説明

振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるためのシステム、方法およびコンピュータプログラム製品

本発明は、振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム、方法およびコンピュータプログラム製品に関するものである。少なくとも2つのドライブチェーン(C,C,C,C)からドライブチェーン(C,C,C,C)が選択される。各ドライブチェーン(C,C,C,C)は、少なくとも1つのピックオフ信号を変更してドライブ信号を発生させる。また、各ドライブチェーン(C,C,C,C)は、少なくとも1つの導管(103A)に異なるモードの振動を発生させる。選択されたドライブチェーン(C,C,C,C)により発生されるドライブ信号は、振動式測定デバイス(5)のドライブ(104)へ送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるためのシステム、方法およびコンピュータプログラム製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、デンシトメータおよびコリオリ流量計の如き振動式測定デバイスは、密度、質量流量、体積流量、総合質量流量、温度、他の情報などの如き流動物質の特性を測定するために用いられている。振動式測定デバイスは、一または複数の導管を備えている。一または複数の導管は、たとえば、直線形状、U字形状または異形形状の如きさまざまな形状を有することが可能である。
【0003】
また、一または複数の導管は、たとえば、単純曲げモード、ねじれモード、ラジアルモードおよび結合モードを含む一組の固有の振動モードを有している。流動物質の特性を求めるためには、少なくとも1つのドライブが、これらのモードのうちの一つのモードで、一または複数の導管を共振周波数で振動させる。一または複数の電子機器が正弦波駆動信号を少なくとも1つのドライブへ送信するようになっている。このドライブは、通常マグネット/コイルを組み合わせたものであり、このマグネットは導管に固定されており、コイルは支持構造体または他の導管に固定されている。このドライブ信号により、ドライブがドライブモードかつドライブ周波数で一または複数の導管を振動させるようになっている。たとえば、ドライブ信号はコイルに送信される周期的な電流であってもよい。
【0004】
少なくとも一つのピックオフは、導管の振動を検出し、振動する導管の運動を表す正弦波ピックオフ信号を発生するように構成されている。通常、ピックオフはマグネット/コイルを組み合わせたものであり、通常、このマグネットは導管に固定され、コイルは支持構造体または他の導管に固定されている。ピックオフ信号は一または複数の電子機器へ送信される。周知の原理によれば、ピックオフ信号は、必要ならば、一または複数の電子機器によって流動物質の特性を求めるためにまたはドライブ信号を調節するために用いられるようになしてあってもよい。
【0005】
振動式測定デバイスを所望のモードで振動させるため、通常、ドライブチェーンが用いられる。ドライブチェーンは、1つ以上のピックオフ信号を変更してドライブ信号を発生させる。また、ドライブチェーンは、適切なドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制する。たとえば、発生されるドライブ信号は、ピックオフ信号に端を発するものであってもよい。その場合、発生されるドライブ信号は、ピックオフ信号に対して、不要なモードの取り除き、信号ゲインに合わせた調節、位相シフトなどの変更を加えることで提供されるようになしてあってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
与えられる振動式測定デバイスが、動作条件に応じて、ある周波数においてより正確に動作するような場合がある。たとえば、ある振動式測定デバイスは、低周波第一曲げドライブモードまたは高周波第二曲げドライブモードで動作することができ、低周波第一曲げドライブモードで、より良好な混入空気パフォーマンスが提供される場合もあれば、高周波第二曲げドライブモードで、広範囲の動作条件でより正確な測定結果をもたらされる場合もある。
【0007】
振動式測定デバイスが複数のモードで動作するように設計されている場合、実際問題として、単一の固定ドライブチェーンが1つを超えるモードを発生させることはできないので、モード間の切り替えは困難であった。このことは、ドライブチェーンの構成部品としてアナログ式のハードウェアが含まれる場合、その固定性に起因して、とくに問題となる。
【0008】
本発明は、従来の単一導管システムに固有なこの欠点を克服することに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術範囲は添付の特許請求の範囲のみにより規定され、以下の内容によりいかなる程度であっても影響されることはない。
【0010】
