振動デバイスおよび振動デバイスを備える電子機器
【課題】印加する電圧の波形を反転させた場合に、電圧の波形の反転の前後において、装置を把持した場合に得られる力覚の方向を変化させることが可能な振動デバイスを提供する。
【解決手段】このリニアモータ1(振動デバイス)は、コイル14と、コイル14が発生する磁界により往復移動する可動部12と、可動部12が収納されるとともに可動部12の往復移動によって振動する筐体11と、可動部12と筐体11との間に設けられるバネ部13aおよび13bとを備え、コイル14には、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体11の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正側と負側とで非対称になるように構成されている。
【解決手段】このリニアモータ1(振動デバイス)は、コイル14と、コイル14が発生する磁界により往復移動する可動部12と、可動部12が収納されるとともに可動部12の往復移動によって振動する筐体11と、可動部12と筐体11との間に設けられるバネ部13aおよび13bとを備え、コイル14には、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体11の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正側と負側とで非対称になるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスおよび振動デバイスを備える電子機器に関し、特に、可動部とコイルとを備え、コイルに交流状の電圧が印加される振動デバイスおよびこうした振動デバイスを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動部とコイルとを備え、コイルに交流状の電圧が印加される振動デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、コイルが巻回される円筒状のボビン(可動部)と、円筒状のボビンの一方端部側に取り付けられる第1永久磁石(可動部)と、ボビンの他方側にボビンと別個に設けられる第2永久磁石と、コイル、ボビン、第1永久磁石および第2永久磁石を収納する円筒状のフレームと、第1永久磁石とフレームとの間に設けられるバネとを備える加速度発生装置(振動デバイス)が開示されている。なお、この加速度発生装置では、第1永久磁石の移動方向(円筒状のボビンが延びる方向)の一方側にバネが配置されるとともに、他方側に第2永久磁石が配置されているので、第1永久磁石の移動方向の中心に対して、加速度発生装置は構造的に非対称な形状を有する。
【0004】
また、この加速度発生装置では、コイルに正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されることにより磁界が発生する。そして、第1永久磁石の一方側にはバネの弾性力が働くとともに、他方側にはコイルの磁界と第2永久磁石の磁界とが働く。そして、第1永久磁石の一方側および他方側に働く力の大きさが第1永久磁石およびボビンの位置によって異なっており、第1永久磁石(ボビン)の加速度の波形が第1永久磁石(ボビン)の移動方向の一方側と他方側とで異なるように構成されている。これにより、ユーザは、加速度発生装置を把持した場合に、所定の方向に引っ張られるような力覚(擬似力覚)を知覚することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/086426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された加速度発生装置では、正弦波状の電流がコイルに流されている一方、波形を反転させた電流(電圧)をコイルに流しても、加速度発生装置を把持した場合に得られる擬似力覚の方向は、電流の波形(電圧の波形)を反転させる前後において変わらないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、印加する電圧の波形を反転させた場合に、電圧の波形の反転の前後において、装置を把持した場合に得られる力覚の方向を変化させることが可能な振動デバイスおよびこうした振動デバイスを備える電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における振動デバイスは、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを備え、コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている。
【0009】
この発明の第2の局面における電子機器は、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを含み、コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスと、電子機器本体の位置または加速度を検出するための検出器とを備え、検出器によって検出される電子機器本体の位置または加速度から加加速度を算出するように構成されており、加加速度に基づいて、コイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させるように構成されている。
【0010】
この発明の第3の局面における電子機器は、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを含み、コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスを備え、振動デバイスの振動に関するパラメータを取得可能に構成されているとともに、振動に関するパラメータに基づいて波形が非対称な交流状の電圧が導出されるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成により、印加する電圧の波形を反転させた場合に、電圧の波形の反転の前後において、装置を把持した場合に得られる力覚の方向を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による携帯電話の平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による理想的な加加速度と本発明の実験結果により求められた加加速度との波形を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による実験結果により求められた電圧の波形を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態による実験結果により求められた加速度の波形を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態による実験結果により求められた加速度の波形を示す図である。
【図7】図6の加速度を微分することにより求められた加加速度の波形を示す図である。
【図8】図6に示す電圧を反転させた場合に得られる加速度の波形を示す図である。
【図9】図8の加速度を微分することに求められた加加速度の波形を示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態による電圧の周波数の調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10に示す電圧の周波数の調整時における最初に印加される電圧の波形を示す図である。
【図12】図11に示す電圧を印加した場合に得られる加速度の波形を示す図である。
【図13】図12に示す加速度を微分することによって求められた加加速度の波形を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態によるリニアモータの平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態によるリニアモータを備えるアタッチメントが取り付けられたゲーム機の正面図である。
【図17】本発明の第3実施形態によるリニアモータを備えるアタッチメントが取り付けられたゲーム機の背面図である。
【図18】本発明の第4実施形態による携帯電話の平面図である。
【図19】本発明の第4実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図20】本発明の第4実施形態による電圧の周波数の調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の第5実施形態による携帯電話の平面図である。
【図22】本発明の第5実施形態によるリニアモータの周波数に対するインピーダンスの変化を示すグラフである。
【図23】本発明の第5実施形態によるリニアモータに入力する電圧および加速度を示すグラフである。
【図24】本発明の第5実施形態によるリニアモータに入力する電圧および加加速度を示すグラフである。
【図25】本発明の第6実施形態によるリニアモータの振動の減衰の様子を示すグラフである。
【図26】第1〜第4実施形態のコイルに印加される電圧の変形例による周波数fHzの正弦波と周波数2fHzの正弦波との位相を同じ状態で合成した波形を示す図である。
【図27】第1〜第4実施形態のコイルに印加される電圧の変形例による周波数fHzの正弦波と周波数2fHzの正弦波との位相を45度ずらした状態で合成した波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1を備えた携帯電話100の構成について説明する。なお、第1実施形態では、本発明の振動デバイスをリニアモータ1に適用した例について説明する。なお、リニアモータ1は、本発明の「振動デバイス」の一例である。また、携帯電話100は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0015】
携帯電話100は、図1に示すように、液晶ディスプレイなどからなる表示部101と、押しボタンスイッチからなる複数の入力キー102とを備えている。
【0016】
携帯電話100の内部には、リニアモータ1と、アンプ2と、デジタル/アナログコンバータ(DAC)3と、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)4と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)5と、加速度センサ6とが設けられている。なお、加速度センサ6は、本発明の「検出器」の一例である。また、リニアモータ1は、携帯電話100の矢印Y1方向側の先端部(携帯電話100を把持する側とは反対側の端部)に配置されている。リニアモータ1は、アンプ2に接続されているとともに、アンプ2は、DAC3に接続されている。DAC3は、DSP4に接続されているとともに、DSP4は、ADC5に接続されている。ADC5は、加速度センサ6に接続されている。また、加速度センサ6は、リニアモータ1(携帯電話100)の振動(加速度)を測定する機能を有する。加速度センサ6によって測定されたリニアモータ1の加速度の情報は、ADC5を介してDSP4に入力される。また、DSP4は、入力された加速度の情報に基づいて、加速度の微分値である加加速度を算出するとともに、加加速度に基づいてDAC3およびアンプ2を介してリニアモータ1に電圧を供給するように構成されている。
【0017】
図2に示すように、リニアモータ1は、円筒状の筐体11と、筐体11内に収納される円筒状の永久磁石からなる可動部12と、可動部12と筐体11の内側面との間に設けられるバネ部13aおよび13bと、筐体11に巻回されるコイル14とを含んでいる。可動部12を構成する永久磁石は、矢印X1方向側にN極の磁極面を有するとともに、矢印X2方向側にS極の磁極面を有するように配置されている。
【0018】
バネ部13aおよび13bは、コイルバネや板バネなどからなる。バネ部13aおよび13bは、可動部12の振動(往復移動)の中心線に対して、略対称になるように配置されている。また、バネ部13aおよび13bは、同じ材料からなり、同じバネ特性を有する。そして、筐体11も、可動部12の往復移動の中心線に対して、略対称な形状を有する。つまり、リニアモータ1は、全体として可動部12の往復移動の中心線に対して、構造的に略対称な形状を有する。
【0019】
コイル14は、リニアモータ1を矢印X2方向側から見た場合に、筐体11に右巻きに巻回されているコイル14aと、筐体11に左巻きに巻回されているコイル14bとを含んでいる。つまり、筐体11に対する巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとで反対である。また、コイル14aとコイル14bとは、電気的に接続されている。また、コイル14aは、筐体11の矢印X1方向側に配置されるとともに、コイル14bは、筐体11の矢印X2方向側に配置される。
【0020】
コイル14は、アンプ2およびDAC3を介してDSP4に接続されており、コイル14には、DSP4からDAC3およびアンプ2を介して正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧が印加されるように構成されている。ここで、正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧とは、電圧が0の点に対して、電圧の波形が点対称(たとえば正弦波)になっていないことを意味する。たとえば、電圧の正側と負側とで電圧が異なる大きさの最大値を有する場合などを意味する。
【0021】
ここで、コイル14に正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧を印加することにより、リニアモータ1の振動方向の加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正側と負側とで非対称になるように構成されている。なお、加加速度(躍度)とは、加速度の微分値(単位時間当たりの加速度の変化率)である。具体的には、リニアモータ1の振動方向の加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと、負側になる時間の長さとが異なっている。また、リニアモータ1の振動方向の加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して正側の加加速度の絶対値の最大値と負側の加加速度の絶対値の最大値とが異なっている。
【0022】
次に、図2を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1の振動(往復移動)の動作を説明する。
【0023】
まず、DSP4(図1参照)からDAC3およびアンプ2を介して、コイル14に電圧を印加して、コイル14に電流を供給する。これにより、コイル14aおよびコイル14bには、それぞれ、磁界が発生する。なお、コイル14の巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとでは、反対であるので、コイル14aに発生する磁界の方向と、コイル14bに発生する磁界の方向とは逆方向になる。これにより、可動部12は、コイル14aおよびコイル14bのうちの一方からX方向に沿って引力を受けるとともに、他方から斥力を受ける。その結果、可動部12は、X方向に沿って移動する。また、コイル14に印加する電圧を反転させて逆方向に電流を供給することにより、可動部12の移動が反転する。このように、電圧を反転させてコイル14に電圧を印加することにより、可動部12が振動する。また、可動部12の振動に伴って筐体11(携帯電話100)も振動する。
【0024】
そして、コイル14に正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧を印加することにより、リニアモータ1が設けられる携帯電話100を把持した場合に、可動部12の振動によって、所定の方向に引っ張られるような擬似力覚(牽引感覚)が得られる。さらに、コイル14に印加する電圧を反転させることにより、容易に、携帯電話100を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を変化させることが可能である。
【0025】
次に、図3および図4を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加する電圧を算出する方法について説明する。
【0026】
図3に示すように、リニアモータ1の理想的な加加速度(実線)の形状を仮定する。ここでは、1周期がT(sec)であり、加加速度の最大値がGP(G/s)であるとともに加加速度の最小値がGN(G/s)である矩形波からなる加加速度を仮定する。また、加加速度の最大値の絶対値|GP|は、加加速度の最小値の絶対値|GN|よりも大きい(|GP|>|GN|)と仮定する。また、加加速度の向きが正側になる時間よりも、負側になる時間の方が長くなると仮定する。また、加加速度の1周期において、加加速度の向きが正側である領域の面積S1と、負側である領域の面積S2とが略等しくなるように、理想的な加加速度の形状が仮定されている。
【0027】
次に、図3に示される矩形波からなる加加速度(実線)を、フーリエ級数展開することにより、下記の式(1)を得る。
【0028】
【数1】
【0029】
また、加加速度は、変位y(t)の時間についての3階微分(d3y(t)/dt3)であるので、フーリエ級数展開を用いて求められた加加速度を3階積分することにより、三角関数の和で表わされる変位y(t)を求める。
【0030】
また、リニアモータ1のコイル14に印加される電圧V(t)と、図3に示される加加速度から求められる変位y(t)との関係を、リニアモータ1の伝達関数Gy(S)を用いた関係式(下記式(2))によって表わす。
【0031】
【数2】
【0032】
また、伝達関数Gy(S)を、リニアモータ1の電圧方程式(下記式(3))、可動部12の運動方程式(下記式(4))、および、筐体11の運動方程式(下記式(5))を用いて求める。
