1b、1cと中脚1dを形成する。従来例と同様に、両外脚1b、1cの周囲には駆動電極1e、中脚1dの周囲には検出電極1fが設けられている。センサ振動体1のZ方向の厚さは、脚の側面にも電極を設ける関係上、脚の幅とほぼ同等かやや薄い程度とする。
【0031】
駆動電極1eは図2のようにセンサ振動体上で結線され(周知技術に属するので図示を省略するが、脚の一部の周囲、スリットの下端部、基部1aの表面や下端面を経由するかあるいは基部にスル−ホールを設けて接続する)、また外部の発振回路4(4端子発振回路であってもよい)に接続される。外脚1b、1cの内部には、中立面の左右(X方向)に逆向きの電界成分が生じ、それによるY方向の伸縮効果によって外脚は板面内で対称的に開閉する面内対称振動モード(HSモード)で励振される。このとき中脚1dにはは加振力を作用させず実質的に不動とすることができる。
【0032】
ここで基部1aが角速度ωzで面内回転を行うと、図3(a)、(b)に示すように、各外脚の振動質量が各外脚の軸線に沿ってY方向で向きが反対の一対のコリオリ力を周期的に生じる。このコリオリ力の作るモーメントが基部1aを通じて中脚1dに伝達され、中脚1dを曲線Bのように振動させる。その振幅はコリオリ力の大きさすなわち角速度ωzの大きさに比例し、位相は回転の向きと共に反転する。このとき両外脚1a、1cの組と中脚1dとは板面内で互に反対方向に運動する面内非対称振動モード(HAモード)での振動を行うことになる。
【0033】
この検出モードにおいて中脚1dがコリオリ力の効果で振動すると、図2の検出電極1fの検出電圧出力は増幅器5で増幅され、同期検波回路6で検波整流され、ローパスフィルタ7で平滑化され、検出出力端子8には中脚1dの振幅に比例した直流出力電圧が現れる。中脚1dを振動させるコリオリ力の効果は、外脚に突起部を持つ従来例よりは弱いが(例えば約30%減)、十分実用になる程度である。なおシミュレーションに用いた主要寸法は、外脚長5mm、外脚幅0.6mm、スリット幅0.1mm、基部長(スリット底端から固定部までの長さ)4mm前後(可変)、板厚0.1mmであった。
【0034】
なお、検出時の面内非対称振動モードの固有振動数は、駆動時の面内対称振動モードの固有振動数に共振し得るほど近いことが、コリオリ力(すなわち印加角速度)に対する中脚1dの振幅感度を高める上で望ましい。なお両モードには周波数温度特性の差などがあるため、広範囲の使用条件での特性の安定化を重視して完全な共振は避け、若干の固有振動数の差異(離調度、即ち〔駆動モード共振周波数−検出モード共振周波数〕/駆動モード共振周波数)を設定することがある。その量は通常1000ppm以内で、例えば300ppmとか100ppm程度が選ばれる。HSモードとHAモードという、いずれも面内振動であって周波数温度特性が近似したモードを利用している故に可能なのであって、これ以外の駆動・検出モード(例えば面内・面外)の組合わせでは、1000ppm以内という離調度の実現は通常不可能であると考えられる。この範囲の狭い離調度は、基本的に等長である各脚の幅や付加質量に設計上僅かの差を設けるとか、レーザーによる付加質量の追加加工によって容易に設定できる。
【0035】
次に本発明のセンサ振動体の高度の安定性について考察する。両外脚1b、1cの重心の運動を考えてみる。両外脚は真直かつ平行であって、各脚の重心はその軸線上にある。従って各脚の重心の運動は三脚振動体の対称軸に垂直な方向のみとなる。厳密には重心の運動軌跡は円弧状であるが、振幅が小さいので円弧誤差は無視できる。中脚1dの重心の運動についても同じである。故に本発明のセンサ振動体の振動による慣性力(振動の反作用)は三脚振動体の対称軸方向の成分を持たない。一方両外脚に突起部を有する従来例(非特許文献1に対応するもの)では、両突起部の重心は脚の軸線から離れているため、突起部の重心は外脚の振動と共に、三脚音叉の対称軸に垂直ではなくやや斜めの軌跡を描いて振動する。故にその振動の慣性力には対称軸方向の成分が若干生じる。これは本発明の振動体の振動漏れが上記従来例よりも原理的に少ない事を示し、振動のバランスや安定性の面で有利であることを示している。
【0036】
また水晶と同じ三方晶系の結晶構造を持つ圧電単結晶材料であり、圧電性の高さと使用温度範囲の広さから注目されているランガサイトを用い、カット方位をZ板に選定して第1実施例とほぼ同じ寸法と同じ電極配置を与えたセンサ振動体(周波数15.1kHz、離調度100ppm、Q値12500)について検討したところ、振動体を1Vp−pの電圧で駆動したとき、ほぼ同形状の水晶センサ振動体(周波数19.9kHz)の感度65mV/(rad/s)に対して約155mV/(rad/s)とほぼ2.4倍の感度が得られた。