本発明の1つの実施形態によれば、振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるためのシステムは、少なくとも1つの導管と、少なくとも1つのドライブと、少なくとも1つのピックオフと、1つ以上の電子機器とを備えている。少なくとも1つの導管は、流動物質を受け入れるように構成されている。少なくとも1つのドライブは、少なくとも1つの導管を振動させるように構成されている。少なくとも1つのピックオフは、少なくとも1つの導管の振動を測定するように構成されている。1つ以上の電子機器は少なくとも2つのドライブチェーンを有しており、各ドライブチェーンは、少なくとも1つのピックオフ信号を変更し、少なくとも一つの導管を振動させるために用いられるドライブ信号を発生し、各ドライブチェーンは、少なくとも1つの導管に異なるモードの振動を発生させるようになっている。1つ以上の電子機器は、少なくとも2つのドライブチェーンからドライブチェーンを選択するためのドライブチェーンセレクタを有している。また、1つ以上の電子機器は、選択されたドライブチェーンにより発生されたドライブ信号をドライブへ送るように構成されている。
【0011】
本発明の実施形態によれば、流動物質を受け入れるように構成された少なくとも1つの導管と、少なくとも1つの導管を振動させる少なくとも1のドライブと、少なくとも1つの導管の振動を測定する少なくとも1つピックオフとを備えている振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるための方法は、各ドライブチェーンが少なくとも1つのピックオフ信号を変更してドライブ信号を発生し、また、各ドライブチェーンが少なくとも1つの導管に異なるモードの振動を発生させる少なくとも2つのドライブチェーンを、1つ以上の電子機器に設けるステップと、少なくとも二つのドライブチェーンからドライブチェーンを選択するステップと、選択されたドライブチェーンにより発生されたドライブ信号をドライブへ送るステップとを有している。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるべくプロセスを実行するための実行可能コードを具備したコンピュータ使用可能媒体を有しているコンピュータプログラム製品であって、上記のプロセスが、各ドライブチェーンが少なくとも1つのピックオフ信号を変更してドライブ信号を発生し、また、各ドライブチェーンが少なくとも1つの導管に異なるモードの振動を発生させる少なくとも2つのドライブチェーンからドライブチェーンを選択することと、選択されたドライブチェーンにより発生されたドライブ信号をドライブへ送ることとを含んでいる。
【0013】
[発明の態様]
本発明の1つの態様によれば、振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるためのシステムは、流動物質を受け入れるように構成された少なくとも1つの導管と、少なくとも1つの導管を振動させる少なくとも1のドライブと、少なくとも1つの導管の振動を測定する少なくとも1つピックオフと、各ドライブチェーンが少なくとも1つのピックオフ信号を変更して少なくとも一つの導管を振動させるために用いられるドライブ信号を発生し、各ドライブチェーンが少なくとも1つの導管に異なるモードの振動を発生させる少なくとも2つのドライブチェーンを有した1つ以上の電子機器とを備えており、1つ以上の電子機器が、少なくとも2つのドライブチェーンからドライブチェーンを選択するためのドライブチェーンセレクタを有し、1つ以上の電子機器が、選択されたドライブチェーンにより発生されたドライブ信号をドライブへ送るように構成されている。
【0014】
好ましくは、各ドライブチェーンは、あるドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するよう、少なくとも1つのピックオフ信号を変更するように構成されている。
【0015】
好ましくは、各ドライブチェーンは、不要なモードの振動を取り除くフィルタを有している。
【0016】
好ましくは、各ドライブチェーンは位相シフトアルゴリズムを有している。
【0017】
好ましくは、各ドライブチェーンはゲイン調節アルゴリズムを有している。
【0018】
好ましくは、ユーザまたはプログラムはドライブチェーンを選択する。
【0019】
好ましくは、ドライブチェーンは流動物質内に混入ガスが存在しているか否かに応じて選択される。
【0020】
好ましくは、ドライブチェーンは、ピックオフ信号のノイズに応じて選択される。
【0021】
好ましくは、ドライブチェーンは、さまざまな条件をドライブチェーンと関連付けするルックアップテーブルにアクセスすることにより選択される。
【0022】
本発明の他の態様によれば、流動物質を受け入れるように構成された少なくとも1つの導管と、少なくとも1つの導管を振動させる少なくとも1のドライブと、少なくとも1つの導管の振動を測定する少なくとも1つピックオフとを備えている振動式測定デバイスのドライブ信号を発生させるための方法は、各ドライブチェーンが少なくとも1つのピックオフ信号を変更してドライブ信号を発生し、また、各ドライブチェーンが少なくとも1つの導管に異なるモードの振動を発生させる少なくとも2つのドライブチェーンを1つ以上の電子機器に設けるステップと、少なくとも二つのドライブチェーンからドライブチェーンを選択するステップと、選択されたドライブチェーンにより発生されたドライブ信号をドライブへ送るステップとを有している。
【0023】
好ましくは、各ドライブチェーンは、あるドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するように、少なくとも1つのピックオフ信号を変更する。
