説明

振動センサ

【課題】センサ体積が大きくならず、任意の方向に振動検出方向を合わせて取付けることが可能となり、1つのセンサで2方向以上の振動を検出することが可能な振動センサを提供する。
【解決手段】X方向振動検出素子、Y方向振動検出素子および軸線方向と直交するZ方向振動検出素子のうちの少なくとも2方向の振動検出素子取付け面、振動検出方向の1つと平行、または直交するように設定したセンサ取付け面、プリント基板・電池等を収納するための収納部を有するようにセンサケースを構成し、センサ取付け面のほぼ中央に、ボルトを通すための貫通孔を、その長さが直径の1〜5倍となるように形成し、振動検出方向の1つに方向を合わせて振動検出対象物に雌ねじを加工し、この雌ねじ上にセンサ取付け面を置き、他の振動検出方向に取付け角度を合わせた状態で、ボルトで締め付け固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンや発電機、電動機など機械装置の回転部分や軸受け部分に発生する異常を運転したままの状態で測定し、電波として出力する振動センサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械の異常を評価する手段としての振動測定は、簡便かつ信頼性が高く、従来から盛んに研究され実用化されている。
例えば、蒸気タービン発電プラントでは、高・中・低圧タービン、発電機・励磁機の各軸受けの水平方向と垂直方向、軸方向の振動を連続測定、記録して重要な装置の健全性を常に監視している。そして、軸受け部で測定した振動速度、あるいは振動変位が一定値を超えると注意、あるいは危険と判定して、機械の運転を停止、分解点検などを実施している。
この時、前記した各軸受けに取付けるセンサの取付け面には雄ねじを加工してあり、測定対象となる軸受け部には測定方向に合わせて雌ねじを加工し、そこに前記雄ねじをねじ込むことによりセンサを固定する。すなわち、センサは1個で1方向のみの振動を検出するため、水平、垂直、軸方向を測定するには1箇所で3個、発電プラント全体では20〜30個のセンサが必要となる。そして、センサを取付けたら、制御室までの長い距離を配線して監視装置に接続している。
製鉄や化学、その他のプラントでは、発電プラントとは比較にならない程の多数の電動機が使用されている場合が多い。そして、その中のたった1台の電動機が異常になることよって突発停止を発生することもあり、全電動機を常時監視したいという要求は強い。しかし、それらの電動機は広大な敷地に散在しており、前記した振動センサの個数が多くなることや配線距離が長くなることに起因して、費用が莫大となるため、1日1回、または1週間に1から数回の頻度で、保全マンが手持ちの振動計を持って巡回測定を行い、異常を発見するというのが従来のやり方である。
【0003】
上記で説明したような、保全マンが手持ちの振動計を持って巡回する方法は、
(1)測定時、保全マンが回転体部分に近づく必要があり、危険、
(2)短時間サイクルでの測定は不可能、
という課題がある。そのため技術動向としてはオンライン測定システムが標榜されているが、前記したように布線工事費が莫大となるので、最近では無線を利用したワイヤレス測定システムの適用が検討されつつある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005-24441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ワイヤレス測定システムには下記のような新たな課題が発生する。
(1)振動信号検出素子、検出信号の増幅基板、データを記録するメモリ、測定指令を受信したり、データを電波にして発信する基板、センサ独立で機能するためのバッテリ、などをセンサ内に収納する必要があり、センサ体積が大きくなること。
(2)これまでの振動監視はアンバランス振動が主で10Hz〜1kHzの周波数特性があれば充分であったが、最近は転がり軸受け診断など10kHzという高周波数まで必要とされてきている。
(3)比較的出力の小さな電動機も測定対象となるため、電動機の軸受け部分のセンサ取付け可能面積が小さく、水平、垂直、軸方向のセンサを固定することが困難。
本発明は、上記に鑑み、センサ体積が大きくならず、任意の方向に振動検出方向を合わせて取付けることが可能となり、1つのセンサで2方向以上の振動を検出することが可能な振動センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明による振動センサは、X方向振動検出素子、Y方向振動検出素子および軸線方向と直交するZ方向振動検出素子のうちの少なくとも2方向の振動検出素子取付け面、振動検出方向の1つと平行、または直交するように設定したセンサ取付け面、プリント基板・電池等を収納するための収納部を有するセンサケースと、前記振動検出素子取付け面に取付けられる複数の振動検出素子と、前記センサケースを振動検出対象物にボルトで締め付け固定するために、前記センサ取付け面のほぼ中央に設けられ、その長さが直径の1〜5倍の貫通孔と、を有し、振動検出方向の1つに方向を合わせて前記振動検出対象物に雌ねじを加工し、この雌ねじ上に前記センサ取付け面を置き、他の振動検出方向に取付け角度を合わせた状態で、前記ボルトで締め付け固定されることを特徴とする。
また、本発明による振動センサは、上記の構造において、前記センサケースは、上下2つの部分に分割可能な構造としたことを特徴とする。
さらに、本発明による振動センサは、上記の構造において、互いに直行する2方向または3方向の振動検出素子の取付け面は、分割されたセンサケースのうち、前記センサ取付け面が形成された側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
1個で少なくとも2方向以上の振動を検出する素子を内蔵したセンサを、センサ取付け面に加工した雄ねじと、測定対象となる軸受け部に測定方向に合わせて加工した雌ねじを利用し、センサをねじ込むことにより固定した場合、ねじ込む角度がどこで止まるかを調整することは困難である。すなわち、ねじの軸心方向は測定方向に一致することが可能だが、これと直行する残りの2方向は制御不能となる。調整手段として固定面にスペーサを挟んで締め付ける方法もあるが、この場合センサ取付けによる固有振動数低下が顕著に現れるので振動センサ固定には採用しない。