【0037】
また他の方向の回転軸に関する角速度の感度は十分小さくできることがわかった。即ちX軸回りの回転角速度に対する感度は基部長(Y方向の長さ)にかかわらず実質的にゼロであった。Y軸回りの回転角速度に対する感度は基部長により変化する。主軸(Z軸)感度に対して、基部長3.5mmでは約4%、基部長を増すとY軸感度は減じてゆき、基部長約4.45mm(脚長の約89%)のときゼロとなるがそれを過ぎると約4.75mmまでは急に増大するが、以後また減少することがシミュレーションの一例から得られた。実質的に他軸感度ゼロを実現する基部の長さは各部寸法の諸条件により変化するであろうが、脚長の1.2〜2倍までの範囲内には存在すると考えられる。この特性は、本発明により適切な基部長さを与えれば精密なジャイロスコープが得られることを示している。
【実施例2】
【0038】
図4は本発明の振動ジャイロスコープに用いられるセンサ振動体の第2の実施例の平面図であり、図5はその脚部の断面図および回路図である。本実施例では素材板として水晶のXカットの平板(または同種の圧電的性向を持つ素材板)を用い、Y(Y’)方向にスリットを加工して脚を分離する。水晶はX方向の電界の方向の正負によってY方向に伸縮する。外脚1b、1cの駆動電極1eは図示のように脚の表面に平行して並ぶ2本の短冊形に形成する。これらは図5のように対角位置にあるもの同士が結線され、発振器4によって脚断面内の矢印で示すように脚の左右で板面にほぼ垂直で逆向きの電界を生じ、その効果で脚の幅の半分づつが伸縮逆になり、外脚1b、1cは面内対称振動モードで屈曲振動する。中脚1dには駆動力が働かず、静止している。
【0039】
ここで図4のように回転角速度ωxが加わると、各外脚の軸線上にY方向逆向きに現れるコリオリ力により面内非対称振動モードが励振されて中脚1dが振動し、その振動が電極1fによって検出される。検出された振動電圧は、第1実施例の場合(図2)と同様に増幅器5で増幅され、同期検波回路6で検波整流され、LPF7で平滑化され、検出出力端子8から中脚1dの振幅あるいは測定しようとする量であるωxに比例する直流出力(電圧または電流)を生じる。なお比較的小さな離調度の設定による高感度性とか振動漏れの少なさなど、第2実施例のセンサ振動体は前記第1実施例と共通の長所を有する。
【0040】
しかしコンピュータ・シミュレーションによる検討を行ったところ、本実施例では駆動振動モードで完全にバランスさせ感度を向上あるいは安定化させるためには、両外脚の幅にわずかの差を設けるとよいことが判明した。その量は、厚さ0.1mm、全長10.4mm、外脚長5mm、外脚幅0.6mm、スリット幅0.1mmの振動体において、−Z方向にある外脚の寸法を、他の外脚に対して脚幅で17.75μm大きく、脚長を0.3μm小さく設定したとき結果が最良であった。この寸法差は、脚を片持ち梁とみなしたとき、その曲げ振動の固有振動数にして約3%の差を各外脚に予め与えたことに相当する。なお第1実施例のようなZカット振動体ではこのような差を与えることは不要であった。原因は材質の異方性によるものかも知れない。
【0041】
またランガサイトを用い、カット方位を選定して(X板、あるいはIRE標準表記によればxyカット)第2実施例とほぼ同じ寸法と同じ電極配置を与えたセンサ振動体について検討したところ、やはり両外脚の同程度の寸法差(固有振動数差)が必要であり、−Z側の外脚の幅を+Z側の外脚(幅0.6mm)に対して16.2μm細くするとよいことがわかった。この場合も両外脚の計算上の固有振動数に約2.7%の差を予め与えたことに相当する。(ランガサイトの場合、水晶X板とは逆方向の差となったが、いずれにせよ数%程度、例えば約5%以内の所定の脚幅または固有振動数の差を与えるとよい。)また本実施例の主軸以外の他の2軸に対する感度は、ゼロにはならないまでも基部のY方向の長さを変化させても広い範囲で極めて小さく、ほぼ0.5%〜0.1%以内に止まった。また基部長さが脚長の約95%のところで極小となるシミュレーション結果の一例も得られた。この特性も本発明の優秀性を示しているし、基部の長さを外脚長より短くし(例えば1〜0.5又は更にそれそれ以下)センサを小型化できる可能性をも含んでいる。
【0042】
