説明

振動子及び振動波駆動装置

【課題】電気−機械エネルギ変換素子と導通部品の機械的結合及び電気的接続において、振動子に振動を励起した時の機械的損失を少なくし、結合面の密着度合いを良好にすることを少ない部品点数で可能にした振動子及び振動波駆動装置を提供する。
【解決手段】振動波駆動装置の振動子は、振動体2、表面に電極を有し圧電素子4と電源の導通を行うフレキシブル基板2、表面に電極を有し電気量を機械量に変換する圧電素子4を備える。圧電素子4とフレキシブル基板2を、圧電素子4のパターン電極4aを有する面の一部と、フレキシブル基板2の電極を有さない面であるベース面の一部とにおいて、接着剤により結合する。圧電素子4とフレキシブル基板2は、接着剤により結合された各々の機械的結合面の少なくとも一方(フレキシブル基板2のベース面)が電極を有さない構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動が励起される振動子及び該振動子に励起した振動により物体を駆動する振動波駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動が励起される振動子に関する技術、或いは、振動子に励起される振動により被駆動体を駆動する振動波駆動装置に関する技術が数多く提案されている。例えば、電気量を機械量に変換する電気−機械エネルギ変換素子である圧電素子と、導通部品であるフレキシブル基板を、互いの表面の電極が接するように接着し、機械的結合と電気的接続を行う振動子がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電気−機械エネルギ変換素子である圧電素子を、絶縁皮膜を施していない導通部品である複数の導電性の導体を用いて挟持することで、機械的結合と電気的接続を行う振動子もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−67365号公報(第4頁、図1〜図4)
【特許文献2】特開平6−261562号公報(第4頁、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている振動子では、圧電素子及びフレキシブル基板それぞれの面の電極が有る部分と電極が無い部分とによる凹凸、或いは電極表面の面粗さによる凹凸が生じる。そのため、圧電素子とフレキシブル基板の接着に伴う接着層が厚くなってしまい、振動子に振動を励起した時の機械的損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献2に開示されている振動子では、圧電素子を挟持する複数の導体の厚さ寸法のバラツキや、圧電素子に対する導体取り付けのバラツキが生じる。そのため、前記バラツキが圧電素子及び導体間の結合面の密着具合に大きく影響し、振動子の振動特性を悪化させる恐れがある。更に、圧電素子を複数の導体で挟持する構造のために部品点数が多くなる結果、製造工程が煩雑化するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、電気−機械エネルギ変換素子と導通部品の機械的結合及び電気的接続において、振動子に振動を励起した時の機械的損失を少なくし、結合面の密着度合いを良好にすることを少ない部品点数で可能にした振動子及び振動波駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の振動子は、表面に電極を有し、電気量を機械量に変換する電気−機械エネルギ変換素子と、表面に電極を有し、前記電気−機械エネルギ変換素子に結合されると共に前記電気−機械エネルギ変換素子と電源との導通を行う導通部品とを備え、前記電気−機械エネルギ変換素子と前記導通部品との機械的結合面のうち少なくとも一方の機械的結合面が電極を有さないことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の振動波駆動装置は、振動子を備え、前記振動子に加圧接触された被駆動体を摩擦力による移動もしくは前記被駆動体に力の伝達を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気−機械エネルギ変換素子と導通部品との機械的結合面のうち少なくとも一方の機械的結合面が電極を有さないため、振動子に振動を励起した時の機械的損失を少なくすることが可能となる。また、複数の導通部品を用いることなく少ない部品点数で、電気−機械エネルギ変換素子と導通部品との機械的結合面の密着度合いを良好にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示す斜視図である。図2は、振動子の電極面を示す図である。
【0012】
図1及び図2において、振動波駆動装置は、接触体(不図示)を移動或いは接触体に力を伝達する装置であり、振動子を備える。振動子は、振動体1、フレキシブル基板2、圧電素子4から構成される。振動体1は、材質がステンレス鋼で円環形状に構成されており、一方の端面の周方向に沿って多数の突起が形成されている。フレキシブル基板2は、圧電素子4と電源(不図示)との導通を行う導通部品である。導電性塗料3は、圧電素子4と振動体1及びフレキシブル基板2とをそれぞれ電気的に接続する、銀を含有した導電性を有する塗料である。圧電素子4は、円環形状に構成されており、電気量(電圧)を機械量(振動)に変換する電気−機械エネルギ変換素子である。