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、yおよびxは、それぞれ、筐体11および可動部12の変位を表す。また、Mおよびmは、それぞれ、筐体11の質量および可動部12の質量を表す。また、k1およびk2は、それぞれ、バネ部13aのバネ定数およびバネ部13bのバネ定数を表す。また、κ1およびκ2は、それぞれ、バネ部13aの減衰係数およびバネ部13bの減衰係数を表す。また、V(t)およびI(t)は、それぞれ、電圧および電流を表す。また、RおよびLは、それぞれ、コイルの抵抗およびコイルの自己インダクタンスを表す。また、KeおよびKfは、それぞれ、誘起電圧定数および推力定数を表す。
【0035】
そして、電圧方程式および運動方程式から求められた伝達関数Gy(S)を、上記変位y(t)と電圧V(t)と間の関係式(上記式(2))に代入することにより、たとえば図4に示すような電圧V(t)が求められる。
【0036】
次に、図3〜図5を参照して、理想的な矩形波から求められた電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度および加加速度について行った実験結果について説明する。
【0037】
図4に示す電圧V(t)は、上記理想的な矩形波からなる加加速度(図3参照)から求められたV(t)において、フーリエ級数展開の6次の項までを含めて計算して得られたものである。図4に示すように、電圧V(t)の波形は、非対称な形状を有していた。ここで非対称な電圧の波形とは、電圧が0の点に対して、電圧の波形が点対称(たとえば正弦波)になっていないことを意味する。具体的には、電圧V(t)の波形は、電圧の最大値が約3.7Vである一方、電圧の最小値が約−3.2Vとなっており、電圧の最大値の絶対値と最小値の絶対値とが異なっていた。
【0038】
次に、図4に示す電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合、図5に示すような加速度が得られた。加速度は、交流状に変化しており、加速度が0の点に対して略点対称な形状になった。また、加速度の最大値(約2G)と、加速度の最小値(約−2G)とは、略等しくなった。一方、加速度は、加速度の最小値の点(A1点)から、加速度の最大の点(B1点)までの傾きは比較的急峻になり、加速度の最大の点(B1点)から、加速度の最小の点(C1点)までの傾きは比較的緩やかになるノコギリ波形状になった。すなわち、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線D1に対して、直線D1の一方方向側と他方方向側とで加速度の波形の傾きの大きさの絶対値が異なった。
【0039】
そして、図5に示す加速度を時間で微分することにより、図3に示す加加速度(破線)が求められた。その結果、理想的な加加速度(実線)に沿うような加加速度(破線)が得られた。なお、フーリエ級数展開の7次以上の項を含めて電圧V(t)を算出することにより、計算によって得られる加加速度は、理想的な加加速度により近づくようになると考えられる。このように、理想的な矩形波の加加速度から電圧V(t)を算出し、算出した電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加することにより、リニアモータ1は、理想的な矩形波に近似した加加速度を発生することが確認された。
【0040】
次に、図6〜図9を参照して、正弦波を合成することにより得られた非対称な波形を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度および加加速度について行った実験結果について説明する。
【0041】
図6に示すように、40Hzの正弦波からなる電圧と40Hzの正弦波と位相を異ならせた80Hzの正弦波からなる電圧とを合成することにより非対称な形状を有する電圧V(t)(破線)を形成した。この電圧V(t)を、リニアモータ1のコイル14に印加することにより、ノコギリ波形状の加速度(実線)が得られた。なお、図6に示す電圧V(t)の周波数は、43Hzである。加速度は、交流状に変化しており、加速度が0の点に対して略点対称な形状になった。また、加速度の最大値の絶対値(約3G)と、最小値の絶対値(約3G)とは、略等しくなった。一方、加速度が最小の点(A2点)から、最大の点(B2点)までの傾きは比較的緩やかになり、最大の点(B2点)から、最小の点(C2点)までの傾きは比較的急峻になった。すなわち、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線D2に対して、一方方向側と他方方向側とで加速度の波形の傾きの大きさの絶対値が異なった。
【0042】
次に、図6に示す加速度を時間で微分することにより、図7に示すように、加加速度が0の基準線に対して、非対称な形状を有する加加速度(実線)が求められた。具体的には、加加速度の最大値が約1000(G/s)であるとともに、最小値が約−1200G(G/s)であった。また、加速度(図6参照)が最小となる時間(A2点)から、最大になる時間(B2点)までの間の時間の長さt1は、加速度が最大になる時間(B2点)から、最小になる時間(C2点)までの間の時間の長さt2よりも大きく(t1>t2)なった。つまり、加加速度の向きが正側になる時間t1の方が、加加速度の向きが負側になる時間の長さt2よりも大きく(t1>t2)なった。なお、時間の長さt1は、時間の長さt2の約2.2倍となった。また、加加速度の向きが正側になる領域の面積S3と、加加速度の向きが負側になる領域の面積S4とは略等しくなった。そして、図7に示す加加速度(図6に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の負側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0043】
次に、図6に示す電圧V(t)の正負を反転させた電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加することにより、図8に示すようなノコギリ波形状の加速度(実線)が得られた。加速度は、交流状に変化しており、加速度が0の点に対して略点対称な形状になった。また、加速度の最大値の絶対値(約2.5G)と、最小値の絶対値(約2.5G)とは、略等しくなった。一方、加速度が最小の点(A3点)から、最大の点(B3点)までの傾きは比較的急峻になり、最大の点(B3点)から、最小の点(C3点)までの傾きは比較的緩やかになった。すなわち、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線D3に対して、直線D3の一方方向側と他方方向側とで加速度の波形の傾きの大きさの絶対値が異なった。
【0044】
次に、図8に示す加速度を時間で微分することにより、図9に示すように、加加速度が0の基準線に対して、非対称な形状を有する加加速度(実線)が求められた。具体的には、加加速度の最大値が約1100(G/s)であるとともに最小値が約−600G(G/s)であった。また、加速度(図7参照)が最大になる時間(B3点)から、最小になる時間(C3点)までの間の時間の長さt3は、加速度が最小になる時間(A3点)から、最大になる時間(B3点)までの間の時間の長さt4よりも大きく(t3>t4)なった。つまり、加加速度の向きが負側になる時間t3の方が、加加速度の向きが正側になる時間の長さt4よりも大きく(t3>t4)なった。なお、時間の長さt3は、時間の長さt4の約2.2倍となった。また、加加速度の向きが負側になる領域の面積S5と、加加速度の向きが正側になる領域の面積S6とは略等しくなった。そして、図9に示す加加速度(図8に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0045】
次に、図10〜図13を参照して、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にするための電圧V(t)の周波数の調整方法について説明する。なお、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にすることにより、リニアモータ1(携帯電話100)を把持した場合に得られる擬似力覚が最大になる。
【0046】
まず、図10に示すステップS1において、基本周波数f(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。たとえば、図11に示すように、40Hzの周波数を有する非対称な形状を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。なお、基本周波数f(Hz)は、リニアモータ1が配置される携帯電話100の重量や形状、ならびに、携帯電話100におけるリニアモータ1の配置位置などに応じて設計される周波数である。
【0047】
次に、ステップS2において、加速度センサ6(図1参照)により、携帯電話100の振動の加速度を測定する。そして、加速度センサ6によって測定された加速度が、ADC5を介してDSP4に入力される。そして、たとえば図12に示すような加速度が0の基準線に対して非対称なノコギリ波形状ではない加速度が得られたとする。具体的には、加速度の正側のA4点から負側のピーク(B4点)に向かう加速度の傾きの大きさの絶対値と、負側のピーク(B4点)から正側のC4点に向かう加速度の傾きの大きさの絶対値とは、略等しくなっている。つまり、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形が、加速度の波形のピークを通る直線D4に対して、一方方向側の傾きの絶対値と、他方方向側の傾きの絶対値とが略等しくなっている。
【0048】
次に、ステップS3において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。たとえば、図12に示す加速度を時間で微分することにより、図13に示すような加加速度が得られる。ここで、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、向きが負側になる時間の長さとの差(時間差A)を算出しておく。なお、図13に示す加加速度では、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差は、比較的小さくなっている。
【0049】
次に、ステップS4において、基本周波数f(Hz)よりも1(Hz)大きい周波数f+1(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。そして、ステップS5において、加速度センサ6により、携帯電話100の振動の加速度を測定するとともに、加速度センサ6によって測定された加速度が、ADC5を介してDSP4に入力される。そして、ステップS6において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。ここで、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、向きが負側になる時間の長さとの差(時間差B)を算出しておく。
【0050】
次に、ステップS7において、基本周波数f(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差A)と、基本周波数f+1(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差B)との大きさを比較する。ここで、時間差Aが時間差B以下と判断された場合、ステップS8に進んで、基本周波数f(Hz)の時間差Bの値を時間差Aの値に置き換える。その後、ステップS4に戻る。また、ステップS7において、時間差Aが時間差Bよりも大きいと判断された場合、ステップS9に進んで、周波数f−1(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。次に、ステップS10において、加速度センサ6(図1参照)により、携帯電話100の振動の加速度を測定する。そして、ステップS11において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。ここで、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、向きが負側になる時間の長さとの差(時間差C)を算出しておく。
【0051】
次に、ステップS12において、周波数f(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差A)と、周波数f−1(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差C)との大きさを比較する。ここで、時間差Aが時間差C以下と判断された場合、ステップS13に進んで、基本周波数f(Hz)の時間差Cの値を時間差Aの値に置き換える。その後、ステップS9に戻る。また、ステップS12において、時間差Aが時間差Bよりも大きいと判断された場合、ステップS14に進んで、周波数f(Hz)を用いることが決定される。
【0052】
上記のように、ステップS1〜ステップS8(ステップS9〜ステップS13)の動作を繰り返すことにより、基本周波数f(Hz)が徐々に大きくなる(小さくなる)とともに、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差が大きくなる。たとえば、図7に示す43Hzの電圧を印加した場合の加加速度のように、図13に示す40Hzの電圧を印加した場合の加加速度に比べて、加加速度の向きが正になる時間の長さと、向きが負になる時間の長さとの差が大きくなる。一方、基本周波数f(Hz)がある大きさを超えると、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差が逆に小さくなってゆく。そして、ステップS12において、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差が大きくなっていた状態から逆に小さくなる状態に移行したと判断された場合に、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差の最大値が求められたとして、電圧V(t)の周波数の調整を終了する。
【0053】
第1実施形態によるリニアモータ100では、以下の効果を得ることができる。
【0054】
(1)コイル14と、コイル14が発生する磁界により往復移動する可動部12と、可動部12が収納されるとともに可動部12の往復移動によって振動する筐体11と、可動部12と筐体11との間に設けられるバネ部13aおよび13bとを設けた。そして、コイル14に、波形が非対称な交流状の電圧を印加して、筐体11の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して正側と負側とで非対称になるように構成した。これにより、コイル14に印加する電圧の波形を反転させた場合、コイル14に印加する電圧の波形が非対称であるので、電圧の波形の反転の前後において、リニアモータ1(携帯電話100)を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を変化させることができる。
【0055】
(2)リニアモータ1の筐体11(携帯電話100)の振動方向の加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと、加加速度の向きが負側になる時間の長さとが異なるように構成した。これにより、リニアモータ1(携帯電話100)を把持した場合、リニアモータ1の振動方向の一方方向側に牽引される場合の緩急の感覚と、他方方向側に牽引される場合の緩急の感覚とを異ならせることができる。その結果、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、加加速度の向きが負側になる時間の長さとが等しい場合と異なり、リニアモータ1を把持した場合の擬似力覚をより大きくすることができる。なお、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形を、加速度が0の基準線に対して非対称(たとえば正側の加速度の大きさと負側の加速度の大きさとを異ならせる)ことによっても、振動方向の一方方向側または他方方向側に牽引されるような擬似力覚を得ることが可能である。一方、加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと、加加速度の向きが負側になる時間の長さとが異なるように構成することにより、正側の加速度の大きさと負側の加速度の大きさとが等しい場合でも、リニアモータ1を把持した場合に擬似力覚を得ることができる。
【0056】
(3)加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側(負側)になる時間の長さは、加加速度の向きが負側(正側)になる時間の長さの2倍以上になるように構成した。これにより、振動方向の一方方向側に牽引される場合の緩急の感覚と、他方方向側に牽引される場合の緩急の感覚とを確実に異ならせることができるので、リニアモータ1を把持した場合に擬似力覚を確実に得ることができる。
【0057】
(4)筐体11(携帯電話100)の振動方向の加加速度の波形を、コイル14に印加する電圧V(t)の周波数を徐々に変化させることにより、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと加加速度の向きが負側になる時間の長さとの差が最大になるように調整するように構成した。これにより、擬似力覚が最大になるように電圧V(t)の周波数を最適化することができる。
【0058】
(5)筐体11(携帯電話100)の振動方向の加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して正側の加加速度の絶対値の最大値と負側の加加速度の絶対値の最大値とが異なるように構成した。これにより、リニアモータ1を把持した場合、リニアモータ1の振動方向の一方方向側に牽引される場合の擬似力覚の大きさと、他方方向側に牽引される場合の擬似力覚の大きさとを異ならせることができるので、リニアモータ1を把持した場合に擬似力覚を得ることができる。
【0059】
(6)筐体11の振動方向の加速度の波形を、加速度の波形のピークを通る直線に対して、一方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値と、他方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値とが異なるように構成した。これにより、加速度の大きさが最大値に達するまでの擬似力覚の緩急と、加速度の大きさが最大値から小さくなる場合の擬似力覚の緩急とを異ならせることができる。