この第2実施例は、まず側面電極(その面積は素材板の厚さと相反関係にある)が不要であるし、次に同じ駆動電圧でも電極間距離が近いと振動体内部の電界強度が大となり大きな駆動歪みが得られるため、素材であるX板の厚さが薄いほど強い駆動ができる。また駆動電極間の静電容量(電極面積に比例し電極間距離に反比例する)が大きくなると振動子のインピーダンスが低下し発振し易くなる傾向があるので、やはり素材板の厚さを薄くして静電容量を増し発振を容易にしたり、あるいは静電容量を増す代わりに電極面積を小さくする(すなわちセンサ振動体の平面形状を小型化する)ことが容易にできる。なお水晶X板は湿式エッチング加工を行おうとしてもエッチングレートが極めて遅く、実用化は困難である。形状付与は機械加工によらざるを得ない。更に薄い素材板を用いて同時に加工する素材板の個数を増し、生産性を向上させることもできる。
【0043】
具体的な素材板の厚さは、素材板が水晶のZ(Z’)板であれば、水晶の圧電性の弱さと側面電極の必要性との理由で、センサ振動体としての性能を得るため、既述のように厚さは脚の幅と同等程度となるが、素材板を水晶よりも強い圧電性を示す材料、例えばランガサイト、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ホウ酸リチウム、圧電性磁器のいずれかを用いることにより、第1実施例の如く各脚に側面電極を設ける構成を適用した場合でも、板厚を脚の幅の0.7倍あるいはそれよりも更に薄くして側面電極の幅(面積)が減少してもセンサ振動体を実用化することができる。
【0044】
また第2実施例の如く、側面電極を要せず、板面に垂直な電界のみで駆動・検出を行うカット方位を採用すれば、材質が水晶(X板)であっても薄い程強力な電界が得られるので薄型センサ振動体の実現には原理的に支障はない。水晶以外の上記のような圧電材料を同様な構成で素材に用いる場合ももちろん同様である。これらの場合には板厚を脚の幅の0.5倍あるいはそれよりも更に薄くしてセンサ振動体を実用化することができ、生産性と材料費削減の更に大きな効果を得ることができる。
【0045】
水晶以外の上記圧電性物質は、既述のように結晶のカット方位(圧電性磁器の場合は分極方向)を選択することで、脚周囲の4面の電極(第1実施例に相当)あるいは表裏面の平行電極(第2実施例に相当)を用いて駆動・検出を行うことができる。上記の圧電性材料の中には水晶に比して高価なものもあるし、あるいは湿式エッチング加工が困難または実質的に不可能なもの(カット方位にもよるが)がある。機械加工法はほとんどあらゆる材料に適用できるのみならず、素材板を加工機械に適した所定の厚さになるまで多数枚重ねて同時加工するが、1回の加工で製造できるセンサ振動体のブランクの個数が素材厚さに反比例して増すので、素材板を薄くできれば生産性が格段に向上し、センサ振動体1個当たりの材料費も削減できる。
【0046】
次に本発明のセンサ振動体のブランク加工に適用する機械的加工法について説明する。 図6(a)、(b)はそれぞれ本発明におけるセンサ振動体の形状加工方法を示す正面図および側面図である。図示例ではワイヤソーを用い、加工された素材とワイヤの一部を示している。未加工の横長の矩形状の素材板は側面図(b)のように多数枚方向を揃えて積層され、加熱によって流動する接着剤を用いて相互に接着されてブロック状をなす集合素材14を形成する。スル−ホールl8は必要に応じて基部に設けた穴で、センサ振動体の両面の電極を接続するために設ける。素材板個々に予め機械加工で穴あけしておくか、集合素材14の状態で穴を加工する。この集合素材14は更にガラス等より成る台板15上に接着され、加工機械にセットされる。16はワイヤで水平に張られ、図では集合素材板14への下方への切込みを終わって引き上げられた状態を示している。
【0047】
ワイヤソーには図示しないが、加工に使用する前の長尺のワイヤを巻いた繰出しリールと加工後のワイヤを巻き取る巻取りリールがあり、その中間のワイヤは軸が水平かつ平行する一対の円筒状のプーリ(ワイヤを所定の間隔で掛けるための多数の平行溝を刻んである)に繰り返し往復して巻き付けられ、多数平行して水平に、強い張力で張られる。ワイヤ16はその下側に張られたものを示し、これが往復運動をしつつ過度の磨耗を避けるため少しづつ巻き取られながら徐々に沈下して集合素材14に切込む。加工部位には遊離砥粒を含む研磨液が供給される。切込みによって形成されるスリットがセンサ振動体の各脚を分離するので、水平方向の各ワイヤ16の線径と間隔が各脚の幅を決める。またワイヤ16の線径はスリットの幅を決める。
【0048】