【0013】
更に詳述すると、圧電素子4は、一方の端面のおおよそ全面に1つの電極(全面電極)が形成されており、他方の端面には図2に示すように所定個数(本実施の形態では16個 )の電極(パターン電極)4aが形成されている。振動体1は、接着剤により圧電素子4の上記全面電極を有する面と結合されると共に、電気的にも接続されている。
【0014】
フレキシブル基板2は、ベース2a、電極2b(共通グラウンド電極、センサ相電極、A相電極、B相電極)を備えており、多層構造を有する。フレキシブル基板2の一方の面(電極面)では、電極2bの一部が表面に露出しており(図2)、フレキシブル基板2の他方の面(ベース面)では、電極が露出しておらずベースのみとなっている(図1)。
【0015】
圧電素子4とフレキシブル基板2は、圧電素子4のパターン電極4aを有する面の一部と、フレキシブル基板2の電極を有さない面であるベース面の一部とにおいて、接着剤により結合されている。圧電素子4とフレキシブル基板2は、接着剤により結合された各々の機械的結合面に、少なくとも一方の面(本実施の形態ではフレキシブル基板2のベース面)が電極を有さない構造となっている。
【0016】
圧電素子4の16個のパターン電極4aのうち3個のパターン電極は、導電性塗料3により振動体1と電気的に接続されており、且つ、フレキシブル基板2の電極面の電極2b(共通グラウンド電極)とも電気的に接続されている。また、圧電素子4の16個のパターン電極4aのうち1個のパターン電極は、導電性塗料3によりフレキシブル基板2の電極面の電極2b(センサ相電極)とも電気的に接続されている。
【0017】
また、圧電素子4の16個のパターン電極4aのうち上記以外の12個のパターン電極は、2つのグループ(本実施の形態では図2の上半分の6個のグループと下半分の6個のグループ)に分けられている。12個のパターン電極は、導電性塗料3により各々のグループ内において電気的に接続され、且つ、フレキシブル基板2の電極面の電極2b(A相電極、B相電極)とも電気的に接続されている。
【0018】
次に、上記構成を有する本実施の形態の振動波駆動装置の駆動方法及び作用効果について説明する。
【0019】
電源(不図示)から、振動子を振動体1と共に構成する圧電素子4に対し、フレキシブル基板2の電極2b(共通グラウンド電極、A相電極、B相電極)を介し、振動子の共振周波数と略一致する周波数の位相の異なる2相(A相、B相)の交番電圧を印加する。交番電圧の印加により、振動子に振動を励起し、振動体1における圧電素子4が結合されている端面とは反対側の端面に楕円軌跡を描く楕円運動を発生させる。これにより、振動子に加圧状態で接触された接触体(不図示)に対し、楕円運動に伴う摩擦力により回転力を与え、接触体を移動させるか或いは接触体に回転力を伝達する。
【0020】
振動波駆動装置の特性は、振動子の振動時の機械的損失の特性に大きく左右される。圧電素子とフレキシブル基板を接着する接着剤等の結合層が厚い、或いは接着剤の厚さが不均一であると、振動子の振動時の機械的損失の特性を大きく悪化させてしまう。
【0021】
本実施の形態によれば、フレキシブル基板2の上記他方の面(ベース面)に電極が存在しない(電極が露出していない)構成となっている。そのため、圧電素子4とフレキシブル基板2を結合した際の各々の電極が有る部分と電極が無い部分による凹凸、或いは電極表面の面粗さによる凹凸の影響を極めて少なくすることができる。これにより、圧電素子4とフレキシブル基板2との結合層(例えば接着層)をより薄く且つより均一にすることが可能となる。更に、複数の導通部品を用いることなく少ない部品点数で、圧電素子4とフレキシブル基板2との結合面の密着度合いを良好にすることが可能となると共に、振動子に振動を励起した時の機械的損失の特性を良好にすることが可能となる。
【0022】
また、圧電素子4とフレキシブル基板2との電気的接続を、導電性塗料3を用いて行っている。そのため、圧電素子4とフレキシブル基板2との電気的接続に例えば印刷法を用いることで、導電性塗料3における均質で且つ薄く且つ厚さむらの少ない塗膜による電気的接続が可能となる。これにより、振動子に振動を励起した時の機械的損失を少なくすることが可能となると共に、振動子を簡易な製造工程で製造することが可能となる。
【0023】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の上面側の外観を示す斜視図である。図4は、振動子の下面側の外観を示す斜視図である。
【0024】
図3及び図4において、振動波駆動装置の振動子は、振動体21、フレキシブル基板22、圧電素子24から構成される。振動体21は、材質がステンレス鋼で直方体形状に構成されており、一方の面に2つの突起21aが形成されている。フレキシブル基板22は、圧電素子24と電源(不図示)との導通を行う導通部品である。導電性塗料23は、圧電素子24と振動体21及びフレキシブル基板22とをそれぞれ電気的に接続する、銀を含有した導電性を有する塗料である。圧電素子24は、直方体形状に構成された電気−機械エネルギ変換素子である。