これに対し、本発明の振動センサでは、振動検出方向の1つに方向を合わせて軸受け部に雌ねじを加工し、この上に振動センサを置き、他の振動検出方向に振動センサの取付け角度を合わせた状態で、固定用六角穴付ボルトを締め付ければ、スペーサ無しで、正確に任意の方向の振動検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明による振動センサの実施例を示す構造図であり、(A)は上面から見た断面、(B)は側面から見た断面である。図において、1はX方向振動検出素子、2はY方向振動検出素
子、3はZ方向振動検出素子、4はセンサケース、5はベースプレート、6はセンサ取付け面、7はプリント基板や電池等の収納部、8は直径大の貫通孔、9は直径小の貫通孔、10は貫通孔段付部、11は六角穴付ボルトを示している。
この実施例では、ベースプレート5の中央に直径小の貫通穴9を設け、貫通穴9の軸線と平行で互いに直交するX方向振動検出素子1とY方向振動検出素子2の取付面、および軸線方向と直交するZ方向振動検出素子3の取付面を設けて各方向の振動検出素子1、2、3を固定する。
そしてベースプレート5の貫通穴9の上に円形断面の筒、具体的にはパイプなどを接合して、直径大の貫通穴8と貫通穴段付部10を構成する。さらにその外側にベースプレート5の大きさに応じたセンサケース4を接合し、直径大の貫通穴8とセンサケース4との間にプリント基板・電池などを収納することにより、1個のセンサで2方向以上の振動を検出する振動センサを構成する。
【0008】
このように構成した振動センサは、1個のセンサで2方向以上の振動を検出することができるため、従来の振動センサに比較すると体積が大きく、重量も大きくなるので、固定用ボルトが長くなると取付けによる固有振動数が低下する。これを回避するため前記貫通穴段付部10を、貫通孔9の直径の1倍から5倍の厚さの位置に設ける。
このように構成した振動センサを軸受けに取り付ける時は、振動検出方向の1つに方向を合わせて軸受け部に雌ねじを加工し、この上に振動センサのセンサ取付け面6を置き、他の振動検出方向に振動センサの取付け角度を合わせた状態で、固定用の六角穴付ボルト9を締め付ける。これにより、スペーサ無しで、正確に任意の方向の振動検出が可能となる。
図2は本発明による振動センサの他の実施例を示す構造図である。図において、図1と同一の構成要素は同一の符号で示されている。図1に示した振動センサでは、中央部に直径大の貫通穴8があることにより、プリント基板・電池等の収納部7のスペースが減少するだけでなく、中央部に邪魔な柱ができることによる使い勝手の悪さがある。
図2に示した振動センサは、このような問題点を解消したものであり、図1におけるセンサケース4を分割下部ベースプレート12と分割上部保護ケース13に分割し、分割上下部接合ボルト14で接合するように構成されている。振動センサを軸受けに固定するときは、分割上部保護ケース13の無い状態で、図1の振動センサと同様に固定用の六角穴付ボルト9を締め付け、その後、分割下部ベースプレート13に分割上部保護ケース13を分割上下接合ボルト14で接合する。
【0009】
本発明による振動センサは、ボルト締め固定にも関わらず、任意の方向に振動検出方向を合わせて取付けることが可能となり、1つのセンサで2方向以上の振動を検出することが可能となった。
また分割構造センサでは、直径大の貫通穴が無くなることにより、プリント基板や電池収納効率が上がること、および電池交換が容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による振動センサの実施例を示す構造図
【図2】本発明による振動センサの他の実施例を示す構造図
【符号の説明】
【0011】
1・・・X方向振動検出素子、
2・・・Y方向振動検出素子、
3・・・Z方向振動検出素子、
4・・・センサケース、
5・・・ベースプレート、
6・・・センサ取付け面、
7・・・収納部、
8、9・・・貫通孔、
10・・・貫通孔段付部、
11・・・六角穴付ボルト
12・・・分割下部ベースプレート、
13・・・分割上部保護ケース、
14・・・分割上下部接合ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向振動検出素子、Y方向振動検出素子および軸線方向と直交するZ方向振動検出素子のうちの少なくとも2方向の振動検出素子取付け面、振動検出方向の1つと平行、または直交するように設定したセンサ取付け面、プリント基板・電池等を収納するための収納部を有するセンサケースと、
前記振動検出素子取付け面に取付けられる複数の振動検出素子と、
前記センサケースを振動検出対象物にボルトで締め付け固定するために、前記センサ取付け面のほぼ中央に設けられ、その長さが直径の1〜5倍の貫通孔と、を有し、
振動検出方向の1つに方向を合わせて前記振動検出対象物に雌ねじを加工し、この雌ねじ上に前記センサ取付け面を置き、他の振動検出方向に取付け角度を合わせた状態で、前記ボルトで締め付け固定されることを特徴とする振動センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動センサにおいて、前記センサケースは、上下2つの部分に分割可能な構造であることを特徴とする振動センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動センサにおいて、互いに直行する2方向または3方向の振動検出素子取付け面は、分割されたセンサケースのうち、前記センサ取付け面が形成された側に設けられることを特徴とする振動センサ。



【図1】
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【図2】
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