図示例ではワイヤ16は2本おきにプーリに部分的に設けた径大部に巻かれている。そのワイヤがプーリの径小部に巻かれた他のワイヤよりも深く切り込むので、個々のセンサ振動体の両外脚の平面の外側側面(の少なくとも大部分)が各脚加工と同時に形成される。本図示例の他に、全てのワイヤを一様な直径のプーリに巻き付けておいて集合素材14を脚の下端に相当する深さまで等しく切込み、そこで一旦プーリからワイヤ14を外して溝2本おきに懸けなおしてワイヤ14の間隔を広げ、その後更に深く切り込んで両外脚の外側側面を形成する方法もある。
【0049】
また集合素材14に対して、センサ振動体の外側面を形成するスリットを切込むとき、その深さをどうするかの問題がある。集合素材14を完全に分断し、ガラスの台板15に食い込んでから止める方法(図示せず)がまずある。その加工後にブロックを加熱すると、接着剤が溶けてセンサ振動体のブランクは台板15からも相互からも分離され、接着剤の残渣は溶剤で除かれ、洗浄され単体となる。この単体のブランクはマスク用金属板と共に治具上にセットされ、金属の真空蒸着を行って駆動、検出その他の電極が形成され、更に振動数調整やパッケージなどの後加工を経由してセンサ振動体として完成する。
【0050】
図6(a)には、センサ振動体の外側面を形成するスリットを台板15に届く前に止める方法を示した。この状態で集合素材14を加熱し分離すると、素材板の幅だけ基部の下端で繋がったセンサ振動体の半製品が得られる。以下電極加工等は上に説明した例と同じであるが、ブランクがバラバラではないので電極蒸着用の治具へのセットや、調整、検査等の扱いが容易となるメリットがある。この場合、最後に矢印で示す切断部位17に力を加えることによってセンサ振動体を折って分離することができる。なお上で電極はブランク形状の完成後に行うと説明したが、素材板の状態で予め電極付けを行っておく加工法もあり得る。これは第2実施例の如く、脚に側面電極が不要な場合に適した方法である。
【0051】
また本発明のセンサ振動体に関する実験(又はコンピュータ・シミュレーション)によると、ジャイロスコープの感度すなわちコリオリ力が中脚1dを振動させる効果は、腕長が長くなるから有利であろうと考えられる両外脚1b、1cの間隔を広げた場合よりも、むしろ逆に両外脚1b、1cを中脚1dに接近させた方が良く感度が高い傾向があることがわかった。この現象も太いワイヤは用い難く、細いワイヤ(0.2mm〜0.07mmまたは更にそれ以下)を用いてスリットを加工する方がむしろ容易なワイヤソー加工法には極めて有利に作用する。完成振動体の幅もスリム化できて小型化に有利な方向である。一方湿式エッチング加工法では、スリット幅を素材板の厚さよりも狭くすることは容易ではない。
【0052】
以上ワイヤソー加工について述べたが、他の機械加工法としてはブレードソーがある。これはワイヤの代わりに多数並べられた薄板が研磨財を供給されながら往復運動(円盤が回転する場合もあり得る)して素材板にスリットを加工するものである。また更に他の機械加工法として、砥粒を埋め込んだ薄い研削砥石でスリットを1本づつあるいは重ねた砥石で複数本づつ同時に加工する方法もある。これらの加工法もワイヤソーに近い特徴を備えており、本発明のセンサ振動体に適用し易く相性が良い。なお、本発明の形状構造を有するセンサ振動体は、エッチングで製造されることを必ずしも妨げない。
【実施例3】
【0053】
図10は本発明のセンサ振動体の第3の実施例であり、静電的な駆動・検出手段を持つものの要部の平面図である。本例ではセンサ振動体1の素材として、非圧電性の弾性材料、例えばシリコン単結晶板を用いている。センサ振動体1は第1、第2実施例と同様に平板状の三脚音叉の形状を持つ。両外脚の先端付近の側面に静電駆動用の電極膜22、23、30、31、中脚の先端付近の側面に静電検出用の電極膜26、27を持つ。一方各脚の間に一部が挿入された絶縁性の材料より成る櫛歯状の固定子20があり、その櫛歯部の側面に電極膜21、24、25、28、29、32が形成されていて、センサ振動体1側の電極膜と例えば数μmのギャップで対向している。
【0054】
電極膜21と22間および31と32間には励振周波数の矩形波電圧が印加され、電極膜23と24間および29と30間にはそれと逆位相の矩形波電圧が印加され、センサ振動体1は対称モードで駆動される。センサ振動体1の面内回転によってコリオリ力が発生すると中脚が振動し、電極25と26間、27と28間の容量は互いに逆方向の変化が振動的に生じるので、その変化量を計測してヨーレートを検出することができる。