【0025】
更に詳述すると、振動体21と圧電素子24は接着剤により結合されている。圧電素子24は、厚み方向に複数の圧電体の層と複数の電極の層とが積層された積層構造を有する。圧電素子24の内部の電極は、A相+、A相−、B相+、B相−の4つに分類されており、各々の電極は、厚み方向に貫通する4つの電極柱により電気的に接続されている。
【0026】
4つの電極柱は、圧電素子24における振動体21と結合されている面とは反対側の面に露出している。フレキシブル基板22は、ベース22a、電極22bを備えており、多層構造を有する。フレキシブル基板22の一方の面(電極面)では、電極22bの一部が表面に露出しており(図4)、他方の面(ベース面)では、電極が露出しておらずベースのみとなっている(図3)。
【0027】
圧電素子24とフレキシブル基板22は、圧電素子24のパターン電極を有する面の一部と、フレキシブル基板22の電極を有さない面であるベース面の一部とにおいて、接着剤により結合されている。圧電素子24とフレキシブル基板22は、接着剤により結合された各々の機械的結合面に、圧電素子24の電極とフレキシブル基板22の電極22bの双方を有さない構造となっている。圧電素子24の4つの露出した電極柱とフレキシブル基板22の電極22bとの電気的接続は、図4に示すように導電性塗料23により行われている。
【0028】
次に、上記構成を有する本実施の形態の振動波駆動装置の駆動方法及び作用効果について説明する。
【0029】
電源(不図示)から、振動子を振動体21と共に構成する圧電素子24に対し、フレキシブル基板22の電極22bを介し、振動子の共振周波数と略一致する周波数の位相の異なるA相(A相+、A相−)とB相(B相+、B相−)の2相の交番電圧を印加する。交番電圧の印加により、振動子に2つの面外振動を励起し、振動体21の2つの突起21aに楕円軌跡を描く楕円運動を発生させる。これにより、振動体21の2つの突起21aに加圧状態で接触された接触体(不図示)に対し、楕円運動に伴う摩擦力により移動力を与え、接触体を移動させるか或いは接触体に移動力を伝達する。
【0030】
本実施の形態によれば、圧電素子24とフレキシブル基板22とにおける双方の結合面に電極が存在しない構成となっている。そのため、平滑面同士の結合が可能であり、圧電素子24とフレキシブル基板22との結合層(例えば接着層)をより薄く且つより均一にすることが可能となる。更に、圧電素子24とフレキシブル基板22との結合面の密着度合いを良好にすることが可能となり、振動子の振動時の機械的損失の特性を良好にすることが可能となる。
【0031】
また、圧電素子24とフレキシブル基板22との電気的接続を、導電性塗料23を用いて行っている。そのため、圧電素子4とフレキシブル基板2との電気的接続に例えば印刷法を用いることで、導電性塗料23における均質で且つ薄く且つ厚さむらの少ない塗膜による電気的接続が可能となる。これにより、振動子に振動を励起した時の機械的損失を少なくすることが可能となると共に、振動子を簡易な製造工程で製造することが可能となる。
【0032】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示す斜視図である。
【0033】
図5において、振動波駆動装置の振動子は、圧電素子34、フレキシブル基板32から構成される。フレキシブル基板32は、圧電素子34と電源(不図示)との導通を行う導通部品である。導電性塗料33は、圧電素子34とフレキシブル基板32とを電気的に接続する、銀を含有した導電性を有する塗料である。圧電素子34は、円筒形状に構成された電気−機械エネルギ変換素子である。
【0034】
更に詳述すると、フレキシブル基板32は、ベース32a、電極32bを備えている。圧電素子34は、内周側のおおよそ全面に配設された1つの電極(以下、全面電極)と、外周側に周方向に沿って4分割されたパターン電極34aを備えている。圧電素子34とフレキシブル基板32は、圧電素子34の電極のない端面とフレキシブル基板32の電極のないベース面とにおいて接着剤により結合されている。
【0035】
圧電素子34の内周側の全面電極とフレキシブル基板32の電極32bとは、導電性塗料33により電気的に接続されている。圧電素子34の外周側の各々のパターン電極34aとフレキシブル基板32の電極32bとは、導電性塗料33により電気的に接続されている。
【0036】
次に、上記構成を有する本実施の形態の振動波駆動装置の駆動方法及び作用効果について説明する。
【0037】
電源(不図示)から振動子を構成する圧電素子34に対し、フレキシブル基板32の電極32bを介し交番電圧を印加する。交番電圧の印加により、振動子に2つの面外振動を励起する。これにより、振動子に加圧状態で接触された接触体(不図示)に対し、摩擦力により回転力を与え、接触体を移動させるか或いは接触体に回転力を伝達する。
【0038】
本実施の形態によれば、上記構成により、第1及び第2の実施の形態と同様に、振動子の振動時の機械的損失の特性を良好にすることが可能となる。また、振動子の振動特性において、より最適な位置での圧電素子34とフレキシブル基板32との結合が可能となると共に、フレキシブル基板32の取り回しが不要となる。