【0060】
(7)携帯電話100に固定的に取り付けられる加速度センサ6を設けて、加速度センサ6によって測定される携帯電話100の加速度から加加速度を算出するようにした。そして、加速度センサ6によって測定された加速度から算出される加加速度に基づいて、コイル14に印加する電圧の周波数を変化させるように構成した。これにより、実際の使用状態における携帯電話100の加速度を加速度センサ6により得ることができるので、携帯電話100の持ち方やストラップなどを取り付けたことによる携帯電話100の重量変化に対応した所望の擬似力覚を得ることができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、図14および図15を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、リニアモータ1が円筒状の永久磁石からなる可動部12を有する上記第1実施形態と異なり、平板状の永久磁石からなる可動部22を有するリニアモータ1aについて説明する。なお、リニアモータ1aは、本発明の「振動デバイス」の一例である。
【0062】
第2実施形態によるリニアモータ1aは、図14および図15に示すように、枠体21と、枠体21内に収納された可動部22と、可動部22を支持する一対のバネ部23aおよび23bと、可動部22と対向するように配置された平面コイル24とを備えている。なお、リニアモータ1aは、本発明の「振動デバイス」の一例である。また、枠体21は、本発明の「筐体」の一例である。また、平面コイル24は、本発明の「コイル」の一例である。
【0063】
図14および図15に示すように、可動部22は、平板状の永久磁石(フェライトやネオジウムなどの強磁性材料からなる磁石)により構成されている。また、可動部22は、平面的に見て、枠体21の略中央に位置するように一対のバネ部23aおよび23bにより側面が支持されている。
【0064】
図15に示すように、可動部22は、第1磁石221および第2磁石222からなる2つの永久磁石により構成されている。第1磁石221は、矢印Z1方向側にN極面221aを有するとともに、矢印Z2方向側にS極面221bを有する。また、第2磁石222は、矢印Z1方向側にS極面222aを有するとともに、矢印Z2方向側にN極面222bを有する。第1磁石221と第2磁石222とは、接着剤などにより固定されている。
【0065】
バネ部23aおよび23bは、板バネやコイルバネなどからなる。また、バネ部23aおよび23bは、それぞれ、同じ材料からなり、同じバネ特性を有する。また、枠体21および可動部22は、可動部22の往復移動の中心線に対して、略対称な形状を有する。これにより、リニアモータ1aは、全体として可動部22の往復移動の中心線に対して、構造的に略対称な形状を有する。
【0066】
図15に示すように、平面コイル24は、可動部22に対向するように枠体21の内部に配置されている。平面コイル24には、正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧が印加されるように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
次に、図14および図15を参照して、第2実施形態によるリニアモータ1aの往復移動の動作を説明する。
【0068】
まず、平面コイル24に電圧を印加して、電流を供給する。これにより、平面コイル24に磁界が発生する。そして、平面コイル24と、第1磁石221と第2磁石222とのうちの一方との間に引力が働くとともに、他方との間に斥力が働く。これにより、可動部22が、X方向に沿って移動する。また、平面コイル24に印加する電圧の正負を反転させることにより、平面コイル24に逆方向に電流を供給する。これにより、可動部22の移動方向が反転する。このように、電圧を反転させて平面コイル24に電圧を印加することにより、可動部22が振動する。また、可動部22の振動に伴って枠体21(リニアモータ1a)も振動する。
【0069】
そして、平面コイル24に正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧を印加することにより、リニアモータ1aが設けられる携帯電話100を把持した場合に、可動部22の振動によって、所定の方向に引っ張られるような擬似力覚(牽引感覚)が得られる。さらに、平面コイル24に印加する電圧を反転させることにより、容易に、携帯電話100を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を変化させることが可能である。
【0070】
また、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
(第3実施形態)
次に、図16および図17を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、加速度センサ6を携帯電話100の内部に設けた上記第1実施形態とは異なり、加速度センサ6を含むアタッチメント300をゲーム機200の外部に取り付けた例について説明する。なお、ゲーム機200は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0072】
第3実施形態によるゲーム機200本体には、図16に示すように、液晶表示部201と、十字状の操作キー202と、4つの操作ボタン203とが設けられている。また、ゲーム機200の上面および背面と接触するように、アタッチメント300が取り付けられている。
【0073】
アタッチメント300には、図17に示すように、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1(X軸用振動デバイス)と、Y軸方向に振動を発生させるリニアモータ1(Y軸用振動デバイス)とが設けられている。上記のように、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1と、Y軸方向に振動を発生させるリニアモータ1とを設けることにより、アタッチメント300(ゲーム機200)をX方向とY方向との2軸方向に振動させることが可能である。
【0074】
また、アタッチメント300には、X軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6が設けられている。X軸用の加速度センサ6は、リニアモータ1およびゲーム機200のX方向の振動(加速度)を測定する機能を有する。Y軸用の加速度センサ6は、リニアモータ1およびゲーム機200のY方向の振動(加速度)を測定する機能を有する。また、X軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6は、図示しないADCに接続されるとともに、ADCは、DSPに接続されている。DSPは、DACに接続されるとともに、DACは、アンプに接続されている。アンプは、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1およびY軸方向に振動を発生させるリニアモータ1に接続されている。
【0075】
X軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6によって測定されたリニアモータ1の加速度の情報は、ADCを介してDSPに入力される。また、DSPは、入力された加速度の情報に基づいて、加速度の微分値である加加速度を算出するとともに、加加速度に基づいてDACおよびアンプを介して、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1およびY軸方向に振動を発生させるリニアモータ1に電圧を供給するように構成されている。なお、ゲーム機200本体の内部に加速度センサが内蔵されている場合には、アタッチメント300にX軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6を設けなくてもよい。
【0076】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
(第4実施形態)
次に、図18および図19を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、加速度を測定する加速度センサ6を備える携帯電話100を示した上記第1実施形態とは異なり、位置を検出するホール素子6aを備える携帯電話100aについて説明する。なお、ホール素子6aは、本発明の「検出器」の一例であり、携帯電話100aは、本発明の「電子機器」の一例である。
【0078】
第4実施形態による携帯電話100aの内部には、リニアモータ1と、LSI(大規模集積回路)7とが設けられている。このLSI7は、アンプ2と、DAC3と、DSP4と、ADC5と、ホール素子6aとを含んでいる。また、ホール素子6aは、リニアモータ1(携帯電話100a)の位置を検出する機能を有する。ホール素子6aによって検出されたリニアモータ1の位置の情報は、ADC5を介してDSP4に入力される。また、DSP4は、入力された位置の情報に基づいて、位置の微分値である速度を算出し、速度の微分値である加速度を算出するように構成されている。そして、加速度の微分値である加加速度を算出するとともに、加加速度に基づいてDAC3およびアンプ2を介してリニアモータ1に電圧を供給するように構成されている。なお、DSP4は、携帯電話100aの制御部(図示せず)から、リニアモータ1の牽引方向、強度および作動間隔などの作動情報を受け取るように構成されており、作動情報に基づいて上記した加加速度に基づく電圧をコイル14に供給するように構成されている。
【0079】
次に、図20のフローチャートを参照して、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にするための電圧V(t)の周波数の調整方法について説明する。なお、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にすることにより、リニアモータ1(携帯電話100a)を把持した場合に得られる擬似力覚が最大になる。
【0080】
まず、図20に示すステップS1において、上記第1実施形態と同様に、基本周波数f(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。
【0081】
次に、ステップS20において、ホール素子6aにより、携帯電話100aの位置を検出する。そして、ホール素子6aによって検出された位置の情報が、ADC5を介してDSP4に入力される。
【0082】
次に、ステップS2において、位置の情報を時間で微分して速度を求めた後に、加速度を求める。そして、ステップS3において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。その後、上記第1実施形態と同様に、ステップS4〜ステップS8およびステップS9〜ステップS13を順次行う。なお、ステップS5およびステップS10では、特に図示していないが、上記したステップS20と同様に、位置の情報を時間で微分して速度を求めた後に、加速度を求めている。そして、こうしたフローに沿って、上記第1実施形態と同様に、電圧V(t)の周波数の調整が行われ、最終的にステップS14に進んで、周波数f(Hz)を用いることが決定される。なお、ユーザの携帯電話100aの把持の仕方の変化等による最適周波数の変化に対応させるためにリニアモータ1のコイル14に出力される加加速度を間欠的(所定の周期毎)にモニターしておき、出力される加加速度が所定の値より(ある割合以上)低下した場合に、電圧V(t)の周波数の調整をステップS1からやり直すように制御してもよい。また、出力される加加速度が所定の値より(ある割合以上)低下したか否かにかかわらず、間欠的(所定の周期毎)に強制的に電圧V(t)の周波数の調整をステップS1からやり直すように制御してもよい。
【0083】
なお、第4実施形態のその他の構成、電圧V(t)の周波数の調整方法および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
(第5実施形態)
次に、図21を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態では、加速度センサ6により測定される加速度に基づいて、リニアモータ1のコイル14に印加される電圧を導出(算出)するように構成された携帯電話100を示した上記第1実施形態とは異なり、リニアモータ1のインピーダンスから得られるリニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)に基づいてリニアモータ1のコイル14に印加される電圧を導出(算出)するように構成された携帯電話100bについて説明する。なお、携帯電話100bは、本発明の「電子機器」の一例である。
【0085】
第5実施形態による携帯電話100bの内部には、リニアモータ1と、アンプ2と、デジタル/アナログコンバータ(DAC)3と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)5と、制御部8と、抵抗9とが設けられている。また、リニアモータ1は、アンプ2と、ADC5と、抵抗9とに接続されている。アンプ2は、DAC3と、ADC5と、抵抗9とに接続されている。DAC3は、制御部8に接続されている。制御部8は、ADC5に接続されている。
【0086】
また、制御部8は、ADC5を介して抵抗9の両端の電位差や抵抗9に流れる電流値を取得可能に構成されている。制御部8は、ADC5を介して取得した抵抗9の両端の電位差や抵抗9に流れる電流値に基づいて、リニアモータ1のインピーダンスを算出可能に構成されている。また、制御部8は、リニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)を取得可能に構成されている。制御部8は、振動に関する3つのパラメータに基づいて、ユーザにより携帯電話100bが把持された場合に、疑似力覚(牽引感覚)が得られるように波形が正側と負側とで非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成されている。
【0087】
次に、図22〜図24を参照して、リニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)を取得する方法、および、3つのパラメータに基づいてリニアモータ1のコイル14に印加される電圧を導出(算出)する方法について説明する。
【0088】
まず、制御部8は、リニアモータ1の振動(スピード)が最も大きくなる共振周波数ω0を取得(特定)するために、図22に示すように、リニアモータ1のコイル14に20Hz以上100Hz以下の周波数の範囲において、0.5Hzの間隔で電圧を変化させながら順次印加(スキャン)する。そして、制御部8が、電圧を印加するのと同時に20Hz以上100Hz以下の周波数の範囲におけるインピーダンスを算出することにより、図22に示す波形(インピーダンスカーブ)が取得されたとする。
【0089】
図22に示す波形は、横軸が周波数[Hz]を示しており、縦軸がインピーダンス[Ω]を示している。周波数が20Hz以上40Hz以下の範囲では、インピーダンスは、39Ω以上42Ω以下の範囲の大きさになっている。また、周波数が40Hz以上47Hz以下の範囲では、インピーダンスが42Ωから47Ωへと急激に上昇している。そして、47Hzの周波数において、インピーダンスが最大(47Ω)となっている。なお、リニアモータ1は、リニアモータ1の振動(スピード)が最も大きくなる際に、リニアモータ1に発生する逆起電力が最も大きくなるため、リニアモータ1のインピーダンスが最も大きくなる。つまり、インピーダンスが最大(47Ω)となる周波数(47Hz)が、リニアモータ1の振動(スピード)が最も大きくなる共振周波数ω0となる。また、周波数が47Hz以上53Hz以下の範囲では、インピーダンスは、47Ωから42Ωへと急激に低下している。また、周波数が53Hz以上100Hz以下の範囲では、インピーダンスは、42Ω以下40Ω以上の範囲の大きさになる。
【0090】
そして、制御部8は、図22に示す波形をカーブフィッティングすることにより、リニアモータ1の共振周波数ω0(47Hz)、減衰定数κおよび推力定数BLを同時に算出(取得)する。また、制御部8は、共振周波数ω0を有する正弦波、共振周波数の2倍の周波数2ω0を有する正弦波および共振周波数の3倍の周波数3ω0を有する正弦波を算出する。
【0091】
次に、周波数ω0、2ω0および3ω0を有する正弦波をリニアモータ1に入力した際の各周波数ω0、2ω0および3ω0毎のリニアモータ1の加速度と、各周波数ω0、2ω0および3ω0を有する正弦波の位相差とを共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BLの3つのパラメータに基づいて算出する。そして、制御部8は、各周波数ω0、2ω0および3ω0毎のリニアモータ1の加速度比が1:0.25:0.042となるように振幅調整(電圧値を算出)するとともに、各周波数ω0(電圧値の1次の成分に該当)、2ω0(電圧値の2次の成分に該当)および3ω0(電圧値の3次の成分に該当)を有する正弦波の位相差が0度となるように電圧値(正弦波)を合成する。これにより、図23に示すように、電圧が0の基準線に対して、正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧(破線)が導出(算出)される。
【0092】
また、図23に示すように、制御部8により導出(算出)された電圧をリニアモータ1のコイル14に入力(供給)した際に発生する加速度(実線)は、加速度が0の基準線に対して、略正弦波状の波形となる。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、0.8Gであるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、1.0Gであった。
【0093】