【0024】
好ましくは、各ドライブチェーンは、不要なモードの振動を取り除くフィルタを有している。
【0025】
好ましくは、各ドライブチェーンは位相シフトアルゴリズムを有している。
【0026】
好ましくは、各ドライブチェーンはゲイン調節アルゴリズムを有している。
【0027】
好ましくは、ユーザまたはプログラムはドライブチェーンを選択する。
【0028】
好ましくは、ドライブチェーンは流動物質内に混入ガスが存在しているか否かに応じて選択される。
【0029】
好ましくは、ドライブチェーンはピックオフ信号のノイズに応じて選択される。
【0030】
好ましくは、ドライブチェーンは、さまざまな条件をドライブチェーンと関連付けするルックアップテーブルにアクセスすることにより選択される。
【0031】
本発明の他の態様によれば、振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生すべくプロセスを実行するための実行可能コードを具備したコンピュータ使用可能媒体を有しているコンピュータプログラム製品であって、各ドライブチェーンが少なくとも1つのピックオフ信号を変更してドライブ信号を発生し、また、各ドライブチェーンが少なくとも1つの導管に異なるモードの振動を発生させる少なくとも二つのドライブチェーンからドライブチェーンを選択することと、選択されたドライブチェーンにより発生されたドライブ信号をドライブへ送ることとを含んでいる。
【0032】
好ましくは、各ドライブチェーンは、あるドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するよう、少なくとも1つのピックオフ信号を変更するように構成されている。
【0033】
好ましくは、各ドライブチェーンは、不要なモードの振動を取り除くフィルタを有している。
【0034】
好ましくは、各ドライブチェーンは位相シフトアルゴリズムを有している。
【0035】
好ましくは、各ドライブチェーンはゲイン調節アルゴリズムを有している。
【0036】
好ましくは、ユーザまたはプログラムはドライブチェーンを選択する。
【0037】
好ましくは、ドライブチェーンは流動物質内に混入ガスが存在しているか否かに応じて選択される。
【0038】
好ましくは、ドライブチェーンはピックオフ信号のノイズに応じて選択される。
【0039】
好ましくは、ドライブチェーンは、さまざまな条件をドライブチェーンと関連付けするルックアップテーブルにアクセスすることにより選択される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】振動式測定デバイスの一例を示す斜視図である。
【図2】複数のドライブチェーンを有するドライブシステムを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1には、センサー組立体10と一または複数の電子機器20とを有しているコリオリ流量計の形態をとる振動式測定デバイス5の一例が示されている。一または複数の電子機器20は、センサー組立体10へ接続され、たとえば密度、質量流量、体積流量、総合質量流量、温度および他の情報の如き流動物質の特性を測定するようになっている。
【0042】
センサー組立体10は、一対のフランジ101,101’と、一対のマニホルド102,102’と、一対の導管103A,103Bとを有している。マニホルド102,102’は、導管103A,103Bの両端に固定されている。本実施形態に係るフランジ101,101’はマニホルド102,102’へ固定されている。また、本実施形態に係るマニホルド102,102’はスペーサ106の両端に固定されている。スペーサ106は、導管103Aおよび103Bの不要な振動を避けるために本実施形態に係るマニホルド102とマニホルド102’との間の間隔を維持するようになっている。これらの導管はほぼ並列にマニホルドから外方に向けて延びている。流動物質を運ぶ配管システム(図示せず)の中にセンサー組立体10が挿入されると、流動物質がフランジ101を通ってセンサー組立体10の中に流入し、流入口マニホルド102を通り、ここで流動物質の全量が導管103Aおよび103Bの中に流れ、導管103Aおよび103Bを流れ、流出口マニホルド102’の中へ流れ込み、ここでフランジ101’からセンサー組立体10の外へと流出する。
【0043】
本実施形態に係るセンサー組立体10はドライブ104を備えている。ドライブ104は、当該ドライブ104が導管103A,103Bをドライブモードで振動させることができる位置で導管103A,103Bへ固定されている。さらに具体的にいえば、ドライブ104は、導管103Aに固定されている第一のドライブ部(図示せず)と、導管103Bに固定されている第二のドライブ部(図示せず)とを有している。ドライブ104は、第一のドライブ部のマグネットが導管103A上に取り付けられ、さらに対向する第二のドライブのコイルが導管103Bに取り付けられているような装置の如き公知になっている複数の装置のうちの1つから構成されるようになっていてもよい。
【0044】
