説明

振動センサ

【課題】ピックアップ部が、未使用時の運搬、設置時における地面等への不慮の落下、過度な衝撃があると、圧電子の破壊、又は振動板と圧電子の分離が生じおそれがある。
【解決手段】筐体1と振動板2とで囲まれる空隙に錘4を封入して、前記振動板2に圧電子3を装着し、前記圧電子3に接続した出力端子6から前記振動板2の振動を電圧として取り出すピックアップ部10を含む振動センサ20において、前記ピックアップ部10を収容する外筐体12と、前記ピックアップ部10と外筐体12との間に装着される弾性体14と、前記弾性体14を押圧することにより前記弾性体14の弾性力を抑制する押圧部材11、13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動を検出する振動センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の振動センサの構造の一例を図面を参照して説明する。図7は従来の振動センサの振動ピックアップの断面図である。圧電形の振動ピックアップ50は図7に示すように内部を密封する筐体51と、筐体51の両端に穿孔した嵌合孔51−1に嵌合して接続した振動板52と、振動板52の外面に装着した圧電子53と、圧電子53に接続した出力端子56からなる。更に、振動ピックアップ50は、前記筐体51と前記振動板52とで囲まれる空隙に封入した錘54と、錘54と振動板52とを接続する連結棒55で構成されている。
【0003】
このように構成される振動ピックアップ50は、まず振動板52に圧電子53を装着し、筐体51と振動板52とで囲まれる空隙に錘54を封入して、錘54と振動板52を連結棒55で接続することにより形成される。そして、圧電子53に接続した出力端子56から、振動板52の振動を電圧として取り出すように作用するものであった。
【0004】
特開平9−55999号公報(特許文献1)には、密封筐体と、振動板と、錘と、連結棒で形成される空隙に粘性液体を充填する振動ピックアップにおいて、温度変化が起きても振動特性に変化のない振動ピックアップに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−55999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の装置では強い衝撃を受けると振動板52が大きく曲がるおそれがある。そのため、未使用時の運搬、設置時における地面等への不慮の落下、過度な衝撃があると、圧電子53の破壊、又は振動板52と圧電子53の分離が生じ、振動センサとしての機能を果たすことができなくなるという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、振動センサの未使用時において、過度な衝撃を受けても振動板に対する衝撃を抑制することができ、その結果、圧電子53の破壊、又は振動板52と圧電子53の分離を防ぐことができる振動センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、筐体と振動板とで囲まれる空隙に錘を封入して、前記振動板に圧電子を装着し、前記圧電子に接続した出力端子から前記振動板の振動を電圧として取り出すピックアップ部を含む振動センサにおいて、前記ピックアップ部を収容する外筐体と、前記ピックアップ部と外筐体との間に装着される弾性体と、前記弾性体を押圧することにより前記弾性体の弾性力を抑制する押圧部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記ピックアップ部を収容する外筐体と、前記ピックアップ部と外筐体との間に装着される弾性体と、前記弾性体を押圧することにより前記弾性体の弾性力を抑制する押圧部材を設けたので、振動センサの未使用時には、前記押圧部材を緩めて前記弾性体の弾性力を機能させて、過度な衝撃を受けても振動板に対する衝撃を抑制することができる。従って、圧電子の破壊、又は振動板と圧電子の分離を防ぐことができる振動センサを提供することができる。一方、振動センサの使用時には、前記押圧部材を締めて前記弾性体の弾性力を抑制させて、通常のピックアップ部として機能させて、前記圧電子に接続した出力端子から、振動板の振動を電圧として取り出すように作用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態に関する振動センサの未使用時の断面図である。
【図2】第1の実施の形態に関する振動センサに使用する振動ピックアップの断面図である。