また、図23に示す加速度を時間で微分することにより、図24に示すように、加加速度が0の基準線に対して、非対称な形状を有する加加速度(実線)が求められる。具体的には、加加速度の正側の最大値の絶対値が300G/sであるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値が350G/sであった。なお、図24に示す加加速度(図23に示す電圧および加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100bを把持した場合、正側の加加速度の最大値の絶対値よりも負側の加加速度の最大値の絶対値の方が大きいので、加加速度の負側に擬似力覚(牽引感覚)が得られる。
【0094】
第5実施形態によるリニアモータ100bでは、以下の効果を得ることができる。
【0095】
(8)リニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)を取得可能に構成するとともに、振動に関する3つのパラメータに基づいて波形が非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成した。これにより、上記第3および第4実施形態とは異なり、リニアモータ1の加速度を検出する加速度センサやリニアモータ1の位置情報を検出するホール素子を設けなくてよいので、その分、携帯電話100bの構造を簡素化することができる。
【0096】
(9)リニアモータ1に対して周波数を0.5Hzの間隔で交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得される振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)に基づいて、波形が非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成した。これにより、周波数の大きさに対するインピーダンスの大きさに関する波形(インピーダンスカーブ)を容易に取得することができるので、取得した波形に基づいて振動に関する3つのパラメータを容易に得ることができる。
【0097】
(第6実施形態)
次に、図22および図25を参照して、第6実施形態について説明する。この第6実施形態では、0.5Hzの間隔で電圧を変化させながら順次印加(スキャン)することによりインピーダンスを取得した第5実施形態とは異なり、2.0Hzの間隔で電圧の印加(スキャン)を行った後に、0.5Hzの間隔で電圧の印加(スキャン)を行った結果からインピーダンスを取得する方法について説明する。なお、2.0Hzの間隔は、本発明の「第1の間隔」の一例であり、0.5Hzの間隔は、本発明の「第2の間隔」の一例である。また、第6実施形態の構成は、上記第5実施形態と同様である。
【0098】
第6実施形態では、制御部8は、20Hz以上100Hz以下の周波数の範囲において、最初に2.0Hzの粗い間隔で電圧を印加(スキャン)する。これにより、周波数に対するインピーダンスの大きさについての概略波形が取得される。次に、制御部8は、取得された概略波形からインピーダンスが最大となる周波数の近傍の周波数(たとえば、図22に示す45Hz以上49Hz以下の範囲)を0.5Hzの細かい間隔で電圧を印加(スキャン)する。これにより、インピーダンスが最大となる周波数の近傍の詳細な波形が得られるので、詳細な波形からインピーダンスが最大(47Ω)となる周波数(47Hz、共振周波数ω0)が得られる。
【0099】
次に、制御部8は、インピーダンスが最大となる共振周波数ω0からリニアモータ1の減衰定数κを算出する。具体的には、図25に示すように、制御部8は、共振周波数ω0を有する電圧(破線)をリニアモータ1のコイル14に所定の時間印加する。この際、リニアモータ1のコイル14には、コイル14に印加している電圧の方向とは反対方向に逆起電力(実線)が発生する。そして、制御部8は、時間Aにおいて、リニアモータ1のコイル14に電圧を印加するのを停止する。このとき、リニアモータ1のコイル14に発生していた逆起電力(実線)は、時間の経過に伴って、急激に減衰(収束)する。この逆起電力の減衰(収束)する波形(包絡線)の時定数からリニアモータ1の減衰定数κが算出される。
【0100】
次に、制御部8は、減衰定数κから推力定数BLを算出する。具体的には、制御部8は、算出された減衰定数κを推力定数BLの式(BL=(2κ(Z−R))0.5)(なお、κは減衰定数、Zは共振周波数ω0におけるコイル14のインピーダンス、Rはコイル14の抵抗値である)に代入することにより、推力定数BLを算出する。なお、共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BLに基づいて、リニアモータ1のコイル14に印加する非対称な波形を有する交流状の電圧を算出する方法は、上記第5実施形態と同様である。
【0101】
第6実施形態によるリニアモータ100bでは、以下の効果を得ることができる。
【0102】
(10)リニアモータ1に対して周波数を2.0Hzの粗い間隔で交流状の電圧を入力することにより得られる波形のうち、インピーダンスが最大となる周波数(47Hz)の近傍(ピークに対応する波形の周波数近傍)の周波数を0.5Hzの細かい間隔で交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得されるパラメータ(共振周波数ω0)に基づいて、波形が非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成した。これにより、インピーダンスが最大となる周波数近傍(45Hz以上49Hz以下の範囲)以外の範囲も0.5Hzの細かい間隔で入力してパラメータを取得する場合と比べて、インピーダンスが最大となる周波数近傍(45Hz以上49Hz以下の範囲)以外の範囲を0.5Hzの細かい間隔でスキャンしない分、パラメータを取得する時間を短縮することができる。
【0103】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0104】
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、理想的な加加速度の波形として矩形状の波形を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して非対称であればよい。
【0105】
また、上記第1〜第6実施形態では、加加速度の最大値の絶対値と最小値の絶対値とが異なる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、加加速度の最大値の絶対値と最小値の絶対値とが同じであっても、加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して非対称であればよい。
【0106】
また、上記第1〜第6実施形態では、可動部の移動方向に沿った方向の一方側と他方側とにそれぞれバネ部が配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、可動部の移動方向に沿った方向の一方側または他方側のいずれか一方にだけバネ部を配置してもよい。
【0107】
また、上記第1〜第6実施形態では、リニアモータが可動部の往復移動の中心線に対して構造的に略対称な形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、可動部の往復移動の中心線に対して構造的に非対称な形状を有するリニアモータにも適用可能である。なお、こうした場合には、少なくとも上記(7)の効果を享受することができる。
【0108】
また、上記第1〜第6実施形態では、リニアモータを携帯電話またはゲーム機に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リニアモータを、ゲームパッド、携帯ゲーム機器あるいは携帯型音楽プレーヤなどに設けてもよい。
【0109】
また、上記第1〜第6実施形態では、1つのリニアモータを携帯電話に設け、2つのリニアモータをアタッチメントを介してゲーム機に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つ以上のリニアモータを携帯電話に設けてもよいし、3つ以上のリニアモータをアタッチメントを介してゲーム機に設けてもよい。
【0110】
また、上記第1〜第6実施形態では、入力された位置の情報に基づいて、位置の微分値である速度を算出するとともに、速度の微分値である加速度を算出し、加速度の微分値である加加速度を算出するDSPや制御部を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、速度、加速度および加加速度を算出することが可能であれば、マイコン(マイクロコンピュータ)やロジック回路などでも適用可能である。
【0111】
また、上記第1〜第4実施形態では、加加速度(加速度)の計算を行うとともに、リニアモータのコイルに電圧を印加する回路(DSP)をデジタル回路により構成したが、本発明はこれに限られない。たとえば、オペアンプを用いた発振回路やRC微分回路などのアナログ回路により構成してもよい。
【0112】
また、上記第3実施形態では、アタッチメントに設けられた加速度センサによりゲーム機の加速度を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ユーザがゲーム機などを把持している状態において、腕などに取り付けられた加速度センサによりゲーム機の加速度を測定してもよい。
【0113】
また、上記第4実施形態では、ホール素子により携帯電話の位置を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リニアモータのコイルに発生する逆起電力(電圧や電流など)を検出することにより、携帯電話の位置を検出してもよい。
【0114】
また、上記第1〜第6実施形態では、リニアモータのコイルに印加される電圧V(t)の周波数の調整方法として、加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にする方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、加加速度(加速度)の正側の絶対値と負側の絶対値の差を最大にするように調整してもよいし、加速度(速度)の正側の傾きと負側の傾きの差を最大にするように調整してもよい。
【0115】
また、上記第1〜第4実施形態では、携帯電話またはゲーム機の牽引感覚を最適に制御する方法として、コイルに印加する電圧の周波数を変化させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コイルに印加する電圧の大きさ(電圧値)を変化させることにより、携帯電話またはゲーム機の牽引感覚を最適に制御してもよい。
【0116】
また、上記第1〜第4実施形態では、携帯電話またはゲーム機の牽引感覚を最適に制御する方法として、コイルに印加する電圧の周波数を変化させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図26および図27に示すように、電圧の波形の位相差を変化させることにより牽引感覚を最適に制御してもよい。図26では、周波数fHzの正弦波(破線)の位相と、周波数fHzの2倍の周波数の2fHzの正弦波(一点鎖線)の位相とは、同じ状態である。また、周波数fHzの正弦波(破線)の位相と、周波数fHzの2倍の周波数の2fHzの正弦波(一点鎖線)の位相とを、45度ずらした場合、図27に示すような、図26とは異なる電圧の合成波形が得られる。このように、電圧の波形の位相差を変化させて所望の合成波形(入力波形)をリニアモータのコイルに入力してもよい。
【0117】
また、上記第1実施形態では、加速度センサによって検出された加速度から加加速度を算出し、その加加速度に基づいてコイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、加速度の波形が、加速度が0の基準線に対して非対称の場合には、加速度センサによって検出された加速度に基づいてコイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させるようにしてもよい。これにより、携帯電話の持ち方やストラップなどを取り付けたことによる携帯電話の重量変化に対応した所望の擬似力覚を得ることが可能である。
【0118】
また、上記第5および第6実施形態では、本発明の振動に関するパラメータの一例として、共振周波数、減衰定数および推力定数の3つのパラメータを示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、振動に関するパラメータであれば、共振周波数、減衰定数および推力定数以外のパラメータでもよい。
【0119】
また、上記第5実施形態では、リニアモータに対して周波数を0.5Hzの間隔で入力する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、周波数に対するインピーダンスの大きさを取得可能であれば、0.5Hz以外の間隔で入力してもよい。
【0120】
また、上記第6実施形態では、最初にリニアモータに対して2.0Hzの間隔で入力し、次に、周波数の所望の範囲を0.5Hzの間隔で入力する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、周波数に対するインピーダンスの大きさを取得可能であれば、最初にリニアモータに対して2.0Hz以外の間隔で入力し、次に、周波数の所望の範囲を最初の周波数の間隔よりも細かい間隔で入力してもよい。
【符号の説明】
【0121】
1、1a リニアモータ(振動デバイス)
6 加速度センサ(検出器)
6a ホール素子(検出器)
11 筐体
12、22 可動部
13a、13b、23a、23b バネ部
14 コイル
21 枠体(筐体)
24 平面コイル(コイル)
100、100a、100b 携帯電話(電子機器)
200 ゲーム機(電子機器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスおよび振動デバイスを備える電子機器に関し、特に、可動部とコイルとを備え、コイルに交流状の電圧が印加される振動デバイスおよびこうした振動デバイスを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動部とコイルとを備え、コイルに交流状の電圧が印加される振動デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、コイルが巻回される円筒状のボビン(可動部)と、円筒状のボビンの一方端部側に取り付けられる第1永久磁石(可動部)と、ボビンの他方側にボビンと別個に設けられる第2永久磁石と、コイル、ボビン、第1永久磁石および第2永久磁石を収納する円筒状のフレームと、第1永久磁石とフレームとの間に設けられるバネとを備える加速度発生装置(振動デバイス)が開示されている。なお、この加速度発生装置では、第1永久磁石の移動方向(円筒状のボビンが延びる方向)の一方側にバネが配置されるとともに、他方側に第2永久磁石が配置されているので、第1永久磁石の移動方向の中心に対して、加速度発生装置は構造的に非対称な形状を有する。
【0004】
また、この加速度発生装置では、コイルに正弦波状の交流電流(交流電圧)が供給されることにより磁界が発生する。そして、第1永久磁石の一方側にはバネの弾性力が働くとともに、他方側にはコイルの磁界と第2永久磁石の磁界とが働く。そして、第1永久磁石の一方側および他方側に働く力の大きさが第1永久磁石およびボビンの位置によって異なっており、第1永久磁石(ボビン)の加速度の波形が第1永久磁石(ボビン)の移動方向の一方側と他方側とで異なるように構成されている。これにより、ユーザは、加速度発生装置を把持した場合に、所定の方向に引っ張られるような力覚(擬似力覚)を知覚することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/086426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された加速度発生装置では、正弦波状の電流がコイルに流されている一方、波形を反転させた電流(電圧)をコイルに流しても、加速度発生装置を把持した場合に得られる擬似力覚の方向は、電流の波形(電圧の波形)を反転させる前後において変わらないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、印加する電圧の波形を反転させた場合に、電圧の波形の反転の前後において、装置を把持した場合に得られる力覚の方向を変化させることが可能な振動デバイスおよびこうした振動デバイスを備える電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における振動デバイスは、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを備え、コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている。
【0009】
この発明の第2の局面における電子機器は、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを含み、コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスと、電子機器本体の位置または加速度を検出するための検出器とを備え、検出器によって検出される電子機器本体の位置または加速度から加加速度を算出するように構成されており、加加速度に基づいて、コイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させるように構成されている。
【0010】