本実施形態では、ドライブモードは、第一の逆位相曲げモードであり、導管103A,103Bは、曲げ軸X−−XおよびX’−−X’に対して実質的に同一の質量分布、慣性モーメントおよび弾性モジュールをそれぞれ有するように、選択され、流入口マニホルド102および流出口マニホルド102’へ適切に取り付けられるようになっていることが好ましい。ドライブモードが第一の逆位相曲げモードである本実施形態では、導管103Aおよび導管103Bは、それぞれに対応する曲げ軸Xおよび曲げ軸X’に対して相互に反対方向に向けてドライブ104により振動させられる。交流の形態を有しているドライブ信号が、たとえば経路110を介して一つ以上の電子機器20によって提供され、対向するコイルを流れ、両方の導管103A,103Bの振動を引き起こすようになっている。
【0045】
当業者にとって明らかなように、他のドライブモードが用いられてもよいが、それらも本発明の技術範囲に含まれることになる。たとえば、ドライブモードは、ここで参照することにより本明細書に援用される米国特許第5,271,282号に記載されているようなねじれモードであってもよい。
【0046】
図示されているセンサー組立体10は、導管103A,103Bに固定される一対のピックオフ105,105’を有している。さらに具体的にいえば、第一のピックオフ部(図示せず)が導管103A上に設けられ、第二のピックオフ部(図示せず)が導管103B上に設けられている。図示されている実施形態では、ピックオフ105,105’は、導管103A,103Bの両端部に設けられている。ピックオフ105,105’は、導管103A,103Bの速度および位置を表わすピックオフ信号を発生する電磁検出器であってもよい。たとえば、第一のピックオフ部がマグネットであり、第二のピックオフ部がコイルである。たとえば、ピックオフ105,105’は経路111,111’通じて一つ以上の電子機器へピックオフ信号を送信するようになっていてもよい。当業者にとって明らかなように、導管103A,103Bの運動は、流動物質のなんらかの特性、たとえば導管103A,103Bを流れる物質の質量流量および密度に比例している。
【0047】
図1に示されている実施形態では、一つ以上の電子機器20は、ピックオフ105,105’からピックオフ信号を受信する。経路26は、1つ以上の電子機器20にオペレータとの通信を可能とする入力手段および出力手段を提供している。一つ以上の電子機器20は、たとえば密度、質量流量、体積流量、総合質量流量、温度および他の情報の如き流動物質の特性を測定するようになっている。さらに具体的にいえば、一つ以上の電子機器20は、たとえばピックオフ105,105’からおよび1つ以上の温度センサー(図示せず)から1つ以上の信号を受け取り、この情報を用いて、たとえば密度、質量流量、体積流量、総合質量流量、温度および他の情報の如き流動物質の特性を測定する。
【0048】
たとえば、コリオリフローメータまたはデンシトメータの如き振動式測定デバイスが流動物質の特性を測定する技術は、よく理解されている。たとえば、ここで参照することにより本明細書に援用する米国特許第6,505,131号を参照されたい。したがって、記載を簡潔にするため、詳細な説明は省略する。
【0049】
図1に示されている実施形態では、1つ以上の電子機器20はドライブ信号をドライブ104に送る。さらに詳細にいえば、たとえば図2の実施形態に記載されているドライブチェーンC,C,C,Cのうちのあるドライブチェーンは、適切なドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するように、1つ以上のピックオフ信号を変更する。たとえば、ドライブチェーンCが、所望でないモード、すなわちドライブチェーンC,C,Cのモードを取り除いて、信号ゲイン(信号利得)を調製し、そして信号を位相シフトさせることにより、ピックオフ信号を変更してもよい。ドライブチェーンが1つ以上のピックオフ信号を変更した後、導管103,103’を振動させるために、適切なドライブ信号がドライブ104へ送られる。
【0050】
当業者にとって明らかなように、本実施形態に係るドライブチェーンは、ソフトウェア製品、ハードウェア、またはそれらを組み合わせたものとして具象化されてもよい。たとえば、ドライブチェーンは、フィルタの形態をとるアナログハードウェアや、ソフトウェアにより実行されるプロセス、たとえば、信号を位相シフトさせ、信号ゲインを調製する1つ以上のアルゴリズムを有しうる。
【0051】
ここで図2を参照すると、異なるドライブチェーンを選択することができるドライブシステム70の実施形態が示されている。図2に示されているように、ドライブシステム70は複数のドライブチェーン、たとえばドライブチェーンC,C,C,Cを有している。本実施形態の1つの態様によれば、各ドライブチェーン、たとえばドライブチェーンC,C,C,Cは、異なるドライブ周波数またはドライブモードを生じるように構成されている。本実施形態の他の態様によれば、各ドライブチェーン、たとえばドライブチェーンC,C,C,Cは、そのドライブチェーンの適切なドライブ周波数を強化するように、1つ以上のピックオフ信号を変更する。本実施形態のさらに他の態様によれば、各ドライブチェーン、たとえばドライブチェーンC,C,C,Cは、他のドライブチェーンの他のドライブ周波数を含む他のドライブ周波数を抑制するように、1つ以上のピックオフ信号を変更する。たとえば、各ドライブチェーンC,C,C,Cには、1つ以上のピックオフ信号を適切に変更するたとえばアルゴリズムまたはハードウェアである少なくとも1つのフィルタF,F,F,Fと、少なくとも1つの位相シフトアルゴリズムP,P,P,Pと、少なくとも1つのゲイン調節アルゴリズムG,G,G,Gとが設けられるようになっていてもよい。