【図3】第1の実施の形態に関する振動センサの使用時の断面図である。
【図4】第2の実施の形態に関する振動センサに使用する振動ピックアップの断面図である。
【図5】第2の実施の形態に関する振動センサの未使用時の断面図である。
【図6】第2の実施の形態に関する振動センサの使用時の断面図である。
【図7】従来の振動センサのピックアップ部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態を図面に従って説明する。図2は第1の実施の形態に関する振動センサに使用する振動ピックアップの断面図である。ピックアップ部としての振動ピックアップ10は圧電形であり、内部を密封するピックアップ筐体1と、ピックアップ筐体1の両端に穿孔した嵌合孔1−1に嵌合して接続した振動板2と、振動板2の外面に装着した圧電子3と、圧電子3に接続した出力端子6及び配線16からなる。更に、振動ピックアップ10は、前記ピックアップ筐体1と前記振動板2とで囲まれる空隙に封入した錘4と、錘4と振動板2とを接続する連結棒5を有する。
【0012】
更にまた、振動ピックアップ10は、錘4とピックアップ筐体1を結合又は分離する結合部材としてのシャフト7とナット8を有する。即ち、振動ピックアップ10は、錘4の中央に開けた貫通孔4−1を通るシャフト7が設けられる。更に、シャフト7の両端におけるピックアップ筐体1の側面には嵌合孔1−2が設けられ、嵌合孔1−2に嵌合したナット8を有する構成である。ナット8は後述するように回転操作可能に設けられ、ナット8を回転することにより、ナット8をシャフト7に対し締結又は緩和する。これにより、錘4とピックアップ筐体1を結合又は分離することができる。
【0013】
上記構成の振動ピックアップ10において、ピックアップ筐体1と振動板2が音波等の振動で共振して錘4を基準に振動する。すると振動板2の振動により圧電子3に加わる圧力が変化する。圧電子3は受ける圧力の変化に応じて電圧を発生する。発生した電圧を出力端子6及び配線16により出力することで、音波等の振動の変化を電圧の変化として取り出すようになっている。
【0014】
次に、前記振動ピックアップ10を収容した振動センサ20について説明する。図1は第1の実施の形態に関する振動センサ20の未使用時の断面図である。振動センサ20は、前記振動ピックアップ10と、振動ピックアップ10を収容する外筐体12と、押圧部材とを有する。押圧部材は、振動ピックアップ10を両端より挟む弾性体としての弾性ゴム14と、弾性ゴム14を圧縮又は復元する押しネジ13を含む。弾性ゴム14は中央に配線用孔14−1を有し、出力端子6からの配線16は配線用孔14−1に通すことにより、外部に出力する。外筐体12には締結又は緩和可能な押しネジ13が設けられ、押しネジ13の移動はスペーサ11に伝えられ、スペーサ11を介して弾性ゴム14を圧縮又は復元させることができる。即ち、押圧部材は、外筐体12を介して操作可能に設けられる。更に、外筐体12の側面には前記ナット8を操作可能にする操作孔12−1が設けられる。
【0015】
弾性ゴム14は弾性力を有し、押しネジ13を締結することにより、押しネジ13の移動をスペーサ11に伝え、これにより弾性ゴム14を圧縮し、弾性ゴム14の弾性力を抑制する。一方、押しネジ13を緩和することにより、弾性ゴム14を復元させ、弾性ゴムの復元力によりスペーサ11を元の位置に戻し、弾性ゴム14の弾性力を発揮させる状態にする。
【0016】
図1は振動センサ20の未使用時を示し、押しネジ13を緩和することにより、弾性ゴム14を復元させ、弾性ゴム14の弾性力を発揮させる。このようにすることにより、未使用時の運搬、設置時における地面等への不慮の落下、過度な衝撃を受けても振動板2に対する衝撃を抑制することができる。更に、図1に示すように振動センサ20の未使用時においては、前述のように弾性ゴム14を復元させると同時に、前記ナット8を締結してピックアップ筐体1と錘4とを結合させる。ナット8の締結は、外筐体12の前記操作孔12−1から図示しないドライバーによってナットを操作することにより行なう。こうしてピックアップ筐体1と錘4を結合させることができる。
【0017】
振動センサ20の未使用時において、押しネジ13を緩和することにより弾性ゴム14を復元させて弾性力を発揮させた状態とし、かつナット8を締めることによりピックアップ筐体1と錘4とを結合させた状態とする。この状態において振動センサ20が過度の衝撃を受けると、外筐体12が受ける振動は弾性ゴム14で減衰された後、振動ピックアップ10に伝わることになる。そして、振動ピックアップ10の内部では、錘4がピックアップ筐体1に結合されているため、振動板2の変形を抑制することができる。