この発明の第3の局面における電子機器は、コイルと、コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、可動部が収納されるとともに可動部の往復移動によって振動する筐体と、可動部と筐体との間に設けられるバネ部とを含み、コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスを備え、振動デバイスの振動に関するパラメータを取得可能に構成されているとともに、振動に関するパラメータに基づいて波形が非対称な交流状の電圧が導出されるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成により、印加する電圧の波形を反転させた場合に、電圧の波形の反転の前後において、装置を把持した場合に得られる力覚の方向を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による携帯電話の平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による理想的な加加速度と本発明の実験結果により求められた加加速度との波形を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による実験結果により求められた電圧の波形を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態による実験結果により求められた加速度の波形を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態による実験結果により求められた加速度の波形を示す図である。
【図7】図6の加速度を微分することにより求められた加加速度の波形を示す図である。
【図8】図6に示す電圧を反転させた場合に得られる加速度の波形を示す図である。
【図9】図8の加速度を微分することに求められた加加速度の波形を示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態による電圧の周波数の調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10に示す電圧の周波数の調整時における最初に印加される電圧の波形を示す図である。
【図12】図11に示す電圧を印加した場合に得られる加速度の波形を示す図である。
【図13】図12に示す加速度を微分することによって求められた加加速度の波形を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態によるリニアモータの平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態によるリニアモータを備えるアタッチメントが取り付けられたゲーム機の正面図である。
【図17】本発明の第3実施形態によるリニアモータを備えるアタッチメントが取り付けられたゲーム機の背面図である。
【図18】本発明の第4実施形態による携帯電話の平面図である。
【図19】本発明の第4実施形態によるリニアモータの断面図である。
【図20】本発明の第4実施形態による電圧の周波数の調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の第5実施形態による携帯電話の平面図である。
【図22】本発明の第5実施形態によるリニアモータの周波数に対するインピーダンスの変化を示すグラフである。
【図23】本発明の第5実施形態によるリニアモータに入力する電圧および加速度を示すグラフである。
【図24】本発明の第5実施形態によるリニアモータに入力する電圧および加加速度を示すグラフである。
【図25】本発明の第6実施形態によるリニアモータの振動の減衰の様子を示すグラフである。
【図26】第1〜第4実施形態のコイルに印加される電圧の変形例による周波数fHzの正弦波と周波数2fHzの正弦波との位相を同じ状態で合成した波形を示す図である。
【図27】第1〜第4実施形態のコイルに印加される電圧の変形例による周波数fHzの正弦波と周波数2fHzの正弦波との位相を45度ずらした状態で合成した波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1を備えた携帯電話100の構成について説明する。なお、第1実施形態では、本発明の振動デバイスをリニアモータ1に適用した例について説明する。なお、リニアモータ1は、本発明の「振動デバイス」の一例である。また、携帯電話100は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0015】
携帯電話100は、図1に示すように、液晶ディスプレイなどからなる表示部101と、押しボタンスイッチからなる複数の入力キー102とを備えている。
【0016】
携帯電話100の内部には、リニアモータ1と、アンプ2と、デジタル/アナログコンバータ(DAC)3と、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)4と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)5と、加速度センサ6とが設けられている。なお、加速度センサ6は、本発明の「検出器」の一例である。また、リニアモータ1は、携帯電話100の矢印Y1方向側の先端部(携帯電話100を把持する側とは反対側の端部)に配置されている。リニアモータ1は、アンプ2に接続されているとともに、アンプ2は、DAC3に接続されている。DAC3は、DSP4に接続されているとともに、DSP4は、ADC5に接続されている。ADC5は、加速度センサ6に接続されている。また、加速度センサ6は、リニアモータ1(携帯電話100)の振動(加速度)を測定する機能を有する。加速度センサ6によって測定されたリニアモータ1の加速度の情報は、ADC5を介してDSP4に入力される。また、DSP4は、入力された加速度の情報に基づいて、加速度の微分値である加加速度を算出するとともに、加加速度に基づいてDAC3およびアンプ2を介してリニアモータ1に電圧を供給するように構成されている。
【0017】
図2に示すように、リニアモータ1は、円筒状の筐体11と、筐体11内に収納される円筒状の永久磁石からなる可動部12と、可動部12と筐体11の内側面との間に設けられるバネ部13aおよび13bと、筐体11に巻回されるコイル14とを含んでいる。可動部12を構成する永久磁石は、矢印X1方向側にN極の磁極面を有するとともに、矢印X2方向側にS極の磁極面を有するように配置されている。
【0018】
バネ部13aおよび13bは、コイルバネや板バネなどからなる。バネ部13aおよび13bは、可動部12の振動(往復移動)の中心線に対して、略対称になるように配置されている。また、バネ部13aおよび13bは、同じ材料からなり、同じバネ特性を有する。そして、筐体11も、可動部12の往復移動の中心線に対して、略対称な形状を有する。つまり、リニアモータ1は、全体として可動部12の往復移動の中心線に対して、構造的に略対称な形状を有する。
【0019】
コイル14は、リニアモータ1を矢印X2方向側から見た場合に、筐体11に右巻きに巻回されているコイル14aと、筐体11に左巻きに巻回されているコイル14bとを含んでいる。つまり、筐体11に対する巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとで反対である。また、コイル14aとコイル14bとは、電気的に接続されている。また、コイル14aは、筐体11の矢印X1方向側に配置されるとともに、コイル14bは、筐体11の矢印X2方向側に配置される。
【0020】
コイル14は、アンプ2およびDAC3を介してDSP4に接続されており、コイル14には、DSP4からDAC3およびアンプ2を介して正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧が印加されるように構成されている。ここで、正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧とは、電圧が0の点に対して、電圧の波形が点対称(たとえば正弦波)になっていないことを意味する。たとえば、電圧の正側と負側とで電圧が異なる大きさの最大値を有する場合などを意味する。
【0021】
ここで、コイル14に正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧を印加することにより、リニアモータ1の振動方向の加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正側と負側とで非対称になるように構成されている。なお、加加速度(躍度)とは、加速度の微分値(単位時間当たりの加速度の変化率)である。具体的には、リニアモータ1の振動方向の加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと、負側になる時間の長さとが異なっている。また、リニアモータ1の振動方向の加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して正側の加加速度の絶対値の最大値と負側の加加速度の絶対値の最大値とが異なっている。
【0022】
次に、図2を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1の振動(往復移動)の動作を説明する。
【0023】
まず、DSP4(図1参照)からDAC3およびアンプ2を介して、コイル14に電圧を印加して、コイル14に電流を供給する。これにより、コイル14aおよびコイル14bには、それぞれ、磁界が発生する。なお、コイル14の巻回の方向は、コイル14aとコイル14bとでは、反対であるので、コイル14aに発生する磁界の方向と、コイル14bに発生する磁界の方向とは逆方向になる。これにより、可動部12は、コイル14aおよびコイル14bのうちの一方からX方向に沿って引力を受けるとともに、他方から斥力を受ける。その結果、可動部12は、X方向に沿って移動する。また、コイル14に印加する電圧を反転させて逆方向に電流を供給することにより、可動部12の移動が反転する。このように、電圧を反転させてコイル14に電圧を印加することにより、可動部12が振動する。また、可動部12の振動に伴って筐体11(携帯電話100)も振動する。
【0024】
そして、コイル14に正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧を印加することにより、リニアモータ1が設けられる携帯電話100を把持した場合に、可動部12の振動によって、所定の方向に引っ張られるような擬似力覚(牽引感覚)が得られる。さらに、コイル14に印加する電圧を反転させることにより、容易に、携帯電話100を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を変化させることが可能である。
【0025】
次に、図3および図4を参照して、第1実施形態によるリニアモータ1のコイル14に印加する電圧を算出する方法について説明する。
【0026】
図3に示すように、リニアモータ1の理想的な加加速度(実線)の形状を仮定する。ここでは、1周期がT(sec)であり、加加速度の最大値がGP(G/s)であるとともに加加速度の最小値がGN(G/s)である矩形波からなる加加速度を仮定する。また、加加速度の最大値の絶対値|GP|は、加加速度の最小値の絶対値|GN|よりも大きい(|GP|>|GN|)と仮定する。また、加加速度の向きが正側になる時間よりも、負側になる時間の方が長くなると仮定する。また、加加速度の1周期において、加加速度の向きが正側である領域の面積S1と、負側である領域の面積S2とが略等しくなるように、理想的な加加速度の形状が仮定されている。
【0027】
次に、図3に示される矩形波からなる加加速度(実線)を、フーリエ級数展開することにより、下記の式(1)を得る。
【0028】
【数1】
【0029】
また、加加速度は、変位y(t)の時間についての3階微分(d3y(t)/dt3)であるので、フーリエ級数展開を用いて求められた加加速度を3階積分することにより、三角関数の和で表わされる変位y(t)を求める。
【0030】
また、リニアモータ1のコイル14に印加される電圧V(t)と、図3に示される加加速度から求められる変位y(t)との関係を、リニアモータ1の伝達関数Gy(S)を用いた関係式(下記式(2))によって表わす。
【0031】
【数2】
【0032】
また、伝達関数Gy(S)を、リニアモータ1の電圧方程式(下記式(3))、可動部12の運動方程式(下記式(4))、および、筐体11の運動方程式(下記式(5))を用いて求める。
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、yおよびxは、それぞれ、筐体11および可動部12の変位を表す。また、Mおよびmは、それぞれ、筐体11の質量および可動部12の質量を表す。また、k1およびk2は、それぞれ、バネ部13aのバネ定数およびバネ部13bのバネ定数を表す。また、κ1およびκ2は、それぞれ、バネ部13aの減衰係数およびバネ部13bの減衰係数を表す。また、V(t)およびI(t)は、それぞれ、電圧および電流を表す。また、RおよびLは、それぞれ、コイルの抵抗およびコイルの自己インダクタンスを表す。また、KeおよびKfは、それぞれ、誘起電圧定数および推力定数を表す。
【0035】
そして、電圧方程式および運動方程式から求められた伝達関数Gy(S)を、上記変位y(t)と電圧V(t)と間の関係式(上記式(2))に代入することにより、たとえば図4に示すような電圧V(t)が求められる。
【0036】
次に、図3〜図5を参照して、理想的な矩形波から求められた電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度および加加速度について行った実験結果について説明する。
【0037】
図4に示す電圧V(t)は、上記理想的な矩形波からなる加加速度(図3参照)から求められたV(t)において、フーリエ級数展開の6次の項までを含めて計算して得られたものである。図4に示すように、電圧V(t)の波形は、非対称な形状を有していた。ここで非対称な電圧の波形とは、電圧が0の点に対して、電圧の波形が点対称(たとえば正弦波)になっていないことを意味する。具体的には、電圧V(t)の波形は、電圧の最大値が約3.7Vである一方、電圧の最小値が約−3.2Vとなっており、電圧の最大値の絶対値と最小値の絶対値とが異なっていた。
【0038】
次に、図4に示す電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合、図5に示すような加速度が得られた。加速度は、交流状に変化しており、加速度が0の点に対して略点対称な形状になった。また、加速度の最大値(約2G)と、加速度の最小値(約−2G)とは、略等しくなった。一方、加速度は、加速度の最小値の点(A1点)から、加速度の最大の点(B1点)までの傾きは比較的急峻になり、加速度の最大の点(B1点)から、加速度の最小の点(C1点)までの傾きは比較的緩やかになるノコギリ波形状になった。すなわち、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線D1に対して、直線D1の一方方向側と他方方向側とで加速度の波形の傾きの大きさの絶対値が異なった。
【0039】
そして、図5に示す加速度を時間で微分することにより、図3に示す加加速度(破線)が求められた。その結果、理想的な加加速度(実線)に沿うような加加速度(破線)が得られた。なお、フーリエ級数展開の7次以上の項を含めて電圧V(t)を算出することにより、計算によって得られる加加速度は、理想的な加加速度により近づくようになると考えられる。このように、理想的な矩形波の加加速度から電圧V(t)を算出し、算出した電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加することにより、リニアモータ1は、理想的な矩形波に近似した加加速度を発生することが確認された。
【0040】
次に、図6〜図9を参照して、正弦波を合成することにより得られた非対称な波形を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加した場合のリニアモータ1の加速度および加加速度について行った実験結果について説明する。
【0041】
図6に示すように、40Hzの正弦波からなる電圧と40Hzの正弦波と位相を異ならせた80Hzの正弦波からなる電圧とを合成することにより非対称な形状を有する電圧V(t)(破線)を形成した。この電圧V(t)を、リニアモータ1のコイル14に印加することにより、ノコギリ波形状の加速度(実線)が得られた。なお、図6に示す電圧V(t)の周波数は、43Hzである。加速度は、交流状に変化しており、加速度が0の点に対して略点対称な形状になった。また、加速度の最大値の絶対値(約3G)と、最小値の絶対値(約3G)とは、略等しくなった。一方、加速度が最小の点(A2点)から、最大の点(B2点)までの傾きは比較的緩やかになり、最大の点(B2点)から、最小の点(C2点)までの傾きは比較的急峻になった。すなわち、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線D2に対して、一方方向側と他方方向側とで加速度の波形の傾きの大きさの絶対値が異なった。
【0042】
次に、図6に示す加速度を時間で微分することにより、図7に示すように、加加速度が0の基準線に対して、非対称な形状を有する加加速度(実線)が求められた。具体的には、加加速度の最大値が約1000(G/s)であるとともに、最小値が約−1200G(G/s)であった。また、加速度(図6参照)が最小となる時間(A2点)から、最大になる時間(B2点)までの間の時間の長さt1は、加速度が最大になる時間(B2点)から、最小になる時間(C2点)までの間の時間の長さt2よりも大きく(t1>t2)なった。つまり、加加速度の向きが正側になる時間t1の方が、加加速度の向きが負側になる時間の長さt2よりも大きく(t1>t2)なった。なお、時間の長さt1は、時間の長さt2の約2.2倍となった。また、加加速度の向きが正側になる領域の面積S3と、加加速度の向きが負側になる領域の面積S4とは略等しくなった。そして、図7に示す加加速度(図6に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の負側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0043】
次に、図6に示す電圧V(t)の正負を反転させた電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加することにより、図8に示すようなノコギリ波形状の加速度(実線)が得られた。加速度は、交流状に変化しており、加速度が0の点に対して略点対称な形状になった。また、加速度の最大値の絶対値(約2.5G)と、最小値の絶対値(約2.5G)とは、略等しくなった。一方、加速度が最小の点(A3点)から、最大の点(B3点)までの傾きは比較的急峻になり、最大の点(B3点)から、最小の点(C3点)までの傾きは比較的緩やかになった。すなわち、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線D3に対して、直線D3の一方方向側と他方方向側とで加速度の波形の傾きの大きさの絶対値が異なった。