【0052】
当業者にとって明らかなように、実際にどのようなアルゴリズムが採用されるかは複数の要因に依存する。さらに、当業者にとって明らかなように、実際問題として、振動式測定デバイスは通常同一ではない。限定するわけではないが、たとえば、振動式測定デバイスは、質量、質量分布、振幅および/または使用周波数、導管を流れる流動物質、ならびにその流動物質の密度の点で少なくともある程度異なっていることが一般的である。当業者にとって明らかなように、質量、質量分布、振幅および/または周波数の差が小さくても、また、導管を流れる物質およびその物質の密度がどのようなものであっても、実際にどのようなドライブチェーンおよびアルゴリズムが用いられるかに影響を与える。したがって、当業者にとって明らかなように、個々の振動式測定デバイスに対する適切なドライブチェーンまたはアルゴリズムを決定するために、なんらかの定期的な試験が必要となる。
【0053】
図2に示されているように、ドライブシステム70はドライブチェーンセレクタ75を有している。本実施形態の1つの態様によれば、ドライブチェーンセレクタ75は、適切なドライブチェーン、たとえばドライブチェーンC,C,C,Cの選択を可能とするように構成されている。当業者にとって明らかなように、本実施形態に係るセレクタ75は、ソフトウェア製品、ハードウェア、またはそれらを組み合わせたもので具象化されてもよい。たとえば、ドライブチェーンセレクタ75は、ハードウェアスイッチであってもよいし、および/または、たとえばユーザまたはプログラムが、用いられるのが望ましいドライブチェーンC,C,C,Cとして76において選択または入力するプロセスの如き、ソフトウェアにより実行されるプロセスであってもよい。
【0054】
したがって、あるドライブチェーンが不適当であるような状況では、ユーザまたはプログラムはより適切なドライブチェーンへ切り替えるようになっていてもよい。たとえば、混入ガスが存在するような状況では、あるドライブチェーンがより正確な測定値を提供する場合もある。さらに他の具体例では、あるドライブチェーンがノイズの少ないピックオフ信号を生じる場合もある。すなわち、信号がシステム内で生じる他の周波数と異なる周波数で生じる。さらに他の具体例では、ユーザまたはプログラムが、ドライブチェーンとさまざまな条件を関連付けしているルックアップテーブルにアクセスすることが可能となっている場合もある。
【0055】
当業者にとって明らかなように、導管の数、ドライバの数、ピックオフの数、振動動作モードまたは流動物質の所定の特性にかかわらず、本明細書に記載の技術思想をたとえばデンシトメータを含むいかなるタイプの振動式測定デバイスに用いた場合であっても、本発明の技術範囲に含まれる。本明細書には、本発明の最良の形態を実施または利用する方法を当業者に教示するための特定の実施形態が記載されている。本発明の原理を教示するために、従来技術の一部が単純化または省略されている。当業者にとって明らかなように、これらの実施形態の変形例も本発明の技術範囲内に含まれる。上述の実施形態の詳細な記載は、本発明の技術範囲内に含まれるものとして本発明者が考えているすべての実施形態を完全に網羅するものではない。
【0056】
当業者にとって明らかなように、上述の実施形態のうちの一部の構成要素をさまざまに組み合わせてまたは除去してさらなる実施形態を作成してもよいし、また、このようなさらなる実施形態も本発明の技術範囲内および教示範囲内に含まれる。また、当業者にとって明らかなように、本発明の技術および教示の範囲に含まれるさらなる実施形態を作成するために、上述の実施形態を全体的にまたは部分的に組み合わせてもよい。
【0057】
以上のように、本発明の特定の実施形態または実施形態が例示の目的で記載されているが、当業者にとって明らかなように、本発明の技術範囲内において、さまざまな変更が可能である。本明細書に記載の教示を上述のかつそれに対応する図に記載の実施形態とは異なる実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明の技術範囲は請求の範囲によって決められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステムであって、
流動物質を受け入れるように構成された少なくとも1つの導管(103A)と、
前記少なくとも1つの導管(103A)を振動させる少なくとも1つのドライブ(104)と、
前記少なくとも1つの導管(103A)の振動を測定する少なくとも1つピックオフ(105)と、
少なくとも2つのドライブチェーン(C,C,C,C)を有している1つ以上の電子機器(20)とを備えており、
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が少なくとも1つのピックオフ信号を変更して前記ドライブ信号を発生させるように構成され、また、各ドライブチェーン(C,C,C,C)が前記少なくとも1つの導管(103A)に異なるモードの振動を生じさせるように構成されており、
前記1つ以上の電子機器(20)が、前記少なくとも2つのドライブチェーン(C,C,C,C)からドライブチェーン(C,C,C,C)を選択するためのドライブチェーンセレクタ(75)を有しており、