【他の実施例】
【0055】
次に本発明のセンサ振動体を他のセンサ振動体と組合せて複合的に用いた諸例を示す。
図7(a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明のセンサ振動体と組み合わせるのに適当な例である他のセンサ振動体の平面図であり、それぞれよく知られたものである。
(a)は音叉型センサ振動体であり、水晶のZ’板、あるいは他の同じ方向の圧電性を有する圧電材料より成る。その一方の脚は周囲4面に形成された駆動電極1eで面内で屈曲励振される。他方の脚はその反作用で屈曲し、音叉は速度Vxで示すように対称モードで励振される。この音叉がY軸(音叉軸)に平行な軸の回りに角速度ωyで回転すると、コリオリ力Fczが面外方向に働き、各脚はそれぞれ逆向きに面外振動する。その面外変位は音叉の表裏面に設けた各2本の平行する検出電極1fにより検出される。
【0056】
図7(b)のセンサは三脚型振動体で、水晶のZ’板あるいは類似の性質の圧電材料より成る。これは面外振動モードでの励振を利用するもので、両外脚を表裏面に設けた駆動電極1eにより、速度Vzのように同じ位相で面外駆動を行うと、中脚はその反作用で逆位相の面外振動を行う。これが(a)同様にY軸に平行な軸を持つ回転を行うとコリオリ力Fcxが発生する。これは非対称モードの面内振動を生起させ、その中脚の面内振動を周囲4面の検出電極1fを用いて検出する。
【0057】
図7(c)のセンサも三脚型振動体で、水晶のZ’板あるいは類似の性質の圧電材料より成る。これは駆動電極1eにより両外脚を同方向に面内駆動することによって3本の脚に速度Vxで示すように面内非対称振動を励起させる。回転ωyに対して面外方向に発生するコリオリ力Fczにより生起される面外対称振動による中脚の振動を、検出電極1fにより検出するものである。
【0058】
図8は容器内に収容された本発明のセンサ振動体の配置の各実施例を示し、(a)はヨーレート・センサ用、(c)はヨーレートおよび水平1軸、(e)はヨーレートおよび水平2軸の多機能センサの容器の天井部を取り除いて示した内部平面図で、(b)、(d)、(f)はそれぞれの断面図である。各図において、1は本発明のヨーレート検出用のセンサ振動体、2、3は他の方向の回転軸の回りの角速度を検出する他の型のセンサ振動体、9は気密容器、10、11、12は支持台で、容器9内においてそれぞれセンサ振動体1、2、3の基部の端部が載置固定される。なお容器9の細部の形状構造、内部の電極接続、外部端子などは図示を省略してある。
【0059】
図8(a)、(b)は本発明のセンサ振動体を用いた単機能センサであるが参考用に示した図である。(c)、(d)は本発明のセンサ振動体1に図7(b)〔あるいは(c)または(a)でもよい〕に示す他の方向用のセンサ振動体2を重ねて容器9に収容した多機能ジャイロスコープ用センサの実施例である。これはヨーレートとローリング検出が可能な直交2軸のジャイロスコープを実現する。(e)、(f)は更にピッチング検出を可能にした直交3軸ジャイロスコープ用のセンサの実施例を示し、図7のセンサ振動体の一つを更に他と直角に積層してある。
【0060】
いずれの実施例においても、下層にある振動体の先端部あるいは脚の根元部の調整加工を容器の上方から行えるように、両振動体の位置をずらして必要部位を覗かせてある。これらのセンサは板状のセンサ振動体を平行に積層配置することができるので、多軸センサであるにもかかわらず全体的に比較的薄型に構成することができ、平面形状が小さくかつ薄型のジャイロスコープを実現することができる。
【0061】
次に本発明のセンサ振動体を他のセンサ振動体と同じレベルに並べて配置した多機能ジャイロスコープ用の薄型のセンサの実施例を示す。図9は容器内に収容された本発明のセンサ振動体の他の配置の実施例を示す。(a)はヨーレートおよび水平1軸、(c)はヨーレートおよび水平2軸の多機能センサの内部平面図で、(b)、(d)はそれぞれの断面図である。
【0062】