【0044】
次に、図8に示す加速度を時間で微分することにより、図9に示すように、加加速度が0の基準線に対して、非対称な形状を有する加加速度(実線)が求められた。具体的には、加加速度の最大値が約1100(G/s)であるとともに最小値が約−600G(G/s)であった。また、加速度(図7参照)が最大になる時間(B3点)から、最小になる時間(C3点)までの間の時間の長さt3は、加速度が最小になる時間(A3点)から、最大になる時間(B3点)までの間の時間の長さt4よりも大きく(t3>t4)なった。つまり、加加速度の向きが負側になる時間t3の方が、加加速度の向きが正側になる時間の長さt4よりも大きく(t3>t4)なった。なお、時間の長さt3は、時間の長さt4の約2.2倍となった。また、加加速度の向きが負側になる領域の面積S5と、加加速度の向きが正側になる領域の面積S6とは略等しくなった。そして、図9に示す加加速度(図8に示す加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100を把持した場合、加加速度の正側に擬似力覚(牽引感覚)を得られることが確認された。
【0045】
次に、図10〜図13を参照して、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にするための電圧V(t)の周波数の調整方法について説明する。なお、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にすることにより、リニアモータ1(携帯電話100)を把持した場合に得られる擬似力覚が最大になる。
【0046】
まず、図10に示すステップS1において、基本周波数f(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。たとえば、図11に示すように、40Hzの周波数を有する非対称な形状を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。なお、基本周波数f(Hz)は、リニアモータ1が配置される携帯電話100の重量や形状、ならびに、携帯電話100におけるリニアモータ1の配置位置などに応じて設計される周波数である。
【0047】
次に、ステップS2において、加速度センサ6(図1参照)により、携帯電話100の振動の加速度を測定する。そして、加速度センサ6によって測定された加速度が、ADC5を介してDSP4に入力される。そして、たとえば図12に示すような加速度が0の基準線に対して非対称なノコギリ波形状ではない加速度が得られたとする。具体的には、加速度の正側のA4点から負側のピーク(B4点)に向かう加速度の傾きの大きさの絶対値と、負側のピーク(B4点)から正側のC4点に向かう加速度の傾きの大きさの絶対値とは、略等しくなっている。つまり、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形が、加速度の波形のピークを通る直線D4に対して、一方方向側の傾きの絶対値と、他方方向側の傾きの絶対値とが略等しくなっている。
【0048】
次に、ステップS3において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。たとえば、図12に示す加速度を時間で微分することにより、図13に示すような加加速度が得られる。ここで、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、向きが負側になる時間の長さとの差(時間差A)を算出しておく。なお、図13に示す加加速度では、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差は、比較的小さくなっている。
【0049】
次に、ステップS4において、基本周波数f(Hz)よりも1(Hz)大きい周波数f+1(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。そして、ステップS5において、加速度センサ6により、携帯電話100の振動の加速度を測定するとともに、加速度センサ6によって測定された加速度が、ADC5を介してDSP4に入力される。そして、ステップS6において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。ここで、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、向きが負側になる時間の長さとの差(時間差B)を算出しておく。
【0050】
次に、ステップS7において、基本周波数f(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差A)と、基本周波数f+1(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差B)との大きさを比較する。ここで、時間差Aが時間差B以下と判断された場合、ステップS8に進んで、基本周波数f(Hz)の時間差Bの値を時間差Aの値に置き換える。その後、ステップS4に戻る。また、ステップS7において、時間差Aが時間差Bよりも大きいと判断された場合、ステップS9に進んで、周波数f−1(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。次に、ステップS10において、加速度センサ6(図1参照)により、携帯電話100の振動の加速度を測定する。そして、ステップS11において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。ここで、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、向きが負側になる時間の長さとの差(時間差C)を算出しておく。
【0051】
次に、ステップS12において、周波数f(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差A)と、周波数f−1(Hz)の電圧V(t)を印加した場合の加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差(時間差C)との大きさを比較する。ここで、時間差Aが時間差C以下と判断された場合、ステップS13に進んで、基本周波数f(Hz)の時間差Cの値を時間差Aの値に置き換える。その後、ステップS9に戻る。また、ステップS12において、時間差Aが時間差Bよりも大きいと判断された場合、ステップS14に進んで、周波数f(Hz)を用いることが決定される。
【0052】
上記のように、ステップS1〜ステップS8(ステップS9〜ステップS13)の動作を繰り返すことにより、基本周波数f(Hz)が徐々に大きくなる(小さくなる)とともに、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差が大きくなる。たとえば、図7に示す43Hzの電圧を印加した場合の加加速度のように、図13に示す40Hzの電圧を印加した場合の加加速度に比べて、加加速度の向きが正になる時間の長さと、向きが負になる時間の長さとの差が大きくなる。一方、基本周波数f(Hz)がある大きさを超えると、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差が逆に小さくなってゆく。そして、ステップS12において、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差が大きくなっていた状態から逆に小さくなる状態に移行したと判断された場合に、加加速度の向きが正側になる時間の長さと向きが負側になる時間の長さとの差の最大値が求められたとして、電圧V(t)の周波数の調整を終了する。
【0053】
第1実施形態によるリニアモータ100では、以下の効果を得ることができる。
【0054】
(1)コイル14と、コイル14が発生する磁界により往復移動する可動部12と、可動部12が収納されるとともに可動部12の往復移動によって振動する筐体11と、可動部12と筐体11との間に設けられるバネ部13aおよび13bとを設けた。そして、コイル14に、波形が非対称な交流状の電圧を印加して、筐体11の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して正側と負側とで非対称になるように構成した。これにより、コイル14に印加する電圧の波形を反転させた場合、コイル14に印加する電圧の波形が非対称であるので、電圧の波形の反転の前後において、リニアモータ1(携帯電話100)を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を変化させることができる。
【0055】
(2)リニアモータ1の筐体11(携帯電話100)の振動方向の加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと、加加速度の向きが負側になる時間の長さとが異なるように構成した。これにより、リニアモータ1(携帯電話100)を把持した場合、リニアモータ1の振動方向の一方方向側に牽引される場合の緩急の感覚と、他方方向側に牽引される場合の緩急の感覚とを異ならせることができる。その結果、加加速度の向きが正側になる時間の長さと、加加速度の向きが負側になる時間の長さとが等しい場合と異なり、リニアモータ1を把持した場合の擬似力覚をより大きくすることができる。なお、リニアモータ1の振動方向の加速度の波形を、加速度が0の基準線に対して非対称(たとえば正側の加速度の大きさと負側の加速度の大きさとを異ならせる)ことによっても、振動方向の一方方向側または他方方向側に牽引されるような擬似力覚を得ることが可能である。一方、加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと、加加速度の向きが負側になる時間の長さとが異なるように構成することにより、正側の加速度の大きさと負側の加速度の大きさとが等しい場合でも、リニアモータ1を把持した場合に擬似力覚を得ることができる。
【0056】
(3)加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側(負側)になる時間の長さは、加加速度の向きが負側(正側)になる時間の長さの2倍以上になるように構成した。これにより、振動方向の一方方向側に牽引される場合の緩急の感覚と、他方方向側に牽引される場合の緩急の感覚とを確実に異ならせることができるので、リニアモータ1を把持した場合に擬似力覚を確実に得ることができる。
【0057】
(4)筐体11(携帯電話100)の振動方向の加加速度の波形を、コイル14に印加する電圧V(t)の周波数を徐々に変化させることにより、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正側になる時間の長さと加加速度の向きが負側になる時間の長さとの差が最大になるように調整するように構成した。これにより、擬似力覚が最大になるように電圧V(t)の周波数を最適化することができる。
【0058】
(5)筐体11(携帯電話100)の振動方向の加加速度の波形を、加加速度が0の基準線に対して正側の加加速度の絶対値の最大値と負側の加加速度の絶対値の最大値とが異なるように構成した。これにより、リニアモータ1を把持した場合、リニアモータ1の振動方向の一方方向側に牽引される場合の擬似力覚の大きさと、他方方向側に牽引される場合の擬似力覚の大きさとを異ならせることができるので、リニアモータ1を把持した場合に擬似力覚を得ることができる。
【0059】
(6)筐体11の振動方向の加速度の波形を、加速度の波形のピークを通る直線に対して、一方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値と、他方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値とが異なるように構成した。これにより、加速度の大きさが最大値に達するまでの擬似力覚の緩急と、加速度の大きさが最大値から小さくなる場合の擬似力覚の緩急とを異ならせることができる。
【0060】
(7)携帯電話100に固定的に取り付けられる加速度センサ6を設けて、加速度センサ6によって測定される携帯電話100の加速度から加加速度を算出するようにした。そして、加速度センサ6によって測定された加速度から算出される加加速度に基づいて、コイル14に印加する電圧の周波数を変化させるように構成した。これにより、実際の使用状態における携帯電話100の加速度を加速度センサ6により得ることができるので、携帯電話100の持ち方やストラップなどを取り付けたことによる携帯電話100の重量変化に対応した所望の擬似力覚を得ることができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、図14および図15を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、リニアモータ1が円筒状の永久磁石からなる可動部12を有する上記第1実施形態と異なり、平板状の永久磁石からなる可動部22を有するリニアモータ1aについて説明する。なお、リニアモータ1aは、本発明の「振動デバイス」の一例である。
【0062】
第2実施形態によるリニアモータ1aは、図14および図15に示すように、枠体21と、枠体21内に収納された可動部22と、可動部22を支持する一対のバネ部23aおよび23bと、可動部22と対向するように配置された平面コイル24とを備えている。なお、リニアモータ1aは、本発明の「振動デバイス」の一例である。また、枠体21は、本発明の「筐体」の一例である。また、平面コイル24は、本発明の「コイル」の一例である。
【0063】
図14および図15に示すように、可動部22は、平板状の永久磁石(フェライトやネオジウムなどの強磁性材料からなる磁石)により構成されている。また、可動部22は、平面的に見て、枠体21の略中央に位置するように一対のバネ部23aおよび23bにより側面が支持されている。
【0064】
図15に示すように、可動部22は、第1磁石221および第2磁石222からなる2つの永久磁石により構成されている。第1磁石221は、矢印Z1方向側にN極面221aを有するとともに、矢印Z2方向側にS極面221bを有する。また、第2磁石222は、矢印Z1方向側にS極面222aを有するとともに、矢印Z2方向側にN極面222bを有する。第1磁石221と第2磁石222とは、接着剤などにより固定されている。
【0065】
バネ部23aおよび23bは、板バネやコイルバネなどからなる。また、バネ部23aおよび23bは、それぞれ、同じ材料からなり、同じバネ特性を有する。また、枠体21および可動部22は、可動部22の往復移動の中心線に対して、略対称な形状を有する。これにより、リニアモータ1aは、全体として可動部22の往復移動の中心線に対して、構造的に略対称な形状を有する。
【0066】
図15に示すように、平面コイル24は、可動部22に対向するように枠体21の内部に配置されている。平面コイル24には、正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧が印加されるように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
次に、図14および図15を参照して、第2実施形態によるリニアモータ1aの往復移動の動作を説明する。
【0068】
まず、平面コイル24に電圧を印加して、電流を供給する。これにより、平面コイル24に磁界が発生する。そして、平面コイル24と、第1磁石221と第2磁石222とのうちの一方との間に引力が働くとともに、他方との間に斥力が働く。これにより、可動部22が、X方向に沿って移動する。また、平面コイル24に印加する電圧の正負を反転させることにより、平面コイル24に逆方向に電流を供給する。これにより、可動部22の移動方向が反転する。このように、電圧を反転させて平面コイル24に電圧を印加することにより、可動部22が振動する。また、可動部22の振動に伴って枠体21(リニアモータ1a)も振動する。
【0069】
そして、平面コイル24に正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧を印加することにより、リニアモータ1aが設けられる携帯電話100を把持した場合に、可動部22の振動によって、所定の方向に引っ張られるような擬似力覚(牽引感覚)が得られる。さらに、平面コイル24に印加する電圧を反転させることにより、容易に、携帯電話100を把持した場合に得られる擬似力覚の方向を変化させることが可能である。
【0070】
また、第2実施形態の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
(第3実施形態)
次に、図16および図17を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、加速度センサ6を携帯電話100の内部に設けた上記第1実施形態とは異なり、加速度センサ6を含むアタッチメント300をゲーム機200の外部に取り付けた例について説明する。なお、ゲーム機200は、本発明の「電子機器」の一例である。
【0072】
第3実施形態によるゲーム機200本体には、図16に示すように、液晶表示部201と、十字状の操作キー202と、4つの操作ボタン203とが設けられている。また、ゲーム機200の上面および背面と接触するように、アタッチメント300が取り付けられている。
【0073】
アタッチメント300には、図17に示すように、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1(X軸用振動デバイス)と、Y軸方向に振動を発生させるリニアモータ1(Y軸用振動デバイス)とが設けられている。上記のように、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1と、Y軸方向に振動を発生させるリニアモータ1とを設けることにより、アタッチメント300(ゲーム機200)をX方向とY方向との2軸方向に振動させることが可能である。
【0074】