【0018】
図3は第1の実施の形態に関する振動センサの使用時の断面図である。振動センサ20の使用時は、押しネジ13を操作し、押しネジ13を締結することにより、弾性ゴム14を圧縮させ、弾性ゴム14の弾性力を抑制させる。一方、ナット8を操作し、ナット8をシャフト7に対し緩和する。これにより、錘4とピックアップ筐体1を分離する。このようにすることにより、外筐体12が受ける振動は、圧縮されて弾性力が発揮されていない弾性ゴム14を介して、振動ピックアップ10に伝わり、出力端子6より電圧の変化として取り出すことができる。
【0019】
以上のように、第1の実施の形態によれば、ピックアップ筐体1と錘4をシャフト7とナット8で結合できるようにした振動ピックアップ10を外筐体12に収容し、その間に弾性ゴム14を配置し、押しネジ13により弾性ゴム14を圧縮又は復元することにより、弾性ゴム14の弾性力を抑制又は発揮させるようにしたので、振動ピックアップ10に伝わる振動を制御することができる。従って、振動センサ20の使用時はナット8を緩和することにより、錘4とピックアップ筐体1を分離し、弾性ゴム14を圧縮することで適度な振動を受けることができ、この振動を電圧に変換することができる。
【0020】
一方、振動センサ20の未使用時はナット8を締めることにより、錘4とピックアップ筐体1を結合し、弾性ゴム14を復元することで衝撃を受けた際生じる衝撃波及び、加速度が振動板2にかかるのを抑制することができる。よって、圧電子3の破壊、又は振動板2と圧電子3の分離が生じなくなり、振動センサ20の耐衝撃性の向上が得られる。
【0021】
また、押しネジ13で弾性ゴム14の圧縮量を調整することで振動センサ20の共振周波数を制御することができる。このことにより、耐衝撃性を保ったまま任意の周波数における振動センサ20の感度を調整できるという効果が得ることができる。更に、弾性ゴム14の圧縮量の調整により、弾性ゴム14の圧縮量を固定した状態で上記効果を得ることができる。
【0022】
<第2の実施の形態>
次に第2の実施の形態について説明する。前記第1の実施の形態に対し、図1のシャフト7及びナット8を削除し、耐衝撃性能に合わせた低コスト化を図ることができる。図4は第2の実施の形態に関する振動センサに使用する振動ピックアップの断面図である。
【0023】
図4に示すように、圧電形の振動ピックアップ30は内部を密封するピックアップ筐体21と、ピックアップ筐体21の両端に穿孔した嵌合孔21−1に嵌合して接続した振動板2と、振動板2の外面に装着した圧電子3と、圧電子3に接続した出力端子6及び配線16からなる。更に、振動ピックアップ30は、前記ピックアップ筐体21と前記振動板2とで囲まれる空隙に封入した錘24と、錘24と振動板2とを接続する連結棒5を有する。
【0024】
上記構成の振動ピックアップ30において、ピックアップ筐体21と振動板2が音波等の振動で共振して錘24を基準に振動する。すると振動板2の振動により圧電子3に加わる圧力が変化する。圧電子3は受ける圧力の変化に応じて電圧を発生する。発生した電圧を出力端子6及び配線16により出力することで、音波等の振動の変化を電圧の変化として取り出すようになっている。
【0025】
次に、前記振動ピックアップ30を収容した振動センサ40について説明する。図5は第2の実施の形態に関する振動センサ40の未使用時の断面図である。振動センサ40は、前記振動ピックアップ30と、振動ピックアップ30を収容する外筐体32と、振動ピックアップ30を両端より挟む弾性ゴム14と、押圧部材とを有する。押圧部材は、振動ピックアップ10を両端より挟む弾性ゴム14と、弾性ゴム14を圧縮又は復元する押しネジ13を含む。弾性ゴム14は中央に配線用孔14−1を有し、出力端子6からの配線16は配線用孔14−1に通すことにより、外部に出力する。外筐体32には締結又は緩和可能な押しネジ13が設けられ、押しネジ13の移動はスペーサ11に伝えられ、スペーサ11を介して弾性ゴム14を圧縮又は復元させることができる。即ち、押圧部材は、外筐体32を介して操作可能に設けられる。
【0026】
弾性ゴム14は弾性力を有し、押しネジ13を締結することにより、押しネジ13の移動をスペーサ11に伝え、これにより弾性ゴム14を圧縮し、弾性ゴム14の弾性力を抑制する。一方、押しネジ13を緩和することにより、弾性ゴム14を復元させ、弾性ゴムの復元力によりスペーサ11を元の位置に戻し、弾性ゴム14の弾性力を発揮させる状態にする。
【0027】