図9(a)、(b)は本発明のセンサ振動体1と図7に示す他のセンサ振動体2の基部を共通の支持台10(支持台11を兼ねる)上にそれぞれ載置固定した2軸ジャイロスコープ用センサの実施例である。また(c)、(d)は本発明のセンサ振動体1と他のセンサ振動体2、3を平面的に配置した3軸ジャイロスコープ用センサの実施例である。いずれも平板状センサ振動体1枚分の厚さで済み、また容器9の内部で各センサ振動体を近接密集させることで全体の平面形状も大型化を防ぎ、超薄型の振動ジャイロスコープが実現できる構造である。もちろん原則的には発振・検出回路はそれぞれのセンサ振動体に対して必要であるが、回路は1枚の回路基板上に集積でき、薄型化の障害とはなり難い。なお3軸ジャイロスコープ用センサの場合3個の振動体を並列と積層の組合せとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により振動ジャイロスコープを廉価化し、あるいはセンサ振動体として適用可能な素材の範囲を広げ、また多機能ジャイロスコープを小型化することができるので、振動ジャイロスコープの応用・利用範囲が拡大されるから、本発明は産業上の多大な利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】 本発明の振動ジャイロスコープに用いられるセンサ振動体の第1の実施例の平面図である。
【図2】 本発明におけるセンサ振動体の第1の実施例の脚部の断面図および回路図である。
【図3】 平面図(a)、線画(b)は本発明におけるセンサ振動体の検出原理を示す模式図である。
【図4】 本発明の振動ジャイロスコープに用いられるセンサ振動体の第2の実施例の平面図である。
【図5】 本発明におけるセンサ振動体の第2の実施例の脚部の断面図および回路図である。
【図6】 (a)、(b)はそれぞれ本発明におけるセンサ振動体の形状加工方法の一例を示す正面図および側面図である。
【図7】 (a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明のセンサ振動体と組み合わせるべき他のセンサ振動体の3つの例の平面図である。
【図8】 容器内に収容された本発明のセンサ振動体の配置の各実施例を示し、(a)はヨーレート・センサ用、(c)はヨーレートおよび水平1軸、(e)はヨーレートおよび水平2軸の多機能センサの内部平面図で、(b)、(d)、(f)はそれぞれの断面図である。
【図9】 容器内に収容された本発明のセンサ振動体の他の配置の実施例を示し、(a)はヨーレートおよび水平1軸、(c)はヨーレートおよび水平2軸の多機能センサの内部平面図で、(b)、(d)はそれぞれの断面図である。
【図10】 本発明のセンサ振動体の第3の実施例とその静電的駆動・検出手段の平面図である。
【図11】 従来のヨーレート検出用センサ振動体の平面図である。
【図12】 従来のヨーレート検出用センサ振動体の脚部の断面図である。
【図13】 従来のヨーレート検出用センサ振動体の動作の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 三脚センサ振動体
1a 基部
1b、1c 外脚
1d 中脚
1e 駆動電極
1f 検出電極
1g、1h 突起部
2、3 他のセンサ振動体
4 発振器
5 増幅器
6 同期検波回路
7 ローパスフィルタ
8 検出出力端子
9 機密容器
10、11、12 支持台
14 集合素材
15 台板
16 ワイヤ
17 切断部位
18 スルーホール
20 固定子
21〜32 電極膜
Vx、Vz 速度
Fcx、Fcy、Fcz コリオリ力
ωx、ωy、ωz 回転角速度
X、Y、Y’、Z、Z’ 座標軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料より成る平板の素材を多数枚積層接着してブロック状とし、該ブロック状体に対してセンサ振動体の矩形状の輪郭と、一端で基部により連結された平行に同じ向きに伸びる真直状の3本の脚を形成する為のスリットを機械的に加工し、その後接着を解くことによって多数個同時に形成されたセンサ振動体のうちの少なくとも1個と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部に板面に平行な回転が与えられたとき前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の板面内振動を検出する検出手段を備えたことを特徴とする振動ジャイロスコープ。
【請求項2】
前記センサ振動体の前記3本の脚の長さを実質的に等しくしたことを特徴とする請求項1の振動ジャイロスコープ。
【請求項3】