また、アタッチメント300には、X軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6が設けられている。X軸用の加速度センサ6は、リニアモータ1およびゲーム機200のX方向の振動(加速度)を測定する機能を有する。Y軸用の加速度センサ6は、リニアモータ1およびゲーム機200のY方向の振動(加速度)を測定する機能を有する。また、X軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6は、図示しないADCに接続されるとともに、ADCは、DSPに接続されている。DSPは、DACに接続されるとともに、DACは、アンプに接続されている。アンプは、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1およびY軸方向に振動を発生させるリニアモータ1に接続されている。
【0075】
X軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6によって測定されたリニアモータ1の加速度の情報は、ADCを介してDSPに入力される。また、DSPは、入力された加速度の情報に基づいて、加速度の微分値である加加速度を算出するとともに、加加速度に基づいてDACおよびアンプを介して、X軸方向に振動を発生させるリニアモータ1およびY軸方向に振動を発生させるリニアモータ1に電圧を供給するように構成されている。なお、ゲーム機200本体の内部に加速度センサが内蔵されている場合には、アタッチメント300にX軸用の加速度センサ6およびY軸用の加速度センサ6を設けなくてもよい。
【0076】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
(第4実施形態)
次に、図18および図19を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、加速度を測定する加速度センサ6を備える携帯電話100を示した上記第1実施形態とは異なり、位置を検出するホール素子6aを備える携帯電話100aについて説明する。なお、ホール素子6aは、本発明の「検出器」の一例であり、携帯電話100aは、本発明の「電子機器」の一例である。
【0078】
第4実施形態による携帯電話100aの内部には、リニアモータ1と、LSI(大規模集積回路)7とが設けられている。このLSI7は、アンプ2と、DAC3と、DSP4と、ADC5と、ホール素子6aとを含んでいる。また、ホール素子6aは、リニアモータ1(携帯電話100a)の位置を検出する機能を有する。ホール素子6aによって検出されたリニアモータ1の位置の情報は、ADC5を介してDSP4に入力される。また、DSP4は、入力された位置の情報に基づいて、位置の微分値である速度を算出し、速度の微分値である加速度を算出するように構成されている。そして、加速度の微分値である加加速度を算出するとともに、加加速度に基づいてDAC3およびアンプ2を介してリニアモータ1に電圧を供給するように構成されている。なお、DSP4は、携帯電話100aの制御部(図示せず)から、リニアモータ1の牽引方向、強度および作動間隔などの作動情報を受け取るように構成されており、作動情報に基づいて上記した加加速度に基づく電圧をコイル14に供給するように構成されている。
【0079】
次に、図20のフローチャートを参照して、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にするための電圧V(t)の周波数の調整方法について説明する。なお、リニアモータ1の加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にすることにより、リニアモータ1(携帯電話100a)を把持した場合に得られる擬似力覚が最大になる。
【0080】
まず、図20に示すステップS1において、上記第1実施形態と同様に、基本周波数f(Hz)を有する電圧V(t)をリニアモータ1のコイル14に印加する。
【0081】
次に、ステップS20において、ホール素子6aにより、携帯電話100aの位置を検出する。そして、ホール素子6aによって検出された位置の情報が、ADC5を介してDSP4に入力される。
【0082】
次に、ステップS2において、位置の情報を時間で微分して速度を求めた後に、加速度を求める。そして、ステップS3において、加速度を時間で微分して加加速度を求める。その後、上記第1実施形態と同様に、ステップS4〜ステップS8およびステップS9〜ステップS13を順次行う。なお、ステップS5およびステップS10では、特に図示していないが、上記したステップS20と同様に、位置の情報を時間で微分して速度を求めた後に、加速度を求めている。そして、こうしたフローに沿って、上記第1実施形態と同様に、電圧V(t)の周波数の調整が行われ、最終的にステップS14に進んで、周波数f(Hz)を用いることが決定される。なお、ユーザの携帯電話100aの把持の仕方の変化等による最適周波数の変化に対応させるためにリニアモータ1のコイル14に出力される加加速度を間欠的(所定の周期毎)にモニターしておき、出力される加加速度が所定の値より(ある割合以上)低下した場合に、電圧V(t)の周波数の調整をステップS1からやり直すように制御してもよい。また、出力される加加速度が所定の値より(ある割合以上)低下したか否かにかかわらず、間欠的(所定の周期毎)に強制的に電圧V(t)の周波数の調整をステップS1からやり直すように制御してもよい。
【0083】
なお、第4実施形態のその他の構成、電圧V(t)の周波数の調整方法および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0084】
(第5実施形態)
次に、図21を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態では、加速度センサ6により測定される加速度に基づいて、リニアモータ1のコイル14に印加される電圧を導出(算出)するように構成された携帯電話100を示した上記第1実施形態とは異なり、リニアモータ1のインピーダンスから得られるリニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)に基づいてリニアモータ1のコイル14に印加される電圧を導出(算出)するように構成された携帯電話100bについて説明する。なお、携帯電話100bは、本発明の「電子機器」の一例である。
【0085】
第5実施形態による携帯電話100bの内部には、リニアモータ1と、アンプ2と、デジタル/アナログコンバータ(DAC)3と、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)5と、制御部8と、抵抗9とが設けられている。また、リニアモータ1は、アンプ2と、ADC5と、抵抗9とに接続されている。アンプ2は、DAC3と、ADC5と、抵抗9とに接続されている。DAC3は、制御部8に接続されている。制御部8は、ADC5に接続されている。
【0086】
また、制御部8は、ADC5を介して抵抗9の両端の電位差や抵抗9に流れる電流値を取得可能に構成されている。制御部8は、ADC5を介して取得した抵抗9の両端の電位差や抵抗9に流れる電流値に基づいて、リニアモータ1のインピーダンスを算出可能に構成されている。また、制御部8は、リニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)を取得可能に構成されている。制御部8は、振動に関する3つのパラメータに基づいて、ユーザにより携帯電話100bが把持された場合に、疑似力覚(牽引感覚)が得られるように波形が正側と負側とで非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成されている。
【0087】
次に、図22〜図24を参照して、リニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)を取得する方法、および、3つのパラメータに基づいてリニアモータ1のコイル14に印加される電圧を導出(算出)する方法について説明する。
【0088】
まず、制御部8は、リニアモータ1の振動(スピード)が最も大きくなる共振周波数ω0を取得(特定)するために、図22に示すように、リニアモータ1のコイル14に20Hz以上100Hz以下の周波数の範囲において、0.5Hzの間隔で電圧を変化させながら順次印加(スキャン)する。そして、制御部8が、電圧を印加するのと同時に20Hz以上100Hz以下の周波数の範囲におけるインピーダンスを算出することにより、図22に示す波形(インピーダンスカーブ)が取得されたとする。
【0089】
図22に示す波形は、横軸が周波数[Hz]を示しており、縦軸がインピーダンス[Ω]を示している。周波数が20Hz以上40Hz以下の範囲では、インピーダンスは、39Ω以上42Ω以下の範囲の大きさになっている。また、周波数が40Hz以上47Hz以下の範囲では、インピーダンスが42Ωから47Ωへと急激に上昇している。そして、47Hzの周波数において、インピーダンスが最大(47Ω)となっている。なお、リニアモータ1は、リニアモータ1の振動(スピード)が最も大きくなる際に、リニアモータ1に発生する逆起電力が最も大きくなるため、リニアモータ1のインピーダンスが最も大きくなる。つまり、インピーダンスが最大(47Ω)となる周波数(47Hz)が、リニアモータ1の振動(スピード)が最も大きくなる共振周波数ω0となる。また、周波数が47Hz以上53Hz以下の範囲では、インピーダンスは、47Ωから42Ωへと急激に低下している。また、周波数が53Hz以上100Hz以下の範囲では、インピーダンスは、42Ω以下40Ω以上の範囲の大きさになる。
【0090】
そして、制御部8は、図22に示す波形をカーブフィッティングすることにより、リニアモータ1の共振周波数ω0(47Hz)、減衰定数κおよび推力定数BLを同時に算出(取得)する。また、制御部8は、共振周波数ω0を有する正弦波、共振周波数の2倍の周波数2ω0を有する正弦波および共振周波数の3倍の周波数3ω0を有する正弦波を算出する。
【0091】
次に、周波数ω0、2ω0および3ω0を有する正弦波をリニアモータ1に入力した際の各周波数ω0、2ω0および3ω0毎のリニアモータ1の加速度と、各周波数ω0、2ω0および3ω0を有する正弦波の位相差とを共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BLの3つのパラメータに基づいて算出する。そして、制御部8は、各周波数ω0、2ω0および3ω0毎のリニアモータ1の加速度比が1:0.25:0.042となるように振幅調整(電圧値を算出)するとともに、各周波数ω0(電圧値の1次の成分に該当)、2ω0(電圧値の2次の成分に該当)および3ω0(電圧値の3次の成分に該当)を有する正弦波の位相差が0度となるように電圧値(正弦波)を合成する。これにより、図23に示すように、電圧が0の基準線に対して、正側と負側とで非対称な波形を有する交流状の電圧(破線)が導出(算出)される。
【0092】
また、図23に示すように、制御部8により導出(算出)された電圧をリニアモータ1のコイル14に入力(供給)した際に発生する加速度(実線)は、加速度が0の基準線に対して、略正弦波状の波形となる。また、加速度の正側の最大値の絶対値は、0.8Gであるとともに、加速度の負側の最大値の絶対値は、1.0Gであった。
【0093】
また、図23に示す加速度を時間で微分することにより、図24に示すように、加加速度が0の基準線に対して、非対称な形状を有する加加速度(実線)が求められる。具体的には、加加速度の正側の最大値の絶対値が300G/sであるとともに、加加速度の負側の最大値の絶対値が350G/sであった。なお、図24に示す加加速度(図23に示す電圧および加速度)の波形を有するリニアモータ1が設けられた携帯電話100bを把持した場合、正側の加加速度の最大値の絶対値よりも負側の加加速度の最大値の絶対値の方が大きいので、加加速度の負側に擬似力覚(牽引感覚)が得られる。
【0094】
第5実施形態によるリニアモータ100bでは、以下の効果を得ることができる。
【0095】
(8)リニアモータ1の振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)を取得可能に構成するとともに、振動に関する3つのパラメータに基づいて波形が非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成した。これにより、上記第3および第4実施形態とは異なり、リニアモータ1の加速度を検出する加速度センサやリニアモータ1の位置情報を検出するホール素子を設けなくてよいので、その分、携帯電話100bの構造を簡素化することができる。
【0096】
(9)リニアモータ1に対して周波数を0.5Hzの間隔で交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得される振動に関する3つのパラメータ(共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BL)に基づいて、波形が非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成した。これにより、周波数の大きさに対するインピーダンスの大きさに関する波形(インピーダンスカーブ)を容易に取得することができるので、取得した波形に基づいて振動に関する3つのパラメータを容易に得ることができる。
【0097】
(第6実施形態)
次に、図22および図25を参照して、第6実施形態について説明する。この第6実施形態では、0.5Hzの間隔で電圧を変化させながら順次印加(スキャン)することによりインピーダンスを取得した第5実施形態とは異なり、2.0Hzの間隔で電圧の印加(スキャン)を行った後に、0.5Hzの間隔で電圧の印加(スキャン)を行った結果からインピーダンスを取得する方法について説明する。なお、2.0Hzの間隔は、本発明の「第1の間隔」の一例であり、0.5Hzの間隔は、本発明の「第2の間隔」の一例である。また、第6実施形態の構成は、上記第5実施形態と同様である。
【0098】
第6実施形態では、制御部8は、20Hz以上100Hz以下の周波数の範囲において、最初に2.0Hzの粗い間隔で電圧を印加(スキャン)する。これにより、周波数に対するインピーダンスの大きさについての概略波形が取得される。次に、制御部8は、取得された概略波形からインピーダンスが最大となる周波数の近傍の周波数(たとえば、図22に示す45Hz以上49Hz以下の範囲)を0.5Hzの細かい間隔で電圧を印加(スキャン)する。これにより、インピーダンスが最大となる周波数の近傍の詳細な波形が得られるので、詳細な波形からインピーダンスが最大(47Ω)となる周波数(47Hz、共振周波数ω0)が得られる。
【0099】
次に、制御部8は、インピーダンスが最大となる共振周波数ω0からリニアモータ1の減衰定数κを算出する。具体的には、図25に示すように、制御部8は、共振周波数ω0を有する電圧(破線)をリニアモータ1のコイル14に所定の時間印加する。この際、リニアモータ1のコイル14には、コイル14に印加している電圧の方向とは反対方向に逆起電力(実線)が発生する。そして、制御部8は、時間Aにおいて、リニアモータ1のコイル14に電圧を印加するのを停止する。このとき、リニアモータ1のコイル14に発生していた逆起電力(実線)は、時間の経過に伴って、急激に減衰(収束)する。この逆起電力の減衰(収束)する波形(包絡線)の時定数からリニアモータ1の減衰定数κが算出される。
【0100】
次に、制御部8は、減衰定数κから推力定数BLを算出する。具体的には、制御部8は、算出された減衰定数κを推力定数BLの式(BL=(2κ(Z−R))0.5)(なお、κは減衰定数、Zは共振周波数ω0におけるコイル14のインピーダンス、Rはコイル14の抵抗値である)に代入することにより、推力定数BLを算出する。なお、共振周波数ω0、減衰定数κおよび推力定数BLに基づいて、リニアモータ1のコイル14に印加する非対称な波形を有する交流状の電圧を算出する方法は、上記第5実施形態と同様である。
【0101】
第6実施形態によるリニアモータ100bでは、以下の効果を得ることができる。
【0102】
(10)リニアモータ1に対して周波数を2.0Hzの粗い間隔で交流状の電圧を入力することにより得られる波形のうち、インピーダンスが最大となる周波数(47Hz)の近傍(ピークに対応する波形の周波数近傍)の周波数を0.5Hzの細かい間隔で交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得されるパラメータ(共振周波数ω0)に基づいて、波形が非対称な交流状の電圧を導出(算出)するように構成した。これにより、インピーダンスが最大となる周波数近傍(45Hz以上49Hz以下の範囲)以外の範囲も0.5Hzの細かい間隔で入力してパラメータを取得する場合と比べて、インピーダンスが最大となる周波数近傍(45Hz以上49Hz以下の範囲)以外の範囲を0.5Hzの細かい間隔でスキャンしない分、パラメータを取得する時間を短縮することができる。
【0103】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0104】
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、理想的な加加速度の波形として矩形状の波形を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して非対称であればよい。
【0105】
また、上記第1〜第6実施形態では、加加速度の最大値の絶対値と最小値の絶対値とが異なる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、加加速度の最大値の絶対値と最小値の絶対値とが同じであっても、加加速度の波形が、加加速度が0の基準線に対して非対称であればよい。
【0106】
また、上記第1〜第6実施形態では、可動部の移動方向に沿った方向の一方側と他方側とにそれぞれバネ部が配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、可動部の移動方向に沿った方向の一方側または他方側のいずれか一方にだけバネ部を配置してもよい。
【0107】
また、上記第1〜第6実施形態では、リニアモータが可動部の往復移動の中心線に対して構造的に略対称な形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、可動部の往復移動の中心線に対して構造的に非対称な形状を有するリニアモータにも適用可能である。なお、こうした場合には、少なくとも上記(7)の効果を享受することができる。