前記1つ以上の電子機器が、選択された前記ドライブチェーン(C,C,C,C)により発生された前記ドライブ信号を前記ドライブへ送るように構成されてなる、
振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項2】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、あるドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するよう、少なくとも1つのピックオフ信号を変更するように構成されてなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項3】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、不要なモードの振動を取り除くフィルタを有してなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項4】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、位相シフトアルゴリズム(P,P,P,P)を有してなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項5】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、ゲイン調節アルゴリズム(G,G,G,G)を有してなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項6】
ユーザまたはプログラムが、前記ドライブチェーン(C,C,C,C)を選択するように構成されてなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項7】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記流動物質内の混入ガスの存在の有無に応じて選択されてなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項8】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記ピックオフ信号のノイズに応じて選択されてなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項9】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、さまざまな条件をドライブチェーン(C,C,C,C)と関連付けするルックアップテーブルにアクセスすることにより選択されてなる、請求項1に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるためのシステム。
【請求項10】
流動物質を受け入れるように構成された少なくとも1つの導管(103A)と、 該少なくとも1つの導管(103A)を振動させる少なくとも1のドライブ(104)と、前記少なくとも1つの導管(103A)の振動を測定する少なくとも1つピックオフ(105)とを備えている振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法であって、
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が少なくとも1つのピックオフ信号を変更して前記少なくとも一つの導管を振動させるために用いられるドライブ信号を発生し、また、各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記少なくとも1つの導管(103A)に異なるモードの振動を発生させる少なくとも2つのドライブチェーン(C,C,C,C)を、1つ以上の電子機器(20)に設けるステップと、
前記少なくとも2つのドライブチェーン(C,C,C,C)からドライブチェーン(C,C,C,C)を選択するステップと、
選択された前記ドライブチェーン(C,C,C,C)により発生された前記ドライブ信号を前記ドライブへ送るステップと
を有している、振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項11】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、あるドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するように少なくとも1つのピックオフ信号を変更する、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項12】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、不要なモードの振動を取り除くフィルタを有している、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項13】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、位相シフトアルゴリズム(P,P,P,P)を有している、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項14】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、ゲイン調節アルゴリズム(G,G,G,G)を有している、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項15】