弾性材料より成る平板の素材より、一端で基部により連結された平行に同じ向きに伸びる真直状の3本の脚を形成する為のスリットを加工して形成されたセンサ振動体と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部に板面に平行な回転が与えられたとき前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の板面内振動を検出する検出手段を備え、前記駆動および検出手段は、前記弾性材料を圧電性の材料とした前記センサ振動体の前記平板の表裏面に対向して設けられた、前記各脚の両縁に沿って平行に配置した各々2本づつの電極膜であることを特徴とする振動ジャイロスコープ。
【請求項4】
弾性材料より成る平板の素材より、一端で基部により連結された平行に同じ向きに伸びる真直状の3本の脚を形成する為のスリットを加工して形成され、前記平板の素材の厚さが前記センサ振動体の脚の幅の0.7倍以下であるセンサ振動体と、該振動体の両外側の2脚を面内対称振動モードで駆動する駆動手段と、前記基部に板面に平行な回転が与えられたとき前記両外脚の脚軸方向に生じるコリオリ力によって生起される面内非対称振動モードの振動における中央脚の板面内振動を検出する検出手段を備えたことを特徴とする振動ジャイロスコープ。
【請求項5】
前記平板の素材の厚さが前記センサ振動体の脚の幅の0.5倍以下であることを特徴とする請求項4の振動ジャイロスコープ。
【請求項6】
前記センサ振動体の前記スリットの幅は200μm以内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項7】
前記面内の前記基部の回転が加わらないときの前記中脚の振動を最小化するために、前記両外脚の幅にあらかじめ約5%以内の差を設けるか、前記両外脚にそれに相当する周波数差を与える加工を行ったことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項8】
前記センサ振動体の前記面内対称振動モードの固有振動数と、前記面体非対称振動モードの固有振動数との離調度を1000ppm以内に設定したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかのの振動ジャイロスコープ。
【請求項9】
前記センサ振動体の、前記各脚の長さに対する前記スリットの底端から前記基部の固定部までの長さとの比を、2以内の範囲で、他軸感度が小さくなるように設定したことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項10】
前記弾性材料は、圧電性の材料である水晶、ランガサイト、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ホウ酸リチウム、圧電性磁器のいずれかか、あるいは非圧電性材料より成ることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項11】
前記平板の素材は、水晶のX板であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項12】
前記平板の素材は、ランガサイトのX板であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項13】
前記センサ振動体の前記平板は非圧電性材料より成ると共に、前記駆動手段および検出手段として、同じ構造の静電駆動検出手段を用いたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの振動ジャイロスコープ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかの振動ジャイロスコープに用いられたセンサ振動体と、やはり平板の素材から形成され該平板面に平行な少なくとも1つの回転軸に関する角速度、任意の方向の加速度あるいは角加速度を検出する他のセンサ振動体とを、共通の支持体上あるいは容器内に並列にもしくは重ねて支持したことによって構成したことを特徴とする、ヨーレート検出機能を含む多機能振動ジャイロスコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−10659(P2006−10659A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209222(P2004−209222)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(500020287)マイクロストーン株式会社 (16)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【出願人】(591171057)
【Fターム(参考)】