【0108】
また、上記第1〜第6実施形態では、リニアモータを携帯電話またはゲーム機に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リニアモータを、ゲームパッド、携帯ゲーム機器あるいは携帯型音楽プレーヤなどに設けてもよい。
【0109】
また、上記第1〜第6実施形態では、1つのリニアモータを携帯電話に設け、2つのリニアモータをアタッチメントを介してゲーム機に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、2つ以上のリニアモータを携帯電話に設けてもよいし、3つ以上のリニアモータをアタッチメントを介してゲーム機に設けてもよい。
【0110】
また、上記第1〜第6実施形態では、入力された位置の情報に基づいて、位置の微分値である速度を算出するとともに、速度の微分値である加速度を算出し、加速度の微分値である加加速度を算出するDSPや制御部を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、速度、加速度および加加速度を算出することが可能であれば、マイコン(マイクロコンピュータ)やロジック回路などでも適用可能である。
【0111】
また、上記第1〜第4実施形態では、加加速度(加速度)の計算を行うとともに、リニアモータのコイルに電圧を印加する回路(DSP)をデジタル回路により構成したが、本発明はこれに限られない。たとえば、オペアンプを用いた発振回路やRC微分回路などのアナログ回路により構成してもよい。
【0112】
また、上記第3実施形態では、アタッチメントに設けられた加速度センサによりゲーム機の加速度を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ユーザがゲーム機などを把持している状態において、腕などに取り付けられた加速度センサによりゲーム機の加速度を測定してもよい。
【0113】
また、上記第4実施形態では、ホール素子により携帯電話の位置を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リニアモータのコイルに発生する逆起電力(電圧や電流など)を検出することにより、携帯電話の位置を検出してもよい。
【0114】
また、上記第1〜第6実施形態では、リニアモータのコイルに印加される電圧V(t)の周波数の調整方法として、加加速度の向きが正側である時間と負側である時間との差を最大にする方法を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、加加速度(加速度)の正側の絶対値と負側の絶対値の差を最大にするように調整してもよいし、加速度(速度)の正側の傾きと負側の傾きの差を最大にするように調整してもよい。
【0115】
また、上記第1〜第4実施形態では、携帯電話またはゲーム機の牽引感覚を最適に制御する方法として、コイルに印加する電圧の周波数を変化させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、コイルに印加する電圧の大きさ(電圧値)を変化させることにより、携帯電話またはゲーム機の牽引感覚を最適に制御してもよい。
【0116】
また、上記第1〜第4実施形態では、携帯電話またはゲーム機の牽引感覚を最適に制御する方法として、コイルに印加する電圧の周波数を変化させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図26および図27に示すように、電圧の波形の位相差を変化させることにより牽引感覚を最適に制御してもよい。図26では、周波数fHzの正弦波(破線)の位相と、周波数fHzの2倍の周波数の2fHzの正弦波(一点鎖線)の位相とは、同じ状態である。また、周波数fHzの正弦波(破線)の位相と、周波数fHzの2倍の周波数の2fHzの正弦波(一点鎖線)の位相とを、45度ずらした場合、図27に示すような、図26とは異なる電圧の合成波形が得られる。このように、電圧の波形の位相差を変化させて所望の合成波形(入力波形)をリニアモータのコイルに入力してもよい。
【0117】
また、上記第1実施形態では、加速度センサによって検出された加速度から加加速度を算出し、その加加速度に基づいてコイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、加速度の波形が、加速度が0の基準線に対して非対称の場合には、加速度センサによって検出された加速度に基づいてコイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させるようにしてもよい。これにより、携帯電話の持ち方やストラップなどを取り付けたことによる携帯電話の重量変化に対応した所望の擬似力覚を得ることが可能である。
【0118】
また、上記第5および第6実施形態では、本発明の振動に関するパラメータの一例として、共振周波数、減衰定数および推力定数の3つのパラメータを示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、振動に関するパラメータであれば、共振周波数、減衰定数および推力定数以外のパラメータでもよい。
【0119】
また、上記第5実施形態では、リニアモータに対して周波数を0.5Hzの間隔で入力する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、周波数に対するインピーダンスの大きさを取得可能であれば、0.5Hz以外の間隔で入力してもよい。
【0120】
また、上記第6実施形態では、最初にリニアモータに対して2.0Hzの間隔で入力し、次に、周波数の所望の範囲を0.5Hzの間隔で入力する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、周波数に対するインピーダンスの大きさを取得可能であれば、最初にリニアモータに対して2.0Hz以外の間隔で入力し、次に、周波数の所望の範囲を最初の周波数の間隔よりも細かい間隔で入力してもよい。
【符号の説明】
【0121】
1、1a リニアモータ(振動デバイス)
6 加速度センサ(検出器)
6a ホール素子(検出器)
11 筐体
12、22 可動部
13a、13b、23a、23b バネ部
14 コイル
21 枠体(筐体)
24 平面コイル(コイル)
100、100a、100b 携帯電話(電子機器)
200 ゲーム機(電子機器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、
前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、
前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを備え、
前記コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、
前記筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている、振動デバイス。
【請求項2】
前記筐体の振動方向の加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正または負の一方方向側になる第1時間の長さと、加加速度の向きが正または負の他方方向側になる第2時間の長さとが異なるように構成されている、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記筐体の振動方向の加加速度の波形は、前記コイルに印加する電圧の周波数を徐々に変化させることにより、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正または負の一方方向側になる前記第1時間の長さと加加速度の向きが正または負の他方方向側になる前記第2時間の長さとの差が最大になるように調整されるように構成されている、請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記筐体の振動方向の加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側の加加速度の絶対値の最大値と正または負の他方方向側の加加速度の絶対値の最大値とが異なるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記筐体の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線に対して、一方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値と、他方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値とが異なるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項6】
コイルと、前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを含み、前記コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、前記筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスと、
電子機器本体の位置または加速度を検出するための検出器とを備え、
前記検出器によって検出される前記電子機器本体の位置または加速度から加加速度を算出するように構成されており、前記加加速度に基づいて、前記コイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させるように構成されている、電子機器。
【請求項7】
前記検出器は、加速度センサを含み、
前記加速度センサによって測定される前記電子機器本体の加速度から前記加加速度を算出するように構成されている、請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記コイルに印加する電圧に関するパラメータは、電圧の周波数、電圧の大きさまたは電圧の合成波形の位相差を含む、請求項6または7に記載の電子機器。
【請求項9】
コイルと、前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを含み、前記コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、前記筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスを備え、
前記振動デバイスの振動に関するパラメータを取得可能に構成されているとともに、前記振動に関するパラメータに基づいて前記波形が非対称な交流状の電圧が導出されるように構成されている、電子機器。
【請求項10】
前記波形が非対称な交流状の電圧は、前記振動デバイスに対して周波数を徐々に変化させて交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得される前記振動に関するパラメータに基づいて導出されるように構成されている、請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記波形が非対称な交流状の電圧は、前記振動デバイスに対して周波数を第1の間隔で変化させて交流状の電圧を入力することにより得られる波形のうち、ピークに対応する波形の周波数近傍の周波数を前記第1の間隔よりも短い第2の間隔で変化させて交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得される前記振動に関するパラメータに基づいて導出されるように構成されている、請求項9に記載の電子機器。
【請求項12】
前記振動に関するパラメータは、前記振動デバイスの共振周波数、減衰定数および推力定数を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項1】
コイルと、
前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、
前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、
前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを備え、
前記コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、
前記筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている、振動デバイス。
【請求項2】
前記筐体の振動方向の加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正または負の一方方向側になる第1時間の長さと、加加速度の向きが正または負の他方方向側になる第2時間の長さとが異なるように構成されている、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記筐体の振動方向の加加速度の波形は、前記コイルに印加する電圧の周波数を徐々に変化させることにより、加加速度が0の基準線に対して加加速度の向きが正または負の一方方向側になる前記第1時間の長さと加加速度の向きが正または負の他方方向側になる前記第2時間の長さとの差が最大になるように調整されるように構成されている、請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記筐体の振動方向の加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側の加加速度の絶対値の最大値と正または負の他方方向側の加加速度の絶対値の最大値とが異なるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記筐体の振動方向の加速度の波形は、加速度の波形のピークを通る直線に対して、一方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値と、他方方向側の加速度の波形の傾きの大きさの絶対値とが異なるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項6】
コイルと、前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを含み、前記コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、前記筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスと、
電子機器本体の位置または加速度を検出するための検出器とを備え、
前記検出器によって検出される前記電子機器本体の位置または加速度から加加速度を算出するように構成されており、前記加加速度に基づいて、前記コイルに印加する電圧に関するパラメータを変化させるように構成されている、電子機器。
【請求項7】
前記検出器は、加速度センサを含み、
前記加速度センサによって測定される前記電子機器本体の加速度から前記加加速度を算出するように構成されている、請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記コイルに印加する電圧に関するパラメータは、電圧の周波数、電圧の大きさまたは電圧の合成波形の位相差を含む、請求項6または7に記載の電子機器。
【請求項9】
コイルと、前記コイルが発生する磁界により往復移動する可動部と、前記可動部が収納されるとともに前記可動部の往復移動によって振動する筐体と、前記可動部と前記筐体との間に設けられるバネ部とを含み、前記コイルには、波形が非対称な交流状の電圧が印加され、前記筐体の振動方向の加速度の微分値である加加速度の波形は、加加速度が0の基準線に対して正または負の一方方向側と正または負の他方方向側とで非対称になるように構成されている振動デバイスを備え、
前記振動デバイスの振動に関するパラメータを取得可能に構成されているとともに、前記振動に関するパラメータに基づいて前記波形が非対称な交流状の電圧が導出されるように構成されている、電子機器。
【請求項10】
前記波形が非対称な交流状の電圧は、前記振動デバイスに対して周波数を徐々に変化させて交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得される前記振動に関するパラメータに基づいて導出されるように構成されている、請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記波形が非対称な交流状の電圧は、前記振動デバイスに対して周波数を第1の間隔で変化させて交流状の電圧を入力することにより得られる波形のうち、ピークに対応する波形の周波数近傍の周波数を前記第1の間隔よりも短い第2の間隔で変化させて交流状の電圧を入力することにより得られる波形から取得される前記振動に関するパラメータに基づいて導出されるように構成されている、請求項9に記載の電子機器。
【請求項12】
前記振動に関するパラメータは、前記振動デバイスの共振周波数、減衰定数および推力定数を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
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【図16】
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【図18】
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【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−34561(P2012−34561A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216087(P2010−216087)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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