ユーザまたはプログラムが、前記ドライブチェーン(C,C,C,C)を選択する、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項16】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記流動物質内の混入ガスの存在の有無に応じて選択される、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項17】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記ピックオフ信号のノイズに応じて選択される、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項18】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、さまざまな条件をドライブチェーン(C,C,C,C)と関連付けするルックアップテーブルにアクセスすることにより選択される、請求項10に記載の振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるための方法。
【請求項19】
振動式測定デバイス(5)のドライブ信号を発生させるべくプロセスを実行するための実行可能コードを具備したコンピュータ使用可能媒体を有しているコンピュータプログラム製品であって、
前記プロセスが、
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が少なくとも1つのピックオフ信号を変更して前記ドライブ信号を発生し、また、各ドライブチェーン(C,C,C,C)が前記少なくとも1つの導管(103A)に異なるモードの振動を発生させる少なくとも2つのドライブチェーン(C,C,C,C)からドライブチェーン(C,C,C,C)を選択することと、
選択された前記ドライブチェーン(C,C,C,C)により発生された前記ドライブ信号を前記ドライブへ送ることとを含んでいる、コンピュータプログラム製品。
【請求項20】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、あるドライブ周波数を強化し、他のドライブ周波数を抑制するよう少なくとも1つのピックオフ信号を変更するように構成されてなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、不要なモードの振動を取り除くフィルタを有してなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、位相シフトアルゴリズム(P,P,P,P)を有してなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
各ドライブチェーン(C,C,C,C)が、ゲイン調節アルゴリズム(G,G,G,G)を有してなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項24】
ユーザまたはプログラムが、前記ドライブチェーン(C,C,C,C)を選択するように構成されてなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項25】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記流動物質内の混入ガスの存在の有無に応じて選択されてなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項26】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、前記ピックオフ信号のノイズに応じて選択されてなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
前記ドライブチェーン(C,C,C,C)が、さまざまな条件をドライブチェーン(C,C,C,C)と関連付けするルックアップテーブルにアクセスすることにより選択されてなる、請求項19に記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527007(P2011−527007A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516257(P2011−516257)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/068928
【国際公開番号】WO2010/002401
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(500205770)マイクロ モーション インコーポレイテッド (38)
【Fターム(参考)】