図5は振動センサ40の未使用時を示し、押しネジ13を緩和することにより、弾性ゴム14を復元させ、弾性ゴム14の弾性力を発揮させる。このようにすることにより、未使用時の運搬、設置時における地面等への不慮の落下、過度な衝撃を受けても振動板2に対する衝撃を抑制することができる。振動センサ20の未使用時において、押しネジ13を緩和することにより弾性ゴム14を復元させて弾性力を発揮させた状態とする。この状態において振動センサ20が過度の衝撃を受けると、外筐体32が受ける振動は弾性ゴム14で減衰された後、振動ピックアップ10に伝わることになる。
【0028】
図6は第2の実施の形態に関する振動センサの使用時の断面図である。振動センサ40の使用時は、押しネジ13を操作し、押しネジ13を締結することにより、弾性ゴム14を圧縮させ、弾性ゴム14の弾性力を抑制させる。このようにすることにより、外筐体32が受ける振動は、圧縮されて弾性力が発揮されていない弾性ゴム14を介して、振動ピックアップ10に伝わり、出力端子6より電圧の変化として取り出すことができる。
【0029】
以上のように、第2の実施の形態によれば、振動ピックアップ30を外筐体32に収容し、その間に弾性ゴム14を配置し、押しネジ13により弾性ゴム14を圧縮又は緩和することにより、弾性ゴム14の弾性力を抑制又は発揮させるようにしたので、振動ピックアップ30に伝わる振動を制御することができる。従って、振動センサ40の使用時は押しネジ13により弾性ゴム14を圧縮することで適度な振動を受けることができ、この振動を電圧に変換することができる。
【0030】
一方、振動センサ40の未使用時は、弾性ゴム14の圧縮を復元することで衝撃を受けた際生じる衝撃波及び、加速度が振動板2にかかるのを抑制することができる。よって、圧電子3の破壊、又は振動板2と圧電子3の分離が生じなくなり、振動センサ40の耐衝撃性の向上が得られる。また、押しネジ13で弾性ゴム14の圧縮量を調節することで振動センサの共振周波数を制御することができる。このことより、任意の周波数における振動センサの感度を調整できるという効果が得られる。
【0031】
第1及び第2の実施の形態では弾性ゴム14を使用したが、弾性ゴム14の替わりに、弾性ゴム14と同様のバネ定数を持った図示しないバネを用いることもできる。更に、弾性ゴム14は圧縮量を可変としたが、固定とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 ピックアップ筐体
2 振動板
3 圧電子
4 錘
7 シャフト
8 ナット
10 振動ピックアップ
11 スペーサ
12 外筐体
13 押しネジ
14 弾性ゴム
20 振動センサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と振動板とで囲まれる空隙に錘を封入して、前記振動板に圧電子を装着し、前記圧電子に接続した出力端子から前記振動板の振動を電圧として取り出すピックアップ部を含む振動センサにおいて、
前記ピックアップ部を収容する外筐体と、
前記ピックアップ部と外筐体との間に装着される弾性体と、
前記弾性体を押圧することにより前記弾性体の弾性力を抑制する押圧部材を設けたことを特徴とする振動センサ。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記外筐体を介して操作可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の振動センサ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記外筐体に設けた押しネジと、前記押しネジの移動を前記弾性体に押圧するスペーサからなることを特徴とする請求項2記載の振動センサ。
【請求項4】
前記弾性体は、弾性ゴムであることを特徴とする請求項1記載の振動センサ。
【請求項5】
請求項1記載の振動センサにおいて、
更に、前記錘と前記筐体とを結合・分離する結合部材を操作可能に設けたことを特徴とする振動センサ。
【請求項6】
前記結合部材は、前記錘を貫通するシャフトと、前記シャフトを前記筐体に固定するナットからなることを特徴とする請求項5記載の振動センサ。
【請求項7】
前記結合部材は、前記外筐体に設けた操作孔から操作可能に配置されることを特徴とする請求項5記載の振動センサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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