【0039】
[第4の実施の形態]
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示す斜視図である。
【0040】
図6において、振動波駆動装置の振動子は、圧電素子44、フレキシブル基板42から構成される。フレキシブル基板42は、圧電素子34と電源(不図示)との導通を行う導通部品であり、ベース42a、電極42bを備えている。導電性塗料43は、圧電素子44とフレキシブル基板42とを電気的に接続する、銀を含有した導電性を有する塗料である。圧電素子44は、円筒形状に構成された電気−機械エネルギ変換素子であり、電極44aを備えている。
【0041】
本実施の形態は、上述した第3の実施の形態に対して次の点において相違する。即ち、圧電素子44の外周側には、4つの電極44aが配設されている。4つの電極(第1の電極、第2の電極、第3の電極、第4の電極)44aは、それぞれ、空間的位相差が所定角度(本実施の形態では180度)で対向する1対の電極が圧電素子44の軸方向一方の端面側の周方向(圧電素子表面または圧電素子内部)に沿って接続されたものである。
【0042】
更に詳述すると、第1の電極44aと第2の電極44aとは、圧電素子44の径方向に積層状態に配設されている。この場合、第1の電極44aは、空間的位相差180度で対向する1対の電極が圧電素子表面の周方向に沿って電気的に接続され、第2の電極44aは、空間的位相差180度で対向する1対の電極が圧電素子内部の周方向に沿って電気的に接続されたものである。
【0043】
また、第3の電極44aと第4の電極44aとは、第1の電極44aと第2の電極44aに対して空間的位相差が所定角度(本実施の形態では90度)ずれた位置で且つ圧電素子44の径方向に積層状態に配設されている。この場合、第3の電極44aは、空間的位相差180度で対向する1対の電極が圧電素子内部の周方向に沿って電気的に接続され、第4の電極44aは、空間的位相差180度で対向する1対の電極が圧電素子内部の周方向に沿って電気的に接続されたものである。
【0044】
本実施の形態によれば、上記構成により、第3の実施の形態で述べた効果の他に、振動子を簡易な製造工程で製造することが可能となると共に、製造コストの増加を抑えることが可能となる。また、振動子に振動を励起した時の機械的損失の原因となる、圧電素子44の電極44aとフレキシブル基板42の電極42bとの電気的接続箇所を少なくすることが可能となる。
【0045】
[第5の実施の形態]
図7は、本発明の第5の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示斜視図の図である。
【0046】
図7において、振動波駆動装置の振動子は、圧電素子54、フレキシブル基板52から構成される。フレキシブル基板52は、圧電素子54と電源(不図示)との導通を行う導通部品であり、ベース52a、電極52bを備えている。導電性塗料53は、圧電素子54とフレキシブル基板52とを電気的に接続する、銀を含有した導電性を有する塗料である。圧電素子54は、円筒形状に構成された電気−機械エネルギ変換素子であり、電極54aを備えている。
【0047】
本実施の形態は、上述した第4の実施の形態に対して次の点において相違する。即ち、圧電素子54の軸方向中央部に、導電性を有する材料で形成されたシャフト55がフレキシブル基板52の電極52bと接触する状態で挿入されている。シャフト55により、圧電素子54の内周側の全面電極とフレキシブル基板52の電極52bとを電気的に接続している。
【0048】
本実施の形態によれば、上記構成により、第4の実施の形態と比較し、振動子に振動を励起した時の機械的損失の原因となる、圧電素子54の電極とフレキシブル基板52の電極52bとの電気的接続箇所を更に少なくすることが可能となる。
【0049】
[第6の実施の形態]
図8は、本発明の第6の実施の形態に係る振動子のフレキシブル基板の外形を示す模式図である。
【0050】
図8において、本実施の形態が上述した第5の実施の形態と相違する点は、フレキシブル基板62が、円筒形状の圧電素子(不図示)と結合される結合面62aにおいて、外周部の周方向に沿って複数箇所を欠落させた複数の欠落部62bを有する点である。尚、本実施の形態では、欠落部62bの形状を円形の一部を欠落させた形状(概略半円形状)としているが、特定の形状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0051】
本実施の形態によれば、上記構成により、第5の実施の形態で述べた効果の他に、振動子に振動を励起した時の機械的損失の原因となる、圧電素子の多層構造の部分や圧電素子とフレキシブル基板との結合層(例えば接着層)の部分をより少なくすることが可能となる。
【0052】
[第7の実施の形態]
図9は、本発明の第7の実施の形態に係る振動子のフレキシブル基板の外形を示す模式図である。
【0053】
図9において、本実施の形態が上述した第6の実施の形態と相違する点は、フレキシブル基板72が、円筒形状の圧電素子(不図示)と結合される結合面72aにおいて、面内から面外に切り欠かれた切り欠き部72bを有する(開いた形状を有する)点である。尚、本実施の形態では、切り欠き部72bの形状を円環の一部を切り欠いた形状(概略長方形形状)としているが、特定の形状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0054】
本実施の形態によれば、上記構成により、第6の実施の形態で述べた効果の他に、圧電素子とフレキシブル基板との結合面の面内方向の拘束力を下げることが可能となる。これにより、振動子に振動を励起した時の機械的損失の原因となる、圧電素子とフレキシブル基板との結合層(例えば接着層)のせん断変形を小さくすることが可能となる。
【0055】
[他の実施の形態]
上記第1乃至第7の実施の形態では、振動子及び振動波駆動装置について説明したが、本発明は、振動波駆動装置の振動子に励起した振動により被駆動体を駆動する各種の技術分野に適用することが可能である。技術分野としては例えば撮像装置におけるフォーカスレンズやズームレンズの駆動などが想定される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の振動子の電極面を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の上面側の外観を示す斜視図である。
【図4】図3の振動子の下面側の外観を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る振動波駆動装置の振動子の外観を示斜視図の図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る振動子のフレキシブル基板の外形を示す模式図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係る振動子のフレキシブル基板の外形を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1、21 振動体
2、22、32、42、52、62、72 フレキシブル基板(導通部品)
2a、22a、32a、42a、52a フレキシブル基板のベース
2b、22b、32b、42b、52b フレキシブル基板の電極
3、23、33、43、53 導電性塗料(導電性を有する塗料)
4、24、34、44、54 圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)
4a、34a、44a、54a 圧電素子の電極
55 シャフト(導電性を有する材料で形成された部材)
62a 結合面
62b 欠落部
72a 結合面
72b 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電極を有し、電気量を機械量に変換する電気−機械エネルギ変換素子と、
表面に電極を有し、前記電気−機械エネルギ変換素子に結合されると共に前記電気−機械エネルギ変換素子と電源との導通を行う導通部品とを備え、
前記電気−機械エネルギ変換素子と前記導通部品との機械的結合面のうち少なくとも一方の機械的結合面が電極を有さないことを特徴とする振動子。
【請求項2】
前記電気−機械エネルギ変換素子と前記導通部品とは、導電性を有する塗料により電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の振動子。
【請求項3】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、複数の電極を有し、
前記複数の電極のうち少なくとも2つの電極は、前記電気−機械エネルギ変換素子の表面もしくは内部で電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の振動子。
【請求項4】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、複数の電極を有し、
前記複数の電極のうち少なくとも1つの電極は、導電性を有する材料で形成された部材を介し前記導通部品と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の振動子。
【請求項5】
前記導通部品は、前記電気−機械エネルギ変換素子との結合面の一部が欠落した構造を有することを特徴とする請求項1記載の振動子。
【請求項6】
前記導通部品は、前記電気−機械エネルギ変換素子との結合面の面内から面外に切り欠かれた構造を有することを特徴とする請求項1記載の振動子。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れかに記載の振動子を備え、前記振動子に加圧接触された被駆動体を摩擦力による移動もしくは前記被駆動体に力の伝達を行うことを特徴とする振動波駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−185049(P2007−185049A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1875(P2006−